説明

勤怠管理システム

【課題】勤怠管理システムにおいて当該出退勤時刻の改ざんを未然に防止できるようにすることを目的とする。
【解決手段】勤怠管理システムの現在の表示時刻(第1の時刻)を保存し、この第1の時刻を記憶させた時点から所定の時間経過後のシステムの表示時刻(第2の時刻)を保存する。第1の時刻と第2の時刻の時間差が許容時間を超えたとき、出退勤時刻を改ざんするため勤怠管理システムの表示時刻が不正に操作されたと判断し、アラームを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は勤怠管理システムに関する。詳しくは、出退勤時刻の改ざんを防止するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
汎用のコンピュータシステムを利用した勤怠管理システムが知られている(特許文献1等参照)。この勤怠管理システムでは勤務者が勤怠管理システムに直接にアクセスし、自己の出退勤時刻を記録する。
このようにして勤怠管理システムで記録される時刻は、コンピュータシステムのシステムクロックの時刻を基準としている。
【特許文献1】特開2005−135296
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、汎用のコンピュータシステムではそのシステムクロックを簡単に変更することができる。従って、勤務者がコンピュータシステムのシステムクロックの時刻を不正に変更し、もって当該時刻を基準とする勤怠管理システム上の自己の出退勤時刻を改ざんするおそれがある。
そこで、この発明は、勤怠管理システムにおいて当該出退勤時刻の改ざんを未然に防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その第1の構成は次のように規定される。
コンピュータシステムに勤怠の時刻を管理する勤怠管理手段が組み込まれている勤怠管理システムにおいて、前記コンピュータシステムの時刻を管理するシステムクロックと、前記システムクロック又は前記勤怠管理手段の第1の時刻を記憶する第1の時刻記憶手段と、前記第1の時刻と、該第1の時刻から所定時間経過後における前記システムクロック又は前記勤怠管理手段の第2の時刻との差分時間を演算する演算手段と、時刻変更が許容される許容時間が記憶される許容時間記憶手段と、前記差分時間が前記許容時間を超えたときアラームを出力するアラーム手段と、を備えてなる勤怠管理システムである。
【0005】
上記第1の局面によれば、例えば勤怠管理システムの現在の表示時刻(第1の時刻)を第1の時刻記憶手段に記憶させ、この第1の時刻を記憶させた時点から所定の時間(例えば10秒)経過後のシステムの表示時刻(第2の時刻)を保存する。第1の時刻と第2の時刻の時間差(差分時間)は本来であれば10秒である。このとき、勤怠管理システムの時間が不正に変更されていると、時間差が10秒を大きく超えることとなる。そこで、当該時間差が予め定められた許容時間を超えたとき、出退勤時刻を改ざんするため勤怠管理システムの表示時刻が不正に操作されたと判断し、アラームが出力される。これにより管理者は出退勤時刻の改ざんの事実を把握することができる。また、改ざんの事実把握が容易になった効果として、勤務者による出退勤時刻の改ざんが抑止されることになる。
【0006】
上記の説明では基準となる第1の時刻を勤怠管理システムから抽出しているが、勤怠管理システムの表示する時刻がコンピュータシステムのシステムクロックに同期しているものであれば、システムクロックの表示時刻を第1の時刻に採用してもよい。同様に、第2の時刻としてもシステムクロックの表示時刻を採用することができる。
第1の時刻を基準として第2の時刻をチェックする時間間隔(所定の経過時間)は任意に設定可能である。例えば1〜100秒とすることができる。また、許容時間記憶手段に記録される許容時間も任意に設定可能であり、例えば1〜15分とすることができる。
アラームの出力方法も任意に選択することができる。例えば、ブザーを鳴らすこと、コンピュータシステムのディスプレイに所定のアラームを表示させること、管理者のコンピュータシステム若しくは携帯端末にアラーム内容のメールを発信することがある。
【0007】
第1の時刻と第2の時刻との差分時間を常に演算しているとコンピュータシステムにかかる負担が大きくなるので、その負担軽減の見地から、この発明の第2の局面で規定するように、システムクロックの時刻が変更されたことを検出して第1のトリガ信号を出力する変更検出手段を更に備え、演算手段は前記第1のトリガ信号を受けたときにはじめて第1の時刻と第2の時刻との差分時間を演算することが好ましい。
汎用的なコンピュータシステムではシステムクロックの時刻が変更されると当該変更の事実がログファイルとして出力され、所定のメモリに保存される。このログファイルの出力をトリガとして、第1の時刻と第2の時刻との差分時間を演算させるようにすれば、コンピュータシステムにかかる負担を軽減することができる。
【0008】
また、システムクロックの変更に関するログファイルに関連付けてアラームを出力した事実を保存することが好ましい(第3の局面参照)。これにより、管理者は、出退勤時刻の改ざんが行なわれたときばかりでなく、その後においても、改ざんの事実のチェックを行なうことができる。
【実施例1】
【0009】
以下に本発明の実施例を説明する。
図1は実施例の勤怠管理システム10のブロック図を示す。図2は勤怠管理システム10の概略図である。
図1において、勤怠管理システム10は、制御部11、表示部21、入力部22、システムクロック23、演算部31、アラーム出力部32、記憶部40を備える。
以下、勤怠管理システム10の各要素について説明する
制御部11はCPU12を備える。このCPU12はバスを介して勤怠管理システム10を構成する各要素へ接続され、これらを統括制御する。
表示部21は勤怠管理システム10の内容をディスプレイ上に表示させるための装置である。例えば、液晶ディスプレイが使用される。
入力部22は勤怠管理システム10が組み込まれたコンピュータシステムを操作するための装置である。例えば、キーボードやマウスなどの入力装置が使用される。入力部22には勤務者のIDカードを読取るカードリーダが接続される場合がある。その他、勤務者の身体的特徴に基づき勤務者を特定することもできる。勤怠管理システムはカードリーダで勤務者を特定した時刻を、当該勤務者の出勤時刻若しくは退勤時刻と認識する。
【0010】
システムクロック23は勤怠管理システムが組み込まれたコンピュータシステムのタイミングクロックを発生する。
演算部31は第1の時刻と第2の時刻の差分時間を演算し、また、差分時間と許容時間とを比較する。差分時間が許容時間を超えたとき、アラーム出力部32へ信号が入力される。この信号が入力されると、アラーム出力部32はアラームを出力する。アラームの出力の態様は特に限定されず、例えば、ディスプレイに警告画面を出力させてもよいし、警告音を発してもよい。
【0011】
記憶部40は制御プログラム記憶領域41、勤怠管理プログラム記憶領域42、第1の時刻記憶領域43、第2の時刻記憶領域44、差分時間記憶領域45、許容時間記憶領域46を備える。記憶部40には一般的なハードディスク等の記憶装置が用いられる。以下に、各記憶領域の説明を行う。
制御プログラム記憶領域41はCPU12の制御プログラムが記憶される領域である。この制御プログラムは制御部11に接続された各要素を統括制御するためのプログラムである。
勤怠管理プログラム記憶領域42には勤怠管理システム10を運用するためのプログラムが記憶されている。第1の時刻記憶領域43には勤怠管理システム10で表示される時刻が常に更新されて保存される。この第1の時刻を基準として所定の時間経過(例えば10秒)ごとに勤怠管理システムが表示する時刻が第2の時刻として第2の時刻記憶領域44に保存される。この第1の時刻と第2の時刻との差分時間は差分時間記憶領域45に保存される。この差分時間と比較される許容時間は許容時間記憶領域46に保存されている。この許容時間は任意に設定することができるが、1〜15分とすることが好ましい。
【0012】
図3は勤怠管理システム10の動作を示すフローチャートである。
勤怠管理システムで表示されている現在の時刻を第1の時刻として第1の時刻記憶領域43に保存する(ステップ1)。勤怠管理システムの現在の時刻はコンピュータシステムのシステムクロックと同期している。即ち勤怠管理システムの表示時刻とシステムクロックの表示時刻とは等しいので、当該システムクロックの現在時刻を第1の時刻とすることもできる。
次に、第1の時刻を保存した後、所定の時間(例えば10秒)が経過したときに、勤怠管理システムの現在の時刻を読み出し第2の時刻として第2の時刻記憶領域44に保存する(ステップ3)。
【0013】
ステップ5では第1の時刻と第2の時刻との差を演算し、その結果を差分時間記憶領域45に保存する。ステップ7では、当該差分時間記憶領域45に保存されている差分時間と、許容時間記憶領域46に記憶されている許容時間とを比較する。差分時間が許容時間を超えたとき(ステップ9:Y)には、勤怠管理システムの表示時刻が不正に変更されたか若しくはコンピュータシステムのシステムクロックの表示時間が不正に変更されたものとみなしてアラーム信号がアラーム出力部32へ送られる(ステップ11)。アラーム出力部32は当該アラーム信号に基づき、ディスプレイに所定のメッセージを表示する(ステップ13)。差分時間が許容時間を超えないとき(ステップ9:N)には、ステップ5以降を繰り返す。
【実施例2】
【0014】
図4は他の実施例の勤怠管理システム100のブロック図である。図1と同一の要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。図5は勤怠管理システム100の概略図である。
勤怠管理システム100は、変更検出部33、変更履歴記憶領域407を更に備える。
変更検出部33はコンピュータシステムのシステムクロック23に変更が生じたことを検出して、演算部31に変更を通知する。変更の通知を受けた演算部31は、直ちに第1の時刻と第2の時刻との差分時間を演算する。これにより、第1の時刻と第2の時刻との差分時刻を常時演算する必要はなく、演算処理の負担が軽くなる。また、システムクロック23の時刻が変更されたことを検出した変更検出部33は、その変更された時刻を履歴変更記憶部407に保存する。
履歴変更記憶領域407はアラーム出力部32から出力された警告と、その警告の原因となった変更検出時刻と、を関連付けて記憶する領域である。これにより、この時刻に勤怠管理システムの操作を行った者を特定することができる。このような操作を行った者が特定できる事実が周知になることで、勤務者による改ざんを未然に抑止することができる。
【0015】
図6は勤怠管理システムの動作を示すフローチャートである。
勤怠管理システムで表示されている現在の時刻を第1の時刻として第1の時刻記憶領域43に保存する(ステップ21)。勤怠管理システムの現在の時刻はコンピュータシステムのシステムクロックと同期している。即ち勤怠管理システムの表示時刻とシステムクロックの表示時刻とは等しいので、当該システムクロックの現在時刻を第1の時刻とすることもできる。
次に、第1の時刻を保存した後、所定の時間が経過したときに、勤怠管理システムの現在の時刻を読み出し第2の時刻として第2の時刻記憶領域44に保存する(ステップ23)。
【0016】
変更検出部33がシステムクロック23の変更を検出したとき(ステップ25:Y)、演算部31が第1の時刻と第2の時刻との差を演算し、その結果を差分時間記憶領域45に保存する(ステップ27)。そして、当該差分時間記憶領域45に保存された差分時間と、許容時間記憶領域46に記憶されている許容時間とを比較する(ステップ29)。差分時間が許容時間を超えたとき(ステップ31:Y)、勤怠管理システムの表示時刻が直接的に不正に変更されたか若しくはコンピュータシステムのシステムクロックの表示時間が不正に変更されたものとみなしてアラーム信号がアラーム出力部32へ送られる(ステップ33)。アラーム出力部32は当該アラーム信号に基づき、ディスプレイに所定のメッセージを表示する(ステップ35)。また、メッセージ(警告)と、変更検出時刻とを関連付けて保存する(ステップ37)。なお、変更検出部33がシステムクロック23の変更を検出しないとき(ステップ25:N)や、差分時間が許容時間を超えないとき(ステップ31:N)には、ステップ25以降を繰り返す。
以上から、管理者は、直ちに勤務者によるシステムクロックの改ざんを確認できるとともに、改ざんした事実を記憶することができる。これにより、後日においても、改ざんの事実のチェックを行うことができる。
【0017】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の勤怠管理システム10のブロック図を示す。
【図2】図2は勤怠管理システム10の概略図である。
【図3】図3はシステムクロックを改ざんしたとき、勤怠管理システムからアラームを出力する動作を説明するフローチャートである
【図4】図4は本発明の勤怠管理システム100のブロック図である。
【図5】図5は勤怠管理システム100の概略図である。
【図6】図6は勤怠管理システムの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0019】
10 100 勤怠管理システム、23 システムクロック、31 演算部
32 アラーム出力部、33 変更検出部、40 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータシステムに勤怠の時刻を管理する勤怠管理手段が組み込まれている勤怠管理システムにおいて、
前記コンピュータシステムの時刻を管理するシステムクロックと、
前記システムクロック又は前記勤怠管理手段の第1の時刻を記憶する第1の時刻記憶手段と、
前記第1の時刻と、該第1の時刻から所定時間経過後における前記システムクロック又は前記勤怠管理手段の第2の時刻との差分時間を演算する演算手段と、
時刻変更が許容される許容時間が記憶される許容時間記憶手段と、
前記差分時間が前記許容時間を超えたときアラームを出力するアラーム手段と、を備えてなる勤怠管理システム。
【請求項2】
前記システムクロックの時刻が変更されたことを検出して第1のトリガ信号を出力する変更検出手段を更に備え、前記演算手段は前記第1のトリガ信号を受けたとき前記第1の時刻と前記第2の時刻との差分時間を演算する、ことを特徴とする請求項1に記載の勤怠管理システム。
【請求項3】
前記第1のトリガ信号を受けて、前記システムクロックの時刻をアラームと関連付けて記憶する記憶手段を更に備える、ことを特徴とする請求項2に記載の勤怠管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−9684(P2008−9684A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179106(P2006−179106)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】