説明

動物検知システム

【課題】電波の受信強度からアンテナと発信器間の距離を算出するにあたり、天候等の影響により電波の伝搬特性が変化する場合であっても検出結果に含まれる誤差を低減又は無くして検知精度を向上させた新たな動物検知システムを提供する。
【解決手段】動物検知システムは、動物に取り付けるための発信器1が発信する電波を受信するためのアンテナ2と、アンテナ2から所定距離L離れた位置に配置される基準発信器5とを有し、予め同定された受信強度とアンテナ2から発信器1までの距離との相関情報を用いて受信電波の受信強度に基づきアンテナ2から発信器1までの距離を算出するにあたり、基準発信器5が発信する電波の受信強度に基づき算出される距離が所定距離Lとなるように相関情報を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め動物に取り付けられた発信器の電波を受信して動物を検知する動物検知システムに係り、特に、検知機能を適正化した動物検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
動物検知システムは、予め野生動物に取り付けられた発信器が発信する電波を受信するためのアンテナと、このアンテナを通じて発信器からの電波を受信するための受信制御手段とを有し、アンテナを通じて発信器の電波を受信し、受信した電波に基づいて動物の検知を行うシステムである。このような動物検知システムの一例として特許文献1には、動物の接近を外部に報知する報知手段を更に備え、受信制御手段が、アンテナを通じて発信器の電波を受信したときに報知手段を介して外部に音や光等で動物の接近を報知するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−333911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の動物検知システムは、電波の受信可能範囲に発信器が取り付けられた動物が侵入したか否かのみを検出するだけなので、動物の位置を十分に特定することができない問題がある。かかる問題に対応して動物がいる範囲を正確に特定するためには、アンテナを通じて受信した電波の受信強度がアンテナから発信器までの距離に応じて変化することを利用して、受信強度と距離との相関関係に関する相関情報を事前の計測により同定して記憶しておき、この相関情報と受信した電波の受信強度とに基づいてアンテナと発信器間の距離を算出することが一つの有効な手段として考えられる。
【0005】
しかしながら、天候等の影響によって電波の伝搬特性は変化するので、同じ距離であっても天候等の違いによって受信する電波の受信強度が変化することがある。この場合、予め同定された相関関係と電波受信時の実際の相関関係とが天候の変化によって一致しなくなり、算出により推定される距離に誤差が生じ、動物の検知精度が低減してしまう問題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、電波の受信強度からアンテナと発信器間の距離を算出するにあたり、天候等の影響により電波の伝搬特性が変化する場合であっても検出結果に含まれる誤差を低減又は無くして検知精度を向上させた新たな動物検知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち、本発明に係る動物検知システムは、動物に取り付けるための発信器が発信する電波を受信するためのアンテナと、このアンテナが受信する発信器からの電波に基づいて前記アンテナから発信器までの距離を算出するための距離算出部とを具備し、前記距離算出部は、予め同定された受信強度と前記アンテナから発信器までの距離との相関情報を用いて受信した電波の受信強度に基づき前記アンテナから発信器までの距離を算出するように構成されており、前記アンテナから所定距離離れた位置に配置される基準発信器と、この基準発信器が発信する電波を前記アンテナを通じて受信し、受信した電波の受信強度に基づき前記距離算出部で算出される距離が前記所定距離となるように前記相関情報を調整するキャリブレーション部とが設けられていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、アンテナを通じて実測した基準発信器からの電波の受信強度に基づき算出されるアンテナから発信器までの距離が既知の所定距離となるように、距離算出時に用いる受信強度と距離との相関情報を調整するので、予め同定されている相関関係を天候の変化等により変動する実際の相関関係に合わせ、算出される距離の誤差を低減又は無くして検知精度を向上させることができる。
【0010】
アンテナと発信器間の距離の算出精度を向上させるためには、前記キャリブレーション部は、前記アンテナが前記発信器からの電波を受信したときに前記相関情報の調整を実行し、前記距離算出部は、前記キャリブレーション部により調整された前記相関情報を用いて前記アンテナから前記発信器までの距離を算出することが好ましい。
【0011】
相関情報の調整を簡易化するためには、前記発信器及び前記基準発信器は、ほぼ同一の出力強度で電波を発信することが効果的である。
【0012】
相関情報の調整効率を向上させるためには、前記発信器及び前記基準発信器が発信する電波の周波数は互いに異なるように設定されていることが望ましい。
【0013】
天候だけでなく地形等の環境条件の影響により変化する電波の伝搬特性を考慮してアンテナと発信器間の距離の算出精度をより一層向上させるためには、前記アンテナに対する前記発信器の方位を検出する方位検出手段を更に備え、前記基準発信器は、前記アンテナに対する方位が異なる位置に複数配置されており、前記キャリブレーション部は、前記方位検出手段が検出した発信器の方位に対応する前記基準発信器が発信する電波を用いて前記相関情報を調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上説明したように、アンテナと発信器間の距離を算出する際に用いる受信強度と距離との相関情報が実測した基準発信器の電波を用いて調整されるので、予め同定されている相関関係が天候の変化等によって変動する実際の相関関係に合い、算出される距離の誤差が低減され又は無くなり、検知精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る動物検知システムを模式的に示す構成図。
【図2】同動物検知システムの受信制御手段を示す機能ブロック図。
【図3】識別情報に関する説明図。
【図4】アンテナ−発信器間の距離と受信強度との相関関係を示す説明図。
【図5】天候によって変動する相関関係に関する説明図。
【図6】同動物検知システムの受信制御手段で実行される動物検知処理ルーチンを示すフローチャート。
【図7】本発明の他の実施形態に係る動物検知システムを模式的に示す構成図。
【図8】図7に示す動物検知システムの受信制御手段を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る動物検知システムを、図面を参照して説明する。
【0017】
動物検知システムは、図1に示すように、サル等の野生動物に取り付けるための発信器1が発信する電波を受信するためのアンテナ2と、アンテナ2を通じて発信器1からの電波を受信するための受信制御手段3とを有しており、アンテナ2を通じて発信器1の電波を受信し、受信した電波に基づいて動物の所在を検出するシステムである。本実施形態では、動物の接近を外部に報知するマイクやディスプレイ等を用いた報知手段4を更に備え、動物の検出結果に基づいて報知手段4を介して音や光、地図画像等で動物の所在に関する情報を報知する動物接近報知システムを構成している。
【0018】
発信器1は、野生動物の行動域調査等に使用されるテレメトリ発信器であり、発信器1毎に予め設定された識別情報を含む所定周波数P[Hz]の電波を発信するものである。識別情報は、図3に示すように、サルや熊等の動物の種別を区別するためや個体を識別するための番号であるデータである。
【0019】
図1に示すアンテナ2は、無指向性アンテナ21を用いたもので、無指向性アンテナ21は、鉛直方向に延びて配置され、水平方向のいずれの方位から電波が飛来してもこれを受信するアンテナである。
【0020】
図1に示す受信制御手段3は、アンテナ2を通じて発信器1が発信する電波を受信し、受信した電波に基づいて動物の位置を検出して動物の接近及びその位置を報知するものであり、具体的には、図2に示すように、識別情報記憶部30と、アンテナ受信処理部31と、強度情報取得部32と、相関情報記憶部33と、距離算出部34と、報知制御部35とを含んで構成されている。これら各部30〜35は、CPU、ROM等のメモリ、各種インターフェイス等を備えたマイクロコンピュータ等の情報処理装置においてCPUが予め記憶されている図6に示す動物検知処理ルーチン等を実行することによりソフトウェア及びハードウェアが協働して実現されるものである。
【0021】
図2に示す識別情報記憶部30は、検知対象となる発信器1に設定される識別情報を予め記憶するものである。識別情報は、図3に示すように、搬送波にのるディジタルデータであり、このデータのうちの所定nバイトがサルや熊等の動物の種別を区別するための動物種別を表すデータに設定され、他のmバイトが個体を識別するための識別コードを表すデータに設定されている(n、mは自然数)。動物種別は、動物の種別を示すデータであり、本実施形態では図3(b)に示すようにサルを「ID0x01」で表している。識別コードは、識別用に用いられるデータであり、本実施形態では図3(c)に示すようにサルの群れのうち1つの群れ(ここでは群れ1という)を「ID0x11」で表し、サルの群れのうち他の1つの群れ(ここでは群れ2という)を「ID0x12」で表している。ここで、群れ単位で識別コードを割り当てているのは、サルが群れ単位で集団行動するため、群れのうちの少なくとも一匹に発信器1を取り付ければ足り、識別コードの有効活用を図ることができるからである。
【0022】
図2に示すように、アンテナ受信処理部31は、アンテナ2を通じて受ける電波の受信処理を行う。受信処理の一例として、受信した電波が検知対象とされている発信器1からの電波であるか否かを識別情報記憶部30の識別情報に基づいて判定する処理などが挙げられる。
【0023】
強度情報取得部32は、アンテナ受信処理部31の受信結果に基づいてアンテナ2が受信する電波の受信強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)に関する情報を取得する。
【0024】
相関情報記憶部33は、アンテナ2から発信器1までの距離と電波の受信強度との相関関係に関する相関情報を予め記憶(保有)している。具体的には、相関情報は、電波の受信強度と距離との相関関係式に関する情報であり、例えば、図4(a)に示すように、受信強度が1であるときにアンテナから発信器1(動物)までの距離がLとなり、図4(b)に示すように、受信強度が0.8であるときにアンテナから発信器1(動物)までの距離がLとなるように、受信強度と距離とを関連づける相関関係式を表すものである。この相関関係式は、予め測定した受信強度と距離を用いて同定されている。勿論、本実施形態では、相関情報を相関関係式に関する情報としてシステム上表現しているが、図4(c)に示すように、受信強度と距離とを関連付けたテーブル等の情報として取り扱ってもよい。
【0025】
図2に示す距離算出部34は、強度情報取得部32が取得した受信強度に関する情報と相関情報記憶部33が記憶する相関情報とに基づいてアンテナ2から発信器1(動物)までの距離を算出する。具体的には、電波の受信強度を相関情報が表す相関関係式に代入することにより距離を算出している。勿論、相関情報が図4(c)に示すような受信強度と距離とを関連づけたテーブルである場合には、このテーブルから該当する受信強度を有するレコードを検索し、検索したレコードに対応する距離の値を取得して距離を算出するように構成してもよい。
【0026】
報知制御部39は、距離算出部34によって算出された距離に基づいてアンテナ2を基準とした動物の位置に関する情報(動物とアンテナ間の距離を含む情報)を報知手段4を介して外部に報知する。
【0027】
ところが、天候の変化などによって電波の伝搬特性が変化するので、アンテナから動物(発信器1)までの距離が変わらないにもかかわらず、発信器1からの電波の受信強度が天候によって変化してしまう場合がある。具体例には、図5(a)及び図5(b)に示すように、アンテナから発信器1までの距離がLで一定であっても天候が良い場合に電波の受信強度が1となり、逆に天候が悪い場合に受信強度が0.8になってしまうことが挙げられる。この場合、天候が良いときに計測した受信強度等に基づいて相関情報を同定すると天候が悪い場合に距離が長く算出されてしまい、逆に天候が悪いときに計測した受信強度等に基づいて相関情報を同定すると天候が良い場合に距離が短く算出されてしまい、算出する距離に誤差に誤差が含まれ、動物の検知精度が低減してしまう問題がある。
【0028】
そこで、本実施形態では上記の構成に対してさらに下記の構成を加えている。すなわち、図1及び図2に示すように、基準発信器5と、キャリブレーション部37とを備えている。
【0029】
基準発信器5は、上記発信器1とほぼ同一仕様のテレメトリ発信器をアンテナ2から所定距離L離れた位置に固定して配置したもので、発信器1の電波とは異なることを示す識別情報を含む電波を発信するものである。この基準発信器5が発信する電波の周波数は、上記発信器1が発信する電波とのコリジョンを避けるために発信器1の電波の周波数P[Hz]とは異なる周波数Q[Hz]に設定されている。また、基準発信器5は、発信器1の電波の出力強度とほぼ同一の出力強度で電波を発信するように設定して、発信器1及び基準発信器5が発信する電波の受信強度がほぼ同じ変化特性を示すようにしている。また、この基準発信器5の設置に伴って基準発信器5からの電波を適切に受信処理するように、図2に示すアンテナ受信処理部31を、受信する電波の周波数をP[Hz]とQ[Hz]とに交互に変更することにより発信器1からの電波と基準発信器5からの電波とを時分割で切り替えて受信する処理を実行可能に構成している。
【0030】
図2に示すキャリブレーション部は、基準発信器5が発信する電波をアンテナ2を通じて受信し、受信した電波の受信強度に基づき距離算出部34で算出される距離が既知の所定距離Lとなるように相関情報記憶部33に記憶される相関情報を調整するものである。具体的には、基準発信器5が発信した電波の受信強度を上記相関関係式に代入して導き出される距離がLとなるように相関関係式を補正し、補正した相関関係式を相関情報記憶部33に記憶する。本実施携帯では、この調整を、発信器1が発信した電波を受信したときに実行するように構成しているが、常時又は所定間隔毎に間欠的に実行するように構成してもよい。勿論、相関情報がテーブルデータである場合には、受信強度と距離との関連づけデータを補正するように構成してもよい。
【0031】
上記構成の動物検知システムの動作を図1、図2及び図6を用いて説明する。
【0032】
無指向性アンテナ21の電波受信可能範囲に動物(発信器1)が侵入すると、この発信器1から発信する電波をアンテナ2が受信し、図2に示すアンテナ受信処理部31が受信電波から識別情報を取り出して、識別情報記憶部30に検知対象として記憶される識別情報と一致することを以て検知対象の電波を受信したと判定する(図6の処理S1参照)。すると、図2に示すアンテナ受信処理部31は、受信する電波の周波数をP[Hz]からQ[Hz]に変更して、基準発信器5からの電波を受信可能状態にする(図6の処理S2参照)。アンテナ2が基準発信器5からの電波を受信すると、アンテナ受信処理部31は、上述のように発信器1からの電波を受信した際と同様の受信処理を行って検知対象の電波を受信したと判定する(図6の処理S3参照)。次に、図2に示す強度情報取得部32が基準発信器5の電波の強度情報を取得し(図6の処理S4参照)、キャリブレーション部37が、基準発信器5に係る強度情報から算出される距離が既知の所定距離Lとなるように相関情報記憶部33に記憶される相関情報を補正して、その調整を行う(図6の処理S5参照)。
【0033】
続いて、図2に示す強度情報取得部34が発信器1からの電波の強度情報を取得し(図6の処理S6参照)、図2に示す距離算出部34が強度情報と相関情報とに基づきアンテナ2から発信器1(動物)までの距離を算出し(図6の処理S7参照)、図2の報知制御部39が距離算出部34で算出された距離に基づき動物がいる位置に関する情報を報知手段4を介して図1に示すように外部に報知する(図6の処理S8参照)。そして、図2に示すアンテナ受信処理部31は、受信する電波の周波数をQ[Hz]からP[Hz]に変更して、発信器1からの電波を受信可能状態にし(図6の処理S9参照)、図6に示す処理S1の実行に戻る。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る動物検知システムは、動物に取り付けるための発信器1が発信する電波を受信するためのアンテナ2と、このアンテナ2が受信する発信器1からの電波に基づいてアンテナ2から発信器1までの距離を算出するための距離算出部34とを具備し、距離算出部34は、予め同定された受信強度とアンテナ2から発信器1までの距離との相関情報を用いて受信した電波の受信強度に基づきアンテナ2から発信器1までの距離を算出するように構成されており、アンテナ2から所定距離L離れた位置に配置される基準発信器5と、この基準発信器5が発信する電波をアンテナ2を通じて受信し、受信した電波の受信強度に基づき距離算出部34で算出される距離が所定距離Lとなるように相関情報を調整するキャリブレーション部37とが設けられている。
【0035】
このように、アンテナ2を通じて実測した基準発信器5からの電波の受信強度に基づき算出されるアンテナ2から発信器1までの距離が既知の所定距離Lとなるように、距離算出時に用いる受信強度と距離との相関情報を調整するので、予め同定されている相関関係を天候の変化等により変動する実際の相関関係に合わせ、算出される距離の誤差を低減又は無くして検知精度を向上させることができる。
【0036】
特に、本実施形態では、キャリブレーション部37は、アンテナ2が発信器1からの電波を受信したときに相関情報の調整を実行し、距離算出部34が、キャリブレーション部37により調整された相関情報を用いてアンテナ2から発信器1までの距離を算出するので、発信器1からの電波を受信した際にリアルタイムで相関情報を調整するので、アンテナ2と発信器1間の距離の算出精度を向上させることが可能となる。
【0037】
さらに、本実施形態では、発信器1及び基準発信器5は、ほぼ同一の出力強度で電波を発信するので、発信器1及び基準発信器5がそれぞれ発信する電波の受信強度の変化がほぼ同じようになり、基準発信器5が発信する電波の受信強度と距離との相関関係を発信器1が発信する電波の受信強度と距離との相関関係にほぼそのまま利用できるので、相関情報の調整を簡易化することが可能となる。
【0038】
加えて、電波の使用状態を加味せずに一方的に電波を発信するテレメトリ等の発信器を用いている場合は、同一の周波数を用いると電波のコリジョンが生じる確率が高くなり、コリジョン発生に伴い電波の送受信をやり直さなければならないので、相関情報の調整処理の効率が低減するが、本実施形態では、発信器1及び基準発信器5が発信する電波の周波数は互いに異なるように設定されているので、電波のコリジョンが発生せず、相関情報の調整処理の効率を向上させることが可能となる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0040】
例えば、電波の伝搬特性は、天候だけでなく森や山などの障害物等のアンテナ周辺の環境によっても影響を受けて変化するので、方位に応じて電波の伝搬特性が異なり、距離の算出精度が低減する場合がある。この場合、図7及び図8に示すように、基準発信器105を互いに周波数の異なる電波を発信する複数の基準発信器151、152から構成し、基準発信器151、152をアンテナ102に対する方位が異なるように配置する。また、アンテナ102を複数の無指向性アンテナ121、122、123から構成するとともに、各アンテナ121〜123で受信する電波の受信強度の違いから周知の三点測量法を用いてアンテナ102に対する発信器1の方位を特定する方位特定部138を受信制御手段103に設け、三つのアンテナ121〜123と方位特定部138とで方位検出手段6を構成する。そして、距離算出部34で算出された距離及び方位特定部138で特定された方位に基づいて動物がいる地点を位置特定部139により特定し、これを報知するようにしている。さらに、キャリブレーション部137を、複数の基準発信器151、152のうち、方位検出手段6を構成する方位特定部138が特定した方位に対応する基準発信器、すなわち方位に応じて最も近い位置にある基準発信器の電波を用いて相関情報の調整を実行するように構成している。このように構成すれば、アンテナ102に対する発信器1の方位に対応する基準発信器151の電波を用いて相関情報を調整するので、天候だけでなく地形などの影響により変化する電波の伝搬特性を考慮して、より正確に距離を算出することが可能となる。
【0041】
なお、上記実施形態では、方位と対応する基準発信器とを関連づけた情報を用いて複数の基準発信器151、152のうちいずれの基準発信器の電波を用いるかを決定しているが、これに限定されるものではなく、例えば発信器1を基準とした角度差が小さい方の基準発信器の電波を用いるように構成してもよい。上記実施形態では、アンテナ102に対する発信器1の方位を検出する方位検出手段6として、複数の無指向性アンテナ121、122、123を設けて、各々が受ける電波の受信強度差に基づき方位を検出しているが、方位を検出することができればこれに限定されるものではない。例えば、指向性アンテナを回転させて受信時のアンテナの向きによって方位を検出するように構成することが挙げられる。
【0042】
さらに、上記の実施形態では、受信対象である所定周波数の電波が検出対象の識別コードと一致する識別コードを有するか否かで動物(発信器1)の識別を行っているが、検出対象毎に異なる周波数を割り当て、常に周波数を切り替えながら時分割で電波を受信して動物(発信器1)の識別を行うものであってもよい。
【0043】
さらにまた、上記の実施形態では、発信器1を取り付けたサルを検出するシステムであるが、発信器1を取り付ける動物であれば、サルに限るものではなく、鳥類、魚類、ほ乳類等の種々の動物を検知するシステムに適用可能である。
【0044】
また、図2に示す各機能部は、所定プログラムをプロセッサで実行することにより実現しているが、各機能部を専用回路で構成してもよい。
【0045】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…発信器
2、102…アンテナ
5、105…基準発信器
34…距離算出部
37…キャリブレーション部
6…方位検出手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物に取り付けるための発信器が発信する電波を受信するためのアンテナと、このアンテナが受信する発信器からの電波に基づいて前記アンテナから発信器までの距離を算出するための距離算出部とを具備し、
前記距離算出部は、予め同定された受信強度と前記アンテナから発信器までの距離との相関情報を用いて受信した電波の受信強度に基づき前記アンテナから発信器までの距離を算出するように構成されており、
前記アンテナから所定距離離れた位置に配置される基準発信器と、
この基準発信器が発信する電波を前記アンテナを通じて受信し、受信した電波の受信強度に基づき前記距離算出部で算出される距離が前記所定距離となるように前記相関情報を調整するキャリブレーション部とが設けられていることを特徴とする動物検知システム。
【請求項2】
前記キャリブレーション部は、前記アンテナが前記発信器からの電波を受信したときに前記相関情報の調整を実行し、
前記距離算出部は、前記キャリブレーション部により調整された前記相関情報を用いて前記アンテナから前記発信器までの距離を算出する請求項1に記載の動物検知システム。
【請求項3】
前記発信器及び前記基準発信器は、ほぼ同一の出力強度で電波を発信する請求項1又は2に記載の動物検知システム。
【請求項4】
前記発信器及び前記基準発信器が発信する電波の周波数は互いに異なるように設定されている請求項1〜3のいずれかに記載の動物検知システム。
【請求項5】
前記アンテナに対する前記発信器の方位を検出する方位検出手段を更に備え、
前記基準発信器は、前記アンテナに対する方位が異なる位置に複数配置されており、
前記キャリブレーション部は、前記方位検出手段が検出した発信器の方位に対応する前記基準発信器が発信する電波を用いて前記相関情報を調整する請求項1〜4のいずれかに記載の動物検知システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−182668(P2011−182668A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49067(P2010−49067)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】