説明

加速度判定装置及びプログラム

【課題】 複数のセンサで測定された加速度のうち、車両の実加速度を精度よく表す加速度情報を選択することができる加速度判定装置を提供する。
【解決手段】 車両挙動に異常な状態が生じているか否かを判定する処理と、車両挙動に異常な状態が生じていると判定したときに、加速度センサ15で測定された車両の第1加速度と、車速センサ21で測定された車速を演算して求めた第2加速度との差が第1しきい値以上であるか否かを判定する処理と、第1加速度と第2加速度との差が第1しきい値以上であるときに第1加速度を車両の実加速度として記憶部174に記憶させる処理とを実行する制御部17を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセンサで測定された車両の加速度のうち、精度のよい加速度を判定する加速度判定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の加速度を検出し、この検出値に基づいた車両の各種制御が行われている。また、検出した加速度に基づいて車両の挙動を把握し、ドライバに安全な運転操作を指導する等の技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
車両の加速度の算出は、車速センサの出力に基づき演算して求めるのが一般的である。
車速センサは、車両の車軸の回転数に比例した電気的なパルスを出力する。例えば、歯車を車軸に取り付けて、磁気センサでその歯車の回転を検出したり、予め歯車の歯を磁化しておいて、コイルによる電磁誘導で回転を検出する。そして、その出力をパルス整形することにより、車軸の回転数に比例した電気的なパルスを得ることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2007−163472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら急ブレーキや急ハンドル等の操作がなされると、タイヤがロックし、タイヤや車軸の正確な回転を検出することができない。従って、車速センサにより算出した車速は車両の速度を正確には表せない場合がある。
また、ABS装置を備えた車両においては、ブレーキ圧を低減させることによりタイヤロックを防止しているが、ABS装置の作動中も車軸の回転数から正確に車速を検出することはできない。
なお、ABSとは、アンチロックブレーキシステム(Antilock Brake System)を表す。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、複数のセンサで測定された加速度のうち、車両の実加速度を精度よく表す加速度情報を選択することができる加速度判定装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために本明細書の開示では、車両の挙動に異常な状態が生じているか否かを判定する第1判定手段と、前記第1判定手段で前記車両の挙動に異常な状態が生じていると判定したときに、前記車両に搭載されている加速度センサで測定された前記車両の第1加速度と、前記車両に搭載されている車速センサで測定された車速を演算して求めた前記車両の第2加速度との差が第1しきい値以上であるか否かを判定する第2判定手段と、前記第1加速度と前記第2加速度との差が前記第1しきい値以上であるときに、前記第1加速度を前記車両の実加速度として記憶手段に記憶させる記憶処理手段とを有している。
車両の挙動が異常を示しており、車両の第1加速度と車両第2加速度との差が第1しきい値以上ある場合に、加速度センサで測定された車両の第1加速度を選択することにより、車両の実加速度を精度よく表す加速度情報を選択することができる。
【発明の効果】
【0008】
本明細書に開示の加速度判定装置及びプログラムによれば、複数のセンサで測定された加速度のうち、車両の実加速度を精度よく表す加速度情報を選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例を説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、図1を参照しながら本実施例の構成を説明する。
図1には、車両1に搭載された車載器10の構成と、車載器10と車両1側の機器との接続構成とを示す。
なお、本実施例では車載器10をナビゲーション装置として説明するが、車載器10はナビゲーション装置に限定されるものではない。例えば、専用装置として車載器10を車両1に搭載してもよい。
【0011】
車載器10は、GPS(Global Positioning System)情報受信部11と、時計部12と、ディスプレイ13と、操作部14と、加速度センサ15と、加速度変換部16と、制御部17とを有している。
また、車載器10は、例えば、CAN(Controller Area Network)のプロトコルに従って通信を行うECU101、102とCANネットワーク100を介して接続されている。なお、ECU101、102は、車両1に搭載された電子制御装置(Electronic Control Unit)である。また、図1には、CANネットワーク100に接続されたECUとして、ECU101とECU102とを図示しているが、CANネットワーク100にはさらに複数のECUが接続されていても構わない。
【0012】
GPS情報受信部11は、不図示のGPSアンテナ及びチューナ部を有し、衛星からのGPS信号を受信する。GPSアンテナは、例えば、車両1のダッシュボード上に配置されたり、又はフロントガラスの車室内側に貼り付けられている。
GPS情報受信部11で受信したGPS信号は、制御部17に出力され、制御部17でGPS信号に基づいて車両1の現在位置が割り出される。
【0013】
時計部12は、時間を計時し、計時した時刻情報を制御部17に出力する。
【0014】
ディスプレイ13には、車両1の搭乗者に通知する情報が表示される。例えば、車両の現在位置付近の地図情報や、この地図情報に重ねて表示される目的地までの誘導経路情報などが表示される。
【0015】
操作部14は、車両1の搭乗者からの操作入力を受け付ける。例えば、目的地の設定や、ナビゲーションの設定などがこの操作部14から入力される。
【0016】
加速度センサ15は、車載器10に搭載されており、車両1の加速度を測定する。以下では、加速度センサ15で測定された加速度を第1加速度と呼ぶ。加速度センサ15には、ピエゾ抵抗型、静電容量型などの一般的なセンサを用いることができる。加速度センサ15は、車両1の前後方向及び左右方向の加速度を測定する2軸のセンサである。なお、本実施例では加速度センサ15を車載器10側に設けているが、車両1側に設けてもよい。
【0017】
加速度変換部16は、車両1側に設けられた車速センサ21によって測定される車速を入力して、これを加速度に変換する(以下では、この加速度を第2加速度と呼ぶ)。加速度変換部16は、入力した車速を微分して第2加速度を求める。算出した第2加速度は制御部17に出力される。
【0018】
図2には、制御部17の詳細な構成を示す。
図2に示すように制御部17は、入出力部171、グラフィックインターフェース172、入力インターフェース173、記憶部174、RAM175、CPU176を有している。なお、CPU176は、中央処理装置(Central Processing Unit)を表す。また、RAMは、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory)を表す。
【0019】
入出力部171は、CANネットワーク100に接続し、CANネットワーク100に接続された他のECU101、102から送信されるデータの受信処理を行う。受信したデータは、入出力部171からCPU176に出力される。
また入出力部171は、CPU176から出力されたデータをCANネットワーク100上の他のECU101、102に送信する。
【0020】
グラフィックインターフェース172は、CPU176で処理された画像をディスプレイ13に表示させるためのインターフェースであり、ディスプレイ13に表示するグラフィックデータを波形電気信号に変換する。
【0021】
入力インターフェース173は、信号の入力部である。図2に示すようにGPS情報受信部11、時計部12、操作部14、加速度センサ15、加速度変換部16の出力信号が入力インターフェース173から制御部17に入力される。
また、入力インターフェース173は、車両1に設けられたセンサから出力されるセンサ信号やスイッチの状態を表す信号(以下、SW信号と呼ぶ)を入力する。
例えば、車速センサ21で測定された車速、シフトポジションセンサ24で測定されたシフトレバーのシフト位置などがセンサ信号として入力される。
また、ABS_ECU22がABS制御を行っているときに出力されるABS信号(動作信号)や、ブレーキスイッチ(以下、ブレーキSWと略記する)23から出力されるブレーキ信号が入力される。
ABS_ECU22は、制動時に車輪がロック傾向となったことを検出すると、車輪のブレーキ力を弱める制御を行ってロック傾向を解消する。その後再びブレーキ力が大きくなるように制御することで車両1の操縦性を安定させ、制動距離ができるだけ短くなるようにブレーキ制御を行う。ABS_ECU22がこのブレーキ制御を行っているときにはABS信号が制御部17に入力される。なお、本実施例では、ABS_ECU22からのABS信号を直接制御部17に入力する構成を採っているが、ABS信号をCAN通信によって制御部17に入力するように構成してもよい。
また、ブレーキ信号は、ブレーキペダルが踏み込まれたときにブレーキSW23から出力される信号である。
【0022】
記憶部174は、不揮発性の記憶装置であり、例えば、CPU176が制御に使用するプログラムや、ナビゲーションのための地図情報などが記憶されている。
制御部17は、記憶部174に記憶されたプログラムを記憶部174から読み出し、読み出したプログラムに従って処理を実行する。処理の詳細についてはフローチャートを参照しながら後ほど詳述する。
また、記憶部174には、GPS情報受信部11で受信したGPS信号に基づいて割り出された車両1の現在位置情報(緯度、経度情報)が記憶される。
さらに、加速度センサ15で測定された第1加速度、車速センサ21で測定された車速や、この車速から求めた第2加速度などが記憶部174に記憶される。
【0023】
RAM175は、CPU176が演算結果のデータや演算途中のデータを書き込む作業用メモリとして利用される。
CPU176は、記憶部174に記録されている制御プログラムや地図情報に基づいて、各種の処理を実行する。
【0024】
図3には、時刻情報と、現在位置情報(緯度経度情報)と、車速と、前後方向加速度(第1加速度)と、左右方向加速度(第1加速度)との収集周期と、分解能とを示す。
時計部12で計時される時刻情報を制御部17に取り込む周期は1.0[sec]であり、分解能は1[sec]である。また、GPS情報受信部11により受信したGPS信号を制御部17に取り込む周期は1.0[sec]であり、分解能は0.1[sec]である。また、車速センサ21で測定される車速を制御部17に取り込む周期は0.1[sec]であり、分解能は0.1[m/s]である。また、加速度センサ15で測定される第1加速度を制御部17に取り込む周期は0.1[sec]であり、分解能は0.01[G]である。なお、ここに示す収集周期はこの値に限定されものではない。
【0025】
制御部17は、加速度センサ15で測定した第1加速度と、車速センサ21で測定した車速から求めた第2加速度のうち、どちらの加速度が車両1の実加速度を精度よく表す加速度であるのかを車両1の挙動に応じて判定する。
【0026】
例えば、定常走行時には、車速センサ21で測定された車速から求めた第2加速度が第1加速度よりも精度がよい。
車載器10をナビゲーション装置とした場合、通常、ナビゲーション装置は、車両1のインパネ(インストルメントパネル)部分に取り付けられる。車載器10の本体が車両1に対して傾いて取り付けられると、車載器10の本体に内蔵されている加速度センサ15の検出軸も正規の軸に対して傾いてしまい、加速度を良好に検出することができなくなる。また、車両自体が傾斜のある路面を走行していると、加速度センサ15で測定される第1加速度にもこの路面の傾きの影響が出る。
このため、定常走行時には、車速センサ21で測定された車速から求めた第2加速度を車両1の実加速度として使用する。
なお、本実施例では、車両1が停止状態にあると判定すると、制御部17は、加速度センサ15で測定された第1加速度のオフセット補正を実施する。車両1の停止時に、加速度センサ15のセンサ値のオフセット補正を行うことで、加速度センサ15の測定精度を高めることができる。
【0027】
このように定常走行時には、車速センサ21で測定される車速から求めた第2加速度を車両の実加速度として採用するほうが精度がよい。しかしながら、車両1が異常挙動を示す状態では、加速度センサ15で測定された第1加速度を採用するほうが好ましい。
例えば、急ブレーキがかけられた状態では、タイヤがロックに近い状態となり、急速に車両1が停止運動状態に入る。車両1は、この停止運動状態のままある一定距離(制動距離)を走行する。
この状態では、車速センサ21で測定される車速は0km/hかそれに近い値を示す。すなわち、車速センサ21は、車両1の車軸の回転数に比例したパルスを出力する。このため、タイヤがロックに近い状態では、車速として0km/hかそれに近い値を測定し、車両1の実速度を精度よく表していない。従って、急ブレーキ等の操作がなされ、車両が異常挙動を示す時には、車速センサ21で測定した車速から求めた第2加速度は車両の実加速度を精度よく表していない。
【0028】
そこで、本実施例では、急ブレーキ、急ハンドル等の操作がドライバによってなされ、車両1が異常挙動状態にあるときには、第2加速度ではなく、第1加速度を選択して車両1の実加速度とする。
制御部17は、選択した実加速度に、時刻情報と現在位置情報(緯度、経度情報)とを関連づけて記憶部174に記憶する。記憶部174に記憶された情報は、例えば、ヒヤリマップ(交通事故多発地図)等の作成時に使用することができる。
【0029】
また、車両1が異常挙動状態にあるか否かを判定する方法として、本実施例では2つの方法を用いている。
【0030】
第1の方法は、車両1から出力されるABS信号やブレーキ信号を制御部17が入力したときに、急ブレーキの操作があったと判定する方法である。ABS信号は、ABS_ECU22がブレーキ制御を行っているときにABS_ECU22から出力される信号である。また、ブレーキ信号は、ブレーキペダルが踏み込まれ、ブレーキSW23がオンしているときに出力される信号である。
【0031】
第2の方法は、加速度センサ15で測定される第1加速度のうち、車両1の前後方向の加速度が第2しきい値以上であるか否かを判定する方法である。また、加速度センサ15で測定される第1加速度のうち、車両1の左右方向の加速度が第3しきい値以上であるか否かを判定する方法である。
加速度センサ15で測定される車両1の前後方向の加速度が第2しきい値以上である場合、急ブレーキ操作が行われ、車両1が異常挙動状態にあると判定できる。また、加速度センサ15で測定される車両1の左右方向の加速度が第3しきい値以上である場合、急ハンドル操作が行われ、車両1が異常挙動状態にあると判定できる。
なお、本実施例では、第2しきい値として−0.30Gを採用している。また、第3しきい値として±0.22Gを採用している。但し、第2しきい値及び第3しきい値は、この値に限定されるものではなく、例えば、道路勾配や車両重量等により補正してもよい。また、第2しきい値、第3しきい値として挙げた数値が、急ブレーキや急ハンドルの操作があったことを精度よく判定できる数値であることを示す根拠が、以下に示す文献に記載されている。
“Incident detection by probe data”13th World Congress on its 2007
【0032】
第1の方法又は第2の方法により車両挙動が異常な状態であると判定されると、制御部17は、第1加速度と第2加速度との差を求めて、これを第1しきい値と比較する。
図4には、定常走行時と、急ブレーキ操作時とに測定した第1加速度と第2加速度とを示す。図4に示すように定常走行時には、第1加速度と第2加速度とはほぼ同じ値を示しているが、急ブレーキの操作が行われると第1加速度と第2加速度とが大きく異なっている。従って、第2加速度と第1加速度との差が第1しきい値以上であった場合には、第1加速度を車両の実加速度を表す加速度として選択する。
なお、本実施例では、第1しきい値として0.1Gを採用している。但し、第1しきい値は、この値に限定されるものではなく、例えば、道路勾配や車両重量等により補正してもよい。
【0033】
図5に示すフローチャートを参照しながら制御部17の第1の処理手順を説明する。
車載器10が起動すると、制御部17は、まず、第1加速度と、車速と、第2加速度と、シフト位置情報とを入力する(ステップS1)。第1加速度は、加速度センサ15によって測定される。車速は、車速センサ21で測定される。第2加速度は、加速度変換部16で車速を加速度に変換することで得られる。シフト位置情報は、シフトポジションセンサ24で測定される。
【0034】
次に、制御部17は、車両1が停止状態にあるか否かを判定する(ステップS2)。例えば、車速が0km/hである状態が所定時間以上継続した場合や、車速が0でシフト位置情報がパーキング位置にあれば、車両1は停止状態にあると判定することができる。車両1が停止状態にあると判定すると(ステップS2/YES)、制御部17は、停止時に加速度センサ15により測定される第1加速度の値をゼロにセットする(ステップS3)。起動直後等の車両1の停止時に、加速度センサ15のセンサ値のオフセット補正を行うことで、加速度センサ15の測定精度を高めることができる。なお、ステップS2およびステップS3の処理は、無くても構わない。
【0035】
また、車両1が停止状態にはないと判定すると(ステップS2/NO)、制御部17は、第2加速度から第1加速度を減算し、減算結果を第1しきい値と比較する(ステップS4)。
減算結果が第1しきい値よりも小さい場合は(ステップS4/NO)、制御部17は、第1加速度と第2加速度との差が小さいので第2加速度の値が正常であると判定する。この場合、制御部17は、第2加速度を実加速度として選択する(ステップS8)。
また減算結果が第1しきい値以上である場合には(ステップS4/YES)、制御部17は、ブレーキ信号やABS信号の入力があるか否かを判定する(ステップS5)。ブレーキ信号やABS信号の入力がある場合には(ステップS5/YES)、制御部17は、車両1が異常挙動状態にあると判定する。この場合、制御部17は、加速度センサ15で測定された第1加速度を車両1の実加速度として選択する(ステップS7)。
また、ブレーキ信号やABS信号の入力がなかった場合には(ステップS5/NO)、制御部17は、車両1の前後方向加速度及び左右方向加速度をしきい値と比較する(ステップS6)。
車両1の前後方向の加速度が第2しきい値以上であれば(ステップS6/YES)、制御部17は、急ブレーキ操作が行われたと判定する。この場合、制御部17は、加速度センサ15で測定された第1加速度を車両1の実加速度として選択する(ステップS7)。
また車両1の左右方向の加速度が第3しきい値以上であった場合(ステップS6/YES)には、制御部17は、急ハンドルの操作が行われたと判定する。この場合も制御部17は、加速度センサ15で測定された第1加速度を車両1の実加速度として選択する(ステップS7)。
また、前後方向加速度が第2しきい値以上ではなく、且つ左右方向加速度が第3しきい値以上ではなかった場合には(ステップS6/NO)、制御部17は、急ブレーキ、急ハンドル等の操作はなかったと判定する。この場合、制御部17は、第2加速度を車両1の実加速度として選択する(ステップS8)。
【0036】
制御部17は、車両1の加速度を選択すると、選択した加速度に、時刻情報と車両1の現在位置情報とを関連付けて記憶部174に記憶する(ステップS9)。
従って、記憶部174には、車両1の加速度と、その時の時刻と、その時の位置情報とが正確に記録されることになる。
以上のルーチンを制御部17は、電源がオフ(アクセサリスイッチ又はイグニッションスイッチがオフ)となるまで繰り返し行う(ステップS10)。
【0037】
このように本実施例は、車両1が異常挙動を示す状態にあるか否かを判定して、異常挙動を示す状態のときには車両1の実加速度を表す加速度情報を精度よく判定することができる。
また、ブレーキ信号やABS信号の入力により車両1の異常挙動を判定しているので、車両が異常挙動状態にあるのかを精度よく判定することができる。
また、車両1の前後方向加速度及び左右方向加速度をしきい値と比較して車両1の異常挙動を判定しているので、急ブレーキ、急ハンドル等の操作が行われたときの車両の異常挙動を精度よく判定することができる。
また、車両1の加速度を精度よく求めることができるので、例えば、ヒヤリマップでの危険箇所の特定精度を高めることができる。
【0038】
なお、制御部17の処理手順は、図6のフローチャートに示す第2の手順であってもよい。以下、この手順について説明する。なお、図6に示すフローのステップS13までの処理については、上述した図5に示す手順と同一であるので説明を省略する。
制御部17は、車両1が停止状態にはないと判定すると(ステップS12/NO)、ブレーキ信号又はABS信号が入力されたか否かを判定する(ステップS14)。
ブレーキ信号又はABS信号が入力されている場合には(ステップS14/YES)、制御部17は、第2加速度から第1加速度を減算する。そして、制御部17は、減算結果を第1しきい値と比較する(ステップS16)。減算結果が第1しきい値以上であれば(ステップS16/YES)、制御部17は、第1加速度を車両1の実加速度として選択する(ステップS17)。
また、減算結果が第1しきい値よりも小さければ(ステップS16/NO)、制御部17は、第2加速度を車両1の実加速度として選択する(ステップS18)。
【0039】
また、ステップS14でブレーキ信号又はABS信号が入力されていない場合には(ステップS14/NO)、制御部17は車両1の前後方向加速度及び左右方向加速度をしきい値と比較する(ステップS15)。
車両1の前後方向加速度が第2しきい値以上であれば(ステップS15/YES)、制御部17は、急ブレーキの操作が行われたと判定する。また、車両1の左右方向の加速度が第3しきい値以上であった場合(ステップS15/YES)、制御部17は急ハンドルの操作が行われたと判定する。
急ブレーキ又は急ハンドルの操作があったと判定した場合には、制御部17は、第2加速度から第1加速度を減算し減算結果を第1しきい値と比較する(ステップS16)。比較の結果、減算結果が第1しきい値以上であれば(ステップS16/YES)、制御部17は、第1加速度を車両1の実加速度として選択する(ステップS17)。また、比較の結果、減算結果が第1しきい値よりも小さければ(ステップS16/NO)、制御部17は、第2加速度を車両1の実加速度として選択する(ステップS18)。
また、前後方向加速度が第2しきい値以上ではなく、且つ左右方向加速度が第3しきい値以上ではなかった場合には(ステップS15/NO)、制御部17は、急ブレーキ、急ハンドル等の操作はなかったと判定する。この場合、制御部17は、第2加速度を車両1の実加速度として選択する(ステップS18)。以後の処理は、図5に示すフローと同一であるので説明を省略する。
【0040】
図7には、第2の手順を実行するソフトウェアの機能ブロック図を示す。
CPU176が記憶部174に記憶されたプログラムを読み出し、読み出したプログラムに従って処理を行うことにより、図7に示す機能ブロックが実現される。
第1判定処理手段201は、ブレーキ信号とABS信号との入力を判定する。少なくとも一方の信号の入力を検出すると、第1判定処理手段201は第2判定処理手段203に判定許可信号を出力する。
また、第3判定処理手段202は、加速度センサ15で測定された第1加速度を入力して、これを第2しきい値及び第3しきい値と比較する。
第3判定処理手段202は、車両の前後方向加速度が第2しきい値以上であると判定した場合、又は車両の左右方向加速度が第3しきい値以上であると判定した場合に、判定許可信号を第2判定処理手段203に出力する。
第2判定処理手段203には、第1加速度と第2加速度とが入力される。さらに第2判定処理手段203には、第1判定処理手段201と第3判定処理手段202とから判定許可信号が入力される。
第2判定処理手段203は、第1判定処理手段201と第3判定処理手段202とのいずれか一方から判定許可信号を入力した場合に、第1加速度と第2加速度の比較を行う。比較の結果、第2加速度と第1加速度との差が第1しきい値以上であると判定すると、第2判定処理手段203は第1加速度を選択する選択信号を記憶処理手段204に出力する。
また、判定許可信号の入力がない場合や、第2加速度と第1加速度との差が第1しきい値よりも小さい場合には、第2判定処理手段203は、第2加速度を選択する選択信号を記憶処理手段204に出力する。
記憶処理手段204は、第1加速度と第2加速度とを入力する。また、記憶処理手段204は、第2判定処理手段203から選択信号を入力する。さらに、記憶処理手段204は、現在位置情報と時刻情報とを入力する。
記憶処理手段204は、選択信号が第1加速度を選択する信号であった場合には、選択された第1加速度に、現在位置情報と時刻情報とを関連付けて記憶部174に記憶させる。
また、記憶処理手段204は、選択信号が第2加速度を選択する信号であった場合には、選択された第2加速度に、現在位置情報と時刻情報とを関連付けて記憶部174に記憶させる。
【実施例2】
【0041】
添付図面を参照しながら本発明の第2実施例を説明する。なお、第2実施例の構成は、上述した第1実施例と同一であるので構成の説明は省略する。
【0042】
加速度センサ15で測定される加速度の値は、道路に勾配があれば平地での加速度とは異なる値となる。例えば、登り坂では加速度センサ15で測定される加速度は平地よりも小さくなり、下り坂では加速度センサ15で測定される加速度は平地よりも大きくなる。
そこで、本実施例は、第1しきい値と、第2しきい値との少なくとも一方を道路勾配に応じて補正する。
制御部17は、記憶部174に記憶した地図情報と、GPS信号により割り出した現在位置情報とから現在位置での道路勾配を判定し、判定結果により第1しきい値と第2しきい値との少なくとも一方を補正する。
道路が登り坂である場合には、第1しきい値と第2しきい値との少なくとも一方の絶対値を平地での値よりも小さい値に補正する。例えば、平地では0.1Gであった第1しきい値を0.05Gといった値に変更する。また、平地では−0.3Gであった第2しきい値を−0.2Gといった値に変更する。
また、道路が下り坂である場合には、第1しきい値と第2しきい値との少なくとも一方の絶対値を平地での値よりも大きい値に補正する。例えば、平地では0.1Gであった第1しきい値を0.15Gといった値に変更する。また、平地では−0.3Gであった第2しきい値を−0.4Gといった値に変更する。
【0043】
また、第1しきい値と第2しきい値とを一定値に補正するのではなく、道路勾配に応じた値に補正してもよい。すなわち、道路勾配が大きければ、第1しきい値と第2しきい値との少なくとも一方の絶対値を道路勾配に応じた大きな値に補正する。逆に、道路勾配が小さければ、第1しきい値と第2しきい値との少なくとも一方の絶対値を道路勾配に応じた小さな値に補正する。
また、車体重量に応じて加速度センサ15で測定される加速度の値も変わってくる。そこで、車体重量を記憶部174に予め記憶しておき、記憶した車体重量により第1しきい値及び第2しきい値の補正量を変更してもよい。
【0044】
図8に示すフローチャートを参照しながら本実施例の処理手順(第3の処理手順)を説明する。なお、ステップS23までの手順は、図5に示すフローと同一であるので説明を省略する。
【0045】
制御部17は、車両1が停止状態にはないと判定すると(ステップS22/NO)、記憶部174から読み出した地図情報と、車両1の現在位置情報とに基づいて現在位置での道路勾配を判定する(ステップS24)。そして、判定した道路勾配に基づいて、しきい値の補正が必要であるか否かを判定する(ステップS25)。道路勾配が所定値以上である場合には、制御部17はしきい値の補正が必要であると判定する(ステップS25/YES)。
しきい値の補正が必要であると判定すると(ステップS25/YES)、制御部17は道路勾配に基づいて第1しきい値と第2しきい値との少なくとも一方を補正する(ステップS26)。
また、しきい値の補正が必要ではないと判定すると(ステップS25/NO)、制御部17は第1しきい値と第2しきい値との補正は行わない。
【0046】
この後、制御部17は、第1しきい値と、第2しきい値及び第3しきい値とを用いて、車両1が異常挙動を示す状態にあるか否かを判定する。
車両1が異常挙動を示す状態にあると判定した場合には、制御部17は加速度センサ15で測定された第1加速度を車両1の実加速度として選択する。また、車両1が異常挙動を示す状態にはないと判定した場合には、制御部17は、車速センサ21で測定された車速から求めた第2加速度を車両1の実加速度として選択する。
なお、この判定手順の詳細は、図5に示すフローチャートと同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0047】
このように本実施例は、車両1の現在位置での道路勾配を判定する。そして、道路の勾配が大きければ、道路勾配に応じたしきい値となるように第1しきい値と第2しきい値との少なくとも一方を補正する。このため、車両1が異常挙動を示す状態にあるか否かの判定精度を高めることができる。
【0048】
図9には、第3の手順を実行するソフトウェアの機能ブロック図を示す。
CPU176が記憶部174に記憶されたプログラムを読み出し、読み出したプログラムに従って処理を行うことにより、図9に示す機能ブロックが実現される。
図9に示す機能ブロックは、図7に示す機能ブロックの構成に加えて、補正手段205が新たに追加されている。
補正手段205は、地図情報と現在位置情報とに基づいて車両の現在位置での路面勾配を判定する。路面の勾配が所定値よりも大きいと判定すると、第1しきい値と第2しきい値との少なくとも一方を補正する。そして、第2判定処理手段203と第3判定処理手段202との少なくとも一方に、補正したしきい値を通知するしきい値通知信号を出力する。
第2判定処理手段203と、第3判定処理手段202とは、しきい値通知信号により通知されたしきい値を用いて判定処理を実施する。
【0049】
上述した実施例は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
例えば、上述した実施例では、車両1が異常挙動を示す状態にはないと判定した場合には、制御部17は、車速センサ21で測定された車速から求めた第2加速度を車両の実加速度として選択していた。しかしながら、車両1が異常挙動を示す状態にはない場合には、第1加速度と第2加速度とのいずれを選択してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】車載器の構成と、車載器と接続した車両側の機器との接続構成とを示す図である。
【図2】制御部の詳細な構成を示す図である。
【図3】制御部に入力される情報の測定周期と分解能とを示す図である。
【図4】車載器の加速度センサで測定された第1加速度と、車速センサの車速を微分して求めた第2加速度との測定結果を示す図である。
【図5】制御部の加速度選択の第1の手順を示すフローチャートである。
【図6】制御部の加速度選択の第2の手順を示すフローチャートである。
【図7】第2の手順を実行するソフトウェアの機能ブロックを示す図である。
【図8】制御部の加速度選択の第3の手順を示すフローチャートである。
【図9】第3の手順を実行するソフトウェアの機能ブロックを示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 車両
10 車載器
11 GPS情報受信部
12 時計部
13 ディスプレイ
14 操作部
15 加速度センサ
16 加速度変換部
17 制御部
21 車速センサ
22 ABS_ECU
23 ブレーキSW
24 シフトポジションセンサ
174 記憶部
176 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の挙動に異常な状態が生じているか否かを判定する第1判定手段と、
前記第1判定手段で前記車両の挙動に異常な状態が生じていると判定したときに、前記車両に搭載されている加速度センサで測定された前記車両の第1加速度と、前記車両に搭載されている車速センサで測定された車速を演算して求めた前記車両の第2加速度との差が第1しきい値以上であるか否かを判定する第2判定手段と、
前記第1加速度と前記第2加速度との差が前記第1しきい値以上であるときに、前記第1加速度を前記車両の実加速度として記憶手段に記憶させる記憶処理手段と、
を有することを特徴とする加速度判定装置。
【請求項2】
前記第1判定手段は、ブレーキペダルが踏み込まれていることを示すブレーキ信号の入力を検出した場合と、アンチロックブレーキシステムが動作していることを示す動作信号の入力を検出した場合と、前記車両の前後方向の加速度が第2しきい値以上であることを検出した場合と、前記車両の左右方向の加速度が第3しきい値以上であることを検出した場合とのうちの少なくとも1つを検出した場合に、前記車両の挙動に異常な状態が生じていると判定することを特徴とする請求項1記載の加速度判定装置。
【請求項3】
前記記憶手段に記憶された地図情報を参照して路面の勾配を求め、該路面の勾配により前記第1しきい値と前記第2しきい値との少なくとも一方を補正する第1補正手段を有することを特徴とする請求項2記載の加速度判定装置。
【請求項4】
前記加速度判定装置は、前記車速センサで測定された車速が所定時間以上連続して0である場合、又は前記車速センサの車速が0でシフトセンサで検出されるシフト位置がパーキングである場合に、前記加速度センサの測定する前記第1加速度を0に補正する第2補正手段を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の加速度判定装置。
【請求項5】
前記記憶処理手段は、前記第1加速度と前記第2加速度との差が前記第1しきい値未満であるとき、もしくは、前記第1判定手段で前記車両の挙動に異常な状態が生じていないと判定したときに、前記第2加速度を車両の実加速度として記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の加速度判定装置。
【請求項6】
コンピュータを、
車両の挙動に異常な状態が生じているか否かを判定する手段と、
前記車両の挙動に異常な状態が生じていると判定したときに、前記車両に搭載されている加速度センサで測定された前記車両の第1加速度と、前記車両に搭載されている車速センサで測定された車速を演算して求めた前記車両の第2加速度との差が第1しきい値以上であるか否かを判定する手段と、
前記第1加速度と前記第2加速度との差が前記第1しきい値以上であるときに、前記第1加速度を前記車両の実加速度として記憶手段に記憶させる手段として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−8234(P2010−8234A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167992(P2008−167992)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)