説明

化学プロセス

本発明は、式(I)〔式中、R1はC1−6アルキルであり;R2とR3は、独立的にC1−6アルキルであり;そしてR4はC1−6アルキルまたはベンジルであって、このときベンジルのフェニル環が、ニトロ、S(O)2(C1−4アルキル)、シアノ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C(O)(C1−4アルキル)、N(C1−6アルキル)2、CF3、またはOCF3で置換されていてもよい〕で示される化合物の製造法を提供する。前記製造法は、式(II)(式中、R2、R3、およびR4は、前記にて定義したとおりである)の化合物と適切な塩基とを反応させること、およびこのようにして形成される生成物とR1OC(O)CH2X(式中、R1は前記にて定義したとおりであり、Xは、クロロ、ブロモ、またはヨードである)とを反応させることを含み、適切な溶媒中にて−40℃〜−5℃の範囲の温度で行われる。前記製造法においては、少なくとも0.2モルの式(II)の化合物が使用される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、医薬的に活性なトリアゾロ[4,5-d]ピリミジンシクロペンタンの製造における有用な中間体であるアルコキシカルボニルメトキシシクロペンタンの製造法に関する。
化合物[1S-(1α,2α,3β(1S*,2R*),5β)]-3-[7-[2-(3,4-ジフルオロフェニル)-シクロプロピル]アミノ]-5-(プロピルチオ)-3H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-5-(2-ヒドロキシエトキシ)-シクロペンタン-1,2-ジオール(化合物A)とこれに類似した化合物がWO00/34283とWO99/05143に開示されている。これらの化合物は、P2T(現在は通常P2Y12と呼ばれている)受容体アンタゴニストとして開示されている。このようなアンタゴニストは特に、血小板の活性化、凝集、もしくは脱顆粒の阻害薬として使用することができる。
【0002】
式(I)の化合物(下記参照)は、化合物Aの製造において有用である(WO01/92263の実施例1を参照)。式(I)の化合物の製造は、WO01/92263の実施例1において開示されており、該実施例においては、プロセスは0℃にて行われている。WO01/92263の実施例1のプロセスをスケールアップし(約0.2モルより多いスケールに)、温度を0℃に保持すると、副反応が競争して起こるため、不純物の量が大幅に多くなり、試剤の必要量が増し、この結果、式(I)の化合物の収率が低下する、ということが見出されている。よりコストのかかるプロセスとなり、またプロセスの効率が低下することから、このことは明らかに問題である。このプロセスを0.2モル以上のスケールで操作すると、より低い温度を使用することで、式(I)の化合物を良好な収率で得ることができ、また望ましくない副反応の生成物を最小限に抑えることができる、ということを予想外のことに我々は見出した。
【0003】
本発明は、式(I)
【0004】
【化1】

【0005】
〔式中、R1はC1−6アルキルであり;R2とR3は、独立的にC1−6アルキルであり;そしてR4はC1−6アルキル(たとえばtert-ブチル)またはベンジルであって、このときベンジルのフェニル環が、ニトロ、S(O)2(C1−4アルキル)、シアノ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C(O)(C1−4アルキル)、N(C1−6アルキル)2、CF3、またはOCF3で置換されていてもよい〕で示される化合物の製造法を提供し、前記製造法は、式(II)
【0006】
【化2】

【0007】
(式中、R2、R3、およびR4は、上記にて定義したとおりである)の化合物と適切な塩基とを反応させること、およびこのようにして形成される生成物とR1OC(O)CH2X(式中、R1は上記にて定義したとおりであり、Xは、クロロ、ブロモ、またはヨードである)とを反応させることを含み、前記製造法は、適切な溶媒中にて−40℃〜−5℃の範囲の温度で行われ、そして前記製造法においては、少なくとも0.2モルの式(II)の化合物が使用される。
【0008】
アルキル基とアルキル部分は直鎖または分岐鎖であり、たとえば1〜6個(1〜4個等)の炭素原子を有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、またはtert-ブチルなどがある。
【0009】
1つの特定の態様においては、本発明は、R1がC1−4アルキル(たとえばエチル)である場合の製造法を提供する。
他の態様においては、本発明は、R2とR3が独立的にC1−4アルキルである(たとえば、R2とR3が共にメチルである)場合の製造法を提供する。
【0010】
本発明のさらに他の態様においては、R4がベンジル(このときベンジルのフェニル環がC1−4アルキルで置換されていてもよい)であり、たとえばR4が未置換ベンジルである。
さらに他の態様においては、本発明は、Xがブロモである場合の製造法を提供する。
【0011】
適切な塩基としては、アルカリ金属C1−6アルコキシド(たとえばカリウムtert-ブトキシド)がある。
本発明のさらに他の態様においては、適切な塩基:R1O2CCH2X:式(II)の化合物のモル比が(1〜1.3):(1〜1.3):1であり、たとえば(1.1〜1.3):(1.1〜1.3):1である(約1.2:1.2:1等)。
【0012】
適切な溶媒としては、環状エーテルや脂肪族エーテル(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、またはメチルtert-ブチルエーテル等)および芳香族溶媒(ベンゼン、トルエン、またはキシレン等)がある。溶媒は、2種以上の溶媒の混合物(たとえば、上記したエーテルと芳香族溶媒との混合物)であってもよい。さらに他の態様においては、本発明は、上記のエーテルが溶媒として使用される場合の製造法を提供する。
【0013】
本発明のさらに他の態様においては、温度は−30℃〜−10℃の範囲(たとえば−25℃〜−15℃の範囲)である。
さらに他の態様においては、本発明の製造法は、式(II)の化合物の溶液に適切な塩基の溶液を−15℃〜−25℃の温度にて加えること、次いでこの混合物にR1OC(O)CH2Xの溶液を−15℃〜−25℃の温度にて加えることを含む(適切なエーテルを溶媒として使用する)。
【0014】
式(II)の化合物は、文献(たとえばWO01/92263)に開示の方法、または前記方法に類似した方法によって製造することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。
【実施例】
【0015】
(実施例1)
本実施例では、[3aS-(3aα,4α,6α,6aα)]-[2,2-ジメチル-6-((エトキシカルボニル)メトキシ)-テトラヒドロ-4H-シクロペンタ-1,3-ジオキソル-4-イル]-カルバミン酸,フェニルメチルエステルの製造法を説明する。
【0016】
【化3】

【0017】
[3aS-(3aα,4α,6α,6aα)]-[テトラヒドロ-6-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-4H-シクロペンタ-1,3-ジオキソル-4-イル]-カルバミン酸,フェニルメチルエステル(80g,260ミリモル)を窒素雰囲気下でTHF(160ml)中に溶解して得た溶液(溶液A)を−22℃に冷却した。カリウムtert-ブトキシド(36.1g,312ミリモル)をTHF中に溶解して溶液を調製し、この溶液を、反応温度を約−20℃に保持しつつ、冷却溶液Aに30分で加えた。これにより反応混合物を得た。
【0018】
ブロモ酢酸エチル(53.2g,312ミリモル)をTHF中に溶解して得た溶液を、反応温度を約−20℃に保持しつつ、上記反応混合物に30分で加えた。得られた混合物を、−22℃で約1時間攪拌した。HPLC分析により、所望の生成物への転化率が98%であることがわかった。
【0019】
下記の表は、このプロセスに対するバリエーションを示している。
【0020】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、R1はC1−6アルキルであり;R2とR3は、独立的にC1−6アルキルであり;そしてR4はC1−6アルキルまたはベンジルであって、このときベンジルのフェニル環が、ニトロ、S(O)2(C1−4アルキル)、シアノ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C(O)(C1−4アルキル)、N(C1−6アルキル)2、CF3、またはOCF3で置換されていてもよい]
で示される化合物の製造法であって、
式(II)
【化2】

[式中、R2、R3、およびR4は、前記にて定義したとおりである]の化合物と適切な塩基とを反応させること、および
このようにして形成される生成物とR1OC(O)CH2X[式中、R1は前記にて定義したとおりであり、Xは、クロロ、ブロモ、またはヨードである]とを反応させること
を含み、
適切な溶媒中にて−40℃〜−5℃の範囲の温度で行われ、そして少なくとも0.2モルの式(II)の化合物が使用される、上記製造法。
【請求項2】
R1、R2、およびR3が、C1−4アルキルから独立的に選択される、請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
R1がエチルである、請求項1または2に記載の製造法。
【請求項4】
R2とR3がメチルである、請求項1、2、または3に記載の製造法。
【請求項5】
R4が、C1−4アルキルで置換されていてもよいベンジルである、請求項1、2、3、または4に記載の製造法。
【請求項6】
R4が未置換のベンジルである、請求項1、2、3、4、または5に記載の製造法。
【請求項7】
Xがブロモである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項8】
塩基がアルキル金属C1−6アルコキシドである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項9】
塩基がカリウムtert-ブトキシドである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項10】
適切な塩基:R1O2CCH2X:式(II)の化合物のモル比が(1〜1.3):(1〜1.3):1である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項11】
適切な塩基:R1O2CCH2X:式(II)の化合物のモル比が(1.1〜1.3):(1.1〜1.3):1である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項12】
適切な塩基:R1O2CCH2X:式(II)の化合物のモル比が1.2:1.2:1である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項13】
溶媒が、環状エーテル、脂肪族エーテル、および芳香族溶媒から選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項14】
溶媒が、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、および前記溶媒の2種以上の混合物から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項15】
溶媒がテトラヒドロフランである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項16】
温度が−30℃〜−10℃の範囲である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項17】
温度が−25℃〜−15℃の範囲である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の製造法。

【公表番号】特表2007−530651(P2007−530651A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505628(P2007−505628)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001200
【国際公開番号】WO2005/095377
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)