説明

化学量論量の酸を備えたシリコーンコンベヤー潤滑剤

水混和性シリコーン物質を含む組成物であってしかも化学量論量の有機酸を含む組成物を容器又はコンベヤーに施用することにより、コンベヤーに沿っての容器の通路が潤滑される。ポリエチレンテレフタレートとの潤滑組成物の適合性は、化学量論量の酸の存在に因り増加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤー潤滑剤に及び物品を運搬する方法に関する。本発明はまた、かかる潤滑剤組成物で全体的に又は部分的に被覆されたコンベヤーシステム及び容器に関する。
【0002】
背景
商業的な容器充填又は容器包装操作において、容器は、典型的には、コンベヤーシステムにより非常に高い速度にて移動される。典型的には、希薄水性潤滑剤組成物が、吹付け装置又はポンプ装置を用いてコンベヤー又は容器に施用される。これらの潤滑剤組成物は、コンベヤーの高速操作を可能にし、また容器又はラベルの擦傷を制限する。ポリエチレンテレフタレート(PET)から作られた熱可塑性プラスチック飲料容器に関して起こり得る一つの問題は、環境応力亀裂である。ポリマーにおける応力亀裂は、応力で促進された化学的劣化の結果として、加えられた応力に垂直な亀裂の発現である。典型的には、非晶質ポリマーは、応力亀裂をより受けやすい。PETの場合において、応力亀裂を最も受けやすいのは、PETボトルの基部の中心のような飲料容器の非晶領域である。応力亀裂がPETボトルの壁を貫通する時、ボトルは、漏れ又は破裂のどちらかにより壊れる。環境応力亀裂の故に、炭酸飲料で満たされたボトルは、特に高められた温度(たとえば、より暖かい天候、高められた貯蔵温度、等)において、破壊の危険性にある。環境応力亀裂の危険性は、PETに対して不適合性である物質の存在により激化される。PETと接触している場合に環境応力亀裂の発生率を増加する物質はPETに対して不適合性であると考えられ、一方環境応力亀裂の増加をもたらすことにならない物質はPETに対して適合性であると考えられる。PETボトルの破壊率は、脱イオン水と接触されていたボトルについてよりもアルカリ性水と接触されていたボトルについて大きく、かくしてアルカリ度の存在はPETボトルとの水性組成物の適合性を減少すると述べられ得る。
【0003】
コンベヤー潤滑剤組成物の作製において用いられる水がアルカリ度を含有する場合がしばしばある。たとえば、ボトル詰めプラントにおいてコンベヤー潤滑剤の希釈のために用いられる水のアルカリ度は、典型的には、CaCO3(炭酸カルシウム)のppmとして表して約10ppmと100ppmの間の範囲にある共に、時折の値は100ppmを超える。国際飲料技術者団体(the International Society of Beverage Technologists)のウェブサイトによれば、応力亀裂破壊の危険性を最小にするために、潤滑剤濃厚物組成物を希釈するために用いられる水(潤滑剤組成水)において、全アルカリ度レベル(CaCO3として表して)を50mg/L(CaCO3として50ppmと等価)未満に保つことが強く推奨される。それ故、希釈水がアルカリ度を含有する場合において、特に希釈水が50ppmを超えるそして100ppmまで及び100ppm超のアルカリ度レベル(CaCO3として測定して)を示す場合において、コンベヤー潤滑剤組成物は、PET飲料ボトルとの良好な適合性を示すことが重要である。
【0004】
シリコーン系潤滑剤がPETボトル用の好ましい潤滑剤であり、何故ならそれらは改善潤滑性及び有意に増加されたコンベヤー効率を与えるからである。シリコーン含有潤滑剤組成物は、たとえば米国特許第6,495,494号明細書(Li等,参照することによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる)に記載されている。しかしながら、水性シリコーン系潤滑剤は、ホスフェートエステル系潤滑剤のような他のタイプの潤滑剤よりもPETとの適合性が劣ると考えられ得る。たとえば、慣用の水性シリコーン潤滑剤組成物は、一般的に、高いアルカリ度の条件下で応力亀裂の比較的高い発生率を示す。それ故、コンベヤー潤滑の分野において、PETとの良好な適合性(特に、潤滑剤がアルカリ度(たとえば希釈水からの)を含有する場合において)を示す水性シリコーンコンベヤー潤滑剤であるところの満たされていないニーズがあった。
【0005】
かかる背景にて本発明がなされた。
【0006】
発明の要約
驚くべきことに、化学量論量より多い有機酸を備えたシリコーン系潤滑剤はPETとのシリコーン系潤滑剤の適合性を増加する、ということが見出された。化学量論により、潤滑剤混合物を作製するために用いられる水中に存在するアルカリ性化合物の各2当量につき少なくとも約1当量の利用可能な未中和酸が組成物中にあるような酸の量が示される。炭酸カルシウムとして50ppmのアルカリ度を備えた水は、kg当たり0.001当量のアルカリ度を含有する。それ故、水のアルカリ度が約50ppmのCaCO3に等価である場合において、化学量論量の酸は、潤滑剤組成物を作製するために用いられる水中に存在するアルカリ度と反応する前において潤滑剤組成物のキログラム当たり約0.0005当量より多い利用可能な未中和酸があるような量の酸である。従って、本発明は、一つの側面において、コンベヤーに沿って容器の通路を潤滑する方法であって、潤滑剤組成物を作製するために用いられる水中のアルカリ度の各2当量につき少なくとも1当量の利用可能な未中和酸を与えるのに十分な量の1種又はそれ以上の酸化合物を含むところの水混和性シリコーン物質の組成物を、コンベヤーの容器接触面の少なくとも一部に又は容器のコンベヤー接触面の少なくとも一部に施用することを含む方法を提供する。本発明は、別の側面において、コンベヤーに沿って容器の通路を潤滑する方法であって、水混和性シリコーン物質の組成物を施用することを含み、しかも潤滑剤組成物を作製するために用いられる水中に存在するアルカリ度と反応する前において潤滑剤組成物のキログラム当たり約0.0005当量より多い利用可能な未中和酸を潤滑剤組成物が含む方法を提供する。本発明は、別の側面において、コンベヤーに沿って容器の通路を潤滑する方法であって、CaCO3として約50ppmより多いアルカリ度を含む水で潤滑剤濃厚物が希釈される場合に約6.4より小さいpHを与えるのに十分な量の1種又はそれ以上の酸化合物を含むところの水混和性シリコーン物質の組成物を、コンベヤーの容器接触面の少なくとも一部に又は容器のコンベヤー接触面の少なくとも一部に施用することを含む方法を提供する。本発明は、別の側面において、コンベヤー潤滑剤組成物であって、水混和性シリコーン物質と、該組成物を作製するために用いられる水中に存在するアルカリ度と反応する前において潤滑剤組成物のキログラム当たり約0.0005当量より多い利用可能な未中和酸とを含むコンベヤー潤滑剤組成物を提供する。本発明は、別の側面において、潤滑剤濃厚物組成物であって、水混和性シリコーン物質と、潤滑剤濃厚物組成物のkg当たり約0.05当量より多い未中和酸とを含む潤滑剤濃厚物組成物を提供する。本発明のこれらの及び他の側面は、本発明の次の詳細な説明を参照すると明白になるであろう。
【0007】
詳細な説明
定義
次の定義用語について、異なる定義が請求項において又は本明細書の他の所において与えられていなければ、これらの定義が適用されるものとする。
【0008】
数値はすべて、本明細書において、明示的に指摘されていようといまいと用語「約」により修飾されているとみなされる。用語「約」は、一般的に、当業者が記載値と等価である(すなわち、同じ機能又は結果を有する)と考える数の範囲を指す。多くの場合において、用語「約」は、最寄の有効数字に丸められる数を包含し得る。
【0009】
重量パーセント、重量%、wt%、等は、組成物の重量により割られそして100倍された物質の重量としての物質の濃度を指す同意語である。
【0010】
端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含されるすべての数を包含する(たとえば、1から5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を包含する)。
【0011】
本明細書及び添付の請求項において用いられる場合、単数形は、別段文脈が明らかに指定しなければ、複数の指示物を包含する。
【0012】
かくして、たとえば、「ある化合物」を含有する組成物への言及は、2種又はそれ以上の化合物の混合物を包含する。本明細書及び添付の請求項において用いられる場合、用語「又は」は、一般的に、別段文脈が明らかに指定しなければ、「及び/又は」を包含する意味で用いられる。
【0013】
組成物
本発明は、被覆されたコンベヤー部品及び容器の摩擦係数を低減しそしてそれによりコンベヤーラインに沿って容器の移動を容易にする潤滑剤被膜を提供する。本発明は、一つの側面において、コンベヤーに沿って容器の通路を潤滑する方法であって、水混和性シリコーン物質の組成物をコンベヤーの容器接触面の少なくとも一部に又は容器のコンベヤー接触面の少なくとも一部に施用することを含み、しかも潤滑剤組成物を作製するために用いられる水中のアルカリ度の各2当量につき少なくとも1当量の利用可能な未中和酸を与えるのに十分な量の1種又はそれ以上の酸化合物を潤滑剤組成物が含む方法を提供する。利用可能な未中和酸は、潤滑剤組成物中に存在する1種又はそれ以上の酸化合物に由来する。組成物を作製するために用いられる水中に存在するアルカリ度と反応する前における利用可能な未中和酸の濃度は、脱イオン水でもって組成物を作製しそして酸をおおよそpH8.3まで滴定することにより又は脱イオン水で希釈された組成物中に存在する酸の濃度を処方データを用いて算出することにより決定され得る。たとえば、実施例1の潤滑剤濃厚物が168ppmの重炭酸ナトリウムを含有する水の代わりに脱イオン水で希釈されたならば、使用組成物のkg当たり0.0034当量のコハク酸及び使用組成物のkg当たり0.0009当量の水酸化ナトリウム、そしてそれ故水中に存在するアルカリ度と反応する前において使用組成物のkg当たり0.0025当量の利用可能な未中和コハク酸があることになる。潤滑剤濃厚物組成物を希釈するために用いられる水の全アルカリ度は、酸塩基滴定により決定され得る。
【0014】
たとえば、潤滑剤濃厚物組成物を希釈するために用いられる水の1000gは、0.1N−HCl溶液を用いておおよそpH4.3まで滴定され得る。この場合において、滴定液のmL当たりCaCO3としてのppmアルカリ度は、下記に従って算出され得る。すなわち、
【数1】

【0015】
本明細書における実施例において潤滑剤濃厚物組成物を希釈するために用いられた水の全アルカリ度は、処方により算出され得る。たとえば、実施例1において、168ppmのNaHCO3を含有する水のCaCO3としてのppmアルカリ度は、下記に従って算出され得る。すなわち、
【数2】

【0016】
本発明による潤滑剤組成物は、水混和性シリコーン物質に加えて未中和酸化合物を含有する。本発明の潤滑剤組成物はまた、随意に、シリコーン及び未中和酸化合物に加えて、水混和性潤滑剤、PETに対する潤滑剤の濡れを改善する湿潤剤及び他の機能成分を含み得る。
【0017】
PET中に存在するようなエステル結合は、酸又は塩基のどちらかの触媒作用の条件下で加水分解することがよく知られている。エステル結合加水分解の総合率は、ヒドロニウムイオン及び水酸化物イオンの両方が最小濃度にて存在するおおよそ中性のpHにおいて最小にある、ということが期待される。驚くべきことに、重炭酸塩アルカリ度を含有する水でもって作製されたシリコーン乳濁液系コンベヤー潤滑剤組成物の「適合性」は、潤滑剤組成物がおおよそ中性のpHを有する場合改善されないで、その代わりに潤滑剤組成物が少なくとも化学量論量の未中和酸を有する場合(この場合において、pHは約6.4より小さい)改善される、ということが分かった。たとえば、コンベヤー潤滑剤使用組成物のpHを調整して7.20まで下げるのに十分な酸の添加は、8.20に等しいpHを備えた対照組成物と比較して、潤滑剤組成物と接触された炭酸PETボトルの破壊率の減少をもたらすことにならなかった。化学量論により、潤滑剤組成物を作製するために用いられる水中に存在するアルカリ性化合物の各2当量につき少なくとも約1当量の利用可能な未中和酸が組成物中にあるような酸の量が示される。潤滑剤組成物を作製するために用いられる水がCaCO3として50ppmに等価のアルカリ度を含む場合において、化学量論量の酸は、潤滑剤組成物を作製するために用いられる水中に存在するアルカリ性化合物と反応する前において潤滑剤組成物中に約0.0005当量又はそれ以上の利用可能な未中和酸があるような量の酸である。潤滑剤使用組成物の適合性は、化学量論量の2倍又は4倍の酸がある場合に更に一層改善される。
【0018】
我々は理論により縛られたくないけれども、アルカリ度を中性pHまで中和することは適合性を改善しないと信じられ、何故ならその後に潤滑剤組成物の完全又は部分蒸発そしてその結果としての二酸化炭素の損失でpHが増加し得るからである。二酸化炭素の蒸発損失により起こり得る系pHの上昇変化を実質的に阻むために十分な酸が要求される、ということが信じられる。本明細書において用いられる場合、「系」は、PETボトルと接触している液状潤滑剤組成物、蒸発後にボトル上に残されている残留物、及び出発液と最終残留物の中間のあらゆる形態を指す。周知のヘンダーソン−ハッセルバッハの方程式によれば、酸溶液のpHは、酸が半中和されている場合すなわち溶液中に等モル濃度の酸及び共役塩基がある場合、酸のpKa値に等しい。重炭酸アニオンは、炭酸H2CO3の共役塩基である。炭酸の第一次イオン化についてのpKa値は、しばしば、おおよそ6.4として引用される(編者Weast,R.C.(1976)CRC Handbook,第57版,オハイオ州クリーブランド:Chemical Rubber Publishing Company)。この値は実際には紛らわしく、何故ならそれは溶存二酸化炭素と炭酸の間の平衡定数を組み込むからであり、そして6.4のpKa値はよりよくは炭酸でなく二酸化炭素の酸性度定数と記載される(Cotton,F.A.及びWilkinson,G.(1980)Advanced Inorganic Chemistry,第4版,ニューヨーク州ニューヨーク:John Wiley and Sons)。かくして、pH6.4付近において、重炭酸アニオンは、炭酸及び溶存二酸化炭素との複雑な平衡にて存在する。化学量論量の利用可能な未中和酸すなわち潤滑剤を作製するために用いられる水中に反応前において存在する重炭酸アニオンの各2当量につき組成物中の少なくとも約1当量の利用可能な未中和酸が与えられる場合、平衡において酸種(主として溶存二酸化炭素)の濃度はおおよその重炭酸アニオンの濃度より大きく、そして緩衝化系のpHはおおよそ6.4より小さいか又は等しい。一層好ましくは、化学量論量の2倍の利用可能な未中和酸すなわち潤滑剤を作製するために用いられる水中に反応前において存在する重炭酸アニオンの各2当量につき組成物中の2当量の利用可能な未中和酸が与えられる場合、平衡においてはるかに低い濃度の重炭酸イオンがある。
【0019】
この場合において、たとえ系からのCO2の完全損失が起こるとしても、与えられた酸の共役塩基のみしか残存せず、そしてより塩基性のそして潜在的によりPET不適合性のアニオン(炭酸イオン及び水酸化物イオンのような)を生じるべき未中和重炭酸アニオンからのCO2の更なる損失は防がれる。更に一層好ましくは、化学量論量の3倍の利用可能な未中和酸、すなわち潤滑剤を作製するために用いられる水中に反応前において存在するアルカリ度の各2当量につき組成物中の3当量の利用可能な未中和酸が与えられる。この場合において、系からのCO2の完全損失が起こるならば、添加酸とその共役塩基の混合物が存在する。驚くべきことに、組成物中の3当量又はそれ以上の利用可能な未中和酸の存在は、二酸化炭素が系から失われない場合に又はアルカリ度を含まない水でもって組成物が作製される場合に過剰の酸の存在にもかかわらず、大きく改善されたPET適合性を与えることが分かった。
【0020】
メカニズムに関係なく、本発明は、化学量論量の有機酸の存在に基づいて、先行技術及び比較の組成物と比較される場合にPETボトルにおける応力亀裂を低減することが認められた。従って、本発明の組成物は、組成物を作製するために用いられる水中のアルカリ度と反応する前において、少なくとも化学量論量の酸を含み、そして組成物を作製するために用いられる水中のアルカリ度の各2当量につき少なくとも約1当量、少なくとも約2当量又は少なくとも約3当量の酸を含む。
【0021】
水のアルカリ度が約50ppmのCaCO3に等価である場合において、化学量論量の酸は、アルカリ度と反応する前において潤滑剤混合物中に混合物のキログラム当たり約0.0005当量又はそれ以上の利用可能な未中和酸があるような量の酸である。従って、本発明の組成物は、利用可能な未中和酸を組成物のキログラム当たり少なくとも約0.0005当量、キログラム当たり少なくとも約0.001当量又はキログラム当たり少なくとも約0.002当量の量にて含む。
【0022】
化学量論量の酸すなわちアルカリ度の各2当量につき少なくとも約1当量の利用可能な未中和酸を含む組成物において、重炭酸アニオンの共役酸の濃度は、おおよその重炭酸アニオンの濃度より大きい濃度にて存在し、そしてその場合において組成物pHはおおよその二酸化炭素/重炭酸塩のpKa値(おおよそ6.4である)より小さい。従って、CaCO3として約50ppmより多いアルカリ度を含有する水でもって作製される場合、本発明の組成物は、約6.4より小さい、約6.0より小さい又は約5より小さいpHを有する。
【0023】
本発明の潤滑剤組成物は希釈されないで施用され得、あるいは使用前に希釈され得る。使用の時点において水で希釈されて使用組成物を生じ得る濃厚物の形態で本発明の組成物を提供することが望ましくあり得る。本発明の潤滑剤濃厚物組成物は、水混和性シリコーン物質と、1部の潤滑剤濃厚物を100と1000部の間の水及び/又は親水性希釈剤で希釈することからもたらされることになる潤滑剤組成物においてkg当たり少なくとも約0.0005当量の利用可能な未中和酸を与えるのに有効な量の利用可能な未中和酸とを含む。従って、潤滑剤濃厚物組成物は、リットル当たり少なくとも約0.05当量、リットル当たり少なくとも約0.1当量又はリットル当たり少なくとも約0.2当量の利用可能な未中和酸を含む。
【0024】
シリコーン物質及び酸は「水混和性」であり、すなわち所望使用レベルにて水に添加された時に安定な溶液、乳濁液又は懸濁液を形成するようにそれらは十分に水溶性又は水分散性である。所望使用レベルは、特定のコンベヤー又は容器への施用に依存して並びに用いられたシリコーン及び湿潤剤のタイプに依存して変動する。
【0025】
本発明は、1種又はそれ以上の水混和性シリコーン物質を含む。シリコーン乳濁液(メチル(ジメチル)、より高級アルキル及びアリールシリコーン、並びにクロロシラン、アミノ−、メトキシ−、エポキシ−及びビニル−置換シロキサン並びにシラノールのような官能基化シリコーンから作られた乳濁液のような)を含めて、様々な水混和性シリコーン物質が、潤滑剤組成物に用いられ得る。適当なシリコーン乳濁液は、E2175高粘度ポリジメチルシロキサン(Lambent Technologies, Inc.から商業的に入手できる60%シロキサン乳濁液)、E2140ポリジメチルシロキサン(Lambent Technologies, Inc.から商業的に入手できる35%シロキサン乳濁液)、E21456 FG食品用銘柄中粘度ポリジメチルシロキサン(Lambent Technologies, Inc.から商業的に入手できる35%シロキサン乳濁液)、HV490高分子量ヒドロキシ末端ジメチルシリコーン(Dow Corning Corporationから商業的に入手できるアニオン性30〜60%シロキサン乳濁液)、SM2135ポリジメチルシロキサン(GE Siliconesから商業的に入手できる非イオン性50%シロキサン乳濁液)及びSM2167ポリジメチルシロキサン(GE Siliconesから商業的に入手できるカチオン性50%シロキサン乳濁液)を包含する。他の水混和性シリコーン物質は、TOSPEARLTMシリーズ(Toshiba Silicone Co. Ltd.から商業的に入手できる)のような微細シリコーン粉末、並びにSWP30アニオン性シリコーン界面活性剤、WAXWS−P非イオン性シリコーン界面活性剤、QUATQ−400Mカチオン性シリコーン界面活性剤及び703特殊シリコーン界面活性剤(すべてLambent Technologies, Inc.から商業的に入手できる)のようなシリコーン界面活性剤を包含する。
【0026】
ポリジメチルシロキサン乳濁液が、好ましいシリコーン物質である。一般的に、本発明において有用な活性シリコーン物質の濃度は、シリコーン物質を乳化する又はそうでなければそれを水に対して混和性にするために用いられる分散剤、水、希釈剤又は他の成分を除いて、約0.0005wt%から約5.0wt%好ましくは0.001wt%から約1.0wt%そして一層好ましくは0.002wt%から約0.50wt%の範囲に入る。潤滑剤組成物が濃厚物の形態で提供される場合において、本発明において有用な活性シリコーン物質の濃度は、シリコーン物質を乳化する又はそうでなければそれを水に対して混和性にするために用いられる分散剤、水、希釈剤又は他の成分を除いて、約0.05wt%から約20wt%好ましくは0.10wt%から約5wt%そして一層好ましくは0.2wt%から約1.0wt%の範囲に入る。
【0027】
本発明は、1種又はそれ以上の酸化合物を含む。本発明にとって好ましい酸は約2.0と約6.4の間のpKa値を有し、すなわちそれらは比較的弱い酸である。pKa値は約6.4未満でなければならず、すなわち重炭酸アニオンが実質的にプロトン化されるように十分に強くなければならない、ということが信じられる。pKa値は、炭酸のpKa値(やはり溶存二酸化炭素、炭酸及び重炭酸アニオンの間の複雑な平衡の故におおよそ3.6である)より低いということは要求されない。約2.0を超えるpKa値を備えた酸が好ましく、何故ならより低いpKa値を備えた酸すなわちより強い酸は潤滑剤濃厚物組成物にとって及びアルカリ度を含まない水でもって作製された潤滑剤使用組成物にとって好ましくないほど低いpHをもたらすことになるからである。
【0028】
pKa値は重要であり、何故ならそれは濃厚潤滑剤組成物及び希釈使用潤滑剤組成物のpHを決定するからである。強すぎる(すなわち、約2.0未満の低pKa値を有する)酸を用いることは、濃厚潤滑剤組成物において及びアルカリ度を含有しない水で希釈された潤滑剤組成物において望ましくないほど低いpHをもたらすことになる。潤滑剤濃厚物の比較的高いpHは有益であり、何故ならそれはその組成物の腐食性を低減しそしてその組成物を製造する、包装する、輸送する及び貯蔵するのがより危険でないようにするからである。使用組成物の比較的高いpHは、その組成物をより腐食性でないようにしそして分配装置及びコンベヤー装置に対してより適合性にする。2.5と約6.4の間のpKa値を備えた無機酸の例は、ジアルキルホスホン酸化合物、ピロリン酸二水素二ナトリウム(Na2227)及び亜硝酸を包含する。有用な有機酸は、カルボン酸及びアニリニウム塩を包含する。好ましい有機酸は、カルボン酸化合物である。特に好ましい酸は、二官能性又は多官能性有機化合物である。二官能性又は多官能性により、有機化合物が1個のカルボン酸基に加えて、カルボン酸、ケトン、アルデヒド、エステル、カーボネート、尿素、アミド、エーテル、アミン、アンモニウム及びヒドロキシル基を含む群から選択された1個又はそれ以上の第2官能部を含有することが示される。カルボン酸化合物分子における第2官能基の重要性は、それが酸の揮発性及び臭気を最小にすることである。特に好ましい酸は、不快な臭気を与えないように十分に非揮発性である。本発明における有用なカルボン酸化合物は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヒドロキシコハク酸、リンゴ酸、フマル酸、イタコン酸、クエン酸及びグルコン酸、並びにカルボン酸官能性ポリマー(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びイタコン酸のホモポリマー及びコポリマーのような)、並びにそれらの混合物を包含する。本発明の組成物において、カルボン酸化合物はまた、腐食抑制剤として働き得る。好ましい酸は、商品名SOKALANTMDCS下でBASFから商業的に入手できるところのアジピン酸、グルタル酸及びコハク酸の混合物である。
【0029】
本発明の好ましい組成物特に濃厚物組成物において、酸を部分的に中和することが望ましくあり得る。本発明の潤滑剤組成物中の酸を部分的に中和することにより、潤滑剤濃厚物のpH及び低アルカリ度を備えた水を用いて作製された潤滑剤使用組成物のpHは増加され得る。潤滑剤濃厚物の比較的高いpHは有益であり、何故ならそれはその組成物の腐食性を低減しそしてその組成物を製造する、包装する、輸送する及び貯蔵するのがより危険でないようにするからである。使用組成物の比較的高いpHは、その組成物をより腐食性でないようにしそして分配装置及びコンベヤー装置に対してより適合性にする。酸化合物が部分的に中和される場合において、アルカリ性化合物が混合物を作製するために用いられる水に由来するところの混合物中のアルカリ性化合物の各当量につき少なくとも約1当量の利用可能な未中和酸が混合物中に残存することが重要である。
【0030】
本発明の好ましい組成物において、有機酸は、過酸として存在し得る。典型的には、過酸化合物は、過酸化水素及び有機酸と平衡にある。有機酸を過酸の形態で与えることにより、潤滑剤濃厚物のpHは増加され得る。
【0031】
下記に述べられるPET応力亀裂試験を用いて評価される場合にプラスチック容器における環境応力亀裂を促進し得る酸の使用を避けるように注意が払われるべきである。好ましい酸の例は、酢酸、乳酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸及びクエン酸、並びにそれらの部分中和組成物を包含する。特に好ましい潤滑剤組成物の例は、約0.001から約0.02%の水混和性シリコーン物質及び約0.01から約0.10%のクエン酸とクエン酸二水素アニオンの混合物を有するものを包含する。
【0032】
特に好ましい潤滑剤濃厚物組成物の例は、約0.10%から約2%の水混和性シリコーン物質及び約4%から約20%のクエン酸とクエン酸二水素アニオンの混合物を有するものを包含する。
【0033】
特に好ましい潤滑剤組成物は実質的に水性であり、すなわちそれらは約99%より多い水を含む。
【0034】
本発明の潤滑剤組成物はそのまま施用され得、あるいは使用前に希釈され得る。使用の時点において水で希釈されて使用組成物を生じ得る濃厚物の形態で本発明の組成物を提供することが望ましくあり得る。希釈される場合、使用の時点における希釈についての好ましい比率は、約1:100から1:1000(濃厚物の部数:水の部数)の範囲にある。
【0035】
潤滑剤組成物が濃厚物の形態で提供される場合において、使用組成物の濃度の100から1000倍において安定な組成物を形成するシリコーン物質及び酸を選択することが特に好ましい。
【0036】
好ましい潤滑剤組成物はまた、湿潤剤を含有し得る。湿潤剤を含み且つPETとの改善適合性を有する潤滑剤組成物は、代理人参照番号2259US01でもって2005年9月22日に出願された「PET表面上における良好な濡れ性を備えたシリコーン潤滑剤」という名称の譲受人の同時係属米国特許出願に開示されており、しかしてその出願は参照することによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる。化学量論量の酸及び接触角を約60度未満に下げるのに十分な湿潤剤の両方を含む組成物は相乗効果を示し得、すなわちPETボトルについての破壊率の総合低減は化学量論量の酸のみ又は湿潤剤のみのどちらかについての破壊率の低減の和より大きくあり得る。
【0037】
潤滑剤組成物は、所望されるならば機能成分を含有し得る。たとえば、組成物は、親水性希釈剤、抗微生物剤、安定/カップリング剤、清浄剤及び分散剤、抗摩耗剤、粘度調整剤、金属イオン封鎖剤、腐食抑制剤、皮膜形成物質、酸化防止剤又は帯電防止剤を含有し得る。かかる追加的成分の量及びタイプは、当業者に明らかであるであろう。
【0038】
水混和性潤滑剤
ポリオール(たとえばグリセロール及びプロピレングリコール)、ポリアルキレングリコール(たとえば、Union Carbide Corp.から商業的に入手できるCARBOWAXTMシリーズのポリエチレングリコール及びメトキシポリエチレングリコール)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの線状コポリマー(たとえば、Union Carbide Corp.から商業的に入手できるUCONTM50−HB−100水溶性エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー)及びソルビタンエステル(たとえば、ICI Surfactantsから商業的に入手できるTWEENTMシリーズ20、40、60、80及び85ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート並びにSPANTMシリーズ20、80、83及び85ソルビタンエステル)のようなヒドロキシ含有化合物を含めて、様々な水混和性潤滑剤が、潤滑剤組成物に用いられ得る。他の適当な水混和性潤滑剤は、ホスフェートエステル、アミン及びそれらの誘導体、並びに当業者に精通されている他の商業的に入手できる水混和性潤滑剤を包含する。上記の潤滑剤の誘導体(たとえば部分エステル又はエトキシレート)もまた用いられ得る。プラスチック容器を伴う施用について、下記に述べられるPET応力亀裂試験を用いて評価される場合にプラスチック容器における環境応力亀裂を促進し得る水混和性潤滑剤の使用を避けるように注意が払われるべきである。好ましくは、水混和性潤滑剤は、グリセロールのようなポリオール又はエチレンオキシドとプロピレンオキシドの線状コポリマーである。
【0039】
親水性希釈剤
適当な親水性希釈剤は、イソプロピルアルコールのようなアルコール、エチレングリコール及びグリセリンのようなポリオール、メチルエチルケトンのようなケトン、並びにテトラヒドロフランのような環状エーテルを包含する。プラスチック容器を伴う施用について、下記に述べられるPET応力亀裂試験を用いて評価される場合にプラスチック容器における環境応力亀裂を促進し得る親水性希釈剤の使用を避けるように注意が払われるべきである。
【0040】
抗微生物剤
抗微生物剤もまた添加され得る。いくつかの有用な抗微生物剤は、消毒剤、防腐剤及び保存剤を包含する。いくつかの非制限的例は、ハロ及びニトロフェノール並びに置換ビスフェノール(4−ヘキシルレゾルシノール、2−ベンジル−4−クロロフェノール及び2,4,4′−トリクロロ−2′−ヒドロキシジフェニルエーテルのような)を含めてフェノール、有機及び無機酸並びにそのエステル及び塩(デヒドロ酢酸、ペルオキシカルボン酸、ペルオキシ酢酸、過オクタン酸、メチルp−ヒドロキシ安息香酸のような)、カチオン性薬剤(第4級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物(テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムサルフェート(THPS)のような)のような)、アルデヒド(グルタルアルデヒドのような)、抗微生物性染料(アクリジン、トリフェニルメタン染料及びキニンのような)、ヨウ素を含めてハロゲン及び塩素化合物、並びに酸化剤(オゾン及び過酸化水素のような)を包含する。抗微生物剤は、所望抗微生物性を与えるべき量にて用いられ得る。いくつかの例において、該量は、全組成物の0から約20wt%の範囲にあり得る。
【0041】
安定/カップリング剤
潤滑剤濃厚物において、安定剤又はカップリング剤が、濃厚物を均質に(たとえば冷温下で)保つために用いられ得る。これらの成分のいくつかは、高濃度に因り相分離する又は層を形成する傾向を有し得る。多くの異なるタイプの化合物が、安定剤として用いられ得る。それらの例は、イソプロピルアルコール、エタノール、尿素、オクタンスルホネート、グリコール(ヘキシレングリコール、プロピレングリコール、等のような)である。安定/カップリング剤は、所望結果を生じるべき量にて用いられ得る。この量は、たとえば、全組成物の約0から約30wt%の範囲にあり得る。
【0042】
清浄剤/分散剤
清浄剤又は分散剤もまた添加され得る。清浄剤及び分散剤のいくつかの例は、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルフェノール、カルボン酸、アルキルホスホン酸並びにそれらのカルシウム、ナトリウム及びマグネシウム塩、ポリブテニルコハク酸誘導体、シリコーン界面活性剤、フッ素界面活性剤、並びに油溶化性脂肪族炭化水素鎖に結合された極性基を含有する分子を包含する。
【0043】
適当な分散剤のいくつかの例は、トリエタノールアミン、アルコキシル化脂肪アルキルモノアミン及びジアミン(ココビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、ポリオキシエチレン(5−)ココアミン、ポリオキシエチレン(15)ココアミン、タロービス(2−ヒドロキシエチル)アミンのような)、ポリオキシエチレン(15)アミン、ポリオキシエチレン(5)オレイルアミン、等を包含する。
【0044】
清浄剤及び/又は分散剤は、所望結果を生じるべき量にて用いられ得る。この量は、たとえば、全組成物の約0から約30wt%の範囲にあり得る。
【0045】
抗摩耗剤
抗摩耗剤もまた添加され得る。抗摩耗剤のいくつかの例は、亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、トリクレジルホスフェート、並びにアルキル及びアリールジスルフィド及びポリスルフィドを包含する。抗摩耗及び/又は極圧剤は、所望結果を生じるべき量にて用いられる。この量は、たとえば、全組成物の0から約20wt%の範囲にあり得る。
【0046】
粘度調整剤
粘度調整剤もまた用いられ得る。粘度調整剤のいくつかの例は、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、高分子量ポリオキシエチレン及びポリアルキルスチレンのような流動点降下剤及び粘度向上剤を包含する。該調整剤は、所望結果をもたらすべき量にて用いられ得る。いくつかの具体的態様において、粘度調整剤は、全組成物の0から約30wt%の範囲にあり得る。
【0047】
金属イオン封鎖剤
上記に挙げられた成分に加えて、他の化学物質を潤滑剤濃厚物に含めることが可能である。たとえば、軟水が入手可能でなくそして潤滑剤濃厚物の希釈のために硬水が用いられる場合、カルシウム、マグネシウム及び第1鉄イオンのような硬度カチオンが、硫酸塩及び炭酸塩のようなイオンと接触するようになるとき、界面活性剤の効能を低減する及び沈殿物を形成さえする傾向がある。硬度イオンとの錯体を形成させるために、金属イオン封鎖剤が用いられ得る。金属イオン封鎖剤分子は、硬度イオンと配位結合を形成することが可能である2個又はそれ以上の供与体原子を含有し得る。3個、4個又はそれ以上の供与体原子を有する金属イオン封鎖剤は、三座、四座又は多座配位剤と呼ばれる。一般的に、より多い数の供与体原子を備えた化合物は、より良好な金属イオン封鎖剤である。好ましい金属イオン封鎖剤は、Dow Chemicalsにより販売されているところのNa2EDTA及びNa4EDTAであるヴェルセン(Versene)製品のような、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。他の金属イオン封鎖剤のいくつかの追加的例は、イミノジコハク酸ナトリウム塩、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸一水和物、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸のナトリウム塩、N−ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸の五ナトリウム塩、N,N−ジ(ベータ−ヒドロキシエチル)グリシンの三ナトリウム塩、ナトリウムグルコヘプトネートのナトリウム塩、等を包含する。
【0048】
腐食抑制剤
有用な腐食抑制剤は、短鎖カルボキシル二酸、三酸のようなポリカルボン酸、及びホスフェートエステル、並びにそれらの組合わせを包含する。有用なホスフェートエステルは、アルキルホスフェートエステル、モノアルキルアリールホスフェートエステル、ジアルキルアリールホスフェートエステル、トリアルキルアリールホスフェートエステル、及びそれらの混合物(Witco Chemical Companyから商業的に入手できるエムフォス(Emphos)PS 236のような)を包含する。他の有用な腐食抑制剤は、トリアゾール(ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール及びメルカプトベンゾチアゾールのような並びにホスホネート(1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸のような)との組合わせにて)、及び界面活性剤(オレイン酸ジエタノールアミド、ナトリウムココアンホヒドロキシプロピルスルホネート、等のような)を包含する。有用な腐食抑制剤は、ジカルボン酸のようなポリカルボン酸を包含する。好ましい酸は、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸及びそれらの混合物を包含する。最も好ましいものは、名称SOKALANTMDCS下でBASFにより販売されている原料であるところのアジピン酸、グルタル酸及びコハク酸の混合物である。
【0049】
好ましい潤滑剤組成物は泡立ち性であり得、すなわちそれらは泡プロフィール試験を用いて測定される場合に約1.1より大きい泡プロフィール値を有し得る。泡を備えたシリコーンを含有するコンベヤー潤滑剤は、これまで知られていない。約1.1より大きい泡プロフィール値を示す潤滑剤組成物は有利であり得、何故ならそれらは潤滑剤の存在の可視指摘を呈する故、泡はノズル、刷毛又は他の施用手段により直接的に濡らされないコンベヤーの域への潤滑剤の移動を可能にする故及び泡は運搬されつつある包装品との潤滑剤組成物の接触を高める故である。潤滑剤組成物は、下記に記載される泡プロフィール試験を用いて評価される場合、好ましくは約1.1より大きい一層好ましくは約1.3より大きいそして最も好ましくは約1.5より大きい泡プロフィール値を有する。
【0050】
潤滑剤組成物は、下記に記載される短軌道コンベヤー試験を用いて評価される場合、好ましくは約0.20より小さい一層好ましくは約0.15より小さいそして最も好ましくは約0.12より小さい摩擦係数(COF)を生じる。
【0051】
様々な種類のコンベヤー及びコンベヤー部品が、潤滑剤組成物で被覆され得る。容器を支持する又は案内する又は移動させるそしてかくして好ましくは潤滑剤組成物で被覆されるところのコンベヤーの部品は、布、金属、プラスチック、複合材又はこれらの材料の組合わせで作られた表面を有するベルト、チェーン、ゲート、シュート、センサー及びランプを包含する。
【0052】
潤滑剤組成物はまた、飲料容器、食品容器、家庭向け又は商業向け洗浄製品用容器及び油、不凍液又は他の工業流体用容器を含めて、広く様々な容器に施用され得る。容器は、ガラス;プラスチック(たとえば、ポリエチレン及びポリプロピレンのようなポリオレフィン;ポリスチレン;PET及びポリエチレンナフタレート(PEN)のようなポリエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;並びにそれらの混合物又はコポリマー);金属(たとえばアルミニウム、スズ又は鋼);紙(たとえば無処理紙、処理紙、ロウ紙又は他のコーテッド紙);セラミック;及びこれらの材料の二つ又はそれ以上のラミネート又は複合材(たとえば、PET、PEN又はそれらの混合物と別のプラスチック材料とのラミネート)を含めて、広く様々な材料で作られ得る。容器は、様々なサイズ及び形態(カートン(たとえばロウ引きカートン又はTETRAPACKTM箱)、缶、ボトル、等を含めて)を有し得る。容器の任意の所望部分が潤滑剤組成物で被覆され得るけれども、潤滑剤組成物は、好ましくは、コンベヤーと又は他の容器と接触するようになる容器の部分にのみ施用される。いくつかのかかる施用について、潤滑剤組成物は、好ましくは、容器よりもむしろコンベヤーに施用される。
【0053】
潤滑剤組成物は、施用時において液体又は半固体であり得る。好ましくは、潤滑剤組成物は、それがポンプ輸送されそしてコンベヤー又は容器に容易に施用されるのを可能にする且つコンベヤーが動いていようといまいと急速な皮膜形成を容易にする粘度を有する液体である。潤滑剤組成物は、静止している時により高い粘度(たとえば非滴下性挙動)及び剪断応力(潤滑剤組成物をポンプ輸送する、吹き付ける又は刷毛塗りすることによりもたらされるもののような)を受けた時にはるかに低い粘度により発現される剪断減粘又は他の疑似塑性挙動を示すように処方され得る。この挙動は、たとえば適切なタイプ及び量のチキソトロープ充填剤(たとえば処理された又は処理されていないヒュームドシリカ)又は他のレオロジー調整剤を潤滑剤組成物に含めることによりもたらされ得る。
【0054】
施用方法
潤滑剤被膜は、不断様式又は間欠様式で施用され得る。好ましくは、潤滑剤被膜は、施用潤滑剤組成物の量を最小にするために、間欠様式で施用される。本発明の組成物は、間欠的にそして施用間において低い摩擦係数を維持する又は「乾燥」として知られた状態を避けるように施用され得る、ということが見出された。特定的には、本発明の組成物は、ある期間施用されそして次いで少なくとも15分間、少なくとも30分間又は少なくとも120分間若しくはそれ以上施用されない、ということがあり得る。施用期間は、組成物をコンベヤーベルトの全面にわたって塗布するのに十分に長くあり得る(すなわち、コンベヤーベルトの1回転)。施用期間中、実際の施用は、連続的(すなわち、潤滑剤はコンベヤー全体に施用される)又は間欠的(すなわち、潤滑剤は帯域にて施用されそして容器が潤滑剤を周囲に広げる)であり得る。潤滑剤は、好ましくは、包装品又は容器によって占められていない場所におけるコンベヤー表面に施用される。たとえば、包装品若しくは容器の流れの上流で又は容器若しくは包装品の下にて移動している且つ上流の反転コンベヤー表面上に潤滑剤噴霧を施用することが好ましい。
【0055】
いくつかの具体的態様において、施用期間対非施用期間の比率は、潤滑剤が潤滑剤の施用間において低い摩擦係数を維持する場合に1:10、1:30、1:180及び1:500であり得る。
【0056】
いくつかの具体的態様において、潤滑剤は、約0.2未満、約0.15未満及び約0.12未満の摩擦係数を維持する。
【0057】
いくつかの具体的態様において、摩擦係数が受容され得ないほど高いレベルに達する時を決定するために、フィードバックループが用いられ得る。フィードバックループは、潤滑剤組成物をある期間供給するよう始動させそして次いで随意に摩擦係数が受容され得るレベルに戻った時に潤滑剤組成物の供給を止め得る。
【0058】
潤滑剤被膜の厚さは、好ましくは少なくとも約0.0001mm一層好ましくは約0.001から約2mmそして最も好ましくは約0.005から約0.5mmに維持される。
【0059】
潤滑剤組成物の施用は、吹付け、ワイピング(「塗付け」)、刷毛塗り、浸漬塗布、ロール塗布及び薄い皮膜の施用のための他の方法を含めて、任意の適当な技法を用いて行われ得る。
【0060】
潤滑剤組成物は、所望されるならば、接触角測定試験、被膜試験、短軌道コンベヤー試験、泡プロフィール試験及びPET応力亀裂試験を用いて評価され得る。
【0061】
接触角測定試験
本発明について、バージニア州ポーツマスのFirst Ten Angstromsから入手できるFTÅ200動的接触角解析器を用いて、潤滑剤使用組成物の接触角を測定した。1インチ22ゲージ針を用いて使用組成物の小滴をメリネックス(Melinex)516未被覆ポリエチレンテレフタレートフィルムに施用し、そして該滴を該フィルムに施用した後10秒して接触角を測定した。メリネックス(Melinex)516フィルムはDupont Teijin Filmsの製品であり、そしてノースカロライナ州ハンターズビルのGE Polymershapesから枚葉にて入手できる。
【0062】
被膜試験
メリネックス(Melinex)516未被覆ポリエチレンテレフタレートフィルムのおおよそ90平方インチ試料上におおよそ4mLの潤滑剤組成物をピペットで移しそして番号6のマイヤー(Mayer)バー(ニューヨーク州ウェブスターのRD Specialtiesから入手できる)を用いて手でもって液たまりをフィルム表面に広げることにより、潤滑剤組成物の未乾燥被膜を作製した。未乾燥被膜の厚さは、おおよそ14ミクロンであった。濡れ特性及び未乾燥被膜における欠陥(玉状化及び局部脱濡れを含めて)について、未乾燥皮膜を観察した。被膜を周囲条件下で乾燥させ、そして連続性及び表面被覆パーセントを含めて乾燥皮膜の性質を記した。
【0063】
短軌道コンベヤー試験
電動式の幅83mmで長さ6.1メートルのREXNORDTMLFポリアセタール熱可塑性プラスチックコンベヤーベルトを用いるコンベヤーシステムを、30.48メートル/分のベルト速度にて作動させた。4本の20オンス充填PET飲料ボトルを輪縄で縛りそして固定歪ゲージに連結した。コンピューターを用いて、ベルトの作動中歪ゲージにかけられた力を記録した。1時間当たり合計4ガロンの潤滑剤組成物を施用する慣用の潤滑剤噴霧ノズルを用いて、潤滑剤組成物の薄い均一な被膜をベルトの表面に施用した。ベルトを25から90分間走行させ、しかしてその期間中終始一貫して低い抵抗力が観測された。抵抗力(F)を4本の20オンス充填PET飲料ボトルの重量(W)で割ることにより、摩擦係数(COF)を算出した。すなわち、COF=F/W。
【0064】
泡プロフィール試験
この試験によれば、密栓付き500mLガラスメスシリンダー中の200mLの室温潤滑剤組成物を10回反転した。10回目の反転直後、液と泡の総容量を記録した。密栓付きシリンダーを静止したままにし、そしてシリンダーの最後の反転後60秒して液と泡の総容量を記録した。泡プロフィール値は、60秒における液と泡の総容量を元の容量で割った比率である。
【0065】
PET応力亀裂試験
ボトルに炭酸水を装填し、潤滑剤組成物と接触させ、高められた温度及び湿度において28日の期間貯蔵し、そしてボトルの基部における亀裂によって破裂したか又は漏れたかのどちらかであるボトルの数を数えることにより、PET飲料ボトルとの潤滑剤組成物の適合性を決定した。標準的な20オンス「グローバル・スワール(Global Swirl)」ボトル(Constar Internationalから入手できる)に658gの0から5℃における冷水、10.6gのクエン酸及び10.6gの重炭酸ナトリウムを順次に装填した。重炭酸ナトリウムの添加直後、装填ボトルに蓋をし、脱イオン水ですすぎ、そして周囲条件(20〜25℃)にて一晩貯蔵した。このように装填された24本のボトルをボトルの基部と側壁部を隔てる継目まで潤滑剤作業組成物中に浸漬し、そしておおよそ5秒間渦動させ、次いでポリエチレン袋で内張りされた標準的バスパン(テキサス州ヒューストンのSyscoから入手できる部品番号4034039)中に置いた。追加的潤滑剤作業組成物をバスパン中のボトルの周りに注いで、パン中の潤滑剤組成物(ボトル上に持ち込まれた及び別個に注ぎ込まれた)の総量が132gに等しくなるようにした。この試験については、潤滑剤組成物を泡立てなかった。試験された各潤滑剤について、合計4つの24本ボトルのバスパンを用いた。ボトル及び潤滑剤をバスパン中に入れた直後、バスパンを100°F及び85%相対湿度の条件下の湿潤室に移した。貯蔵所を毎日点検し、そして破壊ボトル(ボトル基部における亀裂によって破裂又は液体の漏れ)の数を記録した。28日の終わりに、湿潤試験中において壊れなかったボトルの基部領域におけるひび割れの量を評価した。目視ひび割れ評点をボトルに与えた(ここで、0=ひび割れがないことが明白であり、ボトル基部は透明なままである、そして10=基部が不透明になった程度に顕著なひび割れ)。
【0066】
実施例
次の例を精査することにより、本発明はよりよく理解され得る。これらの例は例示の目的のみのためであり、そして本発明の範囲を限定しない。
【0067】
比較例A(100ppmの添加アルカリ度を備えた脱イオン水)
0.168gの重炭酸ナトリウムを1000gの脱イオン水中に溶解することにより、CaCO3として100ppmのアルカリ度を含有する脱イオン水の溶液を作製した。未中和酸当量対アルカリ性水からの塩基の当量の比率は、0対1.00であった。この溶液の濡れ挙動を上記に記載された被膜試験により評価した。被覆すると、この溶液は直ちに玉状化して孤立滴を生じ、そしてこれらの孤立滴は乾くと水の斑点を生じ、しかしてこれらの斑点はフィルム表面のおおよそ5%を覆った。このアルカリ性水溶液をPET適合性について上記に記載されたように試験した。100°F及び85%相対湿度の条件下で28日の貯蔵後、120本のボトルのうち19本(16%)が壊れていた。この試験において壊れなかったボトルについての目視ひび割れ評点は、1.4であった。
【0068】
比較例B(シリコーン+水混和性潤滑剤)
125ppmのラムベント(Lambent)E2140FGシリコーン乳濁液、7.5ppmのプルロニック(Pluronic)F108ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ブロックコポリマー、5.0ppmのメチルパラベン及び168ppmの重炭酸ナトリウム(CaCO3として100ppmのアルカリ度に等価)を含有する潤滑剤組成物を作製した。未中和酸当量対アルカリ性水からの塩基の当量の比率は、0対1.00であった。PETフィルム上におけるこの潤滑剤組成物の接触角は64度であると決定され、そしてこの潤滑剤組成物のpHは8.7であった。この潤滑剤組成物の濡れ挙動を上記に記載された被膜試験により評価した。被覆すると、この組成物は直ちに玉状化して孤立滴を生じ、そしてこれらの孤立滴は乾くと水の斑点を生じ、しかしてこれらの斑点はフィルム表面のおおよそ5%を覆った。シリコーン+水混和性潤滑剤のこの組成物をPET適合性について試験し、しかして100°F及び85%相対湿度の条件下で28日の貯蔵後、48本のボトルのうち9本(19%)が壊れていた。この比較例が示していることは、アルカリ性水へのシリコーン+水混和性潤滑剤の組成物の添加がPET適合性試験においてアルカリ性水のみと比較して破壊ボトルの割合の有意な改善をもたらさないということである。
【0069】
比較例C(市販シリコーン潤滑剤)
2500ppmのディコルーブ(Dicolube)TPB(Johnson Diverseyの製品)及び168ppmの重炭酸ナトリウム(CaCO3として100ppmのアルカリ度に等価)を含有する市販潤滑剤組成物を作製した。潤滑剤濃厚物組成物からの未中和酸当量対アルカリ性水からの塩基の当量の比率は、0対1.00であった。PETフィルム上におけるこの潤滑剤組成物の接触角は、72度であると決定された。この潤滑剤組成物の濡れ挙動を上記に記載された被膜試験により評価した。被覆すると、この組成物は直ちに玉状化して孤立滴を生じ、そしてこれらの孤立滴は乾くと水の斑点を生じ、しかしてこれらの斑点はフィルム表面の5%未満を覆った。この市販潤滑剤組成物をPET適合性について試験し、しかして100°F及び85%相対湿度の条件下で28日の貯蔵後、48本のボトルのうち7本(15%)が壊れていた。この比較例が示していることは、アルカリ性水への市販シリコーン潤滑剤の組成物の添加がPET適合性試験においてアルカリ性水のみと比較して破壊ボトルの割合の有意な改善をもたらさないということである。
【0070】
実施例1(シリコーン潤滑剤+コハク酸/コハク酸ナトリウム)
5gのラムベント(Lambent)E2140FG、7.9gのコハク酸、2.7gの50%NaOH溶液及び1.7gの18%プルロニック(Pluronic)F108ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ブロックコポリマー溶液を82.7gの脱イオン水に添加することにより、潤滑剤濃厚物組成物を作製した。1.0gのこの潤滑剤濃厚物組成物を脱イオン水中の168ppmの重炭酸ナトリウムの399gの溶液で希釈することにより、潤滑剤組成物を作製した。生じた潤滑剤組成物は、125ppmのラムベント(Lambent)E2140FGシリコーン乳濁液、7.6ppmのプルロニック(Pluronic)F108、198ppmのコハク酸、34ppmの水酸化ナトリウム及び168ppmの重炭酸ナトリウム(CaCO3として100ppmのアルカリ度に等価)を含有していた。潤滑剤濃厚物組成物からの未中和酸当量対アルカリ性水からの塩基の当量の比率は、1.25対1.00であった。この潤滑剤組成物のpHは、4.23であった。このシリコーン潤滑剤組成物をPET適合性について試験し、しかして100°F及び85%相対湿度の条件下で28日の貯蔵後、96本のボトルのうち8本(8%)が壊れていた。この試験において壊れなかったボトルについてのひび割れ評点は、1.8であった。この例が示していることは、潤滑剤希釈水中のアルカリ度の各当量につきおおよそ1.25当量の未中和酸を含めることにより、PET適合性試験においてシリコーン+水混和性潤滑剤の組成物と比較してボトルの破壊率を低減することが可能であるということである。
【0071】
実施例2(シリコーン潤滑剤+グルタル酸/グルタル酸ナトリウム)
5gのラムベント(Lambent)E2140FG、14.1gのグルタル酸、4.3gの50%NaOH溶液及び1.7gの18%プルロニック(Pluronic)F108ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ブロックコポリマー溶液を74.9gの脱イオン水に添加することにより、潤滑剤濃厚物組成物を作製した。1.0gのこの潤滑剤濃厚物組成物を脱イオン水中の168ppmの重炭酸ナトリウムの399gの溶液で希釈することにより、潤滑剤組成物を作製した。生じた潤滑剤組成物は、125ppmのラムベント(Lambent)E2140FGシリコーン乳濁液、7.6ppmのプルロニック(Pluronic)F108、353ppmのグルタル酸、54ppmのNaOH及び168ppmの重炭酸ナトリウム(CaCO3として100ppmのアルカリ度に等価)を含有していた。潤滑剤濃厚物組成物からの未中和酸当量対アルカリ性水からの塩基の当量の比率は、2.00対1.00であった。この潤滑剤組成物のpHは、4.25であった。このシリコーン潤滑剤組成物をPET適合性について試験し、しかして100°F及び85%相対湿度の条件下で28日の貯蔵後、96本のボトルのうち0本(0%)が壊れていた。この試験において壊れなかったボトルについてのひび割れ評点は、2.3であった。この例が示していることは、潤滑剤希釈水中のアルカリ度の各当量につきおおよそ2当量の未中和酸を含めることにより、PET適合性試験においてシリコーン+水混和性潤滑剤の組成物と比較してボトルの破壊率を低減することが可能であるということである。
【0072】
実施例3(シリコーン潤滑剤+クエン酸/クエン酸ナトリウム)
2.5gのラムベント(Lambent)E−2140FG、14.1gの50%クエン酸、2.2gの50%NaOH溶液、0.84gの18%プルロニック(Pluronic)F−108ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ブロックコポリマー溶液及び2.85gの35%過酸化水素溶液を74.9gの脱イオン水に添加することにより、潤滑剤濃厚物組成物を作製した。2.0gのこの潤滑剤濃厚物組成物を脱イオン水中の168ppmの重炭酸ナトリウムの398gの溶液で希釈することにより、潤滑剤組成物を作製した。生じた潤滑剤組成物は、125ppmのラムベント(Lambent)E−2140FGシリコーン乳濁液、353ppmのクエン酸、54ppmのNaOH、7.6ppmのプルロニック(Pluronic)F−108ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ブロックコポリマー、50ppmのH22及び168ppmの重炭酸ナトリウム(CaCO3として100ppmのアルカリ度に等価)を含有していた。潤滑剤濃厚物組成物からの未中和酸当量対アルカリ性水からの塩基の当量の比率は、2.08対1.00であった。このシリコーン潤滑剤組成物をPET適合性について上記に記載されたように試験した。100°F及び85%相対湿度の条件下で28日の貯蔵後、96本のボトルのうち0本(0%)が壊れていた。この試験において壊れなかったボトルについてのひび割れ評点は、1.4であった。この例が示していることは、潤滑剤希釈水中のアルカリ度の各当量につきおおよそ2当量の未中和酸を含めることにより、PET適合性試験においてシリコーン+水混和性潤滑剤の組成物と比較してボトルの破壊率を低減することが可能であるということである。
【0073】
別個の試験において、20gのこの潤滑剤濃厚物組成物を10kgの水道水で希釈し、そして摩擦係数は上記に記載された短軌道コンベヤー試験を用いた。4本の20オンス「グローバル・スワール(Global Swirl)」ボトルとデルリン(Delrin)軌道との間の摩擦係数は、0.13であった。
【0074】
実施例4(シリコーン潤滑剤+クエン酸/クエン酸ナトリウム+アルコールエトキシレート湿潤剤)
2.5gのダウ・コーニング(Dow Corning)HV−490シリコーン乳濁液、7.0gのクエン酸、2.1gの50%NaOH溶液、2.0gのトマドール(Tomadol)91−8アルコールエトキシレート及び2.85gの35%H22溶液を83.6gの脱イオン水に添加することにより、潤滑剤濃厚物組成物を作製した。1.0gのこの潤滑剤濃厚物組成物を脱イオン水中の168ppmの重炭酸ナトリウムの399gの溶液で希釈することにより、潤滑剤組成物を作製した。生じた潤滑剤組成物は、63ppmのダウ・コーニング(Dow Corning)HV−490シリコーン乳濁液、175ppmのクエン酸、26ppmのNaOH、50ppmのトマドール(Tomadol)91−8アルコールエトキシレート、25ppmのH22及び168ppmの重炭酸ナトリウム(CaCO3として100ppmのアルカリ度に等価)を含有していた。潤滑剤濃厚物組成物からの未中和酸当量対アルカリ性水からの塩基の当量の比率は、1.00対1.00であった。この潤滑剤組成物のpHは、5.94であった。PETフィルム上におけるこの潤滑剤組成物の接触角は、58度であると決定された。この潤滑剤組成物の濡れ挙動を上記に記載された被膜試験により評価した。被覆すると、この組成物は直ちに玉状化しそして乾くと斑点を生じ、しかしてこれらの斑点はPET表面の5%未満を覆った。この組成物について上記に記載されたように測定された泡プロフィール値は、1.3であった。このシリコーン潤滑剤組成物をPET適合性について、20オンス「グローバル・スワール(Global Swirl)」ボトルをSoutheastern Container Corp.(ノースカロライナ州エンカ)から入手できる20oz「コンツアー(Contour)」ボトルで置き換えたこと以外は記載されたように試験した。100°F及び85%相対湿度の条件下で28日の貯蔵後、96本のボトルのうち1本(1%)が壊れていた。この試験において壊れなかったボトルについてのひび割れ評点は、3.4であった。この例が示していることは、潤滑剤希釈水中のアルカリ度の各当量につきおおよそ1当量の未中和酸を含めそして潤滑剤組成物の接触角を約60度未満に低減することにより、PET適合性試験においてシリコーン+水混和性潤滑剤の組成物と比較してボトルの破壊率を低減することが可能であるということである。別個の試験において、20gのこの潤滑剤濃厚物組成物を10kgの水道水で希釈し、そして摩擦係数は上記に記載された短軌道コンベヤー試験を用いた。4本の20オンス「グローバル・スワール(Global Swirl)」ボトルとデルリン(Delrin)軌道との間の摩擦係数は、0.11であった。
【0075】
比較例D(200ppmの添加アルカリ度を備えた脱イオン水)
0.336gの重炭酸ナトリウムを1000gの脱イオン水中に溶解することにより、CaCO3として200ppmのアルカリ度を含有する脱イオン水の溶液を作製した。未中和酸当量対アルカリ性水からの塩基の当量の比率は、0対1.00であった。PETフィルム上におけるこの溶液の接触角は、67度であると決定された。この溶液の濡れ挙動を上記に記載された被膜試験により評価した。被覆すると、この溶液は直ちに玉状化して孤立滴を生じ、そしてこれらの孤立滴は乾くと水の斑点を生じ、しかしてこれらの斑点はフィルム表面のおおよそ5%を覆った。この溶液について上記に記載されたように測定された泡プロフィール値は、1.0であった。このアルカリ性水溶液をPET適合性について上記に記載されたように試験した。100°F及び85%相対湿度の条件下で28日の貯蔵後、96本のボトルのうち20本(21%)が壊れていた。この試験において壊れなかったボトルについての目視ひび割れ評点は、1.7であった。
【0076】
比較例E(シリコーン+水混和性潤滑剤)
5gのラムベント(Lambent)E2140FG、1.7gの18%プルロニック(Pluronic)F108ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ブロックコポリマー溶液、5.7gの35%過酸化水素及び0.4gの1%クエン酸溶液を87.2gの脱イオン水に添加することにより、潤滑剤濃厚物組成物を作製した。2.0gのこの潤滑剤濃厚物組成物を脱イオン水中の336ppmの重炭酸ナトリウムの398gの溶液で希釈することにより、潤滑剤組成物を作製した。生じた潤滑剤組成物は、250ppmのラムベント(Lambent)E2140FGシリコーン乳濁液、15.0ppmのプルロニック(Pluronic)F108、0.2ppmのクエン酸及び336ppmの重炭酸ナトリウム(CaCO3として200ppmのアルカリ度に等価)を含有していた。潤滑剤濃厚物組成物からの未中和酸当量対アルカリ性水からの塩基の当量の比率は、0.001対1.00であった。この潤滑剤組成物のpHは、8.20であった。このシリコーン潤滑剤組成物をPET適合性について試験し、しかして100°F及び85%相対湿度の条件下で28日の貯蔵後、288本のボトルのうち45本(16%)が壊れていた。この比較例が示していることは、アルカリ性水へのシリコーン+水混和性潤滑剤の混合物の添加がPET適合性試験においてアルカリ性水のみと比較して破壊ボトルの割合の有意な改善をもたらさないということである。
【0077】
比較例F(シリコーン+アジピン酸)
5gのラムベント(Lambent)E2140FG、1.7gの18%プルロニック(Pluronic)F108ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ブロックコポリマー溶液、5.7gの35%過酸化水素及び1.0gのアジピン酸を87.8gの脱イオン水に添加することにより、潤滑剤濃厚物組成物を作製した。2.0gのこの潤滑剤濃厚物組成物を脱イオン水中の334ppmの重炭酸ナトリウムの398gの溶液で希釈することにより、潤滑剤組成物を作製した。生じた潤滑剤組成物は、250ppmのラムベント(Lambent)E2140FGシリコーン乳濁液、15.3ppmのプルロニック(Pluronic)F108、50ppmのアジピン酸及び334ppmの重炭酸ナトリウム(CaCO3として200ppmのアルカリ度に等価)を含有していた。潤滑剤濃厚物組成物からの未中和酸当量対アルカリ性水からの塩基の当量の比率は、0.17対1.00であった。この潤滑剤組成物のpHは、7.20であった。このシリコーン潤滑剤組成物をPET適合性について試験し、しかして100°F及び85%相対湿度の条件下で28日の貯蔵後、120本のボトルのうち21本(18%)が壊れていた。この試験において壊れなかったボトルについてのひび割れ評点は、2.4であった。この比較例が示していることは、シリコーン潤滑剤組成物におけるおおよそpH7へのアルカリ度の中和がPET適合性試験においてシリコーン潤滑剤組成物と又はアルカリ性水のみと比較してボトルの破壊率を低減しなかったということである。
【0078】
実施例5(シリコーン潤滑剤+脂肪アミン+アルコールエトキシレート湿潤剤+乳酸)
29gの氷酢酸及び80.0gのデュオミーン(Duomeen)OL(イリノイ州シカゴのAkzo Nobel Surface Chemistry LLCから入手できる)を691gの脱イオン水に添加することにより、酸性化脂肪アミン溶液を作製した。25.0gの酸性化脂肪アミン溶液、8.0gのサーフォニック(Surfonic)L 24−7界面活性剤、6.5gの88%乳酸及び2.5gのラムベント(Lambent)E2140FGシリコーン乳濁液を58.0gの脱イオン水に添加することにより、潤滑剤濃厚物組成物を作製した。5.0gのこの潤滑剤濃厚物組成物を1000gの脱イオン水中の0.168gの重炭酸ナトリウムの溶液に添加することにより、潤滑剤組成物を作製した。この潤滑剤組成物は、125ppmのラムベント(Lambent)E2140FGシリコーン乳濁液、125ppmのデュオミーン(Duomeen)OL、400ppmのサーフォニック(Surfonic)L 24−7、286ppmの乳酸及び168ppmの重炭酸ナトリウム(CaCO3として100ppmのアルカリ度に等価)を含有していた。潤滑剤濃厚物組成物からの未中和酸当量対アルカリ性水からの塩基の当量の比率は、1.59対1.00であった。PETフィルム上におけるこの潤滑剤組成物の接触角は、39度であると決定された。この潤滑剤組成物の濡れ挙動を上記に記載された被膜試験により評価した。被覆すると、この組成物はおおよそ30個の消しゴムサイズ脱濡れ斑点を有する皮膜を生じ、そしてこの皮膜は乾くと不完全皮膜を生じ、しかしてこの皮膜はPET表面のおおよそ75%を覆った。この組成物について上記に記載されたように測定された泡プロフィール値は、1.7であった。この潤滑剤組成物をPET適合性について、20オンス「グローバル・スワール(Global Swirl)」ボトルをSoutheastern Container Corp.(ノースカロライナ州エンカ)から入手できる20oz「コンツアー(Contour)」ボトルで置き換えたこと以外は記載されたように試験した。100°F及び85%相対湿度の条件下で28日の貯蔵後、96本のボトルのうち0本(0%)が壊れていた。この試験において壊れなかったボトルについての目視ひび割れ評点は、7.6であった。この例が示していることは、シリコーン潤滑剤組成物への酸性化脂肪アミン化合物とアルコールエトキシレート化合物との混合物を含む湿潤剤及び化学量論量の有機酸の添加がシリコーン+水混和性潤滑剤の組成物と比較してPET表面への該組成物の濡れの改善及びPET適合性試験において破壊ボトルの割合の改善をもたらすということである。
【0079】
本発明の様々な改変及び変更が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなしに当業者に明らかであり、そして添付の請求項の範囲内にあるよう意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤーに沿って容器の通路を潤滑する方法であって、
a. 潤滑剤濃厚物組成物であって
i. 約0.05%から約20%の水混和性シリコーン物質、及び
ii. 該潤滑剤濃厚物を希釈するために用いられる水中のアルカリ度の各2当量につき少なくとも1当量の利用可能な未中和酸を与えるのに十分な量の1種又はそれ以上の酸化合物
を含む潤滑剤濃厚物組成物を用意し、
b. 1部の潤滑剤濃厚物対100から1000部の水の比率にて該潤滑剤濃厚物を水で希釈して潤滑剤使用組成物を作り、そして
c. 該潤滑剤使用組成物を該コンベヤーの容器接触面の少なくとも一部に又は該容器のコンベヤー接触面の少なくとも一部に施用する
ことを含む方法。
【請求項2】
潤滑剤濃厚物組成物を希釈するために用いられる水が、CaCO3として約50ppmより多いアルカリ度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シリコーン物質が、シリコーン乳濁液、微細シリコーン粉末及びシリコーン界面活性剤から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
潤滑剤濃厚物組成物が、更に、水混和性潤滑剤、湿潤剤、親水性希釈剤、抗微生物剤、安定/カップリング剤、清浄剤/分散剤、抗摩耗剤、粘度調整剤、金属イオン封鎖剤、腐食抑制剤及びそれらの混合物の群から選択された1つ又はそれ以上の機能成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
潤滑剤使用組成物のpHが、約6.4より小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
容器が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びビスフェノールAカーボネートの群から選択された1種又はそれ以上のポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
潤滑剤濃厚物組成物が、潤滑剤濃厚物組成物を希釈するために用いられる水中のアルカリ度の各2当量につき少なくとも2当量の利用可能な未中和酸を与えるのに十分な量の1種又はそれ以上の酸化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
潤滑剤濃厚物組成物が、潤滑剤濃厚物組成物を希釈するために用いられる水中のアルカリ度の各2当量につき少なくとも3当量の利用可能な未中和酸を与えるのに十分な量の1種又はそれ以上の酸化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
潤滑剤使用組成物をある期間施用しそしてある期間中断し、しかも施用期間対中断期間の比率が少なくとも1:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
潤滑剤濃厚物組成物が、酢酸、乳酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸及びクエン酸並びにそれらの混合物から成る群から選択された1種又はそれ以上の有機カルボン酸化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
コンベヤーに沿って容器の通路を潤滑する方法であって、
a. 潤滑剤濃厚物組成物であって
i. 約0.05%から約20.0%の水混和性シリコーン物質、及び
ii. 潤滑剤使用組成物を作製するために用いられる水中のアルカリ度と反応する前において該潤滑剤濃厚物組成物のkg当たり約0.05当量より多い酸
を含む潤滑剤濃厚物組成物を用意し、
b. 該潤滑剤濃厚物組成物を水で希釈して潤滑剤使用組成物を作り、そして
c. 該潤滑剤使用組成物を該コンベヤーの容器接触面の少なくとも一部に又は該容器のコンベヤー接触面の少なくとも一部に施用する
ことを含む方法。
【請求項12】
潤滑剤濃厚物組成物を希釈するために用いられる水が、CaCO3として約50ppmより多いアルカリ度を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
シリコーン物質が、シリコーン乳濁液、微細シリコーン粉末及びシリコーン界面活性剤から成る群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
潤滑剤組成物が、更に、水混和性潤滑剤、湿潤剤、親水性希釈剤、抗微生物剤、安定/カップリング剤、清浄剤/分散剤、抗摩耗剤、粘度調整剤、金属イオン封鎖剤、腐食抑制剤及びそれらの混合物の群から選択された1つ又はそれ以上の機能成分を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
容器が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びビスフェノールAカーボネートの群から選択された1種又はそれ以上のポリマーを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
潤滑剤濃厚物組成物が、使用組成物を作製するために用いられる水中のアルカリ度と反応する前において濃厚物組成物のkg当たり約0.1当量より多い酸を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
潤滑剤濃厚物組成物が、使用組成物を作製するために用いられる水中のアルカリ度と反応する前において濃厚物組成物のkg当たり約0.15当量より多い酸を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
潤滑剤組成物をある期間施用しそしてある期間中断し、しかも施用期間対中断期間の比率が少なくとも1:1である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
潤滑剤濃厚物組成物が、酢酸、乳酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸及びクエン酸並びにそれらの混合物から成る群から選択された1種又はそれ以上の有機カルボン酸化合物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
潤滑剤濃厚物組成物であって、シリコーン乳濁液、微細シリコーン粉末及びシリコーン界面活性剤から成る群から選択された約0.05%から約20%の水混和性シリコーン物質と、該濃厚物組成物のkg当たり約0.05当量より多い未中和酸とを含み、しかも該酸が酢酸、乳酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸及びクエン酸並びにそれらの混合物から成る群から選択される潤滑剤濃厚物組成物。
【請求項22】
濃厚物組成物のkg当たり約0.1当量より多い未中和酸を含む、請求項21に記載の潤滑剤濃厚物組成物。
【請求項23】
濃厚物組成物のkg当たり約0.15当量より多い未中和酸を含む、請求項21に記載の潤滑剤濃厚物組成物。

【公表番号】特表2009−509025(P2009−509025A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532211(P2008−532211)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/023300
【国際公開番号】WO2007/040678
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(500320453)イーコラブ インコーポレイティド (120)
【Fターム(参考)】