説明

化学センサー、化学センサーの製造方法

【課題】化学的・物理的耐久性に優れ、信頼性の高い化学センサーを提供する。
【解決手段】化学センサー10は、凹部31を有し、表面に配線41〜44が設けられている基枠30と、凹部31に固着されるセンサーチップ20と、センサーチップ20の検出部21の周縁を囲み厚さ方向に突設される隔壁25と、隔壁25の外周部と基枠30との間、及び配線41〜44とセンサーチップ20との接続部に充填される封止剤55と、検出部21を露出させる開口部61を有し、配線41〜44の一部を除く基枠30の表面及び封止剤55の表面を覆うようにモールド成形される外枠60と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学センサー、及び化学センサーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体中のイオン濃度を測定する化学センサー(pHセンサー、バイオセンサー等)として、液中のイオン活量によって発生する液体‐イオン(プロトン)感応膜間の界面電位を検出するISFET(Ion Sensitive Field Effect Transistor)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ISFETは、半導体製造技術でセンサーチップの形態で製造されるが、実際に使用される場面では、耐酸性、対アルカリ性、耐薬品性が要求され、また、生体内の液中イオン濃度を測定する場合には、生体と接触する部分には生体適合性が要求される。
そこで、センサーチップをモールド成形された下部基枠に固着し、その後、センサーチップの周縁部を含んで上部基枠をモールド成形してなる化学センサーが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−236687号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】W.Oelβner、U.Guth、T.Pechstein、W.Babel、J.G.Connery、C.Demuth、M.Grote、J.B.Verbung著、Sensors and ActuatorsB:Chemical Volume 105,Issue1,14 February 2005、第104頁〜117頁、第2図
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような特許文献1では、イオン感応膜を自己組織化単分子膜により被覆することで、化学的・物理的耐久性に優れるイオンセンサーを提案しているが、センサーチップと外部制御回路とを接続する部分の化学的・物理的耐久性までは配慮されておらず、センサー全体としての化学的・物理的耐久性には課題を有する。
【0007】
また、非特許文献1では、センサーチップ及び外部制御回路との接続部を下部基枠及び上部基枠で保護する形態であるが、製造工程中に検出部(感応膜及び非感応膜)が保護されていないため、検出部に傷がついたり汚れたりすることがあり、所定の検出感度が得られなくなるという課題を有している。
【0008】
また、上部基枠をモールド成形する際に、モールド金型の一部がセンサーチップの検出部に接触することがあるため、センサーチップに不要な応力が加わり、センサーチップの損傷が考えられる。
【0009】
また、上部基枠と下部基枠との界面に微小な隙間が生ずることが考えられ、その場合、その隙間から液体が侵入することにより正確な測定ができなくなることが予測される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]本適用例に係る化学センサーは、表面に配線が設けられている基枠と、前記基枠に固着されるセンサーチップと、前記センサーチップの検出部の周縁を囲み厚さ方向に突設される隔壁と、前記隔壁の外周部と前記基枠との間、及び前記配線と前記センサーチップとの接続部に充填される封止部と、前記検出部を露出させる開口部を有し、前記複数の配線の一部を除く前記基枠の表面及び前記封止部の表面を覆う外枠と、からなることを特徴とする。
【0012】
本適用例によれば、検出部の開口部を除いて外枠で基枠の表面及び封止部の表面を覆うことで、化学的・物理的耐久性に優れた化学センサーを実現できる。
【0013】
また、隔壁の外周部と基枠との間、及び複数の配線とセンサーチップとの接続部を封止部で充填(被覆も含む)するとで、センサーチップの外周部と接続部の構造的補強と、水分の浸入に対する補強ができる。
【0014】
また、検出部の周縁部を囲む隔壁を形成することで、封止部が検出部の表面にまで広がることがなく、検出感度の劣化を防止できる。
【0015】
例えば、外枠をモールド成形する場合、検出部を開口するモールド型部分は、隔壁に当接し、モールド型が検出部にあたることがないため、モールド成形時における検出部の損傷を防止できるという効果もある。
【0016】
[適用例2]上記適用例に係る化学センサーは、前記外枠が、耐酸性または耐アルカリ性、または及び生体適合性を有する絶縁性材料からなることが好ましい。
【0017】
耐酸性または耐アルカリ性、または生体適合性、これらの特性を併せもち、且つ、モールド成形が可能な材料としては、例えば、エポシキ系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフタルアミド樹脂(PPA)、フッ素樹脂(PTFE)等を採用できる。よって、外枠にこのような材料を用いることにより、耐酸性または耐アルカリ性、または生体適合性を有し、広範囲の種類の液中イオン濃度の測定が可能となる。
【0018】
[適用例3]上記適用例に係る化学センサーは、前記センサーチップが、ISFETを含むことが好ましい。
【0019】
ISFETは、イオン感応膜として、絶縁体であるSiO、Si、Al、Taなどの膜材質を変えることで特定のイオンだけの量を測定し、そこから液中のイオン濃度(pH)を測定できる。そして、上述した適用例のような構成にすることにより、信頼性の高い化学センサーを実現できる。
【0020】
[適用例4]上記適用例に係る化学センサーは、前記基枠の表面及び前記封止部の表面の前記外枠との界面に、相互の密着性を向上させる表面処理が施されていることが望ましい。
【0021】
このようにすれば、基枠の表面及び封止部表面と、外枠との界面において互いの密着性を高めることにより、界面からの液体の侵入を防止でき、液体の侵入に起因する化学的・物理的な耐久品質を高めると共に、測定の信頼性を高めることができる。
【0022】
[適用例5]本適用例に係る化学センサーの製造方法は、センサーチップの検出部の表面に空間を形成する保護膜を有するセンサーユニットを形成する工程と、前記センサーユニットを基枠に固着する工程と、前記センサーチップと前記基枠の表面に形成される配線とを接続する工程と、前記センサーユニットと前記基枠との間、及び前記センサーチップと前記配線との接続部に封止剤を充填する充填工程と、前記保護膜を除去する工程と、前記前記検出部を露出させる開口部を有し、前記配線の一部を除く前記基枠の表面及び前記封止剤の表面を覆うように外枠を成形する工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
このように保護膜を設けることにより、製造過程において検出部の損傷や汚れを防止することができる。また、センサーチップを封止剤によって被覆するとで、センサーチップの外周部と接続部の構造的補強と、水分の浸入に対する補強ができ、製造歩留まりを向上させることができる。
【0024】
[適用例6]上記適用例に係る化学センサーの製造方法は、前記充填工程の後に、前記基枠と前記センサーユニットと前記封止剤の前記外枠との界面に相互の密着性を向上させる表面処理工程をさらに含むことが望ましい。
【0025】
ここで、表面処理としては、例えば、湿式ブラスト処理による表面改質、紫外線照射による表面改質、プラズマによる表面改質、等を採用できる。
このような表面改質処理を行うことで、基枠とセンサーユニットと封止剤の外枠との界面の密着性を高めることにより内部へ水分の侵入を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態1に係る化学センサーを示す平面図。
【図2】図1のB−B切断面を示す断面図。
【図3】センサーユニットを形成する工程を示し、(a)は隔壁形成工程と保護膜形成工程、(b)は保護膜接合工程を示す工程説明図。
【図4】化学センサーの形成方法の主要な工程を示す断面図、(a)はセンサーユニット接合工程、(b)は封止剤の充填工程、(c)は表面処理工程、(d)は保護膜除去工程、(e)はモールド工程を示す工程説明図。
【図5】他の実施例の外枠形成の工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明で参照する図は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
(実施形態1)
【0028】
図1は、実施形態1に係る化学センサーを示す平面図、図2は図1のB−B切断面を示す断面図である。なお、図1は図2のA−A方向の上視図である。図1、図2において、化学センサー10は、基枠30と、基枠30に設けられる凹部31に固着されるセンサーチップ20と、開口部61と基枠30の端部を除く範囲を覆うようにモールド成形された外枠60と、から構成されている。
【0029】
基枠30は、エポキシ系樹脂、またはポリフタルアミド樹脂(PPA)等の耐熱性を有する熱硬化性樹脂によって成形され、凹部31と、凹部31から連続して設けられる段部32と、段部32に連続する斜面部33とが形成されている。基枠30の表面34には、導電性金属からなる4本の配線41,42,43,44(以降、これら配線を総称して配線40と表すことがある)が形成されている。
【0030】
配線40の一端は、基枠30の表面34から斜面部33を介して段部32にまで延在され、他端は、基枠30の側面36を介して裏面35まで延在されている。本実施形態では4本の配線からなり、それぞれが電源線、GND線、及び信号線を構成する。
【0031】
センサーチップ20は、ゲート表面(図示せず)に感応部(感応膜)22と不感応部(不感応膜)23とを有するISFETにより構成され、半導体技術を用いて形成されている。なお、以降、表面に露出される感応部22と不感応部23を総称して検出部21と表すことがある。そして、センサーチップ20の表面には、検出部21の周縁を囲み厚さ方向に突設される隔壁25が形成されている。
【0032】
センサーチップ20は、基枠30の凹部31内に接着剤50によって固着されている。センサーチップ20は、図示しない複数の電極パッドが隔壁25の外側に形成されており、前述した電源線、GND線、及び信号線と、これらに対応する電極パッドにボンディングワイヤ90によって接続されている。
【0033】
また、図2に示すように、隔壁25の外周部と基枠30との間、配線40とセンサーチップ20との接続部(具体的には、ボンディングワイヤ90の上部)は、封止部55により充填され、または覆われている。
【0034】
そして、検出部21を露出させる開口部61を有し、配線40の一部(側面36側の端部)を除く基枠30の表面34及び裏面35及び封止部55の表面を覆うように外枠60がモールド成形されている。
【0035】
以上のように構成される化学センサー10は、嵌着部62にコネクター70が装着され外部制御回路に接続されるが、コネクター70の基枠30との装着部はゴム系材料からなり、化学センサー10とコネクター70との間の気密性を保持する構成である。
【0036】
ISFETは、Ion Sensitive Field Effect Transistor(イオン感応性電界効果型トランジスター)の略称であって、感応部(感応膜)に液体が接触すると、液体中のイオン活量に応じて界面電位が発生する。感応膜の材質としては、SiO、Si、Al、Taなどを用いることが可能で、これらの膜材質を選択することで、特定のイオンだけの量を測定でき、例えばTaを用いる場合には、水素イオンに反応してpHセンサーとなる。
(化学センサーの製造方法)
【0037】
続いて、本実施形態の化学センサーに係る製造方法について図面を参照して説明する。
図3は、センサーチップに保護膜を接合してセンサーユニットを形成する工程を示し、(a)は隔壁形成工程と、保護膜形成工程、(b)は保護膜接合工程を示す工程説明図である。まず、準備工程としてセンサーチップ20の表面に隔壁25を形成する。隔壁25は、エポシキ系樹脂をスクリーン印刷等の手段を用いて、検出部21の周縁を囲むように幅100μm〜500μm、高さ5μm〜40μm程度の寸法範囲に形成する。この際、隔壁25の形成領域は、検出部21とボンディングワイヤ90との接続領域(図2、参照)に達しない範囲とする。
【0038】
次に、保護膜81の製造方法について図3(a)を参照して説明する。まず、フィルム80の表面に液状の絶縁膜材をスピン塗布法(スピンコートと呼称することがある)によって5μm〜30μm程度の厚さに均一に形成する。本実施形態では、絶縁膜材としてポリイミド系、またはエポキシ系の液状樹脂を用いている。
【0039】
そして、図3(b)に示すように、隔壁25の上面に保護膜81が接するように配設し、過熱・加重を加えて貼着する。貼着条件は、加熱温度50℃〜180℃、加圧力10N〜200Nで30秒〜500秒の範囲とする。この過程で絶縁膜材は乾燥して固化し、隔壁25と接合される。その後、フィルム80を剥離すると保護膜81だけが隔壁25に接合された状態となり、保護膜81とセンサーチップ20の表面との間には空間29が構成される。
【0040】
なお、以上説明した工程は、複数のセンサーチップ20がウエハーに配列された状態で行われる。従って、フィルム80の剥離工程後に、周知のフォトリソグラフィ技術を用いて隔壁25の外周縁より僅かに大きい範囲の余分な部分を除去する。但し、ウエハーに配列された隣り合う隔壁25の間隔が1mm以下の場合、隔壁25の外周縁より大きい範囲の保護膜81の余分な部分は、フィルム80の剥離工程でフィルム80側に残る場合がある。この場合には、上述のフォトリソグラフィ工程は不要となる。続いて、ウエハーをダイシングにより切断して個片化してセンサーチップ20に保護膜81が接合されたセンサーチップユニット28が形成される。
【0041】
続いて、化学センサー10の形成方法について図面を参照して説明する。
図4は、化学センサーの形成方法の主要な工程を示す断面図である。(a)はセンサーユニット接合工程、(b)は封止剤の充填工程、(c)は表面処理工程、(d)は保護膜除去工程、(c)はモールド工程を示す工程説明図である。
【0042】
まず、図4(a)に示すように、配線40が形成された基枠30にセンサーチップユニット28をエポキシ系接着樹脂からなる接着剤50により固着する。固着条件は概ね150℃、硬化時間2時間とする。続いて、センサーチップ20の電極パッドと配線40とをボンディングワイヤ90によって接続する。
【0043】
次に、(b)に示すように、センサーチップユニット28と基枠30との間、及びセンサーチップユニット28と配線40との接続部を封止剤で充填し封止部55を形成する。具体的には、センサーチップ20の外周部と基枠30との隙間から隔壁25の周縁にわたる範囲に封止剤を充填し、接続部ではボンディングワイヤ90を封止剤にて覆う。封止剤としてはエポキシ系樹脂を用いて、概ね加熱温度150℃、加熱時間2時間で固化させ封止部55を形成する。この際、封止部55が保護膜81の上面にまで達しない範囲に管理する。
【0044】
次に、(c)に示すように表面処理を行う。ここで、表面処理とは、後工程の外枠60をモールド成形する際に、外枠60と、上述した工程によって形成された部材表面の界面との密着性を向上させるための密着性改質処理である。よって、この表面処理は、基枠30と、封止部55と、保護膜81の表面全体にわたって行われる。
なお、表面処理としては、ウェットブラスト処理、常圧プラズマ処理、紫外線照射処理等を採用することができる。
【0045】
ウェットブラスト処理は、固体微粒子を水に撹拌して混合状態にしたもの(スラリーと呼称することがある)を圧縮空気の力を使って高速に噴射することで、被噴射対象物の表面改質を行うものである。
【0046】
また、常圧プラズマ処理は、処理対象物に常圧(大気圧)プラズマを照射することによって、処理対象物の表面に酸素を含んだカルボニル基(C=O)、カルボキシル基(O−C=O)の結合を増加させることにより、被噴射対象物の表面改質を行うものである。
【0047】
また、紫外線照射処理は、エポキシ系樹脂等の有機化合物にその分子結合よりも高いエネルギーを有する紫外線を与えることにより、C−H結合がきれ、そこに酸素原子が反応すると、カルボニル基(C=O)、カルボキシル基(O−C=O)などの官能基を形成することにより被噴射対象物の表面改質を行うものである。
これらの表面改質により、表面改質を行わない場合に対して接合対象物の接着強度を数倍に高めることが確認されている。
【0048】
続いて、(d)に示すように保護膜81を除去する。保護膜81の除去は、粘着テープ等を用いて剥離する方法、ウエットエッチングによる化学的溶解、ドライエッチングによる物理的除去により行い、検出部21を露出させる。
【0049】
次に、(e)に示すように、モールド成形法により外枠60を形成する。外枠60は、検出部21を露出させる開口部61を有し、配線40の一部を除く基枠30の表面、隔壁25の上面の一部、及び封止部55の表面を覆うように成形する。
【0050】
外枠60の材質としては、モールド成形が可能な絶縁性を有するものを前提条件として、pH0〜pH14の範囲における耐酸性または耐アルカリ性を有すること、生体内の測定を行う場合には生体適合性(細胞毒性、皮膚感作性がないこと)を有するものを選択する。また、検査対象液の温度が100℃程度の場合があるので、それ以上の耐熱性を有することが望ましい。これらの条件を共に満たす材料としては、エポシキ系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフタルアミド樹脂(PPA)、フッ素樹脂(PTFE)等がある。これらの材質を用いることで、−20℃〜+125℃程度の広い温度範囲での測定を可能にするという効果もある。
【0051】
なお、このようにして製造された化学センサー10は、図1、図2に示すように、嵌着部62に外部制御回路(図示せず)に接続されているコネクター70を装着して使用される。
【0052】
よって、前述した実施形態1の化学センサー、及び製造方法によれば、検出部21を露出する開口部61を除いた表面を外枠60で覆うことにより、化学的・物理的耐久性に優れた化学センサー10を実現できる。
【0053】
また、隔壁25の外周部と外枠60との間、及び配線40とセンサーチップ20との接続部を封止剤で充填及び被覆するとで、センサーチップ20の外周部と接続部の構造的補強と、水分の浸入に対する補強ができる。
【0054】
また、検出部21の周縁部を囲む隔壁25を形成することで、封止剤(封止部55)が検出部21の表面にまで広がることがなく、検出感度の劣化を防止できる。
【0055】
また、外枠60が、耐酸性または耐アルカリ性、または及び生体適合性を有する材料により形成されているため、広範囲の種類の液中イオン濃度の測定が可能となる。
【0056】
また、センサーチップ20が、ISFETを含んで構成されている。ISFETは、イオン感応膜として、絶縁体であるSiO、Si、Al、Taなどの膜材質を変えることで特定のイオンだけの量を測定し、そこから液中のイオン濃度(pH)を測定できる。そして、上述した構成にすることにより、信頼性の高い化学センサー10を実現できる。
【0057】
また、基枠30の表面及び封止部55の表面と外枠60との界面に、相互の密着性を向上させる表面改質処理を施すことにより、互いの密着性を高めることが可能で、界面からの液体の侵入を防止でき、液体の侵入に起因する化学的・物理的な耐久品質を高めると共に、測定の信頼性を高めることができる。
【0058】
また、外枠60を形成する工程の前まで検出部21の上部に保護膜81を設けることにより、製造過程において検出部21の損傷や汚れを防止することができる。
【0059】
さらに、外枠60のモールド成形の際、検出部21を開口するためのモールド型部分は、隔壁25に当接し、検出部21に当たることがないため、モールド成形時における検出部21の損傷を防止できるという効果もある。
(製造方法の他の実施例)
【0060】
次に、化学センサー10の他の製造方法について説明する。この製造方法は、前述した製造方法に対して保護膜81の除去工程の工順が異なることに特徴を有している。
図5は、本実施例の外枠形成の工程を示す断面図である。外枠60は、保護膜81が隔壁25に接合された状態で行う。従って、外枠60の開口部61は、保護膜81の外周部から離間した範囲に形成される。よって、外枠形成の金型の開口部形成部は、保護膜81の外周から封止部55に当接する位置まで突設されている。
【0061】
そして、外枠60を形成後、保護膜81を除去する。保護膜81の除去方法は、粘着テープ等を用いて剥離する方法、ウエットエッチングによる科学的溶解、ドライエッチングによる物理的除去などの除去手段を用いることができる。
【0062】
よって、このような製造方法によれば、外枠60のモールド成形工程の後に保護膜81を除去するため、モールド成形が終了するまで保護膜81が存在しているので、モールド成形工程に至るまで検出部21を保護できると共に、モールド成形の際に発生するアウトガスによる検出部21の汚れを防止できるという効果がある。
【0063】
なお、本発明の化学センサーは、各種液体のイオン濃度(pH)測定の他、食道、胃腸診断、虫歯予防診断等に応用可能である。また、ISFETを用いた化学センサーは、DNAハイブリダイゼーションに伴う表面電位の変化をゲート電圧の変化として検出できるため、従来の蛍光標識による測定に比べ、測定プロセスの簡便化が可能となる。
【符号の説明】
【0064】
10…化学センサー、20…センサーチップ、21…検出部、25…隔壁、30…基枠、31…基枠の凹部、40…41〜44を含む配線、55…封止剤、60…外枠、61…開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に配線が設けられている基枠と、
前記基枠に固着されるセンサーチップと、
前記センサーチップの検出部の周縁を囲み厚さ方向に突設される隔壁と、
前記隔壁の外周部と前記基枠との間、及び前記配線と前記センサーチップとの接続部に充填される封止部と、
前記検出部を露出させる開口部を有し、前記配線の一部を除く前記基枠の表面及び前記封止部の表面を覆う外枠と、
からなることを特徴とする化学センサー。
【請求項2】
前記外枠が、耐酸性または耐アルカリ性、または及び生体適合性を有する絶縁性材料からなることを特徴とする請求項1に記載の化学センサー。
【請求項3】
前記センサーチップが、ISFETを含むことを特徴とする請求項1に記載の化学センサー。
【請求項4】
前記基枠の表面及び前記封止部の表面の前記外枠との界面に、相互の密着性を向上させる表面処理が施されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の化学センサー。
【請求項5】
センサーチップの検出部の表面に空間を形成する保護膜を有するセンサーユニットを形成する工程と、
前記センサーユニットを基枠に固着する工程と、
前記センサーチップと前記基枠の表面に形成される配線とを接続する工程と、
前記センサーユニットと前記基枠との間、及び前記センサーチップと前記配線との接続部に封止剤を充填する充填工程と、
前記保護膜を除去する工程と、
前記検出部を露出させる開口部を有し、前記配線の一部を除く前記基枠の表面及び前記封止剤の表面を覆うように外枠を成形する工程と、
を含むことを特徴とする化学センサーの製造方法。
【請求項6】
前記充填工程の後に、前記基枠と前記センサーユニットと前記封止剤の前記外枠との界面に相互の密着性を向上させる表面処理工程をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の化学センサーの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−73113(P2012−73113A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218108(P2010−218108)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構課題設定型産業技術開発費助成事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(591093494)株式会社ミスズ工業 (58)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)