説明

化学蓄熱装置

【課題】外部熱を蓄熱する化学蓄熱装置において、放熱時に外部熱が存在しなくても、外部熱よりも高温の熱を出力可能とする。
【解決手段】水酸化カルシウムを太陽熱により加熱する再生用熱交換器15A、15Bと、酸化カルシウムとを収容する反応器11A、11Bと、水を収容する容器12A、12Bと、容器12A、12Bに収容された水を反応器11A、11Bへ導くとともに、開閉弁(14A、14B)を有する接続通路13A、13Bとを有する2段の蓄熱ユニット1A、1Bと、各段の蓄熱ユニット1A、1Bの反応器11A、11Bで水酸化カルシウムを分離させた際に生じる気体状態の水を凝縮させる凝縮器3とを備え、2段目の蓄熱ユニット1Bの反応器11Bを熱機関6と熱的に接続し、1段目の蓄熱ユニット1Aの反応器11Aを2段目の蓄熱ユニット1Bの容器12Bと熱的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質の反応熱を利用して熱を取り出し、また熱分解して蓄熱する化学蓄熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱機器からの排熱を回収する熱回収装置として、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1の従来技術では、熱機器から排出される高温の排ガスにて第1化学蓄熱装置の反応材を加熱し被反応材を放出させ、反応材加熱後のガスをさらに熱交換器にて熱回収した後、第2化学蓄熱装置の被反応材を加熱して気化させ、第2の化学蓄熱装置の反応材と反応させている。また、出力の取り出しは、第1化学蓄熱装置の被反応材を収容した容器内に水を通し、さらに、第2化学蓄熱装置の反応材を収容した容器を通すことで高温蒸気を発生させることにより行う。
【0003】
これによると、需要に応じて適宜出力を取り出すことができる。さらに、熱機器の排ガス温度よりも高温の蒸気を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平8−6608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、需要に応じて適宜出力を取り出すためには、熱機関から得られる排熱(外部熱)が常に一定量以上存在している必要がある。このため、熱機関から得られる熱量が時間経過とともに低下するような熱量変動を伴うシステムに上記従来技術を適用した場合、第1化学蓄熱装置の反応材は、熱量不足のため被反応材を放出できない虞がある。したがって、上記従来技術を、熱量変動を伴う熱機器の排熱を利用するシステム適用すると、熱回収作動が成立しないという問題がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、外部熱を蓄熱する化学蓄熱装置において、放熱時に外部熱が存在しなくても、外部熱よりも高温の熱を出力可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、化合物を外部熱により加熱する再生用熱交換器(15A、15B)と、第1反応物(A)とを収容する反応器(11A、11B)と、第2反応物(B)を収容する容器(12A、12B)と、容器(12A、12B)に収容された第2反応物(B)を反応器(11A、11B)へ導くとともに、開閉手段(14A、14B)を有する接続通路(13A、13B)とを有するM段(Mは2以上の整数)の蓄熱ユニット(1A、1B)と、各段の蓄熱ユニット(1A、1B)の反応器(11A、11B)で化合物を分離させた際に生じる気体状態の第2反応物(B)を凝縮させる凝縮手段(3)とを備え、M段目の蓄熱ユニット(1B)の反応器(11B)は、加熱対象物(6)と熱的に接続されており、(N−1)段目(Nは2以上M以下の整数)の蓄熱ユニット(1A)の反応器(11A)は、N段目の蓄熱ユニット(1B)の容器(12B)と熱的に接続されていることを特徴としている。
【0008】
これによれば、1段目の蓄熱ユニット(1A)の容器(12A)で加熱された第2反応物(B)が接続通路(13A)を介して反応器(11A)へ流入する。そして、流入した第2反応物(B)は、1段目の蓄熱ユニット(1A)の反応器(11A)で第1反応物(A)と反応して化合物を生成し、その際に反応熱が発生する。
【0009】
このとき、(N−1)段目の蓄熱ユニット(1A)の反応器(11A)は、N段目の蓄熱ユニット(1B)の容器(12B)と熱的に接続されているため、1段目の蓄熱ユニット(1A)の反応器(11A)で発生した反応熱が2段目の蓄熱ユニット(1B)の容器(12B)に伝熱される。そして、1段目の蓄熱ユニット(1A)の反応器(11A)から伝熱された熱により、2段目の蓄熱ユニット(1B)の容器(12B)に収容された第2反応物(B)が加熱される。
【0010】
このように、(N−1)段目の蓄熱ユニット(1A)の反応器(11A)にて発生した反応熱が、N段目の蓄熱ユニット(1B)の容器(12B)に伝熱され、この熱により加熱された第2反応物がN段目の蓄熱ユニット(1B)の反応器(1B)に流入し、再度第1反応物(A)と反応して反応熱を発生させる。そして、M段目、すなわち最終段目の蓄熱ユニット(1B)の反応器(11B)が、加熱対象物(6)と熱的に接続されているので、各蓄熱ユニット(1A、1B)において昇温されて外部熱よりも高温となった熱により、加熱対象物(6)を加熱することができる。
【0011】
上述した放熱モードにおいては、放熱時に外部熱が存在しなくても、外部熱よりも高温の熱を出力することができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の化学蓄熱装置において、1段目の蓄熱ユニット(1A)の容器(12A)が、1段目の蓄熱ユニット(1A)の反応器(11A)と熱的に接続されていることを特徴としている。
【0013】
これによれば、1段目の蓄熱ユニット(1A)の反応器(11A)で発生した反応熱の一部により、1段目の蓄熱ユニット(1A)の容器(12A)に収容された第2反応物(B)を加熱することができる。したがって、第2反応物(B)を加熱するための加熱源を別途設ける必要がないため、上記した請求項1の発明の効果を簡素な構成によって得ることができる。さらに、放熱時において、外部からの加熱源を全く必要としないため、本発明の化学蓄熱装置を幅広いシステムに適用することが可能となる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の化学蓄熱装置において、1段目の蓄熱ユニット(1A)の容器(12A)が、2段目の蓄熱ユニット(1B)の容器(12B)と熱的に接続されていることを特徴としている。
【0015】
これによれば、2段目の蓄熱ユニット(1B)の容器(12B)に伝熱された熱の一部により、1段目の蓄熱ユニット(1A)の容器(12A)に収容された第2反応物(B)を加熱することができる。したがって、第2反応物(B)を加熱するための加熱源を別途設ける必要がないため、上記した請求項1の発明の効果を簡素な構成によって得ることができる。さらに、放熱時において、外部からの加熱源を全く必要としないため、本発明の化学蓄熱装置を幅広いシステムに適用することが可能となる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の化学蓄熱装置において、1段目の蓄熱ユニット(1A)の容器(12A)は、外部熱よりも低温の加熱源(4)と熱的に接続されていることを特徴としている。
【0017】
これによれば、加熱源(4)の熱により1段目の蓄熱ユニット(1A)の容器(12A)に収容された第2反応物(B)を加熱することができるので、上記した請求項1の発明の効果をより確実に得ることができる。
【0018】
また、請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の化学蓄熱装置において、凝縮手段は、気体状態の第2反応物(B)を凝縮させる際に生じる凝縮熱を蓄熱する蓄熱材(300)を有する凝縮器(3)であり、加熱源は、凝縮器(3)であることを特徴としている。
【0019】
これによれば、気体状態の第2反応物(B)を凝縮させる際に生じる凝縮熱により、1段目の蓄熱ユニット(1A)の容器(12A)に収容された第1反応物(A)を加熱することができる。したがって、凝縮器(3)に蓄熱材(300)を設けるだけという簡素な構成で、上記した請求項4の発明の効果を得ることができる。
【0020】
また、請求項6に記載の発明では、請求項4または5に記載の化学蓄熱装置において、加熱源は、外部熱を発生させる外部熱源(2)と熱的に接続されていることを特徴としている。
【0021】
これによれば、外部熱源(2)で発生した外部熱が余剰している場合は、外部熱を利用して1段目の蓄熱ユニット(1A)の容器(12A)に収容された第1反応物(A)を加熱することができる。したがって、外部熱源(2)で発生した熱を有効利用し、熱利用効率を向上させることが可能となる。
【0022】
また、請求項7に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の化学蓄熱装置において、容器(12A、12B)内の第2反応物(B)の最高到達温度Tm[K]が、第2反応物(B)の臨界温度Tc[K]未満であり、第2反応物(B)の臨界温度Tcにおける飽和蒸気圧をPe[Pa]としたとき、蓄熱ユニット(1A、1B)の耐圧Pv[Pa]は、次の数式1
(数1)
Pv>Pe
にて示される関係を満たすように設定されていることを特徴としている。
【0023】
これによれば、各蓄熱ユニット(1A、1B)の容器(12A、12B)内の第2反応物(B)の最高到達温度Tm[K]が、第2反応物(B)の臨界温度Tc[K]未満の場合には、蓄熱ユニット(1A、1B)の耐圧Pvを、当該蓄熱ユニット(1A、1B)における容器(12A、12B)内の第2反応物(B)の臨界温度Tcにおける飽和蒸気圧Pe[Pa]より高く設定すればよい。すなわち、全蓄熱ユニット(1A、1B)を一律の耐圧構造とする必要はなく、蓄熱ユニット(1A、1B)毎に耐圧Pvに応じた耐圧構造とすることができる。
【0024】
また、請求項8に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の化学蓄熱装置容器(12A、12B)内の第2反応物(B)の最高到達温度Tm[K]が、第2反応物(B)の臨界温度Tc[K]以上であり、容器(12A、12B)内の第2反応物(B)の分子量をn[mol]、容器(12A、12B)の体積をVm[m3]、圧縮因子をz、気体定数をRとしたとき、蓄熱ユニット(1A、1B)の耐圧Pv[Pa]は、次の数式2
(数2)
Pv>znRT/Vm
に示される関係を満たすように設定されていることを特徴としている。
【0025】
これによれば、各蓄熱ユニット(1A、1B)の容器(12A、12B)内の第2反応物(B)の最高到達温度Tm[K]が、第2反応物(B)の臨界温度Tc[K]以上の場合には、蓄熱ユニット(1A、1B)の耐圧Pvを、上記数式2を満たすように設定すればよい。すなわち、全蓄熱ユニット(1A、1B)を一律の耐圧構造とする必要はなく、蓄熱ユニット(1A、1B)毎に耐圧Pvに応じた耐圧構造とすることができる。
【0026】
また、請求項9に記載の発明のように、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の化学蓄熱装置において、第1反応物(A)および第2反応物(B)から化合物を生成させる反応の反応熱をΔHr[J/mol]、第2反応物(B)の蒸発潜熱をΔHe[J/mol]、(N−1)段目の蓄熱ユニット(1A)の反応器(11A)の熱容量をQr(N−1)HM[J/K]、N段目の蓄熱ユニット(1B)の反応器(11B)の熱容量をQeNHM[J/K]、第1反応物(A)および第2反応物(B)を反応させる際の(N−1)段目の蓄熱ユニット(1A)の反応器(11A)内の目標温度をTa(N−1)[K]、第1反応物(A)および第2反応物(B)を反応させる際のN段目の蓄熱ユニット(1B)の反応器(11B)内の目標温度をTaN[K]、外気温度をTair[K]、(N−1)段目の蓄熱ユニット(1A)の反応器(11A)において第1反応物(A)および第2反応物(B)を反応させることにより得られる熱量をN−1段目発生熱量Qr(N−1)[J]、N段目の蓄熱ユニット(1B)の反応器(11B)において記第1反応物(A)および第2反応物(B)を反応させることにより得られる熱量をN段目発生熱量QrN[J]としたとき、次の数式3
(数3)
Qr(N−1)・ΔHr/ΔHe<QrN<{Qr(N−1)−Qr(N−1)HM・(Ta(N−1)−Tair)−QeNHM・(TaN−Tair)}・ΔHr/ΔHe
に示される関係を満たすように、N−1段目発生熱量Qr(N−1)およびN段目発生熱量QrNが設定されていてもよい。
【0027】
また、請求項10に記載の発明のように、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の化学蓄熱装置において、加熱対象物は、作動気体を加熱膨張させる高温部(71a)および作動気体を冷却収縮させる低温部(71b)を有し熱エネルギを運動エネルギに変換する熱機関(71)の高温部(71a)であってもよい。
【0028】
また、請求項11に記載の発明では、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の化学蓄熱装置において、第1反応物(A)は、酸化カルシウムであって、第2反応物(B)は、水であることを特徴としている。これによれば、後述する図3に示すように、蓄熱ユニット(1A、1B)を2段設けるだけで、確実に外部熱よりも高温の出力を取り出すことが可能となる。
【0029】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態に係る化学蓄熱装置を示す全体構成図である。
【図2】第1実施形態における第1反応器11Aを示す分解斜視図である。
【図3】第1実施形態における放熱モード時の酸化カルシウムの吸水反応の平衡線、および水の気液平衡線を示すグラフである。
【図4】真空中にて水酸化カルシウムの温度を1時間維持した際の脱水率を示すグラフである。
【図5】第1実施形態における蓄熱モード時の水酸化カルシウムの脱水反応の平衡線、および水の気液平衡線を示すグラフである。
【図6】金属酸化物の吸水反応の平衡線、および水の気液平衡線を示すグラフである。
【図7】酸化マグネシウムの吸水反応の平衡線、および水の気液平衡線を示すグラフである。
【図8】第2実施形態に係る化学蓄熱装置を示す全体構成図である。
【図9】第3実施形態に係る化学蓄熱装置を示す全体構成図である。
【図10】第4実施形態に係る化学蓄熱装置を示す全体構成図である。
【図11】第5実施形態に係る化学蓄熱装置を示す全体構成図である。
【図12】第6実施形態に係る化学蓄熱装置を示す全体構成図である。
【図13】第7実施形態に係る化学蓄熱装置を示す全体構成図である。
【図14】第8実施形態における放熱モード時の酸化カルシウムの吸水反応の平衡線、および水の気液平衡線を示すグラフである。
【図15】第9実施形態に係る化学蓄熱装置を示す全体構成図である。
【図16】第10実施形態に係る化学蓄熱装置を示す全体構成図である。
【図17】第10実施形態に係る化学蓄熱装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0032】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1〜図7に基づいて説明する。本実施形態の化学蓄熱装置は、太陽熱を蓄熱して、所望時にこの熱を熱機関で利用するものである。
【0033】
図1は本第1実施形態に係る化学蓄熱装置を示す全体構成図である。本実施形態の化学蓄熱装置は、第1反応物Aおよび第2反応物Bを反応させて化合物を生成する際に生じる反応熱によって加熱対象物を加熱する放熱モードと、化合物を第1反応物Aおよび第2反応物Bに分離させることによって反応の系外にて発生する熱である外部熱を蓄熱する蓄熱モードと、外部熱が蓄熱された状態を維持する蓄熱維持モードとを切り替え可能に構成されている。
【0034】
ここで、本実施形態では、第1反応物Aとして酸化カルシウム(CaO)、第2反応物Bとして水を用いており、化合物は水酸化カルシウムである。また、加熱対象物は熱機関であり、外部熱は太陽熱である。
【0035】
化学蓄熱装置は、酸化カルシウムを固体状態で収容した反応器11A、11B、水を液体状態で収容した容器12A、12B、および容器12A、12Bに収容された水を反応器11A、11Bへ導く接続通路13A、13Bを有する蓄熱ユニット1A、1BをM段(Mは2以上の整数)備えている。本実施形態では、蓄熱ユニット1A、1Bは2段設けられている。
【0036】
接続通路13A、13Bには、当該接続通路13A、13Bを開閉する第1開閉弁14A、14Bがそれぞれ設けられている。この第1開閉弁14A、14Bは、接続通路13A、13Bの通路面積を調整できるように構成されている。
【0037】
また、反応器11A、11Bには、反応器11A、11B内部を太陽熱により加熱する再生用熱交換器15A、15Bがそれぞれ収容されている。
【0038】
本実施形態の化学蓄熱装置は、曲面鏡を用いて、当該曲面鏡の前に設置されたパイプに太陽光を集中させ、パイプ内を流れる第1熱媒体を加熱する外部熱源としての集光集熱装置2と、集光集熱装置2および再生用熱交換器15A、15B間に第1熱媒体を循環させる第1熱媒体回路21とを備えている。第1熱媒体回路21には、第1熱媒体を循環させるための第1熱媒体ポンプ22が配置されている。
【0039】
このため、集光集熱装置2において太陽光(太陽熱)により加熱された第1熱媒体が、再生用熱交換器15A、15Bに供給され、この第1熱媒体により反応器11A、11B内部が加熱されるようになっている。
【0040】
また、容器12A、12Bに収容された水を、接続通路13A、13Bを介して反応器11A、11Bへ導くことで、反応器11A、11Bでは、酸化カルシウムおよび水が反応し、水酸化カルシウムが生成される。この反応は発熱反応であるため、反応熱が生じる。一方、反応器11A、11B内に生じた水酸化カルシウムを、再生用熱交換器15A、15Bにより加熱することで、水酸化カルシウムは、固体状態の酸化カルシウムと、気体状態の水(水蒸気)とに分離される。
【0041】
化学蓄熱装置は、水酸化カルシウムを分離させた際に生じる水蒸気を凝縮させる凝縮手段としての凝縮器3を備えている。この凝縮器3は、水蒸気と外気との間で熱交換を行い、水蒸気を凝縮させる熱交換器である。
【0042】
凝縮器3の入口側には、反応器11A、11Bから流出した水蒸気を凝縮器3へ導く凝縮器入口通路31A、31Bの一端が接続されている。凝縮器入口通路31A、31Bの他端は、接続通路13A、13Bにおける第1開閉弁14A、14Bより反応器11A、11B側の部位に接続されている。
【0043】
凝縮器入口通路31A、31Bには、当該凝縮器入口通路31A、31Bを開閉する第2開閉弁32A、32Bがそれぞれ設けられている。この第2開閉弁32A、32Bは、凝縮器入口通路31A、31Bの通路面積を調整できるように構成されている。
【0044】
凝縮器3の出口側には、凝縮器3で凝縮された水を容器12A、12Bへ導く凝縮器出口通路33の一端が接続されている。凝縮器出口通路33には、凝縮器3から流出した水の流れを分岐する分岐部34が設けられており、分岐部34で分岐された一方の水を1段目の蓄熱ユニット1Aの容器12Aへ流入させ、他方の水を2段目の蓄熱ユニット1Bの容器12Bへ流入させるようになっている。
【0045】
凝縮器出口通路33における分岐部14の上流側には、容器12A、12Bに水を圧送する水ポンプ35が配置されている。また、凝縮器出口通路33における分岐部34の下流側には、当該凝縮器出口通路33を開閉する第3開閉弁36A、36Bがそれぞれ設けられている。この第3開閉弁36A、36Bは、凝縮器出口通路33の通路面積を調整できるように構成されている。
【0046】
1段目の蓄熱ユニット1Aの容器(以下、第1容器12Aという)は、第1容器12A内に収容された水を加熱する加熱源と熱的に接続されている。本実施形態では、加熱源は、集光集熱装置2により集熱された太陽熱の一部を蓄熱する蓄熱器4に蓄熱された熱である。
【0047】
具体的には、第1容器12Aには、第1容器12A内に収容された水を加熱する第1水加熱用熱交換器16Aが収容されている。この第1水加熱用熱交換器16Aは、第2熱媒体回路41を介して蓄熱器4と接続されている。また、第2熱媒体回路41には、第2熱媒体を循環させる第2熱媒体ポンプ42が配置されている。
【0048】
このため、蓄熱器4に蓄熱された熱により加熱された第2熱媒体が、第1水加熱用熱交換器16Aに供給され、この第2熱媒体により第1容器12A内の水が加熱されるようになっている。
【0049】
また、1段目の蓄熱ユニット1Aの反応器(以下、第1反応器11Aという)は、2段目の蓄熱ユニット1Bの容器(以下、第2容器12Bという)と熱的に接続されている。
具体的には、化学蓄熱装置は、第1反応器11A内に配置された第1熱回収用熱交換器17Aと、2段目の蓄熱ユニット1Bの容器(以下、第2容器12Bという)内に配置された第2水加熱用熱交換器16Bと、第1熱回収用熱交換器17Aおよび第2水加熱用熱交換器16B間で第3熱媒体を循環させる反応熱輸送回路51とを備えている。
【0050】
第1熱回収用熱交換器17Aは、第1反応器11Aにおいて酸化カルシウムおよび水の反応によって発生した反応熱により第3熱媒体を加熱する熱交換器である。第2水加熱用熱交換器16Bは、第1熱回収用熱交換器17Aにて加熱された第3熱媒体と第2容器12B内の水とを熱交換させる熱交換器である。このため、第1反応器11A内で発生した反応熱は、第3熱媒体を介して第2水加熱用熱交換器16Bに伝熱され、この伝熱された熱により第2容器12B内の水が加熱される。
【0051】
反応熱輸送回路51における第2水加熱用熱交換器16Bの出口側と第1熱回収用熱交換器17Aの入口側との間には、反応熱輸送回路51に第3熱媒体を循環させる第3熱媒体ポンプ52が配置されている。また、反応熱輸送回路51における第1熱回収用熱交換器17Aの出口側と第2水加熱用熱交換器16Bの入口側との間には、反応熱輸送回路51を開閉する第4開閉弁53が配置されている。この第4開閉弁53は、反応熱輸送回路51の通路面積を調整できるように構成されている。また、反応熱輸送回路51における第2水加熱用熱交換器16Bの出口側と第3熱媒体ポンプ52の入口側との間には、第3熱媒体の体積変化を吸収する貯留容器54が配置されている。
【0052】
本実施形態では、貯留容器54は、第1熱回収用熱交換器17Aおよび第2水加熱用熱交換器16A内の第3熱媒体を全て収容可能な体積に構成されている。これにより、後述する蓄熱モード時に、第3熱媒体を貯留容器54内に貯留して、第1熱回収用熱交換器17Aおよび第2水加熱用熱交換器16A内に第3熱媒体が満たされていない状態を作り出すことができるので、化学蓄熱装置の作動効率を向上させることができる。
【0053】
また、2段目の蓄熱ユニット1Bの反応器(以下、第2反応器11Bという)は、加熱対象物である熱機関6と熱的に接続されている。
【0054】
具体的には、化学蓄熱装置は、第2反応器11B内に配置された第2熱回収用熱交換器17Bと、第2熱回収用熱交換器17Bおよび熱機関6間で第4熱媒体を循環させる熱出力回路61とを備えている。第2熱回収用熱交換器17Bは、第2反応器11Bにおいて酸化カルシウムおよび水の反応によって発止した反応熱により第4熱媒体を加熱する熱交換器である。このため、第2反応器11B内で発生した反応熱は、第4熱媒体を介して熱機関6に伝熱される。
【0055】
また、熱出力回路61における第2熱回収用熱交換器17Bの出口側と熱機関6の入口側との間には、熱出力回路61に第4熱媒体を循環させる第4熱媒体ポンプ62が配置されている。
【0056】
ここで、第1、第2反応器11A、11Bおよび第1、第2容器12A、12Bの具体的な構成について説明する。第1、第2容器11A、11Bおよび第1、第2容器12A、12Bは、ほぼ同様の構成であるため、以下では第1反応器11Aについて説明し、第2反応器11Bおよび第1、第2容器12A、12Bについては説明を省略する。
【0057】
図2は、本第1実施形態に係る化学蓄熱装置の第1反応器11Aを示す分解斜視図である。図2に示すように、第1反応器11Aは、円筒状に形成されているとともに、二重管構造となっている。
【0058】
具体的には、第1反応器11Aは、酸化カルシウムが収容される反応器内空間110を形成する内壁部111、第1反応器11Aの外形を形成する外壁部112を有して構成されている。内壁部111は、最内側に配置されるとともに、略円筒状に形成されている。また、外壁部112は、内壁部111の外側に配置されるとともに、内壁部111より大きい円筒状に形成されている。
【0059】
内壁部111と外壁部112との間には、反応器内空間110を断熱する断熱層113が設けられている。この断熱層113は、内壁部111と外壁部112との間を真空にする、または、内壁部111と外壁部112との間に断熱材若しくは空気を充填することにより構成されている。これにより、第1反応器11Aの外部への放熱を抑制することができるので、化学蓄熱装置の作動効率を向上させることができる。
【0060】
再生用熱交換器15Aは、第1熱媒体が流れる第1熱媒体配管150を、反応器内空間110内部で螺旋状に複数回巻回することにより形成されている。同様に、第1熱回収用熱交換器17Aは、第3熱媒体が流れる第3熱媒体配管170を、反応器内空間110内部で螺旋状に複数回巻回することにより形成されている。本実施形態では、再生用熱交換器15Aおよび第1熱回収用熱交換器17Aは、第1熱媒体配管150および第3熱媒体配管170が略一定の間隔を維持しながら二重螺旋状に巻回された二重螺旋構造になっている。
【0061】
次に、上述の構成において本実施形態の作動について図1を参照して説明する。まず、放熱モードの作動について説明する。
【0062】
放熱モードでは、第1、第4開閉弁14A、14B、53が全開状態となり、第2、第3開閉弁32A、32B、36A、36Bが全閉状態となり、第2〜第4熱媒体ポンプ42、52、62が作動状態となり、第1熱媒体ポンプ22および水ポンプ35が停止状態となる。このため、蓄熱器4に蓄えられた熱により第1容器12A内の水が加熱されて蒸発し、この水蒸気が接続通路13Aを介して第1反応器11Aに流入する。そして、第1反応器11A内では、第1反応器11Aに収容されている酸化カルシウムと、第1容器12Aから流入した水蒸気とが反応し、水酸化カルシウムが生成されるとともに、反応熱が生じる。
【0063】
第1反応器11Aで上記反応の際に生じた反応熱は、第3熱媒体を介して第2容器12Bに伝熱され、この熱により第2容器12B内に収容されている水が加熱されて蒸発する。そして、第2容器12Bで蒸発した水蒸気が、接続通路13Bを介して第2反応器11Bに流入する。第2反応器11B内では、第2反応器11Bに収容されている酸化カルシウムと、第2容器12Bから流入した水蒸気とが反応し、水酸化カルシウムが生成されるとともに、反応熱が生じる。そして、この反応の際に生じた反応熱が、第4熱媒体を介して熱機関6に伝熱される。
【0064】
なお、第1、第2反応器11A、11Bにおいて、放熱モードにて生じる反応の化学式は、次の化学式1に表される。
(化1)
CaO+H2O→Ca(OH)2
次に、蓄熱モードの作動について説明する。この蓄熱モードは、上記放熱モードの後に行われる。
【0065】
蓄熱モードでは、第2開閉弁32A、32Bが全開状態となり、第1、第3、第4開閉弁14A、14B、36A、36B、53が全閉状態となり、第1熱媒体ポンプ22が作動状態となり、第2〜第4熱媒体ポンプ42、52、62および水ポンプ35が停止状態となる。このため、集光集熱装置2で集熱された太陽熱により第1、第2反応器11A、11B内の水酸化カルシウムが加熱されて、酸化カルシウムと水蒸気とに分離される。これにより、第1、第2反応器11A、11B内の水酸化カルシウムは、酸化カルシウムに再生される。これにより、太陽熱を蓄熱することができる。
【0066】
なお、第1、第2反応器11A、11Bにおいて、蓄熱モードにて生じる反応の化学式は、次の化学式2に表される。
(化2)
Ca(OH)2→CaO+H2O↑
一方、第1、第2反応器11A、11Bにおいて発生した水蒸気は、凝縮器入口通路31A、31Bを介して凝縮器3に流入する。凝縮器3に流入した水蒸気は、外気により冷却されて凝縮し、凝縮器3に貯留される。
【0067】
次に、蓄熱維持モードについて説明する。この蓄熱維持モードは、上記蓄熱モードの後に行われる。
【0068】
蓄熱維持モードでは、上記蓄熱モードに対して、第2開閉弁32A、32Bが全閉状態となる点のみ異なり、他の開閉弁やポンプは上記蓄熱モードと同様になっている。このため、酸化カルシウムと水とが空間的に隔離されるので、蓄熱状態を維持することができる。
【0069】
このとき、第3開閉弁36A、36Bを全開するとともに、水ポンプ35を作動させることで、凝縮器3に貯留された水を、凝縮器出口通路33を介して第1、第2容器12A、12Bに戻すことができる。そして、凝縮器3に貯留された全ての水を第1、第2容器12A、12Bに戻した後は、第3開閉弁36A、36Bを全閉状態とするとともに、水ポンプ35を停止状態とする。
【0070】
なお、上述した凝縮器3に貯留された水を第1、第2容器12A、12Bに戻す工程は、蓄熱維持モードに限らず、放熱モードまたは蓄熱モードにおいて実施してもよい。
【0071】
ところで、図3は本第1実施形態における放熱モード時の酸化カルシウムの吸水反応の平衡線、および水の気液平衡線を示すグラフである。図3の横軸は温度の逆数を示し、縦軸は気体の圧力を示している。また、図3において、実線は酸化カルシウムの吸水反応における平衡線を表しており、破線は水の気液平衡線を表している。
【0072】
図3に示すように、放熱モードにおいて、第1容器12A内の水を80℃まで加熱すると、第1容器12A内の圧力は図中のa点となる。すると、第1容器12Aと接続通路13Aを介して連通している第1反応器11A内の圧力は、第1容器12Aとほぼ同じになる。このため、第1反応器11A内の酸化カルシウムは上記化学式1に示す反応(吸水反応)とともに430℃程度(図中のb点参照)まで温度上昇する。
【0073】
ここで、第1反応器11Aにおいて発生した熱は、第1熱回収用熱交換器17Aにて回収される。また、当該回収された熱は、反応熱輸送回路51の第3熱媒体を介して、第2水加熱用熱交換器16Bによって第2容器12B内の水に与えられる。
【0074】
このとき、第1反応器11Aおよび第2容器12Bには伝熱に伴う温度差が生じる。本実施形態では、第1反応器11Aおよび第2容器12Bの温度差が100℃程度となっている。この場合、第2容器12B内の水の温度は330℃程度となる。すると、第2容器12B内の水は、その蒸気圧力が図中c点に示すように10MPa程度となる。また、第2容器12Bと接続通路13Bを介して連通している第2反応器11B内の圧力は、第2容器12Aとほぼ同じになる。
【0075】
このため、第2反応器11B内の酸化カルシウムは上記化学式1に示す反応(吸水反応)とともに770℃程度(図中のd点参照)まで温度上昇する。この反応における反応熱は、第2熱回収用熱交換器17Bにて回収され、当該回収された熱は熱機関6において利用される。
【0076】
ところで、図4は、真空中にて水酸化カルシウムの温度を1時間維持した際の脱水率(再生率)を示すグラフである。図4の横軸は水酸化カルシウムの表面温度を示しており、縦軸は脱水率を示している。
【0077】
図4に示すように、水酸化カルシウムは、450℃以上の温度を1時間維持することで、脱水率が0.8以上となる。したがって、蓄熱モードにおいて、第1、第2反応器11A、11B内の水酸化カルシウムを酸化カルシウムに再生させるためには、450℃以上に加熱することが実用上望ましい。
【0078】
図5は本第1実施形態における蓄熱モード時の水酸化カルシウムの脱水反応の平衡線、および水の気液平衡線を示すグラフである。図5の横軸は温度の逆数を示し、縦軸は気体の圧力を示している。また、図5において、実線は水酸化カルシウムの脱水反応における平衡線を表しており、破線は水の気液平衡線を表している。
【0079】
上述したように、第1、第2反応器11A、11B内の水酸化カルシウムを再生させるためには、第1、第2反応器11A、11Bを450℃以上に加熱する必要がある。そして、図5に示すように、蓄熱モードにおいて、第1、第2反応器11A、11B器内の水酸化カルシウムを450℃まで加熱すると、上記化学式2に示す反応(脱水反応)が生じ、水酸化カルシウムが酸化カルシウムと水蒸気とに分離する。このとき、第1、第2反応器11A、11B内の圧力は図中のe点となる。
【0080】
そして、第1、第2反応器11A、11Bと凝縮器入口通路31A、31Bを介して連通している凝縮器3内の圧力は、第1、第2反応器11A、11Bとほぼ同じになる。このため、図中のf点に示すように、凝縮器3内の温度が80℃以下になると、水蒸気が凝縮して水(液体)となる。
【0081】
ところで、本実施形態では、放熱モードにおいて第1容器12A内の水を80℃で加熱して酸化カルシウムと反応させると、図3に示すように、1段目の蓄熱ユニット1A内の圧力は、第1容器12A内の水の温度における飽和蒸気圧Pe1(約50kPa)とほぼ同等となる。
【0082】
同様に、放熱モードにおいて第2容器12B内の水の温度は330℃となるため、2段目の蓄熱ユニット1B内の圧力は、第2容器12B内の水の温度における飽和蒸気圧Pe2(約13MPa)とほぼ同等となる。
【0083】
したがって、本実施形態では、第1容器12A内の水の最高到達温度Tm1(80℃)が、水の臨界温度Tc(374℃)未満であるため、1段目の蓄熱ユニット1Aの耐圧Pv1を、当該最高到達温度Tm1における飽和蒸気圧Pe1、すなわち50kPaより高くなるように設定すればよい。同様に、本実施形態では、第2容器12B内の水の最高到達温度Tm2(330℃)が、水の臨界温度Tc未満であるため、2段目の蓄熱ユニット1Bの耐圧Pv2を、当該最高到達温度Tm2における飽和蒸気圧Pe2、すなわち13MPaより高くなるように設定すればよい。
【0084】
ただし、蓄熱ユニット1A、1Bの製造時において、第1反応物Aである水を注入する前に蓄熱ユニット1A、1B内を真空状態とする真空引きを行う場合、蓄熱ユニット1A、1Bの耐圧Pvを大気圧、すなわち101.3kPaより高くなるように設定する必要がある。したがって、本実施形態では、1段目の蓄熱ユニット1Aの耐圧Pv1は、101.3kPaより高くなるように設定されている。
【0085】
このため、1段目の蓄熱ユニット1Bの耐圧構造を、2段目の蓄熱ユニット1Bの耐圧構造と比較して簡素な構造とすることができる。すなわち、全蓄熱ユニット1A、1Bの耐圧構造を一律に高くする必要がなくなり、コスト低減を図ることができる。
【0086】
続いて、各蓄熱ユニット1A、1Bに充填される酸化カルシウムの最適充填比率を検討する。
【0087】
まず、各蓄熱ユニット1A、1Bに熱容量がない理想的な作動状態の場合、放熱モードにおいては、第1反応器11Aにて生じる反応熱量Qr1[J]を、全て第2容器12Bに与えることができる。このため、第1反応器11Aから第2容器12Bに移動する熱量をQo1[J]、第2容器12Bにおいて水の蒸発に要する熱量をQe2[J]としたとき、以下の数式4に示す関係が成り立つ。
【0088】
(数4)
Qr1=Qo1=Qe2
そして、第2容器12Bにて蒸発した水が第2反応器11B内の酸化カルシウムと反応した際に第2反応器11Bで得られる熱量Qr2[J]は、酸化カルシウムと水との反応に伴う反応熱をΔHr[J/mol]、水の蒸発潜熱をΔHe[J/mol]としたとき、以下の数式5にて示される。
【0089】
(数5)
Qr2=Qe2・ΔHr/ΔHe=Qr1・ΔHr/ΔHe
このため、熱容量のない理想的な作動においては、1段目の蓄熱ユニット1Aに充填する酸化カルシウム量と、2段目の蓄熱ユニット1Bに充填される酸化カルシウム量の比率を、ΔHrとΔHeの比と一致させることが望ましい。
【0090】
しかし、実作動においては、上述したような理想的な作動状態とすることは難しく、蓄熱ユニット1A、1Bの各部位において熱容量により幾らかの熱量を失う。このため、酸化カルシウムの最適充填比率は熱容量に応じて変化する。
【0091】
ここで、第1反応器11Aの熱容量をQr1HM[J/K]、第2容器12Bの熱容量をQe2HM[J/K]、第1反応器11A内の目標温度をTa1[K]、第2反応器11B内の目標温度をTa2[K]、外気温度をTair[K]としたとき、以下の数式6、7に示す関係が成り立つ。なお、本実施形態では、第1反応器11Aの目標温度Ta1は703.15K(430℃)、第2反応器11B内の目標温度Ta2は603.15K(330℃)、外気温度Tairは298.15K(25℃)である。
【0092】
(数6)
Qo1=Qr1ーQr1HM
(数7)
Qr2={Qe2−Qe2HM・(Ta2−Tair)}・ΔHr/ΔHe
ここで、Qe2=Qo1(上記数式3参照)より、数式7は以下の数式8に示すように変形される。
【0093】
(数8)
Qr2={Qr1−Qr1HM・(Ta1−Tair)−Qe2HM・(Ta2−Tair)}・ΔHr/ΔHe
したがって、Qr2が以下の数式9に示す関係を満たすように、各蓄熱ユニット1A、1Bに充填される酸化カルシウム量の比率を設定することが望ましい。
【0094】
(数9)
Qr1・ΔHr/ΔHe<Qr2<{Qr1−Qr1HM・(Ta1−Tair)−Qe2HM・(Ta2−Tair)}・ΔHr/ΔHe
ところで、本実施形態では化学蓄熱材である第2反応物Bとして酸化カルシウムを用いているが、化学蓄熱材としては、酸化マグネシウム(MgO)、酸化マンガン(MnO)、酸化銅(II)(CuO)および酸化アルミニウム(Al2O3)等の金属酸化物を用いることが考えられる。
【0095】
図6は上記金属酸化物の吸水反応の平衡線、および水の気液平衡線を示すグラフである。図6の横軸は温度の逆数を示し、縦軸は気体の圧力を示している。
【0096】
図6中の複数の金属酸化物の吸水反応の平衡線のうち、酸化カルシウムの吸水反応の平衡線が、水の気液平衡線から一番離れている。したがって、上述した図3に示すように、蓄熱ユニット1A、1Bを2段設けるだけで、所望の温度(770℃)まで昇温することができる。
【0097】
一方、複数の金属酸化物の吸水反応の平衡線のうち、酸化カルシウムに次いで水の気液平衡線から離れている酸化マグネシウムの吸水反応の平衡線、および水の気液平行線を示すグラフを図7に示す。図7の横軸は温度の逆数を示し、縦軸は気体の圧力を示している。
【0098】
図7に示すように、化学蓄熱材として酸化マグネシウムを用いた場合、蓄熱ユニットを4段連ねても、450℃程度までしか昇温できない。また、蓄熱ユニットの段数が増えるため、熱利用効率も低くなる。したがって、本実施形態のように、化学蓄熱材として酸化カルシウムを用いることにより、蓄熱ユニットの段数を最小限にして製造原価の低減を図りつつ、出力温度を確実に昇温することができる。
【0099】
本実施形態によれば、放熱モードにおいて、1段目の蓄熱ユニット1Aの第1反応器11Aにて発生した反応熱が、2段目の蓄熱ユニット1Bの第2容器12Bに伝熱され、この熱により加熱されて蒸発した水が、2段目の蓄熱ユニット1Bの第2反応器1Bに流入し、再度、酸化カルシウムと反応して反応熱を発生させる。そして、2段目、すなわち最終段目の蓄熱ユニット1Bの第2反応器11Bは、熱機関6と熱的に接続されているので、外部熱である太陽熱よりも高温(770℃)となった熱を熱機関6で利用することができる。
【0100】
このように、放熱モードでは、太陽熱よりも低温(80℃)の熱を供給する蓄熱器4からの熱があれば、出力を取り出すことができる。すなわち、放熱時に外部熱である太陽熱が存在しなくても、太陽熱よりも高温の熱を出力することができる。
【0101】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図8に基づいて説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態と比較して、凝縮器入口通路および凝縮器出口通路を廃止する代わりに、第1、第2反応器11A、11Bにおいて発生した水蒸気を、冷媒を介して外気と熱交換させる点が異なるものである。
【0102】
図8は本第2実施形態に係る化学蓄熱装置を示す全体構成図である。図8に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置は、蓄熱モード時に、第1、第2反応器11A、11Bにおいて発生した水蒸気は、接続通路13A、13Bを介して第1、第2容器12A、12Bに流入するようになっている。
【0103】
また、本実施形態の化学蓄熱装置は、第1、第2容器12A、12B内に配置された凝縮用熱交換器37A、37Bと、蓄熱ユニット1A、1B外に配置された冷媒冷却器30と、凝縮用熱交換器37A、37Bと冷媒冷却器30との間で冷媒を循環させる冷媒回路38とを備えている。
【0104】
凝縮用熱交換器37A、37Bは、蓄熱モード時に蒸気と冷媒との間で熱交換を行い、水蒸気を冷却して凝縮させる熱交換器である。冷媒冷却器30は、冷媒と外気とを熱交換させて冷媒を冷却する熱交換器である。また、冷媒回路38には、冷媒を循環させるための冷媒ポンプ39が配置されている。
【0105】
続いて、本実施形態の作動を説明する。蓄熱モード時に、接続通路13A、13Bを介して第1、第2容器12A、12Bに流入した水蒸気は、凝縮用熱交換器37A、37Bで冷却されて凝縮し、そのまま第1、第2容器12A、12B内に貯留される。また、凝縮用熱交換器37A、37Bにて水蒸気から吸熱した冷媒は、冷媒回路38を介して冷媒冷却器30に流入する。冷媒冷却器30に流入した冷媒は、外気と熱交換されて冷却される。
【0106】
本実施形態によれば、第1、第2反応器11A、11Bで発生した水蒸気を第1、第2容器12A、12A内で凝縮させることができる。このため、凝縮手段で凝縮した水を第1、第2容器12A、12Bに戻すための通路や水ポンプ等を廃止しつつ、上記第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0107】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図9に基づいて説明する。本第3実施形態は、上記第1実施形態と比較して、第1容器12A内に収容された水を加熱する加熱源として、第1反応器11Aにおいて発生する反応熱の一部を用いた点が異なるものである。
【0108】
図9は本第3実施形態に係る化学蓄熱装置を示す全体構成図である。図9に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置は、第1反応器11A内に配置された熱源用熱交換器43と、第1容器12A内に配置された第1水加熱用熱交換器16Aと、熱源用熱交換器43および第1水加熱用熱交換器16Aの間で第5熱媒体を循環させる第5熱媒体回路44とを備えている。
【0109】
熱源用熱交換器43は、第1反応器11A内において酸化カルシウムと水とが反応した際に生じる反応熱により第5熱媒体を加熱する熱交換器である。第1水加熱用熱交換器16Aは、第5熱媒体と第1容器12A内に収容された水とを熱交換させ、当該水を加熱して蒸発させる熱交換器である。また、第5熱媒体回路44には、第5熱媒体を循環させる第5熱媒体ポンプ45が配置されている。
【0110】
続いて、本実施形態の作動を説明する。放熱モード時に、第1反応器11A内において酸化カルシウムと水とが反応した際に生じる反応熱が、第5熱媒体を介して第1容器12A内の水に伝熱され、これにより当該水が加熱されて蒸発する。そして、第1容器12内で発生した水蒸気は接続通路13Aを介して第1反応器11Aに流入し、酸化カルシウムと反応することにより反応熱が発生する。
【0111】
本実施形態によれば、第1反応器11Aで発生した反応熱の一部により、第1容器12Aに収容された水を加熱することができる。したがって、加熱源を別途設ける必要がないので、上記第1実施形態の効果を簡素な構成によって得ることができる。さらに、放熱モードにおいて、外部からの加熱源を全く必要としないため、本実施形態の化学蓄熱装置を幅広いシステムに適用することが可能となる。
【0112】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図10に基づいて説明する。本第4実施形態は、上記第1実施形態と比較して、第1容器12A内に収容された水を加熱する加熱源として、第2容器12Bが有する熱を用いた点が異なるものである。
【0113】
図10は本第4実施形態に係る化学蓄熱装置を示す全体構成図である。図10に示すように、本実施形態の反応熱輸送回路51は、第1熱回収用熱交換器17A、第2水加熱用熱交換器16B、第1水加熱用熱交換器16Aの順に第3熱媒体を循環させるように構成されている。第1水加熱用熱交換器16Aは、第3熱媒体ポンプ52の出口側と、第1熱回収用熱交換器17Aの入口側との間に配置されている。
【0114】
続いて、本実施形態の作動を説明する。放熱モード時に、反応熱輸送回路51を流通する第3熱媒体は、第1熱回収用熱交換器17Aにおいて、第1反応器11Aにて生じた反応熱を吸熱する。その後、第2水加熱用熱交換器16Bにおいて、第1熱回収用熱交換器17Aにて吸熱した熱量の一部を、第2容器12B内の水に放熱する。その後、第1水加熱用熱交換器16Aにおいて、第1熱回収用熱交換器17Aにて吸熱した熱量から第2水加熱用熱交換器16Bにて放熱した熱量を引いた熱量を、第1容器12A内の水に放熱する。これにより、第1容器12A内の水が加熱されて蒸発し、この水蒸気が接続通路13Aを介して第1反応器11Aに流入し、酸化カルシウムと反応することにより反応熱が発生する。
【0115】
本実施形態によれば、第2容器12Bに伝熱された熱の一部により、第1容器12Aに収容された水を加熱することができる。したがって、加熱源を別途設ける必要がないため、上記した第1実施形態の効果を簡素な構成によって得ることができる。さらに、放熱モードにおいて、外部からの加熱源を全く必要としないため、本実施形態の化学蓄熱装置を幅広いシステムに適用することが可能となる。
【0116】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図11に基づいて説明する。本第5実施形態は、上記第1実施形態と比較して、第1容器12A内に収容された水を加熱する加熱源として、凝縮器3にて水蒸気を凝縮させる際に生じる凝縮熱を用いた点が異なるものである。
【0117】
図11は本第5実施形態に係る化学蓄熱装置を示す全体構成図である。図11に示すように、本実施形態の凝縮器3は、第1、第2反応器11A、11Bで発生した水蒸気を凝縮させる際に生じる凝縮熱を蓄熱する蓄熱材300を有している。また、第1水加熱用熱交換器16Aは、第2熱媒体回路41を介して凝縮器3と接続されている。このため、凝縮器3の蓄熱材300に蓄えられた熱により、第1水加熱用熱交換器16Aを介して、第1容器12A内の水を加熱することができる。すなわち、本実施形態の凝縮器3が、本発明の加熱源に相当している。
【0118】
本実施形態によれば、第1、第2反応器11A、11Bで発生した水蒸気を凝縮させる際に生じる凝縮熱により、第1容器12Aに収容された水を加熱することができる。したがって、凝縮器3に蓄熱材300を設けるだけという簡素な構成で、上記した第1実施形態の効果を得ることができる。そして、上記第1実施形態では外気に放出していた凝縮熱を、加熱源として有効利用することができるので、熱利用効率を向上させることができる。
【0119】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図12に基づいて説明する。本第6実施形態は、上記第5実施形態と比較して、集光集熱装置2の熱も蓄熱材300に蓄熱できるように、集光集熱装置2と、加熱源である蓄熱材300とが熱的に接続されている点が異なるものである。
【0120】
図12は本第6実施形態に係る化学蓄熱装置を示す全体構成図である。図12に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置は、凝縮器3と熱的に接続される蓄熱用熱交換器301と、集光集熱装置2との間で第6熱媒体を循環させる第6熱媒体回路23を備えている。蓄熱用熱交換器301は、集光集熱装置2で加熱された第6熱媒体と蓄熱材300とを熱交換させて、第6熱媒体の有する熱を蓄熱材に与える熱交換器である。
【0121】
第6熱媒体回路23における集光集熱装置2の出口側と蓄熱用熱交換器301の入口側との間には、第6熱媒体回路23を開閉する第6開閉弁24が配置されている。また、第6熱媒体回路23における蓄熱用熱交換器301の出口側と集光集熱装置2の入口側との間には、第6熱媒体回路23に第6熱媒体を循環させる第6熱媒体ポンプ25が配置されている。
【0122】
本実施形態によれば、集光集熱装置2で集熱した太陽熱が余剰している場合に、第6開閉弁24を開けるとともに、第6熱媒体ポンプ25を作動させることにより、集光集熱装置2で集熱した太陽熱を、第6熱媒体を介して蓄熱材300に蓄熱させることができる。したがって、集光集熱装置2で集熱した太陽熱を有効利用し、熱利用効率を向上させることが可能となる。
【0123】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について図13に基づいて説明する。本第7実施形態は、上記第1実施形態と比較して、スターリングエンジンの高温部を加熱対象物とした点が異なるものである。
【0124】
図13は本第7実施形態に係る化学蓄熱装置を示す全体構成図である。図13に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置には、化学蓄熱装置で蓄熱した熱を利用する熱利用機器70が接続されている。この熱利用機器70は、作動気体を加熱膨張させる高温部71aおよび作動気体を冷却収縮させる低温部71bを有するとともに、熱エネルギを機械エネルギに変換する熱機関としてのスターリングエンジン71を備えている。
【0125】
スターリングエンジン71の高温部71aには、熱出力回路61に接続されるとともに、第2熱回収用熱交換器17Bにて加熱された第4熱媒体と作動気体とを熱交換させて作動気体を加熱する高温部熱交換器711が設けられている。
【0126】
スターリングエンジン71の低温部71bは、第3反応物Cを液体状態で収容する第3反応物収容部72と熱的に接続されている。具体的には、熱利用機器70は、スターリングエンジン71の低温部71bに配置された低温部熱交換器712と、第3反応物収容部72内に配置された第3反応物熱交換器721と、低温部熱交換器712と第3反応物熱交換器721との間で第7熱媒体を循環させる第7熱媒体回路73とを備えている。
【0127】
低温部熱交換器712は、作動気体と第7熱媒体とを熱交換させ、作動気体を冷却する熱交換器である。また、第3反応物熱交換器721は、第7作動媒体と第3反応物Cとを熱交換させ、第7作動媒体が低温部熱交換器712にて吸熱した熱を第3反応物Cに放熱させる熱交換器である。これにより、第3反応物Cは、第7作動媒体により加熱されて蒸発する。
【0128】
第3反応物収容部72には、第3反応物収容部72で蒸発した第3反応物Cを、固体状態の第4反応物Dを収容する第4反応物収容部74へ導く第3反応物通路751が接続されている。第3反応物通路751には、当該第3反応物通路751を開閉する第3反応物通路開閉弁752が配置されている。
【0129】
ところで、本実施形態では、第3反応物Cとして水を用いており、第4反応物Dとして酸化カルシウムを用いている。これにより、第4反応物収容部74においては、上記化学式1に示した化学反応が生じ、この反応の際、反応熱が発生する。
【0130】
第4反応物収容部74内には、第4反応物収容部74において上記反応の際に生じる反応熱を放熱させるための放熱用熱交換器741が配置されている。具体的には、放熱用熱交換器741は、反応熱を放熱用熱媒体に放熱させる熱交換器である。
【0131】
放熱用熱交換器741には、放熱用熱媒体を循環させる放熱用熱媒体回路761が接続されている。放熱用熱媒体回路761には、放熱用熱交換器741で反応熱から吸熱した放熱用熱媒体と外気とを熱交換させ、放熱用熱媒体を冷却する熱媒体冷却用熱交換器76が配置されている。
【0132】
さらに第4反応物収容部74内には、上記化学式1に示した化学反応の際に生じた水酸化カルシウムを加熱して酸化カルシウムおよび水に分離するための再生用熱交換器742が配置されている。再生用熱交換器742は、第1熱媒体回路21に接続されており、集光集熱装置2において太陽熱により加熱された第1熱媒体により第4反応物収容部74内の水酸化カルシウムが加熱されるようになっている。
【0133】
第4反応物収容部74には、水酸化カルシウムから分離した水(水蒸気)を凝縮用熱交換器77へ導く凝縮通路771が接続されている。凝縮通路771には、凝縮通路771を開閉する凝縮通路開閉弁772が配置されている。
【0134】
凝縮用熱交換器77は、水酸化カルシウムから分離した水蒸気と外気とを熱交換させ、水蒸気を冷却して凝縮させる熱交換器である。また、凝縮用熱交換器77は、凝縮用熱交換器77で凝縮した水が貯留されるように構成されている。
【0135】
凝縮用熱交換器77には、凝縮用熱交換器77に貯留された水を第3反応物収容部72へ導く還流通路781が接続されている。還流通路781には、還流通路781を開閉する還流通路開閉弁782が配置されている。
【0136】
次に、上述の構成において本実施形態の作動について図13を参照して説明する。まず、放熱モードの作動について説明する。
【0137】
放熱モードでは、高温部熱交換器711に化学蓄熱装置で昇温された第4熱媒体が供給され、スターリングエンジン71の高温部71aが加熱される。また、第3反応物通路開閉弁752が全開状態となり、凝縮通路開閉弁772および還流通路開閉弁782が全閉状態となるとともに、第4反応物収容部74が放熱用熱媒体により冷却される。このため、第3反応物収容部72内の水が751を介して第4反応物収容部74に流入し、上記化学式1に示される化学反応が生じる。
【0138】
このとき、第3反応物熱交換器721において、第7熱媒体が第3反応物収容部72内の水が蒸発する際の気化熱により冷却され、外気温より低温となる。これにより、低温部熱交換器712にて、外気温より低温の第7熱媒体により、スターリングエンジン71の低温部71bが冷却される。
【0139】
以上により、放熱モードにおいては、スターリングエンジン71の高温部71aを770℃程度まで加熱するとともに、低温部71bを外気温より低温に冷却することができるので、熱エネルギを機械エネルギに高効率に変換することができる。
【0140】
次に、蓄熱モードの作動について説明する。蓄熱モードでは、第3反応物通路開閉弁752および還流通路開閉弁782が全閉状態となり、凝縮通路開閉弁772が全開状態となり、第1熱媒体ポンプ22が作動状態となる。このため、再生用熱交換器742にて太陽熱により加熱された第1熱媒体により第4反応物収容部74内の水酸化カルシウムが加熱され、酸化カルシウムおよび水蒸気に分離される。この水蒸気は凝縮通路771を介して凝縮用熱交換器77に流入し、凝縮用熱交換器77にて外気により冷却されて凝縮する。
【0141】
次に、蓄熱維持モードの作動について説明する。蓄熱維持モードでは、凝縮通路開閉弁772も全閉状態となる。これにより、太陽熱を蓄熱することができる。
【0142】
このとき、還流通路開閉弁782を全開状態とすることで、凝縮用熱交換器77に貯留された水を、還流通路781を介して第3反応物収容部72に戻すことができる。そして、凝縮用熱交換器77に貯留された全ての水を第3反応物収容部72に戻した後は、還流通路開閉弁782を全閉状態とする。
【0143】
なお、上述した凝縮用熱交換器77に貯留された水を第3反応物収容部72に戻す工程は、蓄熱維持モードに限らず、放熱モードまたは蓄熱モードにおいて実施してもよい。
【0144】
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を得つつ、熱エネルギを機械エネルギに高効率で変換することができる。
【0145】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について図14に基づいて説明する。本第8実施形態は、上記第1実施形態と比較して、放熱モード時における第1容器12Aの加熱温度が異なるものである。
【0146】
図14は本第8実施形態における放熱モード時の酸化カルシウムの吸水反応の平衡線、および水の気液平衡線を示すグラフである。図14の横軸は温度の逆数を示し、縦軸は気体の圧力を示している。また、図14において、実線は酸化カルシウムの吸水反応における平衡線を表しており、破線は水の気液平衡線を表している。
【0147】
図14に示すように、放熱モードにおいて、第1容器12A内の水を120℃まで加熱すると、第1容器12A内の圧力は約200kPa(図中のa点参照)となる。すると、第1容器12Aと接続通路13Aを介して連通している第1反応器11A内の圧力は、第1容器12Aとほぼ同じになる。このため、第1反応器11A内の酸化カルシウムは上記化学式1に示す反応(吸水反応)とともに500℃程度(図中のb点参照)まで温度上昇する。
【0148】
ここで、第1反応器11Aにおいて発生した熱は、第3熱媒体を介して、第2容器12B内の水に与えられる。このとき、第1反応器11Aおよび第2容器12Bには伝熱に伴い100℃程度の温度差が生じるため、第2容器12B内の水の温度は400℃程度となる。このとき、第2容器12Bと接続通路13Bを介して連通している第2反応器11B内の圧力は、第2容器12Aとほぼ同じになる。このため、第2反応器11B内の酸化カルシウムは上記化学式1に示す反応(吸水反応)とともに850℃程度(図中のd点参照)まで温度上昇する。
【0149】
ところで、本実施形態では、第2容器12B内の水の最高到達温度Tm2(図14のc点参照)は、水の臨界温度Tc(374℃)を超えている。このため、2段目の蓄熱ユニット1Bの耐圧構造を、上記第1実施形態と同様の耐圧構造とすることはできない。
【0150】
ここで、第2容器12B内の水の分子量をn[mol]、第2容器12Bの体積をVm[m3]、圧縮因子をz、気体定数をR(R=8.314[J/(molK)])とすると、第2容器12B内水の圧力Paqは以下の数式10にて示される。
【0151】
(数10)
Paq=znRTm2/Vm
このため、蓄熱ユニット1Bの構造を維持するためには、2段目の蓄熱ユニット1Bの耐圧Pv2[Pa]をPaqよりも大きくする必要がある。すなわち、2段目の蓄熱ユニット1Bの耐圧Pv2を、以下の数式11で示される関係を満たすように設定する必要がある。
【0152】
(数11)
Pv2>znRTm2/Vm
本実施形態のように、第2蓄熱ユニット1Bの容器2B内の水の最高到達温度Tm2が水の臨界温度Tc以上の場合には、2段目の蓄熱ユニット1Bの耐圧Pvを、上記数式11を満たすように設定すればよい。
【0153】
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態について図15に基づいて説明する。本第9実施形態は、上記第7実施形態と比較して、第1容器12A内に収容された水を加熱する加熱源として、第4反応物収容部74において酸化カルシウムおよび水の反応の際に生じる反応熱を用いた点が異なるものである。
【0154】
図15は本第9実施形態に係る化学蓄熱装置を示す全体構成図である。図15に示すように、本実施形態の蓄熱装置は、放熱用熱交換器741と第1水加熱用熱交換器16Aとの間で放熱用熱媒体を循環させる放熱用熱媒体回路761を備えている。このため、放熱モード時に、放熱用熱交換器741にて第4反応物収容部74において酸化カルシウムおよび水の反応の際に生じる反応熱を放熱用熱媒体に吸熱させ、第1水加熱用熱交換器16Aにて当該反応熱を第1容器12A内の水に放熱させ、当該水を加熱することができる。
【0155】
放熱用熱媒体回路761には、放熱用熱媒体を循環させる放熱用熱媒体ポンプ762と、放熱用熱媒体回路761を開閉する放熱用熱媒体回路開閉弁762とが配置されている。
【0156】
本実施形態によれば、第4反応物収容部74で発生した反応熱により、第1容器12Aに収容された水を加熱することができる。したがって、加熱源を別途設ける必要がないので、上記第7実施形態の効果を簡素な構成によって得ることができる。さらに、放熱モードにおいて、外部からの加熱源を全く必要としないため、本実施形態の化学蓄熱装置を幅広いシステムに適用することが可能となる。
【0157】
また、上記第7実施形態では、第4反応物収容部74で発生した反応熱を外気に放出していたが、本実施形態では、当該反応熱を加熱源として有効利用することができるので、熱利用効率を向上させることができる。
【0158】
(第10実施形態)
次に、本発明の第10実施形態について図16、図17に基づいて説明する。本第10実施形態は、上記第1実施形態と比較して、第1、第2反応器11A、11B内にそれぞれ配置される再生用熱交換器および熱回収用熱交換器を1つの熱交換器で構成するとともに、電気式三方弁により当該1つの熱交換器に供給される熱媒体が流れる熱媒体回路を切り替える構成とした点が異なるものである。
【0159】
図16は本第10実施形態に係る化学蓄熱装置を示す全体構成図、図17は本第10実施形態に係る化学蓄熱装置を示す斜視図である。
【0160】
第1反応器11Aの内部には、第1反応器11A内の物質(酸化カルシウムまたは水酸化カルシウム)と第8熱媒体との間で熱交換を行う第1熱交換器181が設けられている。また、第2反応器11B内部には、第2反応器11B内の物質(酸化カルシウムまたは水酸化カルシウム)と第8熱媒体との間で熱交換を行う第2熱交換器182が設けられている。また、第2容器12Bの内部には、第2容器12B内の物質(水)と第8熱媒体との間で熱交換を行う第3熱交換器183が設けられている。
【0161】
本実施形態の化学蓄熱装置は、集光集熱装置2、第1〜第3熱交換器181〜183および熱機関6に第8熱媒体を循環させる第8熱媒体回路80を備えている。第8熱媒体回路80における集光集熱装置2の出口側には、第8熱媒体回路80に第8熱媒体を循環させるための第1ポンプ81が接続されている。
【0162】
第1ポンプ81の熱媒体出口側には、第1ポンプ81から流出した第8熱媒体の流れを分岐する分岐部82が設けられている。そして、分岐部82で分岐された一方の第8熱媒体を第1電気式三方弁83へ流入させ、他方の第8熱媒体を第2電気式三方弁84へ流入させるようになっている。
【0163】
第1、第2電気式三方弁83、84は、図示しない制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御される熱媒体回路切替手段である。
【0164】
より具体的には、第1電気式三方弁83は、電力が供給される通電状態では、集光集熱装置2の熱媒体出口側と第1熱交換器181の第1の熱媒体流入出部181aとの間を接続する熱媒体回路に切り替え、電力の供給が停止される非通電状態では、第1熱交換器181の第1の熱媒体流入出部181aと第3熱交換器183の熱媒体流入部183aとの間を接続する熱媒体回路に切り替える。
【0165】
第2電気式三方弁84は、電力が供給される通電状態では、集光集熱装置2の熱媒体出口側と第2熱交換器182の第1の熱媒体流入出部182aとの間を接続する熱媒体回路に切り替え、電力の供給が停止される非通電状態では、第2熱交換器182の第1の熱媒体流入出部182aと第2ポンプ85の熱媒体入口側との間を接続する熱媒体回路に切り替える。
【0166】
第2ポンプ85は、第8熱媒体回路80に第8熱媒体を循環させるためのものであり、その熱媒体出口側は熱機関6の熱媒体入口側に接続されている。
【0167】
また、第3熱交換器183の熱媒体流出部183bには、第8熱媒体の体積変化を吸収する貯留容器86が接続されている。貯留容器86の熱媒体出口側には、第8熱媒体回路80に第8熱媒体を循環させるための第3ポンプ87の熱媒体入口側が接続されている。
【0168】
第3ポンプ87の熱媒体出口側には、第3電気式三方弁88が接続されている。第3電気式三方弁88は、図示しない制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御される熱媒体回路切替手段である。
【0169】
より具体的には、第3電気式三方弁88は、電力が供給される通電状態では、第1熱交換器181の第2の熱媒体流入出部181bと集光集熱装置2の熱媒体入口側との間を接続する熱媒体回路に切り替え、電力の供給が停止される非通電状態では、第3ポンプ87の熱媒体出口側と第1熱交換器181の第2の熱媒体流入出部181bとの間を接続する熱媒体回路に切り替える。
【0170】
また、第2熱交換器182の第2の熱媒体流入出部182bには、第4電気式三方弁89が接続されている。第4電気式三方弁89は、図示しない制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御される熱媒体回路切替手段である。
【0171】
より具体的には、第4電気式三方弁89は、電力が供給される通電状態では、第2熱交換器182の第2の熱媒体流入出部182bと集光集熱装置2の熱媒体入口側との間を接続する熱媒体回路に切り替え、電力の供給が停止される非通電状態では、熱機関6の熱媒体出口側と第2熱交換器182の第2の熱媒体流入出部182bとの間を接続する熱媒体回路に切り替える。
【0172】
次に、上述の構成において本実施形態の作動について図1を参照して説明する。まず、放熱モードの作動について説明する。
【0173】
放熱モードでは、第1開閉弁14A、14Bが全開状態となり、第2、第3開閉弁32A、32B、36A、36Bが全閉状態となり、第2熱媒体ポンプ42および第2、第3ポンプ85、87が作動状態となり、第1ポンプ81および水ポンプ35が停止状態となる。
【0174】
また、放熱モードでは、第1電気式三方弁83が、第1熱交換器181の第1の熱媒体流入出部181aと第3熱交換器183の熱媒体流入部183aとの間を接続する熱媒体回路に切り替える。また、第3電気式三方弁88が、第3ポンプ87の熱媒体出口側と第1熱交換器181の第2の熱媒体流入出部181bとの間を接続する熱媒体回路に切り替える。
【0175】
これにより、図19の実線矢印に示すように、第3ポンプ87→第3電気式三方弁88→第1熱交換器181→第1電気式三方弁83→第3熱交換器183→貯留容器86→第3ポンプ87の順に第8熱媒体が循環する熱媒体回路が構成される。
【0176】
また、放熱モードでは、第2電気式三方弁84が、第2熱交換器182の第1の熱媒体流入出部182aと第2ポンプ85の熱媒体入口側との間を接続する熱媒体回路に切り替える。また、第4電気式三方弁89が、熱機関6の熱媒体出口側と第2熱交換器182の第2の熱媒体流入出部182bとの間を接続する熱媒体回路に切り替える。
【0177】
これにより、図19の実線矢印に示すように、第2ポンプ85→熱機関6→第4電気式三方弁89→第2熱交換器182→第2電気式三方弁84→第2ポンプ85の順に第8熱媒体が循環する熱媒体回路が構成される。
【0178】
以上により、蓄熱器4に蓄えられた熱により第1容器12A内の水が加熱されて蒸発し、この水蒸気が接続通路13Aを介して第1反応器11Aに流入する。そして、第1反応器11A内では、第1反応器11Aに収容されている酸化カルシウムと、第1容器12Aから流入した水蒸気とが反応し、水酸化カルシウムが生成されるとともに、反応熱が生じる。
【0179】
第1反応器11Aで上記反応の際に生じた反応熱は、第8熱媒体を介して第2容器12Bに伝熱され、この熱により第2容器12B内に収容されている水が加熱されて蒸発する。そして、第2容器12Bで蒸発した水蒸気が、接続通路13Bを介して第2反応器11Bに流入する。第2反応器11B内では、第2反応器11Bに収容されている酸化カルシウムと、第2容器12Bから流入した水蒸気とが反応し、水酸化カルシウムが生成されるとともに、反応熱が生じる。そして、この反応の際に生じた反応熱が、第8熱媒体を介して熱機関6に伝熱される。
【0180】
次に、蓄熱モードの作動について説明する。この蓄熱モードは、上記放熱モードの後に行われる。
【0181】
蓄熱モードでは、第2開閉弁32A、32Bが全開状態となり、第1、第3、第4開閉弁14A、14B、36A、36Bが全閉状態となり、第1ポンプ81が作動状態となり、第2熱媒体ポンプ42および第2、第3ポンプ85、87および水ポンプ35が停止状態となる。
【0182】
また、蓄熱モードでは、第1電気式三方弁83が、集光集熱装置2の熱媒体出口側と第1熱交換器181の第1の熱媒体流入出部181aとの間を接続する熱媒体回路に切り替える。また、第3電気式三方弁88が、第1熱交換器181の第2の熱媒体流入出部181bと集光集熱装置2の熱媒体入口側との間を接続する熱媒体回路に切り替える。
【0183】
これにより、図16の破線矢印で示すように、第1ポンプ81→分岐部82→第1電気式三方弁83→第1熱交換器181→第3電気式三方弁88→集光集熱装置2→第1ポンプ81の順に第8熱媒体が循環する熱媒体回路が構成される。
【0184】
また、蓄熱モードでは、第2電気式三方弁84が、集光集熱装置2の熱媒体出口側と第2熱交換器182の第1の熱媒体流入出部182aとの間を接続する熱媒体回路に切り替える。また、第4電気式三方弁89が、第2熱交換器182の第2の熱媒体流入出部182bと集光集熱装置2の熱媒体入口側との間を接続する熱媒体回路に切り替える。
【0185】
これにより、図16の破線矢印で示すように、第1ポンプ81→分岐部82→第2電気式三方弁84→第2熱交換器182→第4電気式三方弁89→集光集熱装置2→第1ポンプ81の順に第8熱媒体が循環する熱媒体回路が構成される。
【0186】
以上により、集光集熱装置2で集熱された太陽熱により第1、第2反応器11A、11B内の水酸化カルシウムが加熱されて、酸化カルシウムと水蒸気とに分離される。これにより、第1、第2反応器11A、11B内の水酸化カルシウムは、酸化カルシウムに再生される。これにより、太陽熱を蓄熱することができる。
【0187】
一方、第1、第2反応器11A、11Bにおいて発生した水蒸気は、凝縮器入口通路31A、31Bを介して凝縮器3に流入する。凝縮器3に流入した水蒸気は、外気により冷却されて凝縮し、凝縮器3に貯留される。
【0188】
ところで、本実施形態の貯留容器86は、蓄熱モード時に、第8熱媒体回路80のうち第1電気式三方弁83および第3電気式三方弁88により閉じられた回路部分に存在する第8熱媒体を全て収容可能な体積に構成されている。これにより、蓄熱モード時に、当該閉じられた回路部分に存在する第8熱媒体を貯留容器86内に貯留して、第1熱交換器181および第3熱交換器183内に第8熱媒体が満たされていない状態を作り出すことができるので、化学蓄熱装置の作動効率を向上させることができる。
【0189】
次に、蓄熱維持モードについて説明する。この蓄熱維持モードは、上記蓄熱モードの後に行われる。
【0190】
蓄熱維持モードでは、上記蓄熱モードに対して、第2開閉弁32A、32Bが全閉状態となる点のみ異なり、他の開閉弁やポンプは上記蓄熱モードと同様になっている。このため、酸化カルシウムと水とが空間的に隔離されるので、蓄熱状態を維持することができる。
【0191】
このとき、第3開閉弁36A、36Bを全開するとともに、水ポンプ35を作動させることで、凝縮器3に貯留された水を、凝縮器出口通路33を介して第1、第2容器12A、12Bに戻すことができる。そして、凝縮器3に貯留された全ての水を第1、第2容器12A、12Bに戻した後は、第3開閉弁36A、36Bを全閉状態とするとともに、水ポンプ35を停止状態とする。
【0192】
なお、上述した凝縮器3に貯留された水を第1、第2容器12A、12Bに戻す工程は、蓄熱維持モードに限らず、放熱モードまたは蓄熱モードにおいて実施してもよい。
【0193】
本実施形態によれば、第1、第2反応器11A、11B内の熱交換器を、それぞれ1つずつとすることができるので、簡易な構成で上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0194】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0195】
(1)上記各実施形態では、外部熱として太陽熱を用い、加熱対象物として熱機関6を用いた例について説明したが、これに限らず、例えば外部熱として工場等から排出される排熱を用い、加熱対象物として熱電変換素子や改質器を用いてもよい。
【0196】
(2)上記各実施形態では、蓄熱ユニット1A、1Bを2段設けた例について説明したが、これに限らず、3段以上設けてもよい。
【0197】
(3)上記第7、第9実施形態では、第3反応物Cとして水を用い、第4反応物Dとして酸化カルシウムを用いた例について説明したが、これに限らず、第3反応物Cおよび第4反応物Dの組み合わせとしては、外気温より低い温度で第7熱媒体を冷却できる種々の物質の組み合わせを用いることができる。
【0198】
例えば、第4反応物Dとしてゼオライト、シリカゲル、活性炭等の吸着材を用いるとともに、第3反応物Cとして水またはエタノール等と用いることができる。また、第4反応物Dとしてアルカリ土類金属のハロゲン化物(塩化カルシウムや臭化ストロンチウム等)を用いるとともに、第3反応物Cとしてアンモニアを用いてもよい。
【0199】
(4)上記第7、第9実施形態では、蓄熱モード時に、太陽熱により加熱された第1熱媒体により第4反応物収容部74内の水酸化カルシウムを加熱した例について説明したが、これに限らず、水酸化カルシウムから酸化カルシウムに再生可能な温度の熱を供給することができるものであれば、他の熱源を用いてもよい。
【0200】
(5)上記各実施形態では、第1反応器11Aと第2容器12Bとを熱的に接続するために、熱媒体を用いた例について説明したが、これに限らず、ヒートパイプ、溶融塩、または、金属等の固体による熱伝導等を用いてもよい。
【0201】
(6)上記各実施形態では、第2反応器11Bと加熱対象物(熱機関6、スターリングエンジン71の高温部71a)とを熱的に接続するために、熱媒体を用いた例について説明したが、これに限らず、ガス等の流体による伝熱、輻射による伝熱、または、溶融塩等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0202】
1A、1B 蓄熱ユニット
2 集光集熱装置(外部熱源)
3 凝縮器(凝縮手段、加熱源)
4 蓄熱器(加熱源)
6 熱機関(加熱対象物)
11A、11B 反応器
12A、12B 容器
13A、13B 接続通路
15A、15B 再生用熱交換器
300 蓄熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1反応物(A)および第2反応物(B)を反応させて化合物を生成する際に生じる反応熱によって加熱対象物(6)を加熱し、系外にて発生する熱である外部熱によって前記化合物を前記第1反応物(A)および前記第2反応物(B)に分離させて蓄熱する化学蓄熱装置であって、
前記化合物を前記外部熱により加熱する再生用熱交換器(15A、15B)と、前記第1反応物(A)とを収容する反応器(11A、11B)と、
前記第2反応物(B)を収容する容器(12A、12B)と、
前記容器(12A、12B)に収容された前記第2反応物(B)を前記反応器(11A、11B)へ導くとともに、開閉手段(14A、14B)を有する接続通路(13A、13B)とを有するM段(Mは2以上の整数)の蓄熱ユニット(1A、1B)と、
各段の前記蓄熱ユニット(1A、1B)の前記反応器(11A、11B)で前記化合物を分離させた際に生じる気体状態の前記第2反応物(B)を凝縮させる凝縮手段(3)とを備え、
M段目の前記蓄熱ユニット(1B)の前記反応器(11B)は、前記加熱対象物(6)と熱的に接続されており、
(N−1)段目(Nは2以上M以下の整数)の前記蓄熱ユニット(1A)の前記反応器(11A)は、N段目の前記蓄熱ユニット(1B)の前記容器(12B)と熱的に接続されていることを特徴とする化学蓄熱装置。
【請求項2】
1段目の前記蓄熱ユニット(1A)の前記容器(12A)が、前記1段目の前記蓄熱ユニット(1A)の前記反応器(11A)と熱的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の化学蓄熱装置。
【請求項3】
1段目の前記蓄熱ユニット(1A)の前記容器(12A)が、2段目の前記蓄熱ユニット(1B)の前記容器(12B)と熱的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の化学蓄熱装置。
【請求項4】
1段目の前記蓄熱ユニット(1A)の前記容器(12A)は、前記外部熱よりも低温の加熱源(4)と熱的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の化学蓄熱装置。
【請求項5】
前記凝縮手段は、前記気体状態の前記第2反応物(B)を凝縮させる際に生じる凝縮熱を蓄熱する蓄熱材(300)を有する凝縮器(3)であり、
前記加熱源は、前記凝縮器(3)であることを特徴とする請求項4に記載の化学蓄熱装置。
【請求項6】
前記加熱源は、前記外部熱を発生させる外部熱源(2)と熱的に接続されていることを特徴とする請求項4または5に記載の化学蓄熱装置。
【請求項7】
前記容器(12A、12B)内の前記第2反応物(B)の最高到達温度Tm[K]が、前記第2反応物(B)の臨界温度Tc[K]未満であり、
前記第2反応物(B)の臨界温度Tcにおける飽和蒸気圧をPe[Pa]としたとき、前記蓄熱ユニット(1A、1B)の耐圧Pv[Pa]は、次の数式1
(数1)
Pv>Pe
にて示される関係を満たすように設定されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の化学蓄熱装置。
【請求項8】
前記容器(12A、12B)内の前記第2反応物(B)の最高到達温度Tm[K]が、前記第2反応物(B)の臨界温度Tc[K]以上であり、
前記容器(12A、12B)内の前記第2反応物(B)の分子量をn[mol]、前記容器(12A、12B)の体積をVm[m3]、圧縮因子をz、気体定数をRとしたとき、前記蓄熱ユニット(1A、1B)の耐圧Pv[Pa]は、次の数式2
(数2)
Pv>znRT/Vm
に示される関係を満たすように設定されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の化学蓄熱装置。
【請求項9】
前記第1反応物(A)および前記第2反応物(B)から前記化合物を生成させる反応の反応熱をΔHr[J/mol]、前記第2反応物(B)の蒸発潜熱をΔHe[J/mol]、(N−1)段目の前記蓄熱ユニット(1A)の前記反応器(11A)の熱容量をQr(N−1)HM[J/K]、N段目の前記蓄熱ユニット(1B)の前記反応器(11B)の熱容量をQeNHM[J/K]、前記第1反応物(A)および前記第2反応物(B)を反応させる際の(N−1)段目の前記蓄熱ユニット(1A)の前記反応器(11A)内の目標温度をTa(N−1)[K]、前記第1反応物(A)および前記第2反応物(B)を反応させる際のN段目の前記蓄熱ユニット(1B)の前記反応器(11B)内の目標温度をTaN[K]、外気温度をTair[K]、(N−1)段目の前記蓄熱ユニット(1A)の前記反応器(11A)において前記第1反応物(A)および前記第2反応物(B)を反応させることにより得られる熱量をN−1段目発生熱量Qr(N−1)[J]、N段目の前記蓄熱ユニット(1B)の前記反応器(11B)において記第1反応物(A)および前記第2反応物(B)を反応させることにより得られる熱量をN段目発生熱量QrN[J]としたとき、次の数式3
(数3)
Qr(N−1)・ΔHr/ΔHe<QrN<{Qr(N−1)−Qr(N−1)HM・(Ta(N−1)−Tair)−QeNHM・(TaN−Tair)}・ΔHr/ΔHe
に示される関係を満たすように、前記N−1段目発生熱量Qr(N−1)および前記N段目発生熱量QrNが設定されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の化学蓄熱装置。
【請求項10】
前記加熱対象物は、作動気体を加熱膨張させる高温部(71a)および前記作動気体を冷却収縮させる低温部(71b)を有し熱エネルギを運動エネルギに変換する熱機関(71)の前記高温部(71a)であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の化学蓄熱装置。
【請求項11】
前記第1反応物(A)は、酸化カルシウムであって、
前記第2反応物(B)は、水であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の化学蓄熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−220664(P2011−220664A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267127(P2010−267127)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)