動電式ポンプによって駆動される熱伝導システム
熱源(104)から熱を受け取る一次熱交換器(102)、熱をヒートシンク(108)に放出する二次熱交換器(106)、一次熱交換器(102)と二次熱交換器(106)とをつなぐ導管(110)、及び一次熱交換器(102)と二次熱交換器(106)の間で、導管(110)介して熱交換流体を移動させる動電式ポンプ(112)を備える熱伝導システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年4月19日に出願された米国特許出願第10/827799号(表題「Electrokinetic Pump Driven Heat Transfer System」)の優先権を主張する。前記米国特許出願は、2003年10月17日に出願された国際出願PCT/US03/32895の関連出願であり、前記国際出願は2002年12月17日に出願された米国特許出願第10/322083号の一部継続出願であり、この出願は2002年10月18日に出願された米国特許出願第10/273723号の一部継続出願である。ここで参照したことにより、これら出願の開示内容全体を、あらゆる目的のために本明細書に包含する。
発明の背景
【0002】
本発明は熱伝導システムに関し、具体的には動電式ポンプを使用した熱伝導システムに関する。
通常、熱削減システムは、例えば、コンピュータプロセッサなどの温度の上昇した熱源から熱を除去し、周囲温度のような低い温度のヒートシンクに熱源の熱を放出する。このような熱伝導プロセスにより、熱源は、ヒートシンク温度をやや上回る一定の温度に維持される。最新の電子システムは、通常、フィン付きヒートシンクを熱源に接触させ、ヒートシンクに空気を流すことによって過度の熱を除去する。今日のコンピュータの場合、さらに高速のプロセッサ及び高出力のエレクトロニクスによって、以前より多量の熱が生成され、コンピュータ筐体内部の空気の温度は、周囲温度より有意に上昇する。これは、シンク温度(即ち、筐体内の空気温度)を上昇させ、よって筐体内部の部品の動作温度を上昇させる。
【0003】
非常に薄いラップトップコンピュータなどの超小型電子機器の開発により、筐体内において空気が流れることのできるスペースが殆ど無くなり、よって部品を十分に冷却するのに必要なエアフローを達成することが困難になった。従って、電子システム及び他の部品の冷却方式を改良する必要がある。改良は、エレクトロニクス装置を通る空気の移動によって行うのではなく、熱源から熱を除去し、その熱を、低温の周囲空気と熱交換できる筐体に装着された外部交換器、例えばフィンに移動させることが好ましい。
熱交換の補助となる熱パイプの使用が知られている。通常、熱パイプは、部分的に液体で満たされ、密封された導管であり、その内壁に沿ってウィッキング構造を有している。熱パイプの一方の端部は熱せられ、他方の端部は冷却される。加熱された端部から液体が気化し、発生した蒸気は熱パイプの芯に沿って冷却端に流れる。導管の内壁のウィッキングにより、液体が加熱端に再供給される。熱パイプは完全に密封されており、機械的可動部分を有しないので魅力的であるが、熱束容量が限定されること、方向の影響を受け易いこと、剛性の導管を必要とすること等の制約がある。加えて、ウィック構造は高価であり、製造上信頼性に乏しい。
【0004】
熱パイプに知られた代替品は、キャピラリポンプループであり、これは脈動型熱パイプ又は「PHP」とも呼ばれる。脈動型熱パイプは、米国特許第4921041号及び同第5219020号に記載されている。脈動型熱パイプは、従来の熱パイプと類似の方式で使用される。脈動型熱パイプは密封されて部分的に液体で満たされた導管である。内部にウィック構造を使用しない点で、脈動型熱パイプは従来型の熱パイプと異なる。導管内の液体は、液体−蒸気のスラッグとして自然な状態で分布する。使用時、脈動型熱パイプの一又は複数の部分が加熱され、他の一又は複数の部分は冷却される。加熱された箇所における蒸気の発生により、局部的に圧力が増加し、これにより導管に沿って液体スラッグの移動が生じる。この移動により、液体は加熱端から冷却端に移動する。しかしながら、熱パイプは、最大熱束に限界を有し、方向及び導管内部の液量に強く影響される。
更に、これに代わる物として、流体循環冷却方式も使用可能である。しかしながら、液体流動システムは機械式ポンプを必要とするので、大きさ、重量、雑音、及び振動が加わり、早期故障及び/又は漏れを起こし易い。よって、熱源から外部の熱交換器に熱を移動できる冷却システムの改良が必要である。
【0005】
発明の概要
従って、本発明の目的は、熱源から熱を受け取る一次熱交換器、熱をヒートシンクに放出する二次熱交換器、一次熱交換器と二次熱交換器とをつなぐ導管、及び導管を介して一次熱交換器と二次熱交換器の間で熱交換流体をポンピングする動電式ポンプを備えた熱伝達システムである。本発明は更に、熱交換器及び導管内部の熱交換流体を含むことができる。
動電式ポンプをコントローラに接続することが可能である。コントローラは、動電式ポンプを周期モードで動作させることができる。本発明の別の実施形態では、熱伝導システムは複数の二次熱交換器を備える。本発明のまた別の実施形態では、熱伝導システムは複数の一次熱交換器と複数の二次熱交換器とを備える。複数の一次熱交換器と複数の二次熱交換器を、一つの流路に沿って直列に接続し、温度的に並列に動作させることができる。複数の一次熱交換器と複数の二次熱交換器は、二つ以上の流路に沿って並列に接続することもできる。
【0006】
熱交換流体は、動電式ポンプ用に許容可能な電解液として機能することができる。或いは、熱交換流体は、動電式ポンプ内で使用される電解液から、柔軟な部材を用いて分離される。任意選択で、熱交換流体は水である。熱伝導システムは、単相の熱交換流体又は多相の熱交換流体を使用することができる。
本発明はまた、本明細書に開示する熱交換システムを用いた熱除去法を目的とする。本熱除去法では、熱源と熱の伝達を行えるように一次熱交換器を配置し、ヒートシンクと熱の伝達を行えるように二次熱交換器を配置する。ポンプを動作させ、導管を介して一次熱交換器内の熱交換流体を二次熱交換器に移動させ、導管を介して二次熱交換器内の熱交換流体を一次熱交換器に移動させる。ポンプは、熱交換流体を一方向に移動させるように動作させることができる。或いは、周期モードでポンプを動作させることができる。
【0007】
添付図面を参照することにより、本発明に対する理解を深めることができる。
詳細な説明
本明細書で使用する「一次熱交換器」という用語は、熱源との熱の伝達を行う熱交換器を意味する。本明細書で使用する「二次熱交換器」という用語は、ヒートシンクと熱の伝達を行う熱交換器を意味する。本明細書で使用する「連結」という用語は、対象物に機能的に接続されることを意味し、「結合」された対象物同士が直接物理的に接触することは必須でない。
【実施例】
【0008】
本発明の第一の実施形態は、熱伝導システム100を目的とする。図1に示すように、熱伝導システム100は、熱源104と熱の伝導を行う一次熱交換器102、及びヒートシンク108と熱の伝導を行う二次熱交換器106を備えている。導管110は、一次熱交換器102と二次熱交換器106とを連結する。熱交換流体は、コントローラ114に連結された動電式ポンプ112によって、導管110を介してポンピングされる。熱交換流体として利用できる液体には多くの種類が存在するが、熱伝導特性の見地から、及び漏れが生じる場合、更にはシステムを最終的に破棄する際に、有毒な液体を避けるという見地から、好ましい流体は水である。
【0009】
図2は、本発明の第二の実施形態による熱伝導システム200の概略図である。図2に示すように、熱は一次熱交換器202で受け取られる。一次熱交換器202によって受け取られた熱は、二つの導管204、206を通る熱交換流体の液体運動によって、一次熱交換器202から二次熱交換器208、210へと運ばれ、そこで放出される。この液体運動は、二つのポンプ用導管214、216を介して二次熱交換器208、210に接続された動電式ポンプ212によって行われる。
ポンプ212は、液体を一方向にポンピングすることができる。或いは、ポンプは周期モードで動作することができ、このモードにおいて熱交換流体は、一つの周期の半分で一方の二次熱交換器に向かい、別の半周期で他方の二次熱交換器に向かう。システム200は、熱交換流体が液体の状態に保たれる単相モードで動作することができる。或いは、システム200は、液体として一次熱交換器を通過する熱交換流体の一部が気化してガスとなり、気体として二次熱交換器を通過する熱交換流体の一部が凝縮して液化する、多相モードで動作することができる。
熱交換流体として水を使用した単相運転の場合、ヒートシンク温度より温度が20℃高い液体により200ワットの熱を運ぶためには、約143mL/分の流量が必要であり、これにより必要なポンプの大きさが決まる。或いは、水の一部を沸騰させることが可能であれば、システムは水の大きな気化熱を利用することができる。この場合、熱伝達ループは排水され、部分的に水で満たされる(即ち、システムの一部は水を、他の部分は水蒸気を含む)。一次交換器において50%の気化が起こると、ヒートシンク温度よりも20℃温度が高い液体で200ワットの熱を運ぶには、約9.4mL/分の流量を要する。さらに大量の液体が気化すると、流量はもっと少なくて済む。例えば、75%の気化が起こった場合、ヒートシンク温度よりも20℃温度の高い液体で200ワットの熱を運ぶには、約6.4mL/分の流量を要する。しかしながら、熱を受け取る一次熱交換器には、常にいくらかの液体が残っていることが望ましい。
【0010】
図3は、本発明の第三の実施形態による熱伝導システム300の概略図である。図3に示すように、二つの一次熱交換器302及び304は、熱源から熱を受け取る。受け取られた熱は、四つの二次熱交換器306、308、310、312を介して放出される。二次熱交換器のうちの二つは、それぞれ導管314に沿って一つの一次熱交換器に直列に連結されている。二次熱交換器のうちの二つは直列に連結されている。一つの動電式ポンプ316が、残りの二つの二次熱交換器を結ぶ導管314に連結されている。動電式ポンプ316は、導管314内の熱交換流体に流体流を起こす。
図3に示すように、全ての熱交換器一つの流路に沿って直列に接続されており、熱的に並列に動作する。ここで使用する「熱的に並列に動作する」という表現は、熱交換流体の複数の箇所が、同時に特定の熱効果の影響を受けることを意味する。例えば、熱交換流体が、一次熱交換器302から二次熱交換器310へ反時計周りに移動すると、熱交換流体も一次熱交換器304から二次熱交換器308に移動する。従って、第三の実施形態によるシステムは、所定の熱量を除去するために、第二の実施形態のシステムで必要とする流量の約半分の流量を必要とし、但しさらに大きなポンプ圧を要する。図3に示す概念は拡張可能であり、直列接続される一次熱交換器と二次熱交換器の数を増やすことができる。この方法論により、必要とされる流量を減らすことができる。基本的に、N個の一次交換器と、(N+1)個の二次交換器を直列に接続すると、所定の熱量を移動するのに必要な流量がN分の1に低減される。
【0011】
図4に、本発明の第四の実施形態による熱伝導システム400を示す。本システムは、5個の一次熱交換器402、404、406、408、410と、6個の二次熱交換器412、414、416、418、420、422を有し、これらの熱交換器は一つの流路に沿って直列に接続されて熱的に並列に機能し、単一の動電式ポンプ424によって駆動される。図4に示すように、一次熱交換器は熱源426と熱の伝導を行い、二次熱交換器はヒートシンク428と熱の伝導を行う。ポンプ424は、全ての一次熱交換器と二次熱交換器と流体連絡する導管430を通って流れる熱交換流体を供給する。
熱交換流体は、ポンプ424の出口から、ヒートシンク428と熱の伝導を行う一番目の二次熱交換器412を通り、熱源426と熱の伝導を行う一次熱交換器402に運ばれる。次に、熱交換流体は2番目の二次熱交換器414に運ばれ、次いで2番目の一次熱交換器404、3番目の二次熱交換器416、3番目の一次熱交換器406、4番目の二次熱交換器418、4番目の一次熱交換器408、5番目の二次熱交換器420、5番目の一次熱交換器410を経由して、最後に6番目の二次熱交換器422に運ばれる。熱交換流体は、6番目の二次熱交換器422からポンピングによりポンプ424に戻る。ポンプの別の周期では、流れの方向が逆になる。
【0012】
多相運転では、二次熱交換器は液体で満たされ、一次熱交換器は液体と蒸気の混合物で満たされる。1回のポンプストロークによって、二次熱交換器から液体が一次熱交換器に押し出され、そこで液体の一部が気化する。同時に、一次熱交換器からの蒸気が二次熱交換器内に引き込まれ、そこで液化する。ポンプのストローク方向が逆になると、二次熱交換器からの液体は一次熱交換器に引き込まれ、一次熱交換器からの蒸気は二次熱交換器に流れ込む。
好ましくは、ポンプに直接接続されている二次熱交換器の内部容積は、ポンプが1ストローク当たりに移動させる液体の量よりも大きい。これにより、蒸気のポンプ内への流入が防止される。加えて、ポンプが1ストローク当たりに移動させる液体の量は、一次熱交換器を満たすのに十分であることが望ましい。従って、好適には、ポンプの1ストローク当たりの容積は、一次熱交換器の容積と、当該一次熱交換器と次の上流の二次熱交換器とをつなぐ導管の容積の合計に、略、等しい。
図4では、ポンプ424に最も近い二次熱交換器412、422は、他の二次熱交換器と同じとすることができる。或いは、ポンプに最も近い二次熱交換器412、422は、蒸気のポンプへの流入を避けるために十分な容量を有する。任意選択で、ポンプに最も近い二次熱交換器412、422の容積は、ポンプの1ストローク当たりの供給量の少なくとも2倍である。熱交換器は本分野で既知のあらゆる種類のものを使用できる。加えて、一次熱交換器は二次熱交換器と同一の種類である必要はない。
【0013】
図5は、本発明の第五の実施形態による熱伝導システム500の概略図であり、本実施形態では、熱交換器は二つの流路に沿って並列接続されており、熱的に並列に動作する。図5に示すように、本システムは、6個の一次熱交換器502、504、506、508、510、512と、7個の二次熱交換器514、516、518、520、522、524、526を備えている。一次熱交換器は熱源528と熱の伝導を行い、二次熱交換器はヒートシンク530と熱の伝導を行う。全ての熱交換器は、導管534を介して、互いに且つ動電式ポンプ532に接続されている。ポンプ532は、入力と出力のために二つのポートを備えている。ポンプ532の第一のポートは、一番目の二次熱交換器514と7番目の二次熱交換器526の両方に連結している。一番目の二次熱交換器は、一番目の一次熱交換器502に連結し、次いで流路は2番目の二次熱交換器516、2番目の一次熱交換器504、3番目の二次熱交換器518、及び3番目の一次熱交換器506に伸びている。7番目の二次熱交換器526は、6番目の一次熱交換器512に連結し、その流路は次いで6番目の二次熱交換器524、5番目の一次熱交換器510、5番目の二次熱交換器522、及び4番目の一次熱交換器508に伸びている。
3番目の一次熱交換器506と4番目の一次熱交換器508は、共通の導管を介して4番目の二次熱交換器520に連結する。4番目の二次熱交換器520は、ポンプ532の第二のポートに連結している。従って、ポンプは、図5に示すように、複数の流路に沿って一つ又は複数の熱交換器に連結することができ、図5の場合、このような直列接続が、二つの流路に沿って並列に接続されている。直列接続されたN個の一次熱交換器を使用する場合、ポンプは、直列接続された熱交換器によってポンプに圧力低下が発生した場合の熱負荷要求を満たす流量を必要とする。同じ数の熱交換器を複数の流路に並列接続することができ、この場合ポンプに印加される逆圧が減少する。或いは、同じ数の熱交換器を複数の流路に並列に接続し、使用可能なポンプ圧を利用して熱交換器一つ当たりの大きな圧力低下を用いることにより、更に効率的で小型の熱交換器を提供することができる。任意選択的に、複数の動電式ポンプを使用して熱交換流体をポンピングすることができる。
【0014】
本発明への使用に適した熱交換器
熱交換器には複数の異なる設計が知られている。本発明に使用可能な熱交換器は、マイクロチャンネル熱交換器、又は本分野において既知の他のあらゆる形態の熱交換器とすることができる。既知の熱交換器、及び以下に詳述する熱交換器は、熱を受け取る手段として、及び熱を排出する手段として、本発明に使用可能である。
図6及び図7は、本発明に使用可能な第一の種類の熱交換器600を示す。図6及び図7に示すように、熱は、導管604を含む本体部602との接触により伝達される。導管604は、第一のポート606及び第二のポート608を有する。導管604は熱交換流体を運ぶ。任意選択的に、熱交換器の熱伝達抵抗を減少させるため、導管604を本体部602の内部で蛇行させる。
【0015】
図8及び図9は、本発明に使用可能な第二の種類の熱交換器700を示す。図8及び図9に示すように、熱は、導管704を含む本体部702との接触により伝達される。導管704は、第一のポート706及び第二のポート708を有する。導管704は熱交換流体を運ぶ。本体部702の内壁の一部にはウィック構造710が取り付けられており、この構造は、本体部の内壁に沿って液体を伝える。ウィック構造710は、多孔性金属、スクリーン、溝、又は本分野で既知の他のあらゆるウィック構造とすることができる。液体はウィック構造を自然に満たし、蒸気を生成することなく導管704から排出される。
図10及び図11は、本発明に使用可能な第三の種類の熱交換器800を示す。図10及び図11に示すように、熱は本体部802に伝達される。本体部は導管804を含む。導管804は、第一のポート806及び第二のポート808を有する。導管804は熱交換流体を運ぶ。導管804は、本体部802の内部で、平行な多数の流路810に分岐する。この種類の熱交換器の一形式は、マイクロチャンネル熱交換器である。このような熱交換器は、D. B. Tuckerman及びR. F. W. Peaseによる"High performance heat sinking for VLSI" (IEEE Electron Dev. Letts., vol. EDL-2, pp. 126-129 (1981))に記載されており、参照により本文献の内容全体を本明細書に包含する。
【0016】
本発明への使用に適した動電式ポンプ
図12に、例示的動電式ポンプ900を示す。動電式ポンプ900は、第一の電極902、第二の電極904、及び導管906を備えている。導管906の第一端部908は、第一の電極902に隣接し(即ち、接触しているか又は離れている)、第一の貯蔵部910と流体連絡している。第一貯蔵部910は、動電式ポンプの第一のポート912とつながっている。導管906の第二端部914は、第二の電極904に隣接し(即ち、接触しているか又は離れている)第二の貯蔵部916と流体連絡している。第二の貯蔵部916は、動電式ポンプの第二のポート918と流体連絡している。従来型の動電式ポンプおいて、導管906は多孔質の誘電性媒体919で充填されている。二つの電極902、904は、リード線922、924を介して電源920に接続されている。
適切な電解溶液で導管を満たし、電極に適切な電位を印加すると、導管内に電解溶液の電気浸透流が発生する。電解溶液の正味流量は、静水圧等の、流れに影響を及ぼす他の要因を加味した電気浸透流である。
「電解質」という用語は、電解質そのもの(例えば、イオン塩などの化合物)と、これらの化合物を溶解させた溶液とを意味し、「化学変化」という用語は、これらの化合物又は溶液、或いはそれらの両方に関連する化学反応を指す。電解液の化学変化によって生成される反応生成物は、排出を要するガス、及び/又は電解液に溶け込み、その組成、例えばpHなどを変化させる電気化学生成物であるため、好ましくない。
【0017】
電極の数
本発明に使用可能な動電式ポンプは、多くの場合、電極を二つだけ含む。しかしながら、動電式ポンプは、三つ以上の電極を使用することもできる。例えば、三つの電極を使用する場合、動作の一期間ではこの内の一対の電極が動作し、別の期間では他の一対が動作する。例えば、導電式ポンプには、互いに逆の極性のゼータ電位を有する多孔質の誘電性媒体を有する三つ以上の電極を、電極間に交互に配置することができる。装置内で使用する電極は、同じでも異なってもよい。一対の容量性電極の一方が、非容量性の材料からなる場合、非容量性電極において電解質の化学変化が起こるが、容量性電極においては起こらない。
【0018】
容量性電極の材料
一対の容量性電極の少なくとも一方の電極は、容量性材料、即ち二重層キャパシタンス特性、或いは擬似キャパシタンス特性を示す材料から構成される。各電極は容量性の材料を含むことが好ましい。一対の容量性電極の各電極は、電極間の容量の少なくとも30%を生成することが好ましい。
従来型の二重層容量性材料の容量は、電極と電解液の界面の電気化学的二重層に電気エネルギーを貯える能力から得られる。擬似容量性材料は、やはり電気エネルギーを貯えることができるが、別の機構によってそれを行う材料である。一つの電極、又は一対の電極は、二重層材料と擬似容量性材料の両方を備えることができる。
【0019】
電極に好ましい二重層容量性材料は、幾何学的表面積に対して非常に大きな微視的表面積を有する炭素(カーボン)である。カーボンエーロゲルを含浸したカーボン紙は特に好ましい。使用可能な他の炭素材料には、カーボンエーロゲル、例えば、モノリシックカーボンエーロゲル発泡材、カーボン織布、炭素繊維(例えば、熱分解されたポリアクリロニトリル繊維及び熱分解されたセルロースファイバー)、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、拡散カーボン粒子ポリマー、及びカーボン粒子のフリットが含まれる。
また、広い微視的表面積を有する他の導電性材料が使用可能であり、それらは例えば、焼結金属、ナノポーラス金、穿孔された金属板、多孔質フリット、多孔質の膜、デリビブラシ等のナノポーラス金属類、及び例えば表面の粗加工、エッチング、又は白金合金化により表面積の拡大処理を行った金属である。
【0020】
一部の擬似容量性材料は、水及び他の多くの溶媒に比較的溶けにくい金属酸化物であり、これらの金属は溶媒中で異なる酸化状態、例えば、コバルト酸化物、マンガン酸化物、イリジウム酸化物、バナジウム酸化物及びルテニウム酸化物を呈する。このような材料を含む電極の稼働中、電極の固体相において、特定のイオン、例えばルテニウム酸化物の場合H+イオンの吸収・放出により、レドックス反応が起こる。他の擬似容量性材料は、溶解性イオン、例えばリチウムイオン(Li+)を挿入(「intercalation」)することができる固体材料材か、又は溶解性イオンを取り出す(「de-intercalation」)ことができる固体材料であり、例えば、窒化マンガン、チタニウムモリブデン二硫化物、炭素、及びポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の導電性ポリマーである。一部の擬似容量性材料は水と反応するので、非水性の電解液を使用しなければならない。このような材料を含む電極においては、電極の固体相においてレドックス反応が起こり、この結果イオンが放出又は吸収される。電極が擬似容量性材料からなる場合、以下に注意する必要がある:
a)特定の擬似容量性材料に必要なイオンを供給し、望ましくない化学反応を防ぐため、電解液と電極の相性を考慮する。
b)イオン濃度の増加(可逆的な電極反応を維持するため)と、イオン濃度の減少(稼動時間を延ばす目的で電流を減らすため)との間のバランスを維持する。
【0021】
好適には、電極材料は電解液に溶解せず、電解液の導電性よりも有意に大きい導電性、少なくとも電解液の100倍の導電性を有する。例えば、カーボンエーロゲル発泡材の導電性は、約100mho/cmであり、代表的な電解液である5mMのNaClの導電性は約0.5x10−3mho/cmである。電極は好ましくは洗浄し、必要に応じて使用前に浸出処理する。多孔質電極は、このような処理の後に脱ガス処理をすることが好ましい。
任意選択的に、ポンプの運転中に電解液を電極に流す。電極に電解液を流すには、電極の幾何学的表面積の少なくとも25%、好ましくは50%が開放されていること、及び/又は電極材料の透過性が、導管内の多孔質導電媒体の透過性の少なくとも10倍、特に少なくとも100倍であることが望ましい。このような電極は、電極に電解液を流す必要がない場合も使用できる。多くの場合、電極が十分な強度を有するように、電極の厚さは少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも1mm、特に少なくとも2mmである。
【0022】
導管を流れる電解液の速度は一定又は可変とすることができる。電極に印加される電力は、電圧又は電流に対して制御することができるか、或いはそれらのうち一方に対して制御する場合と両方に対して制御する場合を切り替えることができる。流量は、導管の電位差に依存し、この電位差は、容量性電極が充電されるにつれて減少し、特に印加電圧が電気分解電圧に到達した時に急落する。必要に応じて、印加電圧を上げてこの減少分を補償することができる。これは例えば、定電流電源を用いることにより、又は導管内の多孔性誘電媒体の端部近傍に設けられたセンサによって導管の電位差をモニタリングし(但し、好ましくは電極と多孔性誘電媒体との間の直接的な電界路の外側で)、電源を適切に調整することによって行うことができる。所望の熱伝導率、温度、流量、圧力を生成するため、電力は、温度又は別の変数に応じて、例えばフィードバックループ等を介した測定デバイスからの信号に応じて、逐次切り換えながら、或いは追加しながら調整することができる。
後述するように、ポンプが周期モード(電源の極性が時間と共に変化する)で動作する場合、各周期において供給される全電荷が同じとなるように、周期の継続時間と電源を制御することにより、電極が時間平均で正電位又は負電位を取ることを確実に無くすことができる。定電流電源を使用する場合、各周期の電流と継続時間の積は同一であることが好ましい。定電圧電源を使用する場合、各周期の電流を継続時間で積分した値は同一であることが好ましい。
【0023】
電極の形状、大きさ及び配置、並びに電極の電流フラックス
電極の容量は、その組成と、その電気化学的活性面の大きさ及び形状によって決まる。導管が比較的太くて短い場合、例えばその長さの1−30倍、例えば5−20倍の等価直径を有する場合、電極の電気化学的活性面の面積は、導管の断面積の好ましくは0.6−1.1倍、例えば0.8−1.0倍である。本明細書で使用する「等価直径」とは、導管の断面積と同じ面積を有する円の直径を意味する。導管が比較的細くて長い場合、例えばその長さの0.01−0.3倍、例えば0.05−0.1倍の直径を有する場合、電極の電気化学活性面の面積は、導管の断面積の好ましくは少なくとも2倍、特に少なくとも10倍、特に少なくとも100倍である。
ポンプの稼働中に、電極上の特定の領域に電荷が移動する割合は、当該領域の電流フラックスに比例し、電極上のいずれかの領域が液体の電解電位に達すると、その領域で電解液の化学変化が直ちに起こる。よって、装置の稼動時間(即ち、ポンプが電解液の化学変化なしに稼動できる時間)は、電極上のいずれかの地点に発生する電流フラックスの最大値によって決まる。従って、電極における電流フラックスの最大値が小さいほど稼働時間は長くなる。更に、電極全体の電流フラックスの変化が小さいほどある特定の幾何学サイズを有する電極に移動可能な電荷の総量は大きくなる。電流フラックスの変動を出来るだけ小さくするため、電極の形状と配置は、電極上の電気的活性面のいずれかの地点の最大電流フラックスが、当該活性面のいずれかの地点の最小電流フラックスの、2倍以下、好ましくは1.2倍となるように決めることが好ましい。本技術分野の当業者であれば、ラプラス方程式を用いて電気活性面のあらゆる地点における電流フラックスを容易に計算できる。
【0024】
一部の装置では、導管は平円盤状の多孔性誘電材料によって充填された短いチューブである。このような装置の電極は略平面状の円盤であることが好ましく、この電極は、導管の両側に、互いに且つ円盤状の多孔性誘電材料に対して平行に配置される。好適には、この電極は、円盤状多孔性誘電材料の少なくとも60%、好ましくは80%を覆う。このような装置の電極上の電流フラックスは比較的大きく、例えば少なくとも0.05mA/cm3、例えば0.2−1mA/cm3とすることができる。
他の装置では、導管は比較的細長い管であって、例えば、円形又は方形(正方形を含む)の断面を有し、多孔性誘電材料で満たされる。このような装置の電極上の電流フラックスは比較的小さく、例えば0.05mA/cm2未満、20μA/cm2未満、又は2μA/cm2未満、例えば1−20μA/cm2である。このような装置の電極は、例えば:
a)円形の断面を有する導管の端部の周囲又は円形の断面を有するビアの端部の周囲に同心状に配置される環状部材であって、導管から出た電流が流れ込む環状部材、
b)スロット状のビアのそれぞれの側に配置される一対のストリップであって、導管を出た電流が流れ込むストリップ対、
c)球形シェルの内側に凹んだ表面の少なくとも一部であって、その中心部が、円形断面を有する導管の端部又は円形断面を有するビアの端部になるように配置され、導管を出た電流が流れ込む球形シェル(球形シェルの内径は、例えば、導管の直径の4−6倍、例えば5倍である)、又は
d)円筒形シェルの内側に凹んだ表面の少なくとも一部であって、その中心部が、ほぼ方形の断面を有する導管の端部又はほぼ方形の断面を有するビアの端部になるように、且つその軸がその断面の長軸と一致するように配置され、導管を出た電流が流れ込む円筒形シェル(円筒形シェルの内径は、例えば、方形の断面の短軸の4−6倍、例えば5倍であり、円筒形シェルの両端部は開放されているか、又は各端部は、導管から伸び、その中心が導管又はビアの方形の断面の一端となるように配置された半球状シェルの、内側に凹んだ表面の少なくとも一部で閉じることができる)
である。
【0025】
望ましいほぼ均等な電界を生成する電極の形状に関する更なる情報に関し、例えば、J. D. JacksonによるClassical Electrodynamics (1975)、並びにR. V. Churchill及びJ. W. BrownによるComplex Variables and Applications (1990)を参照することができ、ここでの参照により、これら文献の内容を本明細書に包含する。
平面的な電極は材料、例えばカーボンエーロゲルを炭素繊維紙に含浸させるか、或いは金属シート、スクリーン、又は多孔質金属フリットにルテニウム酸化物をコーティングすることによって得られるシート材料から分割することができる。立体的な電極は、所望の形状に直接鋳造するか、又はカーボンエーロゲル発泡材等のブロック体から機械加工により製造することができる。
電極へのリード線は、電解液内の電界に影響を与えないように配置及び/又は絶縁することが好ましい。
【0026】
電圧降下
導管全体で降下する印加電圧の割合が大きいほど、所定の流量を得るために必要な印加電圧は小さくなる。従って、装置は、導管全体の電圧降下が、電極間の電圧降下の少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、更に好ましくは85%以上となるように設計することが好ましい。
装置は、導管全体の電圧降下を測定するセンサ、及び電極に供給される電圧を制御するために電源に接続された制御手段を備えることにより、所望の流量の電解液流を確保することができる。
【0027】
導管及び多孔性誘電材料
電極間の導管はどのような形状であってもよい。一部の実施形態において、導管は比較的細長い。また別の実施形態では、そのような導管は太くて短い。導管は、多孔質の誘電媒体を含むことが好ましい。多孔質の誘電媒体は導管から突出するか、導管の端で切り揃えられるか、又は導管内部で終端することができる。しかしながら、導管は「開放」導管、即ち充填材料を含まない導管、又は複数の細い平行な流路から構成される導管でもよい。導管は、複数の多孔性誘電媒体を内部に有することができる。一実施形態では、導管は、異なるゼータ電位(反対の符号を有するゼータ電位が好ましい)を有する多孔性誘電材料を含む二つの区画、例えば二つの比較的細長い二つの区画に分割され、これら二つの区画の各々の一方の端部は電極に隣接し、他方の端部は電極を有しない中央のチャンバに接続される。このような装置の電極に適切な電圧を印加することにより、両方の区画内の電解液を、中央チャンバに向かって、又は中央チャンバから離れる方向へポンピングすることができる。
適切な多孔質誘電媒体は当業者に周知であり、多孔性ポリマー膜又は相分離有機部材等の有機物、又は多孔性焼結セラミック、多孔性無機酸化物(例えばシリカ、アルミナ、又はチタニア)の膜又はエーロゲル、充填シリカビード、微細加工したか、刻印加工したか、又はエンボス加工したアレー、相分離多孔質ガラス(例えばバイコールガラス)、及び相分離セラミック等の無機物とすることができる。好ましくは、多孔性誘電媒体の細孔の直径は、50−500nm、例えば約200nmであり、これによって導管は高い停止圧(このために小さな細孔が好ましい)を有するが、二重層の重畳(細孔が小さすぎると起こる)を殆ど起こさない。多孔性誘電媒体の他の好ましい特徴は、高いゼータ電位と狭い細孔分布である。多孔性誘電媒体の具体例としては、アノポア(Anopore)という商品名で販売されている高純度のアルミナ膜、及び、例えばデュラポア(Durapore)という商品名で販売されている多孔性ポリビニリデンフッ化物(PVDF)膜が挙げられ、これらは、100−200nmの細孔サイズを有し、親水加工が可能であり、且つ−30〜―60mVのゼータ電位を有することができる。
【0028】
電解液は、多孔性誘電媒体の細孔の直径の0.1倍未満のデバイ長を提供するのに十分なイオン強度を有することが好ましい。電解液内のイオンの流動性は、多孔性誘電媒体の電気浸透流動性の好ましくは20倍未満、更に好ましくは3倍未満、最も好ましくは1倍未満である。
多孔性誘電媒体は、正又は負のゼータ電位を有することができる。多孔性誘電媒体のゼータ電位とは反対の符号の電荷を有する多価イオンを含む電解液は避けることが好ましい。多孔性誘電媒体が正のゼータ電位を有する場合、例えば、リン酸塩、ホウ酸塩、クエン酸塩は避けることが好ましく、多孔性誘電媒体が負のゼータ電位を有する場合、バリウムイオン及びカリウムイオンは避けることが好ましい。
【0029】
スペーサ、支持体、リード線、及びアセンブリ
本装置は、装置の構成部材を隔てるために、電解液が通過できる一つ又は複数の内部スペーサを含むことができる。このような内部スペーサの電気抵抗及び流体抵抗は、好ましくは導管の電気抵抗及び流体抵抗よりも有意に小さい。スペーサは、通常、大きな細孔を有する誘電材料、例えば発泡ポリプロピレン、又はアルリル性ポリマーからなる。
本装置はまた、使用中の装置の屈曲を防ぎ、構成部材を所望の位置に保持するため、一つ又は複数の外部支持体を含むことができる。稼働中、電極にはリード線を通して電力が供給されなければならず、これらのリード線は、多くの場合装置と一体化した部品である。リード線は、電解液と接触しないことが好ましく、接触する場合は、好ましくはプラチナ又は他の電気化学的に安定な金属から形成する。
装置の構成部品は、あらゆる方法で相互に固定することができる。例えば、構成部品を積層してチップ様アセンブリを形成することができる。これは、例えば、本出願人により2002年7月17日に出願された、Paul, Neyer及びRehmを発明者とする米国同時継続出願第10/198223号(文書番号14138)に開示されており、参照により本特許文献の内容全体を本明細書に包含する。
【0030】
動電式ポンプの種類
本ポンプは、直接ポンプとすることができ、この場合唯一の液体は電解液である。直接ポンプは、流路に沿って電解液をポンピングし、電解液は流路内で有用な機能を果たす。直接ポンプは、熱交換流体が電解液として機能する場合に利用可能である。別の構成として、動電式ポンプは間接ポンプとすることができ、この場合、電解液のポンピングによって、ポンプの内部の、電極の電界の影響を受けない部分に熱交換流体の流れが生じる。間接ポンプでは、熱交換流体は、電解液としては機能しない作動流体である。
間接ポンプの一形態において、装置は、電極の電解の影響を受けない第二の導管を含み、この導管は、開放端、又は開放可能な端部を有する。使用の際、第二の導管は電解液で満たされ、第二の導管の開放端は熱交換流体と接触した状態に置かれ、装置を動作させることにより、熱交換流体が第二の導管に引き込まれる。電解液の流れの向きを逆転させることにより、熱交換流体が第二の導管から排出される。
【0031】
間接ポンプの別の形態では、電解液のポンピングによって、電解液を含むチャンバの容積が変化し、従って隣接するチャンバの容積が変化することにより、熱交換流体が、隣接チャンバに引き込まれるか、又は隣接チャンバから排出される。例えば、前記二つのチャンバは、撓み(例えば蛇腹)及び/又は伸び(例えば柔軟な隔膜)によって形状を変え、及び/又はピストン/シリンダーの組み合わせを備える部材をその中間位置に共有することができる。この中間部材は、例えば、金属化できる多層の重合フィルムから作成することができる。電解液を含み、且つ容積が可変であるチャンバは、電極又は別のチャンバを有するチャンバとすることができ、例えば、上述のように、内部で導管の二つの区域が中央のチャンバと連絡する、前述のような装置内の中央チャンバとすることができる。
流量を増やすため、複数のポンプを並列に接続するか、又は圧力を増大させるために複数のポンプを直列に接続することができる。これは、例えば米国特許第6719535号に記載されており、ここで参照することによりこの特許文献の内容全体を本明細書に包含する。上述のように、本動電式ポンプは周期モードで動作することができる。周期モードにおいて、動電式ポンプは、最初に、第一の期間に亘って運転され、この間に電解液は導管を一方向に流れる。その後、電源の極性が反転されて、動電式ポンプは第二の期間に亘って運転され、この間に電解液は反対方向に流れる。各周期の期間は十分に短いので、電解液に実質的な化学変化が生じない。
【0032】
特定の好適な実施形態を引用して本発明を詳細に説明したが、他の実施形態も可能である。従って、請求の範囲の概念及び範囲は、本明細書に記載の好適な実施形態の記述に限定されるものではない。請求項、要約及び図面を含め、本明細書に開示された全ての特徴、及び開示されたあらゆる方法又はプロセスの全てのステップは、少なくとも一部の特徴及び/又はステップが互いに矛盾する場合を除き、あらゆる組み合わせに組み合わせることができる。請求項、要約及び図面を含め、本明細書に開示された全ての特徴は、特に断らない限り、同一、同等、或いは類似の目的に適合する別の特徴で置換できる。従って、特に断らない限り、開示された全ての特徴は、それと等価又は同様な特徴の一般的特徴群の一実施例に過ぎない。
特定の機能を実施するための「手段」、又は特定の機能を実施するための「ステップ」と明記していない請求項に含まれるあらゆる要素は、米国特許法第112条に規定する「手段」又は「ステップ」条項と解釈すべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】単一の一次熱交換器と単一の二次熱交換器を使用する、本発明の第一の実施形態による熱伝導システムの概略図である。
【図2】二つの二次熱交換器を使用する、本発明の第二の実施形態による熱伝導システムの概略図である。
【図3】二つの一次熱交換器と四つの二次熱交換器を使用する、本発明の第三の実施形態による熱伝導システムの概略図である。
【図4】本発明の第四の実施形態による熱伝導システムの概略図である。
【図5】本発明の第五の実施形態による熱伝導システムの概略図である。
【図6】本発明に使用可能な第一の熱交換器の側面図である。
【図7】図6に示す熱交換器のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】本発明に使用可能な第二の熱交換器の側面図である。
【図9】図8に示す熱交換器のIX−IX線に沿った断面図である。
【図10】本発明に使用可能な第三の熱交換器の側面図である。
【図11】図10に示す熱交換器のXI−XI線沿った断面図である。
【図12】本発明に使用可能な動電式ポンプの概略図である。
【発明の開示】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年4月19日に出願された米国特許出願第10/827799号(表題「Electrokinetic Pump Driven Heat Transfer System」)の優先権を主張する。前記米国特許出願は、2003年10月17日に出願された国際出願PCT/US03/32895の関連出願であり、前記国際出願は2002年12月17日に出願された米国特許出願第10/322083号の一部継続出願であり、この出願は2002年10月18日に出願された米国特許出願第10/273723号の一部継続出願である。ここで参照したことにより、これら出願の開示内容全体を、あらゆる目的のために本明細書に包含する。
発明の背景
【0002】
本発明は熱伝導システムに関し、具体的には動電式ポンプを使用した熱伝導システムに関する。
通常、熱削減システムは、例えば、コンピュータプロセッサなどの温度の上昇した熱源から熱を除去し、周囲温度のような低い温度のヒートシンクに熱源の熱を放出する。このような熱伝導プロセスにより、熱源は、ヒートシンク温度をやや上回る一定の温度に維持される。最新の電子システムは、通常、フィン付きヒートシンクを熱源に接触させ、ヒートシンクに空気を流すことによって過度の熱を除去する。今日のコンピュータの場合、さらに高速のプロセッサ及び高出力のエレクトロニクスによって、以前より多量の熱が生成され、コンピュータ筐体内部の空気の温度は、周囲温度より有意に上昇する。これは、シンク温度(即ち、筐体内の空気温度)を上昇させ、よって筐体内部の部品の動作温度を上昇させる。
【0003】
非常に薄いラップトップコンピュータなどの超小型電子機器の開発により、筐体内において空気が流れることのできるスペースが殆ど無くなり、よって部品を十分に冷却するのに必要なエアフローを達成することが困難になった。従って、電子システム及び他の部品の冷却方式を改良する必要がある。改良は、エレクトロニクス装置を通る空気の移動によって行うのではなく、熱源から熱を除去し、その熱を、低温の周囲空気と熱交換できる筐体に装着された外部交換器、例えばフィンに移動させることが好ましい。
熱交換の補助となる熱パイプの使用が知られている。通常、熱パイプは、部分的に液体で満たされ、密封された導管であり、その内壁に沿ってウィッキング構造を有している。熱パイプの一方の端部は熱せられ、他方の端部は冷却される。加熱された端部から液体が気化し、発生した蒸気は熱パイプの芯に沿って冷却端に流れる。導管の内壁のウィッキングにより、液体が加熱端に再供給される。熱パイプは完全に密封されており、機械的可動部分を有しないので魅力的であるが、熱束容量が限定されること、方向の影響を受け易いこと、剛性の導管を必要とすること等の制約がある。加えて、ウィック構造は高価であり、製造上信頼性に乏しい。
【0004】
熱パイプに知られた代替品は、キャピラリポンプループであり、これは脈動型熱パイプ又は「PHP」とも呼ばれる。脈動型熱パイプは、米国特許第4921041号及び同第5219020号に記載されている。脈動型熱パイプは、従来の熱パイプと類似の方式で使用される。脈動型熱パイプは密封されて部分的に液体で満たされた導管である。内部にウィック構造を使用しない点で、脈動型熱パイプは従来型の熱パイプと異なる。導管内の液体は、液体−蒸気のスラッグとして自然な状態で分布する。使用時、脈動型熱パイプの一又は複数の部分が加熱され、他の一又は複数の部分は冷却される。加熱された箇所における蒸気の発生により、局部的に圧力が増加し、これにより導管に沿って液体スラッグの移動が生じる。この移動により、液体は加熱端から冷却端に移動する。しかしながら、熱パイプは、最大熱束に限界を有し、方向及び導管内部の液量に強く影響される。
更に、これに代わる物として、流体循環冷却方式も使用可能である。しかしながら、液体流動システムは機械式ポンプを必要とするので、大きさ、重量、雑音、及び振動が加わり、早期故障及び/又は漏れを起こし易い。よって、熱源から外部の熱交換器に熱を移動できる冷却システムの改良が必要である。
【0005】
発明の概要
従って、本発明の目的は、熱源から熱を受け取る一次熱交換器、熱をヒートシンクに放出する二次熱交換器、一次熱交換器と二次熱交換器とをつなぐ導管、及び導管を介して一次熱交換器と二次熱交換器の間で熱交換流体をポンピングする動電式ポンプを備えた熱伝達システムである。本発明は更に、熱交換器及び導管内部の熱交換流体を含むことができる。
動電式ポンプをコントローラに接続することが可能である。コントローラは、動電式ポンプを周期モードで動作させることができる。本発明の別の実施形態では、熱伝導システムは複数の二次熱交換器を備える。本発明のまた別の実施形態では、熱伝導システムは複数の一次熱交換器と複数の二次熱交換器とを備える。複数の一次熱交換器と複数の二次熱交換器を、一つの流路に沿って直列に接続し、温度的に並列に動作させることができる。複数の一次熱交換器と複数の二次熱交換器は、二つ以上の流路に沿って並列に接続することもできる。
【0006】
熱交換流体は、動電式ポンプ用に許容可能な電解液として機能することができる。或いは、熱交換流体は、動電式ポンプ内で使用される電解液から、柔軟な部材を用いて分離される。任意選択で、熱交換流体は水である。熱伝導システムは、単相の熱交換流体又は多相の熱交換流体を使用することができる。
本発明はまた、本明細書に開示する熱交換システムを用いた熱除去法を目的とする。本熱除去法では、熱源と熱の伝達を行えるように一次熱交換器を配置し、ヒートシンクと熱の伝達を行えるように二次熱交換器を配置する。ポンプを動作させ、導管を介して一次熱交換器内の熱交換流体を二次熱交換器に移動させ、導管を介して二次熱交換器内の熱交換流体を一次熱交換器に移動させる。ポンプは、熱交換流体を一方向に移動させるように動作させることができる。或いは、周期モードでポンプを動作させることができる。
【0007】
添付図面を参照することにより、本発明に対する理解を深めることができる。
詳細な説明
本明細書で使用する「一次熱交換器」という用語は、熱源との熱の伝達を行う熱交換器を意味する。本明細書で使用する「二次熱交換器」という用語は、ヒートシンクと熱の伝達を行う熱交換器を意味する。本明細書で使用する「連結」という用語は、対象物に機能的に接続されることを意味し、「結合」された対象物同士が直接物理的に接触することは必須でない。
【実施例】
【0008】
本発明の第一の実施形態は、熱伝導システム100を目的とする。図1に示すように、熱伝導システム100は、熱源104と熱の伝導を行う一次熱交換器102、及びヒートシンク108と熱の伝導を行う二次熱交換器106を備えている。導管110は、一次熱交換器102と二次熱交換器106とを連結する。熱交換流体は、コントローラ114に連結された動電式ポンプ112によって、導管110を介してポンピングされる。熱交換流体として利用できる液体には多くの種類が存在するが、熱伝導特性の見地から、及び漏れが生じる場合、更にはシステムを最終的に破棄する際に、有毒な液体を避けるという見地から、好ましい流体は水である。
【0009】
図2は、本発明の第二の実施形態による熱伝導システム200の概略図である。図2に示すように、熱は一次熱交換器202で受け取られる。一次熱交換器202によって受け取られた熱は、二つの導管204、206を通る熱交換流体の液体運動によって、一次熱交換器202から二次熱交換器208、210へと運ばれ、そこで放出される。この液体運動は、二つのポンプ用導管214、216を介して二次熱交換器208、210に接続された動電式ポンプ212によって行われる。
ポンプ212は、液体を一方向にポンピングすることができる。或いは、ポンプは周期モードで動作することができ、このモードにおいて熱交換流体は、一つの周期の半分で一方の二次熱交換器に向かい、別の半周期で他方の二次熱交換器に向かう。システム200は、熱交換流体が液体の状態に保たれる単相モードで動作することができる。或いは、システム200は、液体として一次熱交換器を通過する熱交換流体の一部が気化してガスとなり、気体として二次熱交換器を通過する熱交換流体の一部が凝縮して液化する、多相モードで動作することができる。
熱交換流体として水を使用した単相運転の場合、ヒートシンク温度より温度が20℃高い液体により200ワットの熱を運ぶためには、約143mL/分の流量が必要であり、これにより必要なポンプの大きさが決まる。或いは、水の一部を沸騰させることが可能であれば、システムは水の大きな気化熱を利用することができる。この場合、熱伝達ループは排水され、部分的に水で満たされる(即ち、システムの一部は水を、他の部分は水蒸気を含む)。一次交換器において50%の気化が起こると、ヒートシンク温度よりも20℃温度が高い液体で200ワットの熱を運ぶには、約9.4mL/分の流量を要する。さらに大量の液体が気化すると、流量はもっと少なくて済む。例えば、75%の気化が起こった場合、ヒートシンク温度よりも20℃温度の高い液体で200ワットの熱を運ぶには、約6.4mL/分の流量を要する。しかしながら、熱を受け取る一次熱交換器には、常にいくらかの液体が残っていることが望ましい。
【0010】
図3は、本発明の第三の実施形態による熱伝導システム300の概略図である。図3に示すように、二つの一次熱交換器302及び304は、熱源から熱を受け取る。受け取られた熱は、四つの二次熱交換器306、308、310、312を介して放出される。二次熱交換器のうちの二つは、それぞれ導管314に沿って一つの一次熱交換器に直列に連結されている。二次熱交換器のうちの二つは直列に連結されている。一つの動電式ポンプ316が、残りの二つの二次熱交換器を結ぶ導管314に連結されている。動電式ポンプ316は、導管314内の熱交換流体に流体流を起こす。
図3に示すように、全ての熱交換器一つの流路に沿って直列に接続されており、熱的に並列に動作する。ここで使用する「熱的に並列に動作する」という表現は、熱交換流体の複数の箇所が、同時に特定の熱効果の影響を受けることを意味する。例えば、熱交換流体が、一次熱交換器302から二次熱交換器310へ反時計周りに移動すると、熱交換流体も一次熱交換器304から二次熱交換器308に移動する。従って、第三の実施形態によるシステムは、所定の熱量を除去するために、第二の実施形態のシステムで必要とする流量の約半分の流量を必要とし、但しさらに大きなポンプ圧を要する。図3に示す概念は拡張可能であり、直列接続される一次熱交換器と二次熱交換器の数を増やすことができる。この方法論により、必要とされる流量を減らすことができる。基本的に、N個の一次交換器と、(N+1)個の二次交換器を直列に接続すると、所定の熱量を移動するのに必要な流量がN分の1に低減される。
【0011】
図4に、本発明の第四の実施形態による熱伝導システム400を示す。本システムは、5個の一次熱交換器402、404、406、408、410と、6個の二次熱交換器412、414、416、418、420、422を有し、これらの熱交換器は一つの流路に沿って直列に接続されて熱的に並列に機能し、単一の動電式ポンプ424によって駆動される。図4に示すように、一次熱交換器は熱源426と熱の伝導を行い、二次熱交換器はヒートシンク428と熱の伝導を行う。ポンプ424は、全ての一次熱交換器と二次熱交換器と流体連絡する導管430を通って流れる熱交換流体を供給する。
熱交換流体は、ポンプ424の出口から、ヒートシンク428と熱の伝導を行う一番目の二次熱交換器412を通り、熱源426と熱の伝導を行う一次熱交換器402に運ばれる。次に、熱交換流体は2番目の二次熱交換器414に運ばれ、次いで2番目の一次熱交換器404、3番目の二次熱交換器416、3番目の一次熱交換器406、4番目の二次熱交換器418、4番目の一次熱交換器408、5番目の二次熱交換器420、5番目の一次熱交換器410を経由して、最後に6番目の二次熱交換器422に運ばれる。熱交換流体は、6番目の二次熱交換器422からポンピングによりポンプ424に戻る。ポンプの別の周期では、流れの方向が逆になる。
【0012】
多相運転では、二次熱交換器は液体で満たされ、一次熱交換器は液体と蒸気の混合物で満たされる。1回のポンプストロークによって、二次熱交換器から液体が一次熱交換器に押し出され、そこで液体の一部が気化する。同時に、一次熱交換器からの蒸気が二次熱交換器内に引き込まれ、そこで液化する。ポンプのストローク方向が逆になると、二次熱交換器からの液体は一次熱交換器に引き込まれ、一次熱交換器からの蒸気は二次熱交換器に流れ込む。
好ましくは、ポンプに直接接続されている二次熱交換器の内部容積は、ポンプが1ストローク当たりに移動させる液体の量よりも大きい。これにより、蒸気のポンプ内への流入が防止される。加えて、ポンプが1ストローク当たりに移動させる液体の量は、一次熱交換器を満たすのに十分であることが望ましい。従って、好適には、ポンプの1ストローク当たりの容積は、一次熱交換器の容積と、当該一次熱交換器と次の上流の二次熱交換器とをつなぐ導管の容積の合計に、略、等しい。
図4では、ポンプ424に最も近い二次熱交換器412、422は、他の二次熱交換器と同じとすることができる。或いは、ポンプに最も近い二次熱交換器412、422は、蒸気のポンプへの流入を避けるために十分な容量を有する。任意選択で、ポンプに最も近い二次熱交換器412、422の容積は、ポンプの1ストローク当たりの供給量の少なくとも2倍である。熱交換器は本分野で既知のあらゆる種類のものを使用できる。加えて、一次熱交換器は二次熱交換器と同一の種類である必要はない。
【0013】
図5は、本発明の第五の実施形態による熱伝導システム500の概略図であり、本実施形態では、熱交換器は二つの流路に沿って並列接続されており、熱的に並列に動作する。図5に示すように、本システムは、6個の一次熱交換器502、504、506、508、510、512と、7個の二次熱交換器514、516、518、520、522、524、526を備えている。一次熱交換器は熱源528と熱の伝導を行い、二次熱交換器はヒートシンク530と熱の伝導を行う。全ての熱交換器は、導管534を介して、互いに且つ動電式ポンプ532に接続されている。ポンプ532は、入力と出力のために二つのポートを備えている。ポンプ532の第一のポートは、一番目の二次熱交換器514と7番目の二次熱交換器526の両方に連結している。一番目の二次熱交換器は、一番目の一次熱交換器502に連結し、次いで流路は2番目の二次熱交換器516、2番目の一次熱交換器504、3番目の二次熱交換器518、及び3番目の一次熱交換器506に伸びている。7番目の二次熱交換器526は、6番目の一次熱交換器512に連結し、その流路は次いで6番目の二次熱交換器524、5番目の一次熱交換器510、5番目の二次熱交換器522、及び4番目の一次熱交換器508に伸びている。
3番目の一次熱交換器506と4番目の一次熱交換器508は、共通の導管を介して4番目の二次熱交換器520に連結する。4番目の二次熱交換器520は、ポンプ532の第二のポートに連結している。従って、ポンプは、図5に示すように、複数の流路に沿って一つ又は複数の熱交換器に連結することができ、図5の場合、このような直列接続が、二つの流路に沿って並列に接続されている。直列接続されたN個の一次熱交換器を使用する場合、ポンプは、直列接続された熱交換器によってポンプに圧力低下が発生した場合の熱負荷要求を満たす流量を必要とする。同じ数の熱交換器を複数の流路に並列接続することができ、この場合ポンプに印加される逆圧が減少する。或いは、同じ数の熱交換器を複数の流路に並列に接続し、使用可能なポンプ圧を利用して熱交換器一つ当たりの大きな圧力低下を用いることにより、更に効率的で小型の熱交換器を提供することができる。任意選択的に、複数の動電式ポンプを使用して熱交換流体をポンピングすることができる。
【0014】
本発明への使用に適した熱交換器
熱交換器には複数の異なる設計が知られている。本発明に使用可能な熱交換器は、マイクロチャンネル熱交換器、又は本分野において既知の他のあらゆる形態の熱交換器とすることができる。既知の熱交換器、及び以下に詳述する熱交換器は、熱を受け取る手段として、及び熱を排出する手段として、本発明に使用可能である。
図6及び図7は、本発明に使用可能な第一の種類の熱交換器600を示す。図6及び図7に示すように、熱は、導管604を含む本体部602との接触により伝達される。導管604は、第一のポート606及び第二のポート608を有する。導管604は熱交換流体を運ぶ。任意選択的に、熱交換器の熱伝達抵抗を減少させるため、導管604を本体部602の内部で蛇行させる。
【0015】
図8及び図9は、本発明に使用可能な第二の種類の熱交換器700を示す。図8及び図9に示すように、熱は、導管704を含む本体部702との接触により伝達される。導管704は、第一のポート706及び第二のポート708を有する。導管704は熱交換流体を運ぶ。本体部702の内壁の一部にはウィック構造710が取り付けられており、この構造は、本体部の内壁に沿って液体を伝える。ウィック構造710は、多孔性金属、スクリーン、溝、又は本分野で既知の他のあらゆるウィック構造とすることができる。液体はウィック構造を自然に満たし、蒸気を生成することなく導管704から排出される。
図10及び図11は、本発明に使用可能な第三の種類の熱交換器800を示す。図10及び図11に示すように、熱は本体部802に伝達される。本体部は導管804を含む。導管804は、第一のポート806及び第二のポート808を有する。導管804は熱交換流体を運ぶ。導管804は、本体部802の内部で、平行な多数の流路810に分岐する。この種類の熱交換器の一形式は、マイクロチャンネル熱交換器である。このような熱交換器は、D. B. Tuckerman及びR. F. W. Peaseによる"High performance heat sinking for VLSI" (IEEE Electron Dev. Letts., vol. EDL-2, pp. 126-129 (1981))に記載されており、参照により本文献の内容全体を本明細書に包含する。
【0016】
本発明への使用に適した動電式ポンプ
図12に、例示的動電式ポンプ900を示す。動電式ポンプ900は、第一の電極902、第二の電極904、及び導管906を備えている。導管906の第一端部908は、第一の電極902に隣接し(即ち、接触しているか又は離れている)、第一の貯蔵部910と流体連絡している。第一貯蔵部910は、動電式ポンプの第一のポート912とつながっている。導管906の第二端部914は、第二の電極904に隣接し(即ち、接触しているか又は離れている)第二の貯蔵部916と流体連絡している。第二の貯蔵部916は、動電式ポンプの第二のポート918と流体連絡している。従来型の動電式ポンプおいて、導管906は多孔質の誘電性媒体919で充填されている。二つの電極902、904は、リード線922、924を介して電源920に接続されている。
適切な電解溶液で導管を満たし、電極に適切な電位を印加すると、導管内に電解溶液の電気浸透流が発生する。電解溶液の正味流量は、静水圧等の、流れに影響を及ぼす他の要因を加味した電気浸透流である。
「電解質」という用語は、電解質そのもの(例えば、イオン塩などの化合物)と、これらの化合物を溶解させた溶液とを意味し、「化学変化」という用語は、これらの化合物又は溶液、或いはそれらの両方に関連する化学反応を指す。電解液の化学変化によって生成される反応生成物は、排出を要するガス、及び/又は電解液に溶け込み、その組成、例えばpHなどを変化させる電気化学生成物であるため、好ましくない。
【0017】
電極の数
本発明に使用可能な動電式ポンプは、多くの場合、電極を二つだけ含む。しかしながら、動電式ポンプは、三つ以上の電極を使用することもできる。例えば、三つの電極を使用する場合、動作の一期間ではこの内の一対の電極が動作し、別の期間では他の一対が動作する。例えば、導電式ポンプには、互いに逆の極性のゼータ電位を有する多孔質の誘電性媒体を有する三つ以上の電極を、電極間に交互に配置することができる。装置内で使用する電極は、同じでも異なってもよい。一対の容量性電極の一方が、非容量性の材料からなる場合、非容量性電極において電解質の化学変化が起こるが、容量性電極においては起こらない。
【0018】
容量性電極の材料
一対の容量性電極の少なくとも一方の電極は、容量性材料、即ち二重層キャパシタンス特性、或いは擬似キャパシタンス特性を示す材料から構成される。各電極は容量性の材料を含むことが好ましい。一対の容量性電極の各電極は、電極間の容量の少なくとも30%を生成することが好ましい。
従来型の二重層容量性材料の容量は、電極と電解液の界面の電気化学的二重層に電気エネルギーを貯える能力から得られる。擬似容量性材料は、やはり電気エネルギーを貯えることができるが、別の機構によってそれを行う材料である。一つの電極、又は一対の電極は、二重層材料と擬似容量性材料の両方を備えることができる。
【0019】
電極に好ましい二重層容量性材料は、幾何学的表面積に対して非常に大きな微視的表面積を有する炭素(カーボン)である。カーボンエーロゲルを含浸したカーボン紙は特に好ましい。使用可能な他の炭素材料には、カーボンエーロゲル、例えば、モノリシックカーボンエーロゲル発泡材、カーボン織布、炭素繊維(例えば、熱分解されたポリアクリロニトリル繊維及び熱分解されたセルロースファイバー)、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、拡散カーボン粒子ポリマー、及びカーボン粒子のフリットが含まれる。
また、広い微視的表面積を有する他の導電性材料が使用可能であり、それらは例えば、焼結金属、ナノポーラス金、穿孔された金属板、多孔質フリット、多孔質の膜、デリビブラシ等のナノポーラス金属類、及び例えば表面の粗加工、エッチング、又は白金合金化により表面積の拡大処理を行った金属である。
【0020】
一部の擬似容量性材料は、水及び他の多くの溶媒に比較的溶けにくい金属酸化物であり、これらの金属は溶媒中で異なる酸化状態、例えば、コバルト酸化物、マンガン酸化物、イリジウム酸化物、バナジウム酸化物及びルテニウム酸化物を呈する。このような材料を含む電極の稼働中、電極の固体相において、特定のイオン、例えばルテニウム酸化物の場合H+イオンの吸収・放出により、レドックス反応が起こる。他の擬似容量性材料は、溶解性イオン、例えばリチウムイオン(Li+)を挿入(「intercalation」)することができる固体材料材か、又は溶解性イオンを取り出す(「de-intercalation」)ことができる固体材料であり、例えば、窒化マンガン、チタニウムモリブデン二硫化物、炭素、及びポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の導電性ポリマーである。一部の擬似容量性材料は水と反応するので、非水性の電解液を使用しなければならない。このような材料を含む電極においては、電極の固体相においてレドックス反応が起こり、この結果イオンが放出又は吸収される。電極が擬似容量性材料からなる場合、以下に注意する必要がある:
a)特定の擬似容量性材料に必要なイオンを供給し、望ましくない化学反応を防ぐため、電解液と電極の相性を考慮する。
b)イオン濃度の増加(可逆的な電極反応を維持するため)と、イオン濃度の減少(稼動時間を延ばす目的で電流を減らすため)との間のバランスを維持する。
【0021】
好適には、電極材料は電解液に溶解せず、電解液の導電性よりも有意に大きい導電性、少なくとも電解液の100倍の導電性を有する。例えば、カーボンエーロゲル発泡材の導電性は、約100mho/cmであり、代表的な電解液である5mMのNaClの導電性は約0.5x10−3mho/cmである。電極は好ましくは洗浄し、必要に応じて使用前に浸出処理する。多孔質電極は、このような処理の後に脱ガス処理をすることが好ましい。
任意選択的に、ポンプの運転中に電解液を電極に流す。電極に電解液を流すには、電極の幾何学的表面積の少なくとも25%、好ましくは50%が開放されていること、及び/又は電極材料の透過性が、導管内の多孔質導電媒体の透過性の少なくとも10倍、特に少なくとも100倍であることが望ましい。このような電極は、電極に電解液を流す必要がない場合も使用できる。多くの場合、電極が十分な強度を有するように、電極の厚さは少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも1mm、特に少なくとも2mmである。
【0022】
導管を流れる電解液の速度は一定又は可変とすることができる。電極に印加される電力は、電圧又は電流に対して制御することができるか、或いはそれらのうち一方に対して制御する場合と両方に対して制御する場合を切り替えることができる。流量は、導管の電位差に依存し、この電位差は、容量性電極が充電されるにつれて減少し、特に印加電圧が電気分解電圧に到達した時に急落する。必要に応じて、印加電圧を上げてこの減少分を補償することができる。これは例えば、定電流電源を用いることにより、又は導管内の多孔性誘電媒体の端部近傍に設けられたセンサによって導管の電位差をモニタリングし(但し、好ましくは電極と多孔性誘電媒体との間の直接的な電界路の外側で)、電源を適切に調整することによって行うことができる。所望の熱伝導率、温度、流量、圧力を生成するため、電力は、温度又は別の変数に応じて、例えばフィードバックループ等を介した測定デバイスからの信号に応じて、逐次切り換えながら、或いは追加しながら調整することができる。
後述するように、ポンプが周期モード(電源の極性が時間と共に変化する)で動作する場合、各周期において供給される全電荷が同じとなるように、周期の継続時間と電源を制御することにより、電極が時間平均で正電位又は負電位を取ることを確実に無くすことができる。定電流電源を使用する場合、各周期の電流と継続時間の積は同一であることが好ましい。定電圧電源を使用する場合、各周期の電流を継続時間で積分した値は同一であることが好ましい。
【0023】
電極の形状、大きさ及び配置、並びに電極の電流フラックス
電極の容量は、その組成と、その電気化学的活性面の大きさ及び形状によって決まる。導管が比較的太くて短い場合、例えばその長さの1−30倍、例えば5−20倍の等価直径を有する場合、電極の電気化学的活性面の面積は、導管の断面積の好ましくは0.6−1.1倍、例えば0.8−1.0倍である。本明細書で使用する「等価直径」とは、導管の断面積と同じ面積を有する円の直径を意味する。導管が比較的細くて長い場合、例えばその長さの0.01−0.3倍、例えば0.05−0.1倍の直径を有する場合、電極の電気化学活性面の面積は、導管の断面積の好ましくは少なくとも2倍、特に少なくとも10倍、特に少なくとも100倍である。
ポンプの稼働中に、電極上の特定の領域に電荷が移動する割合は、当該領域の電流フラックスに比例し、電極上のいずれかの領域が液体の電解電位に達すると、その領域で電解液の化学変化が直ちに起こる。よって、装置の稼動時間(即ち、ポンプが電解液の化学変化なしに稼動できる時間)は、電極上のいずれかの地点に発生する電流フラックスの最大値によって決まる。従って、電極における電流フラックスの最大値が小さいほど稼働時間は長くなる。更に、電極全体の電流フラックスの変化が小さいほどある特定の幾何学サイズを有する電極に移動可能な電荷の総量は大きくなる。電流フラックスの変動を出来るだけ小さくするため、電極の形状と配置は、電極上の電気的活性面のいずれかの地点の最大電流フラックスが、当該活性面のいずれかの地点の最小電流フラックスの、2倍以下、好ましくは1.2倍となるように決めることが好ましい。本技術分野の当業者であれば、ラプラス方程式を用いて電気活性面のあらゆる地点における電流フラックスを容易に計算できる。
【0024】
一部の装置では、導管は平円盤状の多孔性誘電材料によって充填された短いチューブである。このような装置の電極は略平面状の円盤であることが好ましく、この電極は、導管の両側に、互いに且つ円盤状の多孔性誘電材料に対して平行に配置される。好適には、この電極は、円盤状多孔性誘電材料の少なくとも60%、好ましくは80%を覆う。このような装置の電極上の電流フラックスは比較的大きく、例えば少なくとも0.05mA/cm3、例えば0.2−1mA/cm3とすることができる。
他の装置では、導管は比較的細長い管であって、例えば、円形又は方形(正方形を含む)の断面を有し、多孔性誘電材料で満たされる。このような装置の電極上の電流フラックスは比較的小さく、例えば0.05mA/cm2未満、20μA/cm2未満、又は2μA/cm2未満、例えば1−20μA/cm2である。このような装置の電極は、例えば:
a)円形の断面を有する導管の端部の周囲又は円形の断面を有するビアの端部の周囲に同心状に配置される環状部材であって、導管から出た電流が流れ込む環状部材、
b)スロット状のビアのそれぞれの側に配置される一対のストリップであって、導管を出た電流が流れ込むストリップ対、
c)球形シェルの内側に凹んだ表面の少なくとも一部であって、その中心部が、円形断面を有する導管の端部又は円形断面を有するビアの端部になるように配置され、導管を出た電流が流れ込む球形シェル(球形シェルの内径は、例えば、導管の直径の4−6倍、例えば5倍である)、又は
d)円筒形シェルの内側に凹んだ表面の少なくとも一部であって、その中心部が、ほぼ方形の断面を有する導管の端部又はほぼ方形の断面を有するビアの端部になるように、且つその軸がその断面の長軸と一致するように配置され、導管を出た電流が流れ込む円筒形シェル(円筒形シェルの内径は、例えば、方形の断面の短軸の4−6倍、例えば5倍であり、円筒形シェルの両端部は開放されているか、又は各端部は、導管から伸び、その中心が導管又はビアの方形の断面の一端となるように配置された半球状シェルの、内側に凹んだ表面の少なくとも一部で閉じることができる)
である。
【0025】
望ましいほぼ均等な電界を生成する電極の形状に関する更なる情報に関し、例えば、J. D. JacksonによるClassical Electrodynamics (1975)、並びにR. V. Churchill及びJ. W. BrownによるComplex Variables and Applications (1990)を参照することができ、ここでの参照により、これら文献の内容を本明細書に包含する。
平面的な電極は材料、例えばカーボンエーロゲルを炭素繊維紙に含浸させるか、或いは金属シート、スクリーン、又は多孔質金属フリットにルテニウム酸化物をコーティングすることによって得られるシート材料から分割することができる。立体的な電極は、所望の形状に直接鋳造するか、又はカーボンエーロゲル発泡材等のブロック体から機械加工により製造することができる。
電極へのリード線は、電解液内の電界に影響を与えないように配置及び/又は絶縁することが好ましい。
【0026】
電圧降下
導管全体で降下する印加電圧の割合が大きいほど、所定の流量を得るために必要な印加電圧は小さくなる。従って、装置は、導管全体の電圧降下が、電極間の電圧降下の少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、更に好ましくは85%以上となるように設計することが好ましい。
装置は、導管全体の電圧降下を測定するセンサ、及び電極に供給される電圧を制御するために電源に接続された制御手段を備えることにより、所望の流量の電解液流を確保することができる。
【0027】
導管及び多孔性誘電材料
電極間の導管はどのような形状であってもよい。一部の実施形態において、導管は比較的細長い。また別の実施形態では、そのような導管は太くて短い。導管は、多孔質の誘電媒体を含むことが好ましい。多孔質の誘電媒体は導管から突出するか、導管の端で切り揃えられるか、又は導管内部で終端することができる。しかしながら、導管は「開放」導管、即ち充填材料を含まない導管、又は複数の細い平行な流路から構成される導管でもよい。導管は、複数の多孔性誘電媒体を内部に有することができる。一実施形態では、導管は、異なるゼータ電位(反対の符号を有するゼータ電位が好ましい)を有する多孔性誘電材料を含む二つの区画、例えば二つの比較的細長い二つの区画に分割され、これら二つの区画の各々の一方の端部は電極に隣接し、他方の端部は電極を有しない中央のチャンバに接続される。このような装置の電極に適切な電圧を印加することにより、両方の区画内の電解液を、中央チャンバに向かって、又は中央チャンバから離れる方向へポンピングすることができる。
適切な多孔質誘電媒体は当業者に周知であり、多孔性ポリマー膜又は相分離有機部材等の有機物、又は多孔性焼結セラミック、多孔性無機酸化物(例えばシリカ、アルミナ、又はチタニア)の膜又はエーロゲル、充填シリカビード、微細加工したか、刻印加工したか、又はエンボス加工したアレー、相分離多孔質ガラス(例えばバイコールガラス)、及び相分離セラミック等の無機物とすることができる。好ましくは、多孔性誘電媒体の細孔の直径は、50−500nm、例えば約200nmであり、これによって導管は高い停止圧(このために小さな細孔が好ましい)を有するが、二重層の重畳(細孔が小さすぎると起こる)を殆ど起こさない。多孔性誘電媒体の他の好ましい特徴は、高いゼータ電位と狭い細孔分布である。多孔性誘電媒体の具体例としては、アノポア(Anopore)という商品名で販売されている高純度のアルミナ膜、及び、例えばデュラポア(Durapore)という商品名で販売されている多孔性ポリビニリデンフッ化物(PVDF)膜が挙げられ、これらは、100−200nmの細孔サイズを有し、親水加工が可能であり、且つ−30〜―60mVのゼータ電位を有することができる。
【0028】
電解液は、多孔性誘電媒体の細孔の直径の0.1倍未満のデバイ長を提供するのに十分なイオン強度を有することが好ましい。電解液内のイオンの流動性は、多孔性誘電媒体の電気浸透流動性の好ましくは20倍未満、更に好ましくは3倍未満、最も好ましくは1倍未満である。
多孔性誘電媒体は、正又は負のゼータ電位を有することができる。多孔性誘電媒体のゼータ電位とは反対の符号の電荷を有する多価イオンを含む電解液は避けることが好ましい。多孔性誘電媒体が正のゼータ電位を有する場合、例えば、リン酸塩、ホウ酸塩、クエン酸塩は避けることが好ましく、多孔性誘電媒体が負のゼータ電位を有する場合、バリウムイオン及びカリウムイオンは避けることが好ましい。
【0029】
スペーサ、支持体、リード線、及びアセンブリ
本装置は、装置の構成部材を隔てるために、電解液が通過できる一つ又は複数の内部スペーサを含むことができる。このような内部スペーサの電気抵抗及び流体抵抗は、好ましくは導管の電気抵抗及び流体抵抗よりも有意に小さい。スペーサは、通常、大きな細孔を有する誘電材料、例えば発泡ポリプロピレン、又はアルリル性ポリマーからなる。
本装置はまた、使用中の装置の屈曲を防ぎ、構成部材を所望の位置に保持するため、一つ又は複数の外部支持体を含むことができる。稼働中、電極にはリード線を通して電力が供給されなければならず、これらのリード線は、多くの場合装置と一体化した部品である。リード線は、電解液と接触しないことが好ましく、接触する場合は、好ましくはプラチナ又は他の電気化学的に安定な金属から形成する。
装置の構成部品は、あらゆる方法で相互に固定することができる。例えば、構成部品を積層してチップ様アセンブリを形成することができる。これは、例えば、本出願人により2002年7月17日に出願された、Paul, Neyer及びRehmを発明者とする米国同時継続出願第10/198223号(文書番号14138)に開示されており、参照により本特許文献の内容全体を本明細書に包含する。
【0030】
動電式ポンプの種類
本ポンプは、直接ポンプとすることができ、この場合唯一の液体は電解液である。直接ポンプは、流路に沿って電解液をポンピングし、電解液は流路内で有用な機能を果たす。直接ポンプは、熱交換流体が電解液として機能する場合に利用可能である。別の構成として、動電式ポンプは間接ポンプとすることができ、この場合、電解液のポンピングによって、ポンプの内部の、電極の電界の影響を受けない部分に熱交換流体の流れが生じる。間接ポンプでは、熱交換流体は、電解液としては機能しない作動流体である。
間接ポンプの一形態において、装置は、電極の電解の影響を受けない第二の導管を含み、この導管は、開放端、又は開放可能な端部を有する。使用の際、第二の導管は電解液で満たされ、第二の導管の開放端は熱交換流体と接触した状態に置かれ、装置を動作させることにより、熱交換流体が第二の導管に引き込まれる。電解液の流れの向きを逆転させることにより、熱交換流体が第二の導管から排出される。
【0031】
間接ポンプの別の形態では、電解液のポンピングによって、電解液を含むチャンバの容積が変化し、従って隣接するチャンバの容積が変化することにより、熱交換流体が、隣接チャンバに引き込まれるか、又は隣接チャンバから排出される。例えば、前記二つのチャンバは、撓み(例えば蛇腹)及び/又は伸び(例えば柔軟な隔膜)によって形状を変え、及び/又はピストン/シリンダーの組み合わせを備える部材をその中間位置に共有することができる。この中間部材は、例えば、金属化できる多層の重合フィルムから作成することができる。電解液を含み、且つ容積が可変であるチャンバは、電極又は別のチャンバを有するチャンバとすることができ、例えば、上述のように、内部で導管の二つの区域が中央のチャンバと連絡する、前述のような装置内の中央チャンバとすることができる。
流量を増やすため、複数のポンプを並列に接続するか、又は圧力を増大させるために複数のポンプを直列に接続することができる。これは、例えば米国特許第6719535号に記載されており、ここで参照することによりこの特許文献の内容全体を本明細書に包含する。上述のように、本動電式ポンプは周期モードで動作することができる。周期モードにおいて、動電式ポンプは、最初に、第一の期間に亘って運転され、この間に電解液は導管を一方向に流れる。その後、電源の極性が反転されて、動電式ポンプは第二の期間に亘って運転され、この間に電解液は反対方向に流れる。各周期の期間は十分に短いので、電解液に実質的な化学変化が生じない。
【0032】
特定の好適な実施形態を引用して本発明を詳細に説明したが、他の実施形態も可能である。従って、請求の範囲の概念及び範囲は、本明細書に記載の好適な実施形態の記述に限定されるものではない。請求項、要約及び図面を含め、本明細書に開示された全ての特徴、及び開示されたあらゆる方法又はプロセスの全てのステップは、少なくとも一部の特徴及び/又はステップが互いに矛盾する場合を除き、あらゆる組み合わせに組み合わせることができる。請求項、要約及び図面を含め、本明細書に開示された全ての特徴は、特に断らない限り、同一、同等、或いは類似の目的に適合する別の特徴で置換できる。従って、特に断らない限り、開示された全ての特徴は、それと等価又は同様な特徴の一般的特徴群の一実施例に過ぎない。
特定の機能を実施するための「手段」、又は特定の機能を実施するための「ステップ」と明記していない請求項に含まれるあらゆる要素は、米国特許法第112条に規定する「手段」又は「ステップ」条項と解釈すべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】単一の一次熱交換器と単一の二次熱交換器を使用する、本発明の第一の実施形態による熱伝導システムの概略図である。
【図2】二つの二次熱交換器を使用する、本発明の第二の実施形態による熱伝導システムの概略図である。
【図3】二つの一次熱交換器と四つの二次熱交換器を使用する、本発明の第三の実施形態による熱伝導システムの概略図である。
【図4】本発明の第四の実施形態による熱伝導システムの概略図である。
【図5】本発明の第五の実施形態による熱伝導システムの概略図である。
【図6】本発明に使用可能な第一の熱交換器の側面図である。
【図7】図6に示す熱交換器のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】本発明に使用可能な第二の熱交換器の側面図である。
【図9】図8に示す熱交換器のIX−IX線に沿った断面図である。
【図10】本発明に使用可能な第三の熱交換器の側面図である。
【図11】図10に示す熱交換器のXI−XI線沿った断面図である。
【図12】本発明に使用可能な動電式ポンプの概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)熱源から熱を受け取る一次熱交換器、
b)ヒートシンクに熱を排出する二次熱交換器、
c)一次熱交換器と二次熱交換器とを接続する導管、及び
d)導管を介して一次熱交換器と二次熱交換器の間で熱交換流体をポンピングする動電式ポンプ
を備える熱伝導システム。
【請求項2】
熱交換器と導管の内部に熱交換流体を更に含む、請求項1に記載の熱伝導システム。
【請求項3】
動電式ポンプが更に容量性電極を備える、請求項1又は2に記載の熱伝導システム。
【請求項4】
動電式ポンプに連結された流体流コントローラを更に備え、動電式ポンプがコントローラによって周期モードで動作される、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項5】
二つの二次熱交換器を更に備え、
導電式ポンプが、
第一の側、及び
第一の側の反対側の第二の側
を更に有し、
二つの二次熱交換器の一方が動電式ポンプの第一の側に連結され、他方の二つの二次熱交換器が動電式ポンプの第二の側に接続され、且つ
両方の二次熱交換器が一次熱交換器に連結されている、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項6】
複数の一次熱交換器、及び
複数の二次熱交換器
を更に備え、
複数の一次熱交換器と複数の二次熱交換器が、導管により単一流路に沿って直列接続されており、且つ
複数の一次熱交換器と複数の二次熱交換器が、熱的に並列に動作する
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項7】
複数の一次熱交換器、及び
複数の二次熱交換器
を更に備え、
複数の一次熱交換器と複数の二次熱交換器が、複数の流路に沿って並列接続されており、且つ
複数の一次熱交換器と複数の二次熱交換器が、熱的に並列に動作する
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項8】
複数の動電式ポンプを更に備える、請求項1に記載の熱伝導システム。
【請求項9】
熱交換流体が水を含む、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項10】
動電式ポンプが電解液を更に含み、熱交換流体が電解液と同一である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項11】
動電式ポンプが電解液を更に含み、熱交換流体が柔軟な部材によって電解液から分離されている、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項12】
熱交換流体が単相で使用される、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項13】
熱交換流体が多相で使用される、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項14】
a)容量性電極を有する動電式ポンプ、
b)熱を受け取る手段、
c)熱を放出する手段、及び
d)熱を受け取る手段と熱を放出する手段とを連結する導管であって、動電式ポンプにも連結されている導管
を備え、
ポンプにより、導管を介して熱を受け取る手段と熱を放出する手段の間で熱交換流体をポンピングする、熱伝導システム。
【請求項15】
動電式ポンプに連結されたコントローラを更に備え、コントローラが動電式ポンプを周期モードで動作させる、請求項14に記載の熱伝導システム。
【請求項16】
複数の動電式ポンプを更に備える、請求項14に記載の熱伝導システム。
【請求項17】
熱交換流体が水を含む、請求項14ないし16のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項18】
動電式ポンプが電解液を更に含み、電解液が熱交換流体と同一である、請求項14又は15に記載の熱伝導システム。
【請求項19】
動電式ポンプが電解液を更に含み、熱交換流体が柔軟な部材によって電解液から分離されている、請求項14又は15に記載の熱伝導システム。
【請求項20】
請求項1に記載の装置を使用して熱を除去する方法であって、
一次熱交換器を熱源と熱の伝導を行なえるように配置すること、
二次熱交換器をヒートシンクと熱の伝導を行えるように配置すること、及び
ポンプを作動させることにより、導管を介して一次熱交換器内の熱交換流体を二次熱交換器に移動させ、導管を介して二次熱交換器内の熱交換流体を一次熱交換器に移動させること
を含む方法。
【請求項21】
ポンプを動作させることにより熱交換流体を一方向にポンピングすることを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ポンプを周期モードで動作させることを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項1】
a)熱源から熱を受け取る一次熱交換器、
b)ヒートシンクに熱を排出する二次熱交換器、
c)一次熱交換器と二次熱交換器とを接続する導管、及び
d)導管を介して一次熱交換器と二次熱交換器の間で熱交換流体をポンピングする動電式ポンプ
を備える熱伝導システム。
【請求項2】
熱交換器と導管の内部に熱交換流体を更に含む、請求項1に記載の熱伝導システム。
【請求項3】
動電式ポンプが更に容量性電極を備える、請求項1又は2に記載の熱伝導システム。
【請求項4】
動電式ポンプに連結された流体流コントローラを更に備え、動電式ポンプがコントローラによって周期モードで動作される、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項5】
二つの二次熱交換器を更に備え、
導電式ポンプが、
第一の側、及び
第一の側の反対側の第二の側
を更に有し、
二つの二次熱交換器の一方が動電式ポンプの第一の側に連結され、他方の二つの二次熱交換器が動電式ポンプの第二の側に接続され、且つ
両方の二次熱交換器が一次熱交換器に連結されている、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項6】
複数の一次熱交換器、及び
複数の二次熱交換器
を更に備え、
複数の一次熱交換器と複数の二次熱交換器が、導管により単一流路に沿って直列接続されており、且つ
複数の一次熱交換器と複数の二次熱交換器が、熱的に並列に動作する
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項7】
複数の一次熱交換器、及び
複数の二次熱交換器
を更に備え、
複数の一次熱交換器と複数の二次熱交換器が、複数の流路に沿って並列接続されており、且つ
複数の一次熱交換器と複数の二次熱交換器が、熱的に並列に動作する
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項8】
複数の動電式ポンプを更に備える、請求項1に記載の熱伝導システム。
【請求項9】
熱交換流体が水を含む、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項10】
動電式ポンプが電解液を更に含み、熱交換流体が電解液と同一である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項11】
動電式ポンプが電解液を更に含み、熱交換流体が柔軟な部材によって電解液から分離されている、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項12】
熱交換流体が単相で使用される、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項13】
熱交換流体が多相で使用される、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項14】
a)容量性電極を有する動電式ポンプ、
b)熱を受け取る手段、
c)熱を放出する手段、及び
d)熱を受け取る手段と熱を放出する手段とを連結する導管であって、動電式ポンプにも連結されている導管
を備え、
ポンプにより、導管を介して熱を受け取る手段と熱を放出する手段の間で熱交換流体をポンピングする、熱伝導システム。
【請求項15】
動電式ポンプに連結されたコントローラを更に備え、コントローラが動電式ポンプを周期モードで動作させる、請求項14に記載の熱伝導システム。
【請求項16】
複数の動電式ポンプを更に備える、請求項14に記載の熱伝導システム。
【請求項17】
熱交換流体が水を含む、請求項14ないし16のいずれか1項に記載の熱伝導システム。
【請求項18】
動電式ポンプが電解液を更に含み、電解液が熱交換流体と同一である、請求項14又は15に記載の熱伝導システム。
【請求項19】
動電式ポンプが電解液を更に含み、熱交換流体が柔軟な部材によって電解液から分離されている、請求項14又は15に記載の熱伝導システム。
【請求項20】
請求項1に記載の装置を使用して熱を除去する方法であって、
一次熱交換器を熱源と熱の伝導を行なえるように配置すること、
二次熱交換器をヒートシンクと熱の伝導を行えるように配置すること、及び
ポンプを作動させることにより、導管を介して一次熱交換器内の熱交換流体を二次熱交換器に移動させ、導管を介して二次熱交換器内の熱交換流体を一次熱交換器に移動させること
を含む方法。
【請求項21】
ポンプを動作させることにより熱交換流体を一方向にポンピングすることを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ポンプを周期モードで動作させることを更に含む、請求項20に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−533170(P2007−533170A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509524(P2007−509524)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/012757
【国際公開番号】WO2005/114061
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(503459408)エクシジェント テクノロジーズ, エルエルシー (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/012757
【国際公開番号】WO2005/114061
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(503459408)エクシジェント テクノロジーズ, エルエルシー (12)
【Fターム(参考)】
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