説明

化成液加温システム及びその停止方法

【課題】塗装ラインに用いる化成液加温システムにおいて、熱交換器内部のスラッジの発生を抑制する。
【解決手段】化成液を貯留する化成槽11と、温水を貯留する温水槽21と、その一方の流路10aが化成槽11に接続され、他方の流路10bが温水槽21に接続され、各流路10a,10bに流れる化成液と温水との間で熱交換を行う熱交換器10と、を備える化成液加温システム100において、置換水を貯留する置換水タンク41と、置換水タンク41と、熱交換器10の流路10aとを接続する置換水供給流路46と、置換水供給流路46を開閉する弁44と、弁44の開閉を行う制御部50と、を含み、制御部50は、化成液加温システム100を停止する際に、弁44を開として、熱交換器10内の流路10aに置換水を供給し、熱交換器10内の化成液を置換水に置換する停止手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化成液加温システムの構造及びその停止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装ラインでは、ワークに塗装を行う際に前処理として油分の除去、下地被膜処理を行うため、それぞれの処理エリアが隣接するようにラインに配置されている。例えば、ワークに電着塗装を施すための塗装ラインでは、ワークは30℃程度の温水で湯洗いされて塵埃などが除去された後、搬送装置によって脱脂処理エリアに搬送される。脱脂処理エリアでは、50℃程度に加温された脱脂液をワークに吹き付けることによって脱脂が行われる。脱脂された後、ワークは水洗エリアに搬送され、水洗水を吹き付けることによって脱脂洗浄液が洗い流され、搬送装置によって化成処理エリアに搬送される。化成処理エリアでは、35から50℃に加温した化成液をワークに吹き付けてワーク表面の化成処理を行う。化成処理の終了したワークは、搬送装置によって化成処理後の水洗処理装置に搬送され、水洗水を吹き付けられて洗浄が行われる。このように、脱脂、化成処理、水洗の各工程によって前処理されたワークは、搬送装置によって電着塗装を行う電着槽に浸漬されて電着塗装が行われる。
【0003】
このような前処理で用いられる化成液は、常に35から50℃程度の温度にしておくことが必要となるので、化成槽内の化成液は、60〜80℃程度に加温されている温水が流れる熱交換器の流路を循環することによって35℃から50℃程度に加温保持されているよう構成されている。加温用の温水は、化成槽の近くに設けられ、外部から導入する蒸気でその温度が60〜80℃に保持される温水槽から熱交換器に供給されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】2004−238681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、化成液は、リン酸溶液の中に亜鉛、ニッケル、鉄などの金属イオンが含まれているものであり、加温されると加水分解してリン酸鉄、リン酸亜鉛などのスラッジが発生する。温水との熱交換器の中では、化成液は50〜80℃の温水によって35〜50℃に加温されるので、この加温によって熱交換器の化成液が流れている流路の中にスラッジが発生する。発生したスラッジは流路の内部に堆積し、流路の抵抗を増加させたり、一部の熱交換器の流路を閉塞したりするという問題が発生する。
【0006】
特に、塗装ラインが停止して、化成液が熱交換器の流路を循環しなくなると、熱交換器に残留した化成液は熱交換器の中に残留している60〜80℃の温水と熱交換器の壁を通して長時間接触するので、その温度が残留している温水と同様の温度である60〜70℃にまで上昇してくる。化成液の加水分解によるスラッジの発生は、化成液の温度が高いほど大きくなることから、塗装ラインの停止中に熱交換器内部の化成液の流路内面には多くのスラッジが堆積してくるという問題があった。また、塗装ラインは、24時間稼動するものもあるが、夜間は停止するものが多い。このため、夜間の停止中に熱交換器の化成液の流路内に多くのスラッジが堆積してしまうという問題があった。
【0007】
このように流路内面にスラッジが堆積した場合の対処方法としては、従来から、流路内面を酸液で洗浄する酸洗が用いられてきた。例えば、化成液のスラッジが多く堆積して配管の圧力損失が大きくなった場合には、硝酸溶液を熱交換器の化成液の流路に循環させてスラッジを溶解洗浄する方法が一般的であった。
【0008】
ところが、酸液による洗浄は、一週間に一回程度の頻度で行うことが必要である上、洗浄液の排水処理が必要であり、更に洗浄中は塗装ラインを停止することが必要となることから、塗装ラインの生産効率が低くなってしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、塗装ラインに用いる化成液加温システムにおいて、熱交換器内部のスラッジの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の化成液加温システムは、ワーク表面の化成処理を行う化成液を貯留する化成槽と、加熱源によって加熱された温水を貯留する温水槽と、その一方の流路が化成槽に接続され、他方の流路が温水槽に接続され、各流路に流れる化成液と温水との間で熱交換を行う熱交換器と、を備える化成液加温システムであって、置換水を貯留する置換水タンクと、置換水タンクと熱交換器のいずれか一方または両方の流路とを接続する置換水供給流路と、置換水供給流路を開閉する弁と、弁の開閉を行う制御部と、を含み、制御部は、化成液加温システムを停止する際に、弁を開として、熱交換器内のいずれか一方または両方の流路内に置換水を供給し、熱交換器内の流体を置換水に置換する停止手段を備えること、を特徴とする。
【0011】
本発明の化成液加温システムにおいて、置換水は、水道水、工業用水または化成処理後のワークを水洗する水洗水、イオン交換水、逆浸透膜でろ過したRO水であること、としても好適である。
【0012】
本発明の化成液加温システムの停止方法は、ワーク表面の化成処理を行う化成液を貯留する化成槽と、加熱源によって加熱された温水を貯留する温水槽と、その一方の流路が化成槽に接続され、他方の流路が温水槽に接続され、各流路に流れる化成液と温水との間で熱交換を行う熱交換器と、置換水を貯留する置換水タンクと、置換水タンクと熱交換器のいずれか一方または両方の流路とを接続する置換水供給流路と、置換水供給流路を開閉する弁と、を備える化成液加温システムの停止方法であって、化成液加温システムを停止する際に、弁を開として、熱交換器内のいずれか一方または両方の流路内に置換水を供給し、熱交換器内の流体を置換水に置換すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、塗装ラインに用いる化成液加温システムにおいて、熱交換器内部のスラッジの発生を抑制することが出来るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態における化成液加温システムが用いられる塗装ラインの構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態における化成液加温システムの構成を示す系統図である。
【図3】本発明の実施形態における化成液加温システムの動作を表すフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施形態における化成液加温システムの構成を示す系統図である。
【図5】本発明の他の実施形態における化成液加温システムの構成を示す系統図である。
【図6】本発明の他の実施形態における化成液加温システムの構成を示す系統図である。
【図7】本発明の他の実施形態における化成液加温システムの構成を示す系統図である。
【図8】本発明の他の実施形態における化成液加温システムの構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、化成液加温システム100は、塗装システム500の表面処理エリア501に用いられる。表面処理エリア501は、ワーク600を搬送するレール510と、脱脂洗浄用の溶液を貯留する脱脂槽502と脱脂洗浄後の水洗水を貯留する水洗槽505と、表面調整用の溶液を貯留する表面調整槽507と、化成処理用の化成液を貯留する化成槽11と、化成処理後の水洗水を貯留する化成系水洗槽61とを備えている。脱脂槽502と化成槽11とはそれぞれ温水槽504,21に接続されている熱交換器503,10が接続され、脱脂洗浄用の溶液、化成液は所定の温度に加温されるよう構成されている。また、各槽には各槽に貯留されている溶液をワーク600に向けてスプレーするスプレーノズル506が設けられ、各溶液が外部に飛び散らないように、スプレーエリアには囲い511が設けられている。表面処理エリア501で前処理の終わったワーク600は塗装エリアに搬送される。
【0016】
図2に示すように、化成液加温システム100は、化成液を貯留する化成槽11と、温水を貯留する温水槽21と、化成液と温水との熱交換を行う熱交換器10と、置換水を貯留する置換水タンク41と、化成液循環系110と、温水循環系120と、置換水供給系130とを備えている。
【0017】
化成液循環系110は、化成槽11に接続され、熱交換器10に化成液を循環させる化成液循環ポンプ12と、化成液の循環流路を開閉する化成槽出口電動弁13と、化成槽11と熱交換器10の化成液側流路10aの入口側とを接続する化成液入口管14と、熱交換器10の化成液側流路10aの出口側に接続される化成液出口管15と、化成液出口管15に取り付けられる手動弁16と、手動弁16から化成槽11の上部に化成液を導く化成液戻り管17とを備えている。また、化成槽11には貯留されている化成液の温度を計測するための温度センサ18が取り付けられている。
【0018】
温水循環系120は、温水槽21に接続され、熱交換器10に温水を循環させる温水循環ポンプ22と、温水槽21と熱交換器10の温水側流路10bの入口側とを接続する温水入口管23と、熱交換器10の温水側流路10bの出口側に接続される温水出口管24と、温水出口管24に接続されて温水を温水槽21の上部に導く温水戻り管25とを備えている。また、温水槽21には、加温用の蒸気を導入する蒸気管26が接続され、蒸気管26には蒸気の流量を調整する蒸気流量調節弁27が取り付けられている。温水槽21の内部には蒸気管26から導入された蒸気を分配する分配管28が取り付けられている。また、温水槽21には貯留されている温水の温度を計測するための温度センサ29が取り付けられている。
【0019】
置換水供給系130は、水道水、工業用水、イオン交換水、逆浸透膜でろ過したRO水等の置換水を貯留する置換水タンク41と、置換水タンク41と化成槽出口電動弁13の下流側の化成液入口管14とを接続する置換水供給管46と、置換水を化成液循環系110に供給する置換水供給ポンプ43と、置換水供給ポンプ43の出口側の置換水供給管46に取り付けられた置換水供給電磁弁44と、逆止弁45とを備えている。置換水タンク41の上部には水道などの給水源に接続され、置換水タンク41に置換水を給水する置換水給水管48が設けられ、置換水給水管48には給水電磁弁47が取り付けられている。また、置換水タンク41の上部には置換水タンク41の水位を計測する水位計42が取り付けられている。
【0020】
また、本実施形態の化成液加温システム100は、化成液循環系110に接続され、酸洗液を化成液循環系110に循環させる酸洗系200が設けられている。酸洗系200は、酸洗液を貯留する酸洗槽31と、酸洗液を循環させる酸洗液循環ポンプ32と、酸洗槽31と化成液出口管15とを接続する酸洗液供給管33と、化成液入口管14と酸洗槽31とを接続する酸洗液排出管37と、酸洗液供給管33に接続され、水道水、工業用水、イオン交換水、逆浸透膜でろ過したRO水等の給水を導入する給水管38と手動弁34,35,36,39とを備えている。スラッジによって熱交換器10の化成液側流路10aの圧力損失が大きくなった場合には、図1に示す塗装システム500を停止して、化成液循環系110の化成槽出口電動弁13と手動弁16とを閉とし、手動弁34,35を開として酸洗液循環ポンプ32を起動して酸洗液を酸洗槽31と熱交換器10の化成液側流路10aとの間で循環させて、スラッジの洗浄を行う。スラッジの洗浄が終了したら、手動弁34,35を閉として手動弁36,39を開として熱交換器10の化成液側流路10aに給水を流して酸洗液を排出する。
【0021】
化成液循環ポンプ12と、温水循環ポンプ22と、置換水供給ポンプ43と、酸洗液循環ポンプ32と、化成槽出口電動弁13と、置換水供給電磁弁44と、給水電磁弁47と蒸気流量調節弁27とは制御部50に接続され、制御部50の指令によって駆動されるよう構成されている。また、温度センサ18、水位計42と、温度センサ29は制御部50に接続され、その信号が制御部50に入力されるよう構成されている。制御部50は内部に演算と信号処理を行うCPUと制御用プログラムや制御用データが格納されているメモリを含むコンピュータである。また、制御部50には化成槽加温システム100の起動停止を行う起動停止ボタン51が接続されている。起動停止ボタン51は塗装ライン全体の起動停止を行うようにしてもよい。起動停止ボタン51が押されると化成液加温システム100が起動し、運転中に起動停止ボタン51が押されると化成液加温システム100は停止動作を行った後、停止する。
【0022】
以上のように構成された化成液加温システム100の通常の運転について説明する。図1に示す塗装システム500が運転を開始すると、化成槽11に貯留されている化成液は化成槽11の下部から化成液循環ポンプ12によって化成液入口管14から熱交換器10の化成液側流路10aに入り、熱交換器10の中で温水と熱交換してその温度が上昇した後、化成液出口管15から手動弁16と化成液戻り管17を通って化成槽11の上部に戻る。一方の温水は、温水槽21から熱交換器10の温水入口管23から温水側流路10bに入り、熱交換器10の中で化成液と熱交換してその温度が低下した後、温水出口管24から温水戻り管25を通って温水槽21の上部に戻る。温水槽21の温水の温度は温度センサ29によって検出され、制御部50は、温水の温度に応じて蒸気流量調節弁27の開度を調整し、温水の温度が60から80℃に保たれるように調整する。また、制御部50は温度センサ18によって化成液の温度を取得し、化成液の温度に応じて温水循環ポンプ22の流量を変化させ、化成液の温度が35〜50℃になるように制御する。また、制御部50は温水循環ポンプ22をオンオフ動作させて化成液の温度を調整するようにしても良い。
【0023】
次に本実施形態の化成液加温システム100の停止の際の動作について説明する。図3のステップS101に示すように、制御部50は起動停止ボタン51の信号を取得し、図3のステップS102に示すように、起動停止ボタン51が押されたかどうかを判断する。そして、運転中に起動停止ボタン51が押されたと判断した場合には、図3のステップS103に示すように停止動作を開始する。制御部50は、図3のステップS104に示すように化成液循環ポンプ12を停止させた後、図3のステップS105に示すように、化成槽出口電動弁13を閉とする。そして、制御部50は、図3のステップS106に示すように、置換水供給電磁弁44を開として図3のステップS107に示すように置換水供給ポンプ43を起動する。すると、置換水タンク41の置換水は置換水タンク41から置換水供給管46を通って化成槽出口電動弁13下流側の化成液入口管14に流入する。そして置換水は化成液入口管14から熱交換器10の化成液側流路10aに向って内部に滞留している化成液を押し出しながら流れていく。そして、置換水は化成液出口管15から化成液戻り管17を通って化成槽11に流れ込む。化成液入口管14の置換水の流入点から熱交換器10の化成液側流路10a出口までの容量の例えば3倍など所定量の置換水を化成液循環系に流入させると、熱交換器10の化成液側流路10aの内部に滞留している化成液を置換水に置換することが出来る。また、化成液入口管14の置換水の流入点から化成液戻り管17までの容量の例えば3倍など所定量の置換水を化成液循環系に流入させると、熱交換器10の化成液側流路10a及び化成液入口管14、化成液出口管15及び化成液戻り管17の内部に残留している化成液を置換水に置換することができる。置換水は水道水、工業用水、イオン交換水、逆浸透膜でろ過したRO水等でリン酸や各種金属成分を含んでいないことから、熱交換器10の化成液側流路10aを置換水に置換すると、化成液加温システム100が停止している間に熱交換器10の化成液側流路10aの内面にスラッジが発生することを抑制することが出来る。
【0024】
置換水を熱交換器10に流入させると、次第に置換水タンク41のレベルが低下してくる。制御部50は図3のステップS108に示すように、水位計42から置換水タンクレベルを取得し、図3のステップS109に示すように、そのレベルがLレベルになったかどうかを判断する。そして、置換水タンク41のレベルがLレベルとなったら図3のステップS110に示すように、置換水供給ポンプ43を停止し、図3のステップS111に示すように置換水供給電磁弁44を閉とする。そして、制御部50は、図3のステップS112に示すように、給水電磁弁47を開として置換水タンク41に給水を開始する。制御部50は、図3のステップS113に示すように、置換水タンク41のレベルを水位計42によって取得し、図3のステップS114に示すように、そのレベルがHレベルまで上昇したかどうかを判断する。そして、置換水タンク41のレベルがHレベルまで上昇したら図3のステップS115に示すように給水電磁弁47を閉とし、図3のステップS116に示すように停止動作を終了する。
【0025】
置換水タンク41のHレベルと、Lレベルはそれぞれ置換水タンク41の高水位、低水位であり、HレベルとLレベルとの間の置換水タンク41の容量が先に説明した所定の置換水の量となるように決められる。置換水タンク41の容量があまり大きくない場合には、置換水タンクがLレベルとなるまで置換水を流出させた後、一度置換水供給ポンプ43を停止して給水電磁弁47を開として置換水タンク41のレベルをHレベルまで上昇させた後、再度置換水供給ポンプ43を起動して置換水を化成液循環系110に注入するようにしても良い。
【0026】
本実施形態は、置換水を化成液循環系110に流入させて熱交換器10の化成液側流路10aに残留している化成液を水道水、工業用水、イオン交換水、逆浸透膜でろ過したRO水等のリン酸や各種金属成分を含んでいない置換水に置換することにより、化成液加温システム100が停止している間に熱交換器10の化成液側流路10aの内面にスラッジが発生することを抑制することが出来るという効果を奏する。
【0027】
本実施形態では、起動停止ボタン51によって停止動作を開始することとして説明したが、起動停止ボタン51を設けず、他のスイッチによって停止動作を開始することとしても良いし、塗装システム500全体の操作盤の停止ボタンなどのスイッチがオンとなったことに連動して化成液加温システム100の停止動作を開始することとしてもよい。
【0028】
図4を参照しながら、本発明の他の実施形態について説明する。先に図1から図3を参照して説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。本実施形態の置換水供給系131は、置換水タンク41を化成槽11や熱交換器10よりも高い位置に配置し、その水頭差によって置換水を置換水タンク41から化成液入口管14に流すようにしたもので、置換水供給ポンプ43は配置されていない。制御部50は起動停止ボタン51が押されて化成液加温システム100の停止動作を開始したら、置換水供給電磁弁44を開として置換水で熱交換器10の化成液側流路10aを置換する。本実施形態は先に説明した実施形態と同様、化成液加温システム100が停止している間に熱交換器10の化成液側流路10aの内面にスラッジが発生することを抑制することが出来るという効果を奏する。
【0029】
図5を参照しながら、本発明の他の実施形態について説明する。先に図1から図3を参照して説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。本実施形態の置換水供給系140は、置換水供給ポンプ43の出口で置換水供給管46を化成液入口管14に接続される化成液循環系110用の置換水供給管46aと、温水入口管23に接続される温水循環系120用の置換水供給管46bとに分岐し、それぞれの置換水供給管46a,46bに置換水供給電磁弁44a,44b、逆止弁45a,45bを設けたものである。制御部50は、起動停止ボタン51が押されて化成液加温システム100の停止動作を開始すると、各置換水供給電磁弁44a,44bを開として置換水を熱交換器10の化成液側流路10aと温水側流路10bとに流入させ、先に説明した実施形態と同様、熱交換器10の化成液側流路10aの化成液、温水側流路10bの温水を置換水に置換する。
【0030】
また、本実施形態では、制御部50は、起動停止ボタン51が押されて化成液加温システム100の停止動作の際に温水循環系120に接続されている置換水供給電磁弁44bのみを開として置換水を熱交換器10の温水側流路10bに流入させ、先に説明した実施形態と同様、熱交換器10の温水側流路10bの温水とを置換水に置換することとしてもよい。この場合、熱交換器10の内部に滞留している70から80℃程度の温水を常温の置換水に置換することによって熱交換器10を冷却し、熱交換器10の化成液側流路10aに化成液が残留している場合でも化成液加温システム100の停止中に熱交換器10の内部の化成液の温度が上昇して化成液が加水分解することを抑制し、スラッジの発生を抑制することが出来るという効果を奏する。
【0031】
図6を参照しながら、本発明の他の実施形態について説明する。先に図1から図3を参照して説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。本実施形態の置換水供給系132は、図6に示すように、熱交換器10の化成液出口管15と化成液戻り管17との間に熱交換器出口電動弁19を設け、化成液出口管15から化成系水洗槽61に延びる置換水戻り管49を設け、置換水戻り管49に置換水戻り電動弁49aを設けたものである。制御部50は、起動停止ボタン51が押されて化成液加温システム100の停止動作を開始すると、化成槽出口電動弁13と熱交換器出口電動弁19とを閉とし、置換水供給電磁弁44と置換水戻り電動弁49aとを開として置換水を熱交換器10の化成液側流路10aに流入させ、熱交換器10から排出された化成液或いは置換水を置換水戻り管49から置換水タンク41に戻す。そして置換水供給ポンプ43を所定時間運転し、所定量の置換水を化成液循環系110に注入したら置換水供給ポンプ43の運転を停止する。このように、熱交換器10の化成液側流路10a、化成液入口管14、化成液出口管15の内部に残留していた化成液は、置換水によって押し出されて置換水戻り管49から置換水タンク41に流入する。置換水タンク41は熱交換器10の化成液側流路10a、化成液入口管14、化成液出口管15の容量に比較して非常に大きいことから化成液が流入しても化成液の成分濃度は僅かにしか上昇しない。そして、化成液成分の濃度が上昇してもその濃度は低く、化成液加温システム100が停止中に加温されてもスラッジはほとんど発生しない。本実施形態では、置換水が循環することから、置換水タンク41のタンクレベルは変化しないので、置換水供給ポンプ43を停止した後に置換水タンク41のレベルを上昇させる必要はない。本実施形態は、先に図5を参照して説明した実施形態の効果に加えて、置換水を循環させるため、更に使用水量を低減させることができるという効果を奏する。なお、本実施形態では、置換回数が多くなると置換水中の化成成分濃度が上昇してくるので、所定回数の置換を行った後、置換水タンク41をブローし、給水電磁弁47を開として置換水タンク41に置換水を張り直す。
【0032】
図7を参照しながら、本発明の他の実施形態について説明する。先に図1から図3を参照して説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。本実施形態の置換水供給系150は、置換水タンク41に貯留した置換水の代わりに化成処理系の化成系水洗槽61に貯留されている化成系水洗水によって熱交換器10の化成液側流路10aを置換するように構成したものであり、他の構成は図1から図3を参照して説明した実施形態と同様である。化成系化成系水洗槽61に貯留された水は、水洗水ポンプ68によって図1に示すスプレーノズル506からワーク600にスプレーされ、ワーク600を水洗した後、化成系水洗槽61に戻ってくるものであり、その中に微量の化成液の成分を含んでいるものであるが、化成液成分の濃度が非常に低いため温度が上昇してもほとんどスラッジは発生しないものである。本実施形態は、先に説明した実施形態の効果に加えて、水道水や工業用水或いはイオン交換水や逆浸透膜でろ過したRO水等を置換水として給水する必要が無く、使用水量を低減させることができるという効果を奏する。
【0033】
図8を参照しながら、本発明の他の実施形態について説明する。先に図7を参照して説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。本実施形態の置換水供給系151は、図8に示すように、熱交換器10の化成液出口管15と化成液戻り管17との間に熱交換器出口電動弁19を設け、化成液出口管15から化成系水洗槽61に延びる水洗水戻り管69を設け、水洗水戻り管69に水洗戻り電動弁62を設けたものである。制御部50は、起動停止ボタン51が押されて化成液加温システム100の停止動作を開始すると、化成槽出口電動弁13と熱交換器出口電動弁19とを閉とし、置換水供給電磁弁44と水洗戻り電動弁62とを開として水洗水を熱交換器10の化成液側流路10aに流入させ、熱交換器10から排出された化成液或いは水洗水を水洗水戻り管69から化成系水洗槽61に戻す。そして置換水供給ポンプ43を所定時間運転し、所定量の水洗水を化成液循環系110に注入したら置換水供給ポンプ43の運転を停止する。このように、熱交換器10の化成液側流路10a、化成液入口管14、化成液出口管15の内部に残留していた化成液は、水洗水によって押し出されて水洗水戻り管69から化成系水洗槽61に流入する。化成系水洗槽61は熱交換器10の化成液側流路10a、化成液入口管14、化成液出口管15の容量に比較して非常に大きいことから化成液が流入してもその濃度は僅かにしか上昇しない。そして、化成液成分の濃度が上昇してもその濃度は低く、化成液加温システム100が停止中に加温されてもスラッジはほとんど発生しない。本実施形態では、水洗水が循環することから、化成系水洗槽61のタンクレベルは変化しないので、給水系はなく、置換水供給ポンプを停止した後に化成系水洗槽61のレベルを上昇させる必要はない。本実施形態は、先に図7を参照して説明した実施形態の効果に加えて、水洗水を循環させるため、更に使用水量を低減させることができる上、水位計や給水電磁弁などが不要でシステムを簡便にすることができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0034】
10,503 熱交換器、10a 化成液側流路、10b 温水側流路、11 化成槽、12 化成液循環ポンプ、13 化成槽出口電動弁、14 化成液入口管、15 化成液出口管、16,34,35,36,39 手動弁、17 化成液戻り管、18 温度センサ、19 熱交換器出口電動弁、21,504 温水槽、22 温水循環ポンプ、23 温水入口管、24 温水出口管、25 温水戻り管、26 蒸気管、27 蒸気流量調節弁、28 分配管、29 温度センサ、31 酸洗槽、32 酸洗液循環ポンプ、33 酸洗液供給管、37 酸洗液排出管、38 給水管、41 置換水タンク、42 水位計、43 置換水供給ポンプ、44,44a,44b 置換水供給電磁弁、45,45a,45b 逆止弁、46,46a,46b 置換水供給管、47 給水電磁弁、48 置換水給水管、49 置換水戻り管、49a 置換水戻り伝動弁、50 制御部、51 起動停止ボタン、61 化成系水洗槽、62 水洗戻り電動弁、68 水洗水ポンプ、69 水洗水戻り管、100 化成液加温システム、110 化成液循環系、120 温水循環系、130 置換水供給系、200 酸洗系、500 塗装システム、501 表面処理エリア、502 脱脂槽、506 スプレーノズル、507 表面調整槽、510 レール、600 ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク表面の化成処理を行う化成液を貯留する化成槽と、
加熱源によって加熱された温水を貯留する温水槽と、
その一方の流路が化成槽に接続され、他方の流路が温水槽に接続され、各流路に流れる化成液と温水との間で熱交換を行う熱交換器と、を備える化成液加温システムであって、
置換水を貯留する置換水タンクと、
置換水タンクと熱交換器のいずれか一方または両方の流路とを接続する置換水供給流路と、
置換水供給流路を開閉する弁と、
弁の開閉を行う制御部と、を含み、
制御部は、
化成液加温システムを停止する際に、弁を開として、熱交換器内のいずれか一方または両方の流路内に置換水を供給し、熱交換器内の流体を置換水に置換する停止手段を備えること、
を特徴とする化成液加温システム。
【請求項2】
請求項1に記載の化成液加温システムであって、
置換水は、水道水、工業用水又は、化成処理後のワークを水洗する水洗水、イオン交換水、逆浸透膜でろ過したRO水であること、
を特徴とする化成液加温システム。
【請求項3】
ワーク表面の化成処理を行う化成液を貯留する化成槽と、
加熱源によって加熱された温水を貯留する温水槽と、
その一方の流路が化成槽に接続され、他方の流路が温水槽に接続され、各流路に流れる化成液と温水との間で熱交換を行う熱交換器と、
置換水を貯留する置換水タンクと、
置換水タンクと熱交換器のいずれか一方または両方の流路とを接続する置換水供給流路と、
置換水供給流路を開閉する弁と、を備える化成液加温システムの停止方法であって、
化成液加温システムを停止する際に、弁を開として、熱交換器内のいずれか一方または両方の流路内に置換水を供給し、熱交換器内の流体を置換水に置換すること、
を特徴とする化成液加温システムの停止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−32566(P2011−32566A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183035(P2009−183035)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(591008502)日本ペイントプラント・エンジニアリング株式会社 (3)