説明

包装袋用接着剤

【課題】樹脂フィルムに対する接着性に優れ、塗工機の洗浄を容易にし、紙基材への接着剤の染み出しが少ない包装袋用接着剤を提供する。
【解決手段】(A)(メタ)アクリル系エマルジョン、及び(B)ゴム系エマルジョンを含み、(A)エマルジョンの固形分は、−40℃以下のガラス転移温度を有し、(B)エマルジョンの固形分は、−10℃以下のガラス転移温度を有する包装袋用接着剤である。上記包装袋用接着剤は、(C)エチレンと、エチレン性二重結合を含むカルボン酸誘導体との共重合体エマルジョンを、更に含み、(C)エマルジョンの固形分は、−10℃以下のガラス転移温度を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋用接着剤に関する。より詳しくは、包装袋を製造するために使用される積層体を得るための基材に塗工される接着剤であって、接着性、塗工機洗浄性、基材への耐染み出し性に優れる包装袋用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
米袋、化学樹脂粉体袋、紙バック等の包装用袋を製造するために、種々の接着剤が使用されている。これらの包装袋は、例えば、水、水蒸気、及び酸素等を遮断して、内容物の損傷を防止するために、紙等の基材にポリエチレンフィルム等の樹脂フィルム等の基材が貼り合わされた積層体を用いて製造される。樹脂フィルム基材は、接着剤を用いて接着し難いので、それを貼り合せるために、樹脂フィルム基材に対する接着性が高い接着剤が必要である。このような接着剤として、粘着タイプのアクリル系接着剤が知られており、必要に応じて、粘着付与樹脂等が接着剤に添加されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、水分散性アクリル系共重合体と、軟化点90〜180℃で、重量平均分子量5000以下の水分散性粘着付与樹脂とを含む水性感圧接着剤組成物を開示する。しかし、特許文献1の接着剤組成物は、乾燥皮膜表面のベタツキが著しい。このため、塗工機を用いて接着剤組成物を紙基材に塗工すると、使用後に、塗工機の洗浄に時間を要する。
【0004】
特許文献2は、水性アクリル系エマルジョン及び/又は水性エチレン−酢酸ビニル系エマルジョン、及びポリエチレンワックス及び/又はシリカを含む水性熱圧着組成物を開示する。しかし、特許文献2の組成物は、樹脂フィルム基材への接着性が十分ではない。
【0005】
特許文献3は、アクリル系樹脂エマルジョン、合成ゴムエマルジョン及び可塑剤を含む水性非天然ゴム含有セルフシール接着剤組成物を開示する。しかし、引用文献3の接着剤組成物も、樹脂フィルムへの接着性が十分ではない。更に、紙基材と樹脂フィルム基材をこの接着剤組成物で貼り合せる際、圧着力が強いと接着剤組成物が紙基材に染み出し、得られる包装袋に、外観上の問題が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−256244号公報
【特許文献2】特開2007−217612号公報
【特許文献3】特開2008−517097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、樹脂フィルムに対する接着性に優れ、塗工機の洗浄を容易にし、紙基材への接着剤の染み出しが少ない包装袋用接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、固形分が特定のガラス転移温度を有する(メタ)アクリル系エマルジョンと、固形分が特定のガラス転移温度を有するゴム系エマルジョンを配合することによって、樹脂フィルムに対する接着性に優れ、塗工機の洗浄を容易にする(即ち、洗浄性に優れる)接着剤が得られる事を見出した。
更に、固形分が特定のガラス転移温度を有する、エチレンと、エチレン性二重結合を含むカルボン酸誘導体との共重合体エマルジョンを、上述の接着剤に配合することによって、紙基材への接着剤の染み出しが少なくなる事を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は一の要旨において、
(A)(メタ)アクリル系エマルジョン(以下「(A)エマルジョン」ともいう)、及び(B)ゴム系エマルジョン(以下「(B)エマルジョン」ともいう)を含み、
(A)エマルジョンの固形分のガラス転移温度(以下「Tg」ともいう)は、−40℃以下であり、
(B)エマルジョンの固形分のガラス転移温度は、−10℃以下である
包装袋用接着剤を提供する。
【0010】
本発明の一の態様において、
(C)エチレンと、エチレン性二重結合を含むカルボン酸誘導体との共重合体エマルジョン(以下「(C)エマルジョン」ともいう)を、更に含み、(C)エマルジョンの固形分のガラス転移温度は−10℃以下である包装袋用接着剤を提供する。
本発明の他の態様において、
(A)エマルジョンの固形分のガラス転移温度は、−80℃〜−40℃であり、
(B)エマルジョンの固形分のガラス転移温度は、−80℃〜−10℃である
包装袋用接着剤を提供する。
【0011】
本発明の好ましい態様として、
(A)〜(C)の総重量100重量部(固形分換算)に対し、(B)を10〜60重量部(固形分換算)含む、上述の包装袋用接着剤を提供する。
【0012】
本発明の他の要旨では、上記包装袋用接着剤を用いて得られる包装袋を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る包装袋用接着剤は、
(A)(メタ)アクリル系エマルジョン、及び(B)ゴム系エマルジョンを含み、
(A)エマルジョンの固形分のガラス転移温度は、−40℃以下であり、
(B)エマルジョンの固形分のガラス転移温度は、−10℃以下なので、
樹脂フィルム基材に対する接着性に優れ、塗工機を洗浄して容易に除去することができる(即ち、洗浄性に優れる)。洗浄性に優れるので、洗浄時間を短縮でき、包装袋の生産性が向上する。好ましくは、洗浄時間を著しく短縮でき、包装袋の生産性が極めて向上する。
【0014】
本発明の包装袋用接着剤は、
(C)エチレンと、エチレン性二重結合を含むカルボン酸誘導体との共重合体エマルジョンを、更に含み、
(C)エマルジョンの固形分のガラス転移温度は、−10℃以下であるので、
包装袋を構成する紙基材への、接着剤の染み出しが減少する。紙基材への接着剤の染み出しが減少するので、外観を損なう包装袋が減り、包装袋の品質が安定する。
【0015】
本発明の包装袋用接着剤は、
(A)エマルジョンの固形物のガラス転移温度は、−80℃〜−40℃であり、
(B)エマルジョンの固形分のガラス転移温度は、−80℃〜−10℃であることで、接着性、及び洗浄性により優れる。
【0016】
本発明の包装袋用接着剤は、
(A)〜(C)の総重量100重量部(固形分換算)に対し、(B)を10〜60重量部(固形分換算)含むことで、更に、接着性、洗浄性に優れる。
【0017】
本発明の包装袋は、上記接着剤を塗布することで得られる積層体から製造されるので、樹脂フィルム基材と紙基材とがしっかり貼り合わされているので、剥離し難く、かつ、破れ難い。好ましくは、剥離することも破れることもない。従って、包装袋の機能低下を生じ難い、好ましくは生じないので、内容物の品質低下を十分に防止することができる。
また、接着剤の紙基材への染み出しも減少するので、包装袋の外観低下も減少する。更に、接着剤を紙基材に塗工する塗工機の洗浄時間も短くなるので、包装袋の生産効率が向上する。好ましくは、格段に向上する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る「(A)(メタ)アクリル系エマルジョン」(以下、「(A)エマルジョン」ともいう)とは、(メタ)アクリル系高分子が水性媒体に分散されたエマルジョン(又は乳濁物)を意味する。
本明細書において「水性媒体」とは、水道水、蒸留水又はイオン交換水等の一般的な水をいうが、水溶性又は水に分散可能な有機溶剤であって、単量体等の本発明に関するエマルジョンの原料と反応性の乏しい有機溶剤、例えば、アセトン、酢酸エチル等を含んでもよく、さらに水溶性又は水に分散可能な単量体、オリゴマー、プレポリマー及び/又は樹脂等を含んでもよく、また後述するように水系の樹脂又は水溶性樹脂を製造する際に通常使用される、乳化剤、重合性乳化剤、重合反応開始剤、鎖延長剤及び/又は各種添加剤等を含んでもよい。
【0019】
「(メタ)アクリル系高分子」とは、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸誘導体に基づく高分子であって、通常アクリル系高分子に含まれるものをいう。
「(メタ)アクリル酸誘導体」とは、後述するように(メタ)アクリル酸の誘導体、例えば、(メタ)アクリル酸エステル等を意味する。「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。
【0020】
「(メタ)アクリル酸誘導体」として、例えば、メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、及び(メタ)アクリル酸セチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸とグリコールとのジエステル及びモノエステル;(メタ)アクリル酸アミド、N−メチロールアクリルアミド、及びジアセトンアクリルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド;メタクリル酸グリシジル、及び3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートル等のエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルを例示できる。
【0021】
このような(メタ)アクリル酸誘導体は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
「(メタ)アクリル酸誘導体」として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチルがより好ましい。
【0022】
更に、(メタ)アクリル酸誘導体に、他の共重合可能な単量体を単独で又は2種以上組み合わせて用いることもできる。
そのような「他の共重合可能な単量体」とは、例えば、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、及び無水マレイン酸等のエチレン性二重結合を有しカルボキシル基又は酸無水物を含有する単量体;塩化ビニル、及びアクリロニトリル等のエチレン性二重結合を有し塩素又はシアノ基を含む単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、t−ブチルビニルエステル、及びバーサチック酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;スチレン等の芳香族ビニル単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、及びγ-メタクリロキシプロピルトリス(イソプロポキシ)シラン等のエチレン性二重結合を有しケイ素を含有する単量体等を例示できる。尚、(A)エマルジョンに係る「他の共重合可能な単量体」は、エチレン及び共役ジエン系化合物を含まない。
【0023】
本発明に係る(A)(メタ)アクリル系エマルジョンは、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸誘導体を公知の乳化重合を用いて得ることができる。
「(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸誘導体」として、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸及び/又は、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びメタクリル酸メチルがより好ましい。
【0024】
「乳化重合」とは、水を媒体とした乳化剤を用いるラジカル重合であり、乳化重合の既知の手順に従い、本発明に係る(A)エマルジョンを得ることができる。必要に応じて、乳化重合後にアルカリを添加してpHを調整することが好ましい。
【0025】
そのような乳化重合の手順として、例えば、
(i)(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸誘導体と乳化剤を、水性媒体中に仕込んで重合させる方法、
(ii)(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸誘導体と乳化剤を、連続的又は間欠的に水性媒体中に滴下して重合させる方法
(iii)(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸誘導体と乳化剤を、水に加えて乳化液を調製し、これを連続的又は間欠的に水性媒体中に滴下して重合させる方法
等を例示することができる。また、ラジカル重合によって得られるアクリル系高分子の分子量を調整するために連鎖移動剤を用いる事ができる。
【0026】
乳化重合後に、エマルジョンのpHを調整するために用いる塩基として、例えば、ナトリウム、カリウム及びリチウム等のアルカリ金属の水酸化物及び炭酸塩;マグネシウム及びカルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物及び炭酸塩;アンモニア;アルキルアミン、アリルアミン及びアルカノールアミン等のアミン類等を例示できる。
エマルジョンのpHは、6〜10に調整することが好ましく、7〜9に調整することがより好ましく、8〜0に調整することが特に好ましい。尚、pHは、pHメーターで測定した。
【0027】
「乳化剤」は、モノマー乳化力を有し、乳化重合の過程ではミセルを形成してモノマーに重合の場を提供し、重合中又は重合後はポリマー粒子の表面に固定化して粒子の分散安定性を図る。乳化剤として、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、高分子界面活性剤、乳化剤の一分子内にラジカル重合可能な二重結合を有する「反応性界面活性剤」等を例示できる。
【0028】
「アニオン系界面活性剤」として、例えば、
ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート等のアルカリ金属アルキルサルフェート;
ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;
アンモニウムドデシルサルフェート等のアンモニウムアルキルサルフェート;
ナトリウムスルホシノエート;
スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;
ナトリウムラウレート、トリエタールアミンオレエート、トリエタールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;
ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;
高アルキルナフタレンスルホン酸塩;
ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;
ジアルキルスルホコハク酸塩;
ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;
ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;
等を例示できる。
【0029】
「ノニオン系界面活性剤」として、例えば、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル;
ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;
ソルビタン脂肪酸エステル;
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;
グリセロールのモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド;
ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;
エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミド又は酸との縮合生成物;
等を例示できる。
【0030】
「高分子界面活性剤」として、例えば、ポリビニルアルコール等を例示できる。
「反応性界面活性剤」として、例えば、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテルの硫酸エステル塩(アデカリアソープSEシリーズ(商品名)、旭電化工業社製)、α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩(アデカリアソープSRシリーズ(商品名)、旭電化工業社製)、ポリオキシエチレン(又はアルキレン)アルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸アンモニウム塩(PDシリーズ(商品名)、花王社製)、スルホコハク酸型反応性活性剤(ラテムル180シリーズ(商品名)、花王社製)、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム塩(エレミノールJS−20(商品名)、三洋化成工業社製)、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(アクアロンHSシリーズ(商品名)、第一工業製薬社製)、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(アクアロンKHシリーズ(商品名)、第一工業製薬社製)、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテル(アデカリアソープNEシリーズ(商品名)、旭電化工業社製)、ポリオキシエチレンノニルプロペニルエーテル(アクアロンRNシリーズ(商品名)、第一工業製薬社製)、α−ヒドロ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)(アデカリアソープERシリーズ(商品名)、旭電化工業社製)等を例示できる。
【0031】
また、近年、環境意識の高まりから、PRTR法に該当する乳化剤は使用しない事が好ましい。PRTR法に該当する乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキル(C12〜C15)エーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソフトアルキル(C14〜C15)ベンゼンスルホン酸ナトリウム等を例示できる。また、ノニルフェニル基は環境ホルモンであることより、特に、ノニルフェニル基を含まない乳化剤、即ち非ノニルフェニル系乳化剤を使用することが好ましい。
【0032】
「連鎖移動剤」として、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メチル、n−ドデシルメルカプタン等を例示できる。
【0033】
(A)(メタ)アクリル系エマルジョンの固形分のガラス転移温度(以下「Tg」ともいう)は、−40℃以下であるが、−80℃〜−40℃であることが好ましい。(A)エマルジョンの固形分のTgが、−40℃より高い場合、接着性が低下する。
ここで、(A)エマルジョンの固形分とは、(A)エマルジョンを、 105℃で3時間乾燥して得られる固形分をいう。
更に、(A)エマルジョンの固形分のTgとは、上記固形分の10mgを、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製のDSC6220(商品名))を用いて、10℃/分の昇温速度で、DSC曲線を測定し、得られたDSC曲線のガラス転移温度を示す部分の曲線の変曲点の温度をいう。
(A)エマルジョンは、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0034】
本発明に係る「(B)ゴム系エマルジョン」(以下「(B)エマルジョン」ともいう)とは、ゴム系高分子が水性媒体に分散されたエマルジョン(又は乳濁物)をいう。
「ゴム系高分子」とは、天然の又は合成の弾性を有する高分子であって、通常ゴム系高分子に含まれる高分子をいう。そのようなゴム系高分子は、例えば、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレン等の共役ジエン系化合物に基づく高分子を含み、例えば、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、2−ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソプレン等が、例示される。
(B)エマルジョンとして、特にスチレン−ブタジエン共重合体エマルジョンが好ましい。
【0035】
(B)エマルジョンの固形分のTgは、−10℃以下である、−80℃〜−10℃であることが好ましい。(B)ゴム系エマルジョンの固形分のTgが−10℃より高い場合、接着性が低下する。
尚、(B)エマルジョンの固形分及びそのTgは、(A)エマルジョンで説明した方法と同様の方法で得ることができる。
【0036】
(B)エマルジョンは、市販品を使用することができる。例えば、アデックタイトHA010、アデックタイトHA020、A7269、L2337、L2001、L7850(旭化成ケミカルズ社製);ハイテックスHA(SIME DARBY BERHAD社製);0696、0561、2108、0533、0545、0548、0568(JSR社製);Nipol2518FS、Nipol2518GL、NipolLX110、NipolLX112、NipolLX435、NipolC4850A、NipolLX432M、NipolLX421、NipolLX206、NipolLX119、NipolLX426、NipolLX473D(日本ゼオン社製);ナルスターSR−107、ナルスターSR−110、ナルスターSR−112、ナルスターSR−113、ナルスターSR−116、ナルスターSR117、ナルスターSR−118、ナルスターSR−140、ナルスターMR−171、ナルスターMR−172、ナルスターMR−173、ナルスターMR−174、サイアテックスNA−11、サイアテックスNA−13、サイアテックスNA−20(日本エイアンドエル社製)等が例示できる。いずれの名称も、商品名を示す。
(B)ゴム系エマルジョンは、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0037】
本発明において、「(C)エチレンと、エチレン性二重結合を含むカルボン酸誘導体との共重合体エマルジョン」(以下「(C)エマルジョン」ともいう)とは、エチレンと、エチレン性二重結合を含むカルボン酸誘導体との共重合体が、水性媒体に分散されたエマルジョン(又は乳化物)をいう。
ここで、(C)エマルジョンのかかる「エチレン性二重結合を含むカルボン酸誘導体」とは、エチレンとラジカル重合可能なカルボン酸誘導体をいい、エチレン性二重結合を含むカルボン酸自身及びエチレン性二重結合を含む酸無水物も含む。
【0038】
「エチレン性二重結合を含むカルボン酸誘導体」には、例えば、「エチレン性二重結合を含むカルボン酸」、「エチレン性二重結合を含む酸無水物」、「(メタ)アクリル酸誘導体」及び「カルボン酸ビニルエステル」が含まれる。
「エチレン性二重結合を含むカルボン酸」として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びシトラコン酸を例示できる。
「エチレン性二重結合を含む酸無水物」として、例えば、無水マレイン酸を例示できる。
【0039】
「(メタ)アクリル酸誘導体」として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、及び(メタ)アクリル酸セチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のグリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル及びジエステル;(メタ)アクリル酸アミド、N−メチロールアクリルアミド、及びジアセトンアクリルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド、メクリル酸グリシジル、及び3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するアルキル基との(メタ)アクリル酸エステル等を例示できる。
【0040】
「カルボン酸ビニルエステル」として、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニル等を例示することができる。
「エチレン性二重結合を含むカルボン酸誘導体」は、単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
「エチレンと、エチレン性二重結合を含むカルボン酸誘導体との共重合体」は、更に、他のラジカル重合可能な単量体との、共重合体であってよい。かかる他のラジカル重合可能な単量体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してよい。
【0042】
「他のラジカル重合可能な単量体」として、例えば、ビニルスルホン酸ソーダ、メタリルスルホン酸ソーダ、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ソーダ等のスルホン酸基含有単量体等;
塩化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物;スチレン等の芳香族ビニル化合物;
プロピレン、ブテン−1、ブテン−2、イソブテン、2−メチル−ブテン−1、3−メチル−ブテン−1、ペンテン−1、4−メチル−ペンテン−1、オクテン−1、ジイソブチレン等のエチレンを除く分枝を有してよいアルケン;
アクリロニトリル等
を例示できる。
尚、(C)エマルジョンに係る「他のラジカル重合可能な単量体」は、共役ジエン系化合物を含まない。
【0043】
本発明の(C)エマルジョンにかかる「エチレンと、エチレン性二重結合を含むカルボン酸誘導体との共重合体」は、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸誘導体共重合体、及びエチレン−カルボン酸ビニルエステル−(メタ)アクリル酸誘導体共重合体であることが好ましい。
「エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体」は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びエチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合体であることがより好ましい。
「エチレン−(メタ)アクリル酸誘導体共重合体」は、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体であることがより好ましい。
【0044】
「エチレン−カルボン酸ビニルエステル−(メタ)アクリル酸誘導体共重合体」は、エチレン−カルボン酸ビニルエステル−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体であることがより好ましく、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体であることが特に好ましい。
「エチレンと、エチレン性二重結合を含むカルボン酸誘導体との共重合体エマルジョン」は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
(C)エマルジョンの固形分のTgは、−10℃以下であるが、−80℃〜−10℃であることが好ましい。(C)エマルジョンの固形分のTgが−10℃より高い場合、接着性が低下する。
【0046】
(C)エマルジョンは、市販品を使用することができる。(C)エマルジョンとして、例えば、スミカフレックス201HQ、スミカフレックス205HQ、スミカフレックス401HQ、スミカフレックス408HQE、スミカフレックス410HQ、スミカフレックス3950、スミカフレックス755、スミカフレックス900HL、スミカフレックス920HQ、スミカフレックス950HQ、スミカフレックス951HQ(住化ケムテックス社製);パンフレックスOM−2000、パンフレックスOM−3100(クラレ社製);デンカEVAテックス59、デンカEVAテックス140(電気化学工業社製)等を例示できる。いずれの名称も、商品名で示した。
(C)エマルジョンは、単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
本発明における包装袋用接着剤は、(A)〜(C)エマルジョンの総重量100重量部(固形分換算)に対し、(B)エマルジョンが10〜60重量部(固形分換算)であることが好ましい。本発明の包装袋用接着剤は、前記量的関係を有することによって、接着性、及び塗工機の洗浄性がより向上する。
本発明の包装袋用接着剤は、本発明が目的とする包装袋用接着剤を得ることができる限り、(A)〜(C)エマルジョン以外の他のエマルジョンを含むことができる。
【0048】
本発明の包装袋用接着剤は、添加剤として、更に、粘着付与樹脂、可塑剤、乾燥遅延剤、消泡剤、増粘剤、ワックス、防腐剤、及び着色剤等を、必要に応じて適宜含むことができる。
【0049】
「粘着付与樹脂」として、例えば、ロジン系樹脂、テルペン樹脂、テルペン・フェノール系樹脂、クマロン・インデン樹脂、石油系炭化水素樹脂等を例示できる。
ロジン系樹脂としては、ロジンエステル類、ロジンフェノール類が例示できる。
粘着付与樹脂は市販されているものでも良く、例えば、スーパーエステルE−730−55、スーパーエステルE−720、スーパーエステル786−60、スーパーエステルE−650、スーパーエステルE−865、タマノルE−200、タマノルE−100、AM−1002(荒川化学社製);ハリエスターDS−70E、ハリエスターSK−70D、ハリエスターSK−90D−55、ハリエスターSK−508H、ハリエスターSK−816E、ハリエスター822E等が例示できる。いずれの名称も、商品名で示した。
【0050】
また、近年、環境意識の高まりから、トルエン・キシレンフリー型の粘着付与樹脂、無溶剤型の粘着付与樹脂を使用する事が好ましい。このような粘着付与樹脂として、例えば、スーパーエステルE−865NT、スーパーエステルE−625NT、スーパーエステルNS−100H、スーパーエステルNS−121、タマノルE−200NT(荒川化学社製);ハリエスターSK−218NS、ハリエスターSK−323NS、ハリエスターSK−370N、ハリエスターSK−501NS、ハリエスターSK−385NS等を例示できる。いずれの名称も、商品名で示した。
【0051】
「可塑剤」として、例えば、グリセリン;エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類;アジピン酸系、安息香酸系、アセチルクエン酸系、アルキルスルホン酸系、フタル酸系等のポリエステル類;ショ糖、ソルビトール等の糖類;セロソルブ類等の有機溶剤類等を例示できる。
【0052】
「乾燥遅延剤」として、尿素、尿素化合物、ジシアンジアミド等の窒素含有物質等を例示できる。
【0053】
「消泡剤」として、例えば、
ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、有機変性ポリシロキサン、フッ素シリコーン等のシリコーン系消泡剤;
ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油等の油脂系消泡剤;
ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸系消泡剤;
イソアミルステアリン酸、ジグリコールラウリン酸、ジステアリルコハク酸、ジステアリン酸、ソルビタンモノラウリン酸、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ブチルステアレート、ショ糖脂肪酸エステル、スルホン化リチノール酸のエチル酢酸アルキルエステル、天然ワックス等の脂肪酸エステル系消泡剤;
ポリオキシアルキレングリコールとその誘導体、ポリオキシアルキレンアルコール水和物、ジアミルフェノキシエタノール、3−ヘプタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール系消泡剤;
3−ヘプチルセルソルブ、ノニルセルソルブ−3−ヘプチルカルビトール等のエーテル系消泡剤;
トリブチルホスフェート、オクチルリン酸ナトリウム、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート等のリン酸エステル系消泡剤;
ジアミルアミン等のアミン系消泡剤;
ポリアルキレンアマイド、アシレイトポリアミン、ジオクタデカノイルピペリジン等のアマイド系消泡剤;
ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸カリウム、ウールオレインのカルシウム塩等の金属石鹸系消泡剤;
ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸エステル系消泡剤;
疎水性シリカ系消泡剤;鉱油系消泡剤等を例示することができる。
【0054】
本発明に係る包装袋用接着剤は、包装袋を製造するために用いられる積層体を得るために使用される。
本明細書で包装袋を製造するために使用する積層体とは、
いわゆる紙(例えば、クラフト紙、和紙、及び上質紙等)、加工紙(例えば、アルミ蒸着加工、アルミラミネート加工、ニス加工、及び樹脂加工等を施された紙)、合成紙等の紙類;
ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリブテンフィルム、セロハン等の樹脂フィルム;
金属製のフィルム;
等の基材に包装用接着剤が塗布され、更に、基材(同一でも異なっていてもよい)が貼り合わされて得られる積層体をいう。積層体は、通常、フィルム状、シート状、及びロール状等の形態を有する。
【0055】
本発明に係る包装袋は、かかる積層体を、目的とする物品を入れられるように、袋状に加工して得ることができる。
本発明では、包装袋は、紙類と樹脂フィルムとが接着剤によって貼り合わされて得られる積層体を用いて製造されたものが好ましく、特に、米袋、化学樹脂粉体袋等のように製袋加工が施されたものが好ましい。製袋加工とは、印刷された紙基材を袋に仕上げる加工のことである。
【0056】
本発明に係る包装袋用接着剤を包装袋の基材に塗布する方法としては、通常用いられる方法であれば、限定されることなく使用できる。例えば、ローラー式、スプレー式等を例示できる。接着剤が塗工される基材を限定する必要はないが、特に紙基材に接着剤を塗工することが好ましい。
【0057】
以下に、本発明の主な態様を記載する。
1.(A)(メタ)アクリル系エマルジョン、及び(B)ゴム系エマルジョンを含む包装用接着剤であって、
(A)エマルジョンの固形分のガラス転移温度は、−40℃以下であり、
(B)エマルジョンの固形分のガラス転移温度は、−10℃以下である
包装袋用接着剤。
2.(C)エチレンと、エチレン性二重結合を含むカルボン酸誘導体との共重合体エマルジョンを、更に含む上記包装用接着剤であって、
(C)エマルジョンの固形分のガラス転移温度は、−10℃以下である上記1に記載の包装袋用接着剤。
3.(A)エマルジョンの固形分のガラス転移温度は、−70℃〜−40℃であり、(B)エマルジョンの固形分のガラス転移温度は、−70℃〜−10℃である、上記1又は2に記載の包装袋用接着剤。
4.(A)〜(C)エマルジョンの総重量100重量部(固形分換算)に対し、(B)エマルジョン(固形分換算)を、10〜60重量部含む、上記1〜3のいずれかに記載の包装袋用接着剤。
5.上記1〜4のいずれかに記載の包装袋用接着剤を用いて得られる包装袋。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて説明するが、これらの例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。
まず、下記に示す各成分を準備した。尚、「部」とは、重量部を意味する。
【0059】
[乳化剤]
アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム
(花王社製のペレックスSS−L(商品名))
[消泡剤]
サンノプコ社製のノプコ8034(商品名)
[アンモニア水]
25%アンモニア水溶液(和光純薬工業社製)
【0060】
<(A)(メタ)アクリル系エマルジョンの製造>
以下に記載する方法で(A)エマルジョンを複数種製造した。
(A)エマルジョン(固形分)のガラス転移温度(Tg)は、(A)エマルジョンの固形分のDSC測定によって求めた。即ち、(A)エマルジョンを、 105℃で3時間乾燥して得られる固形分を、10mg採取した。これを、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製のDSC6220(商品名))を用いて、10℃/分の昇温速度で、DSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移温度を示す部分の曲線の変曲点の温度をTgとした。
【0061】
[(A)−1エマルジョン]
2.6部の乳化剤(花王社製のペレックスSS−L(商品名))を、16部の蒸留水に溶解した。これに、24部のアクリル酸2−エチルヘキシル(和光純薬工業社製)、73部のアクリル酸ブチル(和光純薬工業社製)、2.4部のメタクリル酸メチル(和光純薬工業社製)、及び0.6部のアクリル酸(和光純薬工業社製)を配合して乳化させ、乳化液を調整した。
一方、攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、40部の蒸留水を加え、窒素ガスを吹き込みながら攪拌し、加熱して液温を80℃に調整した。これに、先に調整した乳化液の約3体積%と、0.4部の過硫酸アンモニウムを2部の蒸留水に溶解して得た開始剤水溶液を加えた。攪拌後、液温を80℃に保ちながら、更に残りの乳化液を約3時間かけて滴下した。その後、80℃で、更に1時間攪拌を続けて、反応を完結させた。得られた反応混合物を冷却後、0.13部の消泡剤(サンノプコ社製のノプコ8034(商品名)を加えた。更に、アンモニア水と蒸留水を加えて、濃度62%の(A)−1(メタ)アクリル系エマルジョンを得た。(A)−1エマルジョン(固形分)のTgは、−60℃であった。
【0062】
[(A)−2エマルジョン]
2.6部の乳化剤(花王社製のペレックスSS−L(商品名))を、16部の蒸留水に溶解した。これに、24部のアクリル酸2−エチルヘキシル(和光純薬工業社製)、53部のアクリル酸ブチル(和光純薬工業社製)、22.4部のメタクリル酸メチル(和光純薬工業社製)、及び0.6部のアクリル酸(和光純薬工業社製)を配合して乳化させ、乳化液を調整した。
一方、攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、40部の蒸留水を加え、窒素ガスを吹き込みながら攪拌し、加熱して液温を80℃に調整した。これに、先に調整した乳化液の約3体積%と、0.4部の過硫酸アンモニウムを2部の蒸留水に溶解して得た開始剤水溶液を加えた。攪拌後、液温を80℃に保ちながら、更に残りの乳化液を約3時間かけて滴下した。その後、80℃で、更に1時間攪拌を続けて、反応を完結させた。得られた反応混合物を冷却後、0.13部の消泡剤(サンノプコ社製のノプコ8034(商品名)を加えた。更に、アンモニア水と蒸留水を加えて、濃度62%の(A)−2(メタ)アクリル系エマルジョンを得た。(A)−2エマルジョン(固形分)のTgは、−40℃であった。
【0063】
[(A’)−1エマルジョン]
2.6部の乳化剤(花王社製のペレックスSS−L(商品名))を、16部の蒸留水に溶解した。これに、24部のアクリル酸2−エチルヘキシル(和光純薬工業社製)、33部のアクリル酸ブチル(和光純薬工業社製)、42.4部のメタクリル酸メチル(和光純薬工業社製)、及び0.6部のアクリル酸(和光純薬工業社製)、を配合して乳化させ、乳化液を調整した。
一方、攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、40部の蒸留水を加え、窒素ガスを吹き込みながら攪拌し、加熱して液温を80℃に調整した。これに、先に調整した乳化液の約3体積%と、0.4部の過硫酸アンモニウムを2部の蒸留水に溶解して得た開始剤水溶液を加えた。攪拌後、液温を80℃に保ちながら、更に残りの乳化液を約3時間かけて滴下した。その後、80℃で、更に1時間攪拌を続けて、反応を完結させた。得られた反応混合物を冷却後、0.13部の消泡剤(サンノプコ社製のノプコ8034(商品名)を加えた。更に、アンモニア水と蒸留水を加えて、濃度50%の(A’)−1(メタ)アクリル系エマルジョンを得た。(A’)−1エマルジョン(固形分)のTgは、−20℃であった。
【0064】
(B)ゴム系エマルジョン、(C)エチレンとカルボン酸誘導体の共重合体エマルジョン、及び添加剤は、市販品を用いた。これらのTgは、(A)エマルジョンのTgと同様の方法を用いて測定した。
[(B)−1エマルジョン]
スチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン(固形分濃度は、50%、固形分のTgは−36℃)(旭化成ケミカルズ社製のアデックタイトHA010(商品名)
[(B)−2エマルジョン]
スチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン(固形分濃度は、48%、固形分のTgは、−15℃)(旭化成ケミカルズ社製のアデックタイトHA020(商品名))
[(B)−3エマルジョン]
天然ゴムエマルジョン(固形分濃度は、60%、固形分のTgは、−70℃)(SIME DARBY BERHAD社製のハイテックスHA(商品名)、)
[(B’)−1エマルジョン]
スチレン−ブタジエン共重合体(固形分濃度は、50%、固形分のTgは、−6℃)(旭化成ケミカルズ社製のA7689(商品名))
【0065】
[(C)−1エマルジョン]
エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(固形分濃度は、60%、固形分のTgは、−50℃)(住化ケムテックス社製のスミカフレックス3950(商品名))
[(C)−2エマルジョン]
エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(固形分濃度は、50%、固形分のTgは、−30℃)(住化ケムテックス社製のスミカフレックス408HQE(商品名))
[(C)−3エマルジョン]
エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(固形分濃度は、55%、固形分のTgは、−15℃)(住化ケムテックス社製のスミカフレックス401HQ(商品名))
[(C)−4エマルジョン]
エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合体エマルジョン(固形分濃度は、53%、固形分のTgは、−30℃)(住化ケムテックス社製のスミカフレックス950HQ(商品名))
[(C)−5エマルジョン]
エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体エマルジョン(固形分濃度は、60%、固形分のTgは、−40℃)(住化ケムテックス社製のスミカフレックス920HQ(商品名))
【0066】
[粘着付与樹脂]
荒川化学社製のスーパーエステルE−865NT(商品名)(固形分濃度は、50%)
[可塑剤−1]
グリセリン(和光純薬工業社製)
[可塑剤−2]
ADEKA社製のアデカサイザーPN−6120(商品名)
[消泡剤]
ADEKA社製のアデカネートB940(商品名)
[防腐剤]
ソー・ジャパン社製のActicide MB(商品名)
【0067】
<実施例1>
攪拌装置を備えたフラスコに、119.4部の(A)−1エマルジョン、52部の(B)−1エマルジョンを加え、25℃で10分攪拌した。その後、7.4部の粘着付与樹脂、7部の可塑剤−1、6部の可塑剤−2、0.2部の消泡剤、0.7部の防腐剤、0.18部のアンモニア水、及び28.6部の水を加えて、20分間攪拌し、実施例1の包装袋用接着剤を得た。
<実施例2>
119.4部の(A)−1エマルジョンの代わりに、119.4部の(A)−2エマルジョンを用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様の方法を用いて、実施例2の包装袋用接着剤を得た。
【0068】
<実施例3>
52部の(B)−1エマルジョンの代わりに、54.2部の(B)−2エマルジョンを用い、28.6部の水の代わりに、26.4部の水を用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様の方法を用いて、実施例3の包装袋用接着剤を得た。
<実施例4>
52部の(B)−1エマルジョンの代わりに、43.3部の(B)−3エマルジョンを用い、28.6部の水の代わりに、37.3部の水を用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様の方法を用いて、実施例4の包装袋用接着剤を得た。
【0069】
<実施例5>
攪拌装置を備えたフラスコに、106.5部の(A)−1エマルジョン、44部の(B)−1エマルジョン、及び20部の(C)−1エマルジョンを加えて、25℃で10分攪拌した。その後、7.4部の粘着付与樹脂、7部の可塑剤−1、6部の可塑剤−2、0.2部の消泡剤、0.7部の防腐剤、0.18部のアンモニア水、及び29.5部の水を加えて、20分間攪拌して、実施例5の包装袋用接着剤を得た。
<実施例6>
20部の(C)−1エマルジョンの代わりに、24部の(C)−2エマルジョンを用い、29.5部の水の代わりに、25.5部の水を用いた以外は、実施例5に記載した方法と同様の方法を用いて、実施例6の包装袋用接着剤を得た。
【0070】
<実施例7>
20部の(C)−1エマルジョンの代わりに、21.8部の(C)−3エマルジョンを用い、29.5部の水の代わりに、27.7部の水を用いた以外は、実施例5に記載した方法と同様の方法を用いて、実施例7の包装袋用接着剤を得た。
<実施例8>
20部の(C)−1エマルジョンの代わりに、22.6部の(C)−4エマルジョンを用い、29.5部の水の代わりに、26.9部の水を用いた以外は、実施例5に記載した方法と同様の方法を用いて、実施例8の包装袋用接着剤を得た。
<実施例9>
20部の(C)−1エマルジョンの代わりに、20部の(C)−5エマルジョンを用いた以外は、実施例5に記載した方法と同様の方法を用いて、実施例9の包装袋用接着剤を得た。
【0071】
<実施例10>
攪拌装置を備えたフラスコに、80.6部の(A)−1エマルジョン、100部の(B)−1エマルジョンを加えて、25℃で10分間攪拌した。その後、7.4部の粘着付与樹脂、7部の可塑剤−1、6部の可塑剤−2、0.2部の消泡剤、0.7部の防腐剤、0.18部のアンモニア水、及び19.4部の水を加えて、20分間攪拌して、実施例10の包装袋用接着剤を得た。
<実施例11>
攪拌装置を備えたフラスコに、61.3部の(A)−1エマルジョン、100部の(B)−1エマルジョン、及び20部の(C)−1エマルジョンを加えて、25℃で10分攪拌した。その後、7.4部の粘着付与樹脂、7部の可塑剤−1、6部の可塑剤−2、0.2部の消泡剤、0.7部の防腐剤、0.18部のアンモニア水、及び18.7部の水を加え、20分間攪拌して、実施例11の包装袋用接着剤を得た。
<実施例12>
攪拌装置を備えたフラスコに、137.1部の(A)−1エマルジョン、30部の(B)−1エマルジョンを加えて、25℃で10分間攪拌した。その後、7.4部の粘着付与樹脂、7部の可塑剤−1、6部の可塑剤−2、0.2部の消泡剤、0.7部の防腐剤、0.18部のアンモニア水、及び32.9部の水を加え、20分間攪拌して、実施例12の包装袋用接着剤を得た。
【0072】
<比較例1>
攪拌装置を備えたフラスコに、161.3部の(A)−1エマルジョンを加えて、25℃で10分間攪拌した。その後、7.4部の粘着付与樹脂、7部の可塑剤−1、6部の可塑剤−2、0.2部の消泡剤、0.7部の防腐剤、0.18部のアンモニア水、及び38.7部の水加えて、20分間攪拌して、比較例1の包装袋用接着剤を得た。
<比較例2>
119.4部の(A)−1エマルジョンの代わりに、119.4部の(A’)−1エマルジョンを用いたこと以外は、実施例1に記載した方法と同様の方法を用いて、比較例2の包装袋用接着剤を得た。
【0073】
<比較例3>
52部の(B)−1エマルジョンの代わりに、52部の(B’)−1エマルジョンを用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様の方法を用いて、比較例3の包装袋用接着剤を得た。
<比較例4>
攪拌装置を備えたフラスコに、200部の(B)−1エマルジョンを加え、25℃で10分間攪拌した。その後、7.4部の粘着付与樹脂、7部の可塑剤−1、6部の可塑剤−2、0.2部の消泡剤、0.7部の防腐剤、及び0.18部のアンモニア水を加えて、20分間攪拌して、比較例4の包装袋用接着剤を得た。
【0074】
<評価方法>
実施例及び比較例の接着剤について、下記評価を行った。
[接着性]
バーコーターを用いて、各接着剤を、約30g/mの量でクラフト紙に塗布した後、PEフィルムを直ちに貼り合せ、ゴムローラーを用いて軽く圧着した。23℃で3日間乾燥して、テストサンプルを得た。テストサンプルのPEフィルムを強制的に引き剥がし、剥離状態を確認した。評価基準は以下のとおりである。
クラフト紙が全て材料破壊するもの:○
クラフト紙が界面剥離するもの :×
【0075】
[塗工機洗浄性]
バーコーターを用いて、各接着剤を、約50g/mの量でガラス板に塗布した後、直ちに105℃で3分間乾燥して、テストサンプルを得た。60℃の水にテストサンプルを浸漬してテストサンプルを揺すり、接着剤が剥がれる時間を測定した。評価基準は以下のとおりである。
テストサンプル浸漬後2分以内で接着剤が剥がれるもの:○
テストサンプル浸漬後2〜4分で接着剤が剥がれるもの:△
テストサンプル浸漬4分以上接着剤が剥がれなかったもの:×
【0076】
[耐染み出し性]
バーコーターを用いて、各接着剤を、約250g/mの量でPEフィルムに塗布した後、直ちにクラフト紙に貼り合せ、5kgf/mの力で30秒間圧着した。評価基準は以下のとおりである。
クラフト紙に接着剤の染み出しが10%未満認められるもの :◎
クラフト紙に接着剤の染み出しが10〜30%認められるもの:○
クラフト紙に接着剤の染み出しが30〜50%認められるもの:△
クラフト紙に接着剤の染み出しが50%以上認められるもの :×
【0077】
実施例及び比較例の接着剤の評価を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1に示されるように、実施例1〜12の接着剤は、(A)エマルジョンと(B)エマルジョンの両方を含むので、接着性、塗工機洗浄性に優れる。更に、実施例5〜9及び実施例11の接着剤は、(C)エマルジョンも含むので、耐染み出し性にも優れる。
比較例1〜4の接着剤は、(A)エマルジョン又は(B)エマルジョンを含まないので、実施例1〜12の接着剤と比較して、各性能に著しく劣る。
このように、包装袋用接着剤の接着性、塗工機洗浄性、耐染み出し性をいずれも向上させるためには、(A)、(B)及び(C)エマルジョンを全て配合することが有効であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る包装袋用接着剤は、(A)(メタ)アクリル系エマルジョン、及び(B)ゴム系エマルジョンを含み、(A)エマルジョンの固形分のガラス転移温度は、−40℃以下であり、(B)エマルジョンの固形分のガラス転移温度は、−10℃以下なので、樹脂フィルム基材に対する接着性に優れ、塗工機を洗浄して容易に除去することができる。更に、洗浄性に優れるので、洗浄時間を短縮でき、包装袋の生産性が向上する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリル系エマルジョン、及び(B)ゴム系エマルジョンを含む包装袋用接着剤であって、
(A)(メタ)アクリル系エマルジョンの固形分は、−40℃以下のガラス転移温度を有し、
(B)ゴム系エマルジョンの固形分は、−10℃以下のガラス転移温度を有する
包装袋用接着剤。
【請求項2】
(C)エチレンと、エチレン性二重結合を含むカルボン酸誘導体との共重合体エマルジョンを、更に含む請求項1に記載の包装袋用接着剤であって、
(C)エマルジョンの固形分は、−10℃以下のガラス転移温度を有する
包装袋用接着剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の包装袋用接着剤を用いて得られる包装袋。

【公開番号】特開2012−31259(P2012−31259A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170690(P2010−170690)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(391047558)ヘンケルジャパン株式会社 (43)
【Fターム(参考)】