説明

動力装置とそれを搭載した車両、および共振音を低減する方法

【課題】
クランク軸系の共振音を低減すると共に、停止状態の内燃機関の始動の際の騒音を低減する動力装置を提供する。
【解決手段】
動力装置10は内燃機関11と変速装置12を備え、第1フライホイール31を内燃機関11と変速装置12との間でクランク軸13に固着し、内燃機関11の内部の潤滑油Rに浸る位置にスタータ21を配置し、前記スタータ21のピニオン22と噛合するリングギヤ34を備えた第2フライホイール32を、内燃機関11の内部でクランク軸13に固着して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライホイールによって車内音を低減すると共に、動力装置の起動時に発生するスタータ音を低減する動力装置とそれを搭載した車両、およびその共振音を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動力装置に設けられているフライホイールは円板状に形成されて、クランク軸に固着され、クランク軸のトルク変動による回転モーメントのばらつきを防いでいる。そのためにはフライホイールにある程度の質量が必要になる。しかし、そのフライホィールの質量に基づく振動が生じ、この振動に起因して特に車両において車室内にこもり音等の異音が生じ易い。
【0003】
ここで図7に示すように、従来の動力装置100の構成と動作を説明する。この動力装置100は、内燃機関101と変速装置102とを備え、内燃機関101のピストン運動を回転運動に換えるクランク軸103が、内燃機関101で生じた運動エネルギーを変速装置102へと送っている。スタータ104は変速装置102の内部または外部に設けられ、ピニオン105を備える。ピニオン105はフライホイール106の外周に備えたリングギヤ107と噛合している。停止状態の内燃機関101を起動させるために、スタータ104を起動させると、ピニオン105が回転し、合わせてフライホイール106が回転することで、円滑に内燃機関101を始動することができる。
【0004】
このときのクランク軸系の捻り振幅と周波数の関係を表した図8から車両の乗員に騒音と感じ易い200Hz〜500Hzでフライホイール106との共振周波数が最大となり、騒音源となる共振音が発生していることがわかる。
【0005】
この対策として、2枚の回転板を備えたフライホイールで捻り振幅による騒音を防止する装置がある(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載のフライホイールなどが2枚の構成からなるデュアルマス(ツーマス)フライホイールなどは2枚の回転板の間にダンパなどを設け、そのダンパの共振でフライホイールの共振を低減している。しかし、上記の構成では、主に共振を減衰させることで共振音を低減しているが、新たにダンパなどの共振音が発生してしまうという問題がある。また、ダンパなどに共振を減衰するために負荷がかかり、それが原因となって故障するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−115184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、共振周波数を自由に設定でき、クランク軸の捻り振動による騒音を防ぐと共に、内燃機関の起動停止時のスタータの騒音を低減する動力装置とそれを搭載した車両、および共振音を低減する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を解決するための動力装置は、内燃機関と変速装置との間でクランク軸に固着された第1フライホイールを設けた動力装置において、内燃機関の内部でクランク軸に
固着された第2フライホイールを設けて構成される。
【0009】
この構成によれば、第1フライホイールと第2フライホイールとが、内燃機関の外部と内部とである程度の距離を保ち動力装置に設けられている。そのため、第1フライホイールと第2フライホイールとクランク軸とが2自由度系の回転振動を生じ、それによりクランク軸の捻り振幅による共振音を低減することができる。
【0010】
また、上記の動力装置は、可聴領域内の周波数で騒音源となる範囲の外の領域にクランク軸系の捻り振幅が極大となる共振周波数を発生させる2自由度系の回転振動が、前記第1フライホイールと前記第2フライホイールとクランク軸とから構成される。
【0011】
この構成によれば、内燃機関と変速装置との間に設けた第1フライホイールと内燃機関の内部に設けた第2フライホイールとクランク軸とからなる2自由度系の回転振動によって発生する2つの共振周波数を可聴領域内の周波数で騒音源となる範囲の外の領域に発生するように設定し車内音を低減することができる。すなわち、クランク軸の捻り振幅の1次モードの第1固有振動数(共振周波数)と2次モードの第2固有振動数(共振周波数)の間に、騒音源となる周波数の範囲となるように設定する。そうすると、騒音源となる周波数の範囲内には反共振周波数が発生していることになる。
【0012】
可聴領域内の周波数で車内の騒音源となる範囲は、具体的に数値で示すと、200Hz〜1000Hzの範囲であり、実質的には200Hz〜500Hzの範囲である。すなわち、クランク軸の捻り振幅の最大値の1次モードの第1固有振動数(共振周波数)を200Hz以下に発生させ、2次モードの第2固有振動数(共振周波数)を500Hz以上に発生させ、加速時に騒音源として問題となる周波数領域(200Hz〜500Hz)外に共振周波数をずらすと、より効果的に騒音を低減することができる。
【0013】
その第1固有振動数(共振周波数)と第2固有振動数(共振周波数)は、第1フライホイールの第1慣性モーメントと、第1フライホイールと変速装置との間のクランク軸の第1捻りばね定数と、第2フライホイールの第2慣性モーメントと、第1フライホイールと第2フライホイールとの間のクランク軸の第2捻りばね定数とにより自由に設定することができる。そのため、クランク軸系の捻り振幅(共振周波数)設定に自由度が広がるため、エンジンの始動時および停止時において、車内音の感度が高い可聴領域内の周波数で騒音源となる範囲からその共振周波数を外すことで車内音を低減することができる。また、慣性モーメントは各フライホイールとクランク軸の半径と質量から設定でき、捻りばね定数は各フライホイール間の距離とクランク軸の半径から設定できる。よって、各フライホイールの質量と各フライホイール間の距離とを調整することで、第1固有振動数(共振周波数)と第2固有振動数(共振周波数)は調整することができる。
【0014】
加えて、上記の動力装置は、スタータを内燃機関の内部の潤滑油に浸る位置に配置し、前記第2フライホイールが前記スタータのピニオンと噛合するリングギヤを外周に備えて構成される。
【0015】
この構成によれば、停止状態の内燃機関を始動させるスタータを内燃機関の内部のオイルパンに設けることで、スタータを潤滑油に浸すことができる。そのため、スタータの発生する騒音を潤滑油および内燃機関の外壁が遮断するため、スタータ音を低減することができる。また、第2フライホイールにスタータのピニオンと噛合するリングギヤを第2フライホイールの外周に備えるだけでよいため、わざわざスタータの回転をクランク軸に伝えるためのギヤ列を別に設けなくともよい。さらに、ピニオンとリングギヤとの噛合箇所が潤滑油に常に浸っているため、潤滑を容易に行うことができる。
【0016】
先の問題を解決する車両は、上記の動力装置を搭載して構成される。この構成によれば、起動時におけるスタータの音を低減し、特に車両が加速するときに騒音として問題となる周波数領域外にクランク軸系の共振点をずらすことができる。そのため、内燃機関の起動停止の頻度が高いアイドルストップ車などにとくに有効である。
【0017】
さらに、先の問題を解決するための動力装置の共振音を低減する方法は、内燃機関の運動を変速装置に伝えるクランク軸と、前記内燃機関と前記変速装置との間で前記クランク軸に固着された第1フライホイールと、前記内燃機関の内部で前記クランク軸に固着された第2フライホイールとが、自由度系の回転振動で生じる2つの共振周波数を可聴領域内の周波数で騒音源となる範囲の外に設定する。
【0018】
この方法によれば、第1フライホイールと第2フライホイールの各慣性モーメントとクランク軸の捻りばね定数とから、2自由度系の回転振動における第1モードの第1固有振動数と第2モードの第2固有振動数との2つの共振周波数を自由に設定することができる。2つの共振周波数を可聴領域内の周波数で騒音源となる範囲の外で発生するように設定し、反共振周波数を騒音源となる範囲の内に発生するように設定することで、動力装置の共振音を低減することができる。特に本発明ではクランク軸系の捻り振幅が最大となる第1固有振動数(共振周波数)と第2固有振動数(共振周波数)を200Hz〜500Hzの範囲外に設定することで、車内音を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、クランク軸系の振幅が最大となる共振周波数を、車両の加速時に問題となる可聴領域内の周波数で騒音源となる範囲の外に設定し、共振音を低減することができると共に、内燃機関を始動させる際のスタータが発生する騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る実施の形態の動力装置を示した断面図である。
【図2】図1のII−II断面を示した断面図である。
【図3】本発明に係る実施の形態のフライホイールの慣性モーメントなどを示した図である。
【図4】本発明に係る実施の形態の1次モードの捻り振幅(共振周波数)を示した図である。
【図5】本発明に係る実施の形態の2次モードの捻り振幅(反共振周波数)を示した図である。
【図6】本発明に係る実施の形態の動力装置のクランク軸の振幅と周波数の関係を示した図である。
【図7】従来の動力装置を示した断面図である。
【図8】従来の動力装置のクランク軸の振幅と周波数の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の形態の動力装置10について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1及び図2に示すように、動力装置10は内燃機関11と変速装置12と、内燃機関11のピストン運動を回転運動に換えるクランク軸13とを備える。内燃機関11にシリンダブロック14とオイルパン15とシリンダヘッド16とを設け、オイルパン15にピニオン22を備えたスタータ21を設ける。クランク軸13には第1フライホイールと第2フライホイールとを固着する。本発明において、内燃機関11と変速装置12に一般的なエンジンやトランスミッションを用いることができる。
【0023】
オイルパン15の底部には潤滑油Rが溜まっており、スタータ21をその潤滑油Rに浸るようにオイルパン15に固定する。このとき、スタータ21の稼働時の振動を低減するために、スタータ21をオイルパン15にゴムなどの防振材を介して設置することが好ましい。
【0024】
スタータ21は潤滑油Rが浸透しないように金属製又は合成樹脂などのカバーで覆った電動モータで形成され、電動モータの先端に、ピニオン22を備える。また、スタータ21は車両内のバッテリー(図示しない)から電力を得て動作する。スタータ21に一般的な電動セルなどを用いることができる。
【0025】
第1フライホイール31は円板状に形成され、内燃機関11と変速装置12との間でクランク軸13に固着されている。この第1フライホイール31は形状、機能を限定せずに、例えばデュアルマス(ツーマス)ホイールや、ホイールの外周に作用してホイールの慣性モーメントが変化する装置を備えたホイール及び発電機能を有したフライホイールなどを用いることができる。また、第1フライホイールの内外にクランク軸からの振幅を減衰することができる減衰装置を設けてもよい。
【0026】
第2フライホイール32は円板状に形成され、内燃機関11の内部でクランク軸13に固着されている。また、第2フライホイール32は中心にホイール部33と、外周にリングギヤ34を備えている。リングギヤ34はオイルパン15に設置したスタータ21のピニオン22と噛合する。ホイール部33とリングギヤ34とは一体に形成しているが、ホイール部33とリングギヤ34との間に減衰装置を設けてもよい。リングギヤ34とピニオン22とは潤滑油Rに浸る位置で噛合するように設けると、噛合箇所が常に潤滑油Rによって潤滑することができる。第2フライホイール32も第1フライホイール31と同様に形状、機能及び動作は限定されない。
【0027】
次に上記の動力装置10の動作を説明する。停止状態の内燃機関11を始動させるとき、例えば運転席に設けられたエンジンキーを回したとき、始動ボタンを押したとき、又はアイドリングストップシステムの始動命令などが発信されたときには、その信号がスタータ21へ送られ、スタータ21が起動する。このとき、ピニオン22を内燃機関11の運転中にはリングギヤ34と噛合しないようにスタータ21内部に引き込んでいるため、まず、スタータ21ではピニオン22をリングギヤ34と噛合する位置まで伸ばす。ピニオン22がリングギヤ34と噛合した後、スタータ21の内部の電動モータが回転する。その回転をピニオン22がリングギヤ34に伝えて、第2フライホイール32が回転する。そして、第2フライホイールが固着したクランク軸13が回転し、シリンダブロック14の内部に設けたピストンが上下運動し始める。この動作により、停止状態の内燃機関11を円滑に始動させることができる。
【0028】
上記の構成により、スタータ21を内燃機関11の内部のオイルパン15に設けて潤滑油Rに浸すことでスタータ21が発生する動作音を低減することができる。また、シリンダブロック14及びオイルパン15自体も騒音を遮音するため、よりスタータ21が発生する騒音を低減することができる。
【0029】
一方、内燃機関11と変速装置12との間でクランク軸13に固着された第1フライホイール31と、内燃機関11の内部でクランク軸13に固着した第2フライホイール32とクランク軸13とからなる2自由度系の回転振動により、発生する共振周波数を特に加速度中(内燃機関11が停止状態から始動中)に騒音となる周波数の範囲からずらすことができ、結果として車内音を低減することができる。
【0030】
次に第1フライホイール31と第2フライホイール32とからなる2自由度系の回転振動について説明する。変速装置12側に固定壁40があると仮定し、トルク変動をうけたクランク軸13が加振された状態を図3に示す。
【0031】
第1フライホイール31の慣性モーメントを第1慣性モーメントJ1とし、第1フライホイール31と固定壁40との間のクランク軸13aの捻りばね定数を第1捻りばね定数k1とする。また、第2フライホイール32の慣性モーメントを第2慣性モーメントJ2とし、第1フライホイール31と第2フライホイール32との間のクランク軸13bの捻りばね定数を第2捻りばね定数k2とする。第1フライホイール31の半径a1、重さM1、第2フライホイール32の半径a2、重さM2とし、クランク軸13の半径をb1とすると、慣性モーメントJ1、J2は数式1で表すことができる。
【0032】
【数1】

【0033】
一方捻りバネ定数k1、k2は、第1フライホイール31と固定壁40との距離をL1、第1フライホイール31と第2フライホイール32との距離をL2とし、クランク軸13の横断性係数をGとすると、捻りばね定数は数式2で表すことができる。
【0034】
【数2】

【0035】
よって、フライホイール31、32の慣性モーメントJ1、J2及び捻りばね定数k1、k2はフライホイール31、32の質量M1、M2とそれぞれの半径a1、a2と変速装置12との距離L1、L2を換えることによって、調整することができることがわかる。従来のフライホイールでは距離L2が短く、2自由度系の回転振動による共振周波数の設定は難しい。しかし、本発明の実施の形態の動力装置では、第1フライホイール31と第2フライホイール32とを距離L2分だけ離れてクランク軸13に固着しているため、2自由度系の回転振動により共振周波数の設定に自由度を持たせることができる。
【0036】
2自由度系の回転振動には図4に示す1次モードの振動と、図5に示す2次モードの振動とがある。質点41は第1フライホイール31を表し、質点42は第2フライホイール32を表している。ここで、1次モードの固有角振動数w1と2次モードの固有角振動数w2は数式3で表すことができる。
【0037】
【数3】

【0038】
固有角振動数w1と固有角振動数w2から1次モードと2次モードの質点41、42の振幅比r1、r2を数式4から求める。振幅C11は1次モードの第1慣性モーメントJ1の振幅、振幅C12は1次モードの第2慣性モーメントJ2の振幅、振幅C21は2次モードの第1慣性モーメントJ1の振幅、振幅C22は2次モードの第2慣性モーメントJ2の振幅を表す。
【0039】
【数4】

【0040】
2自由度系の回転振動においては振幅比r1、r2は数式5の条件になる。
【0041】
【数5】

【0042】
以上より、図4に示すように、質点41、42の振幅C11、C12が共に正のため、2つの質点は同相になることがわかる。また、図5に示すように、質点41の振幅C21が正であり、質点42の振幅C22が負になるため、2つの質点は逆相になることがわかる。第1固有振動数f1(共振周波数)と第2固有振動数f2(共振周波数)は数式6から求めることができる。
【0043】
【数6】

【0044】
以上の関係式より第1固有振動数f1及び第2固有振動数f2とは、慣性モーメントJ1、J2と捻りばね定数k1、k2とから設定することが可能である。より詳細には固有振動数f1、f2は、第1フライホイール31の半径a1、質量M1と第2フライホイール32の半径a2、質量M2と各フライホイール31、32との位置(L1、L2)とクランク軸13の半径b1により設定することが可能である。この第1固有振動数f1(共振周波数)と第2固有振動数f2(共振周波数)とを可聴領域の周波数で騒音源となる範囲の外の領域に設定すると、車内音を低減することができる。このとき第1固有振動数f1と第2固有振動数f2の間には反共振周波数が存在している。
【0045】
可聴領域とは人の耳に聞こえる周波数のことであり、20Hzから2万Hzの範囲と言われている。この周波数の範囲で、車内で騒音源となる範囲は200Hz〜1000Hzの範囲であり、さらに問題となる騒音源の範囲は200Hz〜500Hzの範囲である。
【0046】
そのため、第1固有振動数f1(共振周波数)を周波数100Hz以下に、第2固有振動数f2(共振周波数)を1000Hz以上に設定すると車内音の感度が高い周波数200Hz〜1000Hzの範囲内に第1固有振動数f1(共振周波数)と第2固有振動数f2(共振周波数)が存在しないため、車内音を低減することができる。
【0047】
実質的には車内音の感度が特に高い200Hz〜500Hzを騒音源となる範囲に設定し、第1固有振動数f1を周波数200Hz以下の領域に、第2固有振動数を周波数500Hz以上の領域に設定すると、より効果的に動力装置の共振音を低減することができる。
【0048】
このときのクランク軸系の捻り振幅と周波数との関係を、図6に示す。図6から第1フライホイール31と第2フライホイール32とで形成される2自由度系振動が、クランク軸系の捻り振幅の極大となる第1固有振動数f1を200Hz以下、第2固有振動数f2を500Hz以上にずらすことができ、反共振周波数が200Hz〜500Hzに発生していることがわかる。
【0049】
第1フライホイール31と第2フライホイール32とに、減衰装置を設けた場合でも上記と同様の効果を得ることができる。
【0050】
上記の構成の動力装置10を搭載した車両は、アイドリングストップし、停止した内燃機関11を始動させる際に、スタータ21が発生させる騒音を低減することができる共に、特に加速度中における車内の騒音源になっていたクランク軸13系の捻り振幅を、騒音と感じない領域で発生させることによって、共振音を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の動力装置は、クランク軸系の捻り振幅の最大値である共振周波数を2自由度系の回転振幅により、可聴領域の周波数で騒音源となる範囲の外にずらすことで共振音を低減させると共に、停止状態の内燃機関が始動する際のスタータ音を低減することができる。そのため、アイドリングストップ車などの内燃機関の始動停止が多い車両などに用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
10 動力装置
11 内燃機関
12 変速装置
13 クランク軸
14 シリンダブロック
15 シリンダヘッド
16 オイルパン
21 スタータ
22 ピニオン
31 第1フライホイール
32 第2フライホイール
33 ホイール部
34 リングギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と変速装置との間でクランク軸に固着された第1フライホイールを設けた動力装置において、内燃機関の内部でクランク軸に固着された第2フライホイールを設けたことを特徴とする動力装置。
【請求項2】
可聴領域内の周波数で騒音源となる範囲の外の領域にクランク軸系の捻り振幅が極大となる共振周波数を発生させる2自由度系の回転振動が、前記第1フライホイールと前記第2フライホイールとクランク軸とから構成されたことを特徴とする請求項1に記載の動力装置。
【請求項3】
スタータを内燃機関の内部の潤滑油に浸る位置に配置し、前記第2フライホイールが前記スタータのピニオンと噛合するリングギヤを外周に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の動力装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の動力装置を備えたことを特徴とする車両。
【請求項5】
内燃機関の運動を変速装置に伝えるクランク軸と、前記内燃機関と前記変速装置との間で前記クランク軸に固着された第1フライホイールと、前記内燃機関の内部で前記クランク軸に固着された第2フライホイールとが、2自由度系の回転振動で生じる2つの共振周波数を可聴領域内の周波数で騒音源となる範囲の外に設定することを特徴とする動力装置の共振音を低減する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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