説明

包装体用カバー

【課題】衛生用紙を内包する包装体の詰め替えが行われる従来の収納容器は、底蓋の着脱操作が比較的煩雑で手間が掛かる上に良好な使い心地を得ることができない。
【解決手段】複数枚の衛生用紙2を内包する包装体1を覆ってこれを収容するための本発明による包装体用カバー10は、包装体1を取り囲む空間Sが画成されたカバー本体11と、このカバー本体11の下端に形成されて包装体1を出し入れするための下端開口部11aと、カバー本体11の上端に形成されて包装体1に収容された衛生用紙2を取り出すための上端開口部11bと、カバー本体11に設けられてカバー本体11に対して包装体1を保持するための保持手段13とを具え、保持手段13は包装体1に内包された衛生用紙2の消費に伴ってカバー本体11に対する包装体1の底面1cの位置を上端開口部11b側に近付けてその位置に維持できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数枚の衛生用紙を内包する包装体を覆ってこれを収容する包装体用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパーやキッチンタオルなどの衛生用紙のうち、特に乾燥を嫌うウェットティシュにおいては、密封性の高い包装を行う必要がある。また、このようなウェットティシュを多数枚内包する包装体においては、その使用上の便宜性などの要求から、収納容器に収容した状態で用いられることが多い。このような収納容器が特許文献1〜3にて提案されている。何れも、包装体を取り囲む容器本体と、包装体を出し入れするための底蓋とを具え、容器本体の上部に形成された開閉可能な開口から包装体に内包されたウェットティシュを1枚ずつ取り出すことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−68335号公報
【特許文献2】特開2010−115383号公報
【特許文献3】特開2009−149354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3に開示された従来の収納容器において、包装体に内包されたウェットティシュをすべて使い切った場合、容器本体から底蓋を取り外して空の包装体を新たな詰め替え用の包装体と入れ替え、再び底蓋を容器本体に取り付ける必要がある。通常、容器本体とこれに対して着脱可能な底蓋とは、内部の密封性を保つために何らかのシール構造を介して結合されるようになっているため、容器本体に対する底蓋の着脱操作が比較的煩雑で手間が掛かる。
【0005】
また、ウェットティシュの使用に伴い、収納容器の上部の開口から包装体に内包された最上端に位置するウェットティシュまでの距離が次第に遠くなり、収納容器の開口からウェットティシュが取り出しにくくなってしまう不具合が生ずる。これは、一般的なテッシュボックスの使用状況などからも容易に理解されよう。このため、特許文献3においては、ばね部材を介して収納容器の上部の開口側に付勢された中底を組み込み、収納容器の上部の開口から包装体に内包された最上端に位置するウェットティシュまでの距離が常に一定となるようにさせている。しかしながら、このような構造は非常に複雑であるばかりか、包装体に内包されたウェットティシュの量によってばね力が大きく変化するため、収納容器の開口からのウェットティシュの取り出し易さも変化し、良好な使い心地を得ることができない。
【0006】
さらに、収納容器に収容された包装体の状態、特に包装体に内包されたウェットティシュの残量を収納容器の外部から直接確認することができないため、通常、包装体の交換作業を予期せず唐突に行う必要が生ずる。つまり、ウェットティシュの使用を意図した時に包装体に必要な量のウェットティシュが残っていないことを認識することが多い。
【0007】
本発明の目的は、包装体の詰め替えを従来のものよりも容易かつ簡単に行うことができ、しかも包装体に内包されたウェットティシュの量の如何に拘らず、ウェットティシュを常に取り出し易くした簡単な構造の包装体用カバーを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、包装体に内包されたウェットティシュの残量を容易に推測することができ、これによって包装体の交換時期をも併せて推定することが可能な包装体用カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
複数枚の衛生用紙を内包する包装体を覆ってこれを収容するための本発明による包装体用カバーは、包装体を取り囲む空間が画成されたカバー本体と、このカバー本体の下端に形成されて包装体を出し入れするための下端開口部と、前記カバー本体の上端に形成されて包装体に収容された衛生用紙を取り出すための上端開口部と、前記カバー本体に設けられて前記カバー本体に対して包装体を保持するための保持手段とを具え、前記保持手段は、包装体に内包された衛生用紙の消費に伴って前記カバー本体に対する包装体の底面の位置を前記上端開口部側に近付けてそこに維持し得ることを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、包装体に内包された衛生用紙の消費に伴って下端開口部から包装体の底面を押し上げることにより、上端開口部と包装体に内包された最上端に位置する衛生用紙との間隔がほぼ一定に保たれることとなる。
【0011】
本発明による包装体用カバーにおいて、保持手段は、包装体用カバーに収容された包装体の側面と対向するカバー本体の内側面からそれぞれ上向きに傾斜して上下方向に所定間隔で相互に平行に配列し、包装体の側面に弾性変形を伴って押し当たる多数のブレードを含むものであってよい。
【0012】
あるいは、保持手段は、包装体用カバーに収容された包装体の側面と対向するようにカバー本体の内側面から突出し、包装体の底面をそれぞれ受けることができる複数の支持部材を含むものであってよい。この場合、支持部材が上下方向に一定間隔で配列していることが好ましい。
【0013】
あるいは、保持手段は、包装体用カバーに収容された包装体の側面と対向するようにカバー本体の内側面から突出し、上下方向に一定間隔で配列するピンと、上下に隣接する少なくとも2本のピンに対して抜き外し可能に係止し得る少なくとも2つの係止孔を有するゴム状弾性シートとを含み、このゴム状弾性シートの上端側は、上側に位置する係止孔からピンを抜き外すことにより、弾性変形を伴って包装体の底面を受けることができるようになっているものであってよい。
【0014】
あるいは、保持手段は、包装体用カバーに収容された包装体の側面と対向するようにカバー本体の内側面から突出し、上下方向に一定間隔で配列するピンと、上下に隣接する少なくとも2本のピンに対して上下方向に摺動可能かつ抜き外し可能に係止し得る長孔を有するゴム状弾性シートとを含み、このゴム状弾性シートの上端側は、長孔の上側に位置するピンを長孔から抜き外すことにより、弾性変形を伴って包装体の底面を受けることができるようになっているものであってよい。
【0015】
あるいは、保持手段は、可撓性を有し、カバー本体の下端開口部を横切るように配されて包装体用カバーに収容された包装体の底面を受ける吊り部材と、カバー本体に形成され、吊り部材が通るように下端開口部から上方に延在する一対の切欠き部と、これら一対の切欠き部からカバー本体の外側に突出する吊り部材の長手方向両端部をカバー本体に固定するための固定手段とを含むものであってよい。この場合、固定手段は、カバー本体に対して吊り部材の任意の位置を固定および固定解除し得るものであることが好ましい。
【0016】
カバー本体に取り付けられて上端開口部を開閉し得る蓋部材をさらに具えることができる。
【0017】
包装体の上面に設けられた粘着部に対して剥離可能に接合し得る接合領域をカバー本体の内側面に有することができる。この場合、粘着部および接合領域はカバー本体の上端開口部を囲むように環状をなすものであってよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の包装体用カバーによると、従来の収納容器の如き底蓋が存在しないので、包装体の詰め替えを容易かつ迅速に行うことができ、包装体の状態を下端開口部側から簡単に認識することができる。また、包装体に内包された衛生用紙の消費に伴ってカバー本体に対する包装体の底面の位置を上端開口部側に近付けることが可能となる。この結果、衛生用紙の残量を容易に推測することができ、包装体に内包された衛生用紙の量が少なくなっても、これを常に取り出し易く維持することができる。さらに、下端開口部の全周を連続させる必要がなくなるので、カバー本体の下端側のデザイン上の制約が少なくなり、ユニークなデザインの包装体用カバーを提供することも可能となる。
【0019】
カバー本体の内側面から上向きに傾斜して上下方向に所定間隔で相互に平行に配列し、包装体の側面に弾性変形を伴って押し当たる多数のブレードを保持手段が含む場合、カバー本体に対して包装体を任意の位置に弾性保持することができる。
【0020】
包装体用カバーに収容された包装体の側面と対向するようにカバー本体の内側面から突出し、包装体の底面をそれぞれ受けることができる複数の支持部材を保持手段が含む場合、包装体を安定した状態で支持することかできる。特に、この支持部材が上下方向に一定間隔で配列している場合、衛生用紙の消費に伴って包装体の底面の位置を段階的に上昇させることができる。
【0021】
カバー本体の内側面から突出するピンと、これらピンに係止し得る2つ以上の係止孔が形成されたゴム状弾性シートとを保持手段が含む場合、上側に位置するピンからゴム状弾性シートの上端側を抜き外し、包装体の底面を受けるように弾性変形させることができる。
【0022】
カバー本体の内側面から突出するピンと、これらピンに係止し得る長孔が形成されたゴム状弾性シートとを保持手段が含む場合、長孔の上側に位置するピンを長孔から抜き外し、ゴム状弾性シートの上端側を弾性変形させて包装体の底面を受けることができる。また、包装体の底面に対するゴム状弾性シートの接触長さを微妙に調整することができる。
【0023】
包装体用カバーに収容された包装体の底面を受ける吊り部材と、この吊り部材が通るようにカバー本体に形成された一対の切欠き部と、吊り部材の固定手段とを保持手段が含む場合、包装体を吊り部材によってカバー本体に対して確実に保持することができる。特に、固定手段がカバー本体に対して吊り部材の任意の位置を固定および固定解除し得る場合、衛生用紙の消費に伴って包装体の底面の位置を細かく上昇させることができる。
【0024】
カバー本体に取り付けられて上端開口部を開閉し得る蓋部材をさらに具えた場合、包装体の上部を蓋部材によって覆うことができるため、包装体の清浄性および密封性をさらに高めることが可能となる。
【0025】
包装体に設けられた粘着部に対して剥離可能に接合し得る接合領域をカバー本体に形成した場合、包装体の上面をカバー本体の接合領域に粘着部を介して接合させ、カバー本体に対して包装体を保持する保持手段の機能を補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による包装体用カバーの一実施形態の外観を包装体と共に表す立体投影図である。
【図2】図1に示した実施形態における包装体用カバーの底面図である。
【図3】図2中のIII−III矢視に沿った断面図である。
【図4】図3に対応した断面図であり、包装体を収容した状態を示す。
【図5】本発明による包装体用カバーの他の実施形態の外観を包装体と共に表す立体投影図である。
【図6】図5に示した実施形態における包装体用カバーの底面図である。
【図7】図6中のVII−VII矢視に沿った断面図であり、包装体を収容した状態を示す。
【図8】本発明における支持部材の他の実施形態を表す拡大断面図であり、図7の一部に対応する。
【図9】本発明による包装体用カバーの別な実施形態の底面図である。
【図10】図8中のX−X矢視に沿った拡大断面図である。
【図11】図9に示した保持手段の外観を表す立体投影図である。
【図12】本発明による包装体用カバーの保持手段の他の実施形態の断面図であり、図10の断面図に対応する。
【図13】図11に示した保持手段の外観を表す立体投影図である。
【図14】本発明における保持手段の外観を表す正面図である。
【図15】本発明による包装体用カバーのさらに別な実施形態の外観を包装体と共に表す立体投影図である。
【図16】図15に示した包装体用カバーの断面図であり、包装体を収容した状態を示す。
【図17】図16中の矢視XVII部の右側面形状を抽出拡大した断面図である。
【図18】本発明における吊り部材および固定手段の他の実施形態を表す拡大断面図であり、図17に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明による包装体用カバーをウェットティシュが内包される包装体に対して応用した実施形態について、図1〜図15を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施形態のみに限らず、必要に応じてこれらをさらに組み合わせたり、ウェットティシュ以外の衛生用紙を内包した包装体に対しても応用することが可能である。
【0028】
本発明による包装体用カバーの一実施形態の外観を包装体と共に図1に示し、この包装体用カバーの底面を図2に示し、そのIII−III矢視に沿った断面形状を図3に示し、これに包装体を収容した状態を図4に示す。
【0029】
本実施形態における包装体用カバー10の対象となる包装体1は、衛生用紙として複数枚の矩形のウェットティシュ2を順に折り重ね合わせて密封状態で内包する。この包装体1の上面1aには、ここに内包された一番上に位置するウェットティシュ2を取り出すための細長い開口部1bが形成されている。開口部1bは、包装体1の上面1aに一端部が接合された可撓性を有する開閉用シート3によって開閉可能に覆われている。この開閉用シート3の外周縁部には、包装体1の上面1aに対して剥離可能に接合される粘着層3aが形成され、開口部1bの周囲を取り囲むようになっている。従って、包装体1の開口部1bは開閉用シート3の粘着層3aによってシール状態で覆われ、内包されたウェットティシュ2の乾燥を抑制することができる。また、この包装体1の上面1aには、後述するカバー本体11の上端面、すなわち上壁部12の内側面の接合領域12a(図2中、斜線で示した領域)に対して剥離可能に接合し得る粘着部4が開閉用シート3を囲むように環状に設けられている。この粘着部4は、包装体1の使用前には図示しないカバーフィルムによって被覆されており、このカバーフィルムを使用時に取り外して粘着部4を露出させる。
【0030】
なお、包装体1の形態として上述した以外の周知の構成のものを適宜採用することができることは言うまでもない。
【0031】
包装体1を覆ってこれを収容するための本実施形態における包装体用カバー10は、包装体1を取り囲む空間Sが画成されたカバー本体11と、このカバー本体11に対して包装体1を保持するための保持手段13とを具えている。
【0032】
本実施形態におけるカバー本体11は、ほぼ直方体形状を有し、上壁部12と、この上壁部12を挟んで対向する一対の第1側壁部14と、これら上壁部12および第1側壁部14を挟んで対向する一対の第2側壁部15とを有する。カバー本体11の下端には、包装体1を出し入れするための下端開口部11aが第1および第2側壁部14,15で囲まれた状態で形成されている。下端開口部11aを画成する第1および第2側壁部14,15の下端には、滑り止め用のゴム状弾性体からなる環状のキャップ16aが嵌め込まれている。カバー本体11の上端、つまり上壁部12の中央部には包装体1に収容されたウェットティシュ2を取り出すための上端開口部11bが形成されている。カバー本体11は、包装体1の上面1aに設けられた粘着部4が剥離可能に接合される平滑な接合領域12aをその上壁部12の内側面に有し、この接合領域12は上端開口部11bを囲むように環状に形成されている。包装体1の粘着部4をカバー本体11の接合領域12aに押し付けて接合させることにより、カバー本体11に対する包装体1の位置ずれが抑制され、後述する保持手段13の機能と相俟って包装体1を安定状態で包装体用カバー10に収容することが可能となる。
【0033】
このカバー本体11は、上端開口部11bを開閉し得る蓋部材17と、この蓋部材17を操作するためのレバー部材18とをさらに具えている。蓋部材17は、これを開くように付勢するばね部材19aが組み込まれた蝶番機構19を介してカバー本体11の上壁部12に取り付けられている。カバー本体11に揺動可能に取り付けられるレバー部材18には、蓋部材17に形成された係止部17aに対して係止し得る受け部18aが形成されている。上端開口部11bが閉止されるようにばね部材19aのばね力に抗して蓋部材17を押して蓋部材17の係止部17aをレバー部材18の受け部18aに係止させることにより、蓋部材17を閉止状態に保つことができる。逆に、この状態からレバー部材18を押すと、レバー部材18の受け部18aから蓋部材17の係止部17aの係合状態が解除され、ばね部材19aのばね力によって蓋部材17が上端開口部11bを開放状態にするようになっている。なお、蓋部材17の構造や形状ならびにその開閉機構などに関しては本実施形態に限定されることなく、周知の構造や形状および開閉機構などを必要に応じて任意に採用することが可能である。
【0034】
本実施形態においては、包装体1の上面1aに形成された開口部1bが粘着層3aを介して開閉用シート3で塞がれた状態となっている。また、包装体用カバー10に収容される包装体1の上面1aは、開閉用シート3を囲む環状の粘着部4によってカバー本体11の上壁部12の内側面の接合領域12aに密着状態で接合された状態となる。このため、上述した蓋部材17にて上端開口部11bを塞ぐことにより、包装体1に内包されたウェットティシュ2の乾燥をより確実に防止することができる。
【0035】
保持手段13は、包装体1に内包された衛生用紙の消費に伴ってカバー本体11に対する包装体1の底面1cの位置を上端開口部11b側に近付けてそこに維持し得るものである。本実施形態における保持手段13は、包装体用カバー10に収容された包装体1の側面1dと対向するカバー本体11の第1側壁部14の内側面からそれぞれ上向きに傾斜して上下方向に所定間隔で相互に平行に配列する多数のブレード16bを含む。これらブレード16bは、先のキャップ16aと共にカバー本体11の第1側壁部14の内側面に貼り付けられたベースシート16cと一体的にゴム状弾性体にて形成されている。包装体1を包装体用カバー10に収容させる場合、ブレード16bの先端部が包装体1の側面1dに弾性変形を伴って押し当たり、第1側壁部14の間に包装体1を保持することができるようになっている。また、ウェットティシュ2の消費に伴い、包装体1の底面1cを指などで押し上げることにより、包装体1の底面1cを通過したブレード16bの先端部が包装体1の底面1cに押し当たり、包装体1をその底面1cから弾性を伴って支持できるようになっている。このようなブレード16bの特性を満たすべく、その肉厚や長さおよびその弾力性ならびに第1側壁部14に対する傾斜角などが適切に設定されている。
【0036】
従って、本実施形態の包装体用カバー10によると、ブレード16bによって包装体1を保持することが可能であり、従来のような底蓋を省略することができる。また、ウェットティシュ2の消費に伴い、包装体1の底面1cを押し上げるだけで包装体1に内包された最上端に位置するウェットティシュ2と上端開口部11bとの間隔を常に望ましい間隔に維持することができる。この結果、包装体1に内包されたウェットティシュ2の残量が少なくなっても、その取り出し易さを良好に保つことが可能である。
【0037】
なお、本実施形態においては包装体1の底面1cを受けるための支持板26を用い、この支持板26を介して包装体1を包装体用カバー10に収容している。支持板26は、下端開口部11aよりも小さな矩形の輪郭形状を有し、比較的硬質の樹脂製薄板にて形成されている。この支持板26の外縁部には、指で支持板26を掴むための指掛け部26aが形成されている。この支持板26は必須ではないが、包装体1をカバー本体11の上壁部12と支持板26とで挟持した状態に保持することができるため、ウェットティシュ2の残量が僅少となっても、包装体1のより安定した収容が可能となる。
【0038】
上述したブレード16bに代え、カバー本体11の内側面から突出して包装体1の底面1cを受けることができる支持部材を保持手段13として採用することも可能である。このような本発明の他の実施形態の外観を包装体と共に図5に示し、この包装体用カバーの底面を図6に示し、そのVII−VII矢視に沿った断面形状を図7に示すが、先の実施形態と同一機能の要素にはこれと同一符号を記すに止め、重複する説明を省略する。
【0039】
本実施形態における保持手段13は、包装体用カバー10に収容された包装体1の側面1dと対向するようにカバー本体11の第1側壁部14の内側面から突出し、包装体1の底面1cをそれぞれ受けることができる複数の支持部材20を含む。本実施形態における支持部材20は、第1側壁部14の内側面に一体的に形成された嵌合部14aに対して基端部が装着された舌状をなし、これらは上下方向に一定間隔で配列している。支持部材20の基端部は、嵌合部14aに対して締まり嵌め状態で圧入状態となっているが、嵌合部14aに対して機械的な噛み合いによる抜け外れ防止構造を介して支持部材20の基端部を取り付けることも可能である。これら支持部材20は、ゴム状弾性体にて形成されているが、先の実施形態ほど大きな弾性変形を必要としないので、比較的硬質の樹脂などで形成することも可能である。何れの場合であっても、包装体1の底面1cを受ける支持部材20よりも上方に位置する支持部材20は、包装体1の側面1dに対して干渉することになるが、包装体1自体が本質的に可撓性を有しているため、特に問題は生じない。包装体1に内包されたウェットティシュ2の消費に伴い、包装体1の底面1cを指などでカバー本体11の上壁部12側に押し上げることによって、包装体1の底面1cを適当な高さにある支持部材20に支持させることができる。
【0040】
本発明においては底蓋が不要であることから、包装体1の詰め替えを容易かつ迅速に行うことができる。また、包装体1の状態、例えばウェットティシュ2の残量を下端開口部11a側から簡単に認識することができる。より具体的には、包装体1に内包されたウェットティシュ2の消費に伴って包装体1の底面1cを指で押し上げ、上端開口部11b側に近付けることにより、その残量を容易に推測することができる。しかも、包装体1に内包されたウェットティシュ2の量が少なくなっても、これを常に取り出し易く維持することができる。しかも、下端開口部11aから上方に延在する切欠き部14b,15bをカバー本体11の第1および第2側壁部14,15に形成し、包装体用カバー10の外観にデザイン的なアクセントを持たせることができる。なお、嵌合部14aに対して支持部材20を取り外し可能な構成とし、包装体1の底面1cを受ける支持部材20のみ、嵌合部14aに取り付けるようにすることも可能である。
【0041】
上述した支持部材20をカバー本体11と一体に成形することも可能であり、このような保持手段13の他の実施形態の断面構造を図8に示す。本実施形態においては、セルフヒンジ部20aを介して支持部材20の基端部の上端縁をカバー本体11の第1側壁部14と一体に形成し、このセルフヒンジ部20aを中心として支持部材20の先端側を上方にはね上げることができるようにしている。これにより、包装体1の側面1dに対する支持部材20の干渉を回避させることが可能であり、上述した実施形態よりも部品点数を削減することが可能となる。なお、包装体1の底面1cを受ける状態においては、支持部材20の基端部の厚みを利用して支持部材20の先端側がほぼ水平状態よりも下方には回転できないようになっている。
【0042】
次に、必要に応じて保持手段13を機能させることができるようにした本発明の別な実施形態における包装体用カバーの底面形状を図9に示し、そのX−X矢視に沿った断面形状を図10に示し、その外観を図11に示す。なお、先の実施形態と同一機能の要素にはこれと同一符号を記すに止め、重複する説明を省略する。
【0043】
本実施形態における保持手段13は、カバー本体11の第1側壁部14の内側面から突出すると共に上下方向に一定間隔で配列するピン21と、これらピン21に対して抜き外し可能に係止し得る係止孔22aを有するゴム状弾性シート22とを含む。ピン21は、包装体用カバー10に収容された包装体1の側面1dと対向するように、カバー本体11と一体的に形成されている。ピン21の先端には、係止孔22aの内径よりも大きな外径を持つ頭部21aが形成されている。本実施形態では、上下に隣接する少なくとも2本(図示例では3本)のピン21に対して係止し得る少なくとも2つ(図示例では3つ)の係止孔22aをゴム状弾性シート22に形成している。このゴム状弾性シート22の上端側は、上側に位置する係止孔22aからピン21を抜き外すことにより、弾性変形を伴って包装体1の底面1cを受けることができるようになっている。つまり、包装体用カバー10に収容される包装体1の底面1cの位置に応じて、上下方向に配列するピン21に対してゴム状弾性シート22の取り付け位置を変更し、ゴム状弾性シート22の上部を内側に撓ませて包装体1の底面1cに押し当たるようにすればよい。これにより、包装体1に内包されたウェットティシュ2の消費に伴って包装体1の底面1cの位置がカバー本体11の上壁部12側に近づくように、包装体1を上方に押し上げた状態で支持することができる。
【0044】
上述した係止孔22aを連続した長孔として形成し、ピン21に対してゴム状弾性シート22を上下方向に所定量だけ摺動させることも可能である。このような本発明のさらに他の実施形態の断面形状を図12に示し、その外観を図13に示すが、先の実施形態と同一機能の要素にはこれと同一符号を記すに止め、重複する説明を省略する。
【0045】
本実施形態におけるゴム状弾性シート22には、上下に隣接するピン21の配列間隔のほぼ2倍の長さを持った長孔22bが形成されており、この長孔22bの幅寸法はピン21の直径とほぼ同じか、あるいはそれよりも若干狭く設定されている。長孔22bには上下に隣接する2つのピン21が挿通可能であり、この状態にてピン21の配列間隔に相当する量だけゴム状弾性シート22がピン21に対して上下に摺動可能である。本実施形態においても、ゴム状弾性シート22の長孔22bの上側に位置するピン21を長孔22bから抜き外し、このゴム状弾性シート22の上部を内側に弾性変形を伴って屈曲させ、包装体1の底面1cに押し当たるようにする。これにより、包装体1を上方に押し上げた状態で支持することができる。この場合、長孔22bの位置とこれに係合するピン21との相対位置を変更することにより、包装体1の底面1cに対するゴム状弾性シート22の支持面積や撓み変形量を変えることが可能となる。
【0046】
なお、ピン21に対してゴム状弾性シート22を摺動させる際に、所定長毎にクリック感を持たせるため、図14に示すように、長孔22bの長手方向に沿って所定間隔毎に拡径部22cを形成することも有効である。この場合、ピン21の外径dに対する拡径部22cの幅寸法w1と、拡径部22c以外の長孔22bの幅寸法w2との関係を以下のように設定することが好ましい。
d≧w1>w2
【0047】
最後に、カバー本体11の下端開口部11aを横切るように配される可撓性を持った吊り部材を保持手段13が含む本発明のさらに別な実施形態を説明する。この実施形態の外観を包装体と共に図15に示し、この包装体用カバー断面形状を図16に示し、その固定手段の部分の構造を抽出拡大して図17に示すが、先の実施形態と同一機能の要素にはこれと同一符号を記すに止め、重複する説明を省略する。
【0048】
本実施形態における保持手段13は、包装体用カバー10に収容された包装体1の底面1cを受ける吊り部材23と、先の切欠き部14bと、吊り部材23の長手方向両端部をカバー本体11に固定するための固定手段24とを含む。可撓性を有する吊り部材23は細長い帯状をなし、カバー本体11の下端開口部11aを横切るように配される。一対の切欠き部14bは、カバー本体11の第1側壁部14に形成されて吊り部材23が通るように下端開口部11aから上方に延在する。切欠き部14bからカバー本体11の外側に突出する吊り部材23をカバー本体11に固定するための固定手段24は、吊り部材23が挿通される間隙25aを形成した枠部25と、吊り部材23の幅方向両側端に形成された鋸歯状の係止部23aとを有する。カバー本体11と一体的に形成される枠部25は、切欠き部14bよりも上方で第1側壁部14の外側面に突設状態となっている。枠部25に係止する鋸歯状の係止部23aは弾性変形可能であり、カバー本体11に対して吊り部材23を任意の位置で固定および固定解除し得るようになっている。本実施形態における係止部23aは、枠部25に対して弾性変形を伴って係止し、図15において吊り部材23から下向きに抜け外れないようになっている。つまり、枠部25から上方に吊り部材23の端部を引き上げることにより、包装体1はカバー本体11の上壁部12と吊り部材23とで挟まれた状態となって包装体用カバー10に収容された状態となる。
【0049】
従って、包装体1に内包されたウェットティシュ2の消費に伴って包装体1の底面1cの位置がカバー本体11の上壁部12側に近づくように、枠部25に対して吊り部材23を引き上げることにより、包装体1を支持することが可能となる。
【0050】
なお、枠部25に対して吊り部材23に強い力を下向きに加えた場合には、係止部23aが弾性変形して枠部25から吊り部材23を抜き外すことができるように、間隙25aおよび係止部23aの寸法形状などが適切に設定されている。また、本体11に対して吊り部材23を任意の位置で固定および固定解除し得るものであれば、上述した固定手段24以外に任意の構成の固定手段24を採用することが可能である。例えば、図18に示すように、吊り部材23をゴム状弾性ベルトにて形成し、この吊り部材23を枠部25の間隙25aに対して圧縮状態で挿通させることにより、摩擦力を利用して吊り部材23を枠部25に固定することも可能である。
【0051】
本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【符号の説明】
【0052】
1 包装体
1a 上面
1b 開口部
1c 底面
1d 側面
2 ウェットティシュ
3 開閉用シート
3a 粘着層
4 粘着部
S 空間
d ピンの外径
w1 拡径部の幅寸法
w2 長孔の幅寸法
10 包装体用カバー
11 カバー本体
11a 下端開口部
11b 上端開口部
12 上壁部
12a 接合領域
13 保持手段
14 第1側壁部
14a 嵌合部
14b 切欠き部
15 第2側壁部
15b 切欠き部
16a キャップ
16b ブレード
16c ベースシート
17 蓋部材
17a 係止部
18 レバー部材
18a 受け部
19 蝶番機構
19a ばね部材
20 支持部材
20a セルフヒンジ部
21 ピン
21a 頭部
22 ゴム状弾性シート
22a 係止孔
22b 長孔
22c 拡径部
23 吊り部材
23a 係止部
24 固定手段
25 枠部
25a 間隙
26 支持板
26a 指掛け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の衛生用紙を内包する包装体を覆ってこれを収容するための包装体用カバーであって、
包装体を取り囲む空間が画成されたカバー本体と、
このカバー本体の下端に形成されて包装体を出し入れするための下端開口部と、
前記カバー本体の上端に形成されて包装体に収容された衛生用紙を取り出すための上端開口部と、
前記カバー本体に設けられて前記カバー本体に対して包装体を保持するための保持手段と
を具え、前記保持手段は、包装体に内包された衛生用紙の消費に伴って前記カバー本体に対する包装体の底面の位置を前記上端開口部側に近付けてそこに維持し得ることを特徴とする包装体用カバー。
【請求項2】
前記保持手段は、包装体用カバーに収容された包装体の側面と対向する前記カバー本体の内側面からそれぞれ上向きに傾斜して上下方向に所定間隔で相互に平行に配列し、包装体の側面に弾性変形を伴って押し当たる多数のブレードを含むことを特徴とする請求項1に記載の包装体用カバー。
【請求項3】
前記保持手段は、包装体用カバーに収容された包装体の側面と対向するように前記カバー本体の内側面から突出し、包装体の底面をそれぞれ受けることができる複数の支持部材を含むことを特徴とする請求項1に記載の包装体用カバー。
【請求項4】
前記支持部材が上下方向に一定間隔で配列していることを特徴とする請求項3に記載の包装体用カバー。
【請求項5】
前記保持手段は、包装体用カバーに収容された包装体の側面と対向するように前記カバー本体の内側面から突出し、上下方向に一定間隔で配列するピンと、上下に隣接する少なくとも2本の前記ピンに対して抜き外し可能に係止し得る少なくとも2つの係止孔を有するゴム状弾性シートとを含み、このゴム状弾性シートの上端側は、上側に位置する前記係止孔から前記ピンを抜き外すことにより、弾性変形を伴って包装体の底面を受けることができるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の包装体用カバー。
【請求項6】
前記保持手段は、包装体用カバーに収容された包装体の側面と対向するように前記カバー本体の内側面から突出し、上下方向に一定間隔で配列するピンと、上下に隣接する少なくとも2本の前記ピンに対して上下方向に摺動可能かつ抜き外し可能に係止し得る長孔を有するゴム状弾性シートとを含み、このゴム状弾性シートの上端側は、前記長孔の上側に位置する前記ピンを前記長孔から抜き外すことにより、弾性変形を伴って包装体の底面を受けることができるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の包装体用カバー。
【請求項7】
前記保持手段は、可撓性を有し、前記カバー本体の下端開口部を横切るように配されて包装体用カバーに収容された包装体の底面を受ける吊り部材と、前記カバー本体に形成され、前記吊り部材が通るように前記下端開口部から上方に延在する一対の切欠き部と、これら一対の切欠き部から前記カバー本体の外側に突出する前記吊り部材の長手方向両端部を前記カバー本体に固定するための固定手段とを含むことを特徴とする請求項1に記載の包装体用カバー。
【請求項8】
前記固定手段は、前記カバー本体に対して前記吊り部材の任意の位置を固定および固定解除し得ることを特徴とする請求項7に記載の包装体用カバー。
【請求項9】
前記カバー本体に取り付けられて前記上端開口部を開閉し得る蓋部材をさらに具えたことを特徴とする請求項1から請求項8の何れかに記載の包装体用カバー。
【請求項10】
前記包装体の上面に設けられた粘着部に対して剥離可能に接合し得る接合領域が前記カバー本体の内側面に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項9の何れかに記載の包装体用カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−201391(P2012−201391A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67587(P2011−67587)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】