説明

化学分析装置及び化学分析カートリッジ

【課題】
構造が簡単なカートリッジとそれを用いた化学分析装置を提供する。
【解決手段】
化学分析装置は、モータ、モータにより回転可能な保持ディスク、保持ディスク上に配置された複数の検査カートリッジ、検査カートリッジに穿孔するための穿孔機、加温装置及び検出装置を有する。検査カートリッジは、凹部によって形成された容器及び流路を有する基板を含む、基板には、容器及び流路を覆うカバーが装着される。保持ディスクの回転によって生成される遠心力を利用して、回転軸線に対して内周側の容器から流路を経由して回転軸線に対して外周側の容器へ溶液を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心力を利用して溶液の移動、混合等を行う化学分析装置に関し、特に、取り外し可能なカートリッジを使用する化学分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2003−502656号公報には、DNAを含む試料からDNAを抽出するための装置が記載されている。この装置では、DNAを含む試料をガラスフィルタに通過させ、DNAを捕獲させる。DNAが捕獲されたガラスフィルタに、洗浄液及び溶離液を通過させてDNAのみを回収する。ガラスフィルタは回転可能な構造体に設けてあり、洗浄液や溶離液等の試薬は同じ構造体内の各試薬リザーバに保持してある。各試薬は構造体が回転することにより発生する遠心力で流動し、各試薬リザーバとガラスフィルタを結ぶ微細流路に設けたバルブを開くことにより試薬がガラスフィルタを通過する。
【0003】
特表2001−527220号公報には、複数の化学物質を含む試料から核酸等の特定の化学物質を抽出し分析する化学分析装置が記載されている。一体型カートリッジの内部には、溶解液や洗浄液や溶離液等の試薬、及び、核酸を捕獲する捕獲構成部品が設けられている。核酸を含む試料をカートリッジ内部に注入し、試料と溶離液を混合させて捕獲構成部品に通過させる。更に、捕獲構成部品に、洗浄液を通過させ、溶離液を通過させる。捕獲構成部品を通過した溶離液をPCR試薬に接触させ反応チャンバへと流す。
【0004】
【特許文献1】特表2003−502656号公報(WO 00/78455号公報)
【特許文献2】特表2001−527220号公報(WO 99/33559号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特表2003−502656号公報(WO 00/78455号公報)に記載された構造体では、多数のバルブによって試薬、DNA混合液等の流体を駆動している。バルブとして、加熱することによって溶けるワックス等を使用している。ワックスを用いる方法は流路を物理的に閉じるため、確実に液の流れを制御できる一方、抵抗体をそれぞれのバルブに対応して設け、それに対し加温する手段を設ける必要があるため、回転する構造体(ディスク)が複雑化するだけでなく、そのシーケンスを実現するための装置全体が複雑化する。
【0006】
また、DNA混合液からDNAを回収するためのフィルタを微小構造体に対し配置するが、柔軟であるフィルタを、それを支持するためのフリット材とともに回転構造体の流路内に設けられた溝(スロット)に挿入し、上面側をディスクの高さと等しくなるように切断したのち、ディスク上面にシール材を貼り付けている。
【0007】
DNA混合液がフィルタ内部を確実に流れるためにはフィルタを流路上に漏れがない様に配置する必要がある。すなわちフィルタと流路の間に隙間が存在するとDNA混合液はその隙間を流れ、フィルタ上に回収されないためDNAの回収率が低下する。上記したフィルタの充填方法では、フィルタとシール材の間に微小な隙間が生じやすく、特にフィルタが柔軟である場合は、フリット材を支持体として用いても漏れがないようにフィルタを実装してディスクを製作することは極めて困難である。また、スロットの底面とフィルタの隙間に関しても同様なことがいえる。
【0008】
また、特表2001−527220号公報(WO 99/33559号公報)記載の一体型流体操作カートリッジでは、各試薬をポンプで送液する際、各試薬チャンバと捕獲構成部品を結ぶ微細流路に設けたバルブ等を開くことによって試薬が捕獲構成部品を通過する。本構成においても、カートリッジ上にバルブを多数設けなければならず、カートリッジが複雑化する問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、構造が簡単なカートリッジとそれを用いた化学分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
化学分析装置は、モータ、モータにより回転可能な保持ディスク、保持ディスク上に配置された複数の検査カートリッジ、検査カートリッジに穿孔するための穿孔機、加温装置及び検出装置を有する。検査カートリッジは、凹部によって形成された容器及び流路を有する基板を含む、基板には、容器及び流路を覆うカバーが装着される。保持ディスクの回転によって生成される遠心力を利用して、回転軸線に対して内周側の容器から流路を経由して回転軸線に対して外周側の容器へ溶液を移動させる。
【0011】
内周側の容器から外周側の容器へ溶液を移動させる流路は、内周側の容器の外周側端から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、外周側の容器の内周側端にて終わる。検査カートリッジには、空気流路及びフィルタ部が設けられ、該フィルタ部を覆うカバーを穿孔することによって容器は空気流路及びフィルタ部を介して大気圧に接続される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、構造が簡単なカートリッジとそれを用いた化学分析装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明による化学分析装置の例を示す図である。化学分析装置1は、モータ11、モータ11により回転可能な保持ディスク12、保持ディスク12上に配置された複数の検査カートリッジ2、検査カートリッジ2に穿孔するための穿孔機13、加温装置14及び検出装置15を有する。操作者は検査項目ごとに検査カートリッジ2を用意し、保持ディスク12に装着し、化学分析装置1を起動させる。
【0014】
本例の化学分析装置では、加温装置14と検出装置15はそれぞれ別の場所に設けられているが例えば両者を一体化し、加温と検出を同一の位置で行ってもよい。また、加温装置、及び、検出装置は、保持ディスク12の上面に位置されているが、どちらか一方又は両方を保持ディスク12の下面に配置してもよい。
【0015】
図2は検査カートリッジ2の斜視図である。検査カートリッジ2は略6角形の薄い基板からなる。6角形の短辺が保持ディスクの回転中心の内周側に配置され、6角形の長辺が外周側に配置される。従って、以下に、6角形の短辺側を内周側、6角形の長辺側を外周と称する。
【0016】
検査カートリッジ2には、溶解液容器220、追加液容器230、洗浄液容器240、250、260、溶離液容器270、及び、増幅液容器280、290が形成されている。これらの試薬容器には予め所定量の試薬が分注されている。
【0017】
これらの試薬容器220、230、240、250、260、270、280、290の外周側には、出口流路221、231、241、251、261、271、281、291が設けられている。出口流路には、試薬容器の外周端から始まり内周側に折り返した後に外周側に延びる折り返し部が形成されている。
【0018】
試薬容器220、230、240、250、260、270、280、290の内周側には、空気流路222、232、242、252、262、272、282、292が設けられ、さらにその先に流路拡大部223、233、243、253、263、273、283、293が設けられている。流路拡大部の先には、空気フィルタ226、236、246、256、266、276、286、296が設けられている。
【0019】
検査カートリッジ2には、更に、試料容器310、血球貯蔵容器311、血清定量容器312、溶離液回収容器390、血清反応容器420、核酸捕捉部前容器430、核酸捕捉部700、バッファー容器800、及び、廃液容器900が設けられている。
【0020】
これらの容器310、311、312、390、420、430、800、900の内周側にも、同様に、空気流路、流路拡大部、及び、空気フィルタが設けられているが、詳細は後に説明する。
【0021】
これらの容器、出口流路、空気流路、及び、流路拡大部は、検査カートリッジ2の上面に形成された凹部である。出口流路及び空気流路の深さは、容器の深さより小さい。
【0022】
検査カートリッジ2の上面には、フィルム又は薄板等で構成されるカートリッジカバー199がカートリッジ上面の全体を覆うように、接着又は接合されている。従って、容器、出口流路、空気流路、及び、流路拡大部は、密閉空間を形成している。
【0023】
本例では、遠心力を利用して、流路によって互いに接続されている2つの容器間にて試薬又は溶液を移動させる。先ず、2つの容器にそれぞれ接続された空気フィルタを覆うカートリッジカバー199を穿孔し、2つの容器を大気圧に開放する。次に、保持ディスク12を回転させることにより、容器内の試薬又は溶液は、遠心力の作用によって、内周側の容器から外周側の容器に移動する。このような操作を順次繰り返すことにより、所定の処理を実行することができる。
【0024】
試薬容器220、230、240、250、260、270、280、290、出口流路221、231、241、251、261、271、281、291及び空気流路222、232、242、252、262、272、282、292は、上述のように、カートリッジカバー199によって密閉されているから、穿孔しない限り、そこに空気が流入することはない。しかしながら、これらの試薬容器、出口流路、及び、空気流路には、カートリッジカバーを装着したときに封入された微量の空気が存在する。遠心力が作用すると、各試薬は試薬容器の外周側に移動し、出口流路内に押し込まれるが、試薬容器内に初期に封入された微量の空気が膨張し、試薬容器内に負圧が生成される。この負圧が遠心力と釣り合って試薬は試薬容器より流出することができない。
【0025】
回転数が増加し遠心力が大きくなると、試薬容器内の圧力は更に低下し、試薬の飽和蒸気圧以下になると気泡が発生する。それによって、負圧が減少し、遠心力との釣り合いが破れる。しかしながら、本例では、各試薬容器の出口流路221、231、241、251、261、271、281、291に、内周側に戻る折り返し部が設けられているから、遠心力が大きくなっても、試薬容器内の負圧の減少を抑制し、試薬が出口流路から流出することが防止される。
【0026】
尚、図1に示す化学分析装置1のように、検出装置15が保持ディスク12の上側に設けられている場合には、カートリッジカバー199の材質は、検出を妨げない材質である必要がある。検出装置15が保持ディスク12の下側に設けられている場合には、検査カートリッジの底面の形状、厚さ及び、材質は、検出を妨げないものとする必要がある。
【0027】
以下検査カートリッジ2を用いて、全血を試料として用いた場合のウイルス核酸の抽出処理を行う場合を説明する。
【0028】
図3は化学分析装置の動作の概略を示す。図4は各動作の内容を示す。ステップS1にて、カートリッジカバー199を穿孔し、試料容器310及び血球貯蔵容器311を大気圧に接続する。ステップS2にて、保持ディスク12を回転させる。それによって、ステップS100にて、全血の血清を血球より分離する。ステップS100の血清分離は、図4に示すように、2つの工程を含む。ステップS101の全血流動では、試料容器310の全血は血清定量容器312及び血球貯蔵容器311に移動する。ステップS102の血清分離では、血球は血清定量容器312から血球貯蔵容器311に移動する。ステップS3にて、保持ディスク12の回転を停止する。
【0029】
ステップS4にて、カートリッジカバー199を穿孔し、溶解液容器220及び血清反応容器420を大気圧に接続する。ステップS5にて、保持ディスク12を回転させる。それによって、ステップS200にて、血清と溶解液は血清反応容器420にて混合する。ステップS200の混合は、図4に示すように4つの工程を含む。ステップS201の溶解液流動では、溶解液容器220の溶解液は血清反応容器420に移動する。ステップS202の血清流動では、血清定量容器312の血清は血清反応容器420に移動する。ステップS203の血清及び溶解液混合では、血清と溶解液は混合する。ステップS204にて、血清と溶解液は反応する。ステップS6にて、保持ディスク12の回転を停止する。
【0030】
ステップS7にて、カートリッジカバー199を穿孔し、追加液容器230、溶離液回収容器390及び廃液容器900を大気圧に接続する。ステップS8にて、保持ディスク12を回転させる。それによって、ステップS300にて、核酸捕捉がなされる。ステップS300の核酸捕捉は、図4に示すように4つの工程を含む。ステップS301の追加液流動では、追加液容器230の追加液は血清反応容器420に移動する。ステップS302の混合液流動では、血清反応容器420の混合液は、追加液によって押し出され核酸捕捉部700に移動する。ステップS303の核酸捕捉部通過では、混合液は核酸捕捉部を通過する。ステップS304にて、核酸捕捉部を通過した混合液は溶離液回収容器390を経由して廃液容器900に移動する。ステップS9にて、保持ディスク12の回転を停止する。
【0031】
次に、洗浄工程を説明する。洗浄工程は、第1、第2、及び第3洗浄工程を含む。これらの洗浄工程毎に、ステップS10〜ステップS12及びステップS400の動作を繰り返す。先ず、第1洗浄工程を説明する。ステップS10にて、カートリッジカバー199を穿孔し、第1洗浄液容器240及び核酸捕捉部前容器430を大気圧に接続する。ステップS11にて、保持ディスク12を回転させる。それによって、ステップS400にて、洗浄がなされる。ステップS400の洗浄は、図4に示すように3つの工程を含む。ステップS401の洗浄液流動では、第1洗浄液容器240の洗浄液は核酸捕捉部前容器430を経由して核酸捕捉部700に移動する。ステップS402にて、第1洗浄液容器240の洗浄液は核酸捕捉部前容器430及び核酸捕捉部700を洗浄する。ステップS403にて、核酸捕捉部700を通過した洗浄液は溶離液回収容器390を経由して廃液容器900に移動する。ステップS12にて、保持ディスク12の回転を停止する。
【0032】
第2洗浄工程を説明する。ステップS10にて、カートリッジカバー199を穿孔し、第2洗浄液容器250を大気圧に接続する。ステップS11にて、保持ディスク12を回転させる。それによって、ステップS400にて、洗浄がなされる。以下は、第1洗浄工程と同様である。ステップS12にて、保持ディスク12の回転を停止する。
【0033】
次に、第3洗浄工程を説明する。ステップS10にて、カートリッジカバー199を穿孔し、第3洗浄液容器260及びバッファー容器800を大気圧に接続する。ステップS11にて、保持ディスク12を回転させる。それによって、ステップS400にて、洗浄がなされる。ステップS401の洗浄液流動では、第3洗浄液容器260の洗浄液はバッファー容器800を経由して核酸捕捉部700に移動する。ステップS402にて、第3洗浄液容器260の洗浄液は核酸捕捉部700を洗浄する。ステップS403にて、核酸捕捉部700を通過した洗浄液は溶離液回収容器390を経由して廃液容器900に移動する。ステップS12にて、保持ディスク12の回転を停止する。
【0034】
ステップS13にて、カートリッジカバー199を穿孔し、溶離液容器270を大気圧に接続する。ステップS14にて、保持ディスク12を回転させる。それによって、ステップS500にて、溶離がなされる。ステップS500の溶離は、図4に示すように3つの工程を含む。ステップS501の溶離液流動では、溶離液容器270の溶離液は核酸捕捉部前容器430を経由して核酸捕捉部700に移動する。ステップS502にて、溶離液は核酸捕捉部700を通過し、核酸を溶離する。ステップS503にて、核酸を溶離した溶離液は、溶離液回収容器390に保持される。ステップS15にて、保持ディスク12の回転を停止する。
【0035】
ステップS16にて、カートリッジカバー199を穿孔し、第1増幅液容器290及び第2増幅液容器280を順次、大気圧に接続する。ステップS17にて、保持ディスク12を回転させる。それによって、ステップS600にて、増幅がなされる。ステップS600の増幅は、図4に示すように2つの工程を含む。ステップS601の増幅液流動では、第1増幅液容器290の増幅液はバッファー容器800を経由して溶離液回収容器390に移動する。第2増幅液容器280の増幅液はバッファー容器800を経由して溶離液回収容器390に移動する。ステップS602にて、溶離液回収容器390内の核酸は増幅液によって増幅される。溶離液回収容器390はこのとき加温される。ステップS18にて、保持ディスク12の回転を停止する。
【0036】
ステップS19にて、検出を行う。溶離液回収容器390内の核酸を検出装置によって検出する。以下に、化学分析装置の動作の詳細を説明する。
【0037】
先ず、ステップS100の血清分離処理について説明する。図5に示すように、検査カートリッジ2の溶解液容器220、追加液容器230、洗浄液容器240、250、260、溶離液容器270、及び、増幅液容器280、290には、夫々、溶解液227、追加液237、第1洗浄液247、第2洗浄液257、第3洗浄液267、溶離液277、第1増幅液297、第2増幅液287が、予め、所定量分注されている。
【0038】
図6に示すように、操作者は、検査カートリッジ2の試料注入口301を覆うカートリッジカバー199を穿孔し、真空採血管等で採血した全血501を試料注入口301より試料容器310に注入する。次に、試料注入口301にキャップ92を装填する。キャップ92により、試料注入口は塞がれるため、以後試料が検査カートリッジ2より漏れ出ることはない。
【0039】
こうして全血を注入した検査カートリッジ2を図1の保持ディスク12に必要な数だけ装着し、化学分析装置1を稼動させれば、全血からウイルスの遺伝子が抽出され、最終的に遺伝子が検出される。
【0040】
図7は、全血を注入しキャップをはめた後のカートリッジを示す。試料容器310の内周側には、試料容器空気流路392、拡大部313、及び、空気フィルタ316が設けられている。血球貯蔵容器311と血清定量容器312は互いに接続されている。血球貯蔵容器311の内周側には、血球貯蔵容器空気流路332、流路拡大部333、及び、空気フィルタ336が接続されている。これらの空気フィルタ316、336の上側のカートリッジカバーを穿孔機13によって穿孔する。これにより試料容器310は、試料容器空気流路392、拡大部313、及び、空気フィルタ316を介して、大気圧に接続される。血球貯蔵容器311及び血清定量容器312は、血球貯蔵容器空気流路332、流路拡大部333、及び、空気フィルタ336を介して、大気圧に接続される。
【0041】
試料容器310の場合、空気フィルタ316のさらに先に穿孔用空間319が設けられている。従って、空気フィルタ316の上側ではなく穿孔用空間319の上側にて、穿孔してもよい。この場合も、試料容器310は、試料容器空気流路392、拡大部313、及び、空気フィルタ316を介して大気圧に接続される。
【0042】
モータ11を駆動し、保持ディスク12を回転させる。試料容器310に注入された全血501は、遠心力の作用で外周側に流動し、血球貯蔵容器311及び、血清定量容器312に移動する。
【0043】
図8に示すように、試料容器310に投入した全血試料の量は、血球貯蔵容器311、及び、血清定量容器312をちょうど満たす量でなければならない。遠心力が作用しているときの全血試料の液面レベルは、保持ディスク12の回転中心99を中心とする同心円601の円周上に位置する。この時、血清定量容器312に設けられた血清定量容器出口流路318の折り返し位置は液面レベル601より内周側に設定されている。すなわち、出口流路318の折返し位置の外周側に接する円弧611は、液面レベル601より内周側に位置している。従って、遠心力が作用しているとき、全血試料は、血清定量容器312から出口流路318の折り返し位置を越えて外周側に流れることがなく、血球貯蔵容器311、及び血清定量容器312内に保持される。
【0044】
図9に示すように、さらに保持ディスク12を回転させると、全血501は血球と血清に分離し、血球502は外周側の血球貯蔵容器311へ移動し、血清定量容器312内は血清503だけになる。
【0045】
試料容器310の全血501が血球貯蔵容器311及び、血清定量容器312に移動すると、血球貯蔵容器311、及び、血清定量容器312から追い出された空気は、血球貯蔵容器空気流路332、流路拡大部333、及び、空気フィルタ336を通って穿孔穴から排出される。
【0046】
先ず、空気フィルタ336の機能を説明する。遠心力の作用によって試料溶液が流動するときに、ミスト状の微小液滴が発生したと仮定する。試料のミストは、空気とともに空気流路332を通って排出されるが、空気フィルタ336によって捕捉される。従って、試料がミストとして外部に飛散することを防止することができる。
【0047】
流路拡大部333の機能を説明する。試料の濡れ性が大きい場合は、図10に示すように、回転を停止させると、血清の液面は空気流路332を毛細管現象によって移動し、流路拡大部333との境界部に達する。ところが、流路拡大部333では、毛細管力は変化し、液面の移動は液の表面張力によって妨げられる。従って、血清の液面は、流路拡大部との境界部に達するが、そこで停止する。
【0048】
流路拡大部333を設けることによって、空気フィルタ336が試料の液と直接的に接することが阻止され、空気フィルタが試料の液によって汚染又は目詰まりすることが阻止される。従って、空気フィルタ336は、常に、穿孔部から液が飛散することを防止することができる。
【0049】
また、全血の移動に伴って、空気フィルタ316、拡大部313、及び試料容器空気流路392を介して、外部からの空気が試料容器310に流入する。外部からの空気に含まれる塵等は空気フィルタ316によって捕捉される。本例の検査カートリッジでは、同様な空気流路、流路拡大部、及び空気フィルタを、各試薬容器、血清反応容器420、廃液容器900、バッファー容器800、核酸捕捉部前容器430等の空気の流入出がある場所に対して全て設けており、それぞれ同様の効果が得られる。
【0050】
空気フィルタは、例えば、微細な繊維が絡み合った、ろ過に用いるようなフィルタだけでなく、ミストを捕捉する機能を果たすものであれば特に限定されない。例えば、セラミック等を焼結させ微細な細孔を形成させたもの、又は、粒状活性炭を充填しミストを吸着させる等でもよい。
【0051】
また、空気フィルタとして、ミストが捕捉されるような多数の微細な凹凸、又は複数の微細な流路を検査カートリッジ2上に直接形成してもよい。この場合はフィルタを充填する必要がなくなるためさらに好適である。また、これらのフィルタ構造を組み合わせてもよい。
【0052】
また、流路拡大部333の代わりに、流路拡大部の位置に疎水性処理を施しても同様の効果が得られる。すなわち図30に示すように、流路拡大部333の代わりに、空気流路332と空気フィルタ336を接続する流路のうち空気フィルタ336に近接した領域339に、疎水性処理を施す。液面が疎水性領域339に達すると、液の接触角の変化によって毛細管力が変化し、液面の移動が妨げられる。従って、試料の液面は、疎水性領域339に達するが、そこで停止する。空気フィルタ336が試料の液と直接的に接することが阻止され、空気フィルタが試料の液によって汚染又は目詰まりすることが阻止される。従って、空気フィルタ336は、常に、穿孔部から液が飛散することを防止することができる。
【0053】
所定の時間回転させ血清遠心分離動作が終了すると保持ディスク12の回転を停止させる。図9は、全血501が血球と血清に分離し、血球502は外周側の血球貯蔵容器311へ移動し、血清503は内周側の血清定量容器312に残った状態を示す。図10に示すように、血清定量容器312と血球貯蔵容器311の間に堰314が設けられており、血球貯蔵容器311内の血球502が血清定量容器312内に戻ることはできない。
【0054】
次に、ステップS200の混合処理を説明する。溶解液容器220には血清中のウイルスや細菌の膜を溶解するための溶解液227が分注されている。溶解液227は、血清中のウイルスや細菌の膜であるタンパク質を溶解して核酸を溶出させる働きをするが、さらに核酸捕捉部700への核酸の吸着を促進させる。このような試薬としては、DNAの溶出及び吸着には塩酸グアニジンを、RNAの溶出及び吸着にはグアニジンチオシアネートがある。
【0055】
溶解液容器220には、空気流路222、流路拡大部223、及び、空気フィルタ226が設けられている。血清反応容器420には、血清反応容器空気流路422、流路拡大部423、空気フィルタ426が設けられている。これらの空気フィルタ226、426の上側のカートリッジカバー199を穿孔機13によって穿孔する。それによって、溶解液容器220及び血清反応容器420は大気圧に接続される。
【0056】
モータ11を駆動し、保持ディスク12を回転させる。図11に示すように、溶解液容器220内の溶解液227は、遠心力の作用で外周側に流動し、折り返し部を有する溶解液容器出口流路221より、血清反応容器420に移動する。溶解液容器出口流路221は、合流部419にて、血清定量容器312からの出口流路318と合流する。従って、溶解液227が溶解液容器220から溶解液容器出口流路221を介して血清反応容器420へ流れると、血清定量容器出口流路318内に存在する空気を巻き込みながら空気とともに流れるため、血清定量容器出口流路318の内圧は低下する。
【0057】
図12に示すように、血清定量容器出口流路318内の血清の液面は、折返し部分を越える。血清の液面が、血清定量容器出口流路318の折返し部分を越え、血清定量容器312内の血清の液面より外周側に達すると、図13に示すように、血清はサイホン効果で自律的に流れる。血清定量容器312からの血清は、合流部419にて、溶解液容器220からの溶解液227と合流し血清反応容器420へ流れ続ける。血清反応容器420では、血清と溶解液227が混合される。
【0058】
図14に示すように、保持ディスク12を回転し続けると、溶解液容器220内の溶解液227は、微量の残液を除き全て血清反応容器420へ移動する。血清定量容器312内の血清の液面レベルは、血清定量容器出口流路318が血清定量容器312に接続する位置、即ち、血清定量容器312の出口602と同一レベルになる。
【0059】
本例によると、合流部419にて、溶解液容器220からの溶解液容器出口流路221と血清定量容器312からの血清定量容器出口流路318は接続されている。溶解液容器出口流路221に溶解液227を流すことによって、血清定量容器出口流路318内の空気を取り込み、血清定量容器出口流路318からの血清の流れを引き起こすことができる。従って、複雑な弁機構を設けることなく、血清と溶解液227を血清反応容器420にて混合させることができる。
【0060】
溶解液容器出口流路221から流出する溶解液227の量を増加させることにより、血清定量容器出口流路318から流出する血清の量を増加させることができる。溶解液容器出口流路221から流出する溶解液227の量は、少なくとも、血清定量容器出口流路318からの血清の流れを引き起こすことができるために十分である必要がある。溶解液容器出口流路221から流出する溶解液227の量が少ないと、血清定量容器出口流路318からの血清の流れを引き起こすことができないまま、溶解液227の流出が完了する可能性がある。
【0061】
溶解液容器出口流路221の断面積に比較して、血清定量容器出口流路318の断面積は小さいことが望ましい。それによって、溶解液227の流出によって血清定量容器出口流路318から吸引する空気の体積が小さくなり、血清定量容器出口流路318からの血清の流れをより確実に引き起こすことができる。
【0062】
また、合流部419から血清反応容器420までの距離は長い方が、血清定量容器出口流路318からの血清の流れをより確実に引き起こすことができる。合流部419から血清反応容器420の入口までの流路の圧力を考えると、血清反応容器420の入口ではほぼ大気圧となり流路を遡るに従って圧力は低下する。合流部419から血清反応容器420までの距離が長くなるとそれに応じて、合流部419における圧力は低くなる。従って、血清定量容器出口流路318からの血清の流れをより確実に引き起こすことができる。
【0063】
好ましくは、溶解液容器220の最外周位置603から合流部419までの半径方向の距離より合流部419から血清反応容器420の入口までの距離を長くする。それにより、血清定量容器出口流路318からの血清の流れをより確実に引き起こすことができる。
【0064】
また、合流部419から血清反応容器420の入口までの流路断面積は、合流する前の溶解液容器出口流路221と血清定量容器出口流路318のうち断面積の大きい方と等しいか、又は、それより小さいことが望ましい。合流前後の流路の断面積をこのように設定することにより、血清反応容器420の入口から空気が逆流することを防止することができ、安定的な流れを生成することができる。
【0065】
また、図14に示すように、合流部419から血清反応容器420の入口までの流路と血清定量容器出口流路318のなす角度をθ1、合流部419から血清反応容器420の入口までの流路と溶解液容器出口流路221なす角度をθ2とすると、θ1=180度、又は、θ1≧θ2であることが望ましい。血清定量容器出口流路318からの血清の流れを引き起こすための溶解液の流れが、血清の流れに対して傾斜して合流するほうが、血清定量容器出口流路318内の空気を取り込み、血清定量容器出口流路318からの血清の流れをより確実に引き起こすことができる。
【0066】
溶解液227と血清の混合を促進するためには、両者が同時に流れている時間を長くすればよい。即ち、全ての溶解液227が流出するのに要する時間と全ての血清が流出するのに要する時間が同一であればよい。溶解液227と血清の量が同一の場合には、両者の流量が同一になるように制御すればよい。溶解液227と血清の量が異なる場合には、多いほうの流量を大きくし、又は、少ないほうの流量を小さくすることにより、2つの液が全て流出する時間が同一となる。
【0067】
溶解液227の量が血清の容量より多い場合、以下に説明するように、溶解液容器220の最外周の位置603を血清定量容器312の出口の位置602に等しく、又は、それより内周側に設けることによって、両者が同時に流れる時間が長くなる。
【0068】
両者の液が同時に流れている場合において、遠心力が小さいと、液面レベルがより高い(より内周側にある)溶解液227は、多量に流れるため、両者の液面レベルの低下速度は略同一となる。従って、この場合、溶解液容器220の最外周の位置603を血清定量容器312の出口の位置602に等しくすることにより、2つの容器220、312からの液の流動を同時に終わらせることができる。その結果、2つの容器220、312から液が同時に流れる時間が最大化され、液の混合を促進することができる。
【0069】
遠心力が大きいと、流路抵抗の影響が大きくなり、液面レベルがより高い(より内周側にある)溶解液227の液面レベルの低下速度は遅くなる。従って、この場合、溶解液容器220の最外周の位置603を血清定量容器312の出口の位置602より内周側に設けることによって、2つの容器220、312から液が同時に流れる時間が最大化され、液の混合を促進することができる。
【0070】
逆に、溶解液227の量が血清の容量より少ない場合、血清定量容器出口流路318の流路幅を狭くする、流路深さを浅くする、又は、経路を長くする等の手段によって流路抵抗を相対的に大きくする。それにより、容量がより少ない溶解液227の流量が少なくなくなり、溶解液227が全て流れるまでに要する時間が長くなる。従って、その結果両者が同時に流れる時間を長くなり、液の混合を促進することができる。
【0071】
また、血清の濡れ性が非常に高い場合は、回転を停止すると、血清反応容器420内の血清は、毛細管現象によって血清定量容器出口流路318内を逆方向に移動することがある。この場合においても同様の手順で溶解液を流動化させることによって、両者は同時に血清反応容器に流れる。すなわち本例によると、液の濡れ性によらず、二つの液を同時に流動化させることができる。
【0072】
血清定量容器312の容積、血清定量容器出口流路318の断面積及び長さ、及び、血清定量容器出口流路318の位置を適正に設計すれば、全血に対する血清の比率が試料ごとに異なっても、分析に必要な血清を定量することができる。例えば、血球貯蔵容器311の容積が300マイクロリットルであり、必要な血清量が200マイクロリットルの場合を想定する。全血試料を500マイクロリットル分注すれば、分離した血清のうち200マイクロリットルが血清反応容器420へ流出する。即ち、本例の検査カートリッジによると、500マイクロリットルの全血試料より、200マイクロリットルの血清を得ることができる。血清の比率が小さい試料の場合には、血球貯蔵容器311の容積を大きくすればよい。
【0073】
血清反応容器420では、混合した血清と溶解液が反応する。血清反応容器420の出口には、折り返し部を有する反応液流路421が接続されている。血清反応容器420の液面レベルは、図14に示すように、反応液流路421の折り返し部の最内周部604よりも外周側にある。従って、遠心力が作用しているとき、血清反応容器420内の混合液は、反応液流路421の折り返し部を越えることができず、血清反応容器420に保持される。
【0074】
所定の時間回転させ、血清と溶解液の混合処理が終了するとモータ11を停止し、保持ディスク12の回転を停止させる。
【0075】
次に、スタップS300の核酸捕捉処理を説明する。図15に示すように、追加液容器230には、空気流路232、流路拡大部233、及び、空気フィルタ236が設けられている。穿孔機13によって空気フィルタ236の上側のカートリッジカバー199を穿孔する。それによって、追加液容器230は大気圧に接続される。
【0076】
核酸捕捉部前容器430には、核酸捕捉部前容器空気流路432、流路拡大部433、及び、空気フィルタ436が設けられている。穿孔機13によって、空気フィルタ436の上側のカートリッジカバー199を穿孔する。溶離液回収容器390には、バッファー流路492、流路拡大部493、空気フィルタ496、及び、穿孔用空間499が設けられている。穿孔機13によって、穿孔用空間499の上側のカートリッジカバー199を穿孔する。廃液容器900には、廃液容器空気流路902、流路拡大部903、及び、空気フィルタ906が設けられている。穿孔機13によって、空気フィルタ906の上側のカートリッジカバー199を穿孔する。それによって、核酸捕捉部前容器430、溶離液回収容器390及び廃液容器900は大気圧に接続される。
【0077】
モータ11を駆動し、保持ディスク12を回転させる。遠心力の作用により、追加液容器230内の追加液237は追加液出口流路231を経て、血清反応容器420に移動する。それによって、血清反応容器420内の混合液の液面レベルは内周方向に移動する。混合液の液面が反応液流路421の最内周部の位置604に達すると、混合液は反応液流路421の折り返し部を越えて流れ出し、核酸捕捉部前容器430の内周部を経て核酸捕捉部700へ流れ込む。追加液237は、例えば、上述の溶解液227と同一であってよい。
【0078】
尚、試料と溶解液の混合液の壁面に対する濡れ性がよい場合、遠心力が作用しないとき、毛細管現象によって反応液流路421内を混合液が逆流する場合がある。このような場合には、追加液237を必要としない。
【0079】
反応液流路421には2つの流路拡大部428、429が設けられている。これらの流路拡大部428、429は、遠心力が作用しないときに、毛細管現象によって、反応液流路421内を液が移動することを防止する。流路拡大部428、429は、後述する洗浄工程を行っている間、又は洗浄工程を行った後、血清反応容器420、及び、核酸捕捉部前容器430に微量に残留した液が流出してコンタミネーションを引き起こすことを防止する。
【0080】
空気フィルタに設けられた流路拡大部と同様に、流路拡大部に代えて、疎水性処理を施した領域を設けても同様の効果が得られる。
【0081】
図16〜図19を参照して、核酸捕捉部700の第1の例を説明する。核酸捕捉部700は検査カートリッジ2の上面に設けられた凹部450とそこに挿入されたフィルタフォルダ451からなる。
【0082】
図17に示すように、フィルタフォルダ451は、垂直壁456、上側壁457、及び、半円柱状のフィルタ保持部458を有する。フィルタ保持部458には、円形断面の孔452が形成されている。孔452の出口側には、凸部460が形成されている。孔452には、フィルタ支持体453、核酸捕捉フィルタ454、フィルタ支持体453が、順番に、挿入される。フィルタ支持体453、及び、核酸捕捉フィルタ454は、孔452内にて凸部460によって位置決めされる。核酸捕捉フィルタ454は、石英やガラスの繊維フィルタ等の核酸を核酸捕捉する部材からなる。核酸捕捉フィルタ454が、繊維又はメッシュのような軟らかい部材で構成されている場合には、図示のように、核酸捕捉フィルタ454は、フィルタ支持体453によって両側から挟み込む構造が望ましい。このような構造により、核酸捕捉フィルタ454の変形が防止される。ここでは、2枚の核酸捕捉フィルタ454が挿入されているが、検査対象の核酸が核酸捕捉するのに十分な枚数であれが何枚であってもよい。
【0083】
本例の核酸捕捉部700では、核酸捕捉部前容器430からの液が核酸捕捉フィルタ454のみを通過する。即ち、検査カートリッジ2の凹部450とフィルタフォルダ451の間を流れないようにシール構造を有する。このシール構造について説明する。
【0084】
図18に示すように、フィルタフォルダ451の垂直壁456の厚さは、フィルタフォルダの全長Lより短い。検査カートリッジの凹部450の内面には、垂直壁456に対応する溝が設けられている。
【0085】
本例の核酸捕捉部700を組み立てる場合、フィルタフォルダ451の垂直壁456又は検査カートリッジの凹部450の内面に接着剤を塗布する。図19に示すように、フィルタフォルダ451を検査カートリッジの凹部450に挿入すると、垂直壁456は、検査カートリッジ2の凹部に形成された溝に係合する。両者は、接着剤によって接着されると同時に、両者間の隙間は、接着剤によって充填される。このとき、検査カートリッジ2の上面とフィルタフォルダ451の上側壁457の上面は同一平面を形成する。
【0086】
フィルタフォルダ451の垂直壁456には、更に、孔452を囲むように溝459が形成されている。この溝459は、検査カートリッジの凹部450の垂直壁によって塞がれている。接着剤は、この溝459に保持される。こうして溝459によって保持された接着剤によって、フィルタフォルダ451の垂直壁456と検査カートリッジの凹部450は、確実に接着される。
【0087】
本例によると、フィルタフォルダ451の垂直壁456と検査カートリッジの凹部450によってシール構造を形成するから、フィルタフォルダ451の垂直壁456の寸法と検査カートリッジの凹部450の溝の寸法のみを高い精度にて形成すればよい。即ち、フィルタフォルダ451の全長の寸法Lの精度は高くなくてもよい。従って、製造管理が簡単である。
【0088】
本例の核酸捕捉部700によると、核酸捕捉フィルタ454をフィルタフォルダ451に装着し、それを検査カートリッジの凹部に装着する。従って、核酸捕捉部700の製造工程、及び、核酸捕捉フィルタ454の組み立て作業が容易となる。
【0089】
核酸捕捉フィルタ454を直接検査カートリッジに装着する場合には、検査カートリッジに、核酸捕捉フィルタ454の外形に対応した凹部を形成する必要があり、製造精度を確保するのは困難である。また、2枚の核酸捕捉フィルタ454を両側からフィルタ支持体453に挟み、それを検査カートリッジの凹部に装着する作業は煩雑となる。
【0090】
本例では、フィルタフォルダ451を使用するから、検査カートリッジに形成する凹部は、核酸捕捉フィルタ454の外形に対応した形状ではなく、フィルタフォルダ451の垂直壁456の外形に対応した形状である。従って、フィルタフォルダ451の垂直壁456の外形として任意の形状を選択することができるから、検査カートリッジに形成する凹部の形状を任意の形状にすることができる。
【0091】
核酸捕捉フィルタ454が繊維又はメッシュ等の軟らかい材料からなる場合には、核酸捕捉フィルタ454の外径は、フィルタフォルダ451の孔452の内径より僅かに大きくするとよい。核酸捕捉フィルタ454を、フィルタフォルダ451の孔452に挿入すると、核酸捕捉フィルタ454は半径方向に圧縮される。それによって、核酸捕捉フィルタ454とフィルタフォルダ451の孔452の間のシールが確保される。
【0092】
本例では、核酸捕捉フィルタ454が異なる複数のフィルタフォルダを用意しておき、検査カートリッジの用途に応じて、所望をフィルタフォルダを選択して装着することができる。従って、様々な用途に対応した検査カートリッジを容易に製造することができる。
【0093】
図31、及び、図32を参照して核酸捕捉部700の第2の例を説明する。本例の核酸捕捉部700は、検査カートリッジ2の下面に設けられた凹部450とそこに挿入されたフィルタフォルダ451からなる。フィルタフォルダ451は、下側壁295とフィルタ保持部298からなる。フィルタ保持部298には、円形断面の孔が形成されている。孔の出口側には、凸部が形成されている。孔には、フィルタ支持体453、核酸捕捉フィルタ454、フィルタ支持体453が、順番に、挿入される。
【0094】
図32に示すように、フィルタ支持体453、及び、核酸捕捉フィルタ454を有するフィルタフォルダを、検査カートリッジ2の下面に設けられた凹部450に挿入する。フィルタ保持部298の上面298Aは、検査カートリッジの上側部材の下面199Aに接着材299で接着される。下側壁295の上面295Aは、検査カートリッジの下側部の下面に接着材299で接着される。
【0095】
本例の核酸捕捉部700は以下の効果がある。フィルタフォルダを検査カートリッジの下面から挿入するから、カートリッジカバー199を検査カートリッジに装着した後に、フィルタフォルダを取り付けることができる。また、第1の例では、カートリッジカバーを検査カートリッジとフィルタフォルダの両者に接着する必要があるが、本例では、検査カートリッジのみに接着すればよいため、カートリッジカバーの接着作業が簡単となる。例えば、熱溶着によってカートリッジカバーを接着する場合、第1の例では、フィルタフォルダと検査カートリッジが同一の材料でなければ両者を同時に熱溶着することは困難であるが、本例では、フィルタフォルダの材質は自由に選べることができる。
【0096】
図33は核酸捕捉部700の第3の例を示す。核酸捕捉部700は、図31に示す第1の例と同様に、検査カートリッジ2の上面に設けられた凹部450とそこに挿入されたフィルタフォルダ451からなる。
【0097】
フィルタフォルダ451は、液溜め空間470、及び、フィルタ保持部458を有する。フィルタ保持部458には、円形断面の孔452が形成されている。孔452の出口側には、凸部460が形成されている。孔452には、フィルタ支持体453、核酸捕捉フィルタ454、フィルタ支持体453が、順番に、挿入される。
【0098】
液溜め空間470は、フィルタフォルダに流入した液を核酸捕捉フィルタ454を通過する前に保持する機能を有する。液溜め空間470は核酸捕捉部前容器430の機能を有する。従って、本例の核酸捕捉部700を使用する場合には、核酸捕捉部前容器430は不要である。液溜め空間の容積は核酸捕捉フィルタに流入する最大液量より大きい。本例の核酸捕捉部700は以下の効果がある。液溜め空間を設けることにより、フィルタフォルダと検査カートリッジとの間の隙間を流れる液漏れを防止することができる。即ち、遠心力が作用すると、液溜め空間に保持されている液は、フィルタフォルダの外部に流出することができないから、かならず核酸捕捉フィルタを通過する。
【0099】
図20を参照して核酸捕捉部前容器430の機能を説明する。血清反応容器420内の混合液は、核酸捕捉部前容器430の内周部を経由して核酸捕捉部700へ流れ込む。混合液が核酸捕捉部700を通過すると、核酸は核酸捕捉部700に設けられた核酸捕捉フィルタに吸着し、液は溶離液回収容器390へと流れ込む。核酸捕捉フィルタによって核酸を確実に核酸捕捉させるには、目開きの細かいフィルタを使用すればよい。目開きの細かいフィルタは、通水抵抗が大きいため、核酸捕捉部700に流れ込む溶解反応液の量より核酸捕捉フィルタを通過する溶解反応液の量が少なくなり、核酸捕捉フィルタの前に蓄積される。核酸捕捉部前容器430を設けないと、核酸捕捉フィルタの前に蓄積された溶解反応液は、洗浄液の出口流路に逆流し、それを汚染する。従って、核酸捕捉部700の前に核酸捕捉部前容器430を設けるのが望ましい。
【0100】
核酸捕捉部前容器430の容積は血清反応容器420の容積と同一であってよい。しかしながら、図21に示すように、核酸捕捉部前容器430の最内周位置612が血清反応容器420の最外周位置611より内周側になるように配置することによって、核酸捕捉部前容器430の容量を小さくすることが可能である。血清反応容器420内の混合液が、核酸捕捉部前容器430に蓄積されると、核酸捕捉部前容器430の液面レベルが上昇し、血清反応容器420の液面レベルと同一になる。核酸捕捉部前容器430の液面レベルと血清反応容器420の液面レベルが同一になると、血清反応容器420から核酸捕捉部前容器430に混合液がそれ以上流れなくなる。即ち、核酸捕捉フィルタの前に蓄積される混合液は、核酸捕捉部前容器430と血清反応容器420の両者によって保持されるから、核酸捕捉部前容器430の容積を血清反応容器420の容積より小さくすることができる。
【0101】
核酸捕捉部前容器430の容積を小さくすることによって、核酸捕捉部前容器430の洗浄に要する洗浄液を少なくすることができ、洗浄液の容量を低減することができる。
【0102】
図22に示すように、核酸捕捉部700を通過した廃液591は、流路拡大部822を経由して、溶離液回収容器390に流れる。溶離液回収容器390の外周端には、折り返し部を有する溶離液回収容器出口流路494が接続されている。溶離液回収容器390の容積は、廃液量に比べて十分小さいため、廃液は溶離液回収容器出口流路494の折り返し部の最内周位置615を越えて、廃液容器900へと流出する。全ての廃液が廃液容器900へ移動すると、次の洗浄工程を実行する。
【0103】
ステップS400の洗浄工程を説明する。洗浄工程は第1及び第2の洗浄工程を含む。先ず、第1洗浄工程を実行する。第1洗浄液容器240には、核酸捕捉部前容器430を洗浄し、核酸捕捉部700の核酸捕捉フィルタ254に付着した蛋白等の不要成分を洗浄する第1洗浄液が分注されている。第1洗浄液は、上述の溶解液或いは溶解液の塩濃度を低減した液であってよい。第1洗浄液の容量は、核酸捕捉部前容器430の容積より小さい。第1洗浄液容器240の外周側には、折り返し部を有する出口流路241が設けられている。図2に示したように、第1洗浄液容器240の内周側には、空気流路242、流路拡大部243、及び、空気フィルタ246が設けられている。
【0104】
モータ11を停止し、穿孔機13によって空気フィルタ246の上側のカートリッジカバー199を穿孔する。それによって、第1洗浄液容器240は大気圧に接続される。モータ11を回転させると、遠心力の作用によって、第1洗浄液は第1洗浄液容器240から第1洗浄液容器出口流路241及び核酸捕捉部前容器430を経て、核酸捕捉部700に流れ込み、核酸捕捉フィルタ254に付着した蛋白等の不要成分を洗浄する。洗浄後の廃液は、流路拡大部822、溶離液回収容器390を経て、廃液容器900へと流出する。
【0105】
次に、第2洗浄工程を実行する。第2洗浄液容器250には、核酸捕捉部前容器430及び核酸捕捉部700に付着した塩等の不要成分を洗浄する第2洗浄液が分注されている。第2洗浄液は、エタノール或いはエタノール水溶液であってよい。第2洗浄液の容量は、核酸捕捉部前容器430の容積より小さい。第2洗浄液容器250の外周側には、折り返し部を有する出口流路251が設けられている。出口流路251には流路拡大部258が設けられている。図2に示したように、第2洗浄液容器250の内周側には、空気流路252、流路拡大部253及び空気フィルタ256が設けられている。
【0106】
図24〜図26を参照して説明する。モータ11を停止し、穿孔機13によって空気フィルタ256の上側のカートリッジカバー199を穿孔する。それによって、第2洗浄液容器250は大気圧に接続される。第2洗浄液として用いるエタノール又はエタノール水溶液は、液の濡れ性が非常に高い。従って、遠心力が作用しないとき、第2洗浄液の液面は出口流路251を毛細管現象によって移動し、流路拡大部258との境界部に達する。ところが、流路拡大部258では、毛細管力は変化し、液面の移動は液の表面張力によって妨げられる。従って、図24に示すように、第2洗浄液の液面は、流路拡大部との境界部に達するが、そこで停止する。
【0107】
モータ11を回転させると、遠心力が作用し、図25に示すように、第2洗浄液容器250内の第2洗浄液の液面レベルと出口流路251内の第2洗浄液の液面レベルの間の水頭差により、第2洗浄液は流路拡大部258を越えて上昇する。
【0108】
ここでモータ11を停止すると、遠心力が作用しなくなり、図26に示すように、出口流路251内の第2洗浄液は、再度毛細管現象によって移動し、出口流路251の折り返し部に達する。再度、モータ11を回転させると、遠心力が作用し、出口流路251内の第2洗浄液は、サイホン効果によって流動し核酸捕捉部前容器430に流れ込む。モータ11を回転し続けると、第2洗浄液容器250内の第2洗浄液は、全て核酸捕捉部前容器430に流れ込む。
【0109】
第2洗浄液は、核酸捕捉部前容器430から核酸捕捉部700に流れ込み、核酸捕捉フィルタ254に付着した塩等の不要成分を洗浄する。洗浄後の廃液は、流路拡大部822及び溶離液回収容器390を経て、廃液容器900へと流出する。
【0110】
本例によると、出口流路251に流路拡大部258を設けることによって、第2洗浄液が不必要に出口流路251を満たすことを防止することができる。例えば、第2洗浄液容器250内に第2洗浄液を分注する場合に、第2洗浄液容器250の上側のカートリッジカバーに穴を開け、第2洗浄液を分注してから、その穴を塞ぐ、又は、第2洗浄液容器250に第2洗浄液を分注してから、カートリッジカバーを装着する。このような分注工程において、第2洗浄液容器250に第2洗浄液が装填されると、毛細管現象によって、第2洗浄液が出口流路251を満たし、更に、出口流路251から流出する可能性がある。しかしながら、流路拡大部258を設けることによって、第2洗浄液がそれ以上先に移動することはない。
【0111】
また出口流路251に流路拡大部258を設けることによって別の効果がある。上述のように、穿孔前に、遠心力が作用すると、第2洗浄液容器250内の第2洗浄液は、出口流路251内に押し出され、第2洗浄液の一部は、出口流路251内に入りこむ。出口流路251内に移動した第2洗浄液の体積分だけ、第2洗浄液容器250内に封入された微量の空気が膨張する。空気膨張による負圧は、遠心力に対抗して、第2洗浄液を第2洗浄液容器250内に保持する力となる。両者が釣り合っている場合には、液面レベルは安定する。しかしながら、遠心力による押し出し力のほうが大きいと、第2洗浄液は、出口流路251の折り返し部を越えて流出する可能性がある。本例では、流路拡大部が設けられているから、遠心力によって第2洗浄液容器250から押し出される第2洗浄液の体積は大きい。第2洗浄液容器250内に封入された微量の空気の膨張量もそれに応じて大きくなり、それに起因して生ずる負圧も大きくなる。従って、穿孔前において、第2洗浄液容器250内の第2洗浄液は、確実に保持される。
【0112】
尚、空気フィルタに設けられた流路拡大部と同様に、流路拡大部に代えて、疎水性処理を施した領域を設けても同様の効果が得られる。
【0113】
図23に示すように、第2洗浄液容器250の第2洗浄液の液面レベル621は、出口流路の折り返し部の最内周側の位置622より外周側に配置されている。それにより、穿孔前の遠心時において第2洗浄液が流出することをより確実に防ぐことができる。本例によると、第2洗浄液容器250内に封入された微量の空気の膨張によって生ずる負圧が不十分であっても、遠心力によって出口流路251の折り返し部分を第2洗浄液が越えることはできない。従って、穿孔前に、第2洗浄液容器250内の第2洗浄液が出口流路251より流出することはない。
【0114】
最後に再び図23を参照して、第3の洗浄工程を実行する。第3洗浄液容器260には、溶離液回収容器390に付着した塩等の成分を洗浄する第3洗浄液が分注されている。第3洗浄液は、滅菌水やpHを7から9に調整した水溶液であってよい。第3洗浄液容器260の外周側には、折り返し部を有する出口流路261が設けられている。出口流路261には流路拡大部268が設けられている。流路拡大部268の機能は、第2洗浄液容器250の出口流路251の流路拡大部258の機能と同一であり、ここでは、詳細に説明しない。図2に示したように、第3洗浄液容器260の内周側には、空気流路262、流路拡大部263、及び、空気フィルタ266が設けられている。
【0115】
バッファー容器800には、バッファー容器空気流路802、流路拡大部803、及び、空気フィルタ806が設けられている。
【0116】
モータ11を停止し、穿孔機13によって空気フィルタ266、806の上側のカートリッジカバー199を穿孔する。それによって、第3洗浄液容器260及びバッファー容器800は大気圧に接続される。モータ11を回転させると、遠心力の作用によって、第3洗浄液は、第3洗浄液容器260から第3洗浄液容器出口流路261、バッファー容器800、出口流路821、及び、流路拡大部822を経て、溶離液回収容器390に流れ込み、溶離液回収容器390に付着した塩等の成分を洗浄する。洗浄後の廃液は、廃液容器900へと流出する。
【0117】
バッファー容器800を設けることによって以下の効果がある。後述するように溶離液回収容器390には、第3洗浄液の次に、第1増幅液、及び、第2増幅液が流入するが、溶離液回収容器390に3つの流路を接続するのは好ましくない。その理由は、後述するように、多数の流路を設けると、検出の妨げとなり、又は増幅反応時に液の蒸発を抑制することができないためである。従って、第3洗浄液、第1増幅液、及び、第2増幅液の流路を合流させてから、溶離液回収容器390に接続することが考えられる。しかしながら、3つの流路を合流させると、合流部において、1つの液の流れが他の液の流れを引き起こす可能性がある。例えば、第3洗浄液を通水すると、合流部にて、第1増幅液、及び、第2増幅液の流れを引き起こす可能性がある。同様に、第1増幅液を通水すると、合流部にて、第2増幅液の流れを引き起こす可能性がある。
【0118】
本例では、バッファー容器800によって、第3洗浄液、第1増幅液、及び、第2増幅液の流路を合流させるが、バッファー容器は、空気フィルタ806を介して大気圧に接続されている。従って、第3洗浄液を通水しても、第1増幅液、及び、第2増幅液の流れを引き起こすことはない。第1増幅液を通水しても、第2増幅液の流れを引き起こすことなない。洗浄工程の次に、核酸の溶離工程を実行する。
【0119】
ステップS500の溶離工程を説明する。溶離液容器270には、核酸捕捉部700の核酸捕捉フィルタ454によって捕捉された核酸を溶離させるための溶離液が分注されている。溶離液は、水或いはpHを7から9に調整した水溶液であってよい。溶離液の容量は、バッファー容器800の容積より小さい。溶離液容器270の外周側には、折り返し部を有する出口流路271が設けられている。図2に示したように、溶離液容器270の内周側には、空気流路272、流路拡大部273、及び、空気フィルタ276が設けられている。
【0120】
モータ11を停止し、穿孔機13によって空気フィルタ276の上側のカートリッジカバー199を穿孔する。それによって、溶離液容器270は大気圧に接続される。モータ11を回転させると、遠心力の作用によって、溶離液は溶離液容器270から出口流路271、及び、核酸捕捉部前容器430を経て核酸捕捉部700に流れ込む。核酸捕捉部700にて、核酸捕捉フィルタ454によって捕捉された核酸は、溶離液によって溶離される。溶離した核酸を含む溶離液は、核酸捕捉部700から溶離液回収容器390に流れ込む。次に第1の増幅工程を実行する。
【0121】
ステップS600の増幅工程を説明する。増幅工程は第1及び第2の増幅工程を含む。第1増幅液容器290には、核酸を増幅して検出するための第1増幅液297が分注されている。第1増幅液297は、例えばデオキシヌクレオシド三リン酸及び蛍光試薬等を含む試薬であってよい。第1増幅液297の容量は、バッファー容器800の容積より小さい。第1増幅液容器290の外周側には、折り返し部を有する出口流路291が設けられている。図2に示したように、第1増幅液容器290の内周側には、空気流路292、流路拡大部293及び空気フィルタ296が設けられている。
【0122】
モータ11を停止し、穿孔機13によって空気フィルタ296の上側のカートリッジカバー199を穿孔する。それによって、第1増幅液容器290は大気圧に接続される。モータ11を回転させると、遠心力の作用によって、第1増幅液297は第1増幅液容器290から出口流路291、及び、バッファー容器800を経て、溶離液回収容器390に流れ込む。溶離液回収容器390では、第1増幅液297によって核酸が増幅する。
【0123】
第1増幅液297が全て溶離液回収容器390に流れ込むと、モータ11を停止し、溶離液回収容器390を加温装置14によって加温する。加温装置を検査カートリッジの溶離液回収容器390の位置に移動してもよいが、保持ディスクを回転させて、検査カートリッジを加温装置の位置に移動してもよい。こうして、加温装置14によって、溶離液回収容器390の温度は適温に制御される。
【0124】
次に第2の増幅工程を実行する。第2増幅液容器280には、核酸を増幅して検出するための第2増幅液287が分注されている。第2増幅液287は、増幅用の酵素を含む試薬であってよい。第2増幅液287の容量は、バッファー容器800の容積より小さい。第2増幅液容器280の外周側には、折り返し部を有する出口流路281が設けられている。図2に示したように、第2増幅液容器280の内周側には、空気流路282、流路拡大部283及び空気フィルタ286が設けられている。
【0125】
穿孔機13によって空気フィルタ286の上側のカートリッジカバー199を穿孔する。それによって、第2増幅液容器280は大気圧に接続される。モータ11を回転させると、遠心力の作用によって、第2増幅液287は、第2増幅液容器280から出口流路281、バッファー容器800、出口流路、及び、流路拡大部822を経て、溶離液回収容器390に流れ込む。溶離液回収容器390では、第2増幅液287によって核酸が増幅する。
【0126】
第2増幅液287が全て溶離液回収容器390に流れ込むと、モータ11を停止し、溶離液回収容器390を加温装置14によって加温する。こうして、加温装置14によって、溶離液回収容器390の温度は適温に制御される。
【0127】
温度制御された所定時間の間に、核酸が増幅する。最後に、ステップS700の検査を行う。即ち、検出装置15によって、溶離液回収容器390にて増幅された核酸が検出される。加温状態は、増幅及び検出に必要な時間、例えば30分ないし2時間程度維持される。
【0128】
図27は、全ての第2増幅液が溶離液回収容器390に流出した状態を示す。尚、この状態では、モータ11は回転中である。図28は、全ての第2増幅液が溶離液回収容器390に流出したのちに、モータ11を停止した状態を示す。溶離液回収容器390には溶離液、第1増幅液、及び、第2増幅液が混合した液(増幅反応液)が保持されている。
【0129】
溶離液回収容器390の構造を説明する。溶離液回収容器390は外周側の円形の凹部である検出部831と内周側の略3角形の部分を有し、両者の間には堰の機能を有する仕切り壁832が設けられている。三角形部分は、中央の三角形の部分833とそれを囲む浅い溝834からなる。従って、中央の三角形の部分833は、周囲の溝834より突出している。
【0130】
三角形部分の内周側には、溶離液回収容器空気流路825が設けられ、その先に、流路拡大部823が設けられている。流路拡大部823の先には、空気流路392が設けられ、その先に流路拡大部393が設けられている。流路拡大部の先には、空気フィルタ396が設けられている。三角形部分の内周側には、更に、溶離液回収容器溶離液流路826が設けられ、その先に流路拡大部822が設けられている。流路拡大部822は、核酸捕捉部700に接続され、且つ、出口流路821を介してバッファー容器800に接続されている。
【0131】
検出部831には、上述のように、バッファー流路492が設けられ、その先に流路拡大部493が設けられている。流路拡大部493の先には、空気フィルタ496及び穿孔用空間499が設けられている。検出部831の外周側には、折り返し部を有する出口流路494が設けられ、出口流路494には流路拡大部495が設けられている。
【0132】
図27に示すように、全ての第2増幅液が溶離液回収容器390に流出し且つモータ11が回転中であるとき、溶離液回収容器390内の液面レベル631は、仕切り壁832より僅かに内周側にあり、且つ、出口流路494の流路拡大部495より外周側にある。
【0133】
図28に示すように、モータ11を停止すると、遠心力が作用しないから、溶離液回収容器390内の溶離液は、毛細管現象によって、内周側に移動し、浅い溝834を満たし、更に、周囲部分に接続された溶離液回収容器空気流路825及び溶離液回収容器溶離液流路826を満たす。しかしながら、溶離液回収容器空気流路825の先には流路拡大部823が設けられているから、液面の移動は液の表面張力によって妨げられ、流路拡大部823との境界で停止する。同様に、溶離液回収容器溶離液流路826の先には、流路拡大部822が設けられているから、液面の移動は液の表面張力によって妨げられ、流路拡大部822との境界で停止する。
【0134】
溶離液回収容器390内の溶離液は、毛細管現象によって、出口流路494内を進むが、流路拡大部495が設けられているから、液面の移動は液の表面張力によって妨げられ、流路拡大部495との境界で停止する。
【0135】
バッファー流路492の断面積は、バッファー流路492の毛細管力が出口流路494、溶離液回収容器空気流路825及び溶離液回収容器溶離液流路826の毛細管力より小さくなるように、設定される。一般に、流路の毛細管力は次の式によって表される。
【0136】
【数1】

【0137】
ここで、hは流路の高さ、wは流路の幅、γは液の表面張力、θは液の流路壁面に対する接触角である。本例のバッファー流路492の場合、流路の幅と深さの比がほぼ1で、幅が溶離液回収容器出口流路494、溶離液回収容器空気流路825、溶離液回収容器溶離液流路826より大きく設定されている。従って、溶離液回収容器出口流路494、溶離液回収容器空気流路825、及び、溶離液回収容器溶離液流路826内に液面を進入させる毛細管力(圧力)は、バッファー流路492内に液面を進入させる毛細管力より大きい。バッファー流路492の液面は、他の流路の液面の移動に従属的に応答し、最終的に、溶離液回収容器390側に戻る。これによって、溶離液回収容器出口流路494、溶離液回収容器空気流路825、及び、溶離液回収容器溶離液流路826にて、液面が毛細管力によってスムーズに移動し、増幅反応液で満たされる。
【0138】
バッファー流路492を設けない場合、溶離液回収容器出口流路494、溶離液回収容器空気流路825、及び、溶離液回収容器溶離液流路826にて、液面が毛細管力によって移動しようとしても、それぞれが液を引っ張りあうために、液の移動がスムーズに達成されないおそれがある。
【0139】
また、増幅反応時に溶離液回収容器390を加温すると、その内部に滞留した空気が膨張する。この場合、バッファー流路492の液面が移動することによって体積の変化が吸収され、他の流路の液面は移動しない。
【0140】
また、バッファー流路を設ける代わりに、溶離液回収容器出口流路494の毛細管力が溶離液回収容器空気流路825、及び、溶離液回収容器溶離液流路826の毛細管力より小さくなるように、構成してもよい。この場合、溶離液回収容器出口流路494がバッファー流路492の機能を提供する。即ち、溶離液回収容器出口流路494の液面が戻ることによって、他流路の液面の移動が達成される。
【0141】
本例では、溶離液回収容器390によって、溶離液、第1増幅液及び第2増幅液(増幅反応液)の総量を収容することができ、且つ、モータ11が回転中に、溶離液回収容器390の液面レベル631は、図27に示すように、仕切り壁832よりも内周側にあり、溶離液回収容器出口流路494の流路拡大部495より内周側にある。また、モータ11が停止すると、溶離液回収容器390の液面レベルは、図28に示すように、内周側の浅い溝834に移動する。このような構成によって、以下の効果がある。
【0142】
溶離液回収容器出口流路494に流路拡大部495が設けられているから、モータ11が停止したとき、毛細管現象によって溶離液回収容器出口流路494内の液が折返し部を越えて進むことが阻止される。従って、再度、モータ11を回転させたとき、液が溶離液回収容器出口流路494から廃液容器900に流出することを防止することができる。従って、溶離液、第1増幅液、及び、第2増幅液を溶離液回収容器390内に確実に保持することができる。また、溶離液回収容器390内に洗浄液が流入した場合には、洗浄液の容量は、溶離液回収容器390の容積より大きいから、溶離液回収容器390内における洗浄液の液面レベルは、流路拡大部495より内周側になる。従って、遠心力による洗浄液の移動は流路拡大部495に妨げられることなく、廃液容器900に流出する。
【0143】
また、モータ11が停止したとき、毛細管現象によって、溶離液回収容器390内の液は、内周側に移動し、浅い溝834を経由して、溶離液回収容器空気流路825、及び、溶離液回収容器溶離液流路826に移動する。従って、液と空気の界面は、溶離液回収容器390内ではなく、溶離液回収容器空気流路825、及び、溶離液回収容器溶離液流路82内に生成される。内液と空気の界面の面積は、流路断面積と同程度に小さくするこができる。即ち、液の蒸発面積を大幅に低減できるため、増幅反応中に蒸発により増幅反応液量が減少することを防止することができる。
【0144】
もし、溶離液回収容器390内に液と空気の界面が生成されると、液の蒸発面積が大きくなり、増幅反応中に蒸発により増幅反応液量が減少し、場合によっては消失する。増幅反応液量が減少すると、正確な検出が困難となる。それを防止するには、穿孔した穴を塞ぐ等の蒸発を防ぐ特別の操作を行う必要がある。
【0145】
図29は、溶離液回収容器390の断面を示す。溶離液回収容器390の仕切り壁832の内周側には、空気840が滞留する。しかしがら、空気840は、仕切り壁832によって、外周側に移動することが阻止される。検出部831は、増幅反応液によって満たされ、気泡は存在しない。従って、検出部831の上面側又は下面側にから検出手段15によって検出を行えば、空気と液の界面の存在、又は界面の移動によって検出が妨げられることなく安定して増幅反応の検出が行える。
【0146】
溶離液回収容器390の浅い溝834は、毛細管現象によって、溶離液回収容器390内の液を溶離液回収容器空気流路825、及び、溶離液回収容器溶離液流路826に移動させる機能を有する。毛細管現象によって、液を溶離液回収容器空気流路825、及び、溶離液回収容器溶離液流路826に移動させることができるなら、他の構造を用いてもよい。例えば、毛細管力が強い他の形状又は他の材質を用いてもよい。浅い溝の代わりに深い溝を形成し、そこに、フィルタのような細孔を備えた別部材を設けてもよい。
【0147】
また、溶離液回収容器390の仕切り壁832は、図29に示すように、カートリッジカバーとの仕切り壁の間に隙間を持つ、上面側が開口した堰のような形状をしている。しかしながら、空気840が検出部831に移動することを阻止することができれば、どのような形状であってもよく、例えば、深さ方向に細い溝が切られた仕切り壁であってもよい。
【0148】
また、本例の検査カートリッジでは、全ての穿孔場所に空気フィルタが設けられているが、試料が流入する容器に設けられた空気流路222、232、332、422、432、392、492、902に対してのみ設けてもよい。この場合、空気フィルタが設けられていない穿孔場所から、試薬がミスト状になって飛散する恐れがある。しかしながら、最も重要な試料の飛散を防止することができ、且つ、空気フィルタを充填する場所が減るため、製作が容易になる。
【0149】
また、複数の空気流路を合流させ、その先に空気フィルタを設けてもよい。それによって、空気フィルタを充填する場所が減少し、製作が容易になる。
【0150】
上述のように、本発明の例によると、中心を通る回転軸線周りに回転可能な保持ディスクと、該保持ディスクに保持された取り外しが可能な検査カートリッジと、を有し、上記検査カートリッジは、凹部によって形成された容器及び流路を有する基板と、該容器及び流路を覆うカバーと、を有し、上記保持ディスクの回転によって生成される遠心力を利用して、上記回転軸線に対して内周側の容器から上記流路を経由して上記回転軸線に対して外周側の容器へ溶液を移動させるように構成された化学分析装置において、上記基板には、空気流路と該空気流路を介して上記容器に接続されたフィルタ部が設けられ、上記カバーを穿孔することによって上記容器は上記空気流路及び上記フィルタ部を介して大気圧に接続される。
【0151】
上記空気流路には、毛細管力を減少させる手段が設けられている。上記毛細管力を減少させる手段は、流路の断面が大きくなる流路拡大部である。上記毛細管力を減少させる手段は、流路に疎水性処理を施した領域である。上記空気流路は、上記容器の内周側端から内周方向に延びている。
【0152】
本発明の例によると、中心を通る回転軸線周りに回転可能な保持ディスクと、該保持ディスクに保持された取り外しが可能な検査カートリッジと、を有し、上記検査カートリッジは、凹部によって形成された容器及び流路を有する基板と、該容器及び流路を覆うカバーと、を有し、上記保持ディスクの回転によって生成される遠心力を利用して、上記回転軸線に対して内周側の容器から上記流路を経由して上記回転軸線に対して外周側の容器へ溶液を移動させるように構成された化学分析装置において、上記内周側の容器から上記外周側の容器へ溶液を移動させる流路は、上記内周側の容器の外周側端から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、上記外周側の容器に接続されている。
【0153】
上記検査カートリッジに形成された容器は、試料を収容する試料容器と、第1の部分と該第1の部分より外周側にある第2の部分を有し上記試料容器に接続された試料保持容器と、を有し、遠心力を利用して、上記試料に含まれる比重が小さい部分を上記第1の部分に収容し、上記試料に含まれる比重が大きい部分を上記第2の部分に収容する。
【0154】
上記検査カートリッジに形成された容器は、試料を保持する試料保持容器と試薬を収容する試薬容器と上記試料に上記試薬を反応させるための反応容器と、を有し、上記試料保持容器と上記反応容器を接続する試料保持容器出口流路は上記試料保持容器から始まり内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して上記反応容器の内周側端にて終わり、上記試薬容器と上記反応容器を接続する試薬容器出口流路は上記試薬容器から始まり内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して上記反応容器に接続され、上記試料保持容器出口流路と上記試薬容器出口流路は上記折り返し部と上記反応容器の間の合流部にて合流するように接続され、上記試薬容器内の試薬を遠心力を利用して上記反応容器に移動させると、上記試薬の流れによって上記試料保持容器出口流路内の試料が引き込まれ上記試料保持容器から上記反応容器への流れを生じさせ、上記試料保持容器内の試料と上記試薬容器内の試薬を遠心力を利用して上記反応容器に移動させるとき、上記試料保持容器内の試料の液面の位置は、上記試料保持容器出口流路の折り返し部の最内周側の位置より外周側に配置される。
【0155】
上記試料保持容器出口流路から上記反応容器に流れる試料の流量は、上記試薬容器出口流路から上記反応容器に流れる試薬の流量より少ない。
【0156】
上記試料保持容器出口流路の流路抵抗は上記試薬容器出口流路の流路抵抗より大きい。上記試料保持容器出口流路の断面積は上記試薬容器出口流路の断面積より小さい。上記試料保持容器出口流路の折り返し部の最外周側の位置は、上記試薬容器出口流路の折り返し部の最外周側の位置より、内周側に配置されている。上記合流部から上記反応容器の入口までの半径方向の距離は上記試薬容器の最外周位置から上記合流部までの半径方向の距離より長い。上記合流部から上記反応容器の入口までの流路の断面積は、上記試料保持容器出口流路と上記試薬容器出口流路の流路の断面積のうち断面積の大きい方と等しいか又は、それより小さい。上記合流部から上記反応容器の入口までの流路と上記試料保持容器出口流路のなす角は、上記合流部から上記反応容器の入口までの流路と上記試薬容器出口流路のなす角より大きい。
【0157】
本発明の例によると、中心を通る回転軸線周りに回転可能な保持ディスクと、該保持ディスクに保持された取り外しが可能な検査カートリッジと、を有し、上記検査カートリッジは、凹部によって形成された容器及び流路を有する基板と、該容器及び流路を覆うカバーと、を有し、上記保持ディスクの回転によって生成される遠心力を利用して、上記回転軸線に対して内周側の容器から上記流路を経由して上記回転軸線に対して外周側の容器へ溶液を移動させるように構成された化学分析装置において、上記内周側の容器から上記外周側の容器へ溶液を移動させる流路は、上記内周側の容器の外周側端から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、上記外周側の容器に接続され、上記基板には、上記試料に含まれる核酸を捕捉するための核酸捕捉部が設けられ、該核酸捕捉部は上記基板に装着された別部材として形成されたフィルタフォルダを有し、該フィルタフォルダには上記試料に含まれる核酸を捕捉する核酸捕捉フィルタが装着されている。
【0158】
上記フィルタフォルダは、上記基板の面のうち上記カバーが装着された側の面に装着され、上記フィルタフォルダの外面は上記カバーが装着された基板の面と同一平面を形成している。上記フィルタフォルダは、上記フィルタフォルダの全長よりも短い厚さの壁部を有し、該壁部は上記核酸捕捉フィルタの通水方向の上流側に配置されている。上記フィルタフォルダは、上記基板の面のうち上記カバーが装着された側の面と反対側に装着されている。上記フィルタフォルダは、上記核酸捕捉フィルタの通水方向の上流側に、上記核酸捕捉フィルタを一回の操作で通過する最大液量より大きな体積を有する液溜め部を備えている。上記検査カートリッジに形成された容器は、更に、核酸捕捉部前容器を備え、該核酸捕捉部前容器の最内周位置は上記反応容器の最外周位置より内周側にある。
【0159】
本発明によると、中心を通る回転軸線周りに回転可能な保持ディスクと、該保持ディスクに保持された取り外しが可能な検査カートリッジと、を有し、上記検査カートリッジは、凹部によって形成された容器及び流路を有する基板と、該容器及び流路を覆うカバーと、を有し、上記保持ディスクの回転によって生成される遠心力を利用して、上記回転軸線に対して内周側の容器から上記流路を経由して上記回転軸線に対して外周側の容器へ溶液を移動させるように構成された化学分析装置において、上記内周側の容器から上記外周側の容器へ溶液を移動させる流路は、上記内周側の容器の外周側端から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、上記外周側の容器に接続され、上記基板には、試料を保持する試料保持容器と、試薬を収容する試薬容器と、上記試料に上記試薬を反応させるための反応容器と、上記試料に含まれる核酸を捕捉するための核酸捕捉部と、該核酸捕捉部からの核酸を含む溶液を収容する検出領域を有する検出容器と、上記検出容器から排出された溶液を回収する回収容器と、が設けられている。
【0160】
上記基板には、上記核酸捕捉部によって捕捉された核酸を溶離させるための溶離液を収容する溶離液容器と該溶離液容器と上記核酸捕捉部を接続する溶離液容器出口流路が設けられ、遠心力を利用して、上記溶離液を上記溶離液容器から上記溶離液容器出口流路を経由して上記核酸捕捉部に移動させ、更に、該溶離液によって溶離した核酸を上記検出容器に導く。
【0161】
上記基板には、試薬を収容する試薬容器と該試薬容器に接続された試薬容器出口流路と該試薬容器出口流路からの試薬を上記検出容器に導くバッファー容器とが設けられ、遠心力を利用して、上記試薬を上記試薬容器から上記試薬容器出口流路を経由して上記バッファー容器に移動させ、更に、該試薬を上記検出容器に導く。
【0162】
上記検出容器は、内周側の第1の部分と外周側の第2の部分からなり、上記第1の部分と第2の部分の間には堰の機能を有する仕切り壁が設けられ、上記保持ディスクの回転を停止したとき、上記第1の部分に生成された気泡は上記仕切り壁によって上記第2の部分に移動することが阻止されるように構成されている。
【0163】
上記基板には、上記検出容器の第2の部分に接続されたバッファー流路が設けられ、該バッファー流路を覆うカバーを穿孔することによって上記検出容器の第2の部分は大気圧に接続される。
【0164】
上記第1の部分には、毛細管力が大きい毛細管力増大領域が設けられ、該毛細管力増大領域は、上記検出容器の上記第1の部分に接続された空気の排出を行う空気流路又は上記核酸捕捉部を通過した液又は試薬を導くための合流流路に接続され、それによって、上記保持ディスクの回転が停止したとき、上記検出容器の第1の部分の液面は上記検出容器に接続された空気流路と上記第1の部分の境界部と上記合流流路と上記第1の部分の境界部に配置される。
【0165】
上記毛細管力増大領域は、上記検出容器の第2の部分の深さに比較して浅い領域で構成されている。
【0166】
上記検出容器の第1の部分に接続された空気流路又は上記合流流路は、それぞれ、毛細管力を減少させる手段が設けられている。上記毛細管力を減少させる手段は、流路の断面が大きくなる流路拡大部である。上記毛細管力を減少させる手段は、流路に疎水性処理を施した領域である。
【0167】
上記検出容器の第1の部分に接続された空気流路と上記合流流路は、上記検出容器の第1の部分の内周側端から内周方向に延びている。
【0168】
上記流路は、上記検出容器の外周側端から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、上記回収容器の内周側端にて終わり、内周側の上記検出容器から外周側の上記回収容器へ溶液を移動させる流路を含み、該流路の上記検出容器の外周側端と上記折り返し部の間には毛細管力を減少させる手段が設けられている。
【0169】
上記毛細管力を減少させる手段は、流路の断面が大きくなる流路拡大部である。上記毛細管力を減少させる手段は、流路に疎水性処理を施した領域である。
【0170】
更に、上記検出容器内の溶液を加温するための加温装置と上記検出容器内の溶液より所定の物質を検出するための検出装置とを有する。
【0171】
本発明によると、凹部によって形成された容器及び流路を有する基板と、該容器及び流路を覆うカバーと、を有し、上記基板に垂直な回転軸線周りの回転によって生成される遠心力を利用して、上記回転軸線に対して内周側の容器から上記流路を経由して上記回転軸線に対して外周側の容器へ溶液を移動させるように構成された化学分析カートリッジにおいて、
上記基板には、空気流路が設けられ、該空気流路を覆うカバーを穿孔することによって上記容器は上記空気流路を介して大気圧に接続されるように構成されている。
【0172】
上記内周側の容器から上記外周側の容器へ溶液を移動させる流路は、上記内周側の容器の外周側端から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、上記外周側の容器の内周側端にて終わる。
【0173】
上記基板には、試料を保持する試料保持容器と、試薬を収容する試薬容器と、上記試料に上記試薬を反応させるための反応容器と、上記試料に含まれる核酸を捕捉するための核酸捕捉部と、上記核酸捕捉部によって捕捉された核酸を溶離させるための溶離液を収容する溶離液容器と、該核酸捕捉部からの核酸を含む溶離液を収容する検出領域を有する検出容器と、該検出容器に洗浄液を供給するバッファー容器と、上記検出容器からの排出された溶液を回収する回収容器と、が設けられている。
【0174】
上記核酸捕捉部は上記基板に形成された係合部と該係合部に装着された別部材として形成されたフィルタフォルダを有し、該フィルタフォルダには上記試料に含まれる核酸を捕捉する核酸捕捉フィルタが装着されている。
【0175】
上記空気流路を介して上記容器に接続されたフィルタ部が設けられ、上記カバーを穿孔することによって上記容器は上記空気流路及び上記フィルタ部を介して大気圧に接続されるように構成されている。上記折り返し部の内周方向に向かう部分に流路の断面積が大きくなる流路拡大部が設けられている。
【0176】
上記折り返し部の内周方向に向かう部分に毛細管力を減少させる手段が設けられている。上記毛細管力を減少させる手段は、流路に疎水性領域を施した領域である。
【0177】
以上、本発明の例を説明したが、本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明による化学分析装置の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明による検査カートリッジの外観を示す斜視図である。
【図3】本発明による化学分析装置を用いて全血からウイルス核酸の抽出処理を行う場合の操作手順を説明するための説明図である。
【図4】本発明による化学分析装置を用いて全血からウイルス核酸の抽出処理を行う場合の手順の詳細を説明するための説明図である。
【図5】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図6】本発明による検査カートリッジの試料容器を含む部分の詳細を示す図である。
【図7】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図8】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図9】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図10】本発明による検査カートリッジの試料容器、血清定量容器及び血球貯蔵容器を含む部分の詳細を示す図である。
【図11】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図12】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図13】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図14】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図15】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図16】本発明による検査カートリッジの核酸捕捉部の構成図である。
【図17】本発明による検査カートリッジの核酸捕捉部のフィルタフォルダの構成図である。
【図18】本発明による検査カートリッジの核酸捕捉部のフィルタフォルダの構成図である。
【図19】本発明による検査カートリッジの核酸捕捉部の他の例の構成図である。
【図20】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図21】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図22】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図23】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図24】本発明による検査カートリッジの第2洗浄液容器の動作を説明するための説明図である。
【図25】本発明による検査カートリッジの第2洗浄液容器の動作を説明するための説明図である。
【図26】本発明による検査カートリッジの第2洗浄液容器の動作を説明するための説明図である。
【図27】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図28】本発明による検査カートリッジの溶離液回収容器の動作を説明するための説明図である。
【図29】本発明による検査カートリッジの溶離液回収容器の断面構成を示す図である。
【図30】本発明による検査カートリッジの試料容器、血清定量容器及び血球貯蔵容器を含む部分の詳細を示す図である。
【図31】本発明による検査カートリッジの核酸捕捉部の構成図である。
【図32】本発明による検査カートリッジの核酸捕捉部のフィルタフォルダの構成図である。
【図33】本発明による検査カートリッジの核酸捕捉部のフィルタフォルダの構成図である。
【符号の説明】
【0179】
1…化学分析装置、2…検査カートリッジ、11…モータ、12…保持ディスク、13…穿孔機、14…加温装置、15…検出装置、199…カートリッジカバー、220…溶解液容器、230…追加液容器、240、250、260…洗浄液容器、270…溶離液容器、280、290…増幅液容器、310…試料容器、311…血球貯蔵容器、312…血清定量容器、390…溶離液回収容器、420…血清反応容器、430…核酸捕捉部前容器、700…核酸捕捉部、800…バッファー容器、900…廃液容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心を通る回転軸線周りに回転可能な保持ディスクと、該保持ディスクに保持された取り外しが可能な検査カートリッジと、を有し、上記検査カートリッジは、凹部によって形成された容器及び流路を有する基板と、該容器及び流路を覆うカバーと、を有し、上記保持ディスクの回転によって生成される遠心力を利用して、上記回転軸線に対して内周側の容器から上記流路を経由して上記回転軸線に対して外周側の容器へ溶液を移動させるように構成された化学分析装置において、
上記基板には、空気流路と該空気流路を介して上記容器に接続されたフィルタ部が設けられ、上記カバーを穿孔することによって上記容器は上記空気流路及び上記フィルタ部を介して大気圧に接続されるように構成されていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項2】
中心を通る回転軸線周りに回転可能な保持ディスクと、該保持ディスクに保持された取り外しが可能な検査カートリッジと、を有し、上記検査カートリッジは、凹部によって形成された容器及び流路を有する基板と、該容器及び流路を覆うカバーと、を有し、上記保持ディスクの回転によって生成される遠心力を利用して、上記回転軸線に対して内周側の容器から上記流路を経由して上記回転軸線に対して外周側の容器へ溶液を移動させるように構成された化学分析装置において、
上記内周側の容器から上記外周側の容器へ溶液を移動させる流路は、上記内周側の容器の外周側端から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、上記外周側の容器に接続されていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の化学分析装置おいて、上記検査カートリッジに形成された容器は、試料を収容する試料容器と、第1の部分と該第1の部分より外周側にある第2の部分を有し上記試料容器に接続された試料保持容器と、を有し、遠心力を利用して、上記試料に含まれる比重が小さい部分を上記第1の部分に収容し、上記試料に含まれる比重が大きい部分を上記第2の部分に収容することを特徴とする化学分析装置。
【請求項4】
請求項2に記載の化学分析装置おいて、上記検査カートリッジに形成された容器は、試料を保持する試料保持容器と試薬を収容する試薬容器と上記試料に上記試薬を反応させるための反応容器と、を有し、上記試料保持容器と上記反応容器を接続する試料保持容器出口流路は上記試料保持容器から始まり内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して上記反応容器の内周側端にて終わり、上記試薬容器と上記反応容器を接続する試薬容器出口流路は上記試薬容器から始まり内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して上記反応容器に接続され、
上記試料保持容器出口流路と上記試薬容器出口流路は上記折り返し部と上記反応容器の間の合流部にて合流するように接続され、上記試薬容器内の試薬を遠心力を利用して上記反応容器に移動させると、上記試薬の流れによって上記試料保持容器出口流路内の試料が引き込まれ上記試料保持容器から上記反応容器への流れを生じさせ、
上記試料保持容器内の試料と上記試薬容器内の試薬を遠心力を利用して上記反応容器に移動させるとき、上記試料保持容器内の試料の液面の位置は、上記試料保持容器出口流路の折り返し部の最内周側の位置より外周側に配置されることを特徴とする化学分析装置。
【請求項5】
中心を通る回転軸線周りに回転可能な保持ディスクと、該保持ディスクに保持された取り外しが可能な検査カートリッジと、を有し、上記検査カートリッジは、凹部によって形成された容器及び流路を有する基板と、該容器及び流路を覆うカバーと、を有し、上記保持ディスクの回転によって生成される遠心力を利用して、上記回転軸線に対して内周側の容器から上記流路を経由して上記回転軸線に対して外周側の容器へ溶液を移動させるように構成された化学分析装置において、
上記内周側の容器から上記外周側の容器へ溶液を移動させる流路は、上記内周側の容器の外周側端から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、上記外周側の容器に接続され、
上記基板には、上記試料に含まれる核酸を捕捉するための核酸捕捉部が設けられ、該核酸捕捉部は上記基板に装着された別部材として形成されたフィルタフォルダを有し、該フィルタフォルダには上記試料に含まれる核酸を捕捉する核酸捕捉フィルタが装着されていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項6】
請求項5に記載の化学分析装置おいて、上記フィルタフォルダは、上記フィルタフォルダの全長よりも短い厚さの壁部を有し、該壁部は上記核酸捕捉フィルタの通水方向の上流側に配置されていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項7】
中心を通る回転軸線周りに回転可能な保持ディスクと、該保持ディスクに保持された取り外しが可能な検査カートリッジと、を有し、上記検査カートリッジは、凹部によって形成された容器及び流路を有する基板と、該容器及び流路を覆うカバーと、を有し、上記保持ディスクの回転によって生成される遠心力を利用して、上記回転軸線に対して内周側の容器から上記流路を経由して上記回転軸線に対して外周側の容器へ溶液を移動させるように構成された化学分析装置において、
上記内周側の容器から上記外周側の容器へ溶液を移動させる流路は、上記内周側の容器の外周側端から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、上記外周側の容器に接続され、
上記基板には、試料を保持する試料保持容器と、試薬を収容する試薬容器と、上記試料に上記試薬を反応させるための反応容器と、上記試料に含まれる核酸を捕捉するための核酸捕捉部と、該核酸捕捉部からの核酸を含む溶液を収容する検出領域を有する検出容器と、上記検出容器から排出された溶液を回収する回収容器と、が設けられていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項8】
請求項7に記載の化学分析装置おいて、上記検出容器は、内周側の第1の部分と外周側の第2の部分からなり、上記第1の部分と第2の部分の間には堰の機能を有する仕切り壁が設けられ、上記保持ディスクの回転を停止したとき、上記第1の部分に生成された気泡は上記仕切り壁によって上記第2の部分に移動することが阻止されるように構成されていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項9】
請求項8に記載の化学分析装置おいて、上記基板には、上記検出容器の第2の部分に接続されたバッファー流路が設けられ、該バッファー流路を覆うカバーを穿孔することによって上記検出容器の第2の部分は大気圧に接続されることを特徴とするとする化学分析装置。
【請求項10】
凹部によって形成された容器及び流路を有する基板と、該容器及び流路を覆うカバーと、を有し、上記基板に垂直な回転軸線周りの回転によって生成される遠心力を利用して、上記回転軸線に対して内周側の容器から上記流路を経由して上記回転軸線に対して外周側の容器へ溶液を移動させるように構成された化学分析カートリッジにおいて、
上記基板には、空気流路が設けられ、該空気流路を覆うカバーを穿孔することによって上記容器は上記空気流路を介して大気圧に接続されるように構成されていることを特徴とする化学分析用カートリッジ。
【請求項11】
請求項10記載の化学分析カートリッジにおいて、上記基板には、試料を保持する試料保持容器と、試薬を収容する試薬容器と、上記試料に上記試薬を反応させるための反応容器と、上記試料に含まれる核酸を捕捉するための核酸捕捉部と、上記核酸捕捉部によって捕捉された核酸を溶離させるための溶離液を収容する溶離液容器と、該核酸捕捉部からの核酸を含む溶離液を収容する検出領域を有する検出容器と、該検出容器に洗浄液を供給するバッファー容器と、上記検出容器からの排出された溶液を回収する回収容器と、が設けられていることを特徴とする化学分析カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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