説明

加飾成形品

【課題】長期間使用しても飽きのこない変化に富んだデザインを有し、しかも長期間の使用に耐えることのできる優れた加飾成形品を提供をする。
【解決手段】成形品4と、その裏面に金属光沢層7を設けた光透過着色層8とで構成し、上記成形品4の光透過部3と、上記光透過着色層8表面に形成された凹凸とが互いに対峙した状態で固定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光が透過する光透過部が部分的に形成された成形品の、上記光透過部から見える光が多彩な色調の光として見える加飾成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧料を収容したコンパクト容器や口紅容器等には、単に機能性だけでなく、見栄えがよい、商品イメージを反映したデザインである、といった意匠性も要求される。また、最近のエコロジー化の流れを受けて、収容物である化粧料を使い切った場合、外容器はそのままで、内側のレフィル容器のみを新品と交換することができるようにしたものが多い。その結果、同じコンパクト容器等を長期間使用することになるため、これらの容器には、飽きのこないデザインであることや、長期間の使用に耐えることのできる耐久性も要求される。
【0003】
上記飽きのこないデザインの提供という点から、例えば、規則正しく分布された多数の線または点によるデザインプレートを重ねることで、立体形状の模様やモアレ模様を得ることができ、眺める方向による変化を楽しむことができるようにした装飾容器が提案されている(特許文献1参照)。また、ホログラム加飾シートを天面カバーで覆うことにより、奥行きのある立体的な模様を得るようにしたコンパクト容器も提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−116630号公報
【特許文献2】特開2004−198958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のものは、規則正しく多数の線または点を分布させることが必要であることから、デザイン面で制約があり、自由な表現のデザインを得るのは困難である。また、上記特許文献2のものは、表現したいデザインを表したホログラム加飾シートを準備する必要があり、また、このようなシートが必須であるから、極小面積のデザインの実現が困難であるという問題がある。さらに、日光等の紫外光によってそのホログラム加飾シートが経時劣化するおそれもある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、長期間使用しても飽きのこない変化に富んだデザインを有し、しかも、長期間の使用に耐えることのできる優れた加飾成形品の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、光を透過する光透過部が部分的に形成された成形品の、少なくとも上記光透過部が形成された部分の裏面に、光透過着色層を介して金属光沢層が設けられた加飾成形品であって、上記光透過着色層表面の、上記成形品の光透過部と対峙する面に凹凸が形成され、光透過部から入射し光透過着色層表面で反射する光と、同じく光透過部から入射し光透過着色層を通過して金属光沢層表面で反射し再び光透過着色層を通過する光が、上記凹凸によって乱反射されるよう設定されており、上記両反射光の光路の違いによって、光透過部から見える色が多彩な色調の光沢色として見えるようになっている加飾成形品を第1の要旨とする。
【0007】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記成形品の光透過部が、透明樹脂成形品の表面もしくは裏面に形成された被覆層を部分的に除去することによって形成されている加飾成形品を第2の要旨とし、さらに、本発明は、上記光透過部の表面もしくは裏面が、微細凹凸面に形成されている加飾成形品を第3の要旨とする。
【0008】
また、本発明は、上記光透過着色層が、透明樹脂層と、その表面に積層された透明着色層とで構成されている加飾成形品を第4の要旨とし、上記金属光沢層が、上記光透過着色層の裏面に、金属蒸着膜,ホットスタンプ箔,メタリック塗装のいずれかによって形成された層である加飾成形品を第5の要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、光を透過する光透過部が部分的に形成された成形品の、少なくとも上記光透過部が形成された部分の裏面に、光透過着色層を介して金属光沢層が設けられた加飾成形品であって、上記光透過着色層表面の、上記成形品の光透過部と対峙する面に凹凸が形成され、光透過部から入射し光透過着色層表面で反射する光と、同じく光透過部から入射し光透過着色層を通過して金属光沢層表面で反射し再び光透過着色層を通過する光が、上記凹凸によって乱反射されるよう設定されており、上記両反射光の光路の違いによって、光透過部から見える色が多彩な色調の光沢色として見えるようになっている加飾成形品である。この構成によれば、光透過部に、光透過部から入射し光透過着色層表面で反射する光、すなわち、光透過着色層の色をそのままの色として見せる光と、同じく光透過部から入射し光透過着色層を通過して金属光沢層表面で反射し再び光透過着色層を通過する光、すなわち、光透過着色層表面で反射した色以外の色の光とが、上記凹凸により、乱反射することによって、多彩な色調を現出させることができる。しかも、その色調が、見る角度によって異なるため、変化に富むデザインを実現することができる。特に、従来、ホログラムシートを用いて形成することが困難であった極小面積に対しての変化に富むデザインを実現できるという利点を有する。
【0010】
そして、上記の多彩な色調の光沢色、すなわち、見る角度によって、光透過部から見たときの色調の変化に富む多彩な色調の光沢色は、上記光透過部から入射し光透過着色層表面で反射する光と、同じく光透過部から入射し光透過着色層を通過して金属光沢層表面で反射し再び光透過着色層を通過する光が、上記凹凸によって乱反射されるよう設定されることで得られるものである。よって、ホログラムシートを用いた従来品が日光などの紫外光によってそのホログラムシートの色調が経時劣化するのに対し、上記多彩な色調の光沢色には、このような劣化がほとんど見られず、したがって、長期にわたって上記多彩な色調の光沢色を用いたデザインの成形品の外観を美麗に保つことができる。
【0011】
また、上記の多彩な色調の光沢色は、上記光透過部から入射し光透過着色層表面で反射する光と、同じく光透過部から入射し光透過着色層を通過して金属光沢層表面で反射し再び光透過着色層を通過する光との組合せによって現出するものであり、光透過着色層表面で反射する光と、透過着色層を通過して金属光沢層表面で反射し再び光透過着色層を通過する光とでは、光の反射する場所が異なるため、奥行きのあるデザインを実現することができる。したがって、成形品の外観に立体感を与え、高級感を高めることができる。
【0012】
さらに、本発明において、上記成形品の光透過部が、透明樹脂成形品の表面もしくは裏面に形成された被覆層を部分的に除去することによって形成されているものは、成形品を作製した後、被覆層を除去する部分を決定することができるため、この成形品を他のデザインのものと共用することができ、生産コストを低減することができる。また、被覆層の除去部分を変えるだけで、デザインの変更が容易にできるため、短期間でニーズに応じた多種多様なものができるという利点も有する。
【0013】
また、本発明において、上記光透過部の表面もしくは裏面が、微細凹凸面に形成されているものは、この微細凹凸が上記光透過部から透かして見える。したがって、この微細凹凸と上記多彩な色調の光沢色とが組み合わされることで、より緻密で興趣に富む印象のデザインの加飾成形品を得ることができる。
【0014】
そして、本発明において、上記光透過着色層が、透明樹脂層と、その表面に積層された透明着色層とで構成されているものは、透明着色層として、ハーフ蒸着層やオパール調の光沢層を用いることができ、透明樹脂への着色では実現が困難な色を光透過着色層表面に付与することができる。また、凹凸を形成した透明樹脂層をベースとし、その上に積層する透明着色層の色調(材質)を変更するだけで、容易に他の色調のバリエーションのデザインを得ることができるという利点も有する。
【0015】
また、本発明において、上記金属光沢層が、上記光透過着色層の裏面に、金属蒸着膜,ホットスタンプ箔,メタリック塗装のいずれかによって形成された層であるものは、これらの金属光沢面が、上記光透過着色層に密着しているため、光透過着色層を通過して金属光沢層表面で反射し再び光透過着色層を通過する光量のロスを少なくすることができ、成形品の光透過部から見える光沢色が、より鮮明で多彩な色調となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明を実施するための最良の形態であるコンパクト容器である。図において、1は本体部、2は蓋体であり、この蓋体2の表面に形成された光透過部3から多彩な色調の光沢色が見えるようになっている。上記蓋体2の後端部には、下向きにヒンジ部が突設されており(図示を省略している)、このヒンジ部が本体部1の後端部と係合することにより、蓋体2が上方に開くようになっている。
【0018】
上記蓋体2は、その部分断面図である図2に示すように、成形品4と、裏面に金属光沢層7を設けた光透過着色層8とで構成されており、上記成形品4の光透過部3と、上記光透過着色層8表面に形成された凹凸とが、互いに対峙した状態で固定されている。
【0019】
上記成形品4は、その部分断面図をである図3に示すように、透明アクリル樹脂形成体からなる透明層9と、その裏面に形成された白色印刷層からなる非透明薄膜層10(以下、単に「薄膜層」という)とで構成されており、上記薄膜層10の一部が、以下に述べる特殊な方法によって除去されて透明層9が露出し、光透過部3が形成されている。そして、この露出した透明層9には、陰影ある透かし模様Pが付与されている。この透かし模様Pの一部を、図4に示す。
【0020】
上記光透過部3および透かし模様Pは、例えばつぎのようにして得ることができる。すなわち、まず、成形品4を賦形するための金型を用意する。そして、上記金型の、成形品4の裏面を賦形する側に、白色転写フィルムを配置させた状態で金型を閉じ、透明層9の成形材料である透明アクリル樹脂材料を射出することにより成形を行なう(インモールド転写成形)。これにより、図5に示すように、透明層9の裏面に白色の薄膜層10が一体的に形成された成形品4を得ることができる。
【0021】
そして、図6(a)に示すように、上記薄膜層10のうち、光透過部3および透かし模様Pをつくろうとする領域Aの薄膜層10を、COレーザの照射によって溶融除去して、光透過部3をつくり、さらに、薄膜層10の下(図面では上)の透明層9の露出表面を凹状に除去加工して、陰影ある透かし模様Pをつくる。上記領域Aを、図6(b)に示す。このようにして、光透過部3および透かし模様Pが付与された成形品4を得ることができる。
【0022】
なお、上記陰影ある透かし模様Pは、例えば、上記領域Aに対するCOレーザ照射において、線状溶融除去跡を密に並べて凹面を形成する照射と、上記線状溶融除去跡より幅が太く深さの深い線状溶融除去跡からなる単一線を形成する照射とを組み合わせること等によって得ることができる。すなわち、微妙な凹凸を有する凹面に、輪郭線や強調線を加えることによって、上記透かし模様Pを複雑な印象の陰影模様とすることができる。
【0023】
つぎに、上記光透過着色層8は、図7にその一部断面図を示すように、金型によってファセットカット状の凹凸が賦形されたアクリル樹脂からなる透明樹脂層6表面に、二酸化チタンと二酸化ケイ素の多層薄膜(以下、単に「TiO/SiO薄膜」とする)からなる透明着色層5を積層したものである。そして、上記透明樹脂層6の裏面には、ホットスタンプ箔からなる金属光沢層7が設けられている。なお、上記ファセットカットとは、宝石のカット方法の一つであり、その表面を幾何学的な小平面の組合せにみがき、宝石に入った光を何回か全反射させて輝かせる方式の総称である。このようにして、表面に凹凸が、裏面に金属光沢層7が形成された光透過着色層8を得ることができる。
【0024】
そして、前記成形品4と、裏面に金属光沢層7が形成された上記光透過着色層8とを組み合わせることで、前記蓋体2を得ることができる。
【0025】
この構成によれば、上記成形品4の光透過部3から入った光Bが、図8に示すように、透明着色層5表面で反射する光(α)と、透明着色層5および透明樹脂層6を通過して金属光沢層7表面で反射し再び透明着色層5および透明樹脂層6を通過する光(β)とになり、それぞれ色調の異なる光(α),(β)が、上記光透過着色層8に形成された凹凸によって乱反射し、重なり合う部分が生じるため、その重なりの多少によって上記成形品4の光透過部3から、(α),(β)の色調だけではない多彩な色調の光沢色を見ることができる(図2参照)。
【0026】
すなわち、透明着色層5表面で反射する光(α)がグリーンである(透明着色層5表面がグリーンに見える)場合は、このグリーンを除く色調の光(β)が、透明着色層5および透明樹脂層6を通過して金属光沢層7表面で反射し再び透明着色層5および透明樹脂層6を通過することになる。このときの光の色調は、可視光のうちグリーンを除く色、すなわち、グリーンの補色であるレッドとなる。そして、この透明着色層5表面で反射したグリーンの光(α)および金属光沢層7表面で反射したレッドの光(β)が、上記光透過着色層8の凹凸によって、乱反射し、これらの異なる色の重なりの多少によって、オレンジ,パープル等、上記グリーンおよびレッドだけではない多彩な色調の光沢色として現れる。また、上記光透過着色層8の凹凸がファセットカット状であることより、上記反射光(α),(β)が全反射に近い反射となり、これらの多彩な色調の光沢色が宝石のように輝き、より美麗なものとなる。
【0027】
しかも、上記光透過部3からは、透明層9に形成された透かし模様Pが透けて見え、その透かし模様Pは、前述のように、その全面に付与された微妙な波打ち模様の陰影と、シャープな輪郭線およびダイヤモンドカットのエッジを示すような線の陰影とを有しているため、陰影に富んだものとなっている。したがって、この陰影ある透かし模様Pと、上記乱反射した光によって生じた多彩な色調の光沢色とが組み合わされることによって、上記光透過部3から見えるデザインは、従来にない、斬新で美麗な印象を与えるものとなる。
【0028】
そして、上記透かし模様Pは、成形品4の裏面側の透明層9上に形成されており、成形品4の表面自体は、本来の平滑性が維持されているため、これらの模様が経時的に摩耗・損傷したり汚れたりすることがない。また、上記陰影ある透かし模様Pは、COレーザの照射によって、簡単に形成することができ、大きなコストアップや製造ロットの制約を招くことがなく、短時間で、微細な透かし模様Pを効率よく得ることができる。
【0029】
しかも、上記光透過着色層8は、透明樹脂層6の凹凸成形面に透明着色層5としてTiO/SiO薄膜を積層したものであるため、その表面の色調がオパール調の光沢色を有し、色調がより興趣に富むものとなる。
【0030】
また、上記光透過着色層8の裏面に、ホットスタンプ箔からなる金属光沢層7が形成されていることにより、上記透明着色層5および透明樹脂層6を通過した光(β)が、その光量をロスすることなく、金属光沢層7表面で反射し、再び透明着色層5および透明樹脂層6を通過することができる。したがって、光透過部3から見える上記デザインが、より鮮やかな印象を与えるものとなる。
【0031】
このような、上記光透過着色層8は、成形品4の裏面に、凹凸が形成された面を対峙させてセットするものであり、この凹凸部が直接外部に晒されるものではない。したがって、上記光透過着色層8の凹凸部が摩耗・損傷したり汚れたりすることがなく、上記多彩な色調の光沢色を長期間にわたって保持することができる。
【0032】
なお、上記の例において、成形品4の透明層9を構成する透明部材は、従来から容器等の成形品に用いられる透明部材を用いることができ、アクリル樹脂の他、例えば、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート等があげられる。これらは、光透過部3を形成し、また、透かし模様Pの陰影をみせるために透明でなければならないが、無色である必要はなく、多少着色されていても、反対側が透けて見えるものであれば差し支えはない。
【0033】
また、上記透明層9の裏面に形成される薄膜層10は、上記の例では、白色転写フィルムから転写される白色印刷層を用いたが、その材料は、従来から成形品の加飾に用いられるどのような薄膜層10であっても差し支えない。ただし、上記透明層9との対比から、非透明でなければならず、着色フィルム(シート)の他、ホログラムシート、金属箔、金属蒸着層、塗料塗膜等、各種のものが用いられる。そして、上記薄膜層10の形成方法も、インモールド転写成形の他、蒸着、スパッタリング、メッキ、ホットスタンプ、コーティング等、その材質に応じて適宜の方法が採用される。なお、「非透明」とは、上記薄膜層10の除去部と非除去部とを対比した場合に、その見え方に差異があることが認識できる程度に透明でないことをいい、いわゆる「半透明」も含む趣旨で用いている。
【0034】
そして、上記の例において、光透過着色層8の透明樹脂層6を構成する透明部材は、従来から容器等の成形品に用いられる透明部材を用いることができる。このような透明部材としては、アクリル樹脂の他、例えば、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート等があげられる。これらは光を通すことが必要であるため、透明でなければならないが、必ずしも無色である必要はなく、着色されていてもよい。また、このような透明樹脂層6に凹凸を形成する方法は、上記の例では、金型加工によるものであるが、レーザ加工,エッチング加工等の樹脂成形品を加工する方法を用いることもできる。
【0035】
また、上記の例では、透明樹脂層6は、ファセットカット状に凹凸が形成されているが、この凹凸は必ずしもファセットカット状に形成する必要はなく、付与すべきデザインに応じて、適宜の凹凸形状に形成することができる。
【0036】
そして、上記の例では、透明着色層5として、TiO/SiO薄膜を用いているが、これに代えて、TiO/SiO薄膜以外の任意の材料を用いることもできる。したがって、色調に合わせた材料を自由に選択できるため、よりバラエティに富んだデザインの実現が可能となる。
【0037】
また、上記の例では、金属光沢層7を、光透過着色層8の裏面に直接ホットスタンプ箔を用いて形成しているが、これに限らず、メタリック塗装、金属蒸着等を用いてもよい。また、光透過着色層8に直接形成せず、別に用意した金属光沢層を有するシート(金属蒸着シート等)に光透過着色層8を重ねるようにしてもよい。さらに、これとは別に用意した、金属光沢層を有する成形品の上に光透過着色層8を重ねるように配設してもよい。そして、これらの金属光沢層は、光を反射することができればよく、その色調は一般的なゴールド、シルバーの他、これらの金属光沢色にピンク、イエロー等の色をつけたものであってもよい。このように金属光沢層の色調を選択することで、さらに興趣に富む印象深いデザインを実現することができる。
【0038】
なお、上記成形品4において、薄膜層10の一部を裏面から除去し光透過部3を形成する代わりに、図9(a)に示すように、薄膜層10の一部を表面から除去して光透過部3を形成してもよい。この場合、成形品4の表面に微細な凹凸ができるため、より立体的な印象を与えることができる。また、これら透明層9に形成された薄膜層10の一部を除去するに際しては、光透過部3を形成できればよく、必ずしも透明層9の表面に透かし模様Pを形成する必要はない。この場合、透かし模様Pを形成するための工程やコストが不要となるという利点が得られる。そして、透明層9に形成された薄膜層10の一部を除去するにあたり、上記の例では、COレーザを照射を行なっているが、塗装や蒸着を部分的に溶かす等、その他の方法によっても行なうことができ、表現したいデザイン,製造工程,製造コスト等により、これらの方法を自由に選択することができる。
【0039】
さらに、成形品4において、薄膜層10を有する透明層9を用いる代わりに、薄膜層を有しない非透明層11を用いることもでき、図9(b)に示すように、非透明層11の一部分に空隙を設け、この空隙を光透過部3とすることができる。この場合、上記多彩な色調の光沢色を透明層9を通さず直接見ることができるため、印象深いデザインをつくることができ、また、透明層9に薄膜層10を設けたり、さらにその一部を除去する工程を必要としないため、省工程化、省コスト化を実現できる。この非透明層11を構成する部材は、上記透明層9に用いる透明部材を非透明となるように着色したもの、あるいは他の非透明部材を用いることができる。ここで非透明とは、反対側が透けて見えないものをいい、光を多少通すものも含む趣旨である。
【0040】
また、上記の例では、蓋体2の裏面側に用いる光透過着色層8として、図7に示すように透明樹脂層6と透明着色層5とを備えたものを用いているが、この透明樹脂層6を望みの色調に着色すると、透明樹脂層6表面に着色を施す必要がなくなるため、必ずしも透明着色層5を積層しなくてもよく、透明樹脂層6のみからなるものとすることもできる。この場合には、透明着色層5を積層する工程を省略することができ、コストの削減も実現できる。
【0041】
なお、図1は、本発明をコンパクト容器に適用したものであるが、本発明を適用する成形品は、容器に限らず、各種の樹脂成形品、あるいは樹脂成形品に他の部材を組み合わせた成形品等に適用可能である。例えば、携帯電話、文房具、家電製品、各種ケース等に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例の説明図である。
【図2】上記実施例における蓋体の縦断面図である。
【図3】上記実施例における成形品の縦断面図である。
【図4】上記実施例における透かし模様の説明図である。
【図5】上記実施例における光透過部および透かし模様の形成方法の説明図である。
【図6】(a)は上記実施例における光透過部および透かし模様の形成方法の説明図、(b)はその光透過部および透かし模様の平面図である。
【図7】上記実施例における光透過着色層および金属光沢層の縦断面図である。
【図8】上記実施例における多彩な色調の光沢色の説明図である。
【図9】(a)、(b)は、ともに本発明の他の実施例における光透過部の形成方法の説明図である。
【符号の説明】
【0043】
3 光透過部
4 成形品
7 金属光沢層
8 光透過着色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過する光透過部が部分的に形成された成形品の、少なくとも上記光透過部が形成された部分の裏面に、光透過着色層を介して金属光沢層が設けられた加飾成形品であって、上記光透過着色層表面の、上記成形品の光透過部と対峙する面に凹凸が形成され、光透過部から入射し光透過着色層表面で反射する光と、同じく光透過部から入射し光透過着色層を通過して金属光沢層表面で反射し再び光透過着色層を通過する光が、上記凹凸によって乱反射されるよう設定されており、上記両反射光の光路の違いによって、光透過部から見える色が多彩な色調の光沢色として見えるようになっていることを特徴とする加飾成形品。
【請求項2】
上記成形品の光透過部が、透明樹脂成形品の表面もしくは裏面に形成された被覆層を部分的に除去することによって形成されている請求項1記載の加飾成形品。
【請求項3】
上記光透過部の表面もしくは裏面が、微細凹凸面に形成されている請求項2記載の加飾成形品。
【請求項4】
上記光透過着色層が、透明樹脂層と、その表面に積層された透明着色層とで構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の加飾成形品。
【請求項5】
上記金属光沢層が、上記光透過着色層の裏面に、金属蒸着膜,ホットスタンプ箔,メタリック塗装のいずれかによって形成された層である請求項1〜4のいずれか一項に記載の加飾成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−23337(P2010−23337A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186896(P2008−186896)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)