説明

動力伝達装置

【課題】部品点数を削減して組立作業の容易化を図り、かつ適用する機器の小型化を図る。
【解決手段】回転子20に設けた従動側磁気ユニット40と、駆動プレート30に設けた駆動側磁気ユニット50とを備え、駆動側磁気ユニット50は、駆動プレート30の端面31において駆動側回転軸心KCを含む平面に交差する態様で延在し、かつ駆動プレート30が駆動側回転軸心KCを中心として一方方向に回転した場合に従動側磁気ユニット40に対向する部位において駆動プレート30の径方向に沿って順次内方に変位する第1の回転作用部51Rと、駆動プレート30の端面31において駆動側回転軸心KCを含む平面に交差する態様で延在し、かつ駆動プレート30が駆動側回転軸心KCを中心として一方方向に回転した場合に従動側磁気ユニット40に対向する部位において駆動プレート30の径方向に沿って順次外方に変位する第2の回転作用部51Lとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関するもので、より詳細には駆動側の一方方向の回転運動を従動側の往復回転運動に変換する動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ミシンに適用される半回転釜では、下糸を巻回したボビンを収容するボビンケースの近傍に中釜と称される部材が回転可能に配設してあり、この中釜を往復回転運動させることによって上糸の捕捉/解放を行うようにしている。
【0003】
中釜を往復回転運動させる装置としては、特許文献1に記載されたものがある。この動力伝達装置では、水平方向に延在する上軸部材の回転を三角カム及びクランクロッドの矩形孔によってクランクロッドの上下運動に変換する。クランクロッドの上下運動は、下軸駆動歯車の上下方向に沿った往復回転運動となり、この下軸駆動歯車に歯車を介して歯合する下軸部材が往復回転運動することになる。結局、上軸部材を一方方向に回転させれば、下軸部材が往復回転運動し、この下軸部材に設けたドライバを介して中釜が連続して往復回転運動するようになる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−85473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、駆動側となる上軸部材の一方方向の回転運動を従動側となる下軸部材の往復回転運動に変換するには、多数の機械要素を複雑に組み合わせる必要がある。従って、部品点数の著しい増大が招来されるばかりでなく、組立作業もきわめて煩雑化することになる。しかも、多数の機械要素が互いに摺動することになるため、駆動源としてはこれらの摺動抵抗を考慮した大型のものを用いる必要があり、適用する機器が大型化するのは否めない。
【0006】
本発明の目的は、上記実情に鑑みて、部品点数を削減して組立作業の容易化を図るとともに、適用する機器の小型化を図ることのできる動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る動力伝達装置は、自身の軸心を従動側回転軸心として回転可能に配設した従動体と、従動体において従動側回転軸心を中心とした円周面上となる部位に構成し、従動体の回転に伴って回転変位する従動側磁気ユニットと、自身の軸心を前記従動側回転軸心に交差する平面に位置させるとともに、前記軸心上の点を中心とした円弧を含む端面を従動側磁気ユニットに対向させ、前記軸心を駆動側回転軸心として回転可能に配設した駆動体と、駆動体の端面において少なくとも従動側磁気ユニットに対向する円周領域に構成し、駆動体の回転に伴って回転変位する駆動側磁気ユニットとを備え、駆動側回転軸心を中心として駆動体を回転させた場合に駆動側磁気ユニットと従動側磁気ユニットとの間に作用する磁力により、従動側回転軸心を中心に従動体を回転させるようにした動力伝達装置であって、前記駆動側磁気ユニットは、駆動体の端面において駆動側回転軸心を含む平面に交差する態様で延在し、かつ駆動体が駆動側回転軸心を中心として一方方向に回転した場合に従動側磁気ユニットに対向する部位において駆動体の径方向に沿って順次内方に変位する第1の回転作用部と、駆動体の端面において駆動側回転軸心を含む平面に交差する態様で延在し、かつ駆動体が駆動側回転軸心を中心として前記一方方向に回転した場合に従動側磁気ユニットに対向する部位において駆動体の径方向に沿って順次外方に変位する第2の回転作用部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る動力伝達装置は、上述した請求項1において、前記駆動側磁気ユニットは、駆動側回転軸心を含む平面に対して前記第1の回転作用部と前記第2の回転作用部とを対称形状に構成したものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る動力伝達装置は、上述した請求項1において、前記従動体は、従動側回転軸心を中心とした円柱状を成し、その外周面に交互異極となる複数の永久磁石を周方向に設けることによって従動側磁気ユニットを構成したものであり、従動側回転軸心が駆動側回転軸心を含む平面に対して直交するように配置したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に係る動力伝達装置は、上述した請求項1において、前記駆動側磁気ユニットの第1の回転作用部及び第2の回転作用部は、それぞれ放射状曲線に沿って延在することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に係る動力伝達装置は、上述した請求項1において、前記駆動側磁気ユニットは、第1の回転作用部及び第2の回転作用部の間に駆動体の回転に関わらず従動体を停止した状態に維持する停止作用部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、駆動側磁気ユニットの第1の回転作用部と第2の回転作用部とが従動体に対して逆方向の回転力を付与するように構成してあるため、駆動体を一方方向に回転させれば、第1の回転作用部によって従動体が第1の方向に回転する一方、第2の回転作用部によって従動体が第2の方向に回転することになる。しかも、上述した駆動体から従動体への動力伝達は、駆動体の端面に駆動側磁気ユニットを設けるとともに、従動体において従動側回転軸心を中心とした円周面上となる部位に従動側磁気ユニットを設ければ良い。従って、従前の如く多数の機械要素が必要になることもなく、部品点数を削減し、組立作業の容易化を図ることができるようになる。さらに、駆動体と従動体との間には、直接接触する機械要素が存在しないため、駆動源としても小型のものを用いれば良く、適用する機器が大型化する事態を招来する虞れもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る動力伝達装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1〜図3は、本発明の実施の形態である動力伝達装置を示したものである。ここで例示する動力伝達装置は、駆動軸部材1と従動軸部材2との間に構成し、駆動軸部材1の回転を従動軸部材2に伝達するためのものである。駆動軸部材1及び従動軸部材2は、それぞれ軸受1a,2aを介してベース部材10に支承してあり、個々の軸心回りに回転することが可能である。ベース部材10は、矩形平板状を成すセンタープレート11と、センタープレート11の両側端部からそれぞれ平行に延在する矩形平板状のサイドプレート12とを備えたものである。センタープレート11には、ほぼ中央となる部位に駆動軸部材1が貫通する態様で配設してある一方、一対のサイドプレート12には、互いに対向する隅部の間に架け渡す態様で従動軸部材2が配設してある。本実施の形態では、特に、従動軸部材2の軸心2Cと駆動軸部材1の軸心1Cとが互いにねじれの位置の関係となり、かつ従動軸部材2の軸心2Cに対して直交する平面α上に駆動軸部材1の軸心1Cが位置するように両者が配設してある。
【0015】
これらの駆動軸部材1及び従動軸部材2に適用する動力伝達装置は、従動体である回転子20及び駆動体である駆動プレート30を備えて構成してある。
【0016】
回転子20は、自身の軸心20Cを従動軸部材2の軸心2Cに合致させる態様で従動軸部材2の中間部に設けた円柱状部材であり、従動軸部材2を介し自身の軸心20Cを従動側回転軸心JCとして任意の方向に回転することが可能である。図2からも明らかなように、本実施の形態では、駆動軸部材1の軸心1Cを含み、かつ従動軸部材2の軸心2Cに直交する平面αと、回転子20を軸心方向に二等分する平面βとが互いに合致する位置に回転子20が設けてある。
【0017】
駆動プレート30は、図1〜図3に示すように、回転子20よりも十分に大きな外径を有した円形の平板状部材であり、自身の軸心30Cを駆動軸部材1の軸心1Cに合致させる態様で駆動軸部材1の一端部に設けてある。この駆動プレート30は、軸方向の端面31において外周縁となる部位を回転子20の周面に対向させた状態で、駆動軸部材1を介し自身の軸心30Cを駆動側回転軸心KCとして任意の方向に回転することが可能である。
【0018】
一方、上記動力伝達装置には、回転子20に従動側磁気ユニット40が設けてある一方、駆動プレート30に駆動側磁気ユニット50が設けてある。
【0019】
従動側磁気ユニット40は、図3に示すように、回転子20の外周面に交互異極となる複数(図示の例では8個)の永久磁石(以下、「従動用磁石41N,41S」という)を周方向に沿って配設することにより構成したものである。本実施の形態では、回転子20として鉄等の磁性体から成るものを適用し、その外周面に直接着磁することによりN極従動用磁石41NとS極従動用磁石41Sとを交互に配置した従動側磁気ユニット40を構成してある。
【0020】
従動側磁気ユニット40を構成する個々の従動用磁石41N,41Sは、図1及び図2に示すように、互いに同一の形状、具体的には従動側回転軸心JCに沿って一定の幅W41を有した部分円筒形状を成し、相互に等間隔となるように配設してある。上記のように構成した従動側磁気ユニット40は、従動側回転軸心JCを中心として回転子20を回転させた場合、駆動プレート30の端面31に対向する従動用磁石41N,41Sを端面31の径方向に沿って順次循環変更することが可能である。
【0021】
駆動側磁気ユニット50は、図4に示すように、駆動プレート30の端面31において回転子20の従動側磁気ユニット40に対向する円周領域に構成したもので、2つの回転作用部51R,51Lと2つの停止作用部52,53とを備えている。
【0022】
回転作用部51R,51Lは、駆動側回転軸心KCを中心として駆動プレート30を回転させた場合に、回転子20の従動側磁気ユニット40との間に作用する磁力により回転子20に対して従動側回転軸心JCを中心とする回転運動を生じさせるためのものである。本実施の形態では、互いに異極となる複数(図示の例ではそれぞれ4個)の永久磁石(以下、「駆動用磁石51N,51S」という)を駆動プレート30の端面31に貼着することによって回転作用部51R,51Lが構成してある。
【0023】
回転作用部51R,51Lを構成する個々の駆動用磁石51N,51Sは、それぞれが駆動プレート30の端面31において駆動側回転軸心KCを含む平面に交差するように放射状曲線に沿って延在したものである。より具体的には、駆動プレート30が駆動側回転軸心KCを中心として回転した場合、従動側磁気ユニット40に対向する部位において駆動プレート30の径方向に沿って順次変位するように回転作用部51R,51Lの駆動用磁石51N,51Sが構成してある。個々の駆動用磁石51N,51Sにおいて駆動プレート30の径方向中間部に位置する周方向の長さL51は、上述した従動側磁気ユニット40を構成する従動用磁石41N,41Sの軸方向に沿った長さl41とほぼ同一である。
【0024】
図4からも明らかなように、2つの回転作用部51R,51Lは、駆動側回転軸心KCを含む平面γに対して互いに対称形状となるように構成してある。すなわち、駆動プレート30を一方方向、例えば時計回りに回転させた場合、図5に示すように、一方の回転作用部51Rを構成する複数の駆動用磁石51N,51Sが従動側磁気ユニット40に対向する部位において駆動プレート30の径方向に沿って漸次内方に変位する一方、図6に示すように、他方の回転作用部51Lを構成する複数の駆動用磁石51N,51Sが従動側磁気ユニット40に対向する部位において駆動プレート30の径方向に沿って漸次外方に変位するように構成してある。
【0025】
停止作用部52,53は、駆動側回転軸心KCを中心として駆動プレート30を回転させた場合に、回転子20の従動側磁気ユニット40との間に作用する磁力により回転子20に回転運動を生じさせず、その位置に維持させるためのものである。本実施の形態では、隣接する回転作用部51R,51Lの駆動用磁石51N,51Sとは異極となる永久磁石(以下、「停止用磁石52N,53S」という)を回転作用部51R,51Lの相互間に各1個貼着することによってそれぞれの停止作用部52,53が構成してある。
【0026】
停止作用部52,53を構成する停止用磁石52N,53Sは、従動側磁気ユニット40を構成する複数の従動用磁石41N,41Sに対して唯一の磁極を対向させることのできる大きさを有したもので、2つの回転作用部51R,51Lの相互間を埋めるように構成してある。停止用磁石52N,53Sの両端部は、従動側磁気ユニット40との対向面積が順次変化するように、両側に向けて順次狭幅となるように構成してある。個々の停止用磁石52N,53Sにおいて駆動プレート30の径方向中間部に位置する周方向の長さL52,L53は、それぞれ上述した従動側磁気ユニット40を構成する従動用磁石41N,41Sの軸方向に沿った長さL41よりも十分に大きく構成してある。
【0027】
尚、図3からも明らかなように、駆動プレート30の駆動側磁気ユニット50を構成する駆動用磁石51N,51S及び停止用磁石52N,53Sは、それぞれ同一の板厚に構成してあり、駆動プレート30を駆動側回転軸心KCを中心に回転させた場合、回転子20の従動側磁気ユニット40との間に一定の間隙dを確保するようにそれぞれが配置してある。
【0028】
上記のように構成した動力伝達手段は、図には明示していないが、例えば駆動軸部材1に適宜減速機を介して駆動モータを接続する一方、従動軸部材2に往復回転運動が要求される部材、例えばミシンに適用される半回転釜の中釜に接続して用いられる。
【0029】
駆動軸部材1が停止している場合には、駆動プレート30も停止した状態にある。従って、駆動プレート30の駆動側磁気ユニット50を構成する駆動用磁石51N,51Sもしくは停止用磁石52N,53Sと、回転子20の従動側磁気ユニット40において駆動プレート30の端面31に対向する側の従動用磁石41N,41Sとの間に位置の変化はなく、互いの間に作用する磁気吸引力により、異極を対向させた状態に保持されることになる。
【0030】
この状態から、駆動モータ(図示せず)を介して駆動プレート30を一方方向に回転させると、回転子20の従動側磁気ユニット40に対して駆動側磁気ユニット50が変化し、以下の状態となる。尚、以下においては便宜上、図4中の右半分に位置する回転作用部を第1回転作用部51Rと称し、図4中の左半分に位置する回転作用部を第2回転作用部51Lと称して説明する。
【0031】
(1)従動側磁気ユニット40が駆動側磁気ユニット50の停止作用部52,53に対向する状態
従動側磁気ユニット40が停止作用部52,53のいずれかに対向する場合には、駆動プレート30が回転しても、従動側磁気ユニット40に対して唯一の磁極が対向されるだけである。従って、停止用磁石52Nもしくは53Sに対して異極となる従動用磁石41Nもしくは41Sが対向された状態を維持し、相互間に作用する磁気吸引力により回転子20がいずれの方向にも回転することはない。
【0032】
(2)従動側磁気ユニット40が駆動側磁気ユニット50の第1回転作用部51Rに対向する状態
従動側磁気ユニット40が第1回転作用部51Rの駆動用磁石51N,51Sに対向する場合には、駆動プレート30が回転すると、従動側磁気ユニット40に対して駆動用磁石51N,51Sが駆動プレート30の径方向に沿って順次位置を変更することになる。例えば、図1に示す状態において駆動プレート30が図中の時計回りに回転すると、図5に示すように、従動側磁気ユニット40に対して第1回転作用部51Rの駆動用磁石51N,51Sが駆動プレート30の径方向に沿って順次内方(図1及び図5において上方)に変位することになる。この結果、従動側磁気ユニット40の従動用磁石41N,41Sと、駆動側磁気ユニット50の第1回転作用部51Rを構成する駆動用磁石51N,51Sとの間に作用する磁気吸引力により、回転子20に従動側回転軸心JC回りの回転力が発生し、回転子20が図1において反時計回りに回転するようになる。
【0033】
(3)従動側磁気ユニット40が駆動側磁気ユニット50の第2回転作用部51Lに対向する状態
同様に、従動側磁気ユニット40が第2回転作用部51Lの駆動用磁石51N,51Sに対向する場合にも、駆動プレート30が回転すると、従動側磁気ユニット40に対して駆動用磁石51N,51Sが駆動プレート30の径方向に沿って順次位置を変更することになる。すなわち、図1において駆動プレート30が図中の時計回りに回転すると、図6に示すように、従動側磁気ユニット40に対して第2回転作用部51Lの駆動用磁石51N,51Sが駆動プレート30の径方向に沿って順次外方(図1及び図6において下方)に変位することになる。この結果、従動側磁気ユニット40の従動用磁石41N,41Sと、駆動側磁気ユニット50の第2回転作用部51Lを構成する駆動用磁石51N,51Sとの間に作用する磁気吸引力により、回転子20に従動側回転軸心JC回りの回転力が先とは逆方向に発生し、回転子20が図1において時計回りに回転するようになる。
【0034】
上述したように、駆動プレート30の端面31には、その円周領域に停止作用部52、第1回転作用部51R、停止作用部53及び第2回転作用部51Lが順次構成してある。これにより、上記動力伝達装置においては、駆動モータ(図示せず)を介して駆動プレート30を一方方向に回転させると、図7に示すように、回転子20が往復回転運動を繰り返すことになる。より具体的には、回転子20の従動側磁気ユニット40に対して駆動側磁気ユニット50の停止作用部52を対向させ、この状態で駆動プレート30を一方方向に回転させると、停止作用部52による停止期間(図7中の区間a)の経過後、第1回転作用部51Rによって回転子20が反時計回りに所定の回転角θだけ回転する(図7中の区間b)。その後、回転子20の従動側磁気ユニット40に対して次の停止作用部53が対向するため、再び停止作用部53による停止期間となる(図7中の区間c)。さらに駆動プレート30が回転すると、回転子20の従動側磁気ユニット40に対して駆動側磁気ユニット50の第2回転作用部51Lが対向することになり、回転子20が時計回りに所定の回転角θだけ回転する(図7中の区間d)。その後、再び最初の停止作用部52が従動側磁気ユニット40に対向することになり、再び停止作用部52による停止期間となる(図7中の区間a)。以下、上述した動作が繰り返し実行されることとなり、駆動モータ(図示せず)の一方方向の回転により、従動軸部材2に接続した中釜(図示せず)を所定の角度θで繰り返し往復回転運動させることができるようになる。
【0035】
ここで、上述した動力伝達装置によれば、駆動プレート30の端面31に駆動側磁気ユニット50を設けるとともに、回転子20において従動側回転軸心JCを中心とした円周面上となる部位に従動側磁気ユニット40を設ければ良く、従前の如く多数の機械要素が必要になることがない。従って、部品点数を大幅に削減することができ、組立作業の容易化を図ることが可能となる。しかも、駆動プレート30と回転子20との間には、直接接触する機械要素が何等存在しない。このため、駆動源として適用する駆動モータ(図示せず)としても摺動抵抗を考慮する必要がなく、小型のものを用いれば十分であり、適用する機器が大型化する事態を招来する虞れもない。
【0036】
尚、上述した実施の形態では、ミシンの半回転釜を駆動するための動力伝達手段を例示しているが、必ずしもこれに限らず、往復回転が要求される用途であれば、その他ものにももちろん適用することが可能である。この場合、駆動体及び従動体の支持態様も先に例示したベース部材である必要はなく、両者の配置態様についても実施の形態のものに限らない。
【0037】
また、上述した実施の形態では、駆動体として円板形状の駆動プレートを適用する一方、従動体として円柱状の回転子を適用したものを例示しているが、駆動体及び従動体の形状は、これらに限らない。つまり、従動体としては、従動側回転軸心を中心とした円周上となる部位に回転変位する従動側磁気ユニットを構成できれば良く、駆動体としては、その端面において駆動側回転軸心を中心とした円周領域に回転変位する駆動側磁気ユニットが構成できれば如何なる形状であっても構わない。
【0038】
さらに、上述した実施の形態では、駆動側磁気ユニットとして第1の回転作用部と第2の回転作用部とが駆動側回転軸心を含む平面に対して対称形状となるように構成したものを例示しているが、必ずしも対称形状である必要はなく、同一の円周領域に第1の回転作用部と第2の回転作用部とを有していれば十分である。この場合、それぞれの回転作用部は、曲線状に延在する必要はなく、直線状に延在させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態である動力伝達装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示した動力伝達装置の正面図である。
【図3】図1に示した動力伝達装置の側面一部破断図である。
【図4】図1に示した動力伝達装置に適用する駆動体及び駆動側磁気ユニットの構成を示す図である。
【図5】図1に示した動力伝達装置に適用する駆動側磁気ユニットにおいて一方の回転作用部の回転変位を順次示す図であり、図中の上方が駆動体の駆動側回転軸心に向かう方向である。
【図6】図1に示した動力伝達装置に適用する駆動側磁気ユニットにおいて他方の回転作用部の回転変位を順次示す図であり、図中の上方が駆動体の駆動側回転軸心に向かう方向である。
【図7】図1に示した動力伝達装置において駆動体の回転角と従動体の回転角との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0040】
20 回転子(従動体)
30 駆動プレート(駆動体)
31 駆動プレートの端面
40 従動側磁気ユニット
50 駆動側磁気ユニット
51R,51L 回転作用部
52,53 停止作用部
JC 従動側回転軸心
KC 駆動側回転軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の軸心を従動側回転軸心として回転可能に配設した従動体と、
従動体において従動側回転軸心を中心とした円周面上となる部位に構成し、従動体の回転に伴って回転変位する従動側磁気ユニットと、
自身の軸心を前記従動側回転軸心に交差する平面に位置させるとともに、前記軸心上の点を中心とした円弧を含む端面を従動側磁気ユニットに対向させ、前記軸心を駆動側回転軸心として回転可能に配設した駆動体と、
駆動体の端面において少なくとも従動側磁気ユニットに対向する円周領域に構成し、駆動体の回転に伴って回転変位する駆動側磁気ユニットと
を備え、駆動側回転軸心を中心として駆動体を回転させた場合に駆動側磁気ユニットと従動側磁気ユニットとの間に作用する磁力により、従動側回転軸心を中心に従動体を回転させるようにした動力伝達装置であって、
前記駆動側磁気ユニットは、
駆動体の端面において駆動側回転軸心を含む平面に交差する態様で延在し、かつ駆動体が駆動側回転軸心を中心として一方方向に回転した場合に従動側磁気ユニットに対向する部位において駆動体の径方向に沿って順次内方に変位する第1の回転作用部と、
駆動体の端面において駆動側回転軸心を含む平面に交差する態様で延在し、かつ駆動体が駆動側回転軸心を中心として前記一方方向に回転した場合に従動側磁気ユニットに対向する部位において駆動体の径方向に沿って順次外方に変位する第2の回転作用部と
を備えることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記駆動側磁気ユニットは、駆動側回転軸心を含む平面に対して前記第1の回転作用部と前記第2の回転作用部とを対称形状に構成したものであることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記従動体は、従動側回転軸心を中心とした円柱状を成し、その外周面に交互異極となる複数の永久磁石を周方向に設けることによって従動側磁気ユニットを構成したものであり、従動側回転軸心が駆動側回転軸心を含む平面に対して直交するように配置したことを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記駆動側磁気ユニットの第1の回転作用部及び第2の回転作用部は、それぞれ放射状曲線に沿って延在することを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記駆動側磁気ユニットは、第1の回転作用部及び第2の回転作用部の間に駆動体の回転に関わらず従動体を停止した状態に維持する停止作用部を備えることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−30729(P2009−30729A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195703(P2007−195703)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(303049418)株式会社松栄工機 (21)
【出願人】(390021669)椿本興業株式会社 (20)