説明

包丁保持具

【課題】小さい子供による包丁の抜き取りを防止して安全性を高めた包丁保持具を提供する。
【解決手段】 包丁保持具1は、包丁10の刃板10aを抜き差し可能に差し込み収納し得る差込口24a〜24dと、この差込口24a〜24dに刃板10aが差し込まれた包丁10の握柄10bを支持して該握柄10bを露出状態で外部に保持する握柄保持部3を備え、かつ、差込口24a〜24dに差込んだ刃板10aを抜脱不能にロックするロック解除可能なロック手段4を備えている。そして、包丁保持具1との非干渉状態でロック手段4のロック解除を許容するとともに、包丁保持具1との干渉状態でロック手段4のロック解除を不能にすることが可能なストッパー5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンクを備える流し台の開閉パネルの裏面に取付けられる包丁保持具に係り、詳しくは、子供による包丁の抜き取りを防止して安全性を高めた包丁保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
シンクを備える流し台の開閉パネルの裏面に取付けられる包丁保持具として、たとえば特許文献1に記載の技術が知られている。
【0003】
ところが、前記特許文献1に記載の包丁保持具は、差込口に刃板が差し込まれた包丁の抜け止め構造を有していないので、たとえ小さい子供であっても流し台の開閉パネルを開けて簡単に包丁を抜き取ることができるので危険度が高い。
【0004】
そこで、小さい子供による包丁の簡単な抜き取りを防止するように工夫した包丁保持具として、たとえば特許文献2に記載の技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3070747号公報
【特許文献2】特開2008−264483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献2に記載の包丁保持具は、包丁の刃板を差し込み収納し得る差込口を備えた器体に、この差込口に刃板を差込にした際に包丁の握柄を支承してこの握柄を器体の外部に露出状態に保持する握柄保持部を備えているとともに、前記器体もしくは前記握柄保持部に、前記差込口に差込みした刃板を抜け止め状態にロックするロック解除可能なロック手段を設けたものである。
【0007】
このように構成されている前記特許文献2に記載の包丁保持具によれば、ロック手段により包丁を抜け止め状態にロックすることができるので、このロック手段を解除しない限り収納した包丁を器体より抜き取ることができないため、小さい子供による包丁の取り出しが防止されて安全度を高めることができるとされている。
【0008】
しかし、ロック手段のロック状態は、該ロック手段に設けた係止爪を握柄保持部の係止孔に対して係脱可能に係止させる係止力の弱い係脱手段によって保持されているので、ロック手段のロック状態は比較的容易に解除することができて包丁を器体より抜き取ることができる。そのため、小さい子供による包丁の取り出しが懸念される問題を有している。
【0009】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであって、小さい子供による包丁の抜き取りを防止して安全性を高めた包丁保持具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明に係る包丁保持具は、包丁の刃板を抜き差し可能に差し込み収納し得る差込口と、この差込口に刃板が差し込まれた包丁の握柄を支持して該握柄を露出状態で外部に保持する握柄保持部を備えているとともに、前記差込口に差込んだ刃板を抜脱不能にロックするロック解除可能なロック手段を備えた包丁保持具において、
前記包丁保持具との非干渉状態でロック手段のロック解除を許容するとともに、前記包丁保持具との干渉状態で前記ロック手段のロック解除を不能にすることが可能なストッパーを備えていることを特徴としている。
【0011】
これによれば、ストッパーを包丁保持具に干渉させることで、差込口に差込まれた包丁の刃板をロック手段により抜脱不能にロックできるので、小さい子供による包丁の抜き取りを防止して安全性を高めることができる。また、ストッパーを包丁保持具に干渉させないことで、前記ロック手段のロック解除が許容されるので、包丁保持具から包丁を抜き取ることができる。
【0012】
本発明の包丁保持具は、前記差込口に差し込まれた刃板の表裏両面に対向する前後一対の縦壁を有し、各縦壁に複数の通気用スリットが形成されている。これによると、差込口に抜き差し可能に差し込まれた包丁の刃板の前後に前後一対の縦壁が存在して刃板を隠蔽し、刃板と指先などとの接触を回避して安全性を高めることができる。また、各縦壁に形成された複数の通気用スリットによって良好な通気を確保して、包丁使用後の水洗により刃板表面に付着している水分の自然蒸発による除去を促進できる。
【0013】
本発明の包丁保持具は、前記各縦壁の下端を閉塞して前記握柄保持部の差込口に差し込まれた刃板から滴下する水滴を受け止める水受けを備えている。これによると、包丁使用後の水洗により刃板から滴下する水滴を水受けによって受け止めて、水受け以外の箇所への水滴の滴下を防止できる。
【0014】
本発明の包丁保持具は、前記前後一対の縦壁の前側縦壁前面にまな板の抜き差し可能な空間を隔てて取付けられた前方向の傾倒防止用ホルダーと、前記水受けの前記前側縦壁から前記空間の下側対向位置まで前方に延出させた延出部分とからなるまな板を抜き差し可能に保持するまな板保持手段を備えることが望ましい。これによると、まな板保持手段によって包丁と対偶であるまな板を抜き差し可能に保持することができるので、まな板を整頓してその所在を特定し使用時の利便性を向上させることができる。
【0015】
本発明の包丁保持具は、前記前後一対の縦壁の前側縦壁前面に取付けられた幅方向の傾倒防止用ホルダーと、前記前方向の傾倒防止用ホルダーおよび前記水受けの延出部分とからなるラップフィルム等収納箱保持手段を備えることが望ましい。これによると、ラップフィルム等収納箱保持手段によって、たとえば食品をラップする時などに使用される食品包装用ラップフィルム収納箱や食品包装用アルミホイル収納箱などのを幅方向と前後方向の2方向への傾倒を不能に保持することができる。これにより、食品包装用ラップフィルム収納箱や食品包装用アルミホイル収納箱などのを整頓してその所在を特定し使用時の利便性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る包丁保持具は、ストッパーを包丁保持具に干渉させることで、差込口に差込まれた包丁の刃板をロック手段により抜脱不能にロックすることができるので、小さい子供による包丁の抜き取りを防止して安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る包丁保持具が装備される流し台の一例を示す概略斜視図である。
【図2】本発明に係る包丁保持具の一実施形態を示す正面図である。
【図3】図3(a)は図2の平面図,図3(b)は図3(a)のb−b線断面図,図3(c)は握柄保持部および差込口を示す拡大斜視図である。
【図4】ロック手段およびストッパーを除去して示す本体部の拡大正面図である。
【図5】図4の平面図である。
【図6】図6(a)は図4のc−c線断面図,図6(b)は図4のd−d線拡大断面図である。
【図7】図7(a)はストッパーをロック解除不能形態にした場合のストッパーとロック手段との関係を示す拡大正面図,図7(b)は図7(a)の平面図,図7(c)は図7(a)の底面図,図7(d)は図7(a)のe−e矢視図,図7(e)はストッパーをロック解除許容形態にした場合のストッパーとロック手段との関係を示す拡大正面図である。
【図8】図8(a)は包丁保持具に対してストッパーを非干渉状態にしたロック手段のロック解除許容形態を拡大して示す縦断正面図,図8(b)は包丁保持具に対してストッパーを干渉状態にしたロック手段のロック解除不能形態を拡大して示す縦断正面図である。
【図9】図9(a)は水受けの拡大正面図,図9(b)は図9(a)の平面図である。
【図10】前方向の傾倒防止用ホルダーの斜視図である。
【図11】幅方向の傾倒防止用ホルダーの斜視図である。
【図12】図12(a)は取付け手段の拡大正面図,図12(b)は図12(a)のf−f矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0018】
図1は本発明に係る包丁保持具が装備される流し台の一例を示す概略斜視図であり、流し台100は、各種調理用品や調味料などの収納に使用できる区画された3つの収納室の開閉扉110やこれらの上側に複数区画された膜板120。さらにはシンク130や図示していないコンロなどが設置されている上側構造部140などを備えており、各収納室の開閉扉110は、引出し方式や観音開き方式などによって開閉される。なお、図例の流し台100では、引出し方式によって開閉される収納室の開閉扉110を採用しており、把手110aを手前に引張ることによって開放され、開放状態で収納室の開閉扉110自体を押込むことことで閉じることができる。
【0019】
図2は本発明に係る包丁保持具の一実施形態を示す正面図、図3(a)は図2の平面図,図3(b)は図3(a)のb−b線断面図,図3(c)は握柄保持部および差込口を示す拡大斜視図であり、図4はロック手段およびストッパーを除去して示す包丁保持具上部の一部拡大正面図、図5は図4の平面図、図6(a)は図4のc−c線断面図,図6(b)は図4のd−d線拡大断面図である。
【0020】
図2〜図6において、包丁保持具1は、流し台100(図1参照)の3つの収納室の開閉扉110における右側の開閉扉110の裏面に後述する取付け手段によって取付けられる。この包丁保持具1は、本体部2、握柄保持部3、ロック手段4、ストッパー5、水受け6、まな板保持手段7、食品包装用ラップフィルム収納箱や食品包装用アルミホイル収納箱などのを保持する食品包装用ラップフィルム等収納箱保持手段8および包丁保持具1の本体部2を前記収納室の開閉扉110(図1参照)の裏面に着脱可能に取付ける取付け手段9などを備えている。
【0021】
包丁保持具1の本体部2は樹脂の一体成形品からなり、縦方向(上下方向)の寸法Hよりも幅方向(横方向,左右方向)の寸法Wが大幅に大きく、かつ前後方向(厚さ方向)の寸法Tが小さい逆U字状断面の横長薄型の長方形を呈しており、上端部を塞ぐ天井部20と、該天井部20の前後方向両端部近傍から下向き鉛直にのびて互いに対向する前側縦壁21と後側縦壁22とを有し、各縦壁21,22には縦長幅狭の通気用スリット23が上下2段の領域において幅方向に所定の間隔を隔てて多数個貫通形成されているとともに、各縦壁21,22の左右向両端部は天井部20の幅方向両端部から下向き鉛直にのびて互いに対向する左側壁25aと右側壁25bによって閉塞されている。
【0022】
前記本体部2の天井部20には、該天井部20を貫通して後述する包丁の刃板を抜き差し可能に差し込み収納し得る4つの直線状の差込口24a,24b,24c,24dが所定の間隔を有し、かつ左右方向にのびて独立形成されている。各差込口24a,24b,24c,24dにおいて、差込口24bの差込幅w1は他の差込口24a,24c,24dの差込幅w2よりも少し大きく設定されている。したがって、差込口24bには厚肉の包丁(たとえば出刃包丁)の刃板を抜き差し可能に差し込み収納することができる。
【0023】
前記天井部20は、前後方向の中央部に位置する水平かつ平坦で低い隆起部26と、該隆起部26の前後方向の両端部から前記左側壁25aと右側壁25bよりもさらに前後方向に少しのびる略水平で平坦な前後一対の縁部27A,27Bとを有し、前縁部27Aの前端に下向きの折曲片27aが形成され後縁部27Bの後端に下向きの折曲片27bが形成されている。また、隆起部26の前後方向の両縦面には、一端(本実施例では左端)の位置を各差込口24a,24b,24c,24dの一端(本実施例では左端)に対応させ、他端(本実施例では右端)の位置を各差込口24a,24b,24c,24dの他端(本実施例では右端)よりもさらに右方向に延在させた溝からなる前後一対で4組の案内レール28A,28Bが凹設され、各案内レール28A,28Bの延在方向(本体部2の左右方向)略中央部に第1係止部28a,28bを設け、案内レール28Aの一端近傍に第2係止部28a1を設けるとともに、案内レール28Bにおける図示されていない一端近傍にも前記第1係止部28aと同じ構造の第2係止部(図示省略)を設けてある。さらに、前側縦壁21と後側縦壁22それぞれの上側の両隅部には、後述する前方向の傾倒防止用ホルダーの両端掛止部が挿脱可能に挿入掛止される一対2組の掛止孔29Aが貫通形成され(ただし、後側縦壁22における上側の両隅部の一対の掛止孔は図示されていない)、各掛止孔29の斜め下の近傍には前側縦壁21と後側縦壁22とを貫通して後述する2本の化粧ビスが挿通される一対2組のビス挿通孔29Bが形成されている。
【0024】
握柄保持部3は、本体部2の差込口24a,24b,24c,24dに刃板10aが差し込まれた包丁10の握柄10bを支持して該握柄10bを露出状態で外部に保持するもので、各差込口24a,24c,24dを挟み、かつ差込口24a,24c,24dの差込幅w2と等しい対向間隔の隙間30aを有して互いに対向して隆起部26上に立設された前後一対3組の直角二等辺三角形状の第1支持部30および差込口24bの差込幅w1と等しい対向間隔の隙間31aを有して互いに対向して隆起部26上に立設された前後一対1組の直角二等辺三角形状の第1支持部31と、各第1支持部30の他側(本実施例では右側)に立設されて、該第1支持部30における一側斜面(本実施例では左側の斜面)30bの傾斜角(たとえば45゜)と等しい傾斜角の斜面32bを有する3つの三角形状の第2支持部32と、第1支持部31の他側(本実施例では右側)に立設されて、該第1支持部31における一側斜面(本実施例では左側の斜面)31bの傾斜角(たとえば45゜)と等しい傾斜角の斜面33bを有する1つの三角形状の第2支持部33とを備えている。
【0025】
また、前記3つの三角形状の第2支持部32には、その一端(本実施例では左端)から他端(本実施例では右端)の途中約半分にかけて各差込口24a,24c,24dの差込幅w2と等しい対向間隔の隙間32aが切欠形成されており、前記1つの三角形状の第2支持部33にも、その一端(本実施例では左端)から他端(本実施例では右端)の途中約半分にかけて差込口24bの差込幅w1と等しい対向間隔の隙間33aが切欠形成されているとともに、各第1支持部30における他側斜面(本実施例では右側の斜面)30cおよび第1支持部31における他側斜面(本実施例では右側の斜面)31cを包丁10の握柄10bの先端面を当接させて支持する第1支持面として機能させ、各第2支持部32における斜面32bおよび第2支持部33における斜面33bを包丁10の握柄10b先端部とその近傍の腹面を支持する第2支持面として機能させるように構成されている。また、前記前後一対で4組の案内レール28A,28Bそれぞれの他端(本実施例では右端)は第1支持部30,31の他端の位置と略同じ位置に設定され、第1係止部28a,28bは第1支持部30,31の一端の位置と略同じ位置に設けてある。
【0026】
ロック手段4は包丁保持具1に保持された包丁10を抜脱不能にロックするとともに、包丁10使用の際にはロック解除し得る機能を備えている。具体的には、図4および図5に示す第2支持部32の隙間32aと第1支持部30の隙間30aを介して刃板10aが本体部2の差込口24a,24c,24dに抜き差し可能に差し込まれて、握柄10bの先端面が第1支持面として機能する各第1支持部30における他側斜面30cに支持されているとともに、握柄10b先端部とその近傍の腹面が第2支持面として機能する各第2支持部32の斜面32bに支持されている3本の包丁10、つまり図2の左から2番目の包丁10を除いた3本の包丁10を抜脱不能にロックするとともに、これら包丁10使用の際にはロック解除し得る機能を備え、また、第2支持部33の隙間33aと第1支持部31の隙間31aを介して刃板10aが本体部2の差込口24bに抜き差し可能に差し込まれて、握柄10bの先端面が第1支持面として機能する第1支持部31における他側斜面31cに支持されているとともに、握柄10b先端部とその近傍の腹面が第2支持面として機能する第2支持部33の斜面33bに支持されている1本の包丁10、つまり図2の左から2番目の包丁10を抜脱不能にロックするとともに、該包丁10使用の際にはロック解除し得る機能を備えている。
【0027】
各ロック手段4は、図2、図3(a)〜図3(c)に示すように、本体部2の隆起部26と各差込口24a,24b,24c,24dに跨がって、案内レール28A,28Bを案内に左右方向(図2の矢印W方向)の移動を自在に隆起部26に着脱可能に組付けられる。
【0028】
ロック手段4の具体例を図7(a)〜図7(e)に示す。これらの図において、ロック手段4は樹脂の一体成形品からなり、前後一対の略直角二等辺三角形状の脚部40と、各脚部40における一側斜面(本実施例では左側の斜面)を互いに連結する板状のロック部41とを備え、前後一対の脚部40の対向間隔は、第1支持部30,31(図3(c)および図4参照)それぞれの前後両外面に対して、きわめて小さい隙間を有して内面を対向させ得る大きさに設定されているとともに、前記第1支持部30,31それぞれの前後両外面を隠蔽できる大きさを有している。
【0029】
前記各脚部40の下縁部には、相手側に向かって僅かに突出する突条42が互いに対向して形成され、各突条42における一端近傍(本実施例では左端近傍)には、各突条42よりもさらに相手側に向かって少し突出する第1係止突起43が互いに対向して突設され、各脚部40外面の一側斜面(本実施例では左側の斜面)における上端部の近くには、相手側から離れる方向に少し突出する第2係止突起44が突設されている。また、各脚部40は、その下縁部一端(本実施例では左端)からさらに左方向に僅かにのびて互いに対向する延出片45を有し、各延出片45には相手側に向かって突出する断面円形の連結ピン部46が互いに対向して突設されている。
【0030】
ストッパー5は、各ロック手段4のロック解除を許容するとともに、ロック解除を不能にするためのもので、図2、図3(a),図3(b)、および図7(a)〜図3(e)に示すように、各ロック手段4に対して前後一対の連結ピン部46を回動中心にして回動自在に連結される。
【0031】
各ストッパー5は、樹脂の一体成形品からなり、前後一対の略半円形状の挟持片50と、各挟持片50の基部を互いに連結する覆板51とを備え、各挟持片50の基部の一端延出位置に設けた連結孔52に前記ロック手段4の前後一対の連結ピン部46を回動自在に挿入することで、各ストッパー5と各ロック手段4とが前後一対の連結ピン部46を回動中心にして相対回動自在に連結される。また、覆板51の先端部外面に摘み53が突設されているとともに、各挟持片50における基部の他端部内面を覆板51と平行に切欠して係止段部54が形成されている。
【0032】
水受け6は、図2、図3(a),図3(b)、図9(a),図9(b)に示すように、前後一対の各縦壁21,22と左側壁25aおよび右側壁25bを含む包丁保持具1における本体部2の下端を閉塞して、該本体部2に保持された包丁10の刃板10aから滴下する水滴を受け止めることで、流し台100における右側の開閉扉110(図1参照)によって開閉される収納室の底面の水濡れを防止するためのもので、樹脂成形品からなり、かつ前記本体部2の下端に嵌め込まれる細長い角形の皿状を呈しており、左右両端の延出片60を貫通してビス挿通孔61が形成されている。
【0033】
図2、図3(a),図3(b)に示すまな板保持手段7は、包丁保持具1の本体部2における前側の縦壁21前面にまな板11を抜き差し可能に保持するためのもので、前側の縦壁21前面の上端部にまな板11の抜き差し可能な空間70を隔てて着脱可能に取付けられた前方向の傾倒防止用ホルダー71と、水受け6における前側縦壁21から前記空間70の下側対向位置まで前方に延出させた延出部分72とからなる。
【0034】
前方向の傾倒防止用ホルダー71は、図10に示すように、樹脂被覆された細い金属棒材を折り曲げ加工したもので、左右方向(矢印W)に長い寸法で水平にのびるまな板保持部73と、該まな板保持部73の両端部から後方(矢印T)に短い寸法で水平にのびる空間形成部74と、該空間形成部74の後端上位に連設されたクランク状の掛止部75とを有し、クランク状の掛止部75の後端に設けた前方に傾斜して立ち上がって延びる延出部75aを前側の縦壁21に設けた前記一対の掛止孔29Aに前側から挿通して、その上端部を縦壁21の裏側に当接させることで、前方向の傾倒防止用ホルダー71が前側の縦壁21前面に着脱可能に取付けられる。
【0035】
図2、図3(a),図3(b)に示すラップフィルム等収納箱保持手段8は、食品包装用ラップフィルム収納箱や食品包装用アルミホイル収納箱などのを保持するためのもので、前側の縦壁21前面に取付けられた幅方向の傾倒防止用ホルダー80と、前記前方向の傾倒防止用ホルダー71および水受け6における前記延出部分72とからなる。
【0036】
幅方向の傾倒防止用ホルダー80は樹脂成形品からなり、図11に示すように、横長で長方形の背板81と、この背板81の左右(矢印W方向)両端部から前方(矢印T)に突出する左右一対の傾倒防止板82と、背板81の左右方向中央部から前方に突出して背板81の前側を2つのゾーン83a,83bに仕切る仕切板84と、左右一対の傾倒防止板82に連続して背板81の後方(矢印T1)に向けて僅かに突出するとともに、後端部に幅方向の外向きに少し突出する掛止片85aを設けたフック部85および仕切板84に連続して背板81の後方(矢印T1)に向けて僅かに突出する突出片86とを備えている。
【0037】
前記幅方向の傾倒防止用ホルダー80は、図2、図3(a),図3(b)および図11に示すように、包丁保持具1の本体部2における前側の縦壁21の通気用スリット23が形成されている上段領域の左端近傍前面に着脱可能に取付けられる。該幅方向の傾倒防止用ホルダー80の着脱可能な取付けは、図11において、突出片86を左右方向中央部の通気用スリット23aの前方に対向させた状態で、弾性変形によって背板81を前方に少し湾曲させて、その左右方向の寸法を縮小させながら左右一対のフック部85を左右両端の通気用スリット23bに挿通したのち、背板81を弾性復帰させることによって、各フック部85の掛止片85aが前側の縦壁21裏面に掛止されるとともに、突出片86が通気用スリット23aに挿通され、かつ各フック部85の下端が通気用スリット23bの下縁で支持され、突出片86の下端が通気用スリット23aの下縁で支持されることで実現できる。
【0038】
前記構成の包丁保持具1は、流し台100(図1参照)の3つの収納室の開閉扉110における右側の開閉扉110の裏面に対して、図3(b)、図12(a),12(b)に示すように固定した左右一対の取付け手段9(ただし、図3(b)、図12(a),12(b)には1つの取付け手段9のみが示されている)を利用して取付けられる。
【0039】
各取付け手段9は、本体部90と、2本のタッピングねじ91(ただし、図3(b)、12(b)に1本のタッピングねじ91のみが示されている)および1本の化粧ビス92とからなる。
【0040】
各取付け手段9の本体部90は樹脂成形品からなり、図12(a),12(b)で明らかなように、その下端部には前方に突出した横長長方形の第1当接部93が幅方向(矢印W)水平にのびて形成され、この第1当接部93の中央部に金属製のナット94がインサートされてその雌ねじ孔を該第1当接部93の前後両面に開口させており、第1当接部93の上側に連設して後方に凹入した横長長方形の第2当接部95が幅方向(矢印W)水平にのびて形成されているとともに、第2当接部95の上側に連設して前方に突出したフック部96が幅方向(矢印W)水平にのびて形成されている。また、第2当接部95に左右一対のビス挿通孔97を貫通して形成してある。
【0041】
つぎに、図12(a),12(b)に基づいて、流し台100(図1参照)の3つの収納室の開閉扉110における右側の開閉扉110の裏面に対して左右一対の取付け手段9を利用して包丁保持具1を取付ける手順について説明する。
【0042】
まず、左右一対の取付け手段9の本体部90における第2当接部95の後面95aを開閉扉110裏面の所定位置に当接させた状態で2本のタッピングねじ91により2つの本体部90を開閉扉110の裏面に固定する。なお、2つの本体部90を固定する前記所定位置は、図4に示す一対2組のビス挿通孔29B、つまり、包丁保持具1における本体部2の前側縦壁21と後側縦壁22とを貫通して形成されている一対2組のビス挿通孔29Bの各組に一対のビス挿通孔29Bが同心状に対向し得る条件を確保して設定される。
【0043】
続いて、包丁保持具1における本体部2の後側の縁部27Bの折曲片27bを、開閉扉110の裏面と左右一対の取付け手段9の本体部90におけるフック部96の縦片96aとの間に形成される隙間に嵌合するとともに、化粧ビス92を一対2組のビス挿通孔29Bのそれぞれに挿通して金属製のナット94に螺着することによって、包丁保持具1は開閉扉110の裏面に固定される。
【0044】
このように、包丁保持具1が開閉扉110の裏面に固定される前に、図2および図3(b)に示すように、予め、左右一対のL形支持部材13を開閉扉110の裏面に取付けておき、各L形支持部材13の水平支持部13aに水受け6左右両端の延出片60およびその近傍を載置して、各延出片60に貫通形成されているビス挿通孔61を通した固定用のビス(図示省略)によって、各延出片60を水平支持部13aの上面に固定しておけば、前述のように包丁保持具1が開閉扉110の裏面に固定されることで、前後一対の各縦壁21,22と左側壁25aおよび右側壁25bを含む包丁保持具1における本体部2の下端が水受け6に嵌合して閉塞されるので、該本体部2に保持された包丁10の刃板10aから滴下する水滴を受け止めることができる。
【0045】
図2、図3(a)〜図3(c)、図6(b)に示すように、各ロック手段4を一旦前後方向に弾性拡開したのちに、弾性復帰させることで本体部2の隆起部26と各差込口24a,24b,24c,24dに跨がって、各ロック手段4の前後一対の脚部40の下縁部に形成した突条42が隆起部26の前後方向の両縦面に凹設された前後一対で4組の案内レール28A,28Bに個別に摺動自在に嵌め込まれる。これにより、各ロック手段4は案内レール28A,28Bを案内に左右方向(図2の矢印W方向)の移動を自在に隆起部26に着脱可能に組付けられる。
【0046】
案内レール28A,28Bを案内にした各ロック手段4の左右方向(図2の矢印W方向)への移動は、図7(e)、図8(a)に示すように、各ロック手段4に対して各ストッパー5を時計まわりに回動させて折り畳むことで許容されて、図8(a)の実線で示す位置P1と二点鎖線で示す位置P2の間を進退する。なお、各ロック手段4に対してストッパー5が折り畳まれた状態は、図7(b)および図7(e)に示すように、ストッパー5側の係止段部54に各ロック手段4側の第2係止突起44が軽く係止されることによって保持される。そして、図8(a)の実線で示す位置P1での各ロック手段4の停止状態は、図7(b)および図7(d)に示す各ロック手段4の突条42に突設されている前後一対の第1係止突起43が図3(c)、図4および図6(b)に示す前後一対の第2係止部28a,28bに軽く係止されることによって保持され、図8(a)の二点鎖線で示す位置P2での各ロック手段4の停止状態は、前記前後一対の第1係止突起43が前後一対の第2係止部(ただし、図面には前側の第2係止部28a1のみが示されている)に軽く係止されることによって保持される。
【0047】
ストッパー5を折り畳んだ状態で、各ロック手段4を図8(a)の二点鎖線で示す位置P2に移動させたのちに、図2の矢印Fに示すように、4本の包丁10を右斜め上方から斜め姿勢で左斜め下方に向けて移動させることによって、包丁保持具1の本体部2に差込み収納して保持することができる。すなわち、図4および図5に示す第2支持部32の隙間32aと第1支持部30の隙間30aを介して図2の左から2番目の包丁10を除いた3本の包丁10の刃板10aが本体部2の差込口24a,24c,24dに抜き差し可能に差し込まれて、握柄10bの先端面が第1支持面として機能する各第1支持部30における他側斜面30cに支持されるとともに、握柄10b先端部とその近傍の腹面が第2支持面として機能する各第2支持部32の斜面32bに支持され、また、左から2番目の包丁10の刃板10aが本体部2の差込口24bに抜き差し可能に差し込まれて、握柄10bの先端面が第1支持面として機能する第1支持部31における他側斜面31cに支持されるとともに、握柄10b先端部とその近傍の腹面が第2支持面として機能する第2支持部33の斜面33bに支持されるので、各包丁10を包丁保持具1の本体部2から抜き取って使用することができる。
【0048】
一方、ストッパー5を折り畳んだ状態で、各ロック手段4を図8(a)の実線で示す位置P1に移動させることで、各ロック手段4のロック部41により各包丁10はロックされるので、包丁保持具1の本体部2から抜き取って使用することができないものの、ストッパー5を折り畳んだ状態では、小さい子供の弱い力でも各ロック手段4を容易に実線で示す位置P1から二点鎖線で示す位置P2に移動させることができる。そのため、小さい子供によって包丁保持具1の本体部2から各包丁10が抜き取られるおそれを有している。
【0049】
そこで、ストッパー5を折り畳んだ状態で各ロック手段4を図8(a)の実線で示す位置P1に移動させた直後に、摘み53を摘んでストッパー5を反時計方向に回動させて、図8(b)に示すように、摘み53を差込口24a〜24dに挿入して各差込口24a〜24dの一端(本実施例では左端)に摘み53を干渉させることでロック手段4のロック解除を不能にして、小さい子供による各包丁10の抜き取りを防止して安全性を高めることができる。なお、前記ロック手段4のロック解除不能状態において、摘み53を摘んでストッパー5を時計方向に回動させることで、ロック手段4に対してストッパー5を折り畳んだ図8(a)の実線で示す位置P1の状態になるので、この位置P1から二点鎖線で示す位置P2に移動させることで各包丁10を抜き取ることが可能であるものの、図8 (b)に示す状態において、小さい子供が摘み53を摘んでストッパー5を時計方向に回動させ、かつ、ストッパー5が折り畳まれて図8(a)の実線で示す位置P1にあるロック手段4を二点鎖線で示す位置P2に移動させる一連の操作を実行することは極めて困難である。
【0050】
本発明に係る包丁保持具1によれば、ストッパー5の摘み53を各差込口24a〜24dの一端(本実施例では左端)に干渉させることで、各差込口24a〜24dに差込まれた包丁10の刃板10aをロック手段4により抜脱不能にロックできるので、小さい子供による包丁の抜き取りを防止して安全性を高めることができる。また、ストッパー5の摘み53を各差込口24a〜24dの一端に干渉させないことで、前記ロック手段のロック解除が許容されるので、包丁保持具から包丁の抜き取ることができる。
【0051】
本発明の包丁保持具1は、各差込口24a〜24dに差し込まれた刃板10aの表裏両面に対向する前後一対の縦壁21,22が存在していることにより、各縦壁21,22によって刃板10aが隠蔽されるので、刃板10aと指先などとの接触を回避して安全性を高めることができる。しかも、各縦壁21,22に複数の通気用スリット23が形成されていることによって、良好な通気を確保して包丁10使用後の水洗により刃板10aの表面に付着している水分の自然蒸発を促進できる。
【0052】
本発明の包丁保持具1は、各縦壁21,22の下端を閉塞して各差込口24a〜24dに差し込まれた刃板10aから滴下する水滴を受け止める水受け6を備えているので、包丁10使用後の水洗により刃板10aから滴下する水滴を水受け6によって受け止めて、水受け6以外の箇所への水滴の滴下を防止できる。
【0053】
本発明の包丁保持具1は、前後一対の縦壁21,22の前側縦壁21前面にまな板11の抜き差し可能な空間70を隔てて取付けられた前方向の傾倒防止用ホルダー71と、水受け6の前側縦壁21から空間70の下側対向位置まで前方に延出させた延出部分72とからなるまな板11を抜き差し可能に保持するまな板保持手段7を備えているので、該まな板保持手段7によって包丁10と対偶であるまな板11を抜き差し可能に保持することができるので、まな板11を整頓してその所在を特定し使用時の利便性を向上させることができる。
【0054】
本発明の包丁保持具1は、前後一対の縦壁21,22の前側縦壁21前面に取付けられた幅方向の傾倒防止用ホルダー80と、前方向の傾倒防止用ホルダー71および水受け6の延出部分72とからなるラップフィルム等収納箱保持手段8を備えているので、たとえば食品をラップする時などに使用される食品包装用ラップフィルム収納箱や食品包装用アルミホイル収納箱などを挟持して幅方向と前後方向の2方向への傾倒を不能に保持することができるのから、食品包装用ラップフィルム収納箱や食品包装用アルミホイル収納箱などのを整頓してその所在を特定し使用時の利便性を向上させることができる。
【0055】
前記実施形態の包丁保持具1では、図2の矢印Fに示すように、各包丁10を右斜め上方から斜め姿勢で左斜め下方に向けて移動させることによって、包丁保持具1の本体部2に差込み収納して保持することができる構成、つまり右利きの使用者に便利な構成としているが、前記実施形態の包丁保持具1におけるまな板保持手段7およびラップフィルム等収納箱保持手段8などの取付けを後側の縦壁22に変換したのち、前述と同様に左右一対の取付け手段9を利用して包丁保持具1を開閉扉110の裏面に取付けることで、各包丁10を左斜め上方から斜め姿勢で右斜め下方に向けて移動させることによって、包丁保持具1の本体部2に差込み収納して保持することができる構成、つまり左利きの使用者に便利な構成を実現できる。
【0056】
また、実施形態の包丁保持具1では、4本の包丁10を差込み収納して保持する構成としているが、本発明に係る包丁保持具1に差込み収納して保持される包丁10の本数は4本にのみ限定されるものではなく、4本未満の包丁10を差込み収納して保持する構成または4本を超える数の包丁10を差込み収納して保持する構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
流し台100における各種調理用品や調味料などの収納に使用できる区画された3つの収納室の開閉扉110裏面に取付け手段9によって取付けられる。また、包丁保持具1との非干渉状態でロック手段4のロック解除を許容するとともに、包丁保持具1との干渉状態でロック手段4のロック解除を不能にすることが可能なストッパー5を備えていることにより、小さい子供による各包丁10の抜き取りを防止して安全性を高める。
【符号の説明】
【0058】
1 包丁保持具
3 握柄保持部
4 ロック手段
5 ストッパー
6 水受け
7 まな板保持手段
8 ラップフィルム等収納箱保持手段
10 包丁
10a 刃板
10b 握柄
11 まな板
12 食品包装用ラップフィルム収納箱や食品包装用アルミホイル収納箱
21 前側の縦壁
22 後側の縦壁
23 通気用スリット
24a〜24d 差込口
22 後側の縦壁
70 まな板の抜き差し空間
71 前方向の傾倒防止用ホルダー
72 延出部分
80 幅方向の傾倒防止用ホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包丁の刃板を抜き差し可能に差し込み収納し得る差込口と、この差込口に刃板が差し込まれた包丁の握柄を支持して該握柄を露出状態で外部に保持する握柄保持部を備えているとともに、前記差込口に差込んだ刃板を抜脱不能にロックするロック解除可能なロック手段を備えた包丁保持具において、
前記包丁保持具との非干渉状態でロック手段のロック解除を許容するとともに、前記包丁保持具との干渉状態で前記ロック手段のロック解除を不能にすることが可能なストッパーを備えていることを特徴とする包丁保持具。
【請求項2】
前記包丁保持具は、前記差込口に差し込まれた刃板の表裏両面に対向する前後一対の縦壁を有し、各縦壁に複数の通気用スリットが形成されている請求項1に記載した包丁保持具。
【請求項3】
前記各縦壁の下端を閉塞して前記握柄保持部の差込口に差し込まれた刃板から滴下する水滴を受け止める水受けを備えている請求項1または請求項2に記載した包丁保持具。
【請求項4】
前記前後一対の縦壁の前側縦壁前面にまな板の抜き差し可能な抜き差し空間を隔てて取付けられた前方向の傾倒防止用ホルダーと、前記水受けの前記前側縦壁から前記空間の下側対向位置まで前方に延出させた延出部分とからなるまな板を抜き差し可能に保持するまな板保持手段を備えている請求項1,請求項2または請求項3に記載した包丁保持具。
【請求項5】
前記前後一対の縦壁の前側縦壁前面に取付けられた幅方向の傾倒防止用ホルダーと、前記前方向の傾倒防止用ホルダーおよび前記水受けの延出部分とからなるラップフィルム等収納箱保持手段を備えている請求項1,請求項2または請求項3に記載した包丁保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−252907(P2010−252907A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104045(P2009−104045)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(599040643)株式会社カワノ (7)
【Fターム(参考)】