説明

動力散布機

【課題】散布ホースに対する急な風の吹き込みを緩和でき、散布ホースの捩れや破損を防止できる動力散布機を提供すること。
【解決手段】散布ホース3より上流の噴管2に、送風機からの送風を管外に逃すための逃し口2bと、この逃し口2bを開閉するための開閉手段5と、を設け、エンジン始動時には噴管2の逃し口2bが開とされることによって、送風機からの送風の一部を噴管2の逃し口2bを通して管外に逃し、散布ホース3に対する急な風の吹き込みを緩和する一方で、散布時には噴管2の逃し口2bが閉とされることによって、薬剤を伴う送風機からの送風を、噴管2の逃し口2bから逃すこと無く散布ホース3に対して送り、所定に散布できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力散布機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの駆動により送風機を稼動し、この送風機からの送風によって、薬剤を、可撓性を有する散布ホースに送り、当該散布ホースから散布する動力散布機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実公平5−36511号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、このような動力散布機にあっては、エンジン始動時において散布ホースに対して急な風の吹き込みが起こり、散布ホースが捩れてしまったり、場合によっては破裂(パンク)等の破損を招来してしまうという問題がある。特に冷間時にあっては、スロットル開度を予め所定に開いておく必要があるため、散布ホースに対する急な風の吹き込みは避けられず、上記問題は顕著となる。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、散布ホースの捩れや破損を防止できる動力散布機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による動力散布機は、送風機(32)からの送風により薬剤を噴管(2)を通して散布ホース(3)に送り、当該散布ホース(3)から散布する動力散布機であって、噴管(2)は、送風を管外に逃すための逃し口(2b)と、この逃し口(2b)を開閉するための開閉手段(5)と、を備えたことを特徴としている。
【0006】
このような動力散布機によれば、散布ホース(3)より上流の噴管(2)に、送風機(32)からの送風を管外に逃すための逃し口(2b)と、この逃し口(2b)を開閉するための開閉手段(5)と、が設けられているため、エンジン(31)の始動時には噴管(2)の逃し口(2b)が開とされることで、送風機(32)からの送風の一部が噴管(2)の逃し口(2b)を通して管外に逃され、散布ホース(3)に対する急な風の吹き込みが緩和される一方で、散布時には噴管(2)の逃し口(2b)が閉とされることで、薬剤を伴う送風機(32)からの送風は、噴管(2)の逃し口(2b)から逃れること無く散布ホース(3)に対して送られ、所定に散布される。このため、散布ホース(3)の捩れや破損を防止できる。
【0007】
ここで、噴管(2)は、これが接続される上流側(1)に対して回転自在な自在管とされ、逃し口(2b)は、噴管(2)の側方へ突出し内外を連通する筒状部(2c)により形成されていると、筒状部(2c)を把持部とすることができると共に当該筒状部(2c)を把持し自在管である噴管(2)を回転でき、取扱性、操作性及び作業性を向上できる。
【0008】
また、噴管(2)は、送風方向に沿って周壁が傾斜して縮径するテーパ部(2a)を有し、このテーパ部(2a)に逃し口(2b)が設けられていると、真っ直ぐで傾斜していない部分(直管部分)に逃し口が設けられている場合に比して、動圧を受けやすく送風の逃し能力(排出能力)を増大できる。
【0009】
また、開閉手段(5)は、逃し口(2b)を塞ぐためのパッキン(6)と、逃し口(2b)にパッキン(6)を介して被せられ逃し口(2b)を開閉するためのキャップ(7)と、を備え、パッキン(6)には、キャップ(7)に設けられた開口(7b)を通して管外に導出する可撓性の導出部(6a)と係合部(6b)が一体に成形され、噴管(2)は、パッキン(6)の係合部(6b)を係合するための係合部(2f)を有していると、キャップ(7)及びパッキン(6)により逃し口(2b)の開閉が良好に成されると共に、噴管(2)の係合部(2f)にパッキン(6)の係合部(6b)が係合されることにより噴管(2)からのパッキン(6)及びキャップ(7)の脱落及び紛失が防止される。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によれば、散布ホースに対する急な風の吹き込みを緩和でき、散布ホースの捩れや破損を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る動力散布機の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る動力散布機を示す正面図、図2は、図1中の噴管及びその近傍を示す斜視図、図3は、図2の縦断面図であり、本実施形態の動力散布機は、例えば粉剤や粒剤等を始めとした薬剤を散布するためのものであって、作業者が背負いながら散布を行う所謂背負式動力散布機である。
【0012】
この動力散布機は、図1に示すように、作業者が背負う散布機本体30に、駆動源となるエンジン31、エンジン31により駆動される送風機32、上記薬剤を貯留する薬剤タンク33、エンジン31の燃料を貯留する燃料タンク34等を搭載し、エンジン31により駆動された送風機32からの送風によって、薬剤タンク33から薬剤を、図1〜図3に示すように、蛇管(蛇腹管;フレキシブル管)1、噴管2を通して、可撓性を有する散布ホース3に送り、当該散布ホース3から散布するものである。なお、薬剤の飛量は調量レバー35により調節され、スロットル開度はスロットルレバー36により調節される。
【0013】
噴管2は、その一端が蛇管1に連結された第1噴管2xと、その一端が第1噴管2xの他端に連結されると共に、その他端が散布ホース3の一端に連結された第2噴管2yと、を備える構成とされている。
【0014】
第1噴管2xは、蛇管1に対し回転自在に連結され、この第1噴管2xと第2噴管2yとは回転不能に連結され、従って、第1噴管2x及び第2噴管2yより成る噴管2は、蛇管1に対して自在管とされている。第2噴管2yは、送風方向に沿って(図3の左側から右側に向かって)周壁が傾斜して縮径するテーパ部2aを備える形状とされ、その他端に、ホースバンド4を介して散布ホース3が連結される。
【0015】
ここで、噴管2は、図3に示すように、送風を管外に逃すための逃し口2bと、この逃し口2bを開閉するための開閉手段5と、を備えている。
【0016】
具体的には、逃し口2bは、管側方へ突出し内外を連通する円筒状部(筒状部)2cを設けることで形成され、ここでは、特に、第2噴管2yのテーパ部2aに設けられている。
【0017】
開閉手段5は、逃し口2bを塞ぐためのパッキン6と、逃し口2bにパッキン6を介して被せられ逃し口2bを開閉するためのキャップ7と、を備えている。
【0018】
図2及び図3に示すように、キャップ7は、円筒の一方側の端部を塞ぐと共にこの塞部7aに開口7bを有する構成とされ、その内周面に、円筒状部2cの外周面に設けられた雄螺子2dに螺合する雌螺子7cを有している。
【0019】
パッキン6は、円板状に構成された円板状部とされ当該円板状部がキャップ7内に収容されて噴管2の円筒状部2cの端面(図3の上端面)とキャップ7の塞部7aの内面(図3の下面)との間に挟まれている。そして、このパッキン6には、キャップ7の開口7bを通して管外に導出する導出部6aとフック部6bが一体に成形されている。
【0020】
導出部6aは、噴管2の軸線と平行に真っ直ぐに延びる可撓性の細長い形状部を管外に有し、容易に大きく曲げることが可能とされている。フック部6bは、導出部6aの先端部に設けられて可撓性を有するくの字状の二股部を備え、この二股部が、第2噴管2yに設けられたフランジ部2fの貫通孔2gを縮められて通り通過後に元の二股部に戻ることで、フランジ部2fに係合される。
【0021】
ここで、フック部6bがパッキン側の係合部とされ、貫通孔2gを有するフランジ部2fが、パッキン側の係合部であるフック部6bを係合する噴管側の係合部とされる。
【0022】
次に、このように構成された動力散布機の作用を説明する。キャップ7が噴管2の円筒状部2cに対して螺子込められ締め付け状態にある場合には、エンジン31の始動前に、作業者によりキャップ7を円筒状部2cに対し緩めて逃し口2bを実質的に開とし、この状態でエンジン31を始動する。すると、送風機32からの送風の一部が噴管2の逃し口2bを通して管外に逃されるため、散布ホース3に対する急な風の吹き込みが緩和され、散布ホース3の捩れや破損が防止される。
【0023】
一方、薬剤を散布するにあたっては、作業者によりキャップ7を円筒状部2cに対し螺子込んで締め付けパッキン6によって噴管2の逃し口2bを密閉し、この状態で散布を行う。すると、薬剤を伴う送風機32からの送風は、逃し口2bから逃れること無く散布ホース3に対して送られ、所定に散布される。
【0024】
このように、本実施形態においては、散布ホース3より上流の噴管2に、送風機32からの送風を管外に逃すための逃し口2bと、この逃し口2bを開閉するための開閉手段5と、が設けられ、エンジン31の始動時には逃し口2bが開とされることで、送風機32からの送風の一部が逃し口2bを通して管外に逃され、散布ホース3に対する急な風の吹き込みが緩和される一方で、散布時には逃し口2bが閉とされることで、薬剤を伴う送風機32からの送風は、逃し口2bから逃れること無く散布ホース3に対して送られ、所定に散布されるため、散布ホース3の捩れや破損が防止される。
【0025】
また、噴管2は、これが接続される上流側に対して回転自在な自在管とされ、逃し口2bは、噴管2の側方へ突出し内外を連通する円筒状部2cにより形成されているため、円筒状部2cを把持部とすることができると共に当該円筒状部2cを把持し自在管である噴管2を回転でき、取扱性、操作性及び作業性が向上されている。
【0026】
また、噴管2は、送風方向に沿って周壁が傾斜して縮径するテーパ部2aを有し、このテーパ部2aに逃し口2bが設けられているため、真っ直ぐで傾斜していない部分(直管部分)に逃し口が設けられている場合に比して、動圧を受けやすく送風の逃し能力(排出能力)が増大されている。
【0027】
また、開閉手段5は、逃し口2bを塞ぐためのパッキン6と、逃し口2bにパッキン6を介して被せられ逃し口2bを開閉するためのキャップ7と、を備え、パッキン6には、キャップ7に設けられた開口7bを通して管外に導出する可撓性の導出部6aとフック部6bが一体に成形され、噴管2は、パッキン6のフック部6bを係合するためのフランジ部2fを有しているため、キャップ7及びパッキン6により逃し口2bの開閉が良好に成されると共に、噴管2のフランジ部2fにパッキン6のフック部6bが係合されることにより噴管2からのパッキン6及びキャップ7の脱落及び紛失が防止されている。
【0028】
図4は、本発明の第二実施形態に係る動力散布機の噴管及びその近傍を示す斜視図である。この第二実施形態が第一実施形態と違う点は、真っ直ぐに延びる可撓性の導出部6aを紐状の導出部16aとすると共に、二股部を有するフック部6bを円環状の円環部16bとし、円環部16bを拡げた状態で円筒状部2cの雄螺子2dに外挿し、雄螺子2dを乗り越えて円筒状部2cの基部に位置させる(雄螺子2dの無い部分に達せさせる)ことで、当該円環部16bの図示上方への離脱を雄螺子2d(山部分)により阻止する係合状態とした点である。
【0029】
ここで、円環部16bがパッキン側の係合部とされ、雄螺子2d(山部分)が、パッキン側の係合部である円環部16bの図示上方への離脱を阻止し係合状態とする噴管側の係合部とされる。なお、この変更に伴って第一実施形態のフランジ部2fは無くされている。
【0030】
このように構成しても、第一実施形態と同様に、パッキン6が、紐状の導出部16a及び円環部16bにより噴管2に係合されることになり、噴管2からのパッキン6及びキャップ7の脱落及び紛失が防止されている。
【0031】
図5は、本発明の第三実施形態に係る動力散布機の筒状部及び開閉手段の要部を拡大して示す縦断面図である。この第三実施形態が第一、第二実施形態と違う点は、パッキン6に代えて、キャップ7内の円板状部を噴管2の軸線側に向かって円錐状に凸となる円錐部26aとしたパッキン26を用いた点である。ここで、パッキン26及びキャップ7により開閉手段25が構成される。
【0032】
このようなパッキン26を有する動力散布機によれば、作業者によるキャップ7の締め付けによって、パッキン26の円錐部26aが、逃し口2bの周縁に対して変形しながら強く密着するため、逃し口2bが一層良好に塞がれるようになる。なお、パッキン26には、第一実施形態の真っ直ぐに延びる導出部6aとフック部6bが一体に成形されていても、第二実施形態の紐状の導出部16aと円環部16bが一体に成形されていても良い。
【0033】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好ましいとして、筒状部を円筒形状としているが、角筒形状としても良い。
【0034】
また、筒状部の内側に、空気が逃し口2bを通して管外に排出されると音を生じる笛機能の構成を設け、逃し口2bの開時に笛吹音を生じさせるようにし、薬剤を散布するにあたって(薬剤散布の前に)キャップ7の締め付けの注意を促すようにしても良い。
【0035】
また、上記実施形態においては、特に好ましいとして、動力散布機を背負式動力散布機としているが、車載(手押し)式や自走式に対しても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第一実施形態に係る動力散布機を示す正面図である。
【図2】図1中の噴管及びその近傍を示す斜視図である。
【図3】図2の縦断面図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る動力散布機の噴管及びその近傍を示す斜視図である。
【図5】本発明の第三実施形態に係る動力散布機の筒状部及び開閉手段の要部を拡大して示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1…蛇管(噴管の上流側)、2…噴管、2a…テーパ部、2b…逃し口、2c…円筒状部(筒状部)、2d…雄螺子(噴管側の係合部)、2f…フランジ部(噴管側の係合部)、2x…第1噴管、2y…第2噴管、3…散布ホース、5,25…開閉手段、6,26…パッキン、6a,16a…導出部、6b…フック部(パッキン側の係合部)、16b…円環部(パッキン側の係合部)、7…キャップ、7b…キャップの開口、32…送風機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機(32)からの送風により薬剤を噴管(2)を通して散布ホース(3)に送り、当該散布ホース(3)から散布する動力散布機であって、
前記噴管(2)は、
前記送風を管外に逃すための逃し口(2b)と、
この逃し口(2b)を開閉するための開閉手段(5)と、を備えたことを特徴とする動力散布機。
【請求項2】
前記噴管(2)は、これが接続される上流側(1)に対して回転自在な自在管とされ、
前記逃し口(2b)は、前記噴管(2)の側方へ突出し内外を連通する筒状部(2c)により形成されることを特徴とする請求項1記載の動力散布機。
【請求項3】
前記噴管(2)は、送風方向に沿って周壁が傾斜して縮径するテーパ部(2a)を有し、
このテーパ部(2a)に前記逃し口(2b)が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の動力散布機。
【請求項4】
前記開閉手段(5)は、
前記逃し口(2b)を塞ぐためのパッキン(6)と、
前記逃し口(2b)に前記パッキン(6)を介して被せられ前記逃し口(2b)を開閉するためのキャップ(7)と、を備え、
前記パッキン(6)には、前記キャップ(7)に設けられた開口(7b)を通して管外に導出する可撓性の導出部(6a)と係合部(6b)が一体に成形され、
前記噴管(2)は、前記パッキン(6)の前記係合部(6b)を係合するための係合部(2f)を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の動力散布機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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