説明

効率的フラボン構築に基づくChafurosideの新規製造法

【課題】Chafurosideは烏龍茶から単離された物質であり800 μgほど単離するために大量の烏龍茶を必要とし、その精製も困難を極める。そのため、その量的確保が最大の技術的問題点である。
【解決手段】アシル基導入反応による β-ジケトンへの誘導、フラボン閉環反応、光延反応を利用して、Chafuroside を合成する方法を開拓し、Chafuroside (化5)の量的確保を可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、抗炎症薬の有効成分等として有用な Chafuroside 等のフラボン類の製法に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎を始めとした炎症に対して使用されるステロイド類は、対症療法的に使用されるのみであり、かつ極めて重篤な副作用を有することも良く知られている。現在のところステロイド類に代わる新規な薬物は知られておらず、その開発は急務の課題となっている。
一方、フラボンC配糖体が抗アレルギー作用を示すことが知られているが(特許文献1)、これは烏龍茶から単離された物質であり800μgほど単離するために248Lもの烏龍茶を必要とし、その精製も困難を極める。そのため、現在のところ、その量的確保が最大の技術的問題点となっている。
【特許文献1】特開2004−35474
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、アシル基導入反応によるβ−ジケトンへの誘導、フラボン閉環反応、光延反応を効果的に利用して、Chafuroside を合成する新規な方法を開拓し、Chafuroside の量的確保を可能にした。
【課題を解決するための手段】
【0004】
即ち、本発明は、非プロトン性溶媒中で下式(化1)
【化1】

(式中、R 1 は水酸基、保護された水酸基、エーテル基又はエステル基、ハロゲン原子を表し、R2 はそれぞれ同じであっても異なってもよく水素原子又はアルキル基、アシル基、水酸基、保護された水酸基、ハロゲン原子、グルコース等の糖類を表す。)で表される化合物と下式(化2)
【化2】


(式中、R3 はそれぞれ同じであっても異なってもよく水素原子又はアルキル基、アシル基、水酸基、保護された水酸基、ハロゲン原子を表し、R4 はベンツトリアゾール基、イミダゾール基、ハロゲン原子、エステル基を表す。)で表される化合物とを塩基存在下で反応させる第1段階、及びプロトン性あるいは非プロトン性溶媒中で下式(化3)
【化3】


(式中、R5 はそれぞれ同じであっても異なってもよく水素原子又はアルキル基、アシル基、水酸基、保護された水酸基、ハロゲン原子を表し、R 6 は水酸基、保護された水酸基、エーテル基又はエステル基、ハロゲン原子を表し、R7 はそれぞれ同じであっても異なってもよく水素原子又はアルキル基、アシル基、水酸基、保護された水酸基、ハロゲン原子、グルコース等の糖類を表す。)で表される化合物を酸の存在下で反応させる第2段階、及び非プロトン性溶媒中で下式(化4)
【化4】


(式中、R8 はそれぞれ同じであっても異なってもよく水素原子又はアルキル基、アシル基、水酸基、保護された水酸基、ハロゲン原子を表し、R 9 は水酸基、保護された水酸基、エーテル基又はエステル基、ハロゲン原子を表し、R10 はそれぞれ同じであっても異なってもよく水素原子又はアルキル基、アシル基、水酸基、保護された水酸基、ハロゲン原子、グルコース等の糖類を表す。)で表される化合物を、アゾジカルボン酸アミド又はアゾジカルボン酸エステル及びトリアルキルホスフィン又はトリアリールホスフィンの存在下又はホスホラン類の存在下で反応させる第3段階を含む下式(化5)
【化5】

で表される Chafuroside 等のフラボン類の製法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、新規な抗炎症薬 Chafuroside に関するものであり、アトピー性皮膚炎を始めとしたアレルギー疾患治療分野における学術的な効果は極めて大きい。また、本発明により得られるChafuroside及び合成中間体が新規な治療薬の開発に直接結びついた場合、学術的な意義のみでなく、医療上の貢献度、さらには経済的な波及効果も多大なものとなることが期待される。また本製法を利用することで記憶改善作用が期待されるフラボン類の創製にも発展可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の製法では下式(化1)
【化1】


で表される化合物を用いる。
式中、R1 は水素原子又はアルキル基、アシル基、ハロゲン原子、水酸基、保護された水酸基を表す。この保護基として、例えば、ベンジル基(Bn)、アルキル基(メチル基、MOM基等)、TES基、TBDMS基、TBDPS基、TIPS基等のシリル基等のエーテル系の保護基、アセチル基等のエステル基系の保護基が挙げられる。
R2 はそれぞれ同じであっても異なってもよく水素原子又はアルキル基、アシル基、ハロゲン原子、グルコース等の糖類、水酸基、保護された水酸基を表す。この保護基として、例えば、ベンジル基(Bn)、アルキル基(メチル基、MOM基等)、TES基、TBDMS基、TBDPS基、TIPS基等のシリル基等のエーテル系の保護基、アセチル基等のエステル基系の保護基が挙げられる。
【0007】
このような一般式(化1)で表される化合物として下記のような化合物が挙げられる。
【化7】


(式中、水酸基は保護されていてもよい。)
【0008】
また本発明の製法では下式(化2)
【化2】


で表される化合物を用いる。
R3 はそれぞれ同じであっても異なってもよく水素原子又はアルキル基、アシル基、水酸基、保護された水酸基、ハロゲン原子を表し、R4 はベンツトリアゾール基、イミダゾール基、ハロゲン原子、エステル基を表す。
【0009】
このような一般式(化2)で表される化合物として下記のような化合物が挙げられる。
【化8】


(式中、水酸基は保護されていてもよい。)
【0010】
また本発明の製法では下式(化3)
【化3】


で表される化合物を用いる。
R5 はそれぞれ同じであっても異なってもよく水素原子又はアルキル基、アシル基、水酸基、保護された水酸基、ハロゲン原子を表し、R 6 は水酸基、保護された水酸基、エーテル基又はエステル基、ハロゲン原子を表し、R7 はそれぞれ同じであっても異なってもよく水素原子又はアルキル基、アシル基、水酸基、保護された水酸基、ハロゲン原子、グルコース等の糖類を表す。
【0011】
このような一般式(化3)で表される化合物として下記のような化合物が挙げられる。
【化9】


(式中、水酸基は保護されていてもよい。)
【0012】
また本発明の製法では下式(化4)
【化4】

で表される化合物を用いる。
R8 はそれぞれ同じであっても異なってもよく水素原子又はアルキル基、アシル基、水酸基、保護された水酸基、ハロゲン原子を表し、R 9 は水酸基、保護された水酸基、エーテル基又はエステル基、ハロゲン原子を表し、R10 はそれぞれ同じであっても異なってもよく水素原子又はアルキル基、アシル基、水酸基、保護された水酸基、ハロゲン原子、グルコース等の糖類を表す。
【0013】
このような一般式(化4)で表される化合物として下記のような化合物が挙げられる。
【化10】

(式中、水酸基は保護されていてもよい。)
【0014】
本発明の製法は、非プロトン性溶媒中で上記一般式(化1)で表される化合物と上記一般式(化2)で表される化合物とを塩基の存在下で反応させる第1段階、及びプロトン性あるいは非プロトン性溶媒中で上記一般式(化3)で表される化合物を酸の存在下反応させる第2段階、及び非プロトン性溶媒中で上記一般式(化4)で表される化合物をアゾジカルボン酸アミド又はアゾジカルボン酸エステル及びトリアルキルホスフィン又はトリアリールホスフィンの存在下又はホスホラン類の存在下で反応させる第3段階から成る。
【0015】
第1段階はアシル基導入反応によりβ−ジケトンへと誘導する反応である。
非プロトン性溶媒としては、トルエン、THF等が挙げられる。
非プロトン性溶媒中の一般式(化1)で表される化合物の濃度は好ましくは0.01−1.OMであり、これに一般式(化2)で表される化合物をほぼ化学量論量加えることが好ましい。
塩基としては、LHMDS, KHMDS, NaHMDS, LDA を用いることができる。
溶媒中の塩基の濃度は通常0.001−1,OM、好ましくは0.01−0.1Mである。
反応温度は通常−78−100℃、好ましくは一20−30℃で行われる。
この段階の反応により上記一般式(化3)で表される有用な中間体が生成する。
【0016】
第1段階はβ−ジケトン誘導体の閉環反応によりフラボン骨格を形成する反応である。
プロトン性溶媒としては、メタノール、エタノール、水等が挙げられる。
非プロトン性溶媒としては、トルエン、THF等が挙げられる。
プロトン性あるいは非プロトン性溶媒中の一般式(化3)で表される化合物の濃度は好ましくは0.01−1.O Mである。
酸としては、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸を用いることができる。
溶媒中の酸の濃度は通常0.001−1.OM、好ましくは0.01−0.1Mである。
反応温度は通常 0−100℃、好ましくは20−40℃で行われる。
この段階の反応により上記一般式(化4)で表される有用な中間体が生成する
【0017】
第3段階は光延反応と呼ばれる反応(Tetrahedron Letters,36,2529(1995))である。
非プロトン性溶媒としては、ベンゼン、トルエン、THF等が挙げられる。
一般式(化4)で表される化合物の少なくとも糖の2位とベンゼン環上の糖の結合位置のオルト位の水酸基が保護されていないことを要する。
非プロトン性溶媒中の一般式(化4)で表される化合物の濃度は好ましくは0.01−0.1Mである。この反応はアゾジカルボン酸アミド又はアゾジカルボン酸エステル及びトリアルキルホスフィン又はトリアリールホスフィンの存在下又はホスホラン類の存在下で行う。アゾジカルポン酸アミドとしては、1,1'−アゾビス(N,N−ジメチルホルムアミド)等が挙げられ、アゾジカルポン酸エステルとしては、ジエチルアゾジカルボキシレート等が挙げられ、トリアルキルホスフィンとしては、トリn−ブチルホスフィン等が挙げられ、トリアリールホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン等が挙げられるホスホラン類としては、cyanomethylenetribnutylphosphorane(東京化成製)が挙げられる。
これらは反応物(一般式(化4)で表される化合物)に対して1当量以上用いることが好ましい。反応温度は通常10−100℃、好ましくは20−80℃である。
【0018】
本発明の製法は、上記の第1段階とその後の第2段階とを主反応として含むことを特徴とするが、これら反応の前後や最終生成物(フラボンC配糖体(Chafuroside))を生成するまでの間に公知の反応を適宜加えてもよい。そのような反応として、(A)水酸基の保護、(E)水酸基の脱保護反応等が挙げられる。これらの反応は本発明の特徴的な部分ではなく、一般的な方法に従って行えばよく、以下その一般的方法を挙げるが、これらに限定されない。
(A)水酸基の保護は、塩基性条件(トリアルキルアミンやK2CO3等の無機塩の存在下)の非プロトン性溶媒中で行うのが一般的である。
(B)水酸基の脱保護反応は、保護基にもよるが、保護基がシリル基やアルキル基等の場合には酸性条件下、ベンジル基等では触媒的水素化条件(例えば、Pd触媒を加えた水素ガス存在下で行う又はF−イオン存在下で行うのが一般的である。
【実施例】
【0019】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
製造例1
アルゴン気流下、0 ℃ にて化合物1(4-(benzyloxy)benzoic acid)(2.0 g, 8.77 mmol)の無水塩化メチレン(20mL)溶液に、SOCl2 (0.949 mL,13.2 mmol)および DMF(0.182 mL,3.51 mmol)を加え、同温にて 1 時間撹拌した。反応液を減圧留去し、化合物 2 を得た。
アルゴン気流下、0 ℃ にて 1H-benzo[d][1,2,3]triazole)(1.04 g, 8.77 mmol)の無水塩化メチレン(30mL) 溶液に、Et3N (1.21 mL,8.77 mmol)を0 ℃ にて加え、同温にて 30 分撹拌した。次いで、化合物 2 (8.77 mmol)を0 ℃ にて加え、同温にて 1 時間撹拌した後、室温に昇温し 2 時間撹拌した。反応液を減圧留去し、塩化メチレンーヘキサンから再結晶して化合物3((1H-benzo[d][1,2,3]triazol-1-yl)(4-(benzyloxy)phenyl)methanone)(1.75 g,60%)を無色結晶として得た。生成物の分析データと反応式を下に示す。
1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ 5.20 (s, 2H), 7.3-7.8 (m, 9H), 8.17 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 8.30 (d, 2H, J = 9.1 Hz), 8.38 (d, 1H, J = 8.2 Hz).
【化11】


実施例1 Chafuroside の製造方法
【0020】
アルゴン気流下、0 ℃ にて化合物4(1-(4-(benzyloxy)-2,6-dihydroxy-3-((2S,3R,5R)-3,4,5-tris(benzyloxy)-6-(benzyloxymethyl)-tetrahydro-2H-pyran-2-yl)phenyl)ethanone)(200 mg, 0.26 mmol) および imidazole (52 mg, 0.78 mmol) の DMF 溶液 (1.2 mL) に、TBDPS-Cl (0.203 mL, 0.78 mmol) を加え、室温にて 1 時間撹拌した。反応液に飽和NH4Cl aq. を加え、酢酸エチルにて抽出した。抽出液を飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下溶媒を留去して得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt = 6:1)にて精製し化合物5(1-(4-(benzyloxy)-6-(tert-butyldiphenylsilyloxy)-2-hydroxy-3-((2S,3R,5R)-3,4,5-tris(benzyloxy)-6-(benzyloxymethyl)-tetrahydro-2H-pyran-2-yl)phenyl)ethanone(248 mg, 95%)を無色油状物質として得た。生成物の分析データと反応式を下に示す。
1H NMR (270 MHz, CDCl3, rotamers): δ 1.09, 1.12 (s, 9H), 2.85, 2.91 (s, 3H), 3.5-5.1 (m, 17H), 5.63 (s, 1H), 7.72-6.89 (m, 35H), 13.81, 14.19 (s, 1H).
MS (FAB) m/z 1019 (M+H)+
【化12】

【0021】
アルゴン気流下、室温にて化合物5 (1.05 g, 1.03 mmol) および PPh3 (810 mg, 3.09 mmol) の THF 溶液 (30 mL) に、benzyl alcohol (0.320 mL, 3.09 mmol) および DEAD (1.3 mL, 3.09 mmol) を加え、室温にて 1 時間撹拌した。反応液を減圧留去して得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt = 12:1)にて精製し化合物6(1-(2,4-bis(benzyloxy)-6-(tert-butyldiphenylsilyloxy)-3-((2S,3R,5R)-3,4,5-tris(benzyloxy)-6-(benzyloxymethyl)-tetrahydro-2H-pyran-2-yl)phenyl)ethanone)(1.07 g, 94%)を無色油状物質として得た。生成物の分析データと反応式を下に示す。
1H NMR (270 MHz, CDCl3, rotamers): δ 1.04, 1.07 (s, 9H), 2.47, 2.59 (s, 3H), 3.5-5.0 (m, 19H), 5.85 (s, 1H), 6.8-7.8 (m, 40H).
【化13】

【0022】
アルゴン気流下、-78 ℃ にて化合物6 (240 mg, 0.216mmol) の THF 溶液 (10 mL) に、KHMDS (0.5 M トルエン溶液) (2.16 mL, 1.08 mmol) を加え、同温にて 1.5 時間撹拌した。次いで製造例1で得た化合物3 (141 mg, 0.432mmol) を加え、同温にて 1 時間撹拌した。0 ℃ に昇温し反応液に飽和NH4Cl aq. を加え、ジエチルエーテルにて抽出した。抽出液を飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下溶媒を留去して得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt = 12:1)にて精製し化合物7(1-(4-(benzyloxy)phenyl)-3-(2,4-bis(benzyloxy)-6-(tert-butyldiphenylsilyloxy)-3-((2S,3R,5R)-3,4,5-tris(benzyloxy)-6-(benzyloxymethyl)-tetrahydro-2H-pyran-2-yl)phenyl)propane-1,3-dione)(136 mg, 48%)を黄色油状物質として得た。生成物の分析データと反応式を下に示す。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, rotamers): δ 0.87, 0.95 (s, 9H, TBDPS), 3.1-5.5 (m, 23H), 6.61, 6.64 (s, 1H), 5.8-8.2 (m, 49H).
【化14】

【0023】
0 ℃ にて化合物7 (125 mg, 0.095mmol) の THF 溶液 (3 mL) に、TBAF (1.0 M THF 溶液) (0.47mL, 0.474 mmol) を加え、同温にて 30 分撹拌した。次いで製造例1で得た化合物3 (141 mg, 0.432mmol) を加え、同温にて 1 時間撹拌した。0 ℃ に昇温し反応液に飽和NH4Cl aq. を加え、ジエチルエーテルにて抽出した。抽出液を飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧下溶媒を留去して得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt = 10:1)にて精製し化合物8(1-(4-(benzyloxy)phenyl)-3-(2,4-bis(benzyloxy)-6-hydroxy-3-((2S,3R,5R)-3,4,5-tris(benzyloxy)-6-(benzyloxymethyl)-tetrahydro-2H-pyran-2-yl)phenyl)propane-1,3-dione)(102 mg, 99%)を黄色油状物質として得た。生成物の分析データと反応式を下に示す。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, rotamers): δ 3.0-5.2 (m, 23H), 6.34 (s, 1H), 6.6-7.7 (m, 39H, Ar), 12.76, 12.79 (s, 1H, OH).
【化15】

【0024】
アルゴン気流下、室温にて化合物8 (197 mg, 0.138 mmol) および p-TsOH (1 水和物) (26mg, 0.138 mmol) のトルエン溶液 (10 mL) を、80 ℃ にて 2 時間撹拌した。反応液を減圧留去して得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt = 5:1)にて精製し化合物9(7-(benzyloxy)-2-(4-(benzyloxy)phenyl)-5-hydroxy-6-((2S,3R,5R)-3,4,5-tris(benzyloxy)-6-(benzyloxymethyl)-tetrahydro-2H-pyran-2-yl)-4H-chromen-4-one)(98 mg, 73%)を無色油状物質として得た。生成物の分析データと反応式を下に示す。
1H NMR (270 MHz, CDCl3, rotamers): δ 3.4-5.4 (m, 19H), 6.39, 6.46, 6.55, 6.61 (s, 2H), 6.8-8.0 (m, 34H), 13.32, 13.39 (s, 1H, OH).
【化16】

【0025】
水素気流下、化合物9 (83 mg, 0.085 mmol) および Pd(OH)2 (7.0mg, 0.051 mmol) の酢酸エチル−メタノール (1:1) 混合溶液トルエン溶液 (4 mL) を、室温にて 12 時間撹拌した。さらに、Pd(OH)2 (7.0mg, 0.051 mmol) を加え、同温にて 4 時間撹拌した。反応液を濾過後、溶媒を減圧留去して化合物10
(5,7-dihydroxy-2-(4-hydroxyphenyl)-6-((2S,3S,5S)-3,4,5-trihydroxy-6-(hydroxymethyl)-tetrahydro-2H-pyran-2-yl)-4H-chromen-4-one)(30 mg)を燈色アモルファスとして得た。生成物の分析データと反応式を下に示す。
1H NMR (270 MHz, CD3OD): δ 3.2-4.2 (m, 6H), 4.7-4.82 (d, 1H), 6.39 (s, 1H), 6.49 (s, 1H), 6.82 (d, 2H, J = 8.6 Hz), 7.73 (d, 2H, J = 8.6 Hz).
【化17】

【0026】
アルゴン気流下、室温にて化合物10 (9.0 mg, 0.021 mmol) および PPh3 (11 mg, 0.042 mmol) の THF 溶液 (1 mL) に、DEAD (0.018 mL, 0.042 mmol) を加え、60 ℃ にて 1 時間撹拌した。反応液を減圧留去して得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH = 8:1)にて精製し化合物11 (Chafuroside)(2.0 mg, 23%)を無色アモルファスとして得た。生成物の分析データと反応式を下に示す。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6, 300K): δ 3.21 (ddd, 1H, J = 9.2, 5.7, 2.3 Hz), 3.36 (td, 1H, J = 9.2, 5.4 Hz), 3.40 (dt, 1H, J = 12.2, 5.7 Hz), 3.64 (ddd, 1H, J = 12.2, 5.7, 2.3 Hz), 3.84 (dt, 1H, J = 9.2, 5.1 Hz), 4.42 (t, 1H, J = 5.7 Hz), 4.59 (dd, 1H, J = 5.1, 3.0 Hz), 4.99 (d, 1H, J = 5.4 Hz), 5.07 (d, 1H, J = 3.0 Hz), 5.37 (d, 1H, J = 5.1 Hz), 6.75 (s, 1H), 6.84 (s, 1H), 6.92 (d, 2H, J = 9.2 Hz), 7.95 (d, 2H, J = 9.2 Hz), 10.35 (brs, 1H), 13.53 (s, 1H).
13C NMR (500 MHz, DMSO-d6, 300K): δ 60.9, 67.3, 71.2, 78.8, 87.5, 90.2, 102.8, 105.0, 111.3, 115.9, 120.9, 128.5, 157.0, 158.4, 161.3, 164.0, 166.3, 182.3.
MS (FAB) m/z 415 (M+H)+; HRMS calcd for C21H19O9 (M+H)+ 415.1029, found 415.1032.
【化18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非プロトン性溶媒中で下式(化1)
【化1】

(式中、R 1 は水酸基、保護された水酸基、エーテル基又はエステル基、ハロゲン原子を表し、R2 はそれぞれ同じであっても異なってもよく水素原子又はアルキル基、アシル基、水酸基、保護された水酸基、ハロゲン原子、グルコース等の糖類を表す。)で表される化合物と下式(化2)
【化2】


(式中、R3 はそれぞれ同じであっても異なってもよく水素原子又はアルキル基、アシル基、水酸基、保護された水酸基、ハロゲン原子を表し、R4 はベンツトリアゾール基、イミダゾール基、ハロゲン原子、エステル基を表す。)で表される化合物とを塩基存在下で反応させる第1段階、及びプロトン性あるいは非プロトン性溶媒中で下式(化3)
【化3】


(式中、R5 はそれぞれ同じであっても異なってもよく水素原子又はアルキル基、アシル基、水酸基、保護された水酸基、ハロゲン原子を表し、R 6 は水酸基、保護された水酸基、エーテル基又はエステル基、ハロゲン原子を表し、R7 はそれぞれ同じであっても異なってもよく水素原子又はアルキル基、アシル基、水酸基、保護された水酸基、ハロゲン原子、グルコース等の糖類を表す。)で表される化合物を酸の存在下で反応させる第2段階、及び非プロトン性溶媒中で下式(化4)
【化4】

(式中、R8 はそれぞれ同じであっても異なってもよく水素原子又はアルキル基、アシル基、水酸基、保護された水酸基、ハロゲン原子を表し、R 9 は水酸基、保護された水酸基、エーテル基又はエステル基、ハロゲン原子を表し、R10 はそれぞれ同じであっても異なってもよく水素原子又はアルキル基、アシル基、水酸基、保護された水酸基、ハロゲン原子、グルコース等の糖類を表す。)で表される化合物を、アゾジカルボン酸アミド又はアゾジカルボン酸エステル及びトリアルキルホスフィン又はトリアリールホスフィンの存在下又はホスホラン類の存在下で反応させる第3段階を含む下式(化5)
【化5】

で表される Chafuroside 等のフラボン類の製法。
【請求項2】
前記一般式(化4)で表される化合物が下記の化合物である請求項1に記載の製法。
【化6】


(式中、水酸基は保護されていてもよい。)

【公開番号】特開2008−239513(P2008−239513A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79311(P2007−79311)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(507219686)静岡県公立大学法人 (63)
【Fターム(参考)】