説明

加糖製品におけるデンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤としての食品添加組成物

本発明は、齲食原性遊離糖類またはその副生成物を含有する糖または加糖製品に添加し、歯および歯の支持組織を強化すると共に、デンタルバイオフィルムの付着および齲蝕の出現を減少させることができる食品添加組成物に関する。本発明は、前記食品添加物製品を含有する齲食原性遊離糖類またはその副生成物で作られた食品、ならびに、チョコレートなどの前記食品添加組成物を含有するそのような食品の製造方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、齲食原性遊離糖類またはそれらの誘導体を含有する糖または加糖製品に組み込み、歯および歯の支持組織を強化すると共に、デンタルバイオフィルムの付着および齲蝕の出現を減少させることを目的とした食品添加組成物に関する。本発明は、本食品添加組成物を含有する齲食原性遊離糖類またはそれらの誘導体を主成分とした食品、および本食品添加組成物を含有するチョコレートなどのそのような食品の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
齲蝕は、癌および心血管疾患に続く世界で3番目の悩みの種である。世界保健機構(WHO)からのデータによれば、先進工業国における学齢児童の60%〜90%ならびに大多数の成人が齲蝕を有している。齲蝕は、アジアおよびラテンアメリカのいくつかの国では最も一般的な口腔の病気でもある。
【0003】
さらに、ヨーロッパの成人の80%および15歳の若者の50%が歯肉炎などの歯周病に冒されている。
【0004】
糖の摂取と齲蝕には直接的な関連がある。
【0005】
細菌は、歯の組織にコロニーを形成するために、歯のエナメルに対してだけでなく互いに対して強力な付着関係を確立することによって自らを組織化する。特に、適切なブラッシングによってこのプロセスが妨害されなければ、黄色がかった付着物、すなわち歯垢またはバイオフィルムが非常に急速かつ目にみえて形成される。このバイオフィルムは、その発生に比例して歯の表面への唾液緩衝物のアクセスを減少させる、多糖類および糖タンパク質のマトリックスに含まれる様々な微生物集団の複雑な集合体である。歯垢内の細菌は、食物と共に摂取された単糖類(例えば、フラクトース、グルコースおよびガラクトース)、二糖類(例えば、サッカロース、マルトースおよびラクトース)および多糖類(例えば、澱粉)を発酵させる。このプロセスの間に、歯に可能な限り近くにおいて酸が形成され、このようにpHを繰り返し低下させ、歯の上にエナメルを形成するヒドロキシアパタイトの結晶の可溶化を引き起こし、かつ長期的には歯の脱灰を引き起こす。齲蝕の発生には、
●歯の表面の歯垢中の細菌、主にミュータンス菌(学名:Streptococcus mutans)(S.Mutans)の存在、
●発酵性糖(特にサッカロース)の利用可能性、
●多少脆弱な宿主(エナメルの厚さ、配置の悪い歯など)、
●十分な持続時間(それにより付着生成物はより齲食原性となる)、
という4つの条件が揃わなければならない。
【0006】
歯垢中の細菌は歯周組織にも作用し、刺激生成物(尿素、アンモニアなど)、酵素および毒素を放出し、それにより歯肉の炎症および免疫学的反応を誘発して歯肉炎を引き起こす。抗病原菌の排除によって、歯周構造を保護する代わりに破壊的となるサイトカインの過剰産生が生じ、これにより歯周炎(すなわち支持組織の決定的な退縮)が引き起こされ、極端な状況では歯の弛緩および喪失に至る場合がある。
【0007】
従って、糖類は、齲蝕および、より一般的には歯周病に関連づけられる主要な食物要因である。
【0008】
齲蝕の予防においてフッ素が疑いのない役割を果たしているが、これらの病態は根絶されておらず、多くの共同体に最適量のフッ素が曝露されていない。さらに、エナメルのヒドロキシアパタイトをフルオロアパタイトに変えることによって歯を強化する効果を与えるフッ素の量は、二次病態(フッ素症、神経学的結果など)が生じるリスクのために満場一致で可決されていない。
【0009】
さらに、食品産業は、高い加糖能力を有しながらもほとんどあるいは全く齲蝕原性を有しない甘味料で糖が置き換えられた多くの製品を提供している。
【0010】
しかし、食品産業で使用されている甘味料は合成製品である場合が多く、その使用が規制当局によって認可されているにも関わらず、天然由来の製品を支持しそのような化学製品およびそれらの発癌性のイメージを回避することを好む人々を懸念させている。
【0011】
歯周病および特に齲蝕の発生を予防するために、世界保健機構は、何よりも遊離糖類の量の減少、ならびに栄養価の高い食事管理、すなわち齲蝕の低下に関連づけられるように見える、澱粉および繊維を含有しかつ遊離糖や脂肪をほとんど含有していない果物や野菜類を推奨している。
【0012】
歯の用途において初めてキシリトールを用いた別の代替案が1970年代に登場した(Turkuによる研究)。キシリトールは、19世紀の終わりに化学者フィッシャーによってブナのチップから単離された5個の炭素原子を有する天然の糖アルコールである。キシリトールは、
●歯垢の原因である細菌の増殖を阻害するため、細菌は代謝ができず、よって齲食原性酸が生成されず、
●特にガムの形態で唾液の分泌を刺激し、それにより齲蝕に対するこの天然の防御系を促進し(緩衝効果の増加、アミラーゼおよびペルオキシダーゼの産生など)、
●同等の加糖能力のためのカロリーがサッカロースよりも低い、
という興味深い特性を有する。
【0013】
その有効性に関する証明はもはや不要だが、キシリトールの使用は、費用および全ての人の利用可能性の点でまだ議論がなされている。これは、キシラン(xylane)の加水分解および水素化によって、カバ、トウモロコシおよびサトウキビを用いて行われるその商業生産の費用が依然として高いことが理由である。さらに、その抗齲食原性効力それ自体の効果は、長期的な摂取の際のその規則性に基づいて測定される。キシリトールの摂取後24時間以内に口内細菌叢の変化が観察されるが、残留する永続的な齲蝕予防を保証するためには2〜3年の規則的な摂取が必要であると考えられている。そのような規則性は、予防プログラムにおける長期間の意図的な行為ならびに監視および訓練システムの設立を必要とし、これは多大な費用を意味している。
【0014】
さらに、キシリトールは、サッカロースに等しい加糖能力を有するにも関わらず、顕著なメントール風味を有するために、大部分の加糖食品におけるサッカロースの代わりとしての高用量でのその使用の可能性は低下してしまう。
【0015】
さらに、2007年10月12日の官報に記載された承認された効果を有する賦形剤のリストによれば、その毎日の摂取量は成人1人当たり10gを超えてはならず、その量を超えると、浸透圧性下痢のリスクが高まる。しかし、一般的な考えでは、非常に多くの場合、この閾値が成人1人当たり20〜30gに設定される。
【0016】
2008年に、欧州食品安全機関は、キシリトールを含むチューインガム/香錠および齲蝕のリスクの低下に関する健康主張の科学的正当化に関する見解を公表した。この主張は、100%のキシリトールを含有する加糖チューインガムおよび少なくとも56%のキシリトールを含む加糖香錠についての言及であった。キシリトールを含むチューインガムのみが小児の齲蝕のリスクを減少させ、この効果は、食後に1日少なくとも3回、2〜3gの加糖チューインガムを毎日摂取することに関係していることが明らかとなった。
【0017】
従って、キシリトールの現在の使用には、そのようなものとして、すなわち歯垢の細菌によって代謝されないため齲蝕プロセスの開始の原因となる酸の産生の起点になり得ない従来の(齲食原性)糖の代わりとして、その抗齲食原性効果が伴う。
【0018】
しかし、WHOによって推奨されている遊離糖類の毎日の摂取量は62〜94gであり、「過食」国での摂取量はその約3倍も多い場合があるが(カナダでは成人1人当たり1日220g)、従来の糖の代わりとしてのその使用は、10g等量の1日の最大摂取量によって制限されている。
【0019】
従来の糖の代わりとしてのその使用は、多くの製品に不向きなそのメントール風味によっても制限されている。
【0020】
さらに、チューインガムの形態、すなわち関連する咀嚼効果によってその作用を強化すると考えられている製剤でのキシリトールの摂取には非常に多くの限界があり、
●3歳未満の小児に対しては、この年齢層において窒息のリスクが高いことを考慮し、摂取を避けなければならず、
●量に関して容易に制御することができず、忠告される限界量を超え、それにより浸透圧性下痢のリスクを引き起こす可能性があり、
●胃食道および腸の病態を引き起こす場合があり、
●手順は意図的でなければならず、
●高価なため、そのような製品の摂取は全ての人が容易に利用できるものではなく、
●この手段によるキシリトールの利用は、非常に多くの添加剤、染料、保湿剤(E414、E222、E271など)を伴う。
【発明の概要】
【0021】
本発明は、これらの全ての欠点を改善する食品添加組成物に関する。本組成物は、齲蝕の出現を減少させる要素ならびに歯および歯の支持組織を強化する要素を含有する。本組成物は、デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤と再石灰化剤と防腐剤との間に相乗効果を有するという点で第1の態様において優れている。本組成物は、齲食原性遊離糖類またはそれらの誘導体を含有する加糖製品に組み込み、それにより、食習慣を全く変えることなく、歯および歯の支持組織を強化しながら齲蝕の出現を減少させることを目的としているという点で第2の態様において優れている。
【0022】
従って、本発明の主題は、a)デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤と、b)シリコンおよび/またはカルシウムを主成分とした再石灰化剤と、c)防腐剤とを含む食品添加組成物である。
【0023】
「食品添加組成物」とは、食品、すなわちエネルギーまたは栄養目的で生物(ヒトまたは動物)によって摂取される製品に添加することを目的とした組成物を意味する。
【0024】
本発明によれば、「デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤」とは、歯の表面に付着するミュータンス菌の数および/またはこれらの異なる連鎖球菌間の結合および/またはこのバイオフィルムを形成する多糖類の結合を減少させ、よって、バイオフィルムまたは歯垢の付着および/または発生を制限することができる薬剤を意味する。「デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤」という表現は、「デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤」の機能を個々に果たし得る以下の対応するリストに記載されているいくつかの薬剤の可能性のある混合物も含む。本発明に係る付着防止剤は、バイオフィルムを形成する細菌の代謝を妨害し、特に、歯の表面または歯周組織への付着および/またはコロニー形成のそれらのプロセスを妨害することによって作用する。デンタルバイオフィルムの付着を減少させるそのような薬剤を特定する多くの方法が存在する。例えば、固い土台または組織へのミュータンス菌の付着を評価する試験またはヒドロキシアパタイト上の歯垢の減少に着目することができる試験については、Bertrandら(Les cahiers de l'ADF、No.14〜15、2003年第2四半期)、Engels-Deutschら(Les cahiers de l'ADF、No.16〜17、2003年第3四半期)、または国際公開第97/38670号に記載されている。
【0025】
本発明によれば、「再石灰化剤」とは、歯の有機組織、特に、歯、エナメル、歯の骨および歯周組織、好ましくは歯の骨に、前記組織に同化可能な形態の鉱物を与えることができる薬剤を意味する。本発明に係る再石灰化剤は、少なくともシリコンおよび/またはカルシウムまたはそれらの誘導体のうちの少なくとも1種、例えば、特に有機シリカ(SiO)を含有する。「再石灰化剤」という表現は、「再石灰化剤」の機能を個々に果たし得る以下の対応するリストに記載されているいくつかの薬剤の可能性のある混合物も含む。
【0026】
本発明によれば、「防腐剤」とは、例えば細菌などの病原菌を破壊するかまたはそれらの増殖に対抗する任意の分子またはそのような分子を含有する抽出物を意味する。歯周病学では、そのような薬剤は、例えば、クロルヘキシジン、ヘキセチジン、フェノール類、第四級アンモニウム、酸化剤および植物抽出物であるが、これらに限定されない。「防腐剤」という表現は、個々に「防腐剤」の機能を発揮することができる以下の対応するリストに記載されているいくつかの薬剤の可能性のある混合物も含む。
【0027】
好ましい実施形態では、本発明に係る組成物は、完全に天然由来の成分からなる。
【0028】
この好ましい実施形態では、本発明に係る組成物のデンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤は、特に、ポリオール類、クランベリー、コーヒー、チコリ、茶またはブドウ、特にレーズンまたは赤ワインから選択することができる。デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤として機能するポリオール類は、特に、キシリトール、ソルビトール、マンニトールまたはエリスリトールなどの水素化単糖類;マルチトール、ラクチトール、水素化イソマルツロース(グルコピラノシル−1,6−ソルビトールおよびグルコピラノシル−1,1−マンニトールの等モル混合物)などの水素化二糖類;イヌリンから選択することができる。
【0029】
デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤は、好ましくはキシリトールであり、キシリトールは、例えばカバ樹皮から抽出することができる。上述したように、バイオフィルムの付着を減少させるこれらの薬剤のいくつかは、本発明に係る組成物に使用することができる。
【0030】
この好ましい実施形態では、本発明に係る組成物のシリコンを主成分とした再石灰化剤は、有利には、トクサ(その軸に約80%のシリカおよび植物全体に60%のシリカを含有するスギナ(学名:Equisetum arvense))、イシモ、アルファルファ、ダイズ、イラクサ、タケまたはシモツケなどの植物から抽出されたシリカを含有する植物由来の物質である。これらの植物は、当該植物全体またはその一部の乾燥粉末のホモジネートの形態のシリカを添加する再石灰化剤として、本発明の組成物の一部を直接形成することができる。同様に、植物由来のこの物質は、まず最初に植物全体またはその一部のホモジネートから液体の形態で得、次いで、乾燥して粉末を得てもよい。粉末を得るために、乾燥または凍結乾燥前に、様々な抽出方法(水蒸気蒸留、溶媒抽出、超音波抽出、圧搾、煎出、解離、温浸、圧搾、低温粉砕、アンフリュラージュ)、濾過(限外濾過、ナノ濾過)およびクロマトグラフィーなどの精製を使用して、再石灰化剤としての液体の形態のホモジネートを濃縮することができる。好ましくは、シリカを主成分としたこの再石灰化剤はトクサである。上述したように、これらの再石灰化剤のいくつかは、本発明に係る組成物に使用することができる。
【0031】
この好ましい実施形態では、本発明に係る組成物の防腐剤または抗菌剤は、有利には、セージ(学名:Salvia officinalis)、エキナセア、ミルラ、プロポリス、ラタニア(ratanhia
peruviana)、キンセンカ、ヤムイモ、カモミール、アロエベラ、アセロラ、サンギナリン、レモンまたはグレープフルーツなどの植物から抽出された物質である。これらの植物は、当該植物全体またはそれらの一部の乾燥粉末のホモジネートの形態の防腐添加シリカとして、本発明の組成物の一部を直接形成することができる。同様に、植物由来のこの物質は、まず最初に植物全体またはその一部のホモジネートから液体の形態で得、次いで、乾燥して粉末を得てもよい。粉末を得るために、乾燥または凍結乾燥前に、様々な抽出方法(水蒸気蒸留、溶媒抽出、超音波抽出、圧搾、煎出、解離、温浸、圧搾、低温粉砕、アンフリュラージュ)、濾過(限外濾過、ナノ濾過)およびクロマトグラフィーなどの精製を使用して、再石灰化剤としての液体の形態のホモジネートを濃縮することができる。好ましくは、本発明に係る組成物は、防腐剤としてセージを含有する。上述したように、これらの防腐剤のいくつかは、本発明に係る組成物に使用することができる。
【0032】
従って、この好ましい実施形態では、本発明に係る組成物は、
a)デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤は、キシリトール、ソルビトール、マンニトールおよびエリスリトールなどのポリオール類;マルチトール、ラクチトールおよび水素化イソマルツロースなどの水素化二糖類;クランベリー、コーヒー、チコリ、イヌリン、茶、ブドウ、レーズンおよび赤ワインからなる群から選択され、
b)シリコンを主成分とした再石灰化剤は、シリカ;トクサ、イシモ、アルファルファ、ダイズ、イラクサ、タケまたはシモツケなどの植物から抽出された植物由来の物質からなる群から選択され、
c)防腐剤は、セージ、エキナセア、ミルラ、プロポリス、ラタニア、キンセンカ、ヤムイモ、カモミール、アロエベラ、アセロラ、サンギナリン、レモンまたはグレープフルーツから選択される植物から抽出された物質である、
という特徴を有する。
【0033】
本発明に係る組成物は、歯の支持組織を強化する薬剤に加えて、好ましくは、アボカド油、月見草油、ルリヂサ油またはダイズ油などの植物油、あるいはオメガ3もしくは6を含有する動物油、特に脂肪の多い魚の油から特に選択される油を含有していてもよい。好ましくは、本発明に係る組成物は、歯の支持組織を強化する薬剤としてアボカド油を含有する。参考までに、アボカド油は、約42%〜63%のオレイン酸、17%〜29%のパルミチン酸、9%〜16%のリノール酸および1%未満のリノール酸、半分が20%の未同定の還元性ステロールおよびトリオールを含む分枝鎖炭化水素からなる1%〜2%の不鹸化物を含有する。
【0034】
この場合、本発明に係る組成物は、アボカド、月見草、ルリヂサまたはダイズの植物油、あるいはオメガ3もしくは6を含有する脂肪の多い魚の動物油から選択される歯の支持組織を強化する薬剤も含有することを特徴とする。
【0035】
特に好ましくは、本発明に係る組成物は、デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤としてのキシリトール、シリカを主成分とした再石灰化剤としてのトクサおよび防腐剤としてのセージを含有することを特徴とする。
【0036】
さらに、本発明に係る組成物は、歯の支持組織を強化する薬剤としてアボカド油も含有し得ることを特徴とする。
【0037】
第1の態様では、本発明に係る組成物は、デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤と、再石灰化剤と、防腐剤との間に相乗効果を有するという点で優れている。
【0038】
歯の病態の原因である細菌(ミュータンス菌)は、主要なエネルギー源として六炭糖を使用する。口腔内のミュータンス菌は、細菌壁のタンパク質成分である付着物によって歯の表面にコロニーを形成する。ミュータンス菌は、食品の糖を分解しかつ酸を生成することによるそのホモ発酵(homofermentary)型の代謝だけでなく、歯垢またはデンタルバイオフィルムを形成するために細菌の(歯の表面および互いに対する)付着に関与する多糖類を生成するその能力により、齲蝕プロセスの誘発および進行において重要な役割を果たす。
【0039】
研究によって、非常に低量のキシリトールで口腔内のミュータンス菌の代謝が妨害されることが分かっている。キシリトールは、フラクトースのホスホトランスフェラーゼ系によってミュータンス菌細胞内に輸送され、キシリトール5−リン酸にリン酸化されるが、キシリトール5−リン酸塩は発酵も代謝もされず、細胞内の液胞に蓄積されるため、ミュータンス菌の増殖が急速に阻害される。さらに、キシリトールの無益回路が形成され、それにより、細胞内外への進入および排出のそれぞれのためのキシリトールの連続したリン酸化および脱リン酸化によって間接的に細菌増殖を阻害してもよい。しかし、ミュータンス菌は、急速に適応し(約24時間)、かつキシリトールに対して耐性を示すようになる(それらはミュータンス菌XR(キシリトール非感受性菌)と呼ばれる)。この適応の間、ミュータンス菌XRは、その代謝経路の一部を修正し、このようにして透過酵素によってキシリトールが細胞に進入するのを可能にし、かつキシリトール5−リン酸へのリン酸化反応を不可能にし、よって、無益回路の誘発および細菌増殖に対するあらゆる阻害効果を防止する。このような適応によって、デンタルバイオフィルムの基質を形成する細胞外および細胞内多糖類を合成するミュータンス菌XRの能力に変化が生じる。その結果、このバイオフィルムの歯の表面に対する付着性が低下する。ミュータンス菌XRは親株よりも速い生殖能力を有するため、バイオフィルム中で優勢となり、このようにしてバイオフィルムの付着性および有毒性を次第に低下させる。
【0040】
本発明では、ポリオール類、特にキシリトールは、非齲食原性甘味料としてではなく、バイオフィルムの付着を減少させる薬剤として使用される。
【0041】
驚くべきことに、本発明の組成物では、上に定義したようなキシリトールと再石灰化剤および防腐剤との組み合わせによって相乗効果が生じ、齲蝕プロセスとの戦いにおいて、これらの成分の有益な効果が増加する。特定の理論に限定されたくはないが、付着を減少させる薬剤によるバイオフィルムの上述した不安定化によって、再石灰化剤および防腐剤が歯の表面および歯周組織に容易にアクセスし、それにより、それらの有益な作用が可能になるものと思われる。従って、本発明に係る組成物によって与えられるこのさらなる効果は、様々な成分の効果の単純な追加ではなく、デンタルバイオフィルムの付着を不安定にすることによって、歯および歯の支持組織を強化すると共に、齲蝕の出現を制限する効果の組み合わせである。
【0042】
第2の態様では、本発明に係る組成物は、齲食原性遊離糖類またはそれらの誘導体を含有する糖製品に組み込み、食習慣を全く変えることなく、歯および歯の支持組織を強化すると共に、齲蝕の出現を減少させることを目的としている点で優れている。
【0043】
齲食原性遊離糖類またはそれらの誘導体とは、ある食物(蜂蜜、シロップ、果汁)内に天然に存在するか、あるいは添加された、齲蝕プロセスを誘発する例えば、サッカロース、グルコースおよびフラクトースなどの精製したサトウキビ、ビートおよびトウモロコシの糖を含む全ての単糖類(単純な糖類)および二糖類(2種類の単糖類からなる糖類)およびそれらの誘導体を意味する。齲蝕プロセスを誘発し得る、オース(oses)ファミリー(アルドースおよびケトース)の上記に類似した糖類、例えば、それらのアノマーおよびエピマー、ならびに炭水化物のアルデヒドもしくはケトン基の還元によってオースから誘導されるポリオール類などの上記糖類の誘導体も本組成物に含まれる。
【0044】
完全に驚くべきことに、本発明の組成物が高い割合の齲食原性遊離糖類またはそれらの誘導体を含む製品に添加されると、本発明に係る組成物中のデンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤として使用されるキシリトールと再石灰化剤と防腐剤との間の上記相乗効果も働く。本発明に係る組成物は、歯ならびに歯肉および歯の骨などの歯の支持組織の周囲に有益な強化作用を与えると共に、それが組み込まれる糖製品の齲食原性作用を低下させる。
【0045】
本発明に係る組成物は、糖製品への組み込みを目的としている。本組成物は、歯肉および歯の骨の周囲に有益な強化作用を与えると共に、それが組み込まれる糖製品の齲食原性作用を低下少させる。
【0046】
このようにして、本発明に係る組成物は、齲食原性遊離糖類またはそれらの誘導体の吸収にも関わらず歯垢の組成および付着を低下させることによって、齲食原性遊離糖類またはそれらの誘導体のこの吸収にも関わらず齲蝕プロセスを低下させることによって、一般に認められている偏見を克服する。
【0047】
驚くべきことに、本発明に係る組成物は、齲食原性遊離糖類またはそれらの誘導体が本発明に係る組成物が添加される食品中に多く存在している場合でさえ、ポリオール類、特にキシリトールと、本発明に係る組成物が添加される食品中に存在する齲食原性遊離糖類またはそれらの誘導体との間の可能性のある競合作用を無視することができる。
【0048】
共働作用によって、デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤としてのポリオール類、特にキシリトールと、再石灰化剤および防腐剤との組み合わせで、歯垢の結合および付着の減少、再石灰化能力、ならびに歯、歯肉および歯の骨の洗浄が可能となる。
【0049】
ポリオール類、特にキシリトールによってバイオフィルムの付着を減少させる効果ならびに異なる成分の共働作用が認められ、従って、食品に添加される本発明に係る食品添加組成物の様々な成分を最終的な割合を少なくして使用することができる。特に、本発明に係る食品添加組成物に存在するキシリトールの量は、主に齲食原性遊離糖類またはそれらの誘導体を含有する食品中のそれらの最終的な割合が0.8%(w/w)を超えないような量である。
【0050】
従って、先行技術に提案されている解決法と比較して、本発明の主題である食品添加製品は、
●製造が容易かつ安価であり、
●完全に植物由来の天然の要素から製造することができ、
●それが添加される食品はその正常な糖含有量を保持し、
●それが添加される食品の加糖風味または触感を全く変化させず、
●ある割合のキシリトールの使用に特有のメントール風味を有さず、
●キシリトールの少ない摂取によって引き起こされる浸透圧性下痢のリスクを全く有さず、
●チューインガムの摂取に関係する胃食道および腸の病態のリスクを全く示さない、
という主な利点を有する。
【0051】
同時に、この食品添加組成物は、
●最年少を含む全ての年齢層に適し、
●生理的、心理的および社会的に糖の摂取に非常に志向した食習慣を変えず、
●非常に一般的な食品に組み込まれるため、取り入れのために意図的な手順を全く必要とせず、
●キシリトールの規則正しい摂取を保証し、
●費用の点で全ての人に利用可能である。
【0052】
さらに、本食品添加組成物によって、量および質的に糖の摂取に比例した予防が得られる。これは、本発明の組成物の成分によって得られる予防は全てより高く、特に本発明に係るこの組成物を含有する糖の摂取は繰り返しであり、多量であり、かつ高齲食原性能力(菓子類の粘着性糖)と共になされるからである。本発明の組成物を含有する糖の摂取がより規則正しく、かつ長期間に及ぶ程、糖はより粘着性となり、そのため、歯が本食品添加組成物の有益な成分により多く接触する。
【0053】
従って、本発明に係る食品添加組成物は、歯および歯の支持組織を強化すると共に、生まれたときからの、糖およびそれを含有する全ての製品への生理的、心理的に顕著な嗜好を有する人々の食習慣を変えることなく、デンタルバイオフィルムの不安定化によって齲蝕プロセスを低下させる。従って、本組成物は、正常な加糖製品へその添加によって、確立された食習慣から利益を得、かつ齲蝕プロセスを抑制する修復的な作用を及ぼすために、糖の破壊的な側面を利用することができる。
【0054】
本発明の主題である組成物は、特に、
a.デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤としての約79〜99重量部、好ましくは90〜96重量部のキシリトールと、
b.再石灰化剤としての約0.5〜19重量部、好ましくは2.5〜10重量部のシリカまたはトクサなどの植物由来のシリカ原料と、
c.約0.2〜2重量部、好ましくは0.4〜1重量部のセージなどの植物由来の防腐剤と、
を含む。
【0055】
また、本発明の主題である組成物は、約0.2〜2重量部、好ましくは0.4〜1重量部の歯の支持組織を強化する薬剤を含んでいてもよい。
【0056】
重量部とは、成分の質量の合計に対する成分の質量の割合に100を掛けたもの、つまり組成物全体における成分の質量百分率を意味する。
【0057】
上述したように、本発明に係る組成物は、糖製品への組み込みを目的としている。この点に関して、本組成物は、遊離糖類を含有する食品の齲食原性能力を減少させる薬剤として使用することができ、かつ歯の支持組織を強化する薬剤としても使用することができる。
【0058】
本発明に係る組成物は、食品添加物または食品添加組成物として、好ましくは少なくとも79重量%、好ましくは少なくとも85重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%のデンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤と、好ましくは少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも2.5重量%、さらにより好ましくは少なくとも10%のシリコンを主成分とした再石灰化剤と、少なくとも0.2重量%、好ましくは0.4重量%、さらにより好ましくは1%の防腐剤とを含有する。
【0059】
本組成物は、固体、例えば粉末または顆粒の形態で、あるいは、適切な液体担体と組み合わせた液体の形態で使用することができる。本組成物はゲルの形態でも使用することができる。本組成物は、すでに加糖された食品に、あるいは加糖したい食品にそれを組み込む前に糖自体に直接組み込むことができる。本組成物は、消費者が自分の選択した製品に即座に添加するための上に列挙したうちの1つの形態であってもよい。
【0060】
例えば、本発明に係る組成物は、有利には、サッカロースを含有する甘蔗糖(サトウキビ糖)またはテンサイ糖(ビート糖)、ラクトースを含有する乳糖、マルトースを含有する麦芽糖、フラクトースを含有する果糖、またはデキストロースおよびグルコースを含有するブドウ糖に添加することができる。
【0061】
齲食原性遊離糖類またはそれらの誘導体を含有する食品におけるデンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤としてのその使用のために、本発明に係る食品添加組成物によって、
a.デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤としての0.1重量%〜0.8重量%、好ましくは0.3重量%〜0.6重量%のキシリトール、
b.再石灰化剤としての0.005重量%〜0.02重量%、好ましくは0.01重量%〜0.02重量%のシリカまたはトクサなどの植物由来のシリカ原料、および
c.0.001重量%〜0.01重量%、好ましくは0.002重量%〜0.003重量%のセージなどの植物由来の防腐剤、
を前記食品に添加する。
【0062】
歯の支持組織の強化により特化した使用のために、本発明に係る食品添加組成物によって、齲食原性遊離糖類またはそれらの誘導体を含有する食品に、歯の支持組織を強化するための薬剤としての0.001重量%〜0.01重量%、好ましくは0.002重量%〜0.003重量%のアボカド油も添加する。
【0063】
本発明の別の主題は、齲食原性遊離糖類またはそれらの誘導体を含有する食品であり、本食品は、全て上に記載されている、a)デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤と、b)シリコンおよび/またはカルシウムを主成分とした再石灰化剤と、c)防腐剤とを、これらの組成物のそれぞれついて上に記載されている割合で、すなわち:
a.デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤としての約79〜99重量部、好ましくは90〜96重量部のキシリトールと、
b.再石灰化剤としての約0.5〜19重量部、好ましくは2.5〜10重量部のシリカまたはトクサなどの植物由来のシリカ原料と、
c.約0.2〜2重量部、好ましくは0.4〜1重量部のセージなどの植物由来の防腐剤と、
を含み、前記食品は、
a.デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤としての0.1重量%〜0.8重量%、好ましくは0.3重量%〜0.6重量%のキシリトールと、
b.再石灰化剤としての0.005重量%〜0.02重量%、好ましくは0.01重量%〜0.02重量%のシリカまたはトクサなどの植物由来のシリカ原料と、
c.0.001重量%〜0.01重量%、好ましくは0.002重量%〜0.003重量%のセージなどの植物由来の防腐剤と、
を含む。
【0064】
また、別の実施形態では、齲食原性遊離糖類またはそれらの誘導体を含有する本発明の主題である食品は、アボカド、月見草、ルリヂサまたはダイズの植物油、あるいはオメガ3もしくは6を含有する脂肪の多い魚の動物油から選択される0.001重量%〜0.01重量%、好ましくは0.002重量%〜0.003重量%の歯の支持組織を強化する薬剤を含んでいてもよい。
【0065】
食品におけるその使用のための上記割合は、本発明に係る添加組成物の各成分について、食品中の各成分の最終的な割合を表わしている。当然のことながら、この割合は、100gの固体の食品または該当する場合には100gの液体の当該成分の質量を反映している。当該液体の密度によれば、この液体100gは、100gの水の体積である100mlに近いが100mlとは異なる体積を有することができる。
【0066】
好ましくは前記食品は、遊離糖類として、サッカロース、グルコース、フラクトースまたは任意の齲食原性ポリオールを含有する。本食品は、特に、糖、カカオ製品またはチョコレートを主成分とした製品(例えば、チョコレート、チョコレートバーまたはチョコレートを主成分としたスプレッド)、チューインガム、ケーキまたは糖衣のための装飾的な製品などの菓子類;牛乳入りの飲み物、発酵または凝固させた乳製品、練乳、牛乳入りのデザートなどの牛乳製品;シャーベットまたはアイスクリーム;ジャム、ゼリー、マーマレード、果物を主成分としたスプレッド、糖果、果肉、ピューレ、果物またはココナッツミルクを主成分としたコーティング、果物を主成分としたデザートなどの果物を主成分とした製品;穀類および穀類を主成分とした製品;パンケーキおよびケーキなどのベーカリ製品;蜂蜜などの甘味料;乳児、幼児または幼い小児のため、あるいは医療またはダイエット用途を目的とした調製物;薬物のためのコーティング;果物もしくは野菜ジュース、花蜜、風味付けした水、ソーダ、コーヒーまたは代用品を主成分とした飲み物、茶または浸出液などの飲み物;健康食品、栄養補助食品;マスタードまたはケチャップなどの調味料;スープまたはブイヨン;調理済みまたは半調理済み料理;冷凍食品または複合食品から選択することができる。
【0067】
本発明に係る組成物は、製品の風味を全く変えることなく、特に、チョコレートまたは、より一般的にはチョコレート製品に組み込むことができる。
【0068】
チョコレートまたはチョコレート製品とは、任意のダークチョコレートまたはミルクチョコレートあるいはそのようなチョコレートを主成分とするか含有する、すなわちカカオマス、カカオ脂、糖、名祖のチョコレートの場合には牛乳、および場合によりダイズレシチンおよび/または他の植物性脂肪および/または香味料からなる任意の製品を意味する。チョコレートとは、ホワイトチョコレートまたはそのようなチョコレートを主成分とするか含有する、すなわちカカオ脂、牛乳、糖および場合によりダイズレシチンおよび/または他の植物性脂肪および/または香味料からなる任意の製品も意味する。この定義は、前記チョコレートまたはチョコレート製品がなし得る様々な形態、すなわち固体および液体も含む。
【0069】
前記チョコレートまたはチョコレート製品は、
a.デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤としての0.1重量%〜0.8重量%、好ましくは0.3重量%〜0.6重量%のキシリトールと、
b.再石灰化剤としての0.005重量%〜0.02重量%、好ましくは0.01重量%〜0.02重量%のシリカまたはトクサなどの植物由来のシリカ原料と、
c.0.001重量%〜0.01重量%、好ましくは0.002重量%〜0.003重量%のセージなどの植物由来の防腐剤と、
を含有することを特徴とする。
【0070】
さらに、前記チョコレートまたはチョコレート製品は、0.001重量%〜0.01重量%、好ましくは0.002重量%〜0.003重量%の歯の支持組織を強化する薬剤を含有していてもよい。
【0071】
従って、本発明の別の目的は、本食品添加組成物の先に述べた成分を組み込むことができるチョコレートの製造方法であって、以下の一連の工程:
a.デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤としてのキシリトール、再石灰化剤としてのトクサおよび防腐剤としてのセージの粉末を混合する工程、
b.好ましくは20μm以下の粒度分布が得られるまで工程a)で得られた混合物を粉砕する工程、
c.カカオペースト、糖および場合によりカカオ脂および粉ミルクを用いて、混練、微粒化、コンチングおよび調温操作を行う工程、
d.工程b)で得られた粉末状の混合物を工程c)の終了時に得られたチョコレートペーストに組み込む工程、
e.さらに、工程c)終了時に得られたチョコレートペーストにアボカド油を組み込む工程、および
f.工程d)で得られたチョコレート製品を鋳造または成形する工程、
を特徴とする方法である。
【0072】
上記方法の工程では、混練とは、糖、カカオペーストおよび場合によりカカオ脂および粉ミルクから均質なペーストを得ることを目的とした工程を意味する。この工程は、パグミルで行う。得られたペーストは、その後の微粒化操作に適した特有の質感を有していなければならない。糖の粒度分布の選択、およびさらに脂肪含有量によってこれを調整することができる。
【0073】
微粒化とは、粒子の大きさを25ミクロン未満に減少させるために、鋼製円筒体の間での混練からの排出および得られたペーストの圧延からなる工程を意味する。この操作によって、最初のペーストを微粉に変える。
【0074】
コンチングとは、風味を改良し、かつチョコレートの流動学的特性を向上させるために必須の工程を意味する。この工程は、数時間から数日まで持続する場合もある。微粒化した粉末は、ダークチョコレートの場合は約75℃〜80℃、ホワイトおよびミルクチョコレートでは約65℃の高温で混合する。
【0075】
調温とは、安定な形態でカカオ脂を結晶化させることを目的とした工程を意味する。このために、チョコレートペーストを約29℃の温度まで下げる。
【0076】
鋳造または成形とは、チョコレートの所望の形状または模様を得るための工程を意味する。後者は、型に直接注入する。これはチョコレートの成形である。この時点でさらなる成分を添加してもよい。型およびチョコレートは、型にチョコレートを分配する「tapoteuse」(調温機(tapper))と呼ばれる機械を通過する。最後に、チョコレートは、即座にそれを冷却する冷蔵トンネルを通過する。
【0077】
上に説明したように、本発明に係る組成物が添加された任意の加糖食品、例えば、チョコレートまたはチョコレート製品は、歯科衛生のために有益な要素を含有し、特に、齲蝕の出現を制限しかつ歯、歯肉および歯の骨を強化する製品として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0078】
実施例1:糖に添加する組成物
【0079】
本発明に係る組成物は、例えば、糖への組み込みを目的としている場合、好ましくは、デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤としてのキシリトール、シリカ原料としてのトクサおよび防腐剤としてのセージを含有する。
【表1】

【0080】
実施例2:チョコレートに添加する組成物
【0081】
本発明に係る組成物は、例えば、チョコレートまたはチョコレート製品への組み込みを目的としている場合、好ましくは、デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤としてのキシリトール、再石灰化剤としてのシリカ原料としてのトクサ、防腐剤としてのセージおよび場合により歯の支持組織を強化する薬剤としてのアボカド油を含有する。
【0082】
好ましくは、その割合は以下の通りである:
【表2】

【0083】
例えば、本発明に係る食品添加組成物および上記表に示す割合を含むチョコレートまたはチョコレート製品を製造するために、キシリトールおよびトクサおよびセージの粉末は、それらがチョコレートと混合される場合に口の中で認識不可能となるように、20ミクロンの粒度分布まで粉砕しなければならない。
【0084】
次いで、混練、微粒化、コンチング、調温、添加組成物の組み込み、成形工程をこの順序で実施する。
【0085】
混練、微粒化、コンチング、調温および成形の工程については、本明細書において上に定義されており、チョコレートおよびチョコレート製品の製造を専門とする当業者に良く知られている。本発明は、従来のチョコレート製造プロセスにおいて、調温工程後に本発明に係る食品添加組成物を組み込む工程を追加することを提案している。
【0086】
本発明に係る食品添加組成物を組み込む工程で必要とされる温度(サッカロースのために80℃)によって、様々な製品の構造および有効性が損われる場合があるため、本添加組成物の導入はコンチングの前に行ってはならない。これは、高温ではトクサのケイ酸の重合およびセージおよびアボカド油の有効成分の損傷が生じる場合があるからである。
【0087】
そのコンチング温度がより低いため、キシリトールは、混練段階の間にサッカロース(または選択された甘味料)と一緒に導入してはならない。このような温度の上昇によって、キシリトールの結晶の融解による結晶状態の崩壊が生じる場合がある。
【0088】
一例として、本発明に係る食品添加組成物を含有する1kgのダークチョコレートを製造した。生のチョコレートペーストを得るための成分の混合工程でもある混練工程のために、300gのカカオ、400gのカカオ脂および300の糖を混合した。粒子の大きさを25ミクロン未満に減少させ、かつ非常により細かくかつより柔軟なペーストを得るための以下の粉砕または微粒化工程を、鋼製円筒体の間での混練からの排出時に得られたペーストを圧延することによって行った。コンチング工程は、80℃で24時間、回転コンチェで行った。この段階において、必要とされる流動性に従ってバターまたはレシチンを必要に応じて添加することができる。調温工程は、一定の撹拌下で、混合物の温度を10分で約50℃から18℃に減少させることによって行った。29℃の温度を達成するために、混合物を再加熱する前にこの温度を10分間一定に維持した。この再加熱工程の間に、先の表に示す割合でさらに調製しかつ20ミクロン未満の粒度分布に粉砕した食品添加組成物を組み込んだ。すなわち、混合しかつ25ミクロン未満の粒度分布に粉砕した5gのキシリトール+トクサから抽出された200mgのシリカ+20mgのセージを、温度を29℃に一定に維持しながら均一かつ全体的な組み込みがなされるまで、上記再加熱段階の間に一定の撹拌下で徐々に組み込んだ。この同じ温度で、29℃で温度を一定に維持しながら、20μlのアボカド油を添加した。成形工程は、バー状のチョコレートを得るために、型にチョコレートを分配するための振動機械およびそれを即座に冷却するために冷蔵トンネルを用いて行った。また、一例として、1kgのミルクチョコレートを、同じ手順に従うが、混練工程の間に100gのカカオ+20gのカカオ脂+500の糖+200gの粉ミルクを用いて製造した。
【0089】
実施例3:生体外でデンタルバイオフィルムの付着の減少を研究するためのモデル
【0090】
生体外においてデンタルバイオフィルムの付着の減少を測定するために使用する研究モデルは、いくつかの特許(フランス特許第05/00427号、第06/00578号、第07/50891号、第07/55344号)によって保護されている、BioFilm Control社の特許技術であるバイオフィルムリング試験(BioFilm
Ring Test)である。
【0091】
この試験は、
●試験する微生物(ミュータンス菌)の培地に添加する磁化可能なマイクロボールと、
●96個の磁石の上で試験するように96ウエルプレートが正確に配置されている試験用ブロック(block test)(その後、マイクロボールは、バイオフィルムがそれらを固定化(スポットなし)しない限り、ウェルの底に引き寄せられ、スポットを形成する)と、
●磁化の前後で96ウエルプレートをスキャンするリーダーと、
●マイクロボールのスポットを検出したか否かのために96ウエルプレートのウェルの底の画像を分析するBioFilm Elements(登録商標)ソフトウェアと、
を使用する。
【0092】
この技術は、Chavant
et al., J. Microbiol. Meth 68 (2007) 605-612にも記載されている。
【0093】
生体外における異なる濃度のキシリトールの存在下でのミュータンス菌のバイオフィルムの付着の減少の測定
【0094】
ミュータンス菌のバイオフィルムを、ポリスチレンマイクロプレートの様々なウェル中のBHI培地に形成する。播種するウェルの数は、試験する実験条件によって決まる。各実験条件は、3通り、すなわち3つの独立したウェルにおいて試験する。
【0095】
マイクロプレート内で培養物を調製するために、ミュータンス菌細菌をペトリ皿に広げる。単離したクローンから、37℃およびpH6またはpH7でLuria Broth(LB)培地において一晩の前培養(18時間)を行う。次いで、前培養の光学濃度(OD)を測定し、ODを1に調整した後、サーモスタットで制御されている培地において250倍に希釈する。十分な量の磁気ボールを希釈液に添加する(1ウェルにつき約2μl)。前培養物の希釈液によって、実験条件を測定することを目的としたマイクロプレート内の様々なウェルに播種することができる。参照ウェルには播種しない。
【0096】
200μlの希釈した前培養物によるウェルの播種後に、ミュータンス菌のバイオフィルムの付着に対するキシリトールの効果を測定するために、様々な培養条件を試験する。キシリトールの非存在下(0)での同じバイオフィルムの付着と比較して、バイオフィルムの付着に対する0.05〜5%w/v(g/100ml)、特に0.1、0.2、0.4、0.8および5%w/v(g/100ml)のいくつかのキシリトール濃度の効果を、37℃(pH6〜7)での2〜48時間のインキュベーション時間後に測定する。
【0097】
Chavant et
al., J. Microbiol. Meth 68 (2007) 605-612に記載されているように、各ウェルの底における磁気ボールのマイクロスポットの形成の有無の測定によって、付着した細菌および/またはバイオフィルムの存在の有無が明らかになる。そのような付着した細菌は、各ウェルの下に配置された磁石の方向への磁気ボールの循環を防止し、その結果、これらのウェルの底におけるボールのマイクロスポットの形成を防止する。他方、キシリトールによるこれらの細菌の付着の減少によって、磁気ボールの循環およびボールのマイクロスポットの形成が可能となる。
【0098】
また、キシリトールの存在下でのバイオフィルムの幾分顕著な非構造化の測定を、磁気マイクロボールの存在下で2〜48時間のインキュベーション後に上述のように形成されたバイオフィルムの撹拌によって評価してもよい。この撹拌は、ボルテックスによって各試験マイクロプレートに対して標準化する。撹拌中の培地の移動によって生じる剪断によって、バイオフィルムのマトリックスの抵抗性の減少に関係するマイクロボールの再可動化と、それによって、マイクロボールの解放によるバイオフィルムの幾分顕著な非構造化の記録および各ウェルの底におけるその観察の有無が可能となる。つまり、これらの研究によって、様々な実験条件下でのバイオフィルムの撹拌に対する抵抗性を定量化することができる。
【0099】
従って、これらの研究によって、ミュータンス菌のバイオフィルムの付着を減少させるキシリトールの最小有効量(MED)をこの生体外モデルにおいて決定することができる。
【0100】
生体外における異なる濃度のサッカロースまたはグルコースの存在下での異なる濃度のキシリトールにおけるミュータンス菌のバイオフィルムの付着の減少の測定
【0101】
ポリスチレンマイクロプレートの様々なウェルにおけるミュータンス菌のバイオフィルムの形成および播種手順は、上の段落に示す手順と同じである。
【0102】
以下の実験条件によって、キシリトールによるバイオフィルムの付着の減少に対する異なる濃度のサッカロースの影響を測定することができる。サッカロースまたはグルコースの非存在下(0)での同じ濃度のキシリトールにおける同じバイオフィルムの付着の減少と比較して、37℃(pH6〜7)で2〜48時間のインキュベーション後に、キシリトールの濃度によるバイオフィルムの付着の減少に対するいくつかのサッカロースまたはグルコース濃度(0〜20%w/v(g/100ml)、特に、0、5、10、15および20%)の効果を測定する。
【0103】
先に記載したように0.05〜5%w/v(g/100ml)、特に0.1、0.2、0.4、0.8および5%w/v(g/100ml))の濃度のキシリトールに対するサッカロースまたはグルコースの効果を試験し、バイオフィルムの付着を減少させるキシリトールのMEDを決定する。
【0104】
これらの様々な各量のサッカロースまたはグルコースおよびキシリトールによって、異なる比の「サッカロース/キシリトール」または「グルコース/キシリトール」濃度について、ミュータンス菌のバイオフィルムの付着の減少を測定することができる。
【0105】
また、上述したように、磁気マイクロボールの存在下で2〜48時間のインキュベーション時間後に上記のように形成されたバイオフィルムの撹拌によって、キシリトールおよびサッカロースまたはグルコースの存在下でのバイオフィルムの幾分顕著な非構造化の測定を評価してもよい。この撹拌は、ボルテックスによって各試験マイクロプレートのために標準化する。撹拌中の培地の移動によって生じる剪断によって、バイオフィルムのマトリックスの抵抗性の減少に関係するマイクロボールの再可動化、従って、マイクロボールの解放によるバイオフィルムの幾分顕著な非構造化の記録および各ウェルの底におけるその観察の有無が可能となる。これらの研究によって、様々な実験条件下でのバイオフィルムの撹拌に対する抵抗性を定量化することができる。
【0106】
アクリジンオレンジによるバイオフィルムの標識および生体外におけるキシリトールによるバイオフィルムの付着の減少後に上昇した「支持体接近(support approach)」効果のシミュレーション
【0107】
共焦点顕微鏡法でトレース可能なセル構造およびバイオフィルムを標識するその特質で知られている蛍光マーカー(特にアクリジンオレンジ)を用いて、様々な実験条件下でバイオフィルムのマトリックスにおけるこの蛍光マーカーの浸透を観察し、従って、その付着の減少と同義であるバイオフィルムの非構造化をこれらの条件下で観察することができる。様々な実験条件下でのアクリジンオレンジによるバイオフィルムの標識は、バイオフィルムのこの非構造化に比例するであろう。
【0108】
これらの実験条件は、サッカロースまたはグルコースおよびキシリトールの非存在下での条件と比較して、37℃(pH6〜7)で2〜48時間のインキュベーションの細胞のインキュベーション時間後に、0.05〜5%w/v(g/100ml)、特に0.1、0.2、0.4、0.8および5%w/v(g/100ml)の濃度のキシリトールの存在下でのいくつかのサッカロースまたはグルコース濃度(0〜20%w/v(g/100ml)、特に0、5、10、15および20%)の使用を含む。
【0109】
例えば、所定の時間にわたってインキュベートし、次いでリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄した細胞に対して、5〜100g/mlの従来の濃度のアクリジンオレンジ溶液を用いてアクリジンオレンジによる標識を5分間行う。標識をおよびPBSによる洗浄後に、共焦点顕微鏡(Zeiss LSM 510 Meta倒立顕微鏡)を用いてバイオフィルムを観察し、好適なソフトウェアを用いて標識の定量化を行う。
【0110】
従って、この手法を用いてキシリトールによるバイオフィルムの非構造化を観察し、よって、このバイオフィルムが固定されている支持体に接近可能な植物の有効成分と比較して、そのより大きな浸透性を実証することができる。従って、この手法によって、付着が減少したミュータンス菌のバイオフィルムによって植物の有効成分による支持体への接近の測定をシミュレーションすることができる。
【0111】
クリスタルバイオレットによる着色試験を用いた生体外における追加測定
【0112】
Musk et al.
Chem. Biol. 12 (2005) 789-796に公開されている試験から導き出されたこの試験は、洗浄、標識、脱色および着色されたバイオフィルムの酢酸による溶解の連続した工程後にそれらによって組み込まれたクリスタルバイオレットを測定することによって、例えばバイオフィルム中の付着した細菌を定量化することができる比色試験である。
【0113】
従って、例えば、キシリトール、サッカロースおよび/または植物の有効成分の存在下において特定の実験条件下で増殖するように設定されたバイオフィルムの標準化された水洗手順を用いて、これらのバイオフィルムの撹拌に対する抵抗性と、従って、上の段落に記載されている様々な実験条件下でのこれらの幾分顕著な非構造化を、キシリトールおよびサッカロースまたはグルコースを用いて比較することができる。
【0114】
従来より、この試験は、マイクロプレートウェルにおいて最低48時間の細菌のインキュベーションを必要とする。次いで、ウェルをマイクロプレート洗浄機の水噴射で洗浄し、それによりバイオフィルムの強度を試験することができる。次いで、それらをクリスタルバイオレット溶液で着色する。一例として、標識は、0.1%v/v水溶液によって45分間行うことができるがこれに限定されない。過剰な標識を除去するためにウェルを水ですすぐ。次いで、様々なウェル中の残りの着色された細菌を酢酸溶液で溶解する。一例として、この溶液は33%v/v氷酢酸溶液であってもよいが、これに限定されない。溶解後、各ウェルにおいて回収された溶液の光学濃度を540nmで測定する。
【0115】
得られた値は、水洗に抵抗した付着細菌の数に比例している。従って、これらの値によって、異なる実験条件下でのバイオフィルムの抵抗性を定量化することができる。
【0116】
生体外における植物の有効成分およびその相乗効果の存在下でのキシリトールによるバイオフィルムの付着の減少の測定
【0117】
バイオフィルムの付着の減少に対するトクサおよびセージ由来の植物の有効成分の効果を、以前から使用されている様々な試験および手法の実験条件下でこれらを添加することによって測定する。従って、これらの様々な試験によって、バイオフィルムの付着の減少とは別に、それらの存在下でのその撹拌に対する抵抗性を測定することができる。対応する段落で説明したように、アクリジンオレンジによるバイオフィルムの標識に関して、この試験によって、付着が減少したミュータンス菌のバイオフィルムによって、これらの植物の有効成分による支持体への接近の測定を観察およびシミュレーションすることができる。
【0118】
これらの様々な試験によって、ミュータンス菌のバイオフィルムについての付着の減少に対する、特にトクサおよびセージ由来の植物の有効成分とキシリトールとの相乗効果を測定することをできる。
【0119】
参考文献:
Bertrand et al.
Les cahiers de l'ADF, No. 14-15, 2nd quarter 2003.
Chavant et al.,
J. Microbiol. Meth 68 (2007) 605-612.
Engels-Deutsch
et al. Les cahiers de l'ADF, No. 16-17, 3rd quarter 2003,
Musk et al.
Chem. Biol. 12 (2005) 789-796.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤と、
b)シリコンおよび/またはカルシウムを主成分とした再石灰化剤と、
c)防腐剤と、
を含むことを特徴とする食品添加組成物。
【請求項2】
a)前記デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤は、キシリトール、ソルビトール、マンニトールおよびエリスリトールなどのポリオール類ならびにマルチトール、ラクチトールおよび水素化イソマルツロースなどの水素化二糖類;クランベリー、コーヒー、チコリ、イヌリン、茶、ブドウ、レーズン、赤ワインからなる群から選択され、
b)前記シリコンを主成分とした再石灰化剤は、シリカ;トクサ、イシモ、アルファルファ、ダイズ、イラクサ、タケまたはシモツケなどの植物から抽出された植物由来の物質からなる群から選択され、
c)前記防腐剤は、セージ、エキナセア、ミルラ、プロポリス、ラタニア(ratanhia peruviana)、キンセンカ、ヤムイモ、カモミール、アロエベラ、アセロラ、サンギナリン、レモンまたはグレープフルーツから選択される植物から抽出された物質である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アボカド、月見草、ルリヂサまたはダイズの植物油あるいはオメガ3もしくは6を含有する脂肪の多い魚の動物油から選択される歯の支持組織を強化する薬剤も含有することを特徴とする、前記請求項に記載の組成物。
【請求項4】
デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤としてのキシリトールと、シリカを主成分とする再石灰化剤としてのトクサと、防腐剤としてのセージとを含有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
歯の支持組織を強化する薬剤としてアボカド油も含有することを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
a.デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤としての約79〜99重量部、好ましくは90〜96重量部のキシリトールと、
b.再石灰化剤としての約0.5〜19重量部、好ましくは2.5〜10重量部のシリカおよびトクサなどの植物由来のシリカ原料と、
c.約0.2〜2重量部、好ましくは0.4〜1重量部のセージなどの植物由来の防腐剤と、
を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
約0.2〜2重量部、好ましくは0.4〜1重量部の歯の支持組織を強化する薬剤も含むことを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
齲食原性遊離糖類またはそれらの誘導体を含有する食品におけるその使用のための組成物であって、前記食品に、
a.デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤としての0.1重量%〜0.8重量%、好ましくは0.3重量%〜0.6重量%のキシリトールと、
b.再石灰化剤としての0.005重量%〜0.02重量%、好ましくは0.01重量%〜0.02重量%のシリカまたはトクサなどの植物由来のシリカ原料と、
c.0.001重量%〜0.01重量%、好ましくは0.002重量%〜0.003重量%のセージなどの植物由来の防腐剤と、
を添加することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
齲食原性遊離糖類またはそれらの誘導体を含有する前記食品に、歯の支持組織を強化する薬剤としての0.001重量%〜0.01重量%、好ましくは0.02重量%〜0.003重量%のアボカド油も添加することを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物の要素a)、b)およびc)を含むことを特徴とする、齲食原性遊離糖類またはそれらの誘導体を含有する食品。
【請求項11】
アボカド、月見草、ルリヂサまたはダイズの植物油あるいはオメガ3もしくは6を含有する脂肪の多い魚の動物油から選択される0.001重量%〜0.01重量%、好ましくは0.002重量%〜0.003重量%の歯の支持組織を強化する薬剤も含むことを特徴とする、請求項10に記載の食品。
【請求項12】
糖、カカオ製品またはチョコレートを主成分とした製品(例えば、チョコレート、チョコレートバーまたはチョコレートを主成分としたスプレッド)、チューインガム、ケーキまたは糖衣のための装飾的な製品などの菓子類;牛乳入りの飲み物、発酵または凝固させた牛乳製品、練乳、牛乳入りのデザートなどの牛乳製品;シャーベットまたはアイスクリーム;ジャム、ゼリー、マーマレード、果物を主成分としたスプレッド、糖果、果肉、ピューレ、果物またはココナッツミルクを主成分としたコーティング、果物を主成分としたデザートなどの果物を主成分とした製品;穀類および穀類を主成分とした製品;パンケーキおよびケーキなどのベーカリ製品;蜂蜜などの甘味料;乳児、幼児または幼い小児のため、あるいは医療またはダイエット用途を目的とした調製物;薬物のためのコーティング;果物もしくは野菜ジュース、花蜜、風味付けした水、ソーダ、コーヒーまたは代用品を主成分とした飲み物、茶または浸出液などの飲み物;健康食品;栄養補助食品;マスタードまたはケチャップなどの調味料;スープおよびブイヨン;調理済みまたは半調理済み料理;冷凍食品または複合食品から選択される、請求項10および11に記載の食品。
【請求項13】
a.デンタルバイオフィルムの付着を減少させる薬剤としての0.1重量%〜0.8重量%、好ましくは0.3重量%〜0.6重量%のキシリトールと、
b.再石灰化剤としての0.005重量%〜0.02重量%、好ましくは0.01重量%〜0.02重量%のシリカまたはトクサなどの植物由来のシリカ原料と、
c.0.001重量%〜0.01重量%、好ましくは0.002重量%〜0.003重量%のセージなどの植物由来の防腐剤と、
を含有することを特徴とする、チョコレートまたはチョコレート製品。
【請求項14】
歯の支持組織を強化するための薬剤としての0.001重量%〜0.01重量%、好ましくは0.002重量%〜0.003重量%のアボカド油も含有することを特徴とする、請求項13に記載のチョコレートまたはチョコレート製品。
【請求項15】
以下の一連の工程:
a.キシリトール、トクサおよびセージの粉末を混合する工程、
b.好ましくは20μm以下の粒度分布が得られるまで工程a)で得られた前記混合物を粉砕する工程、
c.カカオペースト、糖および場合によりカカオ脂および粉ミルクを用いて混練、微粒化、コンチングおよび調温の操作を行う工程、
d.工程c)の終了後に得られた前記チョコレートペーストに工程b)で得られた前記粉末状の混合物を組み込む工程、
e.さらに、工程c)の終了後に得られた前記チョコレートペーストにアボカド油を組み込む工程、
f.工程d)で得られた前記チョコレート製品を鋳造または成形する工程、
を含むことを特徴とする、請求項13または14に記載のチョコレートの製造方法。

【公表番号】特表2012−517233(P2012−517233A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549535(P2011−549535)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051533
【国際公開番号】WO2010/092034
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(511195471)
【Fターム(参考)】