説明

化粧建築板の塗装方法

【目的】 塗装手段としてインクジェットプリント方式を利用することによってタイル・レンガ調のように溝部を介して区画した複数の凸部を形成した建築板においても区画された部分についてランダムに所望のぼかし色柄模様が簡単に得られる化粧建築板の塗装方法を提供する。
【構成】 表面に溝部32を介して区画した複数の凸部33を形成した基板31を用い、該基板31の表面の全体に下地塗膜を形成した後、該基板31の前記凸部33上の一部をインクジェットプリンタ−1の第1塗装ヘッド3の塗料8によりスポット的に塗装し、続いて第2塗装ヘッド4の前記塗料とは異色の塗料9によりスポット的に塗装し、乾燥することを特徴とする化粧建築板の塗装方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、縦横に溝部で区画されたタイル・レンガ調を呈する凸部を有する建築板、特に複数の異色の塗料を用いることによって前記凸部における色調をぼかし模様としたタイル・レンガ調の化粧建築板の塗装方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、タイル・レンガ調の化粧建築板は、セメント板、セメント珪酸カルシウム板などの基板の表面にエンボス成型あるいは切削加工により縦横に溝部を形成し、溝部の色彩と溝部で区画された凸部の色彩を違えて、溝部がタイル・レンガの目地模様に見えるようにツ−トンカラ−に塗装されている。この化粧建築板の塗装方法としては、特開平4−215872号のように、凹凸化粧板の全面に目地模様の色彩を現わす塗料を塗布、乾燥させた後、凸部表面のみにタイル模様の色彩を現わす塗料を塗着させ、次いで該塗料が未乾燥のうちに平坦な弾性体を押圧し、押圧状態のままで凹凸化粧板を移送して、凸部表面に塗料を押し延ばしてから乾燥する塗装方法が存在する。しかしながら、この塗装方法では、凹凸化粧板を移送しながら塗料を押し延ばす方法であるため、凸部表面をランダムに塗装することはできなかった。
【0003】また、特開昭64−63073号のように、フロ−コ−タ−ヘッドにノズルを設け、吐出口より主着色塗料を吐出すると同時にノズルより異色塗料を供給、合流させ、建材表面へ塗布することにより、2色以上のぼかし模様とされた表面着色塗装の建材の塗装方法が存在する。しかしながら、この塗装方法では、フロ−コ−タ−にノズルを併設し、塗料を供給する方式であるため、塗料が混ざり合い、主着色塗装部分を安定確実に塗装し難い欠点があると共に、建材の進行方向に全く無関係なパタ−ンのぼかし模様の塗装が困難であり、特に溝部を介して区画された凸部を有するタイル・レンガ調の建築板においては部分的にぼかしたい部分のみをぼかし模様とすることはできないという問題を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、塗装手段としてインクジェットプリント方式を利用することによってタイル・レンガ調のように溝部を介して区画した複数の凸部を形成した建築板においても区画された部分についてランダムに所望のぼかし色柄模様が簡単に得られる化粧建築板の塗装方法を提供し、もって上記従来技術の問題を解決しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、表面に溝部を介して区画した複数の凸部を形成した基板を用い、該基板の表面の全体に下地塗膜を形成した後、該基板の前記凸部上の一部をインクジェットプリンタ−の第1塗装ヘッドの塗料によりスポット的に塗装し、続いて第2塗装ヘッドの前記塗料とは異色の塗料によりスポット的に塗装し、乾燥することを特徴とする化粧建築板の塗装方法を要旨とするものである。
【0006】
【作用】この塗装方法にあっては、後述の実施例に記載のように基板の所望の凸部上の一部が第1および第2塗装ヘッドの塗料で所望の異色の混じり合ったぼかし色柄模様にスポット的に塗装されたり、あるいは、基板の所望の凸部上の一部がそれぞれ第1塗装ヘッドの塗料で所望の色柄模様に、第2塗装ヘッドの上記とは異色の塗料で所望の異色の色柄模様に、第1及び第2塗装ヘッドの塗料で所望の異色の混じり合ったぼかし色柄模様にそれぞれスポット的に組合せ塗装される。
【0007】
【実施例】次に本発明の実施例を図1〜図4に基づいて説明する。先ず本例に用いるインクジェットプリンタ−1について述べると、図1、図2において、2は建築板用基板31を前方に搬送するコンベアであり、コンベア2の上方の前後に近接して第2塗装ヘッド4、第1塗装ヘッド3が備えられ、これら第1塗装ヘッド3、第2塗装ヘッド4の下端にはそれぞれコンベア2の巾方向全体に亘ってジェットノズル5〜5、5〜5が所要のピッチで並列されている。第1塗装ヘッド3、第2ヘッド4にはそれぞれ塗料タンク6、7内の塗料8、9を送り込むポンプ10、10が接続されると共にレリ−フ弁11、11を介して塗料タンク6、7が接続されている。
【0008】12、13はそれぞれ第1塗装ヘッド3、第2塗装ヘッド4の各ジェットノズル5〜5、5〜5をそれぞれ開閉動作する弁14〜14、14〜14を個別に制御するバルブ制御装置、15は塗装すべき色柄模様に対応する色柄パタ−ンを記録したパタ−ンデ−タ、16はインプットされたパタ−ンデ−タ15に基づきバルブ制御装置12、13に制御信号を発するコンピュ−タ−、17は投光器18と受光器19をコンベア2上の基板搬送路の両側の所定位置に設けた光電管式センサ−であって、検出信号をコンピュ−タ−16に送信する。20はコンベア2の駆動ロ−ル21に連結したエンコ−ダ−であって、極小回転角、例えば2000分の360度の極小回転角毎にコンピュ−タ−16にパルスを送信する。
【0009】しかして、本例方法にあっては、表面に縦横の溝部32〜32を介してレンガ調に多数の凸部33〜33を区画りしたセメントを主体とした基板31を用い、該基板31表面にアクリル系のシ−ラ−を60〜80g/m2 塗布し乾燥して下地シ−ラ−塗膜を形成する。次いでその上に溝部32〜32の色調で中塗塗装して中塗塗膜を形成する。次いで、必要により中塗塗膜の上に溝部32〜32の色調とは異なる色調で上塗塗装して上塗塗膜を形成する。次いで、この中塗り又は上塗り処理された基板31をコンベア2によりインクジェットプリンタ−1へ送り、塗装を行なうが、この塗装方法について以下詳述する。
【0010】先ず、溝部32〜32で区画された凸部33〜33のうち、塗料8を基調とし塗料9を複合したぼかし色柄模様34、塗料9を基調とし塗料8を複合したぼかし色柄模様35、これら塗料8、9を略等分に複合したぼかし色柄模様36を形成しようとする凸部33〜33を決め、そのパタ−ンデ−タ15をコンピュ−タ−16にインプットする。一方、塗料タンク6、7にはそれぞれぼかし色柄模様34、35、36の基色となる異色の塗料8、9を収容する。
【0011】そこで、上記中塗り処理された基板31がコンベア2上を前送されて来ると、該基板31の前端部の所定位置到来をセンサ−17が検出して検出信号をコンピュ−タ−16に送信する。一方、コンベア2の作動に伴い、駆動ロ−ル21に設けたエンコ−ダ−20からパルスがコンピュ−タ−16に発信されている。コンピュ−タ−16は、上記センサ−17からの信号により上記パルスを計数し始め、該パルス数が予め記憶させた設定領域に至ると、パルス数に応じ前記パタ−ンデ−タ15に基づく制御信号を逐次、バルブ制御装置12、13に送信指令し、これによりバルブ制御装置12、13が第1、第2塗装ヘッド3、4の弁14〜14、14〜14を個別に開閉制御し、第1、第2塗装ヘッド3、4にある塗料8、9が弁14〜14、14〜14の開放時にジェットノズル5〜5、5〜5から前記搬送中の基板31表面の凸部33〜33の所要位置に噴出して前記パタ−ンデ−タ15に基づくぼかし色柄模様34、35、36を凸部33〜33に塗装し、所期の化粧建築板37が得られる。
【0012】なお、上述から解るように、第2塗装ヘッド4は第1塗装ヘッド3に対し所定距離前方に位置するので、この距離に対応するエンコ−ダ−20からのパルス数だけ第1塗装ヘッド3と第2塗装ヘッド4とは時系列的に差を設けたパタ−ンデ−タ−15としてある。
【0013】この方法にあっては、第1塗装ヘッド3と第2塗装ヘッド4が直近の位置に配設されているので、第1塗装ヘッド3の塗料8と第2塗装ヘッド4の塗料9とが基板の所望の凸部33〜33でわずかに混じり合い、これら塗料8、9の混合したぼかし色柄模様34、35、36が現出された風趣のあるレンガ調の化粧建築板37となっている。なお、以上のようにして塗装された化粧建築板37は、最後にクリア−塗装を行ない、乾燥して市販製品とする。
【0014】<具体例> 上例において、ジェットノズル5〜5の内径200μm、並列ピッチ1.5 mm、第1塗装ヘッドの塗料8、第2塗装ヘッドの塗料9としてそれぞれ薄い黒系統の塗料、薄い茶系統の塗料を用い、コンベア2速度15〜20m/分、ジェットノズル5〜5による噴射回数を基板31の送り方向で30cm当り200回の割、すなわち、噴射ピッチ1.5 mmで行なったところ、ぼかし色柄模様34、35、36にはそれぞれ黒調赤褐色状、茶調赤褐色状、赤褐色状のぼかし色柄模様が現出した。このぼかし色柄模様の現出は、第1塗装ヘッドと第2塗装ヘッドが20〜30cmと直近の位置に設置されているので、第1塗装ヘッドからジェットノズルを経て噴射塗装された塗料が乾燥しないうちに、その塗料の上に第2塗装ヘッドから噴射塗装された塗料がスポット的に塗り重ねられる結果、第1塗装ヘッドの塗料と第2塗装ヘッドの塗料とが混じり合うと共に、塗料噴射点の周辺へ拡がり、不均一な混ざり合いを起し趣のある色合いを呈するものである。特に、第1、第2塗装ヘッドの塗料をスポット的にウエット状態で塗り重ね塗装しているので、塗料噴射点そのままの斑点状態が現われることもなく、塗料どうしがうまく混合するものである。又、塗り重ねを行う第1、第2塗装ヘッドの塗料の噴射点を建築板の部分によっては密に、あるいはある部分は疎にパタ−ン化しておくことによって、前記の塗料の混ざり合いがより変化に富んだものとなり、画一化が防止でき、自然的な風合いを醸し出すものである。なお、第1塗装ヘッドの塗料の噴射点はできるだけ密な部分が多いほど第2塗装ヘッドの塗料との混ざりあいがしやすくなり、ぼかし色柄模様がきれいに仕上がるものである。
【0015】また本発明の方法は、上例の外、図5に示すように曲線や斜方向を伴う溝部42〜42で区画された凸部43〜43を有する基板41についても上例同様の方法によって上例同様のぼかし色柄模様44、45、46を形成することができる。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように本発明の方法においては、塗装手段としてインクジェットプリンタ−の第1、第2塗装ヘッドの異色の塗料の噴出によってタイル・レンガ調のように溝部を介して区画した複数の凸部を形成した建築板においても、区画された凸部についてランダムに所望のぼかし色柄模様が簡単に得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一例方法を実施する装置の右側面略図である。
【図2】 同上装置の正面略図である。
【図3】 同上方法により得た一例化粧建築板の平面図である。
【図4】 同上化粧建築板の一部分の拡大斜面図である。
【図5】 同上方法により得た別例化粧建築板の平面略図である。
【符号の説明】
1 インクジェットプリンタ−
3 第1塗装ヘッド
4 第2塗装ヘッド
8 塗料
9 塗料
31 基板
32 溝部
33 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面に溝部を介して区画した複数の凸部を形成した基板を用い、該基板の表面の全体に下地塗膜を形成した後、該基板の前記凸部上の一部をインクジェットプリンタ−の第1塗装ヘッドの塗料によりスポット的に塗装し、続いて第2塗装ヘッドの前記塗料とは異色の塗料によりスポット的に塗装し、乾燥することを特徴とする化粧建築板の塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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