説明

包装容器及びその製造方法

【課題】人為的な外力によらずに容器部を閉じた状態及び開いた状態に維持することができ、かつ蓋部が容器部に対して反り返えった状態に固定されるのを防止することにある。
【解決手段】容器部2、蓋部3及びヒンジ部4を発泡合成樹脂シートWから一体に形成してなる包装容器1であり、ヒンジ部4は蓋部3を容器部2に対して回動自在に支持する回動支軸部4aを有し、回動支軸部4aは発泡合成樹脂シートWの一部を非発泡化することにより薄肉状に形成している。また、このように構成した包装容器1を製造する方法を提供している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡合成樹脂シートから一体に形成された容器部、蓋部及びヒンジ部を有する包装容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の包装容器としては、容器部と、この容器部を開閉する蓋部と、この蓋部を容器部に回動自在に連結するヒンジ部とがプレス成形によって、発泡合成樹脂シートから一体に形成されたものが知られている。また、ヒンジ部としては、プレス成形の際に圧縮薄延することによって薄肉状に形成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−301735号公報(段落番号0006、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記包装容器においては、ヒンジ部の発泡合成樹脂シートが圧縮薄延されることによって、内部の各気泡が押しつぶされて扁平状に形成されたものとなることから、屈曲に充分耐える強度の高いヒンジ部を得ることができるものの、元の形状に戻ろうとする力が強く残ったものとなってしまっていた。このため、蓋部を、容器部に対して開いた状態から閉じた状態まで回動した後、その閉じた状態を維持する力を抜くと、蓋部が元の開いた状態まで即座に回動してしまうことになる。即ち、輪ゴムや接着テープ等による閉じた状態に保持するための人為的な外力を蓋部に加えておかないと、当該蓋部がすぐに開いた状態になってしまうという問題があった。
【0005】
また、ヒンジ部の発泡合成樹脂シートを圧縮薄延することによって、蓋部が容器部に対して閉じる側又は開く側に反り返った状態になることがある。このように反り返りが生じた場合には、食物を容器部に挿入する工程等において、支障をきたすことがあることから、完成した後の包装容器を複数積み重ねて1日程度放置するなどの対策を講ずることによって、反り返りを取り除く必要があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、人為的な外力を加えることなく、蓋部を容器部に対して閉じた状態及び開いた状態に維持することのでき、かつ蓋部が容器部に対して反り返った状態に固定化されることのないヒンジ部を有する包装容器及びその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、容器部と、この容器部を開閉する蓋部と、この蓋部を前記容器部に回動自在に連結するヒンジ部とを備え、これらの容器部、蓋部及びヒンジ部が発泡合成樹脂シートから一体に形成された包装容器であって、
前記ヒンジ部は、前記蓋部を前記容器部に対して回動自在に支持するための回動支軸部を有しており、前記回動支軸部は、前記発泡合成樹脂シートの一部を非発泡化することにより薄肉状に形成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ヒンジ部は、前記容器部を閉じた状態から180度開いた状態の前記蓋部と、前記容器部とをつなぐ平面部に、互いに平行に直線状に延在する二本の凹条部を備えた構成になっており、前記各凹条部は、前記平面部における前記蓋部の内面に対応する側の面から断面V字状の凹状に形成され、前記回動支軸部は、前記各凹条部の谷底部に形成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ヒンジ部は、前記容器部を閉じた状態から180度開いた状態の前記蓋部と、前記容器部とをつなぐ平面部に、直線状に延在する一本の凹条部を備えた構成になっており、前記凹条部は、前記平面部における前記蓋部の外面に対応する側の面から断面V字状の凹状に形成され、前記回動支軸部は、前記凹条部の谷底部に形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記回動支軸部は、前記容器部、前記蓋部及び前記ヒンジ部をプレス成形する際の型締め力を前記発泡合成樹脂シートの一部に集中させて、当該一部に高圧力を作用させることにより形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記回動支軸部は、前記容器部、前記蓋部及び前記ヒンジ部をプレス成形するための第1成形型及び第2成形型のうち一方の成形型の内面から突出するように設けられた凸条型部と、前記第1成形型及び前記第2成形型のうち他方の成形型の内面部分とで、前記発泡合成樹脂シートの一部を挟み、前記第1成形型及び前記第2成形型によりプレス成形する際の型締め力を当該発泡合成樹脂シートの一部に集中させて、当該一部に高圧力を作用させることにより形成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記凸条型部は、断面V字状に突出する尖端部を有し、当該尖端部が前記他方の成形型の内面部分に向けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の発明において、前記凸条型部と前記他方の成形型の内面部分との間の隙間は、前記発泡合成樹脂シートを挿入することなく、前記容器部、前記蓋部及び前記ヒンジ部をプレス成形するために前記第1成形型と前記第2成形型とを閉じた状態において、0〜0.01mmに設定されていることを特徴としている。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れかに記載の包装容器を製造する方法であって、発泡合成樹脂シートを第1成形型と第2成形型との間に挿入した後、当該第1成形型及び第2成形型を閉じてから、これらの成形型に型締め力を作用させることによって、所定の成形可能温度まで加熱された発泡合成樹脂シートから容器部、蓋部及びヒンジ部を一体に成形すると共に、前記型締め力をヒンジ部の一部に集中させて、当該一部に高圧力を作用させることにより、当該ヒンジ部に非発泡化された薄肉状の回動支軸部を成形することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、ヒンジ部の回動支軸部が発泡合成樹脂シートの非発泡化により薄肉状に形成されているので、回動支軸部回りに蓋部をほとんど抵抗なく回動することができる。即ち、回動支軸部は、非発泡化により極めて薄いものとなり、曲げ剛性の一要素である断面二次モーメント(回動支軸部の軸心回り)が極めて小さなものとなるので、ほとんど抵抗なく蓋部を回動して容器部を開閉することができる。従って、人為的な何等の外力も加えることなく、蓋部に作用する重力だけで、当該蓋部を容器部に対して閉じた状態や開いた状態に維持することができる。しかも、蓋部が容器部に対して反り返った状態に固定化されることもない。
【0016】
このため、例えば、包装容器内に食物を収容するラインにおいては、容器部に対して蓋部を開いた所定の状態に維持しながら当該容器部内に食物を投入することができ、容器部に食物を投入した後は当該容器部を蓋部によって容易に閉じることができる。そして、容器部を蓋部で閉じた後は、その閉じた状態を人為的な何等の外力を加えることなく維持しながら、当該包装容器を例えば密封工程に送ることができる。従って、蓋部で容器部を閉じた状態に維持するための工程や設備が不要になるので、食物等を包装する工程が簡単になると共に、その包装設備に要する費用の低減を図ることができる。また、蓋部が容器部に対して反り返った状態に固定化されることもないので、その反り返りを取り除く手間や時間を省くことができる。
【0017】
また、回動支軸部は、非発泡化によりソリッドの薄膜状になることから、回動に対しても充分に耐え得る耐久性の高いものとなるという利点がある。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、ヒンジ部は容器部を閉じた状態から180度開いた状態の蓋部と、容器部とをつなぐ平面部に、互いに平行に直線状に延在する二本の凹条部を備えた構成になっており、各凹条部は平面部における蓋部の内面に対応する側の面から断面V字状の凹状に形成され、回動支軸部は各凹条部の谷底部に形成されているので、容器部を閉じるために蓋部を回動した際に、二本の凹条部の左右に位置する所定の厚さの平面部が互いに当って回動の邪魔になるのを防止することができる。従って、容器部を完全に閉じる位置まで蓋部を確実に回動させることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、ヒンジ部は容器部を閉じた状態から180度開いた状態の蓋部と、容器部とをつなぐ平面部に、直線状に延在する一本の凹条部を備えた構成になっており、凹条部は平面部における蓋部の外面に対応する側の面から断面V字状の凹状に形成され、回動支軸部は凹条部の谷底部に形成されているので、容器部を閉じるために蓋部を回動した際に、ヒンジ部の左右に位置する所定の厚さの平面部が互いに当って回動の邪魔になるのを防止することができる。従って、容器部を完全に閉じる位置まで蓋部を確実に回動させることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、容器部、蓋部及びヒンジ部をプレス成形する際の型締め力を発泡合成樹脂シートの一部に集中させて、当該一部に高圧力を作用させることにより回動支軸部が形成されているので、容器部、蓋部及びヒンジ部をプレス成形する過程で、効率よく簡単に回動支軸部を成形することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、容器部、蓋部及びヒンジ部をプレス成形するための第1成形型及び第2成形型のうち一方の成形型の内面から突出するように設けられた凸条型部と、第1成形型及び第2成形型のうち他方の成形型の内面部分とで、発泡合成樹脂シートの一部を挟み、第1成形型及び第2成形型によりプレス成形する際の型締め力を発泡合成樹脂シートの一部に集中させて、当該一部に高圧力を作用させることにより、回動支軸部が形成されているので、凸条型部によって特定される回動支軸部の位置に当該回動支軸部を正確に形成することができる。また、凸条型部及びこの凸条型部に対応する他方の成形型の内面部分を硬度等の高い材質の優れた材料で形成することにより、第1成形型や第2成形型のコストの上昇を抑えながら、当該成形型の耐久性の向上を図ることができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、凸条型部が断面V字状に突出する尖端部を有し、その尖端部が他方の成形型の内面部分に向けられているので、凸条型部における尖端部の極めて幅の狭い線状の部分と、他方の成形型の内面部分とで発泡合成樹脂シートを挟むことができる。従って、当該発泡合成樹脂シートに極めて高い圧力を線状に集中的に作用させることができるので、その際に生じた線状高圧力によって非発泡となる回動支軸部を簡単に形成することができる。しかも、凸条型部が断面V字状に突出する尖端部を有する形状になっているので、凸条型部を発泡合成樹脂シート内に押し込む際に生じる抵抗を低減することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、発泡合成樹脂シートを挿入することなく、容器部、蓋部及びヒンジ部をプレス成形するために第1成形型と第2成形型とを閉じた状態において、凸条型部と、他方の成形型の内面部分との間の隙間が0〜0.01mmに設定されているので、凸条型部と、他方の成形型の内面との間に介在する発泡合成樹脂シートに極めて高い圧力を作用させることができると共に、その高圧部分に非発泡化された極めて薄い回動支軸部を形成することができる。
【0024】
請求項8に記載の発明に係る包装容器を製造方法によれば、発泡合成樹脂シートを第1成形型と第2成形型との間に挿入して当該第1成形型及び第2成形型を閉じてから、これらの成形型に型締め力を作用させることによって、所定の成形可能温度まで加熱された発泡合成樹脂シートから容器部、蓋部及びヒンジ部を一体に成形する工程を経ることにより、型締め力をヒンジ部の一部に集中させて、当該一部に非発泡化された薄肉状の回動支軸部を成形することができる。従って、容器部、蓋部及びヒンジ部を原材料としての発泡合成樹脂シートから一体に成形する過程で、非発泡化された薄肉状の回動支軸部を有するヒンジ部を効率よく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態として示した包装容器の斜視図である。
【図2】同包装容器及びこの包装容器を成形する第1成形型及び第2成形型を示す断面図である。
【図3】同包装容器のヒンジ部及びこのヒンジ部を成形する第1成形型及び第2成形型の要部を示す図であって、(a)は型開状態を示す断面図であり、(b)は型締め状態を示す断面図であり、(c)は発泡合成樹脂シートを挿入せずに型閉じした状態を示す断面図であり、(d)は凹条部及び回動支軸部を示す要部断面図である。
【図4】同包装容器を示す図であって、(a)は蓋部を容器部に対して完全に閉じた状態から180度開いた後の状態を示す断面図であり、(b)は蓋部を容器部に対して閉じる方向に所定角度回動した後の状態を示す断面図であり、(c)は蓋部で容器部を完全に閉じた後の状態を示す断面図である。
【図5】同包装容器のヒンジ部を示す図であって、(a)は蓋部を容器部に対して完全に閉じた状態から180度開いた後の状態を示す断面図であり、(b)は蓋部を容器部に対して閉じる方向に所定角度回動した後の状態を示す断面図であり、(c)は蓋部で容器部を完全に閉じた後の状態を示す断面図である。
【図6】同包装容器の製造装置を示す説明図である。
【図7】同包装容器のヒンジ部の他の例を示す図であって、(a)は型開状態を示す断面図であり、(b)は型締め状態を示す断面図であり、(c)は発泡合成樹脂シートを挿入せずに型閉じした状態を示す断面図であり、(d)は蓋部を容器部に対して完全に閉じた状態から180度開いた後の状態を示す断面図であり、(e)は蓋部を容器部に対して閉じる方向に所定角度回動した後の状態を示す断面図であり、(f)は蓋部で容器部を完全に閉じた後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
この実施の形態で示す包装容器1は、図1に示すように、容器部2と、この容器部2の開口部を開閉する蓋部3と、この蓋部3を前記容器部2に回動自在に連結するヒンジ部4とを備え、これらの容器部2、蓋部3及びヒンジ部4が発泡合成樹脂シートWから一体に形成されたものである。
【0028】
発泡合成樹脂シートWは、PSP(ポリスチレンペーパー)シートとして広く一般に使用されているものが用いられている。容器部2は、周囲に所定の幅の平面状に形成された鍔部21を有すると共に、この鍔部21に対して隆起した状態に形成され四角形状の開口部を構成する嵌合凸部22を有している。蓋部3は、長方形状の開口部に沿う内周面3aが容器部2の嵌合凸部22の外周面22aに嵌合するようになっていると共に、開口部の周囲に所定の幅の平面状に形成された鍔部31を有している。蓋部3は、図4(c)に示すように、その内周面3aを嵌合凸部22の外周面22aに嵌合させ、その鍔部31を容器部2の鍔部21に当接させた状態にすることによって、当該容器部2を完全に閉じた状態とするようになっている。そして、容器部2と蓋部3とは、完全に閉じた状態において、外周面22aと内周面3aとの嵌合によって生じた所定の大きさの嵌合力により、その完全に閉じた状態が維持されるようになっている。ただし、その嵌合力は、通常の人が蓋部3を容器部2から容易かつスムーズに開くことができる程度の小さな大きさのものである。ヒンジ部4は、蓋部3を容器部2に対して回動自在に支持するための回動支軸部4aを有している。
【0029】
また、ヒンジ部4は、図1に示すように、容器部2と、蓋部3とをつなぐ平面部5に、互いに平行に直線状に延在する二本の凹条部4bを備えた構成になっている。平面部5は、図4(a)に示すように、容器部2を完全に閉じた状態から回動支軸部4aの回りに180度回動して開いた状態となっている蓋部3と、容器部2とをつなぐように平面状に形成されるものである。そして、この例の場合において、平面部5は、容器部2の鍔部21及び蓋部3の鍔部31に連続するように形成されていると共に、これらの鍔部21、31の間にあって所定の幅の帯状に形成されている。
【0030】
各凹条部4bは、平面部5の帯状に延在する方向に直線状に長く形成されていると共に、平面部5における蓋部3の内周面(内面)3aに対応する側の面から断面V字状の凹状に形成されている。各凹条部4bの左右の傾斜面は、図3(d)に示すように、平面部5の垂線Pに対する角度θが等しくなるように形成されている。なお、角度θは45度以上55度以下に設定することが好ましい(この例では約50度に設定されている)。
【0031】
回動支軸部4aは、発泡合成樹脂シートWの一部を非発泡化することにより薄肉化されたものであり、各凹条部4bの谷底部に形成されている。この回動支軸部4aは、容器部2、蓋部3及びヒンジ部4を真空プレス成形(プレス成形)する際の型締め力を発泡合成樹脂シートWの一部に集中させて、当該一部に高圧力を作用させることにより形成されている。
【0032】
即ち、回動支軸部4aは、図2に示すように、容器部2、蓋部3及びヒンジ部4を真空プレス成形するための第1成形型M1及び第2成形型M2のうちの一方の成形型としてのの第1成形型M1の内面から突出するように設けられた凸条型部M1aと、他方の成形型としての第2成形型M2の内面部分M2aとで、発泡合成樹脂シートWの一部を挟み、第1成形型M1及び第2成形型M2により真空プレス成形する際の型締め力を当該発泡合成樹脂シートWの一部に集中させて、当該一部に高圧力を作用させることにより形成されている。なお、凸条型部M1aと内面部分M2aとでプレス成形されることにより、上述した各凹条部4bも同時に形成されることになる。
【0033】
また、各凸条型部M1aは、図2及び図3(a)、(b)に示すように、第1成形型M1に埋め込まれた凸条ブロックM1bの第1成形型M1の内面から突出する部分によって形成されたものであり、断面V字状に突出する2つの尖端部M1cを有し、当該各尖端部M1cが第2成形型M2の内面部分M2aに向けられている。各尖端部M1cの先端角度は、上述した角度θに対応する角度に設定されている。
【0034】
内面部分M2aは、第2成形型M2に埋め込まれた保持ブロックM2bの当該第2成形型M2の内面から露出する面によって形成されている。この内面部分M2aは、第2成形型M2における保持ブロックM2bの周囲の内面と同一の面状となるように形成されている。
【0035】
凸条型部M1aと内面部分M2aとの間の隙間は、図3(c)に示すように、発泡合成樹脂シートWを挿入することなく、真空プレス成形のために第1成形型M1と第2成形型M2とを閉じた状態(型締め前の状態)において、0〜0.01mmに設定されている。即ち、隙間は、基本的には0mmに設定することが好ましいが、0.01mm程度の製造上の寸法公差を考慮する必要がある。そして、この隙間が0.01mm以下であれば、型締め時の第1成形型M1や第2成形型M2等の弾性撓みにより、隙間が0mmの場合と同様に、発泡合成樹脂シートWに極めて高い圧力を作用させることが可能である。なお、ヒンジ部4は、平面部5と、この平面部5に形成された凹条部4b及び回動支軸部4aを備えた構成になっている。
【0036】
上記のように構成された包装容器1においては、ヒンジ部4の回動支軸部4aが発泡合成樹脂シートWの非発泡化により薄肉状に形成されているので、回動支軸部4a回りに蓋部3を回動する際の抵抗がほとんど生じることがない。即ち、回動支軸部4aは、非発泡化により極めて薄いものとなり、曲げ剛性の一要素である断面二次モーメント(回動支軸部4aの軸心回り)が極めて小さなものとなるので、ほとんど抵抗なく蓋部3を回動して容器部2を開閉することができる。従って、人為的な何等の外力も加えることなく、蓋部3に作用する重力だけで、当該蓋部3を、容器部2を閉じた状態や開いた状態に維持することができる。また、開状態において、蓋部3が容器部2に対して反り返った状態に固定化されるのを防止することができる。なお、この例では、嵌合による保持力により閉じた状態を維持するようになっているが、この嵌合による保持力がなくても、蓋部3を閉じた状態や開いた状態に維持することができる。
【0037】
このため、例えば、包装容器1内に食物を収容するラインにおいては、容器部2に対して蓋部3を開いた状態に維持しながら当該包装容器1を食物の投入工程に移動することができると共に、容器部2に食物を投入して蓋部3で当該容器部2を閉じた後は、その閉じた状態を何等の外力を加えることなくそのまま維持しながら、当該包装容器1を例えば密封工程に送ることができる。従って、容器部2を閉じた状態に維持する工程や設備が不要になるので、食物等の包装工程が簡単になると共に、包装設備にかかる費用の低減を図ることができる。しかも、容器部2に対する蓋部3の反り返りを取り除く手間や時間を省くことができる。
【0038】
更に、回動支軸部4aは、非発泡化によってソリッドの薄膜状になるので、繰り返して行われる蓋部3の回動に対しても充分に耐え得る耐久性の高いものになるという利点もある。
【0039】
また、ヒンジ部4は蓋部3と容器部2とをつなぐ平面部5に平行に延在する二本の凹条部4bを備えた構成になっており、各凹条部4bは平面部5における蓋部3の内周面3aに対応する側の面から断面V字状の凹状に形成され、回動支軸部4aは各凹条部4bの谷底部に形成されているので、図4及び図5に示すように、容器部2を閉じるために蓋部3を回動した際に、二本の凹条部4bの左右に位置する所定の厚さの平面部5が互いに当ることがない。即ち、各凹条部4bの左右の傾斜面の角度θが平面部5の垂線Pに対して45度以上に形成されているので、図4(c)及び図5(c)に示すように、容器部2を完全に閉じる状態まで蓋部3を回転しても、平面部5が互いに当って回動の抵抗となることがない。従って、容器部2を完全に閉じる位置まで蓋部3を抵抗なく回動することができる。
【0040】
そして、真空プレス成形する際の型締め力を発泡合成樹脂シートWの一部に集中させて、当該一部に高圧力を作用させることにより回動支軸部4aが形成されるようになっているので、容器部2、蓋部3及びヒンジ部4の通常の成形過程で、効率よく簡単に回動支軸部4aを成形することができる。
【0041】
即ち、第1成形型M1の内面から突出するように設けられた凸条型部M1aと、第2成形型M2の内面部分M2aとで、発泡合成樹脂シートWの一部を挟み、当該一部に型締め力を集中させて高圧力を作用させることにより、回動支軸部4aが形成されているので、凸条型部M1aによって特定されるヒンジ部4の所定の位置に回動支軸部4aを正確に形成することができる。また、凸条型部M1a及び内面部分M2aを有する凸条ブロックM1b及び保持ブロックM2bを硬度等において材質の優れた材料で形成することにより、第1成形型M1や第2成形型M2のコストの上昇を抑えながら、当該成形型M1、M2の耐久性の向上を図ることができる。
【0042】
そして、凸条型部M1aが断面V字状に突出する尖端部M1cを有し、その尖端部M1cが第2成形型M2の内面部分M2aに向けられているので、凸条型部M1aにおける尖端部M1cの極めて幅の狭い線状の部分と、内面部分M2aとで発泡合成樹脂シートWを挟むことができる。従って、発泡合成樹脂シートWに極めて高い圧力を線状に集中的に作用させることができると共に、その際に発生する線状の高圧力によって非発泡化された線状に延在する回動支軸部4aを簡単に形成することができる。しかも、凸条型部M1aが断面V字状に突出する尖端部M1cを有しているので、当該凸条型部M1aを発泡合成樹脂シートW内に押し込む際に生じる抵抗を低減することができる。なお、角度θが大きくなると、凸条型部M1aを発泡合成樹脂シートWに押し込む際の抵抗が増大することになるので、当該角度θとしては55度以下に設定することが好ましい。
【0043】
また、発泡合成樹脂シートWを挿入せることなく、第1成形型M1と第2成形型M2とを閉じた状態において、凸条型部M1aと、内面部分M2aとの間の隙間が0〜0.01mmに設定されていることからも、凸条型部M1aと、内面部分M2aとの間に介在する発泡合成樹脂シートWに極めて高い圧力を発生させることができ、これにより、その高圧部分に非発泡の極めて薄い回動支軸部4aを形成することができる。
【0044】
次に、上記のように構成された包装容器1の製造方法を図6を参照して説明する。まず、ロール状に巻かれた発泡合成樹脂シートWを予熱装置Aに送ることにより、当該発泡合成樹脂シートWを真空プレス成形装置(プレス成形装置)Bで成形可能な温度(130〜150℃)まで加熱し、この加熱された発泡合成樹脂シートWを第1成形型M1と第2成形型M2とが型開状態にされた真空プレス成形装置Bに送る。
【0045】
真空プレス成形装置Bでは、型開状態にある第1成形型M1と第2成形型M2との間に発泡合成樹脂シートWを受け入れてから、油圧シリンダB1、B2で第1成形型M1及び第2成形型M2を閉じた後、更に油圧シリンダB1、B2に高圧の作動油を供給することによって型締めを行い、この型締め状態を所定時間保持してから、油圧シリンダB1、B2によって第1成形型M1及び第2成形型M2を開くことになる。この真空プレス成形装置Bで成形された複数の包装容器1を有する発泡合成樹脂シートWは次工程に送られることになる。
【0046】
真空プレス成形装置Bにおいては、包装容器1を成形するための型締め力をヒンジ部4の一部に集中させて、当該一部に高圧力を作用させることにより、非発泡化された薄肉状の回動支軸部4aを成形することになる。なお、一度に成形可能な包装容器1の数は、当該包装容器1の大きさによって異なるが、1〜100個であり、この例の包装容器1の場合は、12〜50個程度である。そして、12〜50個程度の包装容器1を一度に成形する場合に、線状に形成されることになる回動支軸部4aの長さの合計は、6〜12m程度となる。油圧シリンダB1、B2によって生じる型締め力(プレス力)は、10〜40トン(100〜400kN)程度である。
【0047】
また、第1成形型M1及び第2成形型M2で包装容器1を成形している間は、第1成形型M1及び第2成形型M2のそれぞれの内面側から空気を吸引する真空引きがなされている。この真空引きにより、成形性の向上が図られている。また、成形後に型開きをする際には、それぞれの成形型M1、M2の内面側から所定の圧力の空気を吹き出す圧空処理を行うことにより、成形品を第1成形型M1及び第2成形型M2から分離している。
【0048】
成形後の包装容器1を有する発泡合成樹脂シートWは、トリミング装置Cに送られ、各包装容器1ごとに打ち抜かれることになる。なお、図6においては、包装容器1を1つずつ打つ抜く様子を示しているが、複数の包装容器1を同時に打ち抜くことが可能である。打ち抜かれた包装容器1は、所定の個数積み重ねられた状態となった後、検査工程等の次工程に送られる。包装容器1を打ち抜いた後の発泡合成樹脂シートWは、スクラップとして、粉砕機Dに送られ粉砕処理されることになる。
【0049】
上記のように構成された包装容器1の製造方法においては、予め成形可能温度まで発泡合成樹脂シートWを加熱する工程、この加熱された発泡合成樹脂シートWを第1成形型M1と第2成形型M2との間に挿入する工程、第1成形型M1及び第2成形型M2を閉じてから、これらの成形型M1、M1に型締め力を作用させることによって、容器部2、蓋部3及びヒンジ部4からなる包装容器1を一体に成形する工程を経ることにより、型締め力をヒンジ部4の一部に線状に集中させて、当該一部に非発泡化された薄肉状の回動支軸部4aを成形することができる。即ち、線状高圧加工によって、直線状に延在する回動支軸部4aを成形することができる。従って、容器部2、蓋部3及びヒンジ部4を原材料としての発泡合成樹脂シートWから一体に成形する過程で、非発泡化された薄肉状の回動支軸部4aを有するヒンジ部4を簡単に形成することができる。
【0050】
なお、上記実施の形態においては、ヒンジ部4として二本の凹条部4bを有するように構成した例を示したが、このヒンジ部4としては、図7(d)に示すように、容器部2を閉じた状態から180度開いた状態の蓋部3と、容器部2とをつなぐ平面部5に、直線状に延在する一本の凹条部4bを有するように構成してもよい。この場合、凹条部4bは、平面部5における蓋部3の外面3b(図4(a)及び図7(d)参照)に対応する側の面から断面V字状の凹状に形成することになる。また、回動支軸部4aが凹条部4bの谷底部に形成されている点は、上述した例と同様である。そして、凹条部4bを形成するための凸条型部M1aは、図7(a)、(b)に示すように、凸条ブロックM1bを第2成形型M2に設けることによって、当該第2成形型M2に設けられた状態になっており、内面部分M2aは保持ブロックM2bを第1成形型M1に設けることによって、当該第1成形型M1に設けられた状態になっている。また、凸条型部M1aは、一つの尖端部M1cを有するもので構成されることになる。尖端部M1cの先端角度は、上述した角度θに対応する角度において、10〜30度に設定することが好ましい。角度θが10度未満であると、尖端部M1cの耐久性が低下したものとなるからであり、25度以上では、図7(f)に示すように、蓋部3を完全に閉じた状態において凹条部4bの各斜面のなす角度が120度以下となり、当該斜面の部分が尖った形状になるからである。また、凸条型部M1aと内面部分M2aとの間の隙間は、図7(c)に示すように、発泡合成樹脂シートWを挿入することなく、真空プレス成形のために第1成形型M1と第2成形型M2とを閉じた状態(型締め前の状態)において、0〜0.01mmに設定されている。
【0051】
上記のように構成された一本の凹条部4bを有するヒンジ部4を備えた包装容器1においては、凹条部4bが平面部5における蓋部3の外面3bに対応する側の面から断面V字状の凹状に形成され、回動支軸部4aは凹条部4bの谷底部に形成されているので、容器部2を閉じるために蓋部3を回動した際に、図7(f)に示すように、ヒンジ部4の左右に位置する所定の厚さの平面部5が互いに当って回動の抵抗となることがない。従って、容器部2を完全に閉じる位置まで蓋部3を回動させることができる。しかも、凹条部4bの数が少なくなるので、より高い圧力を発泡合成樹脂シートWに作用させて回転駆動軸4aを成形することができる。また、換言すれば、型締め力が小さな場合でも、非発泡化した回動支軸部4aを成形することが可能になる。更に、尖端部M1cにおける角度θに対応する角度を45度以下の小さな角度に設定することができるので、凸条型部M1aから発泡合成樹脂シートWに型締め力を集中的に作用させる効率の向上を図ることができる。このため、凸条型部M1aを発泡合成樹脂シートW内に押し込む際の抵抗をさらに低減することができる。
【0052】
また、発泡合成樹脂シートWとしてPSPシートを用いた例を示したが、この発泡合成樹脂シートWとしては、他の発泡合成樹脂を用いたシートであってもよい。更に、凸条型部M1a及び内面部分M2aについては、それぞれ凸条ブロックM1b及び保持ブロックM2bに形成することによって、第1成形型M1や第2成形型M2に設けるように構成した例を示したが、当該第1成形型M1や第2成形型M2に直接形成することによってこれらの1成形型M1や第2成形型M2に設けるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 包装容器
2 容器部
3 蓋部
3a 内周面(内面)
3b 外面
4 ヒンジ部
4a 回動支軸部
4b 凹条部
5 平面部
M1 第1成形型
M1a 凸条型部
M1b 凸条ブロック
M1c 尖端部
M2 第2成形型
M2a 内面部分
M2b 保持ブロック
A 予熱装置
B 真空プレス成形装置(プレス成形装置)
W 発泡合成樹脂シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器部と、この容器部を開閉する蓋部と、この蓋部を前記容器部に回動自在に連結するヒンジ部とを備え、これらの容器部、蓋部及びヒンジ部が発泡合成樹脂シートから一体に形成された包装容器であって、
前記ヒンジ部は、前記蓋部を前記容器部に対して回動自在に支持するための回動支軸部を有しており、
前記回動支軸部は、前記発泡合成樹脂シートの一部を非発泡化することにより薄肉状に形成されていることを特徴とする包装容器。
【請求項2】
前記ヒンジ部は、前記容器部を閉じた状態から180度開いた状態の前記蓋部と、前記容器部とをつなぐ平面部に、互いに平行に直線状に延在する二本の凹条部を備えた構成になっており、
前記各凹条部は、前記平面部における前記蓋部の内面に対応する側の面から断面V字状の凹状に形成され、
前記回動支軸部は、前記各凹条部の谷底部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
前記ヒンジ部は、前記容器部を閉じた状態から180度開いた状態の前記蓋部と、前記容器部とをつなぐ平面部に、直線状に延在する一本の凹条部を備えた構成になっており、
前記凹条部は、前記平面部における前記蓋部の外面に対応する側の面から断面V字状の凹状に形成され、
前記回動支軸部は、前記凹条部の谷底部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の包装容器。
【請求項4】
前記回動支軸部は、前記容器部、前記蓋部及び前記ヒンジ部をプレス成形する際の型締め力を前記発泡合成樹脂シートの一部に集中させて、当該一部に高圧力を作用させることにより形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の包装容器。
【請求項5】
前記回動支軸部は、前記容器部、前記蓋部及び前記ヒンジ部をプレス成形するための第1成形型及び第2成形型のうち一方の成形型の内面から突出するように設けられた凸条型部と、前記第1成形型及び前記第2成形型のうち他方の成形型の内面部分とで、前記発泡合成樹脂シートの一部を挟み、前記第1成形型及び前記第2成形型によりプレス成形する際の型締め力を当該発泡合成樹脂シートの一部に集中させて、当該一部に高圧力を作用させることにより形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の包装容器。
【請求項6】
前記凸条型部は、断面V字状に突出する尖端部を有し、当該尖端部が前記他方の成形型の内面部分に向けられていることを特徴とする請求項5に記載の包装容器。
【請求項7】
前記凸条型部と前記他方の成形型の内面部分との間の隙間は、前記発泡合成樹脂シートを挿入することなく、前記容器部、前記蓋部及び前記ヒンジ部をプレス成形するために前記第1成形型と前記第2成形型とを閉じた状態において、0〜0.01mmに設定されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の包装容器。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の包装容器を製造する方法であって、
発泡合成樹脂シートを第1成形型と第2成形型との間に挿入した後、当該第1成形型及び第2成形型を閉じてから、これらの成形型に型締め力を作用させることによって、所定の成形可能温度まで加熱された発泡合成樹脂シートから容器部、蓋部及びヒンジ部を一体に成形すると共に、前記型締め力をヒンジ部の一部に集中させて、当該一部に高圧力を作用させることにより、当該ヒンジ部に非発泡化された薄肉状の回動支軸部を成形することを特徴とする包装容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−168068(P2010−168068A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11795(P2009−11795)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(391011825)中央化学株式会社 (32)
【Fターム(参考)】