説明

動物捕獲用罠

【課題】従来と比較して捕獲対象動物が警戒心を抱きにくい動物捕獲用罠を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る動物捕獲用罠80は、地表面に近い位置に保持された捕獲部40を上昇させることで、捕獲対象動物Aの捕獲を行う。従って、側面、天井部、が開放されており、また、捕獲対象動物Aはどの方向からでも捕獲部40上に侵入することができる。このため、捕獲対象動物Aはあまり警戒心を抱かずに捕獲部40上に侵入する。これにより、従来の箱型罠に比較して捕獲対象動物Aの捕獲率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕獲対象動物が警戒心を抱きにくい動物捕獲用罠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、山間部近郊においてイノシシや鹿等の野生動物による農業被害が深刻化している。このため、これら害獣駆除のため捕獲対象動物の捕獲が動物捕獲用罠を用いて行われている。ただし、動物捕獲用罠のうちトラバサミ式罠の使用は安全性の面から禁止されており、よって下記[特許文献1]に開示された発明のような箱型罠が一般的に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−000078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、[特許文献1]に示されるような箱型罠では、捕獲対象動物が柵状の側面、天井部、落とし扉等で囲われた檻の内部に入らないと捕獲することができない。しかしながら、捕獲対象動物が警戒心からこのような閉塞した箱型罠の内部に入ることを躊躇することは容易に想像できる。さらに、捕獲対象動物の学習もあり、箱型罠による捕獲率は年々減少傾向にある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来と比較して捕獲対象動物が警戒心を抱きにくい動物捕獲用罠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1)複数の縦フレーム部20と、当該縦フレーム部20間に設置される横フレーム12、14と、
前記縦フレーム部20に設置される弾性部材30と、
当該弾性部材30により上下動するとともに、捕獲対象動物Aの脚が通り且つ胴体が通らない目開き寸法の網状もしくは格子状の捕獲部40と、
当該捕獲部40を地表面に近い待機位置に保持する保持手段50と、
捕獲対象動物Aが捕獲部40上にいることを検知して前記保持手段50を解除する検知手段60と、を有し、
前記保持手段50が解除され捕獲部40が上昇し捕獲対象動物Aの脚が捕獲部40に落ち込むことにより捕獲対象動物Aを捕獲することを特徴とする動物捕獲用罠80を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)捕獲部40の上昇を許容するとともに下降を規制するストッパ部材70を縦フレーム部20の上下方向に複数連続して設けたことを特徴とする上記(1)記載の動物捕獲用罠80を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の動物捕獲用罠は、4方向の側面及び天井部が開放し、かつ、どの方向からも侵入が可能のため捕獲対象動物が警戒心を抱きにくい。これにより、捕獲対象動物の捕獲率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る動物捕獲用罠を示す図である。
【図2】本発明に係る縦フレーム部を示す断面図である。
【図3】本発明に係る捕獲部の例を示す図である。
【図4】本発明に係る動物捕獲用罠の動作を説明する図である。
【図5】本発明に係るストッパ部材を説明する図である。
【図6】本発明に係る保持手段及び検知手段の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る動物捕獲用罠の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1(a)、図1(b)は本発明に係る1実施の形態の動物捕獲用罠80の側面図及び上面図である。本発明に係る動物捕獲用罠80は、四隅に配置された4本の縦フレーム部20と、この縦フレーム部20の間に設置される上側横フレーム12と、下側横フレーム14と、を有している。そして、この縦フレーム部20、上側横フレーム12、下側横フレーム14により形成されるフレーム部は、全ての側面と天井部とが開放した枠体となる。尚、動物捕獲用罠80のフレーム部は、図1(b)に示されるように上面視で正方形が好ましいが、これに限定されるものではなく長方形としても良い。尚、フレーム部の概略寸法は高さが約1.3m、縦横寸法が約2mである。また、動物捕獲用罠80は、基本的に現地で組み立てて使用する。よって、縦フレーム部20、上側横フレーム12、下側横フレーム14、及びその他の部材は分解と組み立てが可能である。
【0010】
ここで、縦フレーム部20の構成を図2の断面図を用いて更に詳しく説明する。縦フレーム部20を構成するフレーム体22は内部が中空の例えば角パイプであり、その内部には長手方向に沿ってボールネジ24が設置されている。また、フレーム体22の上面には、ボールネジ24に固定されたナット等の回転手段26が設置されている。さらに、縦フレーム部20はフレーム体22に沿って上下動可能な上部支持体28を備えている。尚、上部支持体28はボールネジ24と螺合しており、回転手段26を回転させることでボールネジ24が回転し、それに伴って上部支持体28が上下動する。また、上部支持体28の下方にはバネ等の弾性部材30の上端が設置される。そして、弾性部材30の下端は捕獲部支持体42に設置される。また、捕獲部支持体42はフレーム体22に沿って上下動可能であり、よって捕獲部支持体42は弾性部材30によって吊り下げられた状態となっている。捕獲部支持体42の下側には第1保持ピン孔44aが形成され、またフレーム体22には第1保持ピン孔44aと一致する位置に第2保持ピン孔44bが形成される。フレーム体22の下端には土台部32が設置され、この土台部32に下側横フレーム14が接続される。また、土台部32には動物捕獲用罠80が転倒することを防止する脚部34を設けても良い。この脚部34は土台部32に着脱式としても良いし折畳式にしても良い。さらに、脚部34には土中に打ち込むペグ36を設置可能としても良い。尚、ペグ36は別体としても脚部34に固定されていても良いし、土台部32を直接固定したり下側横フレーム14を固定するようにしても良い。
【0011】
また、図1に示す動物捕獲用罠80の捕獲部40は、捕獲対象動物Aの脚が通り且つ胴体が通らない目開き寸法の格子状となっており、中央部分に後述の検知板62を露出させる中央孔47が形成されている。尚、捕獲部40の目開き寸法が検知板62の寸法よりも十分大きければ、中央に位置する捕獲部40の孔を中央孔47として代用しても良い。また、捕獲部40の形状は図1のものに限定されるわけではなく、例えば図3(a)に示す網状のネットを用いたものや、図3(b)に示す柵状のもの、また、図3(c)、図3(d)に示す平面形状を略十字状としたものの他、如何なるものを用いても良い。特に、図3(c)、図3(d)に示す捕獲部40は、平面形状を略十字状とすることで捕獲部40がフレーム部の外側も網羅する。このため、捕獲対象動物Aが大型で後ろ足がフレーム部の外側にはみ出す場合でも、この捕獲対象動物Aを捕獲することができる。よって、捕獲部40としては、図3(c)、図3(d)のものを採用することが特に好ましい。尚、捕獲部40は折畳可能として、輸送及び搬入搬出を容易とすることが好ましい。
【0012】
この捕獲部40は捕獲部支持体42と接続され、捕獲部支持体42が上下動するのに伴って捕獲部40も上下動する。尚、捕獲部支持体42と捕獲部40とは直接固定しても良いが、リングや鎖などの接続部材48を介して間接的に行うことが好ましい。この構成によれば、捕獲対象動物Aの重量で捕獲部40が斜めとなっても、捕獲部支持体42は斜めとならずフレーム体22に沿って円滑に上昇することができる。
【0013】
捕獲部40の下側には、この捕獲部40を地表面に近い待機位置に保持する保持手段50と、捕獲対象動物Aが捕獲部40上にいることを検知して保持手段50を解除する検知手段60と、が設置されている。尚、保持手段50及び検知手段60の具体例に関しては後に詳しく説明する。
【0014】
次に、動物捕獲用罠80の動作を図4を用いて説明する。先ず、回転手段26を回して上部支持体28を下降させる。上部支持体28が下降すると弾性部材30を介して捕獲部支持体42及び捕獲部40も下降する。そして、捕獲部支持体42が待機位置に到達したところで保持手段50と検知手段60とを設置し、図4(a)に示すように、捕獲部支持体42及び捕獲部40を地表面に近い待機位置で保持する。
【0015】
次に、回転手段26を回して上部支持体28を所定の位置まで上昇させる。このとき、捕獲部支持体42は保持手段50によって保持されているため上昇することはない。よって、図4(b)に示すように、上部支持体28と捕獲部支持体42との間に設けられた弾性部材30が伸びて捕獲部支持体42を上昇させる方向に復元力が働く。次に、検知手段60上に捕獲対象動物Aを誘引する餌Mを載置する。これにより、動物捕獲用罠80のセットが終了する。
【0016】
ここで、捕獲対象動物Aが餌Mに引き寄せられ捕獲部40上に侵入する。このとき、動物捕獲用罠80は側面が全て開放しており、また、どの方向からでも捕獲部40上に侵入可能なことから、捕獲対象動物Aは従来よりも警戒心を抱かずに捕獲部40上に侵入する。そして、餌Mを食べるなどの際に検知手段60を押下する。このとき、捕獲対象動物Aは当然のことながら捕獲部40上に存在している。
【0017】
検知手段60が押下されると、保持手段50が外れ捕獲部支持体42の待機位置での保持が解除される。これにより、捕獲部支持体42は弾性部材30の復元力により瞬時に上昇する。また、捕獲部支持体42の上昇に伴って捕獲部40も上昇する。捕獲部40は捕獲対象動物Aの脚が通り且つ胴体が通らない目開き寸法のものであるから、捕獲部40が上昇すると捕獲対象動物Aの脚は付け根部分まで捕獲部40の目に落ち込むこととなる。これにより捕獲対象動物Aは、図4(c)に示すように、中吊状態もしくは脚がわずかに接地した半中吊状態となる。このように中吊状態もしくは半中吊状態となった捕獲対象動物Aは自力で脱出することができず、これにより、捕獲対象動物Aは捕獲される。以上が動物捕獲用罠80の動作である。
【0018】
尚、上部支持体28の位置を高位置とすれば、イノシシ、鹿など脚の長短に関わらずに捕獲対象動物Aを捕獲することができる。また、上部支持体28の位置を適度な低位置とすれば、脚の長い鹿等を逃亡可能としながら脚の短いイノシシ等を選択的に捕獲することができる。
【0019】
尚、縦フレーム部20における捕獲部支持体42の可動域には、縦フレーム部20の上下方向に沿って、図5に示すようなストッパ部材70を複数連続して設けることが好ましい。ここで、ストッパ部材70の動作を説明する。ストッパ部材70は、例えば上側が広い略台形形状もしくは三角形形状を呈しており、下端側がフレーム体22に弾性的に固定されている。そして、ストッパ部材70は、下方からの捕獲部支持体42の移動に対しては、この固定部分を軸に縦フレーム部20の内部方向に回動してストッパ部材70’の状態となり、捕獲部支持体42の上方への移動を許容する。そして、捕獲部支持体42が上方に抜けると、固定部分の復元力によりストッパ部材70’からストッパ部材70の状態へ復帰する。ただし、捕獲部支持体42が上方から下方へ移動しようとしてもストッパ部材70は回動せず、ストッパ部材70は捕獲部支持体42の下方への移動を規制する。
【0020】
ここで仮に、半中吊状態となった捕獲対象動物Aが飛び上がるなどした場合、捕獲部40への負荷が一瞬軽くなる。負荷が軽くなれば、その分だけ弾性部材30が捕獲部支持体42及び捕獲部40を上昇させる。ストッパ部材70は捕獲部支持体42の上昇を許容し下降を規制するから、負荷が軽くなったときには捕獲部支持体42及び捕獲部40は上昇する。しかしながら、ストッパ部材70の存在により、負荷が元に戻っても捕獲部支持体42及び捕獲部40は下降しない。従って、捕獲部40の位置は上昇したままとなり捕獲対象動物Aは完全な中吊状態となる。これにより、捕獲対象動物Aの動物捕獲用罠80からの脱出はより困難となる。
【0021】
次に、図6の模式断面図を用いて保持手段50と検知手段60の一例を説明する。尚、本例で説明する保持手段50と検知手段60とは一例であり、この構成に限定されるものではない。
【0022】
保持手段50及び検知手段60は、4本の保持棒52、検知板62、及び前述の第1保持ピン孔44a、第2保持ピン孔44b、とで主に構成されている。ここで、図6(a)は捕獲部支持体42が待機位置にセットされた状態の模式断面図である。保持棒52は、外パイプ体54と、この外パイプ体54内に収められた軸体56、及びバネ体58とで主に構成される。軸体56の長手方向の寸法は、外パイプ体54の長手方向の寸法よりも所定の寸法だけ長く形成され、その分だけ外パイプ体54の両端に形成された軸孔54a、54bから突出する。また、外パイプ体54の内側と軸体56の外側の所定の位置にはバネ止58a、58bが設けられ、このバネ止58a、58b間にバネ体58が配置される。そして、図6(b)に示すように、保持棒52の両端が開放されている場合には、バネ体58の弾性力により軸体56の一部が検知板62側の軸孔54bから突出する。
【0023】
動物捕獲用罠80を待機位置にセットする場合、図6(a)に示すように、捕獲部支持体42の第1保持ピン孔44aとフレーム体22の第2保持ピン孔44bとが一直線上に並ぶように捕獲部支持体42を位置させる。次に、軸孔54bから突出した軸体56の一部を押し込んで、捕獲部支持体42側の軸孔54aから突出させる。この状態で、突出した軸体56を第1保持ピン孔44a及び第2保持ピン孔44bに挿入するとともに、反対側の軸孔54bから軸体56が突出しないよう検知板62を当接して保持する。このとき、バネ体58は圧縮され、その復元力は軸体56を検知板62側の軸孔54bから突出させるよう働く。同様にして、4つの保持棒52を四隅の捕獲部支持体42と検知板62との間にセットする。これにより、保持棒52は、図1(b)に示すようにフレーム部の底面の対角線上に配置される。このとき、検知板62は4方向から保持棒52による復元力を受け、図7(a)に示すように、地表面から浮いた状態で保持される。また、第1保持ピン孔44a及び第2保持ピン孔44bには軸体56が挿入されているため、たとえ上部支持体28が上昇しても捕獲部支持体42は上昇することはない。
【0024】
そして、捕獲対象動物Aが検知板62を押下すると、図6(b)に示すように、検知板62が落下し、同時に全ての保持棒52が外れる。このとき、保持棒52の検知板62側の規制はなくなるから、バネ体58の復元力により捕獲部支持体42側の軸体56が引っ込み、検知板62側の軸孔54bから突出する。捕獲部支持体42側の軸体56が引っ込むことで、第1保持ピン孔44a及び第2保持ピン孔44bから軸体56が抜け、捕獲部支持体42の移動規制が解除される。これにより、捕獲部支持体42及び捕獲部40は弾性部材30の復元力により上昇する。以上が、本例の保持手段50及び検知手段60の動作である。
【0025】
尚、検知板62の下方には凸部62aを設け、さらに、この凸部62aが滑らかに嵌るガイド64を設けることが好ましい。この凸部62a及びガイド64を設けることで検知板62が傾斜することなくほぼ垂直に落下する。これにより、保持棒52の解除がほぼ同時に起こり、4つの捕獲部支持体42がほぼ同時に上昇する。
【0026】
以上のように、本発明に係る動物捕獲用罠80は、地表面に近い位置に保持された捕獲部40を上昇させることで、捕獲対象動物Aの捕獲を行う。従って、側面、天井部、が開放されており、また、捕獲対象動物Aはどの方向からでも捕獲部40上に侵入することができる。このため、捕獲対象動物Aはあまり警戒心を抱かずに捕獲部40上に侵入する。これにより、従来の箱型罠に比較して捕獲対象動物Aの捕獲率を向上させることができる。
【0027】
尚、上記の動物捕獲用罠80は一例であるから、各部の構成、保持手段50及び検知手段60の構成及び動作等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0028】
12 上側横フレーム
14 下側横フレーム
20 縦フレーム部
30 弾性部材
40 捕獲部
50 保持手段
60 検知手段
70 ストッパ部材
80 動物捕獲用罠
A 捕獲対象動物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の縦フレーム部と、
当該縦フレーム部間に設置される横フレームと、
前記縦フレーム部に設置される弾性部材と、
当該弾性部材により上下動するとともに、捕獲対象動物の脚が通り且つ胴体が通らない目開き寸法の網状もしくは格子状の捕獲部と、
当該捕獲部を地表面に近い待機位置に保持する保持手段と、
捕獲対象動物が捕獲部上にいることを検知して前記保持手段を解除する検知手段と、を有し、
前記保持手段が解除され捕獲部が上昇し捕獲対象動物の脚が捕獲部に落ち込むことにより捕獲対象動物を捕獲することを特徴とする動物捕獲用罠。
【請求項2】
捕獲部の上昇を許容するとともに下降を規制するストッパ部材を縦フレーム部の上下方向に複数連続して設けたことを特徴とする請求項1記載の動物捕獲用罠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−250718(P2011−250718A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125438(P2010−125438)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(510152493)
【Fターム(参考)】