説明

包装容器及びその製造方法

【課題】包装容器において、低コストかつ軽量で取り扱いが容易でありながらも、釜揚げしらす等の食品の鮮度を維持し得るようにする。
【解決手段】発泡樹脂により包装容器1を形成し、その底板2に複数の第1スリット5、と第1スリット5に連通し、底板2を貫通する貫通穴6を設ける。しらすFから落下した水滴Wは、第1スリット5を落下し、底板2の上面には水滴Wは溜まらない。第1スリット5を落下した水滴Wは、一旦、第1スリット5の底部に溜まり、その後、貫通穴6から容器外部に排出される。これによりしらすFと水滴Wが分離され、しらすFの鮮度が維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器、特に釜揚げしらす及び生野菜等を収容するのに好適な発泡包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、釜揚げされたしらすを収容する包装容器として、特許文献1に示すような木箱が使用されている。また、特許文献2には、段ボール製の包装容器が開示されている。
【特許文献1】特開2005−269953号公報
【特許文献2】特開2003−327233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に示された木箱は、重量が重いため、取り扱いが困難とされている。また、木箱は製造コストが嵩むだけでなく、近年は自然環境保護の観点からも敬遠され、大量に入手するのが困難となりつつある。また、特許文献2に示された段ボール製の包装容器は、わずかでも水分を含むと強度が著しく低下するため、釜揚げ後の湯切りを十分に行ったとしても、その後にしらすから落下する水滴によって、十分な強度を確保するのが困難と考えられる。
【0004】
一方、鮮魚等の生鮮食品の収容には、発泡樹脂製の包装容器が広く用いられている。このような発泡包装容器は、低コストかつ軽量で取り扱いが容易な反面、気密性が高いため、釜揚げしらすの収容に用いた場合には、しらすから落下した水滴が容器の底に溜り、しらすの鮮度を低下させる虞があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、低コストかつ軽量で取り扱いが容易であり、しらす等の食品の鮮度を維持するのに好適な包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、
底板及び側壁を備え、この底板及び側壁によって囲まれた空間内に被包装物を収容する包装容器において、
前記底板は、該底板の上面に形成され、その深さ寸法が該底板の厚み寸法よりも小さい凹部と、この凹部と部分的に連通し、該底板を貫通して形成された貫通部とを有するものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の包装容器において、
前記凹部は、前記底板の上面から開口された第1スリットであるものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の包装容器において、
前記底板の下面から開口され、前記凹部と平面視で交差する第2スリットと、前記凹部との交差部が、前記貫通部であるものである。
【0009】
請求項4の発明は、
発泡樹脂によって形成された包装容器の底板に貫通部を形成する貫通部形成手段を加熱する貫通部形成手段加熱工程と、
前記貫通部形成手段加熱工程において加熱された貫通部形成手段を前記底板の上面又は下面から該底板の厚み方向に押圧して、該貫通部形成手段と接触された発泡樹脂を融解及び収縮させることにより、該底板に前記貫通部を形成する貫通部形成工程とを有するものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の包装容器の製造方法において、
前記貫通部形成手段加熱工程は、前記貫通部形成手段に対応する凹部が形成された熱板を加熱する熱板加熱工程と、この熱板加熱工程において加熱された熱板の凹部に該貫通部形成手段を挿入し、該熱板と貫通部形成手段との間で熱交換を生じさせる熱交換工程とを有するものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項2に記載の包装容器の製造方法であって、
前記包装容器は、発泡樹脂によって形成され、
前記第1スリット及び貫通部を形成するための第1スリット形成板を備えた第1スリット形成手段を加熱する第1スリット形成手段加熱工程と、
この貫通部形成手段加熱工程において加熱された第1スリット形成手段を前記底板の上面から該底板の厚み方向に押圧して、前記第1スリット形成板と接触された発泡樹脂を融解及び収縮させることにより、該底板に前記第1スリット及び貫通部を形成する第1スリット形成工程とを有するものである。
【0012】
請求項7の発明は、請求項3に記載の包装容器の製造方法であって、
前記底板の上面に前記凹部を形成するための凹部形成手段を加熱する凹部形成手段加熱工程と、
前記凹部形成手段加熱工程において加熱された凹部形成手段を前記底板の上面から該底板の厚み方向に押圧して、該凹部形成手段と接触された発泡樹脂を融解及び収縮させることにより、該底板に前記凹部を形成する凹部形成工程と、
前記底板の下面に前記第2スリットを形成するための第2スリット形成手段を加熱する第2スリット形成手段加熱工程と、
前記第2スリット形成手段加熱工程において加熱された第2スリット形成手段を前記底板の下面から該底板の厚み方向に押圧して、該第2スリット形成手段と接触された発泡樹脂を融解及び収縮させることにより、該底板に前記第2スリットを形成する第2スリット形成工程とを有するものである。
【0013】
請求項8の発明は、請求項7に記載の包装容器の製造方法において、
前記凹部形成手段加熱工程は、前記凹部形成手段に対応する凹部が形成された熱板を加熱する熱板加熱工程と、この熱板加熱工程において加熱された熱板の凹部に該凹部形成手段を挿入し、該熱板と貫通部形成手段との間で熱交換を生じさせる熱交換工程とを有し、
前記第2スリット形成手段加熱工程は、前記第2スリット形成手段に対応する凹部が形成された熱板を加熱する熱板加熱工程と、この熱板加熱工程において加熱された熱板の凹部に該第2スリット形成手段を挿入し、該熱板と第2スリット形成手段との間で熱交換を生じさせる熱交換工程とを有するものである。
【0014】
請求項9の発明は、請求項1又は請求項3に記載の包装容器の製造方法であって、
発泡樹脂によって形成された包装容器の底板に貫通部を形成する貫通部形成手段を、包装容器の底板の下方に配置する貫通部形成手段配置工程と、
前記貫通部形成手段配置工程において配置された貫通部形成手段を加熱する貫通部形成手段加熱工程と、
前記貫通部形成手段配置工程において配置された貫通部形成手段に包装容器の底板を押圧する底板押圧工程とを有し、
前記貫通部形成手段と接触された発泡樹脂を融解及び収縮させることにより、該底板に前記貫通部を形成する貫通部形成工程とを有するものである。
【0015】
請求項10の発明は、請求項9に記載の包装容器の製造方法において、
前記貫通部形成手段は、電熱体であり、
前記貫通部形成手段加熱工程において、前記電熱体に加熱のための電圧が印加されるものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、底板に凹部が形成され、さらに凹部と連通する貫通部が底板を貫通して形成されているので、当該容器を釜揚げしらすの収容に用いた場合、しらすから落下した水滴が凹部及び貫通部を通過して容器の外部に排出される。これにより、容器の内底面に水滴が溜りにくくなり、従来の発泡包装容器よりもしらすの鮮度を長時間に亘って維持できるようになる。また、貫通部が凹部と部分的に連通しているので、凹部に落下した水滴は全て貫通部から排出されるのではなく、凹部に一時的に溜めておくことができる。これにより、しらすを水滴から分離した状態で保存すると共に、容器内部の湿度の変動を抑制することが可能となり、より一層しらすの鮮度低下を抑制することができる。また、貫通部が凹部と部分的に連通する構造のため、底板の強度を必要十分に確保することができる。さらにまた、当該容器を生鮮野菜の収容に用いた場合、野菜から排出されたエチレンガスが凹部及び貫通部を通過して容器の外部に排出されるので、従来の発泡包装容器よりも野菜の鮮度を長時間に亘って維持できるようになる。
【0017】
請求項2の発明によれば、容器に収容された被包装物が凹部に落下することを防止することができ、被包装物を水滴から確実に分離することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、簡素な構成で容器の強度を一定水準以上に確保しながら、凹部の底に溜まった水滴を容器の外部に排出することが可能となる。
【0019】
請求項4の発明によれば、加熱された貫通部形成手段と接触された発泡樹脂を融解及び収縮させることにより、既成の発泡包装容器から容易に貫通部を形成することができる。これにより、請求項1に記載の包装容器を容易かつ安価に製造できるようになる。
【0020】
請求項5の発明によれば、貫通部形成手段を適正温度まで迅速かつ確実に加熱することができ、請求項4に記載の包装容器の製造方法において、その製造効率の向上を図ることができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、加熱された第1スリット形成板と接触された発泡樹脂を融解及び収縮させることにより、既成の発泡包装容器の底板に第1スリット及び貫通部を同時に形成することができる。これにより、既成の発泡包装容器を用いつつ、請求項2に記載の包装容器を容易かつ安価に製造できるようになる。
【0022】
請求項7の発明によれば、加熱された凹部形成手段と接触された発泡樹脂を融解及び収縮させることにより、既成の発泡包装容器の底板に凹部を形成することができる。また、加熱された第2スリット形成手段と接触された発泡樹脂を融解及び収縮させることにより、既成の発泡包装容器の底板に第2スリットを形成することができる。これにより、既成の発泡包装容器を用いつつ、請求項3に記載の包装容器を容易かつ安価に製造できるようになる。
【0023】
請求項8の発明によれば、凹部形成手段及び第2スリット形成手段を適正温度まで迅速かつ確実に加熱することができ、請求項7に記載の包装容器の製造方法において、その製造効率の向上を図ることができる。
【0024】
請求項9の発明によれば、包装容器の底板の下方に配置された貫通部形成手段を加熱すると共に貫通部形成手段に包装容器の底板を押圧するので、予め加熱された貫通部形成手段を移動させることなく底板に貫通部を形成することができる。これにより、既成の発泡包装容器から安全、容易かつ安価に釜揚げしらす等の収容に好適な包装容器を製造できるようになる。
【0025】
請求項10の発明によれば、電熱体に印加する電圧を調整することにより、貫通部形成手段の温度を自在に制御することができ、貫通部の形成を容易に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による包装容器について図面を参照して説明する。図1乃至図4は包装容器の構成を示している。包装容器1は、発泡樹脂によって形成されており、矩形状の底板2と、底板2の周端縁から立設された側壁3等を有し、この底板2及び側壁3によって囲まれた空間内に被包装物を収容する。包装容器1の上部には、必要に応じて蓋部材が装着される。底板2には、その短手方向に平行に形成された複数の第1スリット(凹部)5と、底板2を貫通する複数の貫通穴(貫通部)6を有している。第1スリット5は、底板2の上面に開口するように形成されている。第1スリット5の深さ寸法は、底板2の厚み寸法よりも小さく設定されている。貫通穴6は、適宜間隔を隔てて、第1スリット5と平面視で重なり合う位置に形成されている。貫通穴6は、第1スリット5の一部と連通し、底板2の下面に亘って貫通して形成されている。
【0027】
図5は、包装容器1に釜揚げ直後のしらすが収容された様子を示している。包装容器1の底板2の上面には、透水紙Pが敷設され、その上方に釜揚げ直後のしらすFが収容される。釜揚げ直後のしらすFからは、水滴Wが落下する。包装容器1の底板2には第1スリット5が形成されているので、しらすFから落下した水滴Wは、第1スリット5を落下し、底板2の上面には水滴Wは溜まらない。第1スリット5を落下した水滴Wは、一旦、第1スリット5の底部に溜まり、その後、貫通穴6から容器外部に排出される。
【0028】
以上のように、本包装容器1によれば、底板2に第1スリット5が形成され、さらに第1スリット5と連通する貫通穴6が底板2を貫通して形成されているので、当該容器を釜揚げしらすの収容に用いた場合、しらすFから落下した水滴Wが第1スリット5及び貫通穴6を通過して容器の外部に排出される。これにより、容器の内底面に水滴が溜りにくくなり、従来の発泡包装容器よりもしらすFの鮮度を長時間に亘って維持できるようになる。また、貫通穴6が第1スリット5と部分的に連通しているので、第1スリット5に落下した水滴Wは全て貫通穴6から排出されるのではなく、第1スリット5に一時的に溜めておくことができる。これにより、しらすFを水滴Wから分離した状態で保存すると共に、容器内部の湿度の変動を抑制することが可能となり、より一層しらすの鮮度低下を抑制することができる。また、貫通穴6が第1スリット5と部分的に連通する構造のため、底板2の強度を必要十分に確保することができる。さらにまた、当該容器を生鮮野菜の収容に用いた場合、野菜から排出されたエチレンガスが第1スリット5及び貫通穴6を通過して容器の外部に排出されるので、従来の発泡包装容器よりも野菜の鮮度を長時間に亘って維持できるようになる。
【0029】
次に包装容器1の製造方法について、図6及び図7を参照して説明する。包装容器1は、既存の包装容器の底板に第1スリット5及び貫通穴6を形成することにより、製造することができる。図6は、包装容器1の底板2に第1スリット5及び貫通穴6を形成するための第1スリット形成金型(貫通部形成手段、第1スリット形成手段)10と、第1スリット形成金型10を加熱するための熱板15を示している。同図においては、第1スリット形成金型10を構成する部品のうち基板12を2点鎖線にて透視して示している。
【0030】
第1スリット形成金型10は、第1スリット5及び貫通穴6を形成するための複数の第1スリット形成板11と、各第1スリット形成板11が結合される基板12等によって構成されている。各第1スリット形成板11は、適宜間隔を隔てて互いに平行に配置されている。第1スリット形成板11は、包装容器1の底板2に第1スリット5を形成するための第1スリット形成部11aと、貫通穴6を形成するための貫通穴形成部11bとを有している。第1スリット形成部11aの幅寸法(高さ方向)は、第1スリット5の深さ寸法よりも若干大きく設定されている。貫通穴形成部11bは、第1スリット形成部11aの下端面から櫛歯状に延出されている。
【0031】
一方、熱板15の上面には、各第1スリット形成板11に対応する溝状の凹部16が形成されている。凹部16は、第1スリット形成部11aに対応するように溝状に形成された第1凹部16aと、貫通穴形成部11bに対応するように穴状に形成された第2凹部16bを有している。
【0032】
図7は、包装容器1の製造工程のうち、包装容器の底板に第1スリット5及び貫通穴6を形成する工程を示している。第1スリット5及び貫通穴6は、図7(a)に示す熱板加熱工程と、図7(b)に示す熱交換工程と、図7(c)に示す第1スリット形成工程を経ることにより形成される。まず、熱板加熱工程においては、熱板15が所定の温度まで加熱される。その後、熱交換工程においては、加熱された熱板15の第1凹部16a及び第2凹部16bにスリット形成金型10の第1スリット形成部11a及び貫通穴形成部11bが挿入される。このとき、第1凹部16aと第1スリット形成部11aとの間、及び第2凹部16bと貫通穴形成部11bとの間で熱伝導及び熱放射によって熱交換が生じる。この熱板加熱工程及び熱交換工程によって第1スリット形成金型10が約330゜Cに加熱される(第1スリット形成手段加熱工程)。
【0033】
第1スリット形成金型10が加熱された後は、第1スリット形成工程に移行する。第1スリット形成工程においては、加熱された第1スリット形成金型10が包装容器1の底板2に上方から底板2の厚み方向に押圧される。このとき、第1スリット形成金型10が加熱されているので、その第1スリット形成板11と接触された底板2の発泡樹脂が融解及び収縮され、底板2に第1スリット5及び貫通穴6が同時に形成される。
【0034】
以上のように、本包装容器1の製造方法によれば、加熱された第1スリット形成金型10を既成の発泡包装容器の底板の上面側から押圧し、第1スリット形成板11と接触された発泡樹脂を融解及び収縮させることにより、既成の発泡包装容器の底板に第1スリット5及び貫通穴6を同時に形成することができる。これにより、包装容器1を安価かつ容易に製造することが可能となる。
【0035】
図8乃至図10は、本実施形態の包装容器の変形例を示している。包装容器20は、発泡樹脂によって形成されており、矩形状の底板22と、底板22の周端縁から立設された側壁23等を有し、この底板22及び側壁23によって囲まれた空間内に被包装物を収容する。底板22の上面には、その長手方向に平行に形成された複数の第1スリット25と、第1スリット25に略直交するように形成された複数の第2スリット(貫通部)26が設けられている。第1スリット25及び第2スリット26は、その交差部において互いに連通して形成されている。第1スリット25の深さ寸法は、底板22の厚み寸法よりも小さく設定されている。一方、第2スリット26は、底板22を貫通して形成されている。第1スリット25及び第2スリット26は、底板22の端縁部までは延出されておらず、そのやや内側の領域に留められている。
【0036】
図11は、包装容器20の底板22に第1スリット25及び第2スリット26を形成するためのスリット形成金型(スリット形成手段)30と、スリット形成金型30を加熱するための熱板35を示している。同図においては、スリット形成金型30を構成する部品のうち基板33を2点鎖線にて透視して示している。スリット形成金型30は、第1スリット25を形成するための複数の第1スリット形成板31と、第2スリット26を形成するための複数の第2スリット形成板32と、第1スリット形成板31及び第2スリット形成板32が結合される基板33等によって構成されている。第1スリット形成板31及び第2スリット形成板32は、互いに直交かつ格子状に配置されている。第1スリット形成板31の幅寸法(高さ方向)は、第1スリット25の深さ寸法よりも若干大きく設定され、第2スリット形成板32の幅寸法は、包装容器20の底板22の厚み寸法より大きく設定されている。一方、熱板35の上面には、第1スリット形成板31及び第2スリット形成板32に対応する溝状の第1凹部36及び第2凹部37が形成されている。第1凹部36及び第2凹部37の溝深さは、例えば、第1スリット形成板31及び第2スリット形成板32の幅寸法と同等かそれよりわずかに浅く設定されている。包装容器20の製造方法は、上述した包装容器1の製造方法と同等であるので、その説明は省略する。
【0037】
本包装容器20によれば、底板22を貫通して形成された第2スリット26を有しているので、釜揚げしらすFの収容に用いた場合、しらすFから落下した水滴Wが第2スリット26を通過して容器の外部に排出される。これにより、容器の内底面に水滴Wが溜りにくくなり、従来の発泡包装容器よりもしらすFの鮮度を長時間に亘って維持できるようになる。また、底板22を貫通しない第1スリット25を有しているのでしらすFから落下した水滴Wをこの第1スリット5の内部に溜めておくことができる。これにより、第2スリット26と相まって、しらすFを水滴Wから分離した状態で収容することが可能となり、より一層しらすFの鮮度低下を抑制することができる。また、第1スリット25と第2スリット26は交差して形成されているので互いに連通しており、第1スリット25の内部に溜められた水滴Wは、やがて第2スリット26から容器の外部に排出される。これにより、第1スリット25及び第2スリット26を細く設定しつつも十分な排水効果を得ることができ、容器の強度を一定の水準以上に確保できる。さらにまた、包装容器1と同様に、生鮮野菜の収容に用いた場合、従来の発泡包装容器よりも野菜の鮮度を長時間に亘って維持できるようになる。
【0038】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による包装容器について図面を参照して説明する。図12及び図13は包装容器の構成を示している。包装容器40は、底板42に千鳥状に丸孔(貫通部)41が形成されている点において、第1実施形態と相違する。また、包装容器45は、その底板46に千鳥状に十字スリット(貫通部)47が形成されている。以下、本実施形態については、包装容器40によって説明する。包装容器40の底板42には丸孔41が形成されているので、しらすから落下した水滴は、丸孔41を通過して容器外部に排出され、底板42の上面には水滴は溜まらない。これにより、しらす等の鮮度低下を抑制することができる。
【0039】
次に包装容器40の製造方法について、図14を参照して説明する。包装容器40は、包装容器1と同様に、既存の包装容器の底板に丸孔41を形成することにより、製造することができる。丸孔41は、図14(a)に示す熱板加熱工程と、図14(b)に示す熱板当接工程と、図14(c)に示す貫通部形成工程を経ることにより形成される。本製造方法において用いる貫通部形成金型(貫通部形成手段)43は、包装容器40の底板42に丸孔41を形成するために千鳥状に配列された複数のピン43aを有している。ピン43aの長さは、包装容器40の底板42の厚み寸法よりも大きく設定されている。また、貫通部形成金型43を加熱するための熱板44には、ピン43aに対応するピン挿入孔44aが形成されている。図14(a)乃至(c)に示す各工程については、第1実施形態と同等であるので、その説明は省略する。なお、包装容器45の底板46に十字スリット(貫通部)47を形成するための貫通部形成金型は、貫通部形成金型43においてピン43aの替わりに十字状のスリット形成板が設けられたものが用いられる。
【0040】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による包装容器について図面を参照して説明する。図15乃至図18は包装容器の構成を示している。包装容器50は、矩形状の底板52と、底板52の周端縁から立設された側壁53と、底板52の上面に開口するように平行に形成された複数の第1スリット55と、底板52の下面に開口するように平行に形成された複数の第2スリット56等を有している。第1スリット55は、底板52の長手方向に平行に形成されている。第2スリット56は、第1スリット55と平面視で直交するように形成されている。第1スリット55の深さ寸法と第2スリット56の深さ寸法との和は、底板52の厚み寸法より大きく設定されている。すなわち、第1スリット55と第2スリット56とは、図18に示すように、その交差部において互いに連通している。
【0041】
本包装容器50によれば、底板52の上面に開口するように形成された第1スリット55と、下面に開口するように形成された第2スリット56が互いに直交して交差し、その交差部においてのみ連通しているので、容器の強度を一定水準以上に確保しながら、第1スリット55の底に溜まった水滴を第2スリット56から落下させて容器の外部に排出することが可能となる。
【0042】
次に包装容器50の製造方法について、図19及び図20を参照して説明する。包装容器50は、既存の包装容器の底板に上方から第1スリット55を、下方から第2スリット56を形成することにより、製造することができる。第1スリット55は、加熱された第1スリット形成金型60を既存の包装容器の底板に上方から押圧することにより形成される。また、第2スリット56は、既存の包装容器を裏返してその底板に加熱された第2スリット形成金型65を押圧することにより形成される。図19及び図20においては、第1スリット形成金型60及び第2スリット形成金型65を構成する基板62及び67を2点鎖線にて透視して示している。
【0043】
第1スリット形成金型60は、第1スリット55を形成するための複数の第1スリット形成板61と、各第1スリット形成板61が結合される基板62等によって構成されている。各第1スリット形成板61は、適宜間隔を隔てて互いに平行に配置されている。第2スリット形成金型65は、第2スリット56を形成するための複数の第2スリット形成板66と、各第2スリット形成板66が結合される基板67等によって構成されている。各第2スリット形成板66は、適宜間隔を隔てて互いに平行に配置されている。第1スリット形成板61は包装容器の短手方向に平行に、第2スリット形成板66は包装容器の長手方向に平行に配向されているので、第1スリット55と第2スリット56は、平面視で直交することになる。
【0044】
第1スリット55及び第2スリット56は、熱板加熱工程、熱交換工程、図19に示す第1スリット形成工程、及び図20に示す第2スリット形成工程を経ることにより形成される。第1スリット形成板61及び第2スリット形成板66を加熱する際の熱板加熱工程、熱交換工程に関しては、第1実施形態と同等であるので、その説明を省略する。第1スリット形成工程においては、加熱された第1スリット形成金型60が包装容器50の底板52に上方から底板52の厚み方向に押圧される。このとき、第1スリット形成金型60が加熱されているので、その第1スリット形成板61と接触された底板52の発泡樹脂が融解及び収縮され、底板52に第1スリット55が形成される。ここで、底板52に対する第1スリット形成板61の侵入深さは、底板52の厚み寸法の1/2より若干大きいものとする。その後、第2スリット形成工程においては、包装容器50を裏返しに配置することにより、底板52の底面が上方に向けられる。そして、加熱された第2スリット形成金型65が包装容器50の底板52に上方(底面側)から底板52の厚み方向に押圧される。このとき、第2スリット形成金型65が加熱されているので、その第2スリット形成板66と接触された底板52の発泡樹脂が融解及び収縮され、底板52に第1スリット55と直交する第2スリット56が形成される。ここで、底板52に対する第2スリット形成板66の侵入深さは、底板52の厚み寸法の1/2より若干大きいものとする。このとき、底板52の上面側から形成される第1スリット55及び底板52の底面側から形成される第2スリット56の深さ寸法は、共に底板52の厚み寸法の1/2より若干大きくなるので、その交差部において第1スリット55と第2スリット56とは互いに連通することになる。
【0045】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態による包装容器について図面を参照して説明する。図21及び図22は包装容器の構成を示している。包装容器70は、底板72の長手方向に平行に貫通スリット(貫通部)71が形成されている点において、第1実施形態乃至第3実施形態の包装容器等と相違する。貫通スリット71は、底板72の下面から底板72を厚み方向に貫通し、側壁の下部に亘って形成されている。包装容器70の底板72には貫通スリット71が形成されているので、しらすから落下した水滴は、貫通スリット71を通過して容器外部に排出され、底板72の上面には水滴は溜まらない。これにより、しらす等の鮮度低下を抑制することができる。
【0046】
次に包装容器70の製造方法について、図23を参照して説明する。包装容器70は、包装容器1と同様に、既存の包装容器の底板に貫通スリット71を形成することにより、製造することができる。貫通スリット71は、包装容器70(この段階では、既存の包装容器と同等)の底板72をスリット形成装置(貫通部形成手段)80に押圧することにより形成される。スリット形成装置80は、平行に配列された複数のニクロム線(電熱体)81と、ニクロム線81の両端部を固定するための一対の固定板82とを有している。各固定板82は、包装容器70の下方において包装容器70の長手寸法よりも大きい間隔を隔てて配置される(貫通部形成手段加熱工程)。そして、ニクロム線81の両端には電圧が印加され、ニクロム線81は所定の温度まで加熱される(貫通部形成手段加熱工程)。その後、包装容器70の底板72がスリット形成装置80のニクロム線81に押圧される(底板押圧工程)。その後もさらにニクロム線81の両端には電圧が印加され続け、高温のニクロム線81と接触された底板72の発泡樹脂が融解及び収縮されることにより、底板72に貫通スリット71が形成される(スリット形成工程)。なお、包装容器70の底板72は、ニクロム線81が底板72を完全に貫通するまで押圧される。
【0047】
以上のように、本包装容器70の製造方法によれば、包装容器70の底板72の下方に配置されたニクロム線81を加熱すると共にニクロム線81に包装容器70の底板72を押圧するので、予め加熱されたニクロム線81を移動させることなく底板72に貫通スリット71を形成することができる。既成の発泡包装容器から安全、容易かつ安価に釜揚げしらす等の収容に好適な包装容器を製造できるようになる。また、ニクロム線81に印加する電圧を調整することにより、ニクロム線81の温度を自在に制御することができ、貫通スリット71の形成を容易に行えるようになる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも包装容器の底板に底板を貫通する貫通部が形成されていればよい。また、本発明は種々の変形が可能であり、例えば、第1スリット5、貫通穴6、第1スリット25、第2スリット26、丸孔41、十字スリット46、第1スリット55、第2スリット56及び貫通スリット71の形状、個数、配列等は、図示したものに限られることなく、適宜変形することができる。また、第3実施形態の包装容器50における第2スリット56は、図23に示した要領によっても形成することができる。また、請求項1に記載した凹部は第1スリット5、第1スリット55に限られることなく、幅広かつ浅底の凹部も含むものとする。このような凹部は、包装容器1又は50を成形する際に、その雄金型によって同時に形成することが可能であり、これによって製造工程の簡素化を図ることができる。また、本発明の包装容器は、釜揚げしらすや生鮮野菜の収容に限られることなく、容器内外における透水性や通気性が必要となる用途に幅広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態による包装容器の構成を示す斜視図。
【図2】同包装容器を裏返して視た斜視図。
【図3】同包装容器の平面図。
【図4】(a)は図3におけるA−A線断面図、(b)は図3におけるB−B線断面図。
【図5】同包装容器に釜揚げ直後のしらすが収容された様子を示す断面図。
【図6】同包装容器の底板にスリットを形成するためのスリット形成金型と、それを加熱するための熱板の構成を示す斜視図。
【図7】同包装容器の底板にスリットを形成する工程を示す断面図。
【図8】本発明の第1実施形態による包装容器の変形例の構成を示す斜視図。
【図9】同包装容器の平面図。
【図10】(a)は図10におけるA−A線断面図、(b)は図10におけるB−B線断面図。
【図11】同包装容器の底板にスリットを形成するためのスリット形成金型と、それを加熱するための熱板の構成を示す斜視図。
【図12】本発明の第2実施形態による包装容器の構成を示す平面図。
【図13】本発明の第2実施形態による別の包装容器の構成を示す平面図。
【図14】図12に示す包装容器の底板に丸孔を形成する工程を示す断面図。
【図15】本発明の第3実施形態による包装容器の構成を示す斜視図。
【図16】同容器を裏返して視た斜視図。
【図17】同包装容器の平面図。
【図18】(a)は図17におけるA−A線断面図、(b)は図17におけるB−B線断面図。
【図19】同包装容器の底板に第1スリットを形成する工程を示す斜視図。
【図20】同包装容器の底板に第2スリットを形成する工程を示す斜視図。
【図21】本発明の第4実施形態による包装容器の構成を示す斜視図。
【図22】同包装容器の平面図。
【図23】同包装容器の底板に貫通スリットを形成するためのスリット形成装置の構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0050】
1 包装容器
2 底板
3 側壁
5 第1スリット
6 貫通穴(貫通部)
10 スリット形成金型(貫通部形成手段、第1スリット形成手段)
20 熱板
F しらす
W 水滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板及び側壁を備え、この底板及び側壁によって囲まれた空間内に被包装物を収容する包装容器において、
前記底板は、該底板の上面に形成され、その深さ寸法が該底板の厚み寸法よりも小さい凹部と、この凹部と部分的に連通し、該底板を貫通して形成された貫通部とを有することを特徴とする包装容器。
【請求項2】
前記凹部は、前記底板の上面から開口された第1スリットであることを特徴とする請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
前記底板の下面から開口され、前記凹部と平面視で交差する第2スリットと、前記凹部との交差部が、前記貫通部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の包装容器。
【請求項4】
発泡樹脂によって形成された包装容器の底板に貫通部を形成する貫通部形成手段を加熱する貫通部形成手段加熱工程と、
前記貫通部形成手段加熱工程において加熱された貫通部形成手段を前記底板の上面又は下面から該底板の厚み方向に押圧して、該貫通部形成手段と接触された発泡樹脂を融解及び収縮させることにより、該底板に前記貫通部を形成する貫通部形成工程とを有することを特徴とする包装容器の製造方法。
【請求項5】
前記貫通部形成手段加熱工程は、前記貫通部形成手段に対応する凹部が形成された熱板を加熱する熱板加熱工程と、この熱板加熱工程において加熱された熱板の凹部に該貫通部形成手段を挿入し、該熱板と貫通部形成手段との間で熱交換を生じさせる熱交換工程とを有することを特徴とする請求項4に記載の包装容器の製造方法。
【請求項6】
前記包装容器は、発泡樹脂によって形成され、
前記第1スリット及び貫通部を形成するための第1スリット形成板を備えた第1スリット形成手段を加熱する第1スリット形成手段加熱工程と、
この貫通部形成手段加熱工程において加熱された第1スリット形成手段を前記底板の上面から該底板の厚み方向に押圧して、前記第1スリット形成板と接触された発泡樹脂を融解及び収縮させることにより、該底板に前記第1スリット及び貫通部を形成する第1スリット形成工程とを有することを特徴とする請求項2に記載の包装容器の製造方法。
【請求項7】
前記底板の上面に前記凹部を形成するための凹部形成手段を加熱する凹部形成手段加熱工程と、
前記凹部形成手段加熱工程において加熱された凹部形成手段を前記底板の上面から該底板の厚み方向に押圧して、該凹部形成手段と接触された発泡樹脂を融解及び収縮させることにより、該底板に前記凹部を形成する凹部形成工程と、
前記底板の下面に前記第2スリットを形成するための第2スリット形成手段を加熱する第2スリット形成手段加熱工程と、
前記第2スリット形成手段加熱工程において加熱された第2スリット形成手段を前記底板の下面から該底板の厚み方向に押圧して、該第2スリット形成手段と接触された発泡樹脂を融解及び収縮させることにより、該底板に前記第2スリットを形成する第2スリット形成工程とを有することを特徴とする請求項3に記載の包装容器の製造方法。
【請求項8】
前記凹部形成手段加熱工程は、前記凹部形成手段に対応する凹部が形成された熱板を加熱する熱板加熱工程と、この熱板加熱工程において加熱された熱板の凹部に該凹部形成手段を挿入し、該熱板と貫通部形成手段との間で熱交換を生じさせる熱交換工程とを有し、
前記第2スリット形成手段加熱工程は、前記第2スリット形成手段に対応する凹部が形成された熱板を加熱する熱板加熱工程と、この熱板加熱工程において加熱された熱板の凹部に該第2スリット形成手段を挿入し、該熱板と第2スリット形成手段との間で熱交換を生じさせる熱交換工程とを有することを特徴とする請求項7に記載の包装容器の製造方法。
【請求項9】
発泡樹脂によって形成された包装容器の底板に貫通部を形成する貫通部形成手段を、包装容器の底板の下方に配置する貫通部形成手段配置工程と、
前記貫通部形成手段配置工程において配置された貫通部形成手段を加熱する貫通部形成手段加熱工程と、
前記貫通部形成手段配置工程において配置された貫通部形成手段に包装容器の底板を押圧する底板押圧工程とを有し、
前記貫通部形成手段と接触された発泡樹脂を融解及び収縮させることにより、該底板に前記貫通部を形成する貫通部形成工程とを有することを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の包装容器の製造方法。
【請求項10】
前記貫通部形成手段は、電熱体であり、
前記貫通部形成手段加熱工程において、前記電熱体に加熱のための電圧が印加されることを特徴とする請求項9に記載の包装容器の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2009−1290(P2009−1290A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161863(P2007−161863)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(593025619)トーホー工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】