説明

包装容器用蓋

【課題】
蓋部材の大きさが比較的に小さく、注口における内容物の注出状態も良く見え、また、開閉動作を片手で操作することができ、また、注口の開鎖を確実にすることができ、しかも構造が簡単な包装容器用蓋を提供する
【解決手段】
注口12と連結部13とを有し容器2の開口部5を覆う状態で容器2に装着される注口付きキャップ3と、変位して注口12を開閉するカバー部材4とを有し、カバー部材4は注口12に係脱して注口12を開閉する蓋部材18と、注口付きキャップ3の連結部13に回転軸14の回りに回転可能に連結する連結部材20と、蓋部材18と連結部材20とを両端部に取り付けていてかつ回転軸14を含む平面内における蓋部材18の変位を許容することができる弾性可撓性を具有する腕部材17とを有する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は粉粒体や液体を内容物として収容する容器から、その内容物を注出する注口を開閉する蓋部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉チーズなどの粉粒体や調味料などの液体内容物を収容する容器では、容器の開口部にキャップをかぶせて閉じ、このキャップに注口を設け、この注口を蓋部で開閉する形式のものがある。
【0003】
キャップの注口を開閉する蓋部の型式としてはヒンジキャップが知られている。ヒンジキャップは蓋部を手指で押し上げたり、押し下げたりするだけで注口の開閉ができ、片手での操作が可能であり、取り扱いがきわめて便利である。しかし、ヒンジキャップの蓋部はキャップの上面を覆う大きさをもっていて、蓋部が比較的大きなものとなり、容器の傾きによっては、注口が蓋部で隠れてしまい、注出状態が見えない場合もある。
【0004】
キャップの注口を開閉する蓋部の他の型式としては差し込み栓式のもの(例えば実公平4−9340号)やシャッター形式のもの(例えば特開平11−171222号)がある。
【0005】
【特許文献1】実公平4−9340号
【特許文献2】特開平11−171222号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
差し込み栓式の場合は注口を開く動作としては蓋部を上に変位させて注口を開ける動作と蓋部を注口に対して横に変位させて注出の邪魔にならない位置に退避させる動作との2方向の操作が必要である。これら2つの特許文献のうち、特許文献1の技術では、容器側に球面状の注出筒12を突設し、その頂上に注出口14を設け、一方キャップ側に回転軸13を中心として先方に弾性片21を設け後方につまみ片25を設け、弾性片21の下面に設けた小突子の栓部22を注出口14に抜き差しして注出口14を開閉するもので、栓体の抜き差しを弾性片21の弾性変形によって行い、横方向への変位はつまみ片25を操作して弾性片21を回転軸13の回りに回転させて行っている。この特許文献1の技術では、栓体の抜き差しを球面状の栓が丸く形成された注出口14の上面を無理矢理乗り越えるので、スムーズに動作させるためには注出口が小さいものに限られること、栓体を動作させるのに回転軸13をはさんだ反対側のつまみ片25をつまんで操作するので、操作が間接的になって、所望の動作を得るのに操作者の慣れが必要であるなどの問題点がある。
【0007】
一方、特許文献2に示される技術では、注出口6の開閉を注出口シャッター10の横方向の移動だけで行うもので、栓体の抜き差しによる開閉はないので、注出口は大きく設けることはできるが、注出口シャッター10はガイド溝に沿って動くので、上下動できず、注出口と嵌合しない。そのため、車の振動程度では問題なくても、容器が横倒しになると内容物がこぼれることがあり得る。
【0008】
この発明は上記の如き事情に鑑みてなされたものであって、蓋部の大きさが比較的に小さく、注口における内容物の注出状態も良く見え、また、開閉動作を片手で操作することができ、また、注口の開鎖を確実にすることができ、しかも構造が簡単な包装容器用蓋を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的に対応して、この発明の包装容器用蓋は、注口と連結部とを有し容器の開口部を覆う状態で前記容器に装着されるキャップと、変位して前記注口を開閉するカバー部材とを有し、前記カバー部材は前記注口に係脱して前記注口を開閉する蓋部材と、前記キャップの連結部に回転軸の回りに回転可能に連結する連結部材と、前記蓋部材と前記連結部材とを両端部に取り付けていてかつ前記回転軸を含む平面内における前記蓋部材の前記変位を許容することができる弾性可撓性を具有する腕部材とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
この発明の包装容器用蓋では、蓋部材は注口自体だけを閉じる大きさにすることができ、また腕部材も細長の構造物で構成することができるので全体として小型のものとなり、さらに注出時に蓋部材は注口から横に変位した距った位置に退避しているので注出時に蓋部材が注口を覆い隠して視線の妨げになることはない。
【0011】
また、注口を開閉する蓋部材を取り付ける腕部材を弾性可撓性を有する構造としたので、蓋部材の開閉動作となる上下動を腕部材の弾性撓みによって実現することができ、蓋部材の上下動を許容するためのスライド機構等の特別の機構を必要としないのでキャップの構造が簡単である。
【0012】
また、注口の周囲に蓋部材が嵌合するためのビードを土手状に配置する場合に、その外周面をテーパー状にガイド斜面とすることによって、蓋部材による注口の閉鎖動作を円滑にすることができる。ガイド斜面は基本的には回転軸を中心とする腕部材の変位する方向に設けるが、注口を囲む環状に設けると構造が簡単で製造も容易になる。
【0013】
腕部材の長さをキャップの直径方向に延びる長尺のものとし、腕部材の回転中心をキャップの周縁近くに置き、蓋部材を取り付けた先端を反対側の周縁近くに置く構造とするときは腕部材の長さが長くなり、小さな回転角でも、先端の大きな横変位が得られ、しかも腕部材の小さな撓みによっても上下方向の大きな変位も得られるので、注口の開閉動作を容易にすることができる。
【0014】
腕部材の蓋部材を取り付けた位置よりもさらに先端に指掛けを設けたことにより、蓋部材を動かし易くなり、蓋部材の開閉操作が一層容易となり、片手での操作も容易となる。
【0015】
腕部材とキャップとの回転部及びその軸抜け出し防止のために、軸と軸受の構造をアンダーカットの嵌合を利用して実現するときは、回転部の構造を簡単にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の詳細を第一の実施形態を示す図面について説明する。
図1において、1は振り出しキャップであり、容器2に装着される。振り出しキャップ1は注口付きキャップ3とカバー部材4とから成っている。
【0017】
注口付きキャップ3は容器2に装着されて容器2の上端の開口部5を閉じる。図1及び図2に示すように、注口付きキャップ3は容器2の上端を覆うことができる大きさの天板6と、この天板6から立ち下がっている短筒状の胴部7とを有し、胴部7の内面に内ねじ8が形成されており、内ねじ8と容器2の外面に形成された外ねじ11が螺合して容器2の開口部5を閉じている。なおこの他の実施形態として、注口付きキャップ3の容器2への装着は、螺合に限らず打栓などその他の周知の装着方法で行うことができる。再び第一の実施形態に戻って、注口付きキャップ3の直径方向に注口12と連結部13とが配置されている。注口12は注口付きキャップ3の天板6の周縁近くに形成されていて、容器2の内外を連通していて、容器2内の粉粒状又は液体状の内容物を注出可能である。この実施例では注口12は天板6を後述する連結部13の回転軸14の方向に貫通しているが、カバー部材4は可撓性を持つのでこの他の実施形態として、例えば図5に示すように注口12と回転軸14は異なる方向を向いていてもよい。注口が周縁方向に傾いていると、振り出し時に容器を傾ける角度を小さくできる。再び第一の実施形態に戻って、注口12の周縁には注口12を囲繞して環状のガイド堤15が立ち上がって形成されている。ガイド堤15の外側面16は注口12に近づくほど高さが高くなるテーパー状のガイド斜面19をなしている。基本的にはガイド斜面19は蓋部材18の回転変位方向に設けるのであるが、注口12を囲む環状に設けると構造が簡単で製造も容易である。この他の実施形態として、図6に示すものは、ガイド斜面19を注口12の全周に設けることはせずに、蓋部材18の回転変位方向に沿って注口12の左右に設けた例である。また天板6が十分に厚いか、蓋部材18と嵌合する円筒部を注口12周縁の内面側に設ければ図7に示すように、ガイド堤15はなくてもよいが、注ぎやすさなどの点でガイド堤15を上面に突設する方が望ましい。
【0018】
再び第一の実施形態に戻って、連結部13は天板6の注口12とは反対側の周縁近くに形成されていて、回転軸14の方向に立ち上がっている。なおこの実施例では注口付きキャップ3の平面形状は丸形だが、キャップの平面形状は丸形に限定されず、この他の実施形態として、例えば図8のように角形でもよい。角形の場合、注口と連結部は対角線上に配置するのが好適である。
【0019】
再び第一の実施形態に戻って、一方、カバー部材4は図3に示すように、細長板状の腕部材17を有しており、腕部材17の注口付きキャップ3に向かう表面には、腕部材17の両端の近傍に蓋部材18及び連結部材20が回転軸14の方向に突出している。カバー部材4は弾性可撓性のあるプラスチック材料で構成する。
【0020】
蓋部材18は注口付きキャップ3の注口12に対応して配置されていて、同心上に配置されている外嵌合筒22と内嵌合筒23とを有する。蓋部材18が注口12を閉じた状態では、外嵌合筒22と内嵌合筒23との間にガイド堤15が嵌合する。
【0021】
連結部材20は軸部21を有する。軸部21は注口付きキャップ3の連結部13に嵌合する部分で、下端近傍にアンダーカット25が形成されている。アンダーカット25は連結部13と係合して軸部21が連結部13から抜け出すのを防止する。腕部材17のほぼ延長方向で蓋部材18の前端に指掛け26を設けている。
【0022】
このように構成された振り出しキャップ1の動作は次の通りである。
図1及び図4(a)、(A)に示すように、カバー部材4を連結部13で注口付きキャップ3に回転可能に連結した状態の振り出しキャップ1は、容器2に装着されている。この状態において、注口12は蓋部材18で閉じられている。このような容器2から内容物を注出する場合には、図4(b)、(B)に示すようにカバー部材4の指掛け26を手指で押し上げると、腕部材17が上に弾性的に撓んで、蓋部材18の上昇が許容され、注口12は開状態となる。次いで図4(c)、(C)に示すように、指掛け26を右若しくは左に手指で押すと、腕部材17が回転軸14に関して回転して、蓋部材18が注口12に対して注出の邪魔にならない位置に退避するので、容器2を傾けて注口12から内容物を注出することができる。
【0023】
注出が終わって注口12を閉じる場合には、指掛け26を注口12に向かって手指で押すと腕部材17が回転軸14に関して回転して蓋部材18が変位し、ガイド堤15に当接し、次いでガイド堤15の外側面16を案内として上昇し、ついに腕部材17が撓んで蓋部材18の直上に達する。そこで蓋部材18を回転軸14の方向に押し下げると、蓋部材18の環状間隙24がガイド堤15と嵌合して蓋部材18が注口12を閉じて、始めの状態に戻る。
【0024】
この発明の包装容器用蓋では、蓋部材18は注口12自体だけを閉じる大きさにすることができ、また腕部材も細長の構造物で構成することができるので全体として小型のものとなり、さらに注出時に蓋部材は注口から横に変位した距った位置に退避しているので注出時に蓋部材が注口を覆い隠して視線の妨げになることはない。
【0025】
また、注口を開閉する蓋部材を取り付ける腕部材を弾性可撓性を有する構造としたので、蓋部材の開閉動作となる上下動を腕部材の弾性撓みによって実現することができ、蓋部材の上下動を許容するためのスライド機構等の特別の機構を必要としないのでキャップの構造が簡単である。
【0026】
また、注口の周囲に蓋部材が嵌合するためのビードを土手状に配置する場合に、その外周面をテーパー状にガイド斜面とすることによって、蓋部による注口の閉鎖動作を円滑にすることができる。
【0027】
腕部材の長さをキャップの直径方向に延びる長尺のものとし、腕部材の回転中心をキャップの周縁近くに置き、蓋部材を取り付けた先端を反対側の周縁近くに置く構造とするときは腕部材の長さが長くなり、小さな回転角でも、先端の大きな横変位が得られ、しかも腕部材の小さな撓みによっても上下方向の大きな変位も得られるので、注口の開閉動作を容易にすることができる。
【0028】
腕部材の蓋部材を取り付けた位置よりもさらに先端に指掛けを設けたことにより、蓋部材を動かし易くなり、蓋部材の開閉操作が一層容易となり、片手での操作も容易となる。
【0029】
腕部材とキャップとの回転部及びその軸抜け出し防止のための軸と軸受の構造をアンダーカットの嵌合を利用して実現するときは、回転部の構造を簡単にする。
【0030】
以上の説明から明らかな通り、この発明によれば蓋部材の大きさが比較的に小さく、注口における内容物の注出状態も良く見え、また、開閉動作を片手で操作することができ、また、注口の開鎖を確実にすることができ、しかも構造が簡単な包装容器用蓋を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の振り出しキャップを容器に装着した状態の縦断面図。
【図2】注口付きキャップを示すもので、(a)は平面図、(b)は縦断面図、(c)は底面図である。
【図3】カバー部材を示す図で、(a)は平面図、(b)は縦断面図、(c)は底面図である。
【図4】振り出しキャップの動作を示すもので、(a)は注口を蓋部で閉じた状態の平面図、(A)は注口を蓋部で閉じた状態の縦断面図、(b)は注口から蓋部を上昇させた状態の平面図、(B)は注口から蓋部を上昇させた状態の縦断面図、(c)は蓋部を横に退避させた状態の平面図、(C)は蓋部を横に退避させた状態の縦断面図。
【図5】他の実施態様の振り出しキャップの斜視説明図。
【図6】他の実施態様の振り出しキャップを示すもので、(a)はガイド斜面を含む縦断面図、(b)は平面図。
【図7】他の実施態様の振り出しキャップの断面説明図。
【図8】他の実施態様の振り出しキャップの平面説明図。
【符号の説明】
【0032】
1 振り出しキャップ
2 容器
3 注口付きキャップ
4 カバー部材
5 開口部
6 天板
7 胴部
8 内ねじ
11 外ねじ
12 注口
13 連結部
14 回転軸
15 ガイド堤
16 外側面
17 腕部材
18 蓋部材
19 ガイド斜面
20 連結部材
21 軸部
22 外嵌合筒
23 内嵌合筒
24 環状間隙
25 アンダーカット
26 指掛け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注口と連結部とを有し容器の開口部を覆う状態で前記容器に装着されるキャップと、変位して前記注口を開閉するカバー部材とを有し、前記カバー部材は前記注口に係脱して前記注口を開閉する蓋部材と、前記キャップの連結部に回転軸の回りに回転可能に連結する連結部材と、前記蓋部材と前記連結部材とを両端部に取り付けていてかつ前記回転軸を含む平面内における前記蓋部材の前記変位を許容することができる弾性可撓性を具有する腕部材とを有することを特徴とする包装容器用蓋。
【請求項2】
前記注口の近傍にガイド堤が立ち上がって形成されていて、前記ガイド堤の外側面は注口に近づくほど高さが高くなる斜面からなる前記蓋部材と接触して前記蓋部材の動きを案内するガイド面をなしていることを特徴とする請求項1記載の包装容器用蓋。
【請求項3】
前記ガイド堤は前記注口を囲繞する環状をなし、前記環状のガイド堤の外側面は注口に近づくほど細くなる円錐状の斜面からなるガイド面をなしていることを特徴とする請求項2記載の包装容器用蓋。
【請求項4】
前記注口は前記キャップの中央部よりも外側寄りの位置に設けられており、前記連結部は前記注口の位置とは前記中央部をはさんで反対側の外側寄りの位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の包装容器用蓋。
【請求項5】
前記腕部材の延長方向の前記蓋部材よりも先方の位置に突出している指掛けを設けたことを特徴とする請求項1記載の包装容器用蓋。
【請求項6】
前記キャップと前記カバー部材の連結は前記キャップに設けられたアンダーカットと前記連結部材に設けられたアンダーカットとの嵌合によって回転可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の包装容器用蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−44707(P2006−44707A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225697(P2004−225697)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】