説明

動物検知システム

【課題】動物がおよそある範囲に侵入したときに動物のいる方位を機器の負担等とならずに検出可能にした動物検知システムを提供する。
【解決手段】動物検知システムは、動物に取り付けるための発信器1が発信する電波を受信するための無指向性アンテナ21及び指向性アンテナ22を有し、無指向性アンテナ21が発信器1からの電波を受信していないときに指向性アンテナ22を非作動状態とする一方、無指向性アンテナ21が電波を受信したときに指向性アンテナ22を作動状態に切り替え、指向性アンテナ22の受信情報に基づいて指向性アンテナ22に対する発信器1(動物)の方位を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め動物に取り付けられた発信器の電波を受信して動物を検知する動物検知システムに係り、特に、検知機能を適正化した動物検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
動物検知システムは、予め野生動物に取り付けられた発信器が発信する電波を受信するためのアンテナと、このアンテナを通じて発信器からの電波を受信するための受信制御手段とを有し、アンテナを通じて発信器の電波を受信し、受信した電波に基づいて動物の検知を行うシステムである。このような動物検知システムの一例として特許文献1には、動物の接近を外部に報知する報知手段を更に備え、受信制御手段が、アンテナを通じて発信器の電波を受信したときに報知手段を介して外部に音や光等で動物の接近を報知するシステムが開示されている。加えて、このシステムの適用例として、野生動物による農作物等の被害を防止するために、動物の接近が報知された際に集落の住民で連携して野生動物を捜索し、これを追い払う等の動物への対処を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−333911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、同文献のものは、アンテナに無指向性アンテナを用いているが、この無指向性アンテナでは、野生動物までのおおよその距離がわかっても、野生動物のいる方角まではわからない。このため、360°方向に睨みをきかせなければならないという問題がある。特に、動物の検知結果に応じて動物への対処を行う場合には、無指向性アンテナの電波受信可能範囲が全方位なので、動物の捜索範囲が広大となって動物への対処に多大な労力を要するという問題がある。
【0005】
これに対して、指向性アンテナを採用し、常時これを作動させて野生動物のいる方位を検出することも考えられるが、指向性アンテナを常時作動させたのでは、全方位を検知するために回転する指向性アンテナの軸受の寿命が短命となり、システムの信頼性が著しく低減してしまう。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、動物がおよそある範囲に侵入したときに動物のいる方位を機器の負担等とならずに検出可能にした動物検知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち、本発明に係る動物検知システムは、動物に取り付けるための発信器が発信する電波を受信するための無指向性アンテナ及び指向性アンテナと、これらのアンテナを通して発信器からの電波を受信するための受信制御手段とを備え、前記受信制御手段は、前記無指向性アンテナが前記発信器からの電波を受信していないときに前記指向性アンテナを非作動状態とする一方、前記無指向性アンテナが前記電波を受信したときに前記指向性アンテナを作動状態に切り替え、前記指向性アンテナの受信情報に基づいて前記指向性アンテナに対する発信器の方位を検出することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、無指向性アンテナの受信可能な範囲に動物が侵入したときに指向性アンテナが作動状態となり、この指向性アンテナによって動物のいる方位を検出するので、動物がいる範囲が従来の全方位から一方向へ限定され、動物への対処に要する労力を低減させることができる。しかも、電波の受信可能な範囲に動物が侵入していないときは指向性アンテナが非作動状態となる一方、電波の受信可能な範囲に動物が侵入したときに指向性アンテナが作動状態となるので、指向性アンテナの寿命を向上させることができ、システムの信頼性を向上させることが可能となる。
【0010】
動物がいる範囲をおおよその地点に限定して動物への対処に要する労力を著しく低減させるためには、前記受信制御手段は、前記指向性アンテナが受信する電波の受信強度に基づいて前記指向性アンテナから発信器までの距離を検出することが好ましい。
【0011】
アンテナから動物までの距離をより正確に検出するためには、前記受信制御手段は、方位と電波の伝搬特性とを関連付けた環境情報を保有又は取得し、前記指向性アンテナが受信する方位に対応する電波の伝搬特性を考慮して前記距離を検出することが望ましい。
【0012】
アンテナ周辺の電波の伝搬特性を考慮した適切な検出可能距離を設定するためには、前記受信制御手段は、方位と電波の伝搬特性とを関連付けた環境情報を保有又は取得し、前記指向性アンテナが受信する方位に応じた電波の伝搬特性に基づき前記指向性アンテナの感度を変更することが有効である。
【0013】
システムの信頼性を向上させる具体的な構成としては、前記指向性アンテナが回転タイプのものであり、前記受信制御手段は、前記無指向性アンテナが前記発信器からの電波を検出したことをもって当該指向性アンテナの回転動作及び受信処理を開始する構成が挙げられる。
【0014】
システムの容易な設置を可能とするためには、前記指向性アンテナは、前記無指向性アンテナの軸心を中心に回転作動することが望ましい。
【0015】
動物を個別に識別して検出するためには、前記発信器は、予め設定された識別情報を含む電波を発信し、前記受信制御手段は、受信した電波から前記識別情報を取り出すものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上説明した構成であるから、動物がいる範囲が従来の全方位から一方向に限定され、動物への対処に要する労力を低減させることが可能となる。しかも、動物が接近したときに指向性アンテナを作動状態にし、平常時は非作動状態にするので、指向性アンテナの寿命を延ばしてシステムの信頼正を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る動物検知システムを模式的に示す構成図。
【図2】同動物検知システムの受信制御手段を示す機能ブロック図。
【図3】同動物検知システムのアンテナの構成を示す正面図及び平面図。
【図4】識別情報に関する説明図。
【図5】方位に応じて変化する電波の伝搬特性に関する説明図。
【図6】同動物検知システムの動作を示す図。
【図7】同動物検知システムの受信制御手段で実行される動物検知処理ルーチンを示すフローチャート。
【図8】本発明の他の実施形態に係る動物検知システムの受信制御手段を示す機能ブロック図。
【図9】図8に示す動物検知システムの動作を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る動物検知システムを、図面を参照して説明する。
【0019】
動物検知システムは、図1に示すように、サル等の野生動物に取り付けるための発信器1が発信する電波を受信するためのアンテナ2と、アンテナ2を通じて発信器1からの電波を受信するための受信制御手段3とを有しており、アンテナ2を通じて発信器1の電波を受信し、受信した電波に基づいて動物の所在を検出するシステムである。本実施形態では、動物の接近を外部に報知するマイクやディスプレイ等を用いた報知手段4を更に備え、動物の検出結果に基づいて報知手段4を介して音や光、地図画像等で動物の所在に関する情報を報知する動物接近報知システムを構成している。
【0020】
発信器1は、野生動物の行動域調査等に使用されるテレメトリ発信器であり、発信器1毎に予め設定された識別情報を含む所定周波数の電波を発信するものである。識別情報は、図4に示すように、サルや熊等の動物の種別を区別するためや個体を識別するための番号であるデータである。
【0021】
図1のアンテナ2は、図3に示すように、無指向性アンテナ21と指向性アンテナ22とを有する。無指向性アンテナは、図3(a)に示すように、鉛直方向に延びて配置され、水平方向のいずれの方位から電波が飛来してもこれを受信するアンテナである。一方、指向性アンテナ22は、図3(b)に示すように、無指向性アンテナ21の軸心Cn回りに回転可能に設けられ、図2に示す回転駆動部22aによって回転動作するように構成されており、アンテナが向いている方位から飛来する電波のみを受信するアンテナである。
【0022】
図1の受信制御手段3は、アンテナを通じて発信器が発信する電波を受信し、受信した電波に基づいて動物の位置を検出して動物の接近及びその位置を報知するものであり、具体的には、図2に示すように、識別情報記憶部30と、無指向性アンテナ受信処理部31と、指向性アンテナ受信処理部32と、指向性アンテナ作動制御部33と、強度情報取得部34と、角度情報取得部35と、環境情報記憶部36と、距離算出部37と、位置特定部38と、報知制御部39とを含んで構成されている。これら各部30〜39は、CPU、ROM等のメモリ、各種インターフェイス等を備えたマイクロコンピュータ等の情報処理装置においてCPUが予め記憶されている図7に示す動物検知処理ルーチン等を実行することによりソフトウェア及びハードウェアが協働して実現されるものである。
【0023】
図2に示す識別情報記憶部30は、検知対象となる発信器1に設定される識別情報を予め記憶するものである。識別情報は、図4に示すように、搬送波にのるディジタルデータであり、このデータのうちの所定nバイトがサルや熊等の動物の種別を区別するための動物種別を表すデータに設定され、他のmバイトが個体を識別するための識別コードを表すデータに設定されている(n、mは自然数)。動物種別は、動物の種別を示すデータであり、本実施形態では図4(b)に示すようにサルを「ID0x01」で表している。識別コードは、識別用に用いられるデータであり、本実施形態では図4(c)に示すようにサルの群れのうち1つの群れ(ここでは群れ1という)を「ID0x11」で表し、サルの群れのうち他の1つの群れ(ここでは群れ2という)を「ID0x12」で表している。ここで、群れ単位で識別コードを割り当てているのは、サルが群れ単位で集団行動するため、群れのうちの少なくとも一匹に発信器1を取り付ければ足り、識別コードの有効活用を図ることができるからである。
【0024】
図2に示すように、無指向性アンテナ受信処理部31及び指向性アンテナ受信処理部32は、それぞれ無指向性アンテナ21及び指向性アンテナ22を通じて受ける電波の受信処理を行う。受信処理の一例として、識別情報記憶部30の識別情報に基づいて受信した電波が検知対象とされている発信器1からの電波であるか否かを判定する処理などが挙げられる。
【0025】
指向性アンテナ作動制御部33は、図2に示すように、上記の無指向性アンテナ受信処理部31が検知対象である電波を受信した場合に指向性アンテナ22を作動状態とし、検知対象である電波を受信していない場合に指向性アンテナ22を非作動状態とするものである。具体的には、指向性アンテナ22を作動状態とする場合には、回転駆動部22aを駆動させて指向性アンテナ22を図3(b)の矢印で示す回転動作をさせるとともに指向性アンテナ受信処理部32に受信処理を開始させる。一方、指向性アンテナ22を非作動状態とする場合には、回転駆動部22aの駆動を停止して指向性アンテナ22の回転動作を停止させるとともに指向性アンテナ受信処理部32に受信処理を停止させる。
【0026】
強度情報取得部34は、指向性アンテナ受信処理部32の受信結果に基づいて指向性アンテナ22が受信する電波の受信強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)に関する情報を取得する。
【0027】
角度情報取得部35は、指向性アンテナ受信処理部32の受信処理結果に基づいて指向性アンテナ22が電波を受信したときに向いていた方位を示す角度情報を取得する。
【0028】
環境情報記憶部36は、指向性アンテナ22を中心とした方位と電波の伝搬特性とを関連付けた環境情報を予め記憶(保有)している。電波の伝搬特性は、森や山などの障害物等のアンテナ周囲の環境の影響を受けて変化するものであり、方位に応じて電波の伝搬特性が異なることによって、図5(a)に示すように、アンテナ2が受信した電波の受信強度(RSSI)が同じであっても方位によってアンテナ2から動物(発信器1)までの実際の距離L1、L2が異なることがある。本実施形態では、図5(b)に示すように、発信器1をアンテナ2から一定の距離L1離した状態で一定の送信出力レベルの電波を送信した場合に、指向性アンテナ22が受信する電波の受信強度(RSSI)を方位に対応させて記憶したものである。具体例には、図5(c)に示すように、方位が西の場合には受信強度が1となり、方位が東の場合には受信強度が2を表すデータを記憶している。勿論、この環境情報を通信手段を介して外部から取得するように構成してもよい。
【0029】
距離算出部37は、強度情報取得部34が取得した受信強度に関する情報に基づいてアンテナ2から発信器1(動物)までの距離を算出する。この距離の算出の際に、角度情報取得部35が取得した角度情報と環境情報記憶部36の環境情報とに基づいて補正後の受信強度を用いて算出される距離が正確な距離となるように受信強度を補正している。
【0030】
具体例には、図5(b)及び図5(c)に誇張して模式的に示すように、方位が西で受信強度が1であるときの正確な距離がL1であり、方位が東で受信強度が2であるときの正確な距離がL1である場合に、西の方位の受信強度を基準として受信強度が1のときに距離がL1となるように受信強度と距離との相関関係式を構成すると、方位が東で受信強度が2である場合に距離が2×L1と算出されてしまい、実際の距離L1の二倍になってしまう誤差が生ずる。この場合、方位が東で受信強度が2であるときは、基準に合わせるべく受信強度を2×0.5=1に補正し、この補正後の受信強度1に基づいて距離が500mであると算出して、正確な距離になるように補正処理を施している。
【0031】
図2の示す位置特定部38は、角度情報取得部35で取得される角度情報と距離算出部37で算出される距離に基づいて動物がいる位置(地点)を特定する。さらに、位置特定部38は、特定した位置を累積的に記憶しており、累積的に記憶した位置情報に基づいて動物の移動方向も特定している。
【0032】
報知制御部39は、位置特定部38によって特定された動物がいる位置に関する情報及びその移動方向を報知手段4を介して外部に報知する。
【0033】
上記構成の動物検知システムの動作を図6及び図7を用いて説明する。
【0034】
無指向性アンテナ21は常に受信可能状態であり、図6(a)に示すように、無指向性アンテナ21の電波受信可能範囲に検知対象の動物(発信器1)が侵入していない場合は、指向性アンテナ22が指向性アンテナ作動制御部33によって非作動状態にされる(図7の処理S1:NO、処理S2参照)。
【0035】
一方、図6(b)に示すように、無指向性アンテナ21の電波受信可能範囲に動物(発信器1)が侵入すると、この発信器1から発信する電波を無指向性アンテナ21が受信し、図2に示す無指向性アンテナ受信処理部31が受信した電波から識別情報を取り出して、識別情報記憶部30に検知対象として記憶される識別情報と一致することを以て検知対象の電波を受信したと判定する(図7の処理S1参照)。すると、図2に示す指向性アンテナ作動制御部33が指向性アンテナ22を作動状態とし、指向性アンテナ22が図6(b)に示す回転動作を行う(図7の処理S3参照)。
【0036】
指向性アンテナ22が回転動作によって動物(発信器1)がいる方向を向くと、発信器1からの電波を指向性アンテナ22が受信し、図2に示すように、指向性アンテナ受信処理部32が識別情報を取り出して、上記と同様の受信処理を行って検知対象の電波を受信したと判定する(図7の処理S4参照)。次に、図2に示す強度情報取得部34及び角度情報取得部35がそれぞれ強度情報及び角度情報を取得し(図7の処理S5参照)、図2に示す距離算出部37が必要に応じて強度情報を補正して、強度情報に基づき指向性アンテナ22から動物までの距離を算出する(図7の処理S6〜S8参照)。続いて、図2に示す位置特定部38が方位と動物までの距離に基づいて動物の位置(地点)を特定し(図7の処理9参照)、図2の報知制御部39が位置特定部38によって特定された動物がいる位置に関する情報を報知手段4を介して図1に示すように外部に報知する(図7の処理S10参照)。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る動物検知システムは、動物に取り付けるための発信器1が発信する電波を受信するための無指向性アンテナ21及び指向性アンテナ22と、これらのアンテナ21、22を通して発信器1からの電波を受信するための受信制御手段3とを備え、受信制御手段3は、無指向性アンテナ21が発信器1からの電波を受信していないときに指向性アンテナ22を非作動状態とする一方、無指向性アンテナ21が電波を受信したときに指向性アンテナ22を作動状態に切り替え、指向性アンテナ22の受信情報に基づいて指向性アンテナ22に対する発信器1(動物)の方位を検出している。
【0038】
このように、無指向性アンテナ21の受信可能な範囲に発信器1が取り付けられた動物が侵入したときに指向性アンテナ22が作動状態となり、この指向性アンテナ22によって動物(発信器1)のいる方位を検出するので、動物がいる範囲が従来の全方位から一方向へ限定され、動物への対処に要する労力を低減させることが可能となる。しかも、電波の受信可能な範囲に動物が侵入していないときは指向性アンテナ22が非作動状態となる一方、電波の受信可能な範囲に動物が侵入したときに指向性アンテナ22が作動状態となるので、指向性アンテナ22の寿命を向上させることが可能となり、システムの信頼性を向上させることが可能となる。
【0039】
特に、本実施形態では、受信制御手段3が、指向性アンテナ22が受信する電波の受信強度に基づいて指向性アンテナ22から発信器1(動物)までの距離を検出するので、動物がいる範囲がおおよその地点に限定され、動物への対処に要する労力を著しく低減させることが可能となる。
【0040】
さらに、本実施形態では、受信制御手段3が、方位と電波の伝搬特性とを関連付けた環境情報を保有し、指向性アンテナ22が受信する方位に対応する電波の伝搬特性を考慮して指向性アンテナ22から発信器1(動物)までの距離を検出するので、アンテナから発信器(動物)までの距離をより正確に検出することが可能となる。
【0041】
さらにまた、本実施形態は、指向性アンテナ22が回転タイプのものであり、受信制御手段3は、無指向性アンテナ21が発信器1からの電波を検出したことをもって指向性アンテナ22の回転動作及び受信処理を開始するので、指向性アンテナ22の寿命を向上させてシステムの信頼性を向上させることを可能としている。
【0042】
加えて、本実施形態では、指向性アンテナ22が無指向性アンテナ21の軸心Cnを中心に回転作動するものであるので、無指向性アンテナ21と指向性アンテナ22の基点がほぼ一致し、両アンテナ21、22の基点を合わせる作業や機構等を省略可能となり、システムの容易な設置が可能となる。
【0043】
その他、本実施形態では、発信器1は、予め設定された識別情報を含む電波を発信し、受信制御手段3は、受信した電波から識別情報を取り出すものであるので、発信器1が取り付けられた動物がある一定範囲に複数おり、各々の発信器1の周波数が同じ周波数であっても、発信器1すなわち動物を個別に識別して検出することが可能となり、特に群れ等の集団で行動する動物を検知する場合に有用となる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0045】
例えば、図9(a)に示すように、アンテナ感度が或る感度(ここでは通常という)に設定している場合において、西向きに対する電波の検出可能距離がL1となり、東向きに対する電波の検出可能距離がL1より長いL2となり、指向性アンテナ22周囲の電波の伝搬特性の影響によって方位に応じて電波の検出可能距離が異なる場合がある。この場合、図8に示すように、環境情報記憶部36に記憶される環境情報と指向性アンテナ作動制御部33により取得される指向性アンテナ22の向きとに基づいて指向性アンテナ22の感度を変更するアンテナ感度変更部131を設けて受信制御手段103を構成するとよい。このアンテナ感度変更部131は、図9(b)に示すように、電波の伝搬特性が悪い西に指向性アンテナ22が向いている場合にアンテナの検知レベルを下げてアンテナの感度を通常より高く変更する一方、電波の伝搬特性が良い東に指向性アンテナ22が向いている場合にアンテナの検知レベルを上げてアンテナ感度を下げて通常に戻して、いずれの方位においても電波の検出可能距離を一定の距離L2に設定している。このように構成すれば、指向性アンテナ22が受信する方位に応じた電波の伝搬特性に基づき指向性アンテナ22の感度を変更するので、例えば全ての方位で検出可能距離を一定のL1にする等、アンテナ2周辺の電波の伝搬特性を考慮して適切な検出可能距離を設定することが可能となる。
【0046】
さらに、上記の実施形態では、受信対象である所定周波数の電波が検出対象の識別コードと一致する識別コードを有するか否かで動物(発信器1)の識別を行っているが、識別情報を用いずに検出対象毎に異なる周波数を割り当て、常に周波数を切り替えながら時分割で電波を受信して動物(発信器1)の識別を行うものであってもよい。
【0047】
さらにまた、上記の実施形態では、発信器1を取り付けたサルを検出するシステムであるが、発信器1を取り付ける動物であれば、サルに限るものではなく、鳥類、魚類、ほ乳類等の種々の動物を検知するシステムに適用可能である。
【0048】
加えて、本実施形態では、指向性アンテナが受信する方位に対応する電波の伝搬特性に基づいて受信強度を補正し、補正後の受信強度を受信強度及び距離の相関関係式に代入して距離を推定しているが、受信強度を補正することなく相関関係式を補正して距離を推測してもよい。勿論、受信強度から距離を算出するための相関関係式はテーブルで表されるデータでもよい。
【0049】
また、上記の実施形態では、指向性アンテナ22が回転するタイプであるが、複数の指向性アンテナを放射状に配置して発信器1の方位を検出するものでもよい。図2に示す各機能部は、所定プログラムをプロセッサで実行することにより実現しているが、各機能部を専用回路で構成してもよい。
【0050】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…発信器
2…アンテナ
21…無指向性アンテナ
22…指向性アンテナ
3…受信制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物に取り付けるための発信器が発信する電波を受信するための無指向性アンテナ及び指向性アンテナと、これらのアンテナを通して発信器からの電波を受信するための受信制御手段とを備え、
前記受信制御手段は、前記無指向性アンテナが前記発信器からの電波を受信していないときに前記指向性アンテナを非作動状態とする一方、前記無指向性アンテナが前記電波を受信したときに前記指向性アンテナを作動状態に切り替え、前記指向性アンテナの受信情報に基づいて前記指向性アンテナに対する前記発信器の方位を検出することを特徴とする動物検知システム。
【請求項2】
前記受信制御手段は、前記指向性アンテナが受信する電波の受信強度に基づいて前記指向性アンテナから前記発信器までの距離を検出する請求項1に記載の動物検知システム。
【請求項3】
前記受信制御手段は、方位と電波の伝搬特性とを関連付けた環境情報を保有又は取得し、前記指向性アンテナが受信する方位に対応する電波の伝搬特性を考慮して前記距離を検出する請求項2に記載の動物検知システム。
【請求項4】
前記受信制御手段は、方位と電波の伝搬特性とを関連付けた環境情報を保有又は取得し、前記指向性アンテナが受信する方位に応じた電波の伝搬特性に基づき前記指向性アンテナの感度を補正する請求項1〜3のいずれかに記載の動物検知システム。
【請求項5】
前記指向性アンテナが回転タイプのものであり、前記受信制御手段は、前記無指向性アンテナが前記発信器からの電波を検出したことをもって当該指向性アンテナの回転動作及び受信処理を開始する請求項1〜4のいずれかに記載の動物検知システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−182667(P2011−182667A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49066(P2010−49066)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】