説明

動力伝達装置

【課題】入力部Eと、出力部Aと、ポンプインペラP及びタービンホイールTを備えたハイドロダイナミック式の構成部材3と、この構成部材3を部分的にロックアップする装置5とを有し、該装置が圧力媒体で負荷可能なピストンエレメント10を有する調節装置を備え、流動媒体の回転速度差に影響を与えるための手段が設けられている形式の、駆動機械と被駆動部との間で動力伝達を行う動力伝達装置1を改良して、ハイドロダイナミックな影響に基づく軸方向力に対してピストンエレメントを効果的に保護する。
【解決手段】前記手段が、前記ピストンエレメント10と同期回転可能であるが、このピストンエレメント10と直接接続されていない干渉エレメント12を有し、該干渉エレメント12が、半径方向で外方に延在し、かつ半径方向で少なくとも外径の領域内で、前記ピストンエレメント10に対して軸方向で間隔を保って配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に駆動機械と被駆動部との間で動力伝達を行うための動力伝達装置であって、ハイドロダイナミック式の構成部材と、ハイドロダイナミック式の構成部材を少なくとも部分的にロックアップするための装置とを有している形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロダイナミック式の回転数/トルクコンバータとロックアップクラッチとを有する動力伝達装置は、例えばドイツ連邦共和国特許公開第4433256号明細書により公知である。動力伝達装置は、駆動機械に相対回動不能に(つまり一緒に回転するように)結合された入力部を有している。この入力部は、例えば少なくともほぼ半径方向に延在する壁部を備えたハウジングによって形成される。前記入力部と回転数/トルクコンバータのタービンホイールとの間に配置されたロックアップクラッチは、タービンホイールと回転可能に結合している少なくとも1つの薄板を有しており、該薄板は、液圧力の作用下で、一方ではハウジングに作用接続せしめられ、また他方では前記ハウジングとタービンホイールとの間に配置された、軸方向に移動可能なピストンに作用接続せしめられる。ピストンとタービンホイールとの間に、圧力媒体によって負荷可能な第1の室が設けられており、該第1の室はクラッチを閉鎖させるために用いられる。圧力媒体で負荷可能な、ロックアップクラッチを開放させるための別の第2の室は、ハウジング壁部とピストンとの間に設けられている。この場合、圧力媒体で負荷可能な第1の室及び第2の室内には、トラクション運転(通常運転)中に開放された又はスリップするロックアップクラッチにおいて、タービンとピストンとの間に存在する流動媒体の低い回転速度と、圧力室内でピストンとハウジングとの間に存在する流動媒体の高い回転速度との間の回転速度差を減少させるための手段が設けられている。これは、例えば、翼状の成形部を備えたロックアップクラッチの薄板の、半径方向で内方の延長部によって実現される。
【0003】
ロックアップクラッチの接続を改善するために、ドイツ連邦共和国特許公開第102006028557号明細書によれば、回転速度差を減少させるための手段の変化実施例が公知である。この変化実施例によれば、ロックアップクラッチの操作装置のピストンエレメントが、連結ばね装置によって、ハウジングに相対回動不能、しかしながら軸方向で可能に結合されていて、流れガイド手段を有しており、この流れガイド手段は、ピストンとタービンホイールとの間の流動媒体の回転数に影響を及ぼし、それによって、ピストンとタービンとの間の流動媒体の回転数の迅速な上昇が得られ、ひいてはロックアップクラッチの接続開始時のダイナミックな圧力の迅速な上昇が得られる。
【0004】
しかしながら一般的に、動力伝達装置の3チャンネル構造を自動車に用いる場合、流動媒体のハイドロダイナミックな影響に基づいて、ロックアップクラッチの、衝撃のないクリーンな調整を保証するためには問題がある。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許公開第4433256号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許公開第102006028557号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の動力伝達装置を改良して、特に任意の圧力で負荷可能な操作装置の構成においてロックアップクラッチの接続特性をさらに改善し、またロックアップクラッチを自動閉鎖させるような、ロックアップクラッチに作用するハイドロダイナミックな影響を、特に簡単な手段によって減少させることができるようなものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決策は、請求項1の特徴部に記載されている。本発明の有利な実施態様は従属請求項に記載されている。
【0007】
特に駆動機械と被駆動部との間で動力伝達を行うための、本発明に従って構成された動力伝達装置は、少なくとも1つの入力部と、出力部と、ポンプインペラ及びタービンホイールを備えたハイドロダイナミック式の構成部材と、該ハイドロダイナミック式の構成部材を少なくとも部分的にロックアップするための装置とを有しており、該装置が圧力媒体で負荷可能なピストンエレメントを有する調節装置を備えており、前記ピストンエレメントの両側で流動媒体の回転速度差に影響を与えるための手段が設けられている形式のものにおいて、流動媒体の回転速度差に影響を与えるための前記手段が、前記ピストンエレメントと同期回転可能であるが、このピストンエレメントと直接接続されていない干渉エレメントを有しており、該干渉エレメントが、半径方向で外方に延在し、かつ半径方向で少なくとも外径の領域内で、前記ピストンエレメントに対して軸方向で間隔を保って配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の解決策によれば、個別の構造群のための付加的な変更費用をかける必要なしに、簡単な手段によって、特にハイドロダイナミックな影響に基づく軸方向力の支承部をピストンエレメントから別のエレメントにずらすことによって、ハイドロダイナミックな影響に基づく軸方向力に対してピストンエレメントを効果的に保護することができる。
【0009】
干渉エレメントは種々異なる構造で構成することができる。重要なことは、干渉エレメントとピストンエレメントとの間に設けられた中間室内に存在する流動媒体によって、この流動媒体の回転速度をピストン回転数まで低下させる牽引作用が生ぜしめられる、ということである。
【0010】
干渉エレメントは、本発明の実施態様によれば、円板状の又は円環状のエレメントとして構成されており、このエレメントは有利には周方向で完全に閉じられた表面を有している。このような形式の補助エレメントは、特に構造スペースを節約して、動力伝達装置内に組み込むことができる。
【0011】
別の実施態様によれば、前記干渉エレメントが、横断面で見て、成形された、特に円錐形に成形されたエレメントとして構成されている。この干渉エレメントは、一般的に金属薄板成形部として、特に円板状の半製品から深絞りにより製作された深絞り成形部として提供されている。この場合、成形されたエレメントは、内周部の領域で、接続エレメントとの相対回動不能な結合のために用いられる接続領域を有しており、また横断面において軸方向で見て軸方向に傾斜した部分を有している、つまり連続的な又は断続的な直径変化部を備えた環状スリーブを形成している。これによって、構造部の剛性が高められ、摩耗の危険性が減少される。
【0012】
干渉エレメントは、ピストンエレメントとの直接連結されていないので、ピストンエレメントにおける軸方向力の支承部は存在しない。このために干渉エレメントは、ピストンエレメントと相対回動不能に連結されたエレメントと相対回動不能に結合されている。
【0013】
動力伝達装置の構造については複数の可能性がある。動力伝達装置は、2チャンネルユニットとして又は3チャンネルユニットして構成してもよい。動力伝達装置は、少なくとも2つの接続部、つまりハイドロダイナミック式の構成部材の作業室に連結された第1の接続部と、ハイドロダイナミック式の構成部材の外周部及びハウジングによって仕切られた、運転媒体によって満たされる室に連結された第1の接続部とを有している。3チャンネルユニットとして構成された場合、ピストンエレメントに対応配置され、かつ圧力媒体によって負荷される室に連結された、別の第3の接続部が設けられており、この場合、ピストンエレメントは、入力部において、又はこの入力部に相対回動不能に結合されたエレメントにおいて気密にかつ液密にガイドされている。
【0014】
動力伝達装置の構成に応じて、干渉エレメントのための種々異なる配置の可能性が得られる。この場合、干渉エレメントは、前記入力部と前記出力部との間において軸方向で見て、前記ハイドロダイナミック式の構成部材のタービンホイールと前記ピストンエレメントとの間に配置されている。前記入力部と前記出力部との間において軸方向で見て、ハイドロダイナミック式の構成部材のタービンホイールとピストンエレメントとの間に配置された、振動を減衰するための装置が設けられている場合は、干渉エレメントは、前記入力部前記出力部との間において軸方向で見て、有利には前記ピストンエレメントと振動を減衰するための装置との間に配置されているか、又は振動を減衰するための装置とハイドロダイナミック式の構成部材のタービンホイールとの間に配置されていてよい。このような配置は、一般的に、軸方向における付加的な構造スペースを必要とすることはなく、この場合、提供された軸方向の構造スペースは、干渉エレメントの機能のために十分である。
【0015】
第2の構成によれば、干渉エレメントは、ピストンエレメントと、ハウジングとの間若しくは動力伝達装置の入力部との間に使用される。
【0016】
ピストンエレメントに同期回転式に連結するために、干渉エレメントは、ピストンエレメントに相対回動不能に結合されたエレメントに相対回動不能に結合されている。これは、入力部の構成に応じて、入力部に相対回動不能に結合された構成部又は、出力部、又はこの出力部に相対回動不能に結合された構成部であってよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を以下に図面を用いて詳しく説明する。
【0018】
図1aは、ドライブトレイン、特に駆動機械と被駆動部との間の自動車のドライブトレインに使用するための、本発明に従って構成された動力伝達装置1の概略的な軸方向断面図を示す。被駆動部は、一般的に、図示していないトランスミッションによって形成される。動力伝達装置1は、出力伝達の機能を有していて、また所定の限界内で回転数/トルク変換を行う。動力伝達装置1は少なくとも1つの入力部Eと少なくとも1つの出力部Aとを有している。入力部Eは、図示していない駆動機械に少なくとも間接的に連結可能であって、出力部Aは、被駆動部、一般的に動力伝達装置1の後に配置されたトランスミッションに接続可能である。入力部Eと出力部Aとの間にハイドロダイナミック式の構成部材3が配置されている。このハイドロダイナミック式の構成部材3は、入力部Eと出力部Aとの間の出力伝達においてポンプインペラとして機能する一次ホイールと、入力部Eから出力部Aへの出力伝達時にタービンインペラTとして機能する二次ホイールとを有しており、ポンプインペラはこの機能状態で入力部Eと相対回動不能に結合されており、有利な形式で入力部Eと相対回動不能に連結されているか、又はこの入力部Eを形成している。またタービンインペラTは少なくとも間接的に、つまり直接的に又は別の伝達エレメントを介して間接的に出力部Aに接続されている。この場合、出力部Aは、例えばトランスミッション入力軸2に連結可能なボスエレメント23によって形成されるか、又は構成に応じてトランスミッション入力軸2自体によって形成される。ハイドロダイナミック式の構成部材3がハイドロダイナミック式の回転数/トルクコンバータ4として構成されている場合は、このハイドロダイナミック式の構成部材3はさらに、ステータLとして構成された少なくとも1つの反応部材を有している。この場合、ハイドロダイナミック式の構成部材3を介して同時に回転数及びトルク変換も行われる。ハイドロダイナミック式のクラッチとして構成されている場合、ステータとは無関係に回転数変換だけが得られる。
【0019】
動力伝達装置1はさらに、ハイドロダイナミック式の構成部材3を少なくとも部分的にロックアップするための(つまりハイドロダイナミック式の構成部材を介して出力に影響を及ぼすための)少なくとも1つの装置5を有している。この装置5は、切り換え可能なクラッチ装置6として構成されていて、一般的にロックアップクラッチと称呼される。「少なくとも部分的なロックアップ」とは、並列的な出力伝達がハイドロダイナミック式の構成部材3を介しても、また前記装置5を介しても行うことができる、という意味である。装置5は有利な形式で摩擦結合(摩擦による束縛)式のクラッチとして構成されている。現行の構成では、装置5はディスククラッチとして、特に多板クラッチとして構成されている。このために、切り換え可能なクラッチ装置6は、第1のクラッチ部分7と第2のクラッチ部分8とを有しており、これらの第1のクラッチ部分7と第2のクラッチ部分8とは互いに少なくとも間接的に作用接続せしめられる。この場合、少なくとも間接的とは、直接的に又は別の伝達部材を介して間接的に行われる、という意味である。摩擦接続式のクラッチとしての構成においては、2つのクラッチ部分7,8は、それぞれ少なくとも1つ又は複数の摩擦面を有するか又は摩擦を形成する部材を有しており、これらの部材は接続部材に相対回動不能に結合されていて、互いに作用接続させることができる。このために、装置5は操作装置9を有していて、この操作装置9はピストンエレメント10を有している。このピストンエレメント10は圧力媒体で負荷可能な室11を介して圧力媒体で負荷可能であって、操作されるようになっている。各構成部材は、それぞれ1つの出力分岐部を説明できるように構成されており、この場合、複数の出力分岐部は、特に装置5の構成に応じて、少なくとも部分的にロックアップを行うために、機能的に並列又は直列に接続可能である。この場合、第1の出力分岐部Iは、ハイドロダイナミック式の構成部材3を介して実現される。このためにポンプインペラが、少なくとも間接的に相対回動不能に動力伝達装置1の入力部Eに結合されているか、又はこの動力伝達装置1の入力部Eを形成している。有利な形式で連結は、ポンプインペラに相対回動不能に結合された、又はポンプインペラと一体的に構成されたポンプインペラシェルに相対回動不能に結合されたハウジングカバー13を介して行われる。このハウジングカバー13は、タービンホイールT及び切換可能なクラッチ装置6を周方向で包囲し、また軸方向で内室14を包囲している。
【0020】
出力分岐部I内のハイドロダイナミック式の構成部材3は、ハイドロダイナミック式の構成部材3を介する出力伝達時に、タービンホイールTによって形成され、出力部Aに直接的に又は別の伝達エレメント(例えば介在された、振動を減衰するための装置15)を介して相対回動不能に結合される。ハイドロダイナミック式のクラッチとして構成された場合、ステータとは無関係な回転数変換が行われる。
【0021】
第2出力分岐部IIは、ハイドロダイナミック式の構成部材3を介する出力の流れを少なくとも部分的に迂回するための装置5に関連して、入力部Eから出力部Aへの出力伝達を含んでいる。この場合、有利な形式で主要領域は完全なロックアップによって特徴付けられている。出力伝達は、ハイドロダイナミック式の構成部材を介する出力伝達とは無関係に、純粋に機械的に行われる。ハイドロダイナミック式の構成部材も図示の実施例では、動力伝達経路内で振動を減衰するための装置15に後置接続されている。
【0022】
図1aに示した実施例は、動力伝達装置1のいわゆる3チャンネル構造に関するものである。この3チャンネル構造は少なくとも3つの接続部によって特徴付けられている。この場合、第1の接続部16は、ハイドロリック式の構成部材3の作業室ARに少なくとも間接的に連結されており、第2の接続部17は、少なくとも間接的に、つまり直接的に又は別のエレメントを介して内室14に接続されており、これに対して、接続部18は、圧力媒体によって負荷可能な室11に連結されている。制御に応じて、2つの接続部16及び17を介して、ハイドロダイナミック式の構成部材3の種々異なる貫流方向を実現することができ、この場合、構成部材3における圧力比に応じてハイドロダイナミック式の構成部材3が遠心力(zentrifugal)に従って又は向心力(zentripetal)に従って貫流される。遠心力による貫流の場合、作業室AR内の流れ循環路に対して、作業室ARのほぼ外側で調節される循環路が形成される。この外部の循環路を介して、例えばハイドロダイナミックな構成部材の駆動媒体の冷却が、この構成部材の運転中、特に出力伝達時にハイドロダイナミックな出力分岐部Iを介して行われる。これに対して、向心力による貫流の場合、出力伝達のために作業室AR内の循環路が維持され、この場合、外部の冷却流も維持される。またこの場合接続部16,17は、圧力媒体供給及び/又ガイドシステムに連結されている。この圧力媒体供給及び/又はガイドシステムは、様々な形態で構成することができる。このためにさらに、この圧力媒体供給及び/又はガイドシステムに、各接続部16,17における圧力比を制御するための手段が設けられている。さらにまた、接続部18も、前記同じ圧力媒体供給及び/又はガイドシステムに連結されているか、又はそれとは別個のシステムに連結されていてもよい。決定的なことは、圧力媒体で負荷される室11内の圧力が自由である、つまり圧力媒体で負荷されるその他の室内の圧力比とは無関係に調節可能である、ということである。
【0023】
この場合、圧力媒体で負荷される室11は、ピストンエレメント10が気密に及び液密に、ハウジングカバー13に連結されているか、若しくはこのハウジングカバーに連結されたエレメント又は入力部Eに直接連結されていることによって、ピストンエレメント10によって制限される。この連結によって、ピストンエレメント10は、ハウジングカバー13と同じ回転速度で回転する。装置5が操作されていない状態でハイドロダイナミック式の構成部材3が駆動機械によって加速されると、ハウジングカバー13とピストンエレメント10との間において、回転数に応じて所定の遠心油圧プロフィール(Fliehoeldruckprofil)が調節される。この遠心油圧プロフィールによって、ピストンエレメント10の、互いに向き合う両端面側10a,10bに作用する圧力が不均一である場合、及びそれに起因する軸方向力Fres-axialが存在する場合に、ピストンエレメント10において軸方向力が支持されることになる。この場合に決定的なことは、ピストン10の端面側10a,10bの両側における回転するオイル質量の遠心力効果である。この遠心力効果は、回転する運転媒体質量によって制限を受けて、ハウジングカバー13とピストンエレメント10との間の回転数比が、特にタービンホイールTのハイドロダイナミック式の構成部材3における回転数に対して変化するか、又はその他の符号(Vorzeichen)を得る場合、コントロールすることがより困難になる。これは特に、駆動機械の回転数が高くなるか又は低くなるか、又は駆動形式がトラクション運転(通常走行運転)からエンジンブレーキ運転に変化する場合である。従って本発明によれば、有利には円板状のエレメント22として構成されていて、回転数金属薄板(Drehzahlblech)と称呼されている干渉エレメント12が設けられており、この干渉エレメント12を介して、軸方向力が、ピストンエレメント10における支持とは無関係に、別のエレメント特にハウジングカバー13において支持される。このために、干渉エレメント12は軸方向の組込方向で見て、入力部Eと出力部Aとの間で空間的にピストンのできるだけ近くに配置されていて、ピストンエレメント10と同期的に回転するようになっており、これによってピストンエレメント10と干渉エレメント12特に円板状のエレメント22との間に存在する駆動媒体が牽引作用によってピストンエレメント10の回転数と同じ回転数にされる。この場合、円板状のエレメント22は、ピストンエレメント端面側10a又は10bのそれぞれに対応配置されていて、それによってピストンエレメント10と接続エレメントとの間で提供された軸方向の構造スペースを考慮して特に有利な第1の構成で、振動を減衰するための装置15の前、又はハイドロダイナミック式の構成エレメント3の前に配置することができる。
【0024】
このために干渉エレメント12は、内径diの範囲内で接続領域19によって特徴付けられており、この接続領域19において、ピストンエレメント10に相対回動不能に結合されたエレメント21との相対回動不能な結合が得られる。図示の実施例ではエレメント21はピストンボス部20によって形成されており、このピストンボス部20は入力部Eに相対回動不能に結合されている。
【0025】
この場合、図1aは、特に有利な構成である、いわゆる3チャンネル力伝達システムとして構成された、本発明に従って設けられた円板状のエレメント22の特に有利な実施例を示している。この場合、ピストンエレメント10と、振動を減衰するための装置15との間でいずれにしても軸方向に存在する構造スペースは、ハイドロダイナミック式の出力伝達を少なくとも部分的にロックアップするための装置5の構成に基づいて、さらに前記装置5によって生ぜしめられた中間室の半径方向で利用される。この場合、有利な形式で金属薄板エレメントとして構成された円板状のエレメント22は、装置5の内周面24の領域に達する最大の半径方向延在寸法を有しており、この場合、円板状のエレメント22は装置5と接触していない。干渉エレメント12の摩耗作用を避けるために、また干渉エレメント12の安定化を高めるために、干渉エレメント12は有利には円錐形に成形されている。つまり干渉エレメント12は横断面で見て軸方向で異なる直径を有していて、移行部は連続的であるか又は階段状である。
【0026】
図1bは、図1aに示した円板状のエレメント22を右から見た図である。
【0027】
図2は、従来技術による3チャンネル構造の動力伝達装置1の概略図で、回転するオイル質量の遠心力効果とピストンエレメントの両側に作用する異なる圧力との相乗効果に基づいて発生する問題を示している。この場合、図2aは、従来技術による動力伝達装置1の軸方向断面図を示す。図2bは、ピストンエレメント10のための、ピストンエレメント10の両側における媒体の調節された圧力プロフィール(Druckprofil)を示す。この場合、重要なことは、この圧力プロフィールから得られる軸方向力Fres-axialである。この軸方向力Fres-axialは、動力伝達装置全体及び特にロックアップのための装置5の簡単かつ申し分のない調整をもはや保証することはない。この場合、動力伝達装置におけるハイドロダイナミックな効果は、ピストンエレメント10とタービンホイールTとの間の回転数差に基づいているか、又は動力伝達装置の構成に応じたハウジングカバー13とピストンエレメント10との間の回転数差に基づいている。一般的に、ハウジングカバー31内において、ピストンエレメント10も同じ回転速度で回転する。ハイドロダイナミック式の構成部材の加速が得られると、ハウジングカバー13とピストンエレメント14との間で、回転数に応じて所定の遠心油圧プロフィール(Fliehoeldruckprofil)が調節される。所定の遠心オイル圧力プロフィールは、ピストンエレメント10の端面側10aに作用する。しかしながらタービンホイールTは、トランスミッション、一般的にオートマチックトランスミッションに連結されていて、ひいては出力部Aに連結されている。それによって、ピストンエレメント10の一方の端面側10bに、例えば始動状態で、他方の端面側10aとは別の回転数プロフィール(Drehzahlprofil)が調節される。何故ならば、ピストンエレメント1の右側の構成部材の回転数が、ピストンエレメント10の回転数と、エンジン回転数と、この状態でゆっくりと回転するタービンTの回転数との組み合わせから成っているので、回転するオイル質量はこの右側でゆっくりとした速度によって、又は小さい角速度ωによって特徴付けられているからである。その結果、ピストンエレメント10の右側に、ピストンエレメント(ピストン金属薄板)10の左側の遠心オイル圧pwkよりも低い遠心オイル圧pwを生ぜしめる遠心オイル圧プロフィールが生じる。その結果生じる軸方向力Fres-axialは、図2aの従来技術に示されているように、ピストンエレメント10に直接作用し、その機能に影響を及ぼす。本発明に従って設けられた、図1aに示した干渉エレメント12によって、前記軸方向力Fres-axialは、もはやピストンエレメント10に直接作用するのではなく、ハウジング部分特にハウジングカバー13に直接作用するので、ピストンエレメント10の操作に不都合な影響を及ぼすことはなく、調節しようとする押圧力を考慮してピストンエレメント10を自由に制御することができる。
【0028】
図3a及び図3bは、線図、特に回転数と時間との関係を示す線図、圧力と時間との関係を示す線図、トルクと時間との関係を示す線図によって、ハイドロダイナミック式の構成部材3と、図3aでは本発明による干渉エレメント12との関係、また図3bでは従来技術による干渉エレメント12bとの関係が示されている。この場合、図3aは、本発明による円板状のエレメント22を使用することによって、ハイドロダイナミック式の構成部材3の高い圧力において、この関係が、どのように摩擦結合(摩擦による束縛)式のクラッチの自己閉鎖力とは無関係であるかを示している。これに対して図3bでは、従来技術に基づく構成が、このような円板状のエレメント22とは無関係であることが示されている。その結果、モーメント衝撃若しくは、位置的に著しく異なるモーメント変化が得られる。
【0029】
図4a及び図4bは、それぞれ異なる形式で組み込まれた、特に円板状のエレメント22の干渉エレメント12を備えた動力伝達装置1の2つの可能な実施例の簡単な概略図を示している。図4aに示した干渉エレメント12は、図1乃至図3の構成に従って配置されており、これに対して、図4bは、ハウジングカバー13とピストンエレメント10との間に配置された円板状のエレメント22を備えた構成を示している。前述のように、この配置はできるだけピストン10の領域内で行われる。
【0030】
円板状のエレメント22は、前述のように有利には金属薄板エレメントとして構成されている。何故ならば、金属薄板エレメントは厚さが薄いことに基づいて相応の弾性を有しているからである。しかしながら、干渉エレメント12は、有利にはピストンエレメント10における可能な差圧に基づいて構成される。
【0031】
図5aは、軸方向で平らな表面を有する円環状のエレメント22として構成された干渉エレメント1を示している。この表面は、周方向で環状に閉じている、つまり外周部の領域において縁部が開放した切欠が設けられていることはない。これに対して、図5bは、金属薄板スリーブの形で部分的に円錐形の形状を有する、つまり成形された表面を有する構成を示している。この構成は一例として示されてものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1aは、本発明に従って組み込まれた干渉エレメントを備えた動力伝達装置の軸方向断面図、図1bは、図1aにより干渉エレメントを右から見た図である。
【図2】図2aは従来技術の実施例による動力伝達装置1の概略的な軸方向断面図、図2bはピストンエレメント10の両側に存在する媒体のための調節された圧力特性を示す線図である。
【図3】図3aは本発明による干渉エレメントを使用した場合の、また図3bは従来技術による干渉エレメントを使用した場合の、それぞれハイドロダイナミック式の構成部材3のための、回転数と時間、圧力と時間、トルクと時間の関係を示す線図である。
【図4】図4a及び図4bは、動力伝達装置1の2つの可能な実施例を示す概略的な断面図である。
【図5】図5aは干渉エレメントの1実施例を示す概略図、図5bは干渉エレメントの別の実施例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0033】
1 動力伝達装置、 2 トランスミッション入力軸、 3 ハイドロダイナミック式の構成部材、 4 ハイドロダイナミック式の回転数/トルクコンバータ、 5 少なくとも部分的にロックアップするための装置、 6 切換可能なクラッチ装置、 7 第1のクラッチ部分、 8 第2のクラッチ部分、 9 操作装置、 10 ピストンエレメント、 10a,10b 端面側、 11 圧力手段によって負荷可能なチャンバ、 12 干渉エレメント、 13 ハウジングカバー、 14 内室、 15 振動を減衰するための装置、 16,17,18 接続部、 19 接続領域、 20 ピストンボス部(Kolbennabe)、 21 エレメント、 22 円板状のエレメント、 23 ボスエレメント、 24 内周面、 I 第1のハイドロダイナミックな分岐部、 II 第2の機械的な分岐部、 AR 作業室、 L ステータ(Leitrad)、 P ポンプインペラ、 T タービンホイール、 R 回転軸線、 E 入力部、 A 出力部 、 pwk ピストンエレメント10の左側の遠心油圧、 pw ピストンエレメント10の右側の遠心油圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殊に駆動機械と被駆動部との間で動力伝達を行うための動力伝達装置(1)であって、少なくとも1つの入力部(E)と、出力部(A)と、ポンプインペラ(P)及びタービンホイール(T)を備えたハイドロダイナミック式の構成部材(3)と、該ハイドロダイナミック式の構成部材(3)を少なくとも部分的にロックアップするための装置(5)とを有しており、該装置(5)が圧力媒体で負荷可能なピストンエレメント(10)を有する調節装置を備えており、前記ピストンエレメント(10)の両側で流動媒体の回転速度差に影響を与えるための手段が設けられている形式のものにおいて、
流動媒体の回転速度差に影響を与えるための前記手段が、前記ピストンエレメント(10)と同期回転可能であるが、このピストンエレメント(10)と直接接続されていない干渉エレメント(12)を有しており、該干渉エレメント(12)が、半径方向で外方に延在し、かつ半径方向で少なくとも外径の領域内で、前記ピストンエレメント(10)に対して軸方向で間隔を保って配置されていることを特徴とする、動力伝達装置。
【請求項2】
前記干渉エレメント(12)が、半径方向の全延在寸法に亘って前記ピストンエレメント(10)に対して軸方向で間隔を保って配置され、かつ構成されている、請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記干渉エレメント(12)が円板状又は円環状のエレメント(22)として構成されている、請求項1又は2記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記干渉エレメント(12)が、円錐形に構成されたエレメントとして、殊に円環状又はスリーブ状に成形されたエレメント(22)として構成されている、請求項1又は3記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記干渉エレメント(12)が、前記ピストンエレメント(10)に相対回動不能に連結されたエレメント(21)に相対回動不能に結合されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項6】
少なくとも2つの接続部(16,17)と、ハイドロダイナミック式の構成部材(3)の作業室(AR)に連結された第1の接続部(16)と、ハイドロダイナミック式の構成部材(3)の外周部及びハウジング(13)によって仕切られ、かつ運転媒体によって満たすことができる室(14)に連結された第2の接続部(17)とを有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項7】
3チャンネルユニットとして構成されており、前記ピストンエレメント(10)に対応配置され、かつ圧力媒体によって負荷可能な室(11)に連結された少なくとも1つの別の接続部(18)を有しており、前記ピストンエレメント(10)が、前記入力部(E)において、又は該入力部(E)に相対回動不能に結合されたエレメント(20)において気密にかつ液密にガイドされている、請求項1から6までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項8】
前記干渉エレメント(12)が、前記入力部(E)と前記出力部(A)との間において軸方向で見て、前記ハイドロダイナミック式の構成部材(3)のタービンホイール(T)と前記ピストンエレメント(10)との間に配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項9】
振動を減衰するための装置(15)を有しており、該装置(15)が前記入力部(E)と前記出力部(A)との間において軸方向で見て、ハイドロダイナミック式の構成部材(3)のタービンホイール(T)とピストンエレメント(10)との間に配置されており、前記干渉エレメント(12)が、前記入力部(E)前記出力部(A)との間において軸方向で見て、前記ピストンエレメント(10)と振動を減衰するための装置(15)との間に配置されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項10】
振動を減衰するための装置(15)を有しており、該装置(15)が前記入力部(E)と前記出力部(A)との間において軸方向で見て、ハイドロダイナミック式の構成部材(3)のタービンホイール(T)とピストンエレメント(10)との間に配置されており、前記干渉エレメント(12)が、前記入力部(E)と前記出力部(A)との間において軸方向で見て、振動を減衰するための装置(15)とハイドロダイナミック式の構成部材(3)のタービンホイール(T)との間に配置されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項11】
前記干渉エレメント(12)が、軸方向で動力伝達装置(1)の入力部(E)とピストンエレメント(10)との間に配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項12】
前記干渉エレメント(12)が、動力伝達装置(1)の入力部(E)と相対回動不能に結合されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項13】
前記干渉エレメント(12)が、ピストンエレメント(10)に結合されたボス部(20)に相対回動不能に結合されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項14】
前記干渉エレメント(12)が、動力伝達装置(1)の出力部(A)に相対回動不能に、又はこの出力部(A)に連結されたエレメント(23)に相対回動不能に結合されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項15】
前記干渉エレメント(12)が金属薄板構成部分として構成されている、請求項1から14までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項16】
ハイドロダイナミック式の構成部材(3)がハイドロダイナミック式のクラッチとして構成されている、請求項1から15までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項17】
ハイドロダイナミック式の構成部材(3)がハイドロダイナミック式の回転数/トルクコンバータ(4)として構成されている、請求項1から15までのいずれか1項記載の動力伝達装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−138941(P2009−138941A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314503(P2008−314503)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany