説明

動物侵入防止装置

【課題】農場の出入口に至る通路より鹿や猪などの野生動物が侵入し、農作物を食い荒らすことによる被害を防止するために上記出入口に至る通路に設置され、野生動物が侵入するのを防止する動物侵入防止装置を提供する。
【解決手段】農場の出入口に至る通路に形成した矩形の穴の穴縁に取付けた受枠に、枠1内に主部材2を通路の進行方向に対し傾斜して並設すると共に、補助部材3を主部材2と直交して並設し、両部材2、3により野生動物の足が入るほどの菱形の開口4を前後左右に多数形成した溝蓋状盤体5を取付け、該盤体を設置した状態で前記開口が200mm以上の深さを有し、野生動物の足が開口に入ると、足の少なくとも第1関節が開口4に入るようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば農地の出入口や鉄道の踏切等に至る通路において、鹿や猪などの野生動物が上記通路を通って農地や線路内に侵入するのを防止する目的で設置される動物侵入防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鹿や猪等の野生動物による農作物への被害を防止する対策としては、農地の周りに柵や鉄条網等のフェンスを設置するのが一般的である。鉄道においても、線路脇にフェンスを設置し、人や動物が立ち入ることによる列車の運行が妨げられることがないようにしている。
【0003】
柵や鉄条網等のフェンスは、設置が比較的簡単で、鹿や猪などの野生動物が侵入するのを防止する効果があるが、農地の出入口や踏切等に至る道路に設置すると、車両や人の行き来に支障を来たす。そこで農地の出入口の場合、開閉可能なドアフェンスを設けているが、出入りする都度ドアフェンスを開閉するのは面倒であり、ドアフェンスを閉め忘れて、そこから野生動物が侵入することもある。
【0004】
鹿などの野生動物は、足を負傷すると、生命にかかわるため、脚を負傷することを極端に嫌う習性がある。特許文献1には、野生動物のこの習性を利用し、車両や人の通行には支障がないが、野生動物の足が入るほどの窪みを多数形成したハニカム状又は格子状をなす踏板を通路に設置し、野生動物が踏板に足を踏み入れることによる警戒心を懐かせて侵入防止を図るようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−201409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される踏板は、設置当初こそ鹿や猪などの野生動物は警戒心から踏板手前で踏み留まり、脚を踏み入れることはないが、馴れると、次第に足を踏み入れて踏板を渡って侵入したり、ジャンプして踏板を飛び越えて侵入するものが見られるようになる。
【0007】
本発明は、野生動物の侵入をより確実に防止することができる動物侵入防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係わる発明は、車両や人が通行する通路に、該通路を通って野生動物が侵入するのを防止するために設置される動物侵入防止装置であって、野生動物の足が入るほどの開口を前後左右に多数形成したパネルよりなり、該パネルを前記通路に設置した状態で前記開口が200mm以上の深さを有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、前記パネルが枠内に並設される主桟と、該主桟と交差して並設される副桟よりなり、これら両桟のうち、少なくとも一方の桟であり、野生動物がジャンプして着地し、或いは着地した箇所より更にジャンプしようとする際に野生動物の脚が掛けられる桟が野生動物の侵入方向に対し傾斜ないし湾曲することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係わる発明によると、パネルの各開口は深さが200mm以上もあることにより、野生動物がパネルに踏み入れ足が開口に入ると、足の少なくとも第1関節が開口に入るようになり、開口に足を抜き差しして歩行するのが困難になる。そのため、野生動物がパネルを渡って侵入するのを困難にする。
【0011】
野生動物が踏板を飛び越えて侵入する対策としては、パネルの長さを長くしたり、踏板を野生動物の侵入方向に複数枚並べて接続し、1度のジャンプでは飛び越えられないような長さにすることが考えられるが、このようにしてもジャンプを繰り返して渡るのを防止することができない。この点請求項2に係わる発明のように、パネルを構成する主桟と副桟のうち、少なくとも一方の桟を傾斜ないし湾曲させることにより、野生動物がジャンプを繰り返してパネル上に着地したり着地箇所より更にジャンプする際、脚が傾斜した桟に当たることにより着地しにくくなったり、ジャンプしにくくなり、ジャンプを繰り返してパネルを侵入しにくくなる。なおパネルを構成する桟は、屈折ないし湾曲していてもよいが、直線状をなすようにすると、車両などの荷重を支持するのに必要な強度を構造上特別な構造とすることなく、容易に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】野生動物侵入防止装置を構成するパネルの平面図。
【図2】受枠に取付けたパネルの一部を示す図。
【図3】支持部材に取付けたパネルの一部を示す図。
【図4】パネルの別の例の平面図。
【図5】パネルの更に別の例の平面図。
【図6】パネルの他の例の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の野生動物侵入防止装置について図面により説明する。
図1に示す野生動物侵入防止装置は、矩形の枠1内に主桟である主部材2を矢印で示す侵入方向に対し傾斜して一定間隔で並設すると共に、副桟である補助部材3を同じく通路の進行方向に対し傾斜して主部材2と交差(図においては直交)して一定間隔で並設し、両部材2、3により野生動物の足が入るほどの菱形の開口4を前後左右に多数形成したパネルとしての溝蓋状盤体5よりなっているもので、該溝蓋状盤体5の通路への設置は、図2に示すように通路に掘り込んだ深さ200mm以上をなし、かつ溝蓋状盤体5と同形の矩形の穴6の穴縁に取付けた受枠7に装着することにより行われ、上記開口は深さが200mm以上、すなわち溝蓋状盤体5の表面から穴底までの深さが200mm以上となっている。
【0014】
図3は、前記受枠7に代え、穴6に例えば図示するようなI型鋼よりなる支持部材9を設置し、溝蓋状盤体5を支持部材上に掛け渡して設置してなるものである。
前述の溝蓋状盤体5は、野生動物が1度のジャンプでは飛び越えることができない長さに形成されていてもよいが、好ましくは穴6の長手方向、すなわち野生動物の侵入方向に複数枚並べて設置される。いずれによる場合も前記受枠7或いは支持部材9は穴6の長手方向に穴縁に沿って取付けられる。
【0015】
本装置によると、鹿や猪などの野生動物が開口4に脚を踏み入れても該開口は穴底までの深さが200mm以上あるため、少なくとも野生動物の第1関節まで開口4に入り込むようになり、開口4から脚を抜き差しして溝蓋状盤体5を渡るのが困難になる。また溝蓋状盤体5をジャンプして飛び越えるのを防止するため、1度のジャンプでは溝蓋状盤体5を飛び越えられないように溝蓋状盤体5の長さを長くし、或いは溝蓋状盤体5を接続した場合、侵入するにはジャンプを繰り返すことになるが、ジャンプして溝蓋状盤体上に着地し、更にその着地箇所よりジャンプしてジャンプを繰り返す際、野生動物の脚が傾斜する主部材6に当たることで着地しにくくなったり、ジャンプしにくくなり、これにより溝蓋状盤体5より侵入するのを困難にする。また溝蓋状盤体5は穴縁に取付けた受枠7或いは支持部材9に設置されるため、溝蓋用盤体5をしっかりと安定して穴縁に取付けることができ、また溝蓋状盤体の厚みを増さなくても開口4を必要深さ確保することができる。
【0016】
図4に示す野生動物侵入防止装置を構成するパネルとしての溝蓋状盤体11は、矩形の枠12内に主桟である主部材13を矢印で示す侵入方向に向けて一定間隔で並設すると共に、副桟である補助部材14を通路の進行方向及び前記主部材13に対し傾斜して同じく一定間隔で並設し、両部材13、14で野生動物の足が入るほどの菱形又は平行四辺形の開口15を前後左右に多数形成してなるものである。この溝蓋状盤体11も図2又は図3に示すように穴の長手方向に沿って穴縁に取付けた受枠7又は支持部材に設置される。
【0017】
図4に示す溝蓋状盤体11において、主部材13は矢印の侵入方向に向いているが、侵入方向と直交する向きに向けてもよく、また補助部材14は図とは逆向きに傾斜させて設けてもよい。
【0018】
前記各実施形態における溝蓋状盤体5、11よりなるパネルは、主部材2と補助部材3を交差し、両部材2、3により野生動物の足が入るほどの菱形又は平行四辺形の開口4を前後左右に多数形成したものよりなっているが、パネルは開口の深さが200mm以上あれば、例えば主部材2と補助部材3を直交させた格子状の溝蓋状盤体であってもよく、また開口がハニカム状をなすパネルであってもよい。
【0019】
図5に示すパネルとしての溝蓋状盤体21は、矩形の枠22内に主部材23を矢印で示す侵入方向に向けて一定間隔で並設すると共に、補助部材24をジグザグに形成して屈折部で主部材23に取着し、一体化してなるもので、両部材22、23で野生動物の足が入るほどの台形の開口25を前後左右に多数形成している。
【0020】
図6に示すパネルとしての溝蓋状盤体31は、矩形の枠32内に主部材33を矢印で示す侵入方向に向けて一定間隔で並設すると共に、ジグザグに形成される補助部材34を屈折部が主部材23間に位置するように配置して主部材33に取着し、一体化してなるもので、両部材33、34により野生動物の足が入るほどの開口35を前後左右に形成している。
【0021】
前記各実施形態の溝蓋状盤体21、31では、補助部材24、34はジグザグに形成されているが、一部又は全部の補助部材24、34或いは補助部材24、34の一部を屈曲形成してもよい。
【0022】
前記各実施形態の溝蓋状盤体21、31に対してはまた、少なくとも溝蓋状盤体の表面を黒く着色して夜間で溝蓋状盤体、とくに傾斜ないし湾曲した補助部材3、14、24、34、更には主部材3、14、24、34の構成を見え難くし、野生動物がジャンプする際の警戒心を与えるようにするのが望ましい。
【符号の説明】
【0023】
1、12、22、32・・矩形の枠
2、13、23、33・・主部材
3、14、24、34・・補助部材
4、15、25、35・・開口
5、11、21、31・・溝蓋状盤体
9・・支持部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両や人が通行する通路に、該通路を通って野生動物が侵入するのを防止するために設置される動物侵入防止装置であって、野生動物の足が入るほどの開口を前後左右に多数形成したパネルよりなり、該パネルを前記通路に設置した状態で前記開口が200mm以上の深さを有することを特徴とする動物侵入防止装置。
【請求項2】
前記パネルが枠内に並設される主桟と、該主桟と交差して並設される副桟よりなり、これら両桟のうち、少なくとも一方の桟であり、野生動物がジャンプして着地し、或いは着地した箇所より更にジャンプしようとする際に野生動物の脚が掛けられる桟は、野生動物の侵入方向に対し傾斜ないし湾曲することを特徴とする請求項1記載の動物侵入防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−160731(P2011−160731A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27637(P2010−27637)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000133294)株式会社ダイクレ (65)
【Fターム(参考)】