説明

包装用フィルム

【課題】横切性に優れた包装用フィルムを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂組成物からなり、下記(1)〜(3)を満たすことを特徴とする包装用フィルム、(1)フィルム切断試験における切断ずれ量(δ)が10mm以下である、(2)長さ方向のフィルム端部引張伸び(P)と横方向のフィルム端部引張伸び(Q)との比P/Qが0.6以下である、(3)フィルム肉厚が3〜30μmである、ここで、切断ずれ量(δ)は、辺α(長さ300mm)および辺β(長さ220mm)を有しかつ辺αがフィルムの長さ方向と平行である長方形のフィルムを試験片とし、一方の辺αの中央部に長さ3mmの切込みを入れ、切込みを入れた辺α側の両隅を人の手で引張ってフィルムを切断したときの切断線と、切込みから他方の辺αに垂直に降ろした基準線との乖離の最大値(単位:mm)であり;比P/Qは、辺A(長さ60mm)および辺B(長さ20mm)を有しかつ辺Aがフィルムの長さ方向と平行である長方形のフィルムを試験片とし、試験片の辺Aの1つを引張速度200mm/分で引張ったときの試験片破断時の伸び(P)と、試験片の辺Aがフィルムの横方向と平行であることを除いて上記(P)と同様に引張試験を行ったときの試験片破断時の伸び(Q)との比である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭、食料品販売業、飲食物提供役務等において、主として食品の包装用に汎用されている包装用フィルムに関する。更に詳しくは、優れた横切性を有する包装用フィルムおよび鋸歯等の切断補助具の無い収納箱に収納した包装用フィルム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、包装用フィルムは図4に示すような直方体の収納箱に納められた巻回フィルムとして提供されており、ここから必要分量を引出し、何らかの方法で長さ方向に対して横に切断し、使用に供される。横に切断する方法としては、収納箱の掩蓋板等に配備された長尺の鋸歯によるものが最も一般的である。
【0003】
しかし、鋸歯には、手を怪我する等の安全性の問題、紙製の収納箱と金属製の鋸歯とを廃棄時に分離しなくてはいけないという問題があり、これの解決方法として、鋸歯に替えて、異形の金属粉を接着したシートを切断具に用いる方法(特許文献1)、フィルムの長さ方向に連続した加工傷を有し、その加工傷域と接触する収納箱の局部に切断補助具を形成する方法(特許文献2)、巻回フィルムの端部に切れ目を入れる方法(特許文献3)などが提案されている。
【0004】
しかし、従来のラップフィルムは、切断具に沿ってカットする事を前提としているため、横方向の直線カット性に対する対策が充分ではなく、ましてや鋸歯のない化粧箱でのカット性に対する思慮は全くなく、仮に切断具なしで無理に切断したとしても、切れ始めは横方向に切れても、途中から次第に長さ方向へと切断方向が転回することがしばしばであり、実用的に満足のできるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−217345号公報
【特許文献2】特開平11−124133号公報
【特許文献3】特開2001−322636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、横切性に優れた包装用フィルムを得るべく鋭意研究した結果、特定の物性値を有するフィルムが上記目的を達成できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂組成物からなり、下記(1)〜(3)を満たすことを特徴とする包装用フィルムである。
(1)フィルム切断試験における切断ずれ量(δ)が10mm以下である、
(2)フィルムの長さ方向の端部引張伸び(P)と横方向の端部引張伸び(Q)との比P/Qが0.6以下である、
(3)フィルム肉厚が3〜30μmである、
ここで、切断ずれ量(δ)は、辺α(長さ300mm)および辺β(長さ220mm)を有しかつ辺αがフィルムの長さ方向と平行である長方形のフィルムを試験片とし、一方の辺αの中央部に長さ3mmの切込みを入れ、切込みを入れた辺α側の両隅を人の手で引張ってフィルムを切断したときの切断線と、切込みから他方の辺αに垂直に降ろした基準線との乖離の最大値(単位:mm)であり;比P/Qは、辺A(長さ60mm)および辺B(長さ20mm)を有しかつ辺Aがフィルムの長さ方向と平行である長方形のフィルムを試験片とし、試験片の辺Aの1つを引張速度200mm/分で引張ったときの試験片破断時の伸び(P)と、試験片の辺Aがフィルムの横方向と平行であることを除いて上記(P)と同様に引張試験を行ったときの試験片破断時の伸び(Q)との比である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の包装用フィルムは横切性に優れるので、巻回されたフィルムを収納する箱が鋸歯等の切断補助具を何ら有していなくても、フィルムの必要量を箱から引き出して切断するとき、容易かつ良好に切断することができ、したがって、手を怪我する等の安全性の問題、紙製の収納箱と金属製の鋸歯とを廃棄時に分離しなくてはいけないという問題を根本的に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】フィルム切断試験を示す図である。
【図2】フィルム端部引張試験を示す図である。
【図3】ローレット加工が施された本発明のフィルム表面を写真撮影した図である。
【図4】本発明のフィルムを収納するための箱の一実施態様を示す斜視図である。
【図5】フィルムの粘着性試験を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の包装用フィルムは、以下に述べる(1)フィルム切断試験における切断ずれ量(δ)、(2)長さ方向の端部引張伸び(P)と横方向の端部引張伸び(Q)との比P/Q、および(3)フィルム肉厚が所定の範囲内にあることが必要である。
【0011】
(1)フィルム切断試験における切断ずれ量(δ)
切断ずれ量(δ)は、フィルムの横切性を直接的に示す物性値である。この物性値を測定するためのフィルム切断試験は、図1に示すように行われる。すなわち、辺α(長さ300mm)および辺β(長さ220mm)を有する長方形の試験片を用意し(ここで、辺αはフィルムの長さ方向と平行である)、一方の辺αの中央部に長さ3mmの切込みを入れ、切込みを入れた辺α側の両隅を人の手で引張ってフィルムを切断する。切断したときのフィルムの切断線と、切込みから他方の辺αに垂直に降ろした基準線との乖離の最大値(単位:mm)が切断ずれ量(δ)である。
【0012】
本発明のフィルムは、上記切断ずれ量(δ)が10mm以下である。10mmより大きいフィルムは横切性に劣る。当然のことながら、フィルムを切断するとき、基準線に沿って切れることが理想であり、上記切断ずれ量(δ)は小さい方が良い。実用的には8mm以下が好ましく、より好ましくは6mm以下、最も好ましくは4mm以下である。
【0013】
(2)長さ方向の端部引張伸び(P)と横方向の端部引張伸び(Q)との比P/Q
フィルムの端部引張伸びは、フィルムを切断しようとする力に対し、変形することにより対応する能力を示す。長さ方向(MD方向)のフィルム端部引張伸び(P)の測定は、図2に示されるフィルム端部引張試験によって行われる。すなわち、辺A(長さ60mm)および辺B(長さ20mm)を有する長方形の試験片を用意し(ここで、辺Aはフィルムの長さ方向(MD方向)と平行である)、試験片の辺Aの1つを引張速度200mm/分で引張ったときの試験片破断時の伸びを測定し、これを(P)とする。横方向(CD方向)のフィルム端部引張伸び(Q)は、試験片の辺Aがフィルムの横方向(CD方向)と平行であること以外は、上記(P)の測定と同様にして測定される。上記引張試験において、引張部分が試験片の中央ではなく端部であるのは、実際のフィルム切断時には端部を掴んで引張ることが通常であるためである。引張方向が長さ方向(MD)のときに横方向(CD)に切れることに注意を向けると、MD方向の端部引張伸び(P)とCD方向の端部引張伸び(Q)との比P/Qは、横切と縦切との起こり易さの比であり、この比が1未満では、値が小さいほど横切が縦切よりも起こり易く、1では横と縦の切性が同じであり、1より大きいときは、値が大きいほど縦切が横切よりも起こり易いことを示す。切断補助具の無い収納箱を使用するためには、この値が0.60以下である必要がある。好ましくは0.30以下、最も好ましくは0.15以下である。
【0014】
(3)フィルム肉厚
フィルム肉厚は3〜30μm、好ましくは5〜20μmである。肉厚が上記上限より厚いと、十分な横切性が得られない。また、フィルムが上記上限より厚いと剛いフィルムとなり、ラップする際に食器等への粘着性が不満足なものになる。フィルムが上記下限より薄いと取り扱いに不便であり、またフィルム製膜やスリット加工が難しくなる。
【0015】
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂のTダイ製膜において、上記製膜を、Tダイリップを比較的大きく開き(例えば、300〜900μm)、エアギャップを比較的小さくし(例えば、0.5〜2cm)、樹脂吐出量を比較的大きく(例えば、ダイス幅1cm当たり100cm/hr以上)して行うことにより得ることができる。
【0016】
本発明の包装用フィルムを構成する熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ポリメチルペンテン−1系樹脂100質量部およびポリブテン−1系樹脂0.5〜60質量部を含むポリメチルペンテン−1系樹脂組成物である。ポリブテン−1系樹脂は包装用フィルムとして必要な粘着性を付与する。ポリブテン−1系樹脂の好ましい配合量は、ポリメチルペンテン−1系樹脂100質量部に対して1〜50質量部、より好ましくは1〜20質量部である。
【0017】
上記ポリメチルペンテン−1系樹脂組成物には、本発明の目的に反しない範囲内において、副原料を添加することができる。これらの副原料により、包装用フィルムとして必要とされる物性、例えば粘着性や透明性を付与・調節することができる。副原料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等の他の熱可塑性樹脂、液状ポリブテン(水添ポリイソブチレン)、パラフィンオイル等の液状加工助剤、酸化防止剤、中和剤、防曇剤、スリップ剤等の添加剤を挙げることができる。上記他の熱可塑性樹脂および液状加工助剤の配合量は、合計で、ポリメチルペンテン−1系樹脂100質量部に対して70質量部以下が好ましく、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。上記添加剤(液状加工助剤を除く)の配合量は、合計で、ポリメチルペンテン−1系樹脂100質量部に対して5質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下である。
【0018】
上記ポリメチルペンテン−1系樹脂は、4−メチルペンテン−1又は3−メチルペンテン−1の単独重合体の他に、4−メチルペンテン−1及び/又は3−メチルペンテン−1と他のα−オレフィンとの共重合体を包含する。α−オレフィンは1種単独でも、2種以上の組合せでもよい。α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。
【0019】
上記ポリブテン−1系樹脂は、ブテン−1の単独重合体のほかに、ブテン−1と他のα−オレフィンとの共重合体を包含する。α−オレフィンは1種単独でも、2種以上の組合せでもよい。α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。
【0020】
本発明の包装用フィルムは、更に以下のような特徴をもつものが好ましい。
【0021】
(4)MD方向の端部引張破断力(イ)
フィルム端部の引張破断力は、破断がどの程度の力で伝播するかの指標である。上記引張破断力が小さすぎると、包装用としての使用に適しない。また、大きすぎると、以下に述べるように、切断補助具を有しない箱に収容された巻回フィルムを箱から引き出して切断するときに不利である。フィルムを収納する箱として、切断補助具を有していないもの、つまり単に厚紙により構成されているに過ぎないものを使用する場合、フィルムの切断は、掩蓋板の先端部及び/又は前面板と底面板の稜線部で行われる(図4参照)。もしフィルムの強度が、実用上必要とされるレベルを大きく上回るものであるとすると、フィルム切断時に厚紙が負けて、収納箱が傷んでしまうことになるし、厚紙が負けないように箱を補強したり、厚みを増したりすることは経済的ではない。つまり、フィルムが不必要に高い強度を有することは好ましくない。
【0022】
本発明のフィルムは、引張破断力が1〜15Nであるのが好ましい。より好ましくは、上限が10Nである。下限は、包装用としての要請に基づき、1N以上あれば十分であり、より好ましくは2N以上である。
【0023】
MD方向(長さ方向)の端部引張破断力(イ)は、上述したフィルム端部引張試験によって測定される。すなわち、図2に示されるように、辺A(長さ60mm)および辺B(長さ20mm)を有する長方形の試験片を用意し(ここで、辺Aはフィルムの長さ方向と平行である)、試験片の辺Aの1つを引張速度200mm/分で引張ったときの試験片破断時の力(単位:N)である。
【0024】
(5)MD方向の端部引張伸び(P)
上記比P/Qは横と縦の切性を相対比較したものであるから、これがゼロに近い値であっても、(P)値の絶対値が大きい場合には容易には切断することが出来ず、切断補助具の無い収納箱を使用することができない。そのため、この値は150%以下であることが好ましい。より好ましくは100%以下、更に好ましくは50%以下である。
【0025】
(6)CD方向の端部引張破断力(ロ)
CD方向の端部引張破断力(ロ)もMD方向の端部引張破断力(イ)と同様の理由から15N以下が好ましく、より好ましくは10N以下である。(ロ)の下限も、包装用としての要請に基づき、1N以上あれば十分であり、より好ましくは2N以上である。なお、引張破断力(ロ)は、試験片の辺Aがフィルムの横方向(CD方向)と平行であること以外は、上記引張破断力(イ)の測定と同様にして測定される。
【0026】
ローレット加工
本発明の包装用フィルムは優れた横切性を有するが、フィルムとしての強度が比較的高いものになり易いため、より容易に横方向に切断するためには何らかの”きっかけ”のある方が好ましい。その方法としては、やすり等の切断補助具を収納箱に設ける方法もあるが、本発明の目的に即して選択すれば、フィルムの長さ方向に平行な端部にローレット加工を施す方法が最も好ましい。
【0027】
ローレット加工は、フィルムを金属製等の彫刻ロールと金属製や高硬度のゴム等の彫刻ロール又は平滑ロールとで挟み込むことにより、あるいはフィルムの巻に該彫刻ロールを押し当てることにより微細なエンボスや傷を入れる加工である。加工条件はフィルムの材質により適宜選択されるべきであるが、通常、押圧は10〜50N/m程度である。ローレット加工が施された本発明のフィルム表面を写真撮影したものを図3に示す。ローレット加工は、原反製膜時に、スリット加工時に、またはスリット加工後に独立の工程を設けて施すことができる。ローレット加工は、フィルムの長さ方向に平行な端部の少なくとも一方に施されるが、どちらの側からでも切断出来るように、両方の端部に施すことがより好ましい。加工幅は通常0.1〜10mmであり、好ましくは0.3〜6mmである。
【0028】
また、ローレット加工を施すと、巻回フィルムの引出端が巻き本体に強く密着して引き出せなくなるというトラブルの防止効果を得ることもできる。
【0029】
ローレット加工と同様の効果は、レーザー加工によっても得ることができる。レーザー加工はレーザーの照射熱により、フィルムを極めて微細な領域において溶融し、そこに凹形状や孔を設ける加工である。使用するレーザーは、特に制限されない。例えば、炭酸ガスレーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザーおよびエキシマレーザーなどのガスレーザーや、クロム添加ルビー結晶を媒質に使用したルビーレーザー、チタン添加サファイア結晶を媒質に使用したチタンサファイアレーザー、YAG結晶中のイットリウムを他の希土類元素で置換した種々のYAGレーザーおよびネオジム添加YAGを用いたNd:YAGレーザーなどの固体レーザーが挙げられる。また、液体レーザー、半導体レーザー、自由電子レーザー、金属蒸気レーザー、化学レーザー等の公知のレーザーを使用することができる。照射出力は、0.5〜20W程度であり、フィルムの肉厚や加工速度を勘案して適宜調節する。レーザー加工は、原反製膜時に、スリット加工時に、またはスリット加工後に独立の工程を設けて施すことができる。レーザー加工は、フィルムの長さ方向に平行な端部の少なくとも一方に施されるが、どちらの側からでも切断出来るように、両方の端部に施すことがより好ましい。加工幅は通常0.1〜10mmであり、好ましくは0.3〜6mmである。
【0030】
収納箱
包装用フィルムの収納箱としては、図4に示されるような、前面板と底面板と後面板と蓋面板と掩蓋板が順次稜線を介して連結し、両側面板部を有する長形の化粧箱が多用されており、従来は、掩蓋板の先端部及び/又は前面板と底面板の稜線部に切断補助具としての鋸歯が固着されていた。本発明の包装用フィルムは、上述したように優れた横切性を有するので、収納箱にこのような切断補助具を必要としない。
【0031】
一方、末端消費者の視点で考えると、従来は切断具として金属製の鋸歯を備えていた収納箱が、そのような切断具を全く有しないただの厚紙だけの箱になったのでは、「本当に切断出来るのか?」という疑問を生じさせ得る。従って、極めて簡便な切断補助具を設けておく方が、末端消費者に疑念を抱かせることがなく、販売現場では有利になるかもしれない。そのような極めて簡便な切断補助具としては、手を怪我する等の危険が少ない、安全性が高められたものが好ましく、具体的には目の細かい紙やすり等を挙げることができる。目の粗いものは砥粒が剥離する可能性があり、包装用フィルム、特に食品包装用フィルムの切断補助具としては適さない。砥粒の剥離可能性は、簡易的には、180度折り曲げ試験によって、やすり面に亀裂が観察されるかどうかで判断することができる。例えば、市販の紙やすり(株式会社ノリタケコーテッドアブレーシブ製、耐水タイプの紙やすり、商品名C947H)の場合、粒度(JISR6001(1998)による)が#220およびそれより粗いものは亀裂が観察され、#240は極めて微細な亀裂が観察され、#320およびそれより細かいものは亀裂が観察されなかったから、粒度が少なくとも#240またはそれより細かいものを使用するべきであり、好ましくは#320またはそれより細かいものを使用するべきと判断される。上記市販の紙やすりの種々の粒度の180度折り曲げ試験結果を下記表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
フィルムが紙やすりのような極めて簡便な切断補助具で切断可能であるかどうかは、後述する砥粒カット性試験で判断できる。本発明のフィルムは、後述する上記試験の結果から分かるように、紙やすりを切断補助具とする収納箱に十分適応できる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。使用した材料および測定方法は以下の通りである。
【0035】
材料
ポリ4−メチルペンテン−1系樹脂
MX−021:三井化学株式会社製、ポリ4−メチルペンテン−1、MFR(260℃、5.00kg)23g/10分
MX−002O:三井化学株式会社製、ポリ4−メチルペンテン−1、MFR(260℃、5.00kg)21g/10分
ポリブテン−1系樹脂
PB8640M:LYONDELLBASELL社製のポリブテン-1、MFR(190℃、21.18N)28g/10分
液状加工助剤
ハイコールK−350:カネダ株式会社の販売品、流動パラフィン
【0036】
測定方法
(1)切断ずれ量(δ)
辺α(長さ300mm)および辺β(長さ220mm)を有しかつ辺αがフィルムの長さ方向(MD方向)と平行である長方形のフィルムを試験片とし、一方の辺αの中央部に長さ3mmの切込みを入れ、切込みを入れた辺α側の両隅を人の手で引張ってフィルムを切断する(図1)。切込みから他方の辺αに垂直に降ろした基準線と切断線との乖離を測定し、その最大値(単位:mm)を切断ずれ量(δ)とした。上記試験を3人が各3回行い、合計9回の平均値をとった。なお、ローレット加工を施されたフィルムについては、ローレット加工された端部が、切込みを入れるところの上記一方の辺αとなるように試験片を作成した。
【0037】
(2)MD方向の端部引張破断力(イ)
辺A(長さ60mm)および辺B(長さ20mm)を有しかつ辺Aがフィルムの長さ方向(MD方向)と平行である長方形のフィルムを試験片とし、両方の辺Bに沿って10mm幅でセロハンテープ(ニチバン株式会社のセロテープ(登録商標)、グレード名CT15−S)による補強を行った。試験片の辺Aの1つを引張試験機により引張速度200mm/minで引張る引張試験を行い、試験片破断時の力(単位:N)を測定した(図2)。試験を5回行い、その平均値をとった。なお、ローレット加工を施されたフィルムについては、ローレット加工された端部が上記辺Aの1つとなるように試験片を作成し、ローレット加工された側の辺Aを引張った。
(3)CD方向の端部引張破断力(ロ)
上記(2)の試験において、試験片の辺Aがフィルムの横方向(CD方向)と平行であること以外は上記(2)と同様にして、試験片破断時の力(単位:N)を測定した。試験を5回行い、その平均値をとった。
(4)MD方向の端部引張伸び(P)
上記試験(2)と同様の引張試験を行い、試験片破断時のストローク量S(単位:mm)を測定し、次式により伸びを計算した。試験を5回行い、その平均値をとった。
P={S/(60−10×2)}×100 (%)
(5)CD方向の端部引張伸び(Q)
上記(4)の試験において、試験片の辺Aがフィルムの横方向(CD方向)と平行であること以外は上記(4)と同様にして試験片破断時のストローク量S(単位:mm)を測定し、伸びを計算した。試験を5回行い、その平均値をとった。
【0038】
(6)切断補助具を有しない収納箱でのカット性試験
図4に示すような、鋸歯等の切断補助具を有しない箱(厚紙の坪量400g/m、40mmx40mmx310mm)に、巻回されたフィルム(幅300mm、長さ20mのフィルムを、幅305mm、内径27mm、肉厚1.5mmの紙管に巻いたもの)を収納し、フィルムを約20cm引き出し、蓋を閉じた状態で、箱の前面板と底面板との稜線部を利用して切断を10回試み、切断できた回数を切断率(%)として表記した。
(7)簡易補助具(やすり)を具備した収納箱でのカット性試験
フィルムを収納する箱として、上記(6)で使用したものと同じ箱の掩蓋板先端部に紙やすり(株式会社ノリタケコーテッドアブレーシブ製、耐水タイプの紙やすり、商品名C947H)を貼り付けたものを使用して、上記(6)と同様の試験を行った。なお、この試験では、紙やすりを貼り付けた掩蓋板先端部を利用して切断を試みた。紙やすりは、幅2cmX長さ310mmのものを、上記掩蓋板先端部の裏表1cmずつを覆うように折り曲げて両面粘着テープを用いて貼りつけた。使用した紙やすりの番手は#320および#600であった。
(8)粘着性試験(おにぎり包装性)
常温(25℃)の冷めたおにぎり(正三角形状、重さ100g、1辺7cm、厚さ4cm)を、図5に示すように、30cm角の正方形に切り取ったフィルムで包装し、フィルム末端をひねって紙縒り状にした。包装状態の保持性を下記の3段階で評価した。
3:紙縒りがばらけず、最初の状態のままで保持される。
2:紙縒りが少しほどけるが、おにぎりが露出してしまうほどではない。
1:紙縒りがほどけて、おにぎりが露出する。
(9)透明性(ヘーズ値)
JIS K 7105に従い測定した。
【0039】
実施例1〜9および比較例1〜3
表2示す配合量(質量部)の各成分を使用し、株式会社日本製鋼所のTダイ製膜装置を用いて、表2に示す肉厚のフィルムを製造した。製膜条件は以下の通りである。
チルロール温度25℃
ダイス出口樹脂温度290℃
バキュウームチャンバーと耳ジェットを使用
エアギャップ1.5cm
リップ開度0.4mm
ダイスから押し出される樹脂組成物のダイス幅1cm当たりの吐出量0.8Kg/hr
得られたフィルムを用いて試験(1)〜(9)を行った。結果を表2に示す。
【0040】
なお、実施例3では、フィルムの長さ方向に平行な端部の一方に幅3mmのローレット加工を施した。ロートレット加工の部分のフィルム表面を写真撮影したものを図3に示す。
【0041】
実施例5では、目標肉厚を4μmに設定して製膜を行ったところ、耳暴れがあり、製品としてのフィルム取り幅が狭くなってしまったが、所定の物性値を有するフィルムが得られた。
【0042】
実施例8では、ローレット加工幅を0.6mmとした以外は実施例3と同様にしてフィルムを得た。実施例9では、実施例3において、ロートレット加工に代えてフィルムの長さ方向に平行な端部の一方に幅3mmのレーザー加工を施した以外は実施例3と同様にしてフィルムを得た。レーザー加工条件は、炭酸ガスレーザーを使用し、出力は1W、加工幅3mm、加工速度1000mm/秒であった。
【0043】
比較例1では、目標肉厚を2μmに設定して製膜を行ったところ、製膜機の引取力によるウェブ破断が頻発し、フィルムを得ることが出来なかった。したがって、試験(1)〜(9)を行うことができなかった。
【0044】
比較例4〜8
下記の市販の包装用フィルムを使用して試験(1)〜(9)を行った。結果を表2に示す。
比較例4:クレラップ(商品名)(株式会社クレハ製、ポリ塩化ビニリデン系樹脂組成物のラップフィルム)
比較例5:サランラップ(商品名)(旭化成ホームプロダクツ株式会社製、ポリ塩化ビニリデン系樹脂組成物のラップフィルム)
比較例6:上記サランラップ(商品名)の長さ方向に平行な端部の一方に幅3mmのローレット加工を施したもの
比較例7:ヒタチラップ(商品名)(日立化成フィルテック株式会社製、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物のラップフィルム)
比較例8:ポリラップ(商品名)(宇部フィルム株式会社製、ポリエチレン系ラップフィルム)
【0045】
【表2】

【0046】
砥粒カット性試験
上記試験(7)と同様の試験を、下記表3に示す種々の番手(砥粒度)について行った結果を下記表3に示す。番手の小さいもの(目の粗いもの)から順に試験を行い、結果が0%であった場合には、それ以降の試験を行わなかった。紙やすりを切断補助器具として備えた箱に適応できるためには、上記試験結果(切断率)が少なくとも80%である必要があり、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは100%である。上述した砥粒の剥離可能性を加味すると、少なくとも80%の切断率が#240またはそれより細かい砥粒度で、好ましくは#320またはそれより細かい砥粒度で達成される必要があると考察される。
【0047】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂組成物からなり、下記(1)〜(3)を満たすことを特徴とする包装用フィルム、
(1)フィルム切断試験における切断ずれ量(δ)が10mm以下である、
(2)フィルムの長さ方向の端部引張伸び(P)と横方向の端部引張伸び(Q)との比P/Qが0.6以下である、
(3)フィルム肉厚が3〜30μmである、
ここで、切断ずれ量(δ)は、辺α(長さ300mm)および辺β(長さ220mm)を有しかつ辺αがフィルムの長さ方向と平行である長方形のフィルムを試験片とし、一方の辺αの中央部に長さ3mmの切込みを入れ、切込みを入れた辺α側の両隅を人の手で引張ってフィルムを切断したときの切断線と、切込みから他方の辺αに垂直に降ろした基準線との乖離の最大値(単位:mm)であり;比P/Qは、辺A(長さ60mm)および辺B(長さ20mm)を有しかつ辺Aがフィルムの長さ方向と平行である長方形のフィルムを試験片とし、試験片の辺Aの1つを引張速度200mm/分で引張ったときの試験片破断時の伸び(P)と、試験片の辺Aがフィルムの横方向と平行であることを除いて上記(P)と同様に引張試験を行ったときの試験片破断時の伸び(Q)との比である。
【請求項2】
上記熱可塑性樹脂組成物が、ポリメチルペンテン−1系樹脂100質量部およびポリブテン−1系樹脂0.5〜60質量部を含有するポリメチルペンテン−1系樹脂組成物であることを特徴とする請求項1に記載の包装用フィルム。
【請求項3】
フィルムの長さ方向に平行な端部の少なくとも一方に幅0.1〜10mmのローレット加工および/またはレーザー加工が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の包装用フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装用フィルムの巻回フィルムが、切断補助具の無い収納箱に収納されていることを特徴とする包装用フィルム製品。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−71891(P2012−71891A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275110(P2010−275110)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】