動電型放音体
【課題】通電による熱を外部に放熱する放熱効率を改善し、信頼性を向上させた車両搭載用等の動電型放音体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の動電型放音体40は、底部及び側壁部を有する形状のアウターヨーク1と、アウターヨーク1に囲まれて配置されたマグネット2とインナーヨーク3とを含む磁気回路部と、磁気回路部に形成された磁気ギャップ4内に配設されたコイル5と、コイル5が固定された振動板7と、アウターヨーク1の一部を内包するように配置された筐体9と、振動板7の外周縁と筐体9とを弾性的に連結する弾性部材8と、を備え、筐体9は内底部に開放穴9eを有し、アウターヨーク1は、一部が筐体9の開放穴9eから露出するように、筐体9に一体的に接続されたものである。
【解決手段】本発明の動電型放音体40は、底部及び側壁部を有する形状のアウターヨーク1と、アウターヨーク1に囲まれて配置されたマグネット2とインナーヨーク3とを含む磁気回路部と、磁気回路部に形成された磁気ギャップ4内に配設されたコイル5と、コイル5が固定された振動板7と、アウターヨーク1の一部を内包するように配置された筐体9と、振動板7の外周縁と筐体9とを弾性的に連結する弾性部材8と、を備え、筐体9は内底部に開放穴9eを有し、アウターヨーク1は、一部が筐体9の開放穴9eから露出するように、筐体9に一体的に接続されたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車、電気自動車、電動バイクなど静粛性の高い電動移動体において、車両周辺の歩行者等に自車両の接近もしくはその存在を報知するための報知音発生装置等に関し、主として電動移動体の報知音発生用等の放音体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電動自転車、電動カート等の開発実用化に続き、電動バイクや電動自動車等、各種移動体としての乗り物が急速に電動化され始めている。具体的には、内燃機関を動力源とする自動車に代わって、ガソリンエンジンと電動モータとを動力源とするハイブリッド自動車や、家庭電源もしくはガソリンスタンドや電力供給スタンドなどに設置された充電器により充電された車両搭載電池によって作動する電動モータを動力源とする電気自動車、あるいは、水素ガスなどを燃料とする燃料電池で発電しながら走行する燃料電池自動車などが順次開発されている。電動バイク、ハイブリッド自動車及び、電気自動車などは、既に実用化され国内市場でも急速に普及し始めている。
【0003】
従来の内燃機関を動力源とするガソリン車やディーゼル車やバイクなどは、動力源自身が放出するエンジン音や排気音、更には走行中のロードノイズ等が発生するため、街中を歩行する歩行者や自転車に乗っている人などは自動車のエンジン音や排気音などにより、車両の接近を認識することができる。しかし、ハイブリッド自動車の場合、低速走行時には、エンジンによる走行ではなく電動モータによる走行モードが主体となるため、エンジン音や排気音等が発生せず、また、電気自動車や燃料電池自動車等に至っては全運転領域において電動モータによって走行することから、非常に静粛性の高い電動移動体となっている。しかしながら、このような静粛性の高い電動移動体の周辺に存在する歩行者や自転車運転者等は、音の発生が少なく静粛性の高い電動モータにより走行するハイブリッド自動車や電気自動車や燃料電池自動車などの電動移動体の接近を音によって認識することができないことから、静粛性の高い電動移動体と歩行者等との接触事故などが発生する原因となり得る。
【0004】
このため、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車、電気自動車などが備える利点であるべき静粛性が時に弊害となる上記のような問題を解決すべく、従来の自動車などに備えられ運転者の意思で警報を発するクラクション以外の、運転者の意思とは関係なく動作する自車両存在報知のためのシステムが種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、自車両の走行状態を検出して出力する走行状態検出手段と、検出された走行状態に基づいて車外に音を発生する警告音発生手段と、前記警告音発生手段の駆動を制御する制御手段とを備え、自車両周辺の歩行者に対して自動車の接近を知らせるために、警告音、エンジン音などを放音することのできる電気自動車が開示されており、警告音発生器としてクラクションやスピーカを利用することが開示されている。
【0006】
上述の特許文献1に開示されたクラクションやスピーカなどの放音体の代わりに、コーンスピーカなどの一般的なスピーカではなく、例えば、携帯電話や薄型液晶テレビなどに利用される動電型エキサイタを利用することが容易に想定される。特許文献2には、音声を発生するムービングコイル型の電気音響変換器の駆動原理を応用し、液晶などの表示パネルや筐体を振動させて音響出力を得る平面レシーバ用の動電型エキサイタが開示されている。
【0007】
特許文献2の動電型エキサイタは、ヨーク立ち上がり部を有するヨーク、磁石、インナ
ーヨークに相当するトッププレートにより構成された磁気回路部と、磁気回路部を収納するフレームと、ヨーク立上部の内周部及びトッププレートの外周部により形成された磁気ギャップに配設されたボイスコイルが固定された振動板と、振動板の前面側全面を被覆する第1のプロテクターと、フレームの側面部とヨークの背面部とを被覆する第2のプロテクターとを備える。振動板はフレームの前面側に固定され、磁気回路部は、磁気回路部に固定されたサスペンションを介して第2のプロテクターの内周部とフレーム端部とに固定される。磁気回路部は、第1のプロテクター及び第2のプロテクターにより囲まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−27810号公報(0005段、0006段、図1)
【特許文献2】特開2008−48079号公報(0026段、0041段〜0051段、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、自車両周辺の歩行者に対して自動車の接近を知らせるために、警告音、エンジン音などを放音することのできる電気自動車が開示されているものの、スピーカに関する具体的な構造に関する開示は全くなされていない。
【0010】
特許文献2では、ボイスコイルへの通電により自己発熱した熱量は、ヨークのヨーク立ち上がり部からヨークの背面側に伝熱され、また、インナーヨークから磁石を経てヨークの背面側に伝熱される。特許文献2の動電型エキサイタは、ヨークが第2のプロテクターに覆われているため、ヨークに伝熱された熱量は、更に金属材料のサスペンションを介して、金属材料の第2のプロテクターへ伝熱した後に大気中へ放熱される。特許文献2の動電型エキサイタは、ヨークからサスペンションを通じて第2のプロテクターへの伝熱経路が長く、かつ、ヨークが第2のプロテクターに覆われているため、第2のプロテクター内部に熱がこもり易くなっている。すなわち、特許文献2の動電型エキサイタは、大量の熱が発生する場合に放熱性が悪いという問題がある。特に第2のプロテクターをナイロンなどの伝熱効率の低い樹脂材料にて成形した場合は、通電により自己発熱した熱量の影響が顕著に現れるため構成部品の温度上昇が大きくなることが危惧される。ヨークの温度上昇を所定のレベルに抑制することができない場合は、発熱に起因するコイルの断線を引き起こす可能性がある。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、通電による熱を外部に放熱する放熱効率を改善し、信頼性を向上させた車両搭載用等の動電型放音体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
底部及び側壁部を有する形状のアウターヨークと、アウターヨークに囲まれて配置されたマグネットとインナーヨークとを含む磁気回路部と、磁気回路部に形成された磁気ギャップ内に配設されたコイルと、コイルが固定された振動板と、アウターヨークの一部を内包するように配置された筐体と、振動板の外周縁と筐体とを弾性的に連結する弾性部材と、を備える。筐体は内底部に開放穴を有し、アウターヨークは、一部が筐体の開放穴から露出するように、筐体に一体的に接続されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る動電型放音体によれば、アウターヨークの一部を筐体から外部に露出させたので、通電による熱を外部に放熱する放熱効率を改善し、信頼性が向上した動電型放音
体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図である。
【図2】図1の動電型放音体の外観を示す外観図である。
【図3】図1のA部拡大図である。
【図4】本発明の実施の形態2による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図である。
【図5】図4のB部拡大図である。
【図6】本発明の実施の形態3による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図である。
【図7】図6のC部拡大図である。
【図8】本発明の実施の形態4による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図である。
【図9】図8のD部拡大図である。
【図10】本発明の実施の形態4による他の動電型放音体の構成を示す模式的な断面図である。
【図11】図11のE部拡大図である。
【図12】本発明の実施の形態5による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図であり、図2は動電型放音体の外観を示す外観図である。図2の上側は側面図であり、図2の下側はフロントカバー10を下側から見た図である。図中同一記号は同一部分を示す。動電型放音体40は、底部及び側壁部を有する形状に形成され磁性材料からなるアウターヨーク1と、アウターヨーク1の内底部に同心円状で片端磁極側が接着されたマグネット2と、マグネット2の他端磁極側に接着され磁性材料からなる同心円状のインナーヨーク3と、振動板7と、ボビン6に巻回されたコイル5と、アウターヨーク1を内包するための筐体9と、振動板7の外周縁と筐体9とを弾性的に連結し、振動板7の外周端を径方向に弾性支持する第一弾性部材8と、フロントカバー10と、アウターヨーク1の開放側端部において振動板7を軸方向に弾性支持する第二弾性部材11と、を備える。アウターヨーク1、マグネット2、及びインナーヨーク3と、によって磁気回路が構成されている。磁気回路を構成する部分を磁気回路部と呼ぶことにする。アウターヨーク1の側壁部は円筒状になっており、アウターヨーク1の底部は円板状になっている。なお、動電型放音体40の断面図において、紙面奥側に本来見えるアウターヨーク1の内壁面、ボビン6の内面、フロントカバー10の内面は、図が複雑にならないように省略した。軸方向とは、同心円状のインナーヨーク3及びマグネット2の中心軸方向であり、図1の上下方向である。
【0016】
アウターヨーク1の内壁面とインナーヨーク3の外周面との間に存在する磁束密度の高い磁気ギャップ4内に、コイル5が配設される。コイル5は、ボビンに電線を巻回して作成される。前記磁気回路中の磁束密度が高い磁気ギャップ4内に、ボビン6に巻回されたコイル5が挿入されている。なお、ボビン9に巻回されたコイル5への電力供給は、図示しない外部電源に接続されたコネクタやハーネスを経由しておこなわれている。
【0017】
振動板7は、ボビン6が接着もしくは一体形成される。第一弾性部材8は、その内周側が振動板7の外周端に装着されている。筐体9は開放穴9eを有し、アウターヨーク1は、アウターヨーク1の一部である露出部1eが露出状態のままシール部材12を介して複数本の固定ネジ13で筐体9に締結される。フロントカバー10は、振動板7を保護するためのものである。フロントカバー10の外周側には、嵌合わせ部10bが設けられる。第一弾性部材8の内周面は振動板7の外周縁全周に一体的に接合され、第一弾性部材8の外周部は筐体9の外周部とフロントカバー10の嵌合わせ部10bによって挟み込み支持されている。このように筐体9とフロントカバー10とにより挟み込まれた第一弾性部材8は、振動板7の外周端を径方向に弾性支持している。また、第二弾性部材11は、アウターヨーク1の開放側端部において振動板7を軸方向に弾性支持している。筐体9とアウターヨーク1の側壁外面および振動板7により音響空間22が形成されている。
【0018】
フロントカバー10を筐体9の外周部に嵌め込むことで、振動板7の外周に接合された第一弾性部材8を押圧保持する。また、フロントカバー10は、振動板7の前面を覆うことで外部からの異物の飛散等による振動板7の変形や破損を防止している。フロントカバー10の底面部10cに、開口部10aが設けられる。開口部10aは、振動板7からの放出音を遮らない程度の開口面積を有している。なお、図2では、開口部10aをスリット状で記載しているが、開口部10aの形状は、スリット状に限らず他の形状であっても構わない。フロントカバー10の嵌合わせ部10bの形状や嵌合わせ方法は、他の形状や他の嵌合わせ方であっても構わない。
【0019】
電動移動体の接近等を報知するための報知音発生装置は、電動移動体の車外に音を出すためのものであり、車内には聞こえないようにする必要があるので、報知音発生装置の動電型放音体40はエンジンルーム内、フロントダンパ裏、リヤバンパ裏、フロントグリル、タイヤハウスなどの装着場所が考えられる。これらの場所はいずれも小石や木屑、雨水等が飛散してくる可能性の高い場所であり、フロントカバー10により外部からの異物の飛散等から振動板7を保護している。
【0020】
図3は図1のA部を拡大表示した拡大図である。筐体9の内底部に開放穴9eが設けられており、アウターヨーク1の軸方向閉塞側端面の露出部1eが開放穴9eから大気側(図中上方向側)に露出している。従って、コイル5への通電により自己発熱した熱量の一部はアウターヨーク1の外周壁、及び、インナーヨーク3からマグネット2を経てアウターヨーク1の露出部1eへ伝熱され、アウターヨークの露出部1eから直接大気中へ放熱可能となる。外気による冷却効果によって、磁気回路部、コイル5の各部の温度上昇を抑制することができる。アウターヨーク1の温度上昇を所定のレベルに抑制することができ、磁気回路部、コイル5の各部の温度上昇を所定のレベルに抑制することができるので、発熱に起因するコイル5の抵抗増加や断線を防止することができる。
【0021】
アウターヨーク1は、アウターヨーク1の一部である露出部1eが露出状態のまま、開放穴9eの周辺部に配置されたシール部材12を介して複数本の固定ネジ13で筐体9に締結される。シール部材12を用いる理由を説明する。アウターヨーク1の軸方向閉塞側端面の露出部1eが筐体9の開放穴9eから露出する構造にした場合、当該放音体が屋外で使用される環境化では、筐体9の開放穴9eからアウターヨーク1の外周壁を伝って雨水等が浸入するおそれがある。筐体9内に水分が浸入した場合には、筐体9の内部は高温多湿状態となり、金属部分の腐食、樹脂成形部分の過水分解や経年劣化、第一弾性部材8や第二弾性部材11のゴム系材料の経年劣化、更には、第二弾性部材11の接着剥がれ等を誘発するおそれがある。また、磁気ギャップ4内のコイル5やボビン6にまで水が付着した場合は、ショートによるコイル5の断線やレアショートを誘発するおそれがある。しかし、筐体9へ挿入されるアウターヨーク1の肩部にはシール部材12が嵌め込まれており、軸方向閉塞側端面の露出部1eが筐体9から露出する状態に組み込まれた後、複数本の固定ネジ13にて筐体9とアウターヨーク1とが締結される。その結果、シール部材12は適正な変形量が保たれた状態で保持されるため、アウターヨーク1と筐体9との合わせ面からの水進入による不具合を防止できる。したがって、耐水性に富む放音体を提供することができる。
【0022】
実施の形態1の動電型放音体40は、アウターヨーク1を筐体9に接続する際に、アウターヨーク1の軸方向端面の一部を大気中に露出させ、コイル通電による発熱エネルギを大気中へ放熱し、自然空冷若しくは車両走行風等によって冷却する構造とした。これにより、自己発熱による温度上昇を大幅に低減することができるため、高い信頼性が得られる報知音発生装置の放音体を提供することができる。
【0023】
以上のように実施の形態1の動電型放音体40は、底部及び側壁部を有する形状のアウターヨーク1と、アウターヨーク1に囲まれて配置されたマグネット2とインナーヨーク3とを含む磁気回路部と、磁気回路部に形成された磁気ギャップ4内に配設されたコイル5と、コイル5が固定された振動板7と、アウターヨーク1の一部を内包するように配置された筐体9と、振動板7の外周縁と筐体9とを弾性的に連結する弾性部材8と、を備え、筐体9は内底部に開放穴9eを有し、アウターヨーク1は、一部が筐体9の開放穴9eから露出するように、筐体9に一体的に接続されたので、アウターヨーク1の露出部1eから直接大気中へ放熱可能となり、外気による冷却効果によって磁気回路部、コイル5の各部の温度上昇を抑制することができ、通電による熱を外部に放熱する放熱効率を改善し、信頼性を向上させることができる。
【0024】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図であり、図5は図4のB部拡大図である。なお、図中同一記号は同一部分を示している。実施の形態2の動電型放音体40は、前述した実施の形態1に対して筐体9にアウターヨーク1をインサートモールド成形法により形成(適宜、インサートモールド成形とも呼ぶ)している点が大きく異なる。実施の形態1の場合、冷却効率改善のためアウターヨーク1の軸方向閉塞面側の少なくとも一部を筐体9から露出させるため、筐体9とアウターヨーク1とを別部品にした。さらに、筐体9とアウターヨーク1の合わせ面からの水の浸入を防止するため、シール部材12を追加している。従って、防水性を高めるためにシール部材12を新な部品として追加することから、部品点数増加に伴う部品コスト及び組み立て工数増加、耐水性試験などの新たな出荷試験の追加が必要になるため、報知音発生装置用の放音体がコストアップする。
【0025】
以下、本発明の実施の形態2について説明する。アウターヨーク1の軸方向閉塞端側の露出部1eは、筐体9の開放穴9eから大気側(図中上方向側)に露出している。アウターヨーク1の外周壁の少なくとも一部に、凹部1gが設けられている。筐体9の開放穴9e側には、インサートモールド成形の際に凹部1gに挿入するように凸部9fが形成される。ここで、筐体9は金属部品をインサート成形可能な樹脂材料が用いられており、アウターヨーク1を成形金型内に組み込んだ後に熔融樹脂を成形金型内に流し込む樹脂成形法の一方法であるインサートモールド成形法によって、磁性金属からなるアウターヨーク1と樹脂からなる筐体9とを一体的に形成している。
【0026】
前記のとおり、インサートモールド成形により筐体9とアウターヨーク1とを一体的に形成することにより、アウターヨーク1の露出部1eを容易に露出させることができる。また、一体的に形成することにより、アウターヨーク1と筐体9との合わせ面からの水の浸入を防止できる。従って、インサートモールド成形することによってシールリング等のシール部材12を使用することなく防水機能を得ることが可能となり、生産コストを大幅に低減できる。このように、報知音発生装置用として防水機能を有した信頼性の高い放音体を安価に供給することができる。
【0027】
実施の形態3.
図6は、本発明の実施の形態3による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図であり、図7は図6のC部拡大図である。なお、図中同一記号は同一部分を示している。実施の形態3の動電型放音体40は、実施の形態1及び2の動電型放音体40とは、アウターヨーク1を筐体9の開放穴9eを有する内底部に挿入するだけで一体的に保持する構造とした点で異なる。このようにすることで、筐体9はアウターヨーク1を自動的に内包し且つ一体的に保持することができる。これにより、量産時の組み付け工数が大幅に低減され量産性に富む安価な放音体を提供することができる。
【0028】
筐体9の内底部には、内底部から軸方向に伸びる弾性変形可能なヨーク保持部9bが複数個、均等に設けられる。ヨーク保持部9bは動電型放音体40を組み立てる際にアウターヨーク1の挿入ガイドとしての役目を有し、また、アウターヨーク1が筐体9の所定位置に挿入されるまでの間では、ヨーク保持部9bはアウターヨーク1の外径より外側に押されて弾性変形する。更にその後、アウターヨーク1が筐体9の所定の内包位置まで押し込まれた状態では、弾性変形していたヨーク保持部9bはアウターヨーク1の露出部1eが筐体9の開放穴9eに挿入された状態を保持するようにアウターヨーク1を支持する形で元の形状に戻る。実施の形態3の動電型放音体40は、上記のような所謂スナップフィット構造を有する。
【0029】
アウターヨーク1の外周壁面には、フランジ部1fが径方向へ突出して設けられる。筐体9の内底部には、爪部9aを有する鍵状のヨーク保持部9bが設けられる。アウターヨーク1のフランジ部1fと、筐体9との内底部における開放穴9eの周辺部との間には、シール部材12が配設される。筐体9へアウターヨーク1を内包組み付けする際の作業性を悪化させずに、アウターヨーク1と筐体9との合わせ面からの水進入による不具合を防止するため、筐体9の開放穴9eからアウターヨーク1の外周壁を伝って雨水等が浸入する経路にシール部材12を配設している。
【0030】
筐体9の開放穴9e部分の背面側にシール部材12を配置した状態でアウターヨーク1を筐体9内に挿入すると、アウターヨーク1の外周壁に径方向へ突出したフランジ部1fによってヨーク保持部9bは弾性変形内で径方向外側に押し開かれる。更に挿入を続けると、筐体9の開放穴9e部分の背面側に設けたシール部材12は、フランジ部1fによって押圧変形され始める。アウターヨーク1が筐体9内に完全に挿入された状態では、シール部材12が更に圧縮変形すると共に、筐体9に設けたヨーク保持部9bは弾性変形による復元力で元の状態に戻り、ヨーク保持部9bの先端に設けられた爪部9aはアウターヨーク1のフランジ部1fと噛合う。このようにヨーク保持部9bはフランジ部1fに係合する。
【0031】
よって、アウターヨーク1と筐体9との接続部分に配設したシール部材12によって、アウターヨーク1の軸方向閉塞側の露出部1eを筐体9から露出させても、シール部材12によって外部からの水の浸入を完全に防止することができる。
【0032】
実施の形態3の動電型放音体40は、上記のような所謂スナップフィット構造を有するので、容易に位置決め可能でしかも専用の固定ネジ13を使用せず組みつけられることから、実施の形態1よりも放音体の組み立て工程が大幅に簡略化され、生産性に富む安価な放音体が得られる。また、実施の形態3の動電型放音体40は、実施の形態2のインサート形成工程を含まないので、実施の形態2よりも放音体の組み立て工程が大幅に簡略化され、生産性に富む安価な放音体が得られる。
【0033】
以上のように、実施の形態3の動電型放音体40は、アウターヨーク1の一部を露出させる露出構造と、スナップフィット構造をともに備えたので、安価で生産性に富み、高い信頼性が得られる。また、実施の形態3の動電型放音体40は、シール部材12によって
外部からの水の浸入を完全に防止することができ、耐水性を備えることができる。
【0034】
実施の形態4.
実施の形態1乃至3ではアウターヨーク1の一部を筐体9から露出させた露出構造を備えた動電型放音体40について説明したが、筐体9に工夫を追加するころで、アウターヨーク1を筐体9から露出させない場合でも、アウターヨークからの放熱効率を改善し、信頼性が向上した動電型放音体を得ることができる。筐体9の工夫は、例えば、筐体9の内底部の肉厚を薄くしたり、熱伝導率の高い材質の筐体9にしたり、筐体9の内底部とアウターヨーク1のとの間に温度コンパウンドを挟むようにすること等である。
【0035】
図8は、本発明の実施の形態4による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図であり、図9は図8のD部拡大図である。なお、図中同一記号は同一部分を示している。実施の形態4の動電型放音体40は、筐体9において実施の形態1乃至3に示した開放穴9eは存在しない。筐体9の内底部には、内底部から軸方向に伸びる弾性変形可能なヨーク保持部9bが複数個、均等に設けられる。また、筐体9の内底部には、アウターヨーク1の回転方向位置ずれを防止するための突起部9cが設けられ、アウターヨーク1には突起部9cが係合する穴部1cが設けられる。アウターヨーク1の外周側に設けられたフランジ部1fは、実施の形態3とは異なる形状でもよく、例えば、筐体9の内底部を延伸させて設けられる。筐体9のヨーク保持部9bとアウターヨーク1のフランジ部1fを備えるので、実施の形態3と同様にアウターヨーク1を筐体9の所定位置に内包固定することが可能となる。
【0036】
ヨーク保持部9bの爪部9aがフランジ部1fに噛合うだけでは、アウターヨーク1の回転方向位置ズレ防止が不十分となる場合がある。そこで、アウターヨーク1と筐体9との合わせ面に少なくとも一組以上の凹凸部である突起部9c及び穴部1cを配設し、アウターヨーク1を筐体9に完全に挿入した状態で夫々が互いに噛合うようにすることで、アウターヨーク1と筐体9との相対的な回転位置ズレを阻止できる。
【0037】
筐体9にアウターヨーク1が挿入され、ヨーク保持部9bが弾性変形の範囲内で外側にした後、更に挿入するとアウターヨーク1の穴部1cに筐体9の内底部の突起部が嵌まり込む。従って、アウターヨーク1が筐体9に完全に挿入され、穴部1cと突起部9cとが噛合った状態ではアウターヨーク1が筐体9に対して回転方向の位置ずれを起こすことは無い。よって、外力または自身の振動等により筐体9内でアウターヨークが回転方向の位置ズレを起こしたり振動したりすることを防止でき、また、コイル5や図示しないハーネスの断線防止に効果があり信頼性の高い放音体を得ることができる。なお、その際、アウターヨーク1の挿入時に穴部1cと突起部9cが噛合位置で挿入できるよう図示しない挿入ガイドを設けると更に組み付け性が改善されることは特筆するまでもない。また、穴部1cは貫通穴として図示したが単なる窪み部であってもよく、筐体9の突起部9cがこれに噛合うことが可能な形状であれば同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0038】
実施の形態4の動電型放音体40は、上記のような所謂スナップフィット構造を有するので、容易に位置決め可能でしかも専用の固定ネジ13を使用せず組みつけられることから、実施の形態1よりも放音体の組み立て工程が大幅に簡略化され、生産性に富む安価な放音体が得られる。また、実施の形態4の動電型放音体40は、実施の形態2のインサート形成工程を含まないので、実施の形態1よりも放音体の組み立て工程が大幅に簡略化され、生産性に富む安価な放音体が得られる。
【0039】
以上のように、実施の形態4の動電型放音体40は、筐体9の内底部の肉厚を薄くしたり、熱伝導率の高い材質の筐体9にしたり、筐体9の内底部とアウターヨーク1のとの間に温度コンパウンドを挟むようにする等により、通電による熱を外部に放熱する放熱効率
を改善でき、スナップフィット構造を備えたので、安価で生産性に富み、高い信頼性が得られる。また、筐体9の底面に開放穴9eがないので、実施の形態1乃至3に比べて、防水性を高めることができる。
【0040】
筐体9の底面に開放穴9eがなく、防水性が高い動電型放音体40は、他の形状であっても構わない。図10は、本発明の実施の形態4による他の動電型放音体の構成を示す模式的な断面図であり、図11は図10のE部拡大図である。なお、図中同一記号は同一部分を示している。図10及び図11に示す動電型放音体40は、図8及び図9に示した動電型放音体40とは、スナップフィット構造の形状が異なる。
【0041】
アウターヨーク1の外周には、配設したV溝状の窪み部1dが設けられる。筐体9の内底部には、窪み部1dに沿う形状の爪部9dを有するヨーク保持部9bが設けられる。筐体9にアウターヨーク1を組み付ける際、アウターヨーク1の外周端により筐体9のヨーク保持部9bが弾性変形範囲内で押し広げられる。アウターヨーク1が所定位置まで挿入された状態では、ヨーク保持部9bの爪部9dがアウターヨーク1の外周に配設されたV溝状の窪み部1dに噛み合う。このようにヨーク保持部9bは窪み部1dに係合する。このため、容易にアウターヨーク1を筐体9に内包保持できる。アウターヨーク1が筐体9に完全に挿入された状態では、V溝状の窪み部1dに筐体9の爪部9dが完全に噛合うことで軸方向の位置決めがなされており、アウターヨーク1が筐体9から離脱することを防止している。
【0042】
図8及び図9に示した動電型放音体40と同様に、アウターヨーク1が筐体9に完全に挿入された状態では、アウターヨーク1の穴部1cと筐体9の突起部9cとが噛合った状態であり、アウターヨーク1が筐体9に対して回転方向の位置ずれを起こすことは無い。よって、外力または自身の振動等により筐体9内でアウターヨークが回転方向の位置ズレを起こしたり振動したりすることを防止できる。
【0043】
実施の形態5.
筐体9の底面に開放穴9eがなく、防水性が高い動電型放音体40は、実施の形態4とは異なる形状であっても構わない。図12は、本発明の実施の形態5による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図である。なお、図中同一記号は同一部分を示している。実施の形態5の動電型放音体40は、実施の形態4の動電型放音体40とは、スナップフィット構造の形状が異なる。
【0044】
実施の形態5の動電型放音体40は、第二弾性部材11が存在しない場合に、アウターヨーク1の開放側端部にヨーク保持部9bを嵌め合わすようにしたものである。筐体9の内底部には、内底部から軸方向に伸びる弾性変形可能なヨーク保持部9bが複数個、均等に設けられる。ヨーク保持部9bは、アウターヨーク1が筐体9の所定位置に挿入されるまでの間ではヨーク保持部9bはアウターヨーク1の外径より外側に押されて弾性変形する。更にその後、アウターヨーク1が筐体9の所定の内包位置まで押し込まれた状態では、弾性変形していたヨーク保持部9bはアウターヨーク1の開放側端面を支持する形で元の形状に戻る。このようにヨーク保持部9bは、アウターヨーク1の軸方向開放側端部1hに係合する。
【0045】
実施の形態5の動電型放音体40は、第一弾性部材8のみで振動板7を弾性保持するので、実施の形態4に比べて安価に製造できるメリットがある。第一弾性部材8は、その内周部が振動板7の外周縁の全周に一体的に接続され、その外周部がアウターヨーク1の側壁部の全周に接続される。
【0046】
また、第二弾性部材を排除したことは実施の形態4に比べて安価に製造できるだけでな
く、放音体の低周波領域の音を改善することも可能となる。ここで、実施の形態4での第一弾性部材8のバネ定数をk8とし、第二弾性部材11のバネ定数をk11とし、振動板7、ボビン6、コイル5の総質量をmとすると、振動板7の自励振動数fは概略的に式(1)で表される。
f=1/2π・√((k8+k11)/m) ・・・(1)
振動板の自励振動数fは第一弾性部材8のバネ定数k8と第二弾性部材11のバネ定数k11とを合成したバネ定数kにより決定される。実施の形態5では、第二弾性部材11が存在せず、バネ定数k11も存在しない。例えば、実施の形態4での第一弾性部材8のバネ定数k8と第二弾性部材11のバネ定数k11が同等である場合と、実施の形態5で、実施の形態4と同じ第一弾性部材8のバネ定数k8の場合には、実施の形態5は、実施の形態4に比べて、合成バネ定数kが1/2倍のバネ定数となり振動板7の自励振動数fは√2倍だけ低くなることを意味している。従って、実施の形態5は、実施の形態4に比べて、より低い低周波領域から放音体の所望の音を放出させることができる。
【0047】
なお、第一弾性部材8の内周部と振動板7とを固着する固着箇所は、外周縁全周に渡っている場合に限らず、均等に複数の固着箇所が配置される場合であっても構わない。ここで、固着箇所の均等に配置とは、振動板の中心に対して対象となる位置に固着箇所が配置されることである。振動板7の外周縁全周に一体的に接合された第一弾性部材8は、アウターヨーク1とフロントカバー10との間に装着されたので、振動板7の振動に影響を与えることなく、振動板7を弾性支持することができる。
【0048】
以上のように、実施の形態5の動電型放音体40は、筐体9の内底部の肉厚を薄くしたり、熱伝導率の高い材質の筐体9にしたり、筐体9の内底部とアウターヨーク1のとの間に温度コンパウンドを挟むようにする等により、通電による熱を外部に放熱する放熱効率を改善でき、スナップフィット構造を備えたので、安価で生産性に富み、高い信頼性が得られる。また、筐体9の底面に開放穴9eがないので、実施の形態1乃至3に比べて、防水性を高めることができる。
【0049】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…アウターヨーク、1d…窪み部、1f…フランジ部、1g…凹部、2…マグネット、3…インナーヨーク、4…磁気ギャップ、5…コイル、7…振動板、8…第一弾性部材、9…筐体、9b…ヨーク保持部、9e…開放穴、9f…凸部、10…フロントカバー、10a…開口部、10b…嵌合わせ部、12…シール部材、13…固定ネジ、40…動電型放音体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車、電気自動車、電動バイクなど静粛性の高い電動移動体において、車両周辺の歩行者等に自車両の接近もしくはその存在を報知するための報知音発生装置等に関し、主として電動移動体の報知音発生用等の放音体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電動自転車、電動カート等の開発実用化に続き、電動バイクや電動自動車等、各種移動体としての乗り物が急速に電動化され始めている。具体的には、内燃機関を動力源とする自動車に代わって、ガソリンエンジンと電動モータとを動力源とするハイブリッド自動車や、家庭電源もしくはガソリンスタンドや電力供給スタンドなどに設置された充電器により充電された車両搭載電池によって作動する電動モータを動力源とする電気自動車、あるいは、水素ガスなどを燃料とする燃料電池で発電しながら走行する燃料電池自動車などが順次開発されている。電動バイク、ハイブリッド自動車及び、電気自動車などは、既に実用化され国内市場でも急速に普及し始めている。
【0003】
従来の内燃機関を動力源とするガソリン車やディーゼル車やバイクなどは、動力源自身が放出するエンジン音や排気音、更には走行中のロードノイズ等が発生するため、街中を歩行する歩行者や自転車に乗っている人などは自動車のエンジン音や排気音などにより、車両の接近を認識することができる。しかし、ハイブリッド自動車の場合、低速走行時には、エンジンによる走行ではなく電動モータによる走行モードが主体となるため、エンジン音や排気音等が発生せず、また、電気自動車や燃料電池自動車等に至っては全運転領域において電動モータによって走行することから、非常に静粛性の高い電動移動体となっている。しかしながら、このような静粛性の高い電動移動体の周辺に存在する歩行者や自転車運転者等は、音の発生が少なく静粛性の高い電動モータにより走行するハイブリッド自動車や電気自動車や燃料電池自動車などの電動移動体の接近を音によって認識することができないことから、静粛性の高い電動移動体と歩行者等との接触事故などが発生する原因となり得る。
【0004】
このため、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車、電気自動車などが備える利点であるべき静粛性が時に弊害となる上記のような問題を解決すべく、従来の自動車などに備えられ運転者の意思で警報を発するクラクション以外の、運転者の意思とは関係なく動作する自車両存在報知のためのシステムが種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、自車両の走行状態を検出して出力する走行状態検出手段と、検出された走行状態に基づいて車外に音を発生する警告音発生手段と、前記警告音発生手段の駆動を制御する制御手段とを備え、自車両周辺の歩行者に対して自動車の接近を知らせるために、警告音、エンジン音などを放音することのできる電気自動車が開示されており、警告音発生器としてクラクションやスピーカを利用することが開示されている。
【0006】
上述の特許文献1に開示されたクラクションやスピーカなどの放音体の代わりに、コーンスピーカなどの一般的なスピーカではなく、例えば、携帯電話や薄型液晶テレビなどに利用される動電型エキサイタを利用することが容易に想定される。特許文献2には、音声を発生するムービングコイル型の電気音響変換器の駆動原理を応用し、液晶などの表示パネルや筐体を振動させて音響出力を得る平面レシーバ用の動電型エキサイタが開示されている。
【0007】
特許文献2の動電型エキサイタは、ヨーク立ち上がり部を有するヨーク、磁石、インナ
ーヨークに相当するトッププレートにより構成された磁気回路部と、磁気回路部を収納するフレームと、ヨーク立上部の内周部及びトッププレートの外周部により形成された磁気ギャップに配設されたボイスコイルが固定された振動板と、振動板の前面側全面を被覆する第1のプロテクターと、フレームの側面部とヨークの背面部とを被覆する第2のプロテクターとを備える。振動板はフレームの前面側に固定され、磁気回路部は、磁気回路部に固定されたサスペンションを介して第2のプロテクターの内周部とフレーム端部とに固定される。磁気回路部は、第1のプロテクター及び第2のプロテクターにより囲まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−27810号公報(0005段、0006段、図1)
【特許文献2】特開2008−48079号公報(0026段、0041段〜0051段、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、自車両周辺の歩行者に対して自動車の接近を知らせるために、警告音、エンジン音などを放音することのできる電気自動車が開示されているものの、スピーカに関する具体的な構造に関する開示は全くなされていない。
【0010】
特許文献2では、ボイスコイルへの通電により自己発熱した熱量は、ヨークのヨーク立ち上がり部からヨークの背面側に伝熱され、また、インナーヨークから磁石を経てヨークの背面側に伝熱される。特許文献2の動電型エキサイタは、ヨークが第2のプロテクターに覆われているため、ヨークに伝熱された熱量は、更に金属材料のサスペンションを介して、金属材料の第2のプロテクターへ伝熱した後に大気中へ放熱される。特許文献2の動電型エキサイタは、ヨークからサスペンションを通じて第2のプロテクターへの伝熱経路が長く、かつ、ヨークが第2のプロテクターに覆われているため、第2のプロテクター内部に熱がこもり易くなっている。すなわち、特許文献2の動電型エキサイタは、大量の熱が発生する場合に放熱性が悪いという問題がある。特に第2のプロテクターをナイロンなどの伝熱効率の低い樹脂材料にて成形した場合は、通電により自己発熱した熱量の影響が顕著に現れるため構成部品の温度上昇が大きくなることが危惧される。ヨークの温度上昇を所定のレベルに抑制することができない場合は、発熱に起因するコイルの断線を引き起こす可能性がある。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、通電による熱を外部に放熱する放熱効率を改善し、信頼性を向上させた車両搭載用等の動電型放音体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
底部及び側壁部を有する形状のアウターヨークと、アウターヨークに囲まれて配置されたマグネットとインナーヨークとを含む磁気回路部と、磁気回路部に形成された磁気ギャップ内に配設されたコイルと、コイルが固定された振動板と、アウターヨークの一部を内包するように配置された筐体と、振動板の外周縁と筐体とを弾性的に連結する弾性部材と、を備える。筐体は内底部に開放穴を有し、アウターヨークは、一部が筐体の開放穴から露出するように、筐体に一体的に接続されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る動電型放音体によれば、アウターヨークの一部を筐体から外部に露出させたので、通電による熱を外部に放熱する放熱効率を改善し、信頼性が向上した動電型放音
体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図である。
【図2】図1の動電型放音体の外観を示す外観図である。
【図3】図1のA部拡大図である。
【図4】本発明の実施の形態2による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図である。
【図5】図4のB部拡大図である。
【図6】本発明の実施の形態3による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図である。
【図7】図6のC部拡大図である。
【図8】本発明の実施の形態4による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図である。
【図9】図8のD部拡大図である。
【図10】本発明の実施の形態4による他の動電型放音体の構成を示す模式的な断面図である。
【図11】図11のE部拡大図である。
【図12】本発明の実施の形態5による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図であり、図2は動電型放音体の外観を示す外観図である。図2の上側は側面図であり、図2の下側はフロントカバー10を下側から見た図である。図中同一記号は同一部分を示す。動電型放音体40は、底部及び側壁部を有する形状に形成され磁性材料からなるアウターヨーク1と、アウターヨーク1の内底部に同心円状で片端磁極側が接着されたマグネット2と、マグネット2の他端磁極側に接着され磁性材料からなる同心円状のインナーヨーク3と、振動板7と、ボビン6に巻回されたコイル5と、アウターヨーク1を内包するための筐体9と、振動板7の外周縁と筐体9とを弾性的に連結し、振動板7の外周端を径方向に弾性支持する第一弾性部材8と、フロントカバー10と、アウターヨーク1の開放側端部において振動板7を軸方向に弾性支持する第二弾性部材11と、を備える。アウターヨーク1、マグネット2、及びインナーヨーク3と、によって磁気回路が構成されている。磁気回路を構成する部分を磁気回路部と呼ぶことにする。アウターヨーク1の側壁部は円筒状になっており、アウターヨーク1の底部は円板状になっている。なお、動電型放音体40の断面図において、紙面奥側に本来見えるアウターヨーク1の内壁面、ボビン6の内面、フロントカバー10の内面は、図が複雑にならないように省略した。軸方向とは、同心円状のインナーヨーク3及びマグネット2の中心軸方向であり、図1の上下方向である。
【0016】
アウターヨーク1の内壁面とインナーヨーク3の外周面との間に存在する磁束密度の高い磁気ギャップ4内に、コイル5が配設される。コイル5は、ボビンに電線を巻回して作成される。前記磁気回路中の磁束密度が高い磁気ギャップ4内に、ボビン6に巻回されたコイル5が挿入されている。なお、ボビン9に巻回されたコイル5への電力供給は、図示しない外部電源に接続されたコネクタやハーネスを経由しておこなわれている。
【0017】
振動板7は、ボビン6が接着もしくは一体形成される。第一弾性部材8は、その内周側が振動板7の外周端に装着されている。筐体9は開放穴9eを有し、アウターヨーク1は、アウターヨーク1の一部である露出部1eが露出状態のままシール部材12を介して複数本の固定ネジ13で筐体9に締結される。フロントカバー10は、振動板7を保護するためのものである。フロントカバー10の外周側には、嵌合わせ部10bが設けられる。第一弾性部材8の内周面は振動板7の外周縁全周に一体的に接合され、第一弾性部材8の外周部は筐体9の外周部とフロントカバー10の嵌合わせ部10bによって挟み込み支持されている。このように筐体9とフロントカバー10とにより挟み込まれた第一弾性部材8は、振動板7の外周端を径方向に弾性支持している。また、第二弾性部材11は、アウターヨーク1の開放側端部において振動板7を軸方向に弾性支持している。筐体9とアウターヨーク1の側壁外面および振動板7により音響空間22が形成されている。
【0018】
フロントカバー10を筐体9の外周部に嵌め込むことで、振動板7の外周に接合された第一弾性部材8を押圧保持する。また、フロントカバー10は、振動板7の前面を覆うことで外部からの異物の飛散等による振動板7の変形や破損を防止している。フロントカバー10の底面部10cに、開口部10aが設けられる。開口部10aは、振動板7からの放出音を遮らない程度の開口面積を有している。なお、図2では、開口部10aをスリット状で記載しているが、開口部10aの形状は、スリット状に限らず他の形状であっても構わない。フロントカバー10の嵌合わせ部10bの形状や嵌合わせ方法は、他の形状や他の嵌合わせ方であっても構わない。
【0019】
電動移動体の接近等を報知するための報知音発生装置は、電動移動体の車外に音を出すためのものであり、車内には聞こえないようにする必要があるので、報知音発生装置の動電型放音体40はエンジンルーム内、フロントダンパ裏、リヤバンパ裏、フロントグリル、タイヤハウスなどの装着場所が考えられる。これらの場所はいずれも小石や木屑、雨水等が飛散してくる可能性の高い場所であり、フロントカバー10により外部からの異物の飛散等から振動板7を保護している。
【0020】
図3は図1のA部を拡大表示した拡大図である。筐体9の内底部に開放穴9eが設けられており、アウターヨーク1の軸方向閉塞側端面の露出部1eが開放穴9eから大気側(図中上方向側)に露出している。従って、コイル5への通電により自己発熱した熱量の一部はアウターヨーク1の外周壁、及び、インナーヨーク3からマグネット2を経てアウターヨーク1の露出部1eへ伝熱され、アウターヨークの露出部1eから直接大気中へ放熱可能となる。外気による冷却効果によって、磁気回路部、コイル5の各部の温度上昇を抑制することができる。アウターヨーク1の温度上昇を所定のレベルに抑制することができ、磁気回路部、コイル5の各部の温度上昇を所定のレベルに抑制することができるので、発熱に起因するコイル5の抵抗増加や断線を防止することができる。
【0021】
アウターヨーク1は、アウターヨーク1の一部である露出部1eが露出状態のまま、開放穴9eの周辺部に配置されたシール部材12を介して複数本の固定ネジ13で筐体9に締結される。シール部材12を用いる理由を説明する。アウターヨーク1の軸方向閉塞側端面の露出部1eが筐体9の開放穴9eから露出する構造にした場合、当該放音体が屋外で使用される環境化では、筐体9の開放穴9eからアウターヨーク1の外周壁を伝って雨水等が浸入するおそれがある。筐体9内に水分が浸入した場合には、筐体9の内部は高温多湿状態となり、金属部分の腐食、樹脂成形部分の過水分解や経年劣化、第一弾性部材8や第二弾性部材11のゴム系材料の経年劣化、更には、第二弾性部材11の接着剥がれ等を誘発するおそれがある。また、磁気ギャップ4内のコイル5やボビン6にまで水が付着した場合は、ショートによるコイル5の断線やレアショートを誘発するおそれがある。しかし、筐体9へ挿入されるアウターヨーク1の肩部にはシール部材12が嵌め込まれており、軸方向閉塞側端面の露出部1eが筐体9から露出する状態に組み込まれた後、複数本の固定ネジ13にて筐体9とアウターヨーク1とが締結される。その結果、シール部材12は適正な変形量が保たれた状態で保持されるため、アウターヨーク1と筐体9との合わせ面からの水進入による不具合を防止できる。したがって、耐水性に富む放音体を提供することができる。
【0022】
実施の形態1の動電型放音体40は、アウターヨーク1を筐体9に接続する際に、アウターヨーク1の軸方向端面の一部を大気中に露出させ、コイル通電による発熱エネルギを大気中へ放熱し、自然空冷若しくは車両走行風等によって冷却する構造とした。これにより、自己発熱による温度上昇を大幅に低減することができるため、高い信頼性が得られる報知音発生装置の放音体を提供することができる。
【0023】
以上のように実施の形態1の動電型放音体40は、底部及び側壁部を有する形状のアウターヨーク1と、アウターヨーク1に囲まれて配置されたマグネット2とインナーヨーク3とを含む磁気回路部と、磁気回路部に形成された磁気ギャップ4内に配設されたコイル5と、コイル5が固定された振動板7と、アウターヨーク1の一部を内包するように配置された筐体9と、振動板7の外周縁と筐体9とを弾性的に連結する弾性部材8と、を備え、筐体9は内底部に開放穴9eを有し、アウターヨーク1は、一部が筐体9の開放穴9eから露出するように、筐体9に一体的に接続されたので、アウターヨーク1の露出部1eから直接大気中へ放熱可能となり、外気による冷却効果によって磁気回路部、コイル5の各部の温度上昇を抑制することができ、通電による熱を外部に放熱する放熱効率を改善し、信頼性を向上させることができる。
【0024】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図であり、図5は図4のB部拡大図である。なお、図中同一記号は同一部分を示している。実施の形態2の動電型放音体40は、前述した実施の形態1に対して筐体9にアウターヨーク1をインサートモールド成形法により形成(適宜、インサートモールド成形とも呼ぶ)している点が大きく異なる。実施の形態1の場合、冷却効率改善のためアウターヨーク1の軸方向閉塞面側の少なくとも一部を筐体9から露出させるため、筐体9とアウターヨーク1とを別部品にした。さらに、筐体9とアウターヨーク1の合わせ面からの水の浸入を防止するため、シール部材12を追加している。従って、防水性を高めるためにシール部材12を新な部品として追加することから、部品点数増加に伴う部品コスト及び組み立て工数増加、耐水性試験などの新たな出荷試験の追加が必要になるため、報知音発生装置用の放音体がコストアップする。
【0025】
以下、本発明の実施の形態2について説明する。アウターヨーク1の軸方向閉塞端側の露出部1eは、筐体9の開放穴9eから大気側(図中上方向側)に露出している。アウターヨーク1の外周壁の少なくとも一部に、凹部1gが設けられている。筐体9の開放穴9e側には、インサートモールド成形の際に凹部1gに挿入するように凸部9fが形成される。ここで、筐体9は金属部品をインサート成形可能な樹脂材料が用いられており、アウターヨーク1を成形金型内に組み込んだ後に熔融樹脂を成形金型内に流し込む樹脂成形法の一方法であるインサートモールド成形法によって、磁性金属からなるアウターヨーク1と樹脂からなる筐体9とを一体的に形成している。
【0026】
前記のとおり、インサートモールド成形により筐体9とアウターヨーク1とを一体的に形成することにより、アウターヨーク1の露出部1eを容易に露出させることができる。また、一体的に形成することにより、アウターヨーク1と筐体9との合わせ面からの水の浸入を防止できる。従って、インサートモールド成形することによってシールリング等のシール部材12を使用することなく防水機能を得ることが可能となり、生産コストを大幅に低減できる。このように、報知音発生装置用として防水機能を有した信頼性の高い放音体を安価に供給することができる。
【0027】
実施の形態3.
図6は、本発明の実施の形態3による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図であり、図7は図6のC部拡大図である。なお、図中同一記号は同一部分を示している。実施の形態3の動電型放音体40は、実施の形態1及び2の動電型放音体40とは、アウターヨーク1を筐体9の開放穴9eを有する内底部に挿入するだけで一体的に保持する構造とした点で異なる。このようにすることで、筐体9はアウターヨーク1を自動的に内包し且つ一体的に保持することができる。これにより、量産時の組み付け工数が大幅に低減され量産性に富む安価な放音体を提供することができる。
【0028】
筐体9の内底部には、内底部から軸方向に伸びる弾性変形可能なヨーク保持部9bが複数個、均等に設けられる。ヨーク保持部9bは動電型放音体40を組み立てる際にアウターヨーク1の挿入ガイドとしての役目を有し、また、アウターヨーク1が筐体9の所定位置に挿入されるまでの間では、ヨーク保持部9bはアウターヨーク1の外径より外側に押されて弾性変形する。更にその後、アウターヨーク1が筐体9の所定の内包位置まで押し込まれた状態では、弾性変形していたヨーク保持部9bはアウターヨーク1の露出部1eが筐体9の開放穴9eに挿入された状態を保持するようにアウターヨーク1を支持する形で元の形状に戻る。実施の形態3の動電型放音体40は、上記のような所謂スナップフィット構造を有する。
【0029】
アウターヨーク1の外周壁面には、フランジ部1fが径方向へ突出して設けられる。筐体9の内底部には、爪部9aを有する鍵状のヨーク保持部9bが設けられる。アウターヨーク1のフランジ部1fと、筐体9との内底部における開放穴9eの周辺部との間には、シール部材12が配設される。筐体9へアウターヨーク1を内包組み付けする際の作業性を悪化させずに、アウターヨーク1と筐体9との合わせ面からの水進入による不具合を防止するため、筐体9の開放穴9eからアウターヨーク1の外周壁を伝って雨水等が浸入する経路にシール部材12を配設している。
【0030】
筐体9の開放穴9e部分の背面側にシール部材12を配置した状態でアウターヨーク1を筐体9内に挿入すると、アウターヨーク1の外周壁に径方向へ突出したフランジ部1fによってヨーク保持部9bは弾性変形内で径方向外側に押し開かれる。更に挿入を続けると、筐体9の開放穴9e部分の背面側に設けたシール部材12は、フランジ部1fによって押圧変形され始める。アウターヨーク1が筐体9内に完全に挿入された状態では、シール部材12が更に圧縮変形すると共に、筐体9に設けたヨーク保持部9bは弾性変形による復元力で元の状態に戻り、ヨーク保持部9bの先端に設けられた爪部9aはアウターヨーク1のフランジ部1fと噛合う。このようにヨーク保持部9bはフランジ部1fに係合する。
【0031】
よって、アウターヨーク1と筐体9との接続部分に配設したシール部材12によって、アウターヨーク1の軸方向閉塞側の露出部1eを筐体9から露出させても、シール部材12によって外部からの水の浸入を完全に防止することができる。
【0032】
実施の形態3の動電型放音体40は、上記のような所謂スナップフィット構造を有するので、容易に位置決め可能でしかも専用の固定ネジ13を使用せず組みつけられることから、実施の形態1よりも放音体の組み立て工程が大幅に簡略化され、生産性に富む安価な放音体が得られる。また、実施の形態3の動電型放音体40は、実施の形態2のインサート形成工程を含まないので、実施の形態2よりも放音体の組み立て工程が大幅に簡略化され、生産性に富む安価な放音体が得られる。
【0033】
以上のように、実施の形態3の動電型放音体40は、アウターヨーク1の一部を露出させる露出構造と、スナップフィット構造をともに備えたので、安価で生産性に富み、高い信頼性が得られる。また、実施の形態3の動電型放音体40は、シール部材12によって
外部からの水の浸入を完全に防止することができ、耐水性を備えることができる。
【0034】
実施の形態4.
実施の形態1乃至3ではアウターヨーク1の一部を筐体9から露出させた露出構造を備えた動電型放音体40について説明したが、筐体9に工夫を追加するころで、アウターヨーク1を筐体9から露出させない場合でも、アウターヨークからの放熱効率を改善し、信頼性が向上した動電型放音体を得ることができる。筐体9の工夫は、例えば、筐体9の内底部の肉厚を薄くしたり、熱伝導率の高い材質の筐体9にしたり、筐体9の内底部とアウターヨーク1のとの間に温度コンパウンドを挟むようにすること等である。
【0035】
図8は、本発明の実施の形態4による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図であり、図9は図8のD部拡大図である。なお、図中同一記号は同一部分を示している。実施の形態4の動電型放音体40は、筐体9において実施の形態1乃至3に示した開放穴9eは存在しない。筐体9の内底部には、内底部から軸方向に伸びる弾性変形可能なヨーク保持部9bが複数個、均等に設けられる。また、筐体9の内底部には、アウターヨーク1の回転方向位置ずれを防止するための突起部9cが設けられ、アウターヨーク1には突起部9cが係合する穴部1cが設けられる。アウターヨーク1の外周側に設けられたフランジ部1fは、実施の形態3とは異なる形状でもよく、例えば、筐体9の内底部を延伸させて設けられる。筐体9のヨーク保持部9bとアウターヨーク1のフランジ部1fを備えるので、実施の形態3と同様にアウターヨーク1を筐体9の所定位置に内包固定することが可能となる。
【0036】
ヨーク保持部9bの爪部9aがフランジ部1fに噛合うだけでは、アウターヨーク1の回転方向位置ズレ防止が不十分となる場合がある。そこで、アウターヨーク1と筐体9との合わせ面に少なくとも一組以上の凹凸部である突起部9c及び穴部1cを配設し、アウターヨーク1を筐体9に完全に挿入した状態で夫々が互いに噛合うようにすることで、アウターヨーク1と筐体9との相対的な回転位置ズレを阻止できる。
【0037】
筐体9にアウターヨーク1が挿入され、ヨーク保持部9bが弾性変形の範囲内で外側にした後、更に挿入するとアウターヨーク1の穴部1cに筐体9の内底部の突起部が嵌まり込む。従って、アウターヨーク1が筐体9に完全に挿入され、穴部1cと突起部9cとが噛合った状態ではアウターヨーク1が筐体9に対して回転方向の位置ずれを起こすことは無い。よって、外力または自身の振動等により筐体9内でアウターヨークが回転方向の位置ズレを起こしたり振動したりすることを防止でき、また、コイル5や図示しないハーネスの断線防止に効果があり信頼性の高い放音体を得ることができる。なお、その際、アウターヨーク1の挿入時に穴部1cと突起部9cが噛合位置で挿入できるよう図示しない挿入ガイドを設けると更に組み付け性が改善されることは特筆するまでもない。また、穴部1cは貫通穴として図示したが単なる窪み部であってもよく、筐体9の突起部9cがこれに噛合うことが可能な形状であれば同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0038】
実施の形態4の動電型放音体40は、上記のような所謂スナップフィット構造を有するので、容易に位置決め可能でしかも専用の固定ネジ13を使用せず組みつけられることから、実施の形態1よりも放音体の組み立て工程が大幅に簡略化され、生産性に富む安価な放音体が得られる。また、実施の形態4の動電型放音体40は、実施の形態2のインサート形成工程を含まないので、実施の形態1よりも放音体の組み立て工程が大幅に簡略化され、生産性に富む安価な放音体が得られる。
【0039】
以上のように、実施の形態4の動電型放音体40は、筐体9の内底部の肉厚を薄くしたり、熱伝導率の高い材質の筐体9にしたり、筐体9の内底部とアウターヨーク1のとの間に温度コンパウンドを挟むようにする等により、通電による熱を外部に放熱する放熱効率
を改善でき、スナップフィット構造を備えたので、安価で生産性に富み、高い信頼性が得られる。また、筐体9の底面に開放穴9eがないので、実施の形態1乃至3に比べて、防水性を高めることができる。
【0040】
筐体9の底面に開放穴9eがなく、防水性が高い動電型放音体40は、他の形状であっても構わない。図10は、本発明の実施の形態4による他の動電型放音体の構成を示す模式的な断面図であり、図11は図10のE部拡大図である。なお、図中同一記号は同一部分を示している。図10及び図11に示す動電型放音体40は、図8及び図9に示した動電型放音体40とは、スナップフィット構造の形状が異なる。
【0041】
アウターヨーク1の外周には、配設したV溝状の窪み部1dが設けられる。筐体9の内底部には、窪み部1dに沿う形状の爪部9dを有するヨーク保持部9bが設けられる。筐体9にアウターヨーク1を組み付ける際、アウターヨーク1の外周端により筐体9のヨーク保持部9bが弾性変形範囲内で押し広げられる。アウターヨーク1が所定位置まで挿入された状態では、ヨーク保持部9bの爪部9dがアウターヨーク1の外周に配設されたV溝状の窪み部1dに噛み合う。このようにヨーク保持部9bは窪み部1dに係合する。このため、容易にアウターヨーク1を筐体9に内包保持できる。アウターヨーク1が筐体9に完全に挿入された状態では、V溝状の窪み部1dに筐体9の爪部9dが完全に噛合うことで軸方向の位置決めがなされており、アウターヨーク1が筐体9から離脱することを防止している。
【0042】
図8及び図9に示した動電型放音体40と同様に、アウターヨーク1が筐体9に完全に挿入された状態では、アウターヨーク1の穴部1cと筐体9の突起部9cとが噛合った状態であり、アウターヨーク1が筐体9に対して回転方向の位置ずれを起こすことは無い。よって、外力または自身の振動等により筐体9内でアウターヨークが回転方向の位置ズレを起こしたり振動したりすることを防止できる。
【0043】
実施の形態5.
筐体9の底面に開放穴9eがなく、防水性が高い動電型放音体40は、実施の形態4とは異なる形状であっても構わない。図12は、本発明の実施の形態5による動電型放音体の構成を示す模式的な断面図である。なお、図中同一記号は同一部分を示している。実施の形態5の動電型放音体40は、実施の形態4の動電型放音体40とは、スナップフィット構造の形状が異なる。
【0044】
実施の形態5の動電型放音体40は、第二弾性部材11が存在しない場合に、アウターヨーク1の開放側端部にヨーク保持部9bを嵌め合わすようにしたものである。筐体9の内底部には、内底部から軸方向に伸びる弾性変形可能なヨーク保持部9bが複数個、均等に設けられる。ヨーク保持部9bは、アウターヨーク1が筐体9の所定位置に挿入されるまでの間ではヨーク保持部9bはアウターヨーク1の外径より外側に押されて弾性変形する。更にその後、アウターヨーク1が筐体9の所定の内包位置まで押し込まれた状態では、弾性変形していたヨーク保持部9bはアウターヨーク1の開放側端面を支持する形で元の形状に戻る。このようにヨーク保持部9bは、アウターヨーク1の軸方向開放側端部1hに係合する。
【0045】
実施の形態5の動電型放音体40は、第一弾性部材8のみで振動板7を弾性保持するので、実施の形態4に比べて安価に製造できるメリットがある。第一弾性部材8は、その内周部が振動板7の外周縁の全周に一体的に接続され、その外周部がアウターヨーク1の側壁部の全周に接続される。
【0046】
また、第二弾性部材を排除したことは実施の形態4に比べて安価に製造できるだけでな
く、放音体の低周波領域の音を改善することも可能となる。ここで、実施の形態4での第一弾性部材8のバネ定数をk8とし、第二弾性部材11のバネ定数をk11とし、振動板7、ボビン6、コイル5の総質量をmとすると、振動板7の自励振動数fは概略的に式(1)で表される。
f=1/2π・√((k8+k11)/m) ・・・(1)
振動板の自励振動数fは第一弾性部材8のバネ定数k8と第二弾性部材11のバネ定数k11とを合成したバネ定数kにより決定される。実施の形態5では、第二弾性部材11が存在せず、バネ定数k11も存在しない。例えば、実施の形態4での第一弾性部材8のバネ定数k8と第二弾性部材11のバネ定数k11が同等である場合と、実施の形態5で、実施の形態4と同じ第一弾性部材8のバネ定数k8の場合には、実施の形態5は、実施の形態4に比べて、合成バネ定数kが1/2倍のバネ定数となり振動板7の自励振動数fは√2倍だけ低くなることを意味している。従って、実施の形態5は、実施の形態4に比べて、より低い低周波領域から放音体の所望の音を放出させることができる。
【0047】
なお、第一弾性部材8の内周部と振動板7とを固着する固着箇所は、外周縁全周に渡っている場合に限らず、均等に複数の固着箇所が配置される場合であっても構わない。ここで、固着箇所の均等に配置とは、振動板の中心に対して対象となる位置に固着箇所が配置されることである。振動板7の外周縁全周に一体的に接合された第一弾性部材8は、アウターヨーク1とフロントカバー10との間に装着されたので、振動板7の振動に影響を与えることなく、振動板7を弾性支持することができる。
【0048】
以上のように、実施の形態5の動電型放音体40は、筐体9の内底部の肉厚を薄くしたり、熱伝導率の高い材質の筐体9にしたり、筐体9の内底部とアウターヨーク1のとの間に温度コンパウンドを挟むようにする等により、通電による熱を外部に放熱する放熱効率を改善でき、スナップフィット構造を備えたので、安価で生産性に富み、高い信頼性が得られる。また、筐体9の底面に開放穴9eがないので、実施の形態1乃至3に比べて、防水性を高めることができる。
【0049】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…アウターヨーク、1d…窪み部、1f…フランジ部、1g…凹部、2…マグネット、3…インナーヨーク、4…磁気ギャップ、5…コイル、7…振動板、8…第一弾性部材、9…筐体、9b…ヨーク保持部、9e…開放穴、9f…凸部、10…フロントカバー、10a…開口部、10b…嵌合わせ部、12…シール部材、13…固定ネジ、40…動電型放音体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部及び側壁部を有する形状のアウターヨークと、前記アウターヨークに囲まれて配置されたマグネットとインナーヨークとを含む磁気回路部と、
前記磁気回路部に形成された磁気ギャップ内に配設されたコイルと、
前記コイルが固定された振動板と、
前記アウターヨークの一部を内包するように配置された筐体と、
前記振動板の外周縁と前記筐体とを弾性的に連結する弾性部材と、を備えた動電型放音体であって、
前記筐体は内底部に開放穴を有し、前記アウターヨークは、一部が前記筐体の前記開放穴から露出するように、前記筐体に一体的に接続されたことを特徴とする動電型放音体。
【請求項2】
前記筐体は、前記内底部から軸方向に突出したヨーク保持部を有し、
前記アウターヨークは、径方向外周壁に設けられたフランジ部を有し、
前記ヨーク保持部は、前記フランジ部に係合したことを特徴とする請求項1記載の動電型放音体。
【請求項3】
前記筐体は、前記内底部から軸方向に突出したヨーク保持部を有し、
前記アウターヨークは、径方向外周壁に設けられた窪み部を有し、
前記ヨーク保持部は、前記窪み部に係合したことを特徴とする請求項1記載の動電型放音体。
【請求項4】
前記筐体は、前記内底部から軸方向に突出したヨーク保持部を有し、
前記ヨーク保持部は、前記アウターヨークの軸方向開放側端面に係合したことを特徴とする請求項1記載の動電型放音体。
【請求項5】
前記アウターヨークは、前記筐体に固定ねじにより固定されたことを特徴とする請求項1記載の動電型放音体。
【請求項6】
前記アウターヨークは、前記開放穴の周辺部に配置されたシール部材を介在させて前記筐体に一体的に接続されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の動電型放音体。
【請求項7】
前記アウターヨークは外周部に凹部を有し、
前記筐体は、樹脂材料を流し込むインサートモールド成形法により形成され、この形成の際に前記凹部に挿入される凸部が形成されることを特徴とする請求項1記載の動電型放音体。
【請求項8】
開口部を有し前記振動板の前面を覆うフロントカバーを備え、
前記弾性部材は、前記フロントカバーの外周側に設けられた嵌合わせ部と前記筐体の外周部とによって押圧されることにより前記筐体の外周部の全周に接続されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の動電型放音体。
【請求項1】
底部及び側壁部を有する形状のアウターヨークと、前記アウターヨークに囲まれて配置されたマグネットとインナーヨークとを含む磁気回路部と、
前記磁気回路部に形成された磁気ギャップ内に配設されたコイルと、
前記コイルが固定された振動板と、
前記アウターヨークの一部を内包するように配置された筐体と、
前記振動板の外周縁と前記筐体とを弾性的に連結する弾性部材と、を備えた動電型放音体であって、
前記筐体は内底部に開放穴を有し、前記アウターヨークは、一部が前記筐体の前記開放穴から露出するように、前記筐体に一体的に接続されたことを特徴とする動電型放音体。
【請求項2】
前記筐体は、前記内底部から軸方向に突出したヨーク保持部を有し、
前記アウターヨークは、径方向外周壁に設けられたフランジ部を有し、
前記ヨーク保持部は、前記フランジ部に係合したことを特徴とする請求項1記載の動電型放音体。
【請求項3】
前記筐体は、前記内底部から軸方向に突出したヨーク保持部を有し、
前記アウターヨークは、径方向外周壁に設けられた窪み部を有し、
前記ヨーク保持部は、前記窪み部に係合したことを特徴とする請求項1記載の動電型放音体。
【請求項4】
前記筐体は、前記内底部から軸方向に突出したヨーク保持部を有し、
前記ヨーク保持部は、前記アウターヨークの軸方向開放側端面に係合したことを特徴とする請求項1記載の動電型放音体。
【請求項5】
前記アウターヨークは、前記筐体に固定ねじにより固定されたことを特徴とする請求項1記載の動電型放音体。
【請求項6】
前記アウターヨークは、前記開放穴の周辺部に配置されたシール部材を介在させて前記筐体に一体的に接続されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の動電型放音体。
【請求項7】
前記アウターヨークは外周部に凹部を有し、
前記筐体は、樹脂材料を流し込むインサートモールド成形法により形成され、この形成の際に前記凹部に挿入される凸部が形成されることを特徴とする請求項1記載の動電型放音体。
【請求項8】
開口部を有し前記振動板の前面を覆うフロントカバーを備え、
前記弾性部材は、前記フロントカバーの外周側に設けられた嵌合わせ部と前記筐体の外周部とによって押圧されることにより前記筐体の外周部の全周に接続されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の動電型放音体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−74464(P2013−74464A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211987(P2011−211987)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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