説明

加飾パネル

【課題】加飾パネルに十分な奥行感を持たせる。
【解決手段】加飾パネル5を、樹脂製の基材7と、該基材7の表面に形成された表面層9とで構成し、基材7に、不透明樹脂層11と、不透明樹脂層11の表面層9側に二色成形により形成された透明樹脂層13とを設け、表面層9の少なくとも一部を透明にし、表面層9及び透明樹脂層13の少なくとも一方に、加飾を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の基材と、該基材の表面に形成された表面層とからなる加飾パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された加飾パネルは、樹脂製の基材と、該基材の表面に形成され、かつ加飾が施された表面層とからなる。この加飾パネルでは、上記表面層の一部を透明にし、上記基材を不透明樹脂層と該不透明樹脂層の表面側に積層された透明樹脂層とで構成し、かつ上記透明樹脂層の裏側に凹凸模様を形成することで、深みのある意匠を実現している。また、透明樹脂層の厚みを80μmに設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−54998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1では、透明樹脂層の裏側に枚葉又は輪転式エンボス機等を用いて凹凸模様を形成しているので、上記透明樹脂層は平坦な透明樹脂シートの形態であると考えられる。したがって、加飾パネルの一部を湾曲形状にする場合、透明樹脂シートが分厚いと、湾曲した成形面に沿わせにくく、透明樹脂シートを湾曲した成形面に追従させるために所定厚さより薄くする必要があり、加飾パネルに十分な奥行感を持たせることができない。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加飾パネルに十分な奥行感を持たせることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、透明樹脂層を二色成形により形成したことを特徴とする。
【0007】
具体的には、本発明は、樹脂製の基材と、該基材の表面に形成された表面層とからなる加飾パネルを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、上記基材は、不透明樹脂層と、該不透明樹脂層の表面層側に二色成形により形成された透明樹脂層とを備え、上記表面層の少なくとも一部は透明であり、上記表面層及び上記透明樹脂層の少なくとも一方には、加飾が施されていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に係る加飾パネルにおいて、上記透明樹脂層は、場所によって厚みが異なっていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第2に発明に係る加飾パネルにおいて、上記透明樹脂層は、厚みが薄くなるに従って透過度が増すように着色剤を含有していることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第2又は第3の発明に係る加飾パネルにおいて、上記不透明樹脂層は、光輝顔料を含有する材着樹脂からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、加飾パネルの一部を湾曲形状にする場合でも、透明樹脂層を二色成形により形成するので、透明樹脂層がその厚さに関わりなく、湾曲した成形面に追従する。したがって、透明樹脂層を分厚くすることにより加飾パネルに十分な奥行感を持たせて高級感を高めることができる。
【0013】
第2の発明によれば、加飾パネルの奥行感が場所によって変化するので、高級感がさらに高められる。
【0014】
第3の発明によれば、不透明樹脂層の表面層側からの見え易さが場所によって変化するので、プラスチック感が低減されるとともに深みがより強調され、高級感がさらに高められる。
【0015】
第4の発明によれば、不透明樹脂層に光輝性を発現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態1に係る加飾パネルが取り付けられた自動車のインストルメントパネルの略左半分を示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る加飾パネルの斜視図である。
【図3】図2のA−A線における断面図である。
【図4】第1キャビティに材着樹脂を射出充填した状態を示す図3対応箇所の基材の成形工程図である。
【図5】第2キャビティを形成した状態を示す図3対応箇所の基材の成形工程図である。
【図6】実施形態2の図3相当図である。
【図7】実施形態3の図3相当図である。
【図8】実施形態4の図3相当図である。
【図9】実施形態5の図2相当図である。
【図10】実施形態5の図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0018】
(実施形態1)
図1は、自動車用インストルメントパネル1を示す。該インストルメントパネル1の助手席側には、車幅方向に帯状に延びる略矩形状のパネル装着箇所3が形成され、当該パネル装着箇所3には、本発明の実施形態1に係る加飾パネル5が装着されてインストルメントパネル1に取り付けられている。
【0019】
上記パネル装着箇所3の周縁には、該パネル装着箇所3の上端縁及び下端縁に沿って、図示しない係止孔が、それぞれ車幅方向に間隔をあけて3つずつ形成されている。
【0020】
上記加飾パネル5は、図2及び図3に示すように、正面視で横長の略矩形帯状に形成されていて、略一定の厚みで延びている。加飾パネル5は、その全周縁部で裏側に向かって円弧状に湾曲する湾曲部5aと、該湾曲部5aの内側で略平坦に延びる平坦部5bとで浅皿状に形成されている。また、加飾パネル5は、樹脂製の基材7と、該基材7の表面に一様なカラークリア塗装により形成された表面層9とからなる。
【0021】
上記基材7は、黒色顔料を含む材着樹脂からなる略一定の厚みの不透明樹脂層11と、該不透明樹脂層11の表面層9側に二色成形により形成された略一定の厚みの透明樹脂層13とを備えている。透明樹脂層13の厚みは、後述する奥行感を十分得るためには、1mm以上に設定することが好ましいが、1mm未満に設定しても、ある程度の奥行感の実現は可能である。また、上記透明樹脂層13は着色料を含有していない。該基材7の端面7aには、上記不透明樹脂層11に一体に連続する係止片部15が、基材7の上端縁及び下端縁に沿って、車幅方向に間隔をあけて3つずつ一体に突設され、これら係止片部15を上記インストルメントパネル1の係止孔に係止することで加飾パネル5がインストルメントパネル1に取り付けられるようになっている。上記係止片部15は、上記不透明樹脂層11を構成する材着樹脂により該不透明樹脂層11の成形と同時に成形される。
【0022】
上記表面層9は、表面層9側から上記不透明樹脂層11を識別可能な程度に透明になっている。
【0023】
次に、上述のように構成された加飾パネル5の製造方法について説明する。まず、基材7は、次のようにして成形される。
【0024】
成形に際し、図4及び図5に示すように、成形型101と、着色料を含有していない透明樹脂(図示せず)と、黒色顔料を含む材着樹脂Rとを用意する。上記成形型101は、係止片部15の内側を含む不透明樹脂層11の裏側を成形する固定型103と、不透明樹脂層11の表側を成形する第1可動型105と、上記係止片部15の外側を成形するスライド型107と、透明樹脂層13の表側を成形する第2可動型109とを備えている。
【0025】
まず、図4に示すように、固定型103と第1可動型105とスライド型107とを型締めして第1キャビティ111を形成し、該第1キャビティ111内に上記材着樹脂Rを射出充填することにより上記不透明樹脂層11を成形する。次に、第1可動型105を後退させ、その後、図5に示すように、第2可動型109を進出させて固定型103とスライド型107と第2可動型109とを型締めし、第2可動型109と不透明樹脂層11との間に第2キャビティ113を形成し、該第2キャビティ113内に透明樹脂を射出充填する。そして、第2可動型109側で透明樹脂が完全に固まり、不透明樹脂層11の表側に透明樹脂層13が一体に形成された基材7が成形される。その後、第2可動型109を後退させるとともにスライド型107を外側にスライドさせて基材7を取り出す。
【0026】
そして、上述のように成形された基材7の表面にカラークリア塗装を施すことにより表面層9を形成して加飾パネル5を得る。
【0027】
したがって、本実施形態1によると、透明樹脂層13を二色成形により形成するので、透明樹脂層13がその厚さに関わりなく、湾曲部5aに対応して湾曲させた成形面に追従する。したがって、透明樹脂層13を分厚くすることにより加飾パネルに十分な奥行感を持たせて高級感を高めることができる。
【0028】
(実施形態2)
図6は、本発明の実施形態2に係る加飾パネル5を示す。本実施形態2では、透明樹脂層13の裏面が平坦部5bで傾斜し、透明樹脂層13の厚みが平坦部5bの中程から外周縁に向かって徐々に薄くなって湾曲部5aで一定の厚みを維持している。透明樹脂層13の厚みは、最も厚い場所で1mm以上に設定することが好ましい。一方、不透明樹脂層11の表面が平坦部5bで傾斜し、不透明樹脂層11が平坦部5bの中程から外周縁に向かって徐々に厚くなって湾曲部5aで一定の厚みを維持し、基材7全体の厚みは略一定となっている。また、透明樹脂層13は、厚みが薄くなるに従って透過度が増すように略一定の割合で顔料を含有している。一方、不透明樹脂層11は、黒色顔料に代えて金属調の光輝顔料を含む材着樹脂から構成され、加飾パネル5の周縁部の不透明樹脂層11が、表面層9側から見て、加飾パネル5の裏側から装着された別体の金属部品に見えるようになっている。
【0029】
また、本実施形態2に係る加飾パネル5は、着色料を含有する透明樹脂(図示せず)と、金属調の光輝顔料を含む材着樹脂Rとを用い、かつ上記実施形態1の第1可動型105に代えて、不透明樹脂層11の表面の傾斜に対応して傾斜する成形面を有する第1可動型(図示せず)を用いて基材7を成形することにより、実施形態1と同様に製造できる。
【0030】
そのほかの構成は実施形態1と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0031】
したがって、本実施形態2によると、周縁部から内側に向かって奥行きが増すような奥行感が得られるとともにグラデーションが表れるので、高級感がさらに高められる。
【0032】
また、射出成形により不透明樹脂層11を成形するだけで、加飾パネル5の周縁部に裏側から別体の金属部品を装着したような意匠を実現できるので、部品点数及び金属部品の組付け工数を削減できる。
【0033】
(実施形態3)
図7は、本発明の実施形態3に係る加飾パネル5を示す。本実施形態3では、平坦部5bの不透明樹脂層11の表面全体に複数の凸部11aが共通の間隔を空けて形成されているとともに、平坦部5bの透明樹脂層13の裏面全体に上記複数の凸部11aに対応する凹部13aが形成されている。不透明樹脂層11は、実施形態2と同様に、金属調の光輝顔料を含む材着樹脂から構成され、不透明樹脂層11の凸部11aが、表面層9側から見て、加飾パネル5の裏側から装着された別体の金属部品に見えるようになっている。
【0034】
また、本実施形態3に係る加飾パネル5は、上記実施形態2の第1可動型に代えて、不透明樹脂層11の表面を成形する成形面に上記凸部11aに対応する凹部を形成した第1可動型(図示せず)を用いて基材7を成形することにより、実施形態2と同様に製造できる。
【0035】
そのほかの構成は実施形態2と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0036】
したがって、本実施形態3によると、凸部11aの先端側から基端側に向かって奥行きが増すような奥行感が得られるとともにグラデーションが表れるので、高級感がさらに高められる。
【0037】
また、射出成形により不透明樹脂層11を成形するだけで、加飾パネル5の凸部11a形成箇所に裏側から別体の金属部品を装着したような意匠を実現できるので、部品点数及び金属部品の組付け工数を削減できる。
【0038】
(実施形態4)
図8は、本発明の実施形態4に係る加飾パネル5を示す。本実施形態4では、透明樹脂層13の裏面が平坦部5bで傾斜し、透明樹脂層13の厚みが平坦部5bの中程から外周縁に向かって徐々に厚くなって湾曲部5aで一定の厚みを維持している。一方、不透明樹脂層11の表面が平坦部5bで傾斜し、不透明樹脂層11の厚みが平坦部5bの中程から外周縁に向かって徐々に薄くなって湾曲部5aで一定の厚みを維持し、基材7全体の厚みは略一定となっている。不透明樹脂層11は、実施形態2と同様に、金属調の光輝顔料を含む材着樹脂から構成され、加飾パネル5の中央部の不透明樹脂層11が、表面層9側から見て、加飾パネル5の裏側から装着された別体の金属部品に見えるようになっている。
【0039】
また、本実施形態4に係る加飾パネル5は、上記実施形態2の第1可動型に代えて、本実施形態4の不透明樹脂層11の表面の傾斜に対応して傾斜する成形面を有する第1可動型(図示せず)を用いて基材7を成形することにより、実施形態2と同様に製造できる。
【0040】
そのほかの構成は実施形態2と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0041】
したがって、本実施形態4によると、内側から周縁部に向かって奥行きが増すような奥行感が得られるとともにグラデーションが表れるので、高級感がさらに高められる。
【0042】
また、射出成形により不透明樹脂層11を成形するだけで、加飾パネル5の中央部に裏側から別体の金属部品を装着したような意匠を実現できるので、部品点数及び金属部品の組付け工数を削減できる。
【0043】
(実施形態5)
図9及び図10は、本発明の実施形態5に係る加飾パネル5を示す。本実施形態5では、表面層9が水圧転写により形成され、該表面層9に、無色透明な複数の透明部9aが互いに間隔を空けて形成されている。
【0044】
本実施形態5に係る加飾パネル5は、実施形態2と同様の方法で成形した基材7の表面に水圧転写を行うことにより表面層9を形成することにより得られる。
【0045】
そのほかの構成は実施形態2と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0046】
したがって、本実施形態5によると、水圧転写により表面層9を形成するので加飾パネル5の表面に複雑な柄を表現できるとともに、透明部9aから基材7を視認できるので奥行感が得られる。また、透明樹脂層13の裏面が平坦部5bで傾斜し、透明樹脂層13の厚みが平坦部5bの中程から外周縁に向かって徐々に厚くなっているため、各透明部9aごとに異なる奥行感を表現できる。
【0047】
なお、上記実施形態1〜5では、インストルメントパネル1に取り付けられる加飾パネル5に本発明を適用した例を示したが、本発明は、他の用途の加飾パネルにも適用できる。
【0048】
また、上記実施形態2〜5では、表面層9を構成する材着樹脂に金属調の光輝顔料を含ませたが、パール調の光輝顔料を代わりに含ませてもよい。
【0049】
さらに、上記実施形態1〜5では、表面層9全体を、表面層9側から上記不透明樹脂層11を識別可能な程度に透明に形成したが、表面層9の一部のみを透明にしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態2〜5では、カラークリア塗装により表面層9に着色という加飾を施し、かつ透明樹脂層13にも着色という加飾を施しているが、クリア塗装のみにより表面層9を形成してもよい。つまり、表面層9に加飾を施さなくてもよい。また、上記実施形態1では、透明樹脂層13が着色料を含有していないが、着色料を含有させてもよい。つまり、表面層9及び透明樹脂層13の少なくとも一方に加飾を施せばよい。
【0051】
また、上記実施形態2,4では、透明樹脂層13の裏面を傾斜させ、上記実施形態3では、透明樹脂層13の裏面に複数の凹部13aを設けることにより、透明樹脂層13の厚みを場所によって異ならせたが、他の形状により、透明樹脂層13の厚みを場所によって異ならせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、樹脂製の基材と、該基材の表面に形成された表面層とからなる加飾パネルとして有用である。
【符号の説明】
【0053】
5 加飾パネル
7 基材
9 表面層
11 不透明樹脂層
13 透明樹脂層
R 材着樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の基材(7)と、該基材(7)の表面に形成された表面層(9)とからなる加飾パネルであって、
上記基材(7)は、不透明樹脂層(11)と、該不透明樹脂層(11)の表面層(9)側に二色成形により形成された透明樹脂層(13)とを備え、
上記表面層(9)の少なくとも一部は透明であり、
上記表面層(9)及び上記透明樹脂層(13)の少なくとも一方には、加飾が施されていることを特徴とする加飾パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の加飾パネルにおいて、
上記透明樹脂層(13)は、場所によって厚みが異なっていることを特徴とする加飾パネル。
【請求項3】
請求項2に記載の加飾パネルにおいて、
上記透明樹脂層(13)は、厚みが薄くなるに従って透過度が増すように着色剤を含有していることを特徴とする加飾パネル。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の加飾パネルにおいて、
上記不透明樹脂層(11)は、光輝顔料を含有する材着樹脂からなることを特徴とする加飾パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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