説明

包丁立て

【課題】 符号錠に対する解錠操作がより簡単である符号錠付きの包丁立てを提供する。
【解決手段】 本発明は、刃部が下向きとなるように包丁の把手部を支持する包丁立てに関する。この包丁立て1は、把手部を下方から支持する上壁部10を有するケーシング2と、上壁部10を上から貫通する刃部を抜け止めする第1の位置Aと、当該刃部の上方への抜けを許容する第2の位置Bとのいずれか一方に切り替え自在な抜け止め部材3とを備えている。また、本発明の包丁立て1は、抜け止め部材3を施解錠自在にロックする符号錠4であって、その符号がケーシング2の上方から視認可能となる位置に配置された符号錠4を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、符号錠付きの包丁立てに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の包丁立てとして、刃部が下向きとなるように包丁の把手部を支持する包丁立てであって、いったん支持された包丁を符号錠を解除しない限り取り出すことができないようにした、符号錠付きのものがある(特許文献1参照)。
この従来の包丁立ては、包丁の把手部を下方から支持する上壁部を有するケーシングと、上壁部を上から貫通する刃部を抜け止めする第1の位置と、刃部の上方への抜けを許容する第2の位置とのいずれか一方に切り替え自在な抜け止め部材と、この抜け止め部材を抜け止め位置にロックするための符号錠とを備えたものである。
【0003】
従って、この従来の包丁立てでは、ユーザが符号錠を所定の解錠番号に合わせないと、抜け止め部材を第2の位置に切り替えることができないので、幼児や子供等の包丁を使用させたくない者(以下、非ユーザということがある。)が包丁立てにセットされた包丁を取り出すことができず、安全性に優れた製品となっている。
【特許文献1】 特開平10−229947号公報(0025欄)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の包丁立てでは、符号錠の符号がケーシングの正面側に向くように、当該符号錠がケーシングの正面壁部に取り付けられているので、本来のユーザによる包丁立てに対する解錠操作が面倒であるという問題があった。
すなわち、この種の包丁立ては、例えば、キッチン流し台の開き扉の内面に取り付けられることが多く、この場合の取り付け位置は、ユーザの膝元程度の高さとなる。
【0005】
このため、従来の包丁立てのように、符号錠がケーシングの正面壁部に設けられていると、ユーザが自身の膝高さ付近まで屈んで目線を下に落とさないと、符号錠の符号を視認することができず、包丁立てに対する解錠操作が煩雑であった。
そこで、本発明の課題は、符号錠に対する解錠操作がより簡単である符号錠付きの包丁立てを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、刃部が下向きとなるように包丁の把手部を支持する包丁立てであって、前記把手部を下方から支持する上壁部を有するケーシングと、前記上壁部を上から貫通する前記刃部を抜け止めする第1の位置と、当該刃部の上方への抜けを許容する第2の位置とのいずれか一方に切り替え自在な抜け止め部材と、前記抜け止め部材を施解錠自在にロックする符号錠であって、その符号が前記ケーシングの上方から視認可能となる位置に配置された符号錠と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明の包丁立てによれば、抜け止め部材を施解錠自在にロックする符号錠の符号が、ケーシングの上方から視認可能となる位置に配置されているので、ユーザが立ったままの姿勢で符号錠の符号を視認することができる。
このため、ユーザが自身の膝高さ付近まで屈んで目線を下に落とさなくても、符号錠を操作することができ、包丁立てに対する解除操作が簡単になる。
【0008】
本発明の包丁立てにおいて、ケーシングに対する符号錠の取り付け位置は、その符号がケーシングの上方から視認可能であれば特に限定されないが、例えば、ケーシングの上壁部の上面や、ケーシングの側壁部の外面に設定することができる。
もっとも、符号錠をケーシングの側壁部の外面に設けると、符号錠がケーシングの幅方向に突出することになり、製品自体の幅寸法が増大するので、符号錠の取り付け位置は、ケーシングの上壁部の上面とすることが好ましい。
【0009】
また、本発明の包丁立てにおいて、前記符号錠は、前記抜け止め部材に対するロックを解除するための解錠番号の変更機能を有することが好ましい(請求項3)。
この場合、幼児や子供等の非ユーザが解錠番号を察知しても、符号錠に対する解錠番号を逐一変更することで非ユーザによる解錠を防止することができ、より安全性に優れた包丁立てを提供することができる。
【0010】
そして、解錠番号の変更機能を有する前記符号錠は、例えば、所定の回動角度のときだけ前記ケーシング側のタンブラ孔に適合するタンブラを有する回動体と、この回転体に対する周方向位置が切り替え可能となるように当該回動体に同軸心状に外嵌された外筒体とを有し、この外筒体に前記符号が記されているものを採用することが好ましい(請求項4)。
この場合、上記外筒体を構成部材に追加するだけで、解錠番号の変更機能を符号錠に付加することができ、当該符号錠付きの包丁立てを安価に製造できるという利点がある。
【発明の効果】
【0011】
以上の通り、本発明によれば、符号錠付きの包丁立てにおいて、その符号錠に対する解錠操作が簡単であるため、ユーザによる使い勝手がよい包丁立てが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る符号錠付き包丁立ての正面図であり、図2は、その包丁立ての平面図である。また、図3(a)は、当骸包丁立ての左側面断面図であり、図3(b)は当該包丁立ての右側面断面図である。更に、図4は、ケーシングの符号錠部分の拡大断面図である。
なお、図1では、中心線を境とした右側だけが正面図になっており、中心線の左側は断面図になっている。
【0013】
〔包丁立ての全体構成〕
図1〜図3に示すように、本実施形態の包丁立て1は、刃部が下向きとなるように包丁の把手部(図示せず)を支持するものであり、その把手部を下方から支持する上壁部10を有するケーシング2と、包丁の刃部に対する抜け止め部材3と、この抜け止め部材3を抜け止め位置にロックする施解錠自在な符号錠4とを備えている。
【0014】
上記ケーシング2は、正面から見てほぼ横長の長方形状に形成された、プラスチック製の中空ボックス体により構成されている。このケーシング2は、包丁の刃部(図示せず)を内部に収容可能であり、前後一対の正面壁部6及び背面壁部7と、この各壁部6,7の幅方向両縁同士を連結する左右一対の側壁部8,9と、これらの壁部6〜9の天井開口部を閉塞する上壁部10とを一体に備えている。
なお、ケーシング2の底部には、比較的長尺な刃部の先端部がケーシング2の下方から突出できるように、刃部の逃げ孔11(図1参照)が形成されている。
【0015】
図2に示すように、ケーシング2の上壁部10には、包丁の刃部を抜き差し可能な複数(図例では4つ)の差し込み孔12が形成されており、この各差し込み孔12は、包丁の刃部を挿通可能であるが包丁の把手部は挿通不能な幅のスリット状になっている。
前記抜け止め部材3は、ケーシング2の幅方向(図1の左右方向)に長い断面コの字状の横長のチャンネル材よりなり、同ケーシング2の幅方向にスライド自在となるように、上壁部10の下面側に収納されている。
【0016】
抜け止め部材3には、上壁部10の各差し込み孔12に対応する複数(図例では4つ)の連通孔部13が形成されている。この各連通孔部13は、抜け止め部材3が右側に移動すると差し込み孔12が半開し、抜け止め部材3が左側に移動すると差し込み孔12が全開する形状になっている。
このため、抜け止め部材3は、上壁部10を上から貫通するように差し込み孔12に差し込まれた包丁の刃部を抜け止めする第1の位置A(図2参照)と、当該刃部の上方への抜けを許容する第2の位置B(図2参照)とのいずれか一方に切り替え自在である。
【0017】
ケーシング2の内部には、抜け止め部材3を常に抜け止め解除側(第2の位置B側:図1及び図2の左側)に付勢するコイルばねよりなる付勢部材15が設けられている。
また、ケーシング2の正面側には、抜け止め部材3に連動連結されたつまみ部よりなる操作部材16が設けられており、この操作部材16を指でつまんで右側に移動させることにより、抜け止め部材3を抜け止め側(第1の位置A側:図1及び図2の右側)に強制移動させることができる。
【0018】
〔符号錠の構成〕
図1及び図4に示すように、本実施形態の符号錠4は、ケーシング2の上壁部10に設けられた錠本体17と、ケーシング2の背面壁部7に設けられたロック部材18とから構成されている。
このうち、ロック部材18は、抜け止め位置(第1の位置A)に移動した抜け止め部材3をその位置に保持する板ばね部材よりなり、このロック部材18の先端爪に抜け止め部材3の左縁部が引っ掛かることにより、当該抜け止め部材3を抜け止め位置(第1の位置A)に保持することができる。
【0019】
ケーシング2の上壁部10の上面側の左端部には、符号錠4の錠本体17を収納する円筒状の錠凹部19が形成されている。符号錠4の錠本体17は、その錠凹部19の内部に縦方向の軸心回りに回動自在に収納された中空筒状の回動体20と、この回動体20の上部に同軸心状に外嵌された外筒体21とを備えている。
図4に示すように、錠本体17の回動体20は、その回動軸心に沿って上下方向に移動自在となるように、錠凹部19の内部に形成されたボス部22に挿通されている。
【0020】
錠凹部19のボス部22には、コイルばねよりなる付勢部材23が外嵌されており、そのコイルばねよりなる付勢部材23の上端を回動体20の上部に形成されたフランジ部に当接させることで、錠本体17が常に上方突出状態に付勢されている。
また、回動体20の下端部には、当該回動体20を抜け止めするねじ部材24が同軸心状に螺合されている。このねじ部材24のフランジ部には周方向に連続する山形突条が形成され、これにより、回動体20がその回動方向で間欠的に位置決めされている。
【0021】
更に、錠凹部19の底部には、所定の解錠パターンを有する複数のタンブラ孔25が形成されており、回動体20の下端部には、その各タンブラ孔25に対応する複数のタンブラ26が周方向に所定間隔おきに形成されている。
従って、回動体20が縦軸心回りで所定の回動角度になったときだけ、各タンブラ26が錠凹部19の各タンブラ孔25と合致し、錠本体17を付勢部材23に抗して下方に押し下げられるようになっている。
【0022】
一方、前記ロック部材18の長手方向中途部には解除突部27が形成されていて、錠本体17が錠凹部19内へ押し下げられると、回動体20の外周部分が解除突部27に当接する。
これにより、ロック部材18の先端爪が抜け止め部材3の左縁部から外れ、前記付勢部材15のばね力によって抜け止め部材3が自動的に抜け止め解除位置(第2の位置B)に戻るようになっている。
【0023】
〔外筒体の構成〕
図2及び図4に示すように、外筒体21は、ほぼ平坦な円板部分と、この円板部分の周縁から下方に一体に延びる周壁部分とを有する円筒状の部材よりなり、円板部分の上面に、符号錠4に対する解錠番号を構成する番号表示(図例では0〜9の10種類の番号)が施されている。
外筒体21の中心部には、取付ピン28が一体かつ同軸心状に突設されている。この取付ピン28は、所定の上下方向ストロークで移動自在でかつ上方に抜け止めされた状態で、回動体20の筒内部に同軸心状に挿通されている。
【0024】
また、外筒体21の底部の内周部分には、当該外筒体21の軸方向長さ(図4の上下方向長さ)よりも短寸のスプライン刃部29が形成されている。
このため、外筒体21が自重で下方位置にあるとき(図4の状態)には、スプライン刃部29が回動体20の外周部に嵌合して、両者の相対回動が固定される。他方、外筒体21を指でつまんで上方位置にすると、スプライン刃部29が回動体20の外周部との嵌合が解除され、両者の相対回動が許容されるようになっている。
【0025】
従って、外筒体21を上方位置にして回動体20に対するスプライン嵌合をいったん解除してから、外筒体21のみを回動体20に対して空回りさせ、その後、外筒体21を下方位置に戻して回動体20にスプライン嵌合させることにより、抜け止め部材3に対するロックを解除するための解錠番号を変更することができる。
【0026】
〔包丁立ての使用方法と作用効果〕
次に、以上の構成を有する包丁立て1の使用方法と作用効果を説明する。
まず、本実施形態の包丁立て1に対して包丁をセットするには、まず、ケーシング2の上壁部10の差し込み孔12が全開状態にあることを確かめた上で、その差し込み孔12に対して包丁の刃部を上から差し込んで行けばよい。なお、このとき、抜け止め部材3は抜け止め解除位置(第2の位置B)になっている。
【0027】
その後、操作部材16を抜け止め位置側(図1及び図2の右側)に移動させると、符号錠4のロック部材18が抜け止め部材3に引っ掛かり、当該抜け止め部材3が抜け止め位置(第1の位置A)に保持される。
このとき、ケーシング2の上壁部10の差し込み孔12が抜け止め部材3によって一部塞がれて半開状態になるので、ケーシング2にセットされた包丁を差し込み孔12から抜き取ることができなくなる。
【0028】
一方、セットされた包丁を包丁立て1から抜き取るには、符号錠4の錠本体17を所定の解錠番号(例えば、「3」)となるように回動操作し、この状態で、錠本体17を指で押し下げるようにする。
すると、図3(a)に示すように、錠本体17がケーシング2の錠凹部19内に下降し、回動体20の解除突部27がロック部材18に当接し、このロック部材18の先端爪が抜け止め部材3から外れる。
【0029】
これにより、付勢部材15の付勢力で抜け止め部材3が抜け止め解除位置(第2の位置B)に自動的に戻り、差し込み孔12が全開状態になる。そこで、この時点で、包丁を差し込み孔12から上方に抜き取るようにすればよい。
一方、符号錠4の解錠番号が非ユーザ等の第三者に察知されたと思う場合は、前記した通り、外筒体21の回動体20に対するスプライン嵌合をいったん解除して空回りさせればよく、これにより、解錠番号を簡単に変更することができる。
【0030】
本実施形態の包丁立て1によれば、抜け止め部材3を施解錠自在にロックする符号錠4の符号(外筒体21の符号)が、ケーシング2の上方から視認可能となる位置に配置されているので、ユーザが立ったままの姿勢で符号錠4の符号を視認することができる。
このため、ユーザが自身の膝高さ付近まで屈んで目線を下に落とさなくても、符号錠4を操作することができ、包丁立て1に対する解除操作が簡単である。
【0031】
また、本実施形態の包丁立て1によれば、符号錠4が、抜け止め部材3に対するロックを解除するための解錠番号の変更機能を有しているので、幼児や子供等の非ユーザが解錠番号を察知しても、符号錠4に対する解錠番号を逐一変更することで非ユーザによる解錠を防止することができ、より安全性に優れた包丁立て1を得ることができる。
また、符号が記された外筒体21を回動体20に着脱自在にスプライン嵌合させる構造としたので、外筒体21を新たに追加するだけで、解錠番号の変更機能を符号錠4に付加することができ、符号錠4付きの包丁立てを安価に製造することができる。
【0032】
上記実施形態は例示的なものであって限定的なものではない。すなわち、本発明の範囲は前記した特許請求の範囲によって示され、その請求項の意味に入るすべての変形例は本発明に含まれるものである。
例えば、符号錠4の錠本体17をケーシング2の側壁部8,9に設けることにしてもよい。この場合には、錠本体17は、水平軸心回りに回動自在であり、かつ、その外周側面に符号が記されることになる。
【0033】
もっとも、ケーシング2の側壁部8,9に符号錠4の錠本体17を設けると、その錠本体17の軸方向長さの分だけケーシング2が肥大化するという欠点がある。
このため、前記実施形態のように、ケーシングの上壁部10に符号錠4の錠本体17を設けることが好ましい。
【0034】
また、上記実施形態では、包丁がほぼ垂直方向に向いた状態で上壁部10に支持されるようになっているが、包丁を垂直状態ではなく斜めに支持する構造の上壁部10を採用することができる。この場合、ケーシング2の上下高さをよりコンパクト化できる利点がある。
更に、本発明の包丁立て1は、例えばキッチン流し台の開き扉の内面に設置することができるが、最近流行の抽斗タイプの流し台の場合には、当該包丁立て1を抽斗の正面板の内面に取り付けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】 符号錠付き包丁立ての正面図である。
【図2】 上記包丁立ての平面図である。
【図3】 (a)は上記包丁立ての左側面断面図であり、(b)は上記包丁立ての右側面断面図である。
【図4】 ケーシングの符号錠部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 包丁立て
2 ケーシング
3 抜け止め部材
4 符号錠
6 正面壁部
7 背面壁部
10 上壁部
17 錠本体
18 ロック部材
19 外筒体
20 回動体
21 外筒体
25 タンブラ孔
26 タンブラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃部が下向きとなるように包丁の把手部を支持する包丁立てであって、
前記把手部を下方から支持する上壁部を有するケーシングと、
前記上壁部を上から貫通する前記刃部を抜け止めする第1の位置と、当該刃部の上方への抜けを許容する第2の位置とのいずれか一方に切り替え自在な抜け止め部材と、
前記抜け止め部材を施解錠自在にロックする符号錠であって、その符号が前記ケーシングの上方から視認可能となる位置に配置された符号錠と、
を備えていることを特徴とする包丁立て。
【請求項2】
前記符号錠は、前記上壁部の上面に設けられている請求項1に記載の包丁立て。
【請求項3】
前記符号錠は、前記抜け止め部材に対するロックを解除するための解錠番号の変更機能を有する請求項1又は2に記載の包丁立て。
【請求項4】
前記符号錠は、所定の回動角度のときだけ前記ケーシング側のタンブラ孔に適合するタンブラを有する回動体と、この回転体に対する周方向位置が切り替え可能となるように当該回動体に同軸心状に外嵌された外筒体とを有し、この外筒体に前記符号が記されている請求項3に記載の包丁立て。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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