説明

包着包装材

【課題】従来に比して店頭での陳列等に適した外観性を得るとともに、通水性や通気性をより向上させることができる包着包装材を提供する。
【解決手段】全面に断続的な多数のスリット部15を形成した合成樹脂発泡体を主体とする軟質シート状物11のカップ状成形体20であって、前記カップ状成形体20は、開口部35の内側中央部に形成された中央座部30と、前記中央座部30から内壁部41及び外壁部46へと一体に連接形成され凸曲面状の開口縁部45を有する二重壁部40とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被包装物を個別に包装するための軟質の包着包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
果物や装飾品あるいは日用品または精密製品もしくは各種部品等をその衝撃や表面部の損傷から守るために、該被包装物の外側のほぼ全体を個別的に軟らかく包み込むことができる包着包装材が用いられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この包着包装材は、合成樹脂発泡体を主体とする軟質のシート状物よりなり、被包装物の底部が載置される略円形の中央座部と、前記中央座部を上方に持ち上げかつ該中央座部の下降とともに内方へ反転するように、当該中央座部から下部外方へ傾斜をもって延設された反転傾斜部と、前記反転傾斜部より外方へ形成された略円形包着部とからなる。
【0004】
上記従来の包着包装材では、被包装物を中央座部に配置してその底部を押し付け反転傾斜部を反転させるだけで被包装物を包装することができ、特に、桃やリンゴ、メロン等の略球形状の果物の包装に適している。また、中央座部の中心部に貫通孔を形成することにより、内部の水分を外部に排出することができる。さらに、この包着包装材は真空成形によって製造可能であるため経済的に有利であり、積み重ねが可能であるため、収納や保管の際に省スペース化を図ることができて有利である。
【0005】
しかるに、従来の包着包装材は、被包装物の包装に際して、そのほぼ全体を包着するものであるため、包装時には被包装物の外観が隠れてしまい、被包装物を包装したまま店頭に陳列等する場合には外観上適していない。加えて、より優れた通水性や通気性を持たせることができる包着包装材が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2660987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、従来に比して店頭での陳列等に適した外観性を得るとともに、通水性や通気性をより向上させることができる包着包装材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1の発明は、全面に断続的な多数のスリット部を形成した合成樹脂発泡体を主体とする軟質シート状物のカップ状成形体であって、前記カップ状成形体は、開口部の内側中央部に形成された中央座部と、前記中央座部から内壁部及び外壁部へと一体に連接形成され凸曲面状の開口縁部を有する二重壁部とを有することを特徴とする包着包装材に係る。
【0009】
請求項2の発明は、前記スリット部が列状に平行に形成されている請求項1に記載の包着包装材に係る。
【0010】
請求項3の発明は、前記スリット部が隣接する列との間で連続部と交互に千鳥状に形成されている請求項2に記載の包着包装材に係る。
【0011】
請求項4の発明は、前記スリット部の長さが5〜20mmである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包着包装材に係る。
【0012】
請求項5の発明は、前記カップ状成形体が、予熱された軟質シート状物を上型及び下型を有する真空成形型に配置して真空プレス成形によって成形されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の包着包装材に係る。
【0013】
請求項6の発明は、前記中央座部が前記外壁部の下端より上方に位置する持上座部として形成されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の包着包装材に係る。
【0014】
請求項7の発明は、前記外壁部が前記開口縁部から上方へ反転可能に形成された請求項1ないし6のいずれか1項に記載の包着包装材に係る。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明に係る包着包装材は、全面に断続的な多数のスリット部を形成した合成樹脂発泡体を主体とする軟質シート状物のカップ状成形体であって、前記カップ状成形体は、開口部の内側中央部に形成された中央座部と、前記中央座部から内壁部及び外壁部へと一体に連接形成され凸曲面状の開口縁部を有する二重壁部とを有するため、従来に比して店頭での陳列等に適した外観性を得ることができるとともに、通水性や通気性に加え変形性をより向上させることができて、極めて良好に包装することができる。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1において、前記スリット部が列状に平行に形成されているため、スリット部を簡便に形成することができ、製造効率の面で有利である。
【0017】
請求項3の発明は、請求項2において、前記スリット部が隣接する列との間で連続部と交互に千鳥状に形成されているため、外観性をより向上させることができる。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1ないし3において、前記スリット部の長さが5〜20mmであるため、十分な通水性、通気性、変形性を得ると同時に必要な強度を確保することができ、外観性も損なうことがない。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1ないし4において、前記カップ状成形体が、予熱された軟質シート状物を上型及び下型を有する真空成形型に配置して真空プレス成形によって成形されているため、簡便かつ大量に製造することが可能となり、経済的に有利である。
【0020】
請求項6の発明は、請求項1ないし5において、前記中央座部が前記外壁部の下端より上方に位置する持上座部として形成されているため、包装時に被包装物の底部が接地することを防止することができる。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1ないし6において、前記外壁部が前記開口縁部から上方へ反転可能に形成されたため、被包装物の全体を簡単かつ確実に包装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例に係る包着包装材の上部側斜視図である。
【図2】包着包装材の底部側斜視図である。
【図3】包着包装材の断面図である。
【図4】外壁部を上方へ反転させた包着包装材の断面図である。
【図5】多数のスリット部を形成した軟質シート状物の平面図である。
【図6】スリット加工工程の一例を表した概略図である。
【図7】包着包装材を成形する真空成形型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜図4に示す本発明の一実施例に係る包着包装材10は、全面に断続的な多数のスリット部15を形成した合成樹脂発泡体を主体とする軟質シート状物11のカップ状成形体20であって、中央座部30と、二重壁部40とを有する。図3,4において、符号Mは、桃やリンゴ、メロン等の略球形状の果物からなる被包装物である。
【0024】
軟質シート状物11は、果物等の被包装物Mの表面を傷付けることなく柔らかく包み込むことが可能な柔軟性を有する材料によって形成される。この軟質シート材11としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン等の公知の合成樹脂発泡体を主体とする材料が好適に用いることができる。
【0025】
スリット部15は、軟質シート状物11を後述するカップ状成形体20に成形した際に多数の貫通孔として開口する部分であって、通水性や通気性の他、当該包着包装材10の変形性を高める利点がある。スリット部15の長さとしては、包着包装材10の大きさに応じて適宜設定されるが、外観性を損なうことなく十分な通水性、通気性、変形性を得ると同時に必要な強度を確保するために、5〜20mmとすることが好ましい。スリット部15の長さが5mm以下の場合、通水性や通気性、変形性の効果を十分に得るためにはスリット部15の数を必要以上に増やさなければならなくなり、外観上好ましくない。長さが20mm以上の場合、包着包装材10に必要な強度を確保するためにはスリット部15の数を必要以上に減らさなければならなくなり、外観上好ましくない。
【0026】
また、このスリット部15は、図5に示すように、軟質シート状物11の全面に列状に平行に形成されていることが好ましい。実施例のスリット部15は、軟質シート状物11の長さ方向に対して斜め方向となる列15A,15Bで形成されている。これにより、スリット部15を簡便に形成することができ、製造効率の面で有利である。特に、スリット部15が隣接する列15A,15Bとの間で連続部16と交互に千鳥状に形成することが好ましく勧められる。スリット部15を千鳥状に形成すれば、外観性をより向上させることができる。
【0027】
中央座部30は、開口部35の内側中央部に形成され、被包装物Mの底部が載置可能とされる。この中央座部30は、被包装物Mの形状に応じて、円形状、楕円形状、三角形状や四角形状等の多角形状等、適宜の形状に形成される。実施例の中央座部30は、略円形状である。
【0028】
二重壁部40は、中央座部30から内壁部41及び外壁部46へと一体に連接形成され凸曲面状の開口縁部45を有する。二重壁部40の開口縁部45にあっては、図1,3に示すように、軟質シート状物11が折り返して形成されるため、開口部35の保形性を高めることができる。
【0029】
内壁部41は、被包装物Mの外周側部を包着可能に構成される。この内壁部41としては、中央座部30の形状や被包装物Mの外形に応じた適宜の形状に形成されるが、被包装物Mを安定して包着するために、上端が下端より大径とするとともに外側へわずかに膨らんだ縦断面略円弧状とすることが好ましい。実施例では、図1,3に示すように、略椀形状である。
【0030】
外壁部46は、被包装物Mの包着時に当該包着包装材10を自立可能に構成される。外壁部46としては、開口部35の形状に応じて適宜の形状に形成されるが、安定した自立を可能とするために下端を上端より大径とすることが好ましい。また、この外壁部46は、図4に示すように、開口縁部45から上方へ反転可能に形成される。外壁部46を上方へ反転させることにより、被包装物Mの包着時にその上部を包み込むことが可能となるため、被包装物Mの全体を簡単かつ確実に包装することができる。このように被包装物Mの全体を包装する場合は、輸送時等に最適である。
【0031】
また、このカップ状成形体20では、図3に示すように、中央座部30が外壁部46の下端より上方に位置する持上座部30Aとして形成されていることが好ましい。この持上座部30Aにあっては、外壁部46の下端より上方に位置することにより、被包装物Mが載置された場合であっても被包装物Mの底部が接地することを防止することができる。これにより、特に、果物等を包装する際に底部の傷み等を抑制することができる。
【0032】
次に、図6,7を用いて、本発明の包着包装材10の製造工程について説明する。この製造工程では、軟質シート状物11にスリット部15を形成するスリット形成工程と、スリット部15が形成された軟質シート状物11をカップ状成形体に成形するカップ状成形工程が実施される。
【0033】
図6に示すスリット形成工程では、従来公知のスリット形成装置50を使用することができる。この図において、符号12はスリット部が形成される前の軟質シート状物11のロール、13はスリット部15を形成した後の軟質シート状物11のロール、51は軟質シート状物11を供給する送出手段、52はシート状物11を巻き取る巻取手段、53,54は供給された軟質シート状物11を弛まないようにするためのガイドロール、55は軟質シート状物11にスリット部15を形成するための多数の刃56を備えたスリット形成手段である。
【0034】
スリット形成工程では、まず、軟質シート状物11のロール12が送出手段51からガイドロール53,54を経由して巻取手段52に供給される。その際、供給された軟質シート状物11は、ガイドロール53,54間で弛みがない状態とされている。次いで、所定の供給速度でロール12から随時軟質シート状物11が供給され、前記供給速度と略同一となる回転速度で供給方向と同一の回転方向にスリット形成手段55を回転させることにより、図5に示すように、軟質シート状物11の全面に多数のスリット部15が形成される。このようにして多数のスリット部15が形成された軟質シート状物11は、巻取手段52によってロール13として巻き取られ、次のカップ状成形工程に搬送される。
【0035】
カップ状成形工程では、成形性や経済性の観点から、図7に示す真空プレス成形が好適に実施され、予熱された軟質シート状物11を上型61及び下型66を有する真空成形型60に配置してカップ状成形体20が成形される。図7において、符号62は中央座部30と内壁部41と開口縁部45と外壁部46の所定形状を規定する上型61の型面、67は中央座部30と内壁部41と開口縁部45と外壁部46の所定形状を規定する下型66の型面、68は型面67に開口して図示しない真空ポンプ等に接続された真空吸引孔である。
【0036】
この真空プレス成形では、まず、前記スリット形成工程でスリット部15が形成された軟質シート状物11が80〜120℃程度に加熱されて軟化され、下型66の型面67上に載置される。次いで、真空吸引孔68を介して真空ポンプを作動させて軟質シート状物11を型面67に密着させ、該軟質シート状物11に対して上型61の型面62を押圧させることにより、カップ状成形体20に成形される。なお、成形後は、適宜外周のトリミングを行うことによって包着包装材10を得ることができる。
【0037】
このようにして製造された包着包装材10にあっては、開口部35を介して被包装物Mを中央座部30に載置するだけで、該被包装物Mの外観を全て隠すことなく効果的に包装することができるため、被包装物Mを包装したまま店頭に陳列等した場合であっても外観上好適である。また、多数のスリット部15が形成されているため、適度な通水性や通気性を得ることができ、変形性にも優れるため被包装物Mを安定かつ確実に包装することができる。さらに、必要に応じて外壁部46を反転させて被包装物Mの全体を包み込むことが可能であるため、より効果的に包装することができる。
【0038】
また、この包着包装材10は、保管や輸送に際して、特に折り畳む等する必要がなく、そのまま積み重ねることが可能であるため、省スペース化を図ることができて有利である。加えて、真空プレス成形によって成形することにより、簡便かつ大量に製造することが可能となり、経済的に有利となる。
【0039】
なお、本発明の包着包装材は、前述の実施例のみに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の一部を適宜に変更して実施することができる。例えば、実施例では、包着包装材の製造に際し、スリット形成工程と真空プレス成形とを個別に実施したが、連続的に実施して製造効率の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 包着包装材
11 軟質シート状物
15 スリット部
20 カップ状成形体
30 中央座部
35 開口部
40 二重壁部
41 内壁部
45 開口縁部
46 外壁部
M 被包装物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全面に断続的な多数のスリット部を形成した合成樹脂発泡体を主体とする軟質シート状物のカップ状成形体であって、
前記カップ状成形体は、開口部の内側中央部に形成された中央座部と、前記中央座部から内壁部及び外壁部へと一体に連接形成され凸曲面状の開口縁部を有する二重壁部とを有することを特徴とする包着包装材。
【請求項2】
前記スリット部が列状に平行に形成されている請求項1に記載の包着包装材。
【請求項3】
前記スリット部が隣接する列との間で連続部と交互に千鳥状に形成されている請求項2に記載の包着包装材。
【請求項4】
前記スリット部の長さが5〜20mmである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包着包装材。
【請求項5】
前記カップ状成形体が、予熱された軟質シート状物を上型及び下型を有する真空成形型に配置して真空プレス成形によって成形されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の包着包装材。
【請求項6】
前記中央座部が前記外壁部の下端より上方に位置する持上座部として形成されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の包着包装材。
【請求項7】
前記外壁部が前記開口縁部から上方へ反転可能に形成された請求項1ないし6のいずれか1項に記載の包着包装材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−269803(P2010−269803A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120924(P2009−120924)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(509336303)株式会社ソフトプラテック (3)
【Fターム(参考)】