説明

化粧材繰出容器

【課題】オネジが形成された押出杆とメネジ筒の組み付け性を向上し、オネジとメネジの強い螺合力を得る。
【解決手段】化粧材Aが内挿される先筒10と、先筒10に回転自在に組み付けられる基筒20と、外周にオネジ33が形成され先筒10と基筒20との相対回転によって進退して化粧材Aを先端開口孔11から進出させる押出杆30と、オネジ33と螺合するメネジ43が内周に形成されるとともに基筒20の内周に係合して同期回転するメネジ筒40とを備え、メネジ筒40は、メネジ筒40の他の部分より薄く形成された割溝46を有し、割溝46の周の一部が割られて切断部47が形成された状態で押出杆30に組み付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧材の繰出機構に関する発明で、化粧材繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧材繰出容器で、繰出しリードを小さくしようとすると、繰出し部材のオネジのリードは小さく製作される。このオネジに螺合するメネジ部材を組付けるときには、何回転もしないと所定の位置に来ないため、非常に組付けが困難であった。そのため、組付を簡単にするメネジ筒が提案されるようになった。
【0003】
特許文献1には、スライダのおねじ部と螺合する中ねじ部材の周の一部に割り溝が形成され、割溝の反対側の外周に空隙部が形成される回転式棒状物繰り出し具が開示されている。この回転式棒状物繰り出し具では、中ねじ部材の空隙部を狭まらせて割り溝を拡げることによって、中ねじ部材をスライダのおねじ部に螺合可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3724769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の回転式棒状物繰り出し具では、中ねじ部材を手作業によって大きく変形させて割り溝を拡げた状態でスライダに組み付けるため、中ねじ部材とスライダとの組み付けに手間がかかる。また、中ねじ部材は変形しやすいため、スライダの繰出摺動がスムーズにできなくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、前記問題点を解決し、オネジが形成された押出杆とメネジ筒の組み付け性を向上し、オネジとメネジの強い螺合力を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、先端に先端開口孔が形成され、化粧材が内挿される先筒と、前記先筒に回転自在に組み付けられる基筒と、外周にオネジが形成され、前記先筒と前記基筒との相対回転によって進退して前記化粧材を前記先端開口孔から進出させる押出杆と、前記オネジと螺合するメネジが内周に形成されるとともに、前記基筒の内周に係合して同期回転するメネジ筒と、を備える化粧材繰出容器であって、前記メネジ筒は、当該メネジ筒の他の部分より薄く形成された割溝を有し、当該割溝の周の一部が割られて切断部が形成された状態で前記押出杆に組み付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メネジ筒の周の一部が割られた切断部を有する割溝が形成されるため、オネジとメネジとが螺合しなくなる程度までメネジ筒の径を拡げた状態で、メネジ筒を軸方向にスライドさせて押出杆に組み付けることが可能である。
【0009】
したがって、オネジが形成される押出杆とメネジ筒の組み付け性が向上し、オネジとメネジの強い螺合力を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る化粧材繰出容器を示す斜視図である。
【図2】(A)は、化粧材が下降限にあるときの化粧材繰出容器の断面図であり、(B)は、図2(A)における左側面の断面図である。
【図3】図1の化粧材繰出容器に使用される各部材を示し、(C)は先筒、(D)は押出杆、(E)は基筒、(F)はストッパー部材をあらわしている。
【図4】(G)は、図1の化粧材繰出容器に使用されるメネジ筒の拡大図であり、(Ga)は、メネジ筒を成形する際のパーティングラインを示す図であり、(Gb)は、メネジ筒を成形する際の金型の構成図である。
【図5】(H)は、本発明の第2の実施の形態に係る化粧材繰出容器を示す正面の断面図であり、(I)は、図5(H)における左側面の断面図である。
【図6】(J)は、本発明の第3の実施の形態に係る化粧材繰出容器の断面図であり、(J’)は、図6(J)におけるA−A断面図であり、(K)は、メネジ筒の拡大図であり、(L)は、切断片が除去されてスリットが形成されたメネジ筒の拡大図である。
【図7】図6の化粧材繰出容器に使用される各部材を示し、(M)は先筒、(N)は基筒、(O)は押出杆及びメネジ筒をあらわしている。(M’)は、図7(M)におけるB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
以下、図1から図4を参照しながら、本発明の第1の実施の形態に係る化粧材繰出容器1について説明する。
【0013】
化粧材繰出容器1、は図1に示す如く、容器本体2と、この容器本体2に被冠されるキャップ3とによって構成される。
【0014】
図2(A)及び図2(B)は、容器本体2の縦一部断面図を示すものである。化粧材Aは、先筒10の先端開口孔11より液状にて充填され、冷却して固化されたものである。図2(B)は、図2(A)に記載の容器本体2を中心軸まわりに90度回転させた状態を示す図である。
【0015】
図3及び図4は、容器本体2の各部材を示す図で、図3(C)は先筒10を、図3(D)は押棒としての押出杆30を、図3(E)は基筒20を、図3(F)はストッパー部材50を示す図である。又、図4(G)は、メネジ筒40を示す図である。
【0016】
以下、容器本体2を構成する各部材について詳細に説明する。
【0017】
図3(C)に示す先筒10は、円筒形状をなし、軸方向に挟持部15、大径部16、及び基筒嵌入部17を有する。先筒10の内周には、化粧材Aが内挿される腔部12が形成され、内周の下端には回転止凸部13が突設されている。
【0018】
又、挟持部15の外周には、キャップ嵌合部14が形成され、基筒嵌入部17の外周には、基筒嵌合部19が形成される。又、先筒10の内周には、貫通孔18が穿設され、先端には先端開口孔11が形成される。
【0019】
図3(D)に示す押出杆30は、先筒10内の腔部12を軸方向に摺動移動する部材である。押出杆30は、軸方向先端に形成される頭部31と、頭部31から延設される棒軸32と、棒軸32の外周に形成されるストローク長のオネジ33,33’とを有する。オネジ33,33’は、180度間隔で一対、離間して形成される。
【0020】
オネジ33とオネジ33’との間には、先筒10の回転止凸部13に係合する回転止溝34が凹溝として形成される。又、棒軸32の後端付近には、ストッパー部材50が嵌着されるU溝39が形成される。
【0021】
又、頭部31は天面38を有し、Oリング溝36にはOリングが巻装される。これにより、先筒10と押出杆30との間からの化粧材Aの漏れを防止している。
【0022】
図3(E)に示す基筒20は、底面25を有する有底の円筒体形状に形成される。基筒20の内周には、先筒10と回動可能に連結される嵌合凹部22と、メネジ筒40が載置される段部24と、メネジ筒40の外周より突設される後述する縦リブ44と係合するローレット23とが形成される。基筒20は、先筒10に相対回転自在に同軸に組み付けられる。
【0023】
図3(F)に示すストッパー部材50は、空間部52を有する円筒状弾性体である。ストッパー部材50は、内周の凸条51と押出杆30のU溝39との嵌合によって固定される。ストッパー部材50は、その前端面53がメネジ筒40の下端面49b(図4(G)参照)と当接することで押出杆30の上昇限としている。また、押出杆30aの頭部31の下端面37(図3(D)参照)が先筒10における回転止凸部13の上端部13a(図3(C)参照)と当接することで押出杆30の下降限としている。このように、押出杆30の繰出ストロークが制限される。
【0024】
図4(G)に示すメネジ筒40は、基筒20の内周に形成されたローレット23に係合して同期回転する。メネジ筒40には、円筒体形状の外周壁41から3本の縦リブ44が突設される。内周壁42は、下部に略2周にわたるメネジ43が螺刻される。メネジ筒40の外周には、軸方向に延設される割溝46が形成される。割溝46には、後加工によって切断される切断部47が形成される。
【0025】
割溝46は、成形時には、メネジ筒40の外周から内周に向けて楔状に形成される。つまり、割溝46は、メネジ筒40の他の部分と比べて、その肉厚が薄く形成される。
【0026】
具体的には、割溝46は、拡大図Sに示すように、メネジ筒40の外周壁41からメネジ43の谷部の底に至る手前までの深さに形成される。よって、割溝46におけるメネジ筒40の肉厚は、メネジ43の山部とメネジ筒40の外周壁の内周の一部とが環状に繋がった極薄肉として成形される。メネジ筒40は、割溝46が形成される部分に応力が集中し、切断されやすくなっている。割溝46には、押出杆30における棒軸32のオネジ33への螺合に際して、メネジ43の山部とメネジ筒40の外周壁の内周の一部とが割られて切断された切断部47が形成される。
【0027】
なお、割溝46を深く形成し、成形時にメネジ43の山部のみが繋がっているようにしてもよい。この場合にも、応力集中を利用して割溝46を割り、切断部47を形成することが可能である。
【0028】
メネジ43は、押出杆30のオネジ33,33’と螺合して、繰出機構を構成する。これにより、先筒10と基筒20とが相対回転すると、オネジ33,33’とメネジ43との螺合によって押出杆30が進退し、化粧材Aを先端開口孔11から進出させることができる。
【0029】
メネジ43は、メネジ筒40内周の下端の一部にのみ形成される。メネジ筒40の全長に渡ってメネジ43が形成される場合と比べると、メネジ43の周数が少ない分だけ成形後に割られる部分が少ないため、容易に切断部47を形成できる。
【0030】
また、切断部47が形成されても、通常の螺合状態では切断部47は閉じているため、メネジ43は、切断部47によって割られた部分が当接し、メネジ筒40の内周に連続して形成されている。よって、メネジ43の周数が少なくても、メネジ43とオネジ33,33’との螺合を確実なものにできる。
【0031】
ここで、前述したように、押出杆30の繰出ストロークは、ストッパー部材50の前端面53とメネジ筒40の下端面49bとが当接することで上昇限が制限され、先筒10の回転止凸部13の上端部13aと押出杆30の頭部31の下端面37とが当接することで下降限が制限される。よって、メネジ43が形成される軸方向の位置は、繰出ストロークに影響しないため、メネジ筒40の軸方向の任意の位置にメネジ43を形成することが可能である。よって、メネジ43の軸方向の位置や条数を気にすることなく、天地に関係なくメネジ筒40を組み付けることができる。
【0032】
このように、本発明のメネジ筒40は、周の一ヶ所が切断されて切断部47が形成され、内周壁に、一周以上のメネジ43が螺刻される事を特徴としている。
【0033】
更には、切断部47に対向する外周壁41より縦リブ44cが突設され、基筒20のローレット23に係合している事を特徴としている。
【0034】
押出杆30に形成されるオネジ33,33’は、外周の全周に螺刻されていなくても確実な螺合が約束される。特に、化粧材Aが直接充填される場合には、化粧材Aが先筒10の内壁に密着する為、押出杆30を微動に前進させる為には、メネジ43とオネジ33,33’との強い螺合力を必要とする。
【0035】
本発明のメネジ筒40は、周の一ヶ所が切断されて切断部47が形成されるため、その径を拡げることが可能である。メネジ筒40は、オネジ33,33’とメネジ43とが螺合しなくなる程度までメネジ筒40の径を拡げた状態で、メネジ筒40を軸方向にスライドさせて押出杆30に組み付けられる。このように、押出杆30の棒軸32の下端側よりスライドしながら、頭部31の下端面37にメネジ筒40の上端面49が当接する位置までスライドさせて組付け可能な為、オネジ33,33’のピッチに沿って回転する必要もなく、強い螺合力を得る事ができる事を特徴とする。
【0036】
次に、本発明のメネジ筒40の製造方法について説明する。メネジ筒40は、プラスチックの射出成形で成形され、材質はPOM(ポリアセタール)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、PP(ポリプロピレン)等の熱可塑性樹脂が原料となる。
【0037】
図4(Ga)及び図4(Gb)は、メネジ筒40を射出成形によって作成するための金型について説明する図である。図4(Ga)は、スライド型のPL(パーティングライン)を示した図で、PLを頂点に二個の縦リブ44a,44bが突設され、PLの90度方向に一個の縦リブ44cが、割溝46と対向した位置に突設される。
【0038】
図4(Gb)は、メネジ43と腔部45の関係を示した金型の簡略図で、固定側よりメネジ43となるコアピンXが、可動側の腔部45となるコアピンYと当接している状態を示す。射出成形後、コアピンXは回転して後退し、次にスライドがアンギュラピン(図示せず)により開き、腔部45を形成するコアピンYがストリッパー板で払われて、メネジ筒40は成形される。
【0039】
POMやABSなどの材質で成形されたメネジ筒40では、メネジ筒40の縦リブ44a,44bを挟んで内側に力をかければ、割溝46が形成される部分が応力集中によって割れ、切断部47を簡単に形成できる。
【0040】
又、他にもテーパーのついた軸を貫通孔48に貫通させる事などによっても、簡単に切断部47を形成する事ができる。
【0041】
このメネジ筒40を使用した容器本体2は、以下の手順により組付けされる。
【0042】
Oリングが巻装された押出杆30を、先筒10の先端開口孔11より挿入して、押出杆30の回転止溝34を、先筒10の下端に形成された回転止凸部13に係合させつつ挿通し、頭部31の下端面37を回転止凸部13の上端面に当接させる。
【0043】
次に、メネジ筒40を押出杆30の後端部より腔部45に挿通し、更にメネジ筒40を棒軸32に沿ってスライドさせ、メネジ筒40の上端面49aが先筒10の下端面に当接するまでスライドさせる。更に、ストッパー部材50を押出杆30のU溝39に嵌着する。
【0044】
先筒10,押出杆30,メネジ筒40,及びストッパー部材50が組みつけられた状態で、基筒20の先筒嵌入部21に沿って挿入して行き、先筒10の基筒嵌合部19と基筒20の嵌合凹部22とを嵌着させる事で組付けが完了する。
【0045】
この際、メネジ筒40は、外周から突設された縦リブ44a,44b,及び44cが基筒20内のローレット23に係合するため、基筒20と一体化する。
【0046】
図2に示す容器本体2は、上記組付け手順によって組付けられたもので、繰出下降限を示している。この状態で化粧材Aが先筒10の先端開口孔11より充填される。
【0047】
先筒10と基筒20とを相対的に回動させると、押出杆30の棒軸32の外周に突設されたオネジ33,33’と、基筒20と一体化されたメネジ筒40内周のメネジ43とが螺合するとともに、押出杆30の回転止溝34に係合した先筒10内径端の回転止凸部13が回転止機構を構成し、繰出機構が作動し、化粧材Aは先筒10の先端開口孔11より突出して化粧を可能とする。
【0048】
図2の繰出ストロークは、押出杆30における頭部31の下端面37が先筒10内径下端に形成された回転止凸部13の上端部13aに係止する位置を下降限とし、ストッパー部材50の前端面53がメネジ筒40の下端面49bに当接する位置を上昇限としている。
【0049】
第1の実施の形態の如き直接充填式の繰出容器では、押出杆30の天面38は、使用者は見る事ができない。そのため、繰出の上限において使用者は更に強い力で繰出そうとする。
【0050】
本発明では、繰出の上昇限,下降限で更に繰出,繰下させるような操作が行われて回動負荷がかかると、押出杆30のオネジ33,33’とメネジ筒40のメネジ43との螺合が解除される。この螺合解除は、押出杆30の棒軸32がメネジ筒40の割溝46の方向に逃げて、切断部47が開くことによって行われる。
【0051】
このとき、切断部47に対向する外周壁41より突設され、基筒20のローレット23に係合している縦リブ44cが、メネジ43とオネジ33,33’の螺合を切断部方向に逃がす役割を担っている。
【0052】
螺合解除されたメネジ43とオネジ33,33’とは、切断部47近くの内周壁42の力によって再び螺合復帰する。このとき、上昇限,下降限において、螺合解除と螺合復帰とを繰り返すときに、パチパチと音を立てて使用者に知らせている。
【0053】
更に、このクラッチ機構によって、メネジ筒40のメネジ43や押出杆30のオネジ33,33’の損傷を防ぐ事ができる。
【0054】
本発明の繰出機構は、微動に押出杆30を前進させる事を目的とする為、組付け性が良く、オネジ33,33’が、メネジ43の螺合力が強いにもかかわらず、繰出の上昇限,下降限でのクラッチ機構を有する事を特徴とする。
【0055】
又、本実施形態においては、メネジ筒40の外周壁41に突設された切断部47に対向する縦リブ44cは、切断部47の真後ろの外周壁41に突設されているが、この縦リブ44cは、真後ろにあるだけに限らず、切断部47の方向に螺合を解除するものであれば、二つでも三つでも良く、種々の変更がなし得ることは明白である。
【0056】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0057】
メネジ筒40に割溝46が形成され、押出杆30への取り付けに際して切断部47が形成されるため、オネジ33,33’とメネジ43とが螺合しなくなる程度までメネジ筒40の径を拡げた状態で、メネジ筒40を軸方向にスライドさせて押出杆30に組み付けることが可能である。また、化粧材Aの上昇限及び下降限にて更なる回動負荷がかかった場合には、切断部47が開くことによって螺合解除と螺合復帰とを繰り返すクラッチ機構が働く。
【0058】
したがって、オネジ33,33’が形成される押出杆30とメネジ筒40との組み付け性が向上し、オネジ33,33’とメネジ43の強い螺合力を得られるとともに、メネジ筒40並びに他部材の損傷を防止できる。
【0059】
(第2の実施の形態)
以下、図5を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係る化粧材繰出容器101について説明する。なお、以下に示す各実施形態では前述した実施の形態と同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0060】
第2の実施の形態では、液状化粧料である化粧材Bが用いられる点で、第1の実施の形態とは相違する。
【0061】
化粧材繰出容器101は、相対的に回転可能な基筒20及び先筒110と、化粧材Bを繰り出す押出杆30と、押出杆30と螺合するメネジ筒40とを備える。化粧材繰出容器101では、基筒20,押出杆30,メネジ筒40,及びストッパー部材50については、第1の実施の形態と同一の部材を使用できる。
【0062】
先筒110の先端には、先筒110内に化粧料Bを閉じ込める先端部材120が嵌着される。先筒110の外周には、先端部材120が嵌合する環状溝112が形成される。
【0063】
先端部材120の先端面には、化粧材Bが進出する複数の孔121が形成される。先端部材120の外周には、先筒110の環状溝112と嵌合する環状凸部122が形成される。
【0064】
また、化粧材繰出容器101は、先筒110の外周に嵌着され先端部材120を覆うキャップ103を備える。このキャップ103は、第1の実施の形態におけるキャップ3と比べると、先筒110の先端に取り付けられる先端部材120の分だけ長く形成される。
【0065】
次に、化粧材繰出容器101の作用について説明する。
【0066】
基筒20と先筒110とが使用者の操作によって相対回転すると、押出杆30のオネジ33,33’とメネジ筒40のメネジ43との螺合によって、押出杆30が軸方向に移動する。押出杆30は、基筒20と先筒110との相対回転の回転方向によって進出又は後退する。
【0067】
押出杆30が進出した場合には、先筒110内に充填された化粧材Bの一部が先端部材120の孔121から外部に押し出される。これにより、使用者は化粧を施すことが可能となる。
【0068】
そのまま押出杆30が進出し続けて、ストッパー部材50の前端面53がメネジ筒40の下端面49bと当接すると、押出杆30はそれ以上進出できなくなる。これにより、押出杆30の上昇限が規制される。
【0069】
なお、先端部材120に孔121が形成されている以外は、化粧材Bは、先筒110と先端部材120と押出杆30とによって閉じ込められている。そのため、押出杆30が進出する場合の他に、化粧材Bが孔121から外部に流出することは無い。
【0070】
以上のように、固体状の化粧材Aに代えて液状の化粧材Bを用いる場合には、先筒110及びキャップ103を変更し、先端部材120を追加するだけで適用可能である。
【0071】
(第3の実施の形態)
以下、図6及び図7を参照しながら、本発明の第3の実施の形態に係る化粧材繰出容器201について説明する。
【0072】
第3の実施の形態では、例えばアイブロウ,アイライナー,リップライナー等の小径の棒状化粧材である化粧材Cを用いる点で、これまでの実施の形態とは相違する。
【0073】
化粧材繰出容器201は、先端に先端開口孔211が形成される先筒210と、先筒210に回転自在に組み付けられる基筒220とを備える。また、化粧材繰出容器201は、先筒210と基筒220との相対回転によって軸方向に進退する押出杆230と、基筒220の内周に係合して同期回転するメネジ筒240とを備える。
【0074】
図7(M)に示すように、先筒210は、軸方向に摘部214と、これに続く基筒嵌入部215とから構成される。先筒210には、先端開口孔211とほぼ同寸法で貫通孔212(図6(J)参照)が穿設され、この貫通孔212に沿って4本の摺動溝213(図6(J)参照)が設けられている。
【0075】
また、基筒嵌入部215には、基筒20と回動可能に連結するための環状凸部218が設けられるとともに、Oリング溝216が形成される。
【0076】
図7(N)に示す基筒220は、有底の円筒形状に形成され、先端開口孔225の内側に先筒210と連結される嵌合凹部223が設けられ、内周の中段には、段部222とローレット221とが形成される。
【0077】
図7(O)に示す押出杆230は、先端の化粧材保持部231が、四本の爪片232で形成され、この爪片232に延設される四本の係合条部233が設けられ、この係合条部233より更に下方に、外周にストローク長のオネジ235が螺刻,延設される棒軸234が形成され、後部に、この棒軸234より大径の円筒部236が形成される。
【0078】
押出杆230は、オネジ235の直径寸法が、係合条部233の直径寸法より小さく、かつ円筒部236の直径寸法より小さく形成されるため、図7(O)に示すメネジ筒240は、棒軸234が切欠部としてのスリット252から押し込まれる形で組付けられる。
【0079】
以下、図6(K)及び図6(L)を参照して、メネジ筒240について更に詳しく説明する。
【0080】
メネジ筒240は、プラスチックなどの樹脂でC字形状の薄肉に成形される部材である。メネジ筒240は、先筒210の下端面217(図7(M)参照)と基筒220の段部222(図7(N)参照)との間に挟まれることで軸方向に拘束され、縦リブ244a〜244cが基筒220のローレット221に係合することでその回転が拘束される(図6(J’参照))。
【0081】
メネジ筒240は、周の一部が開口して軸方向に延設されるスリット252と、押出杆230のオネジ235に対応して内周壁の全周に渡って形成されるメネジ243とを備える。メネジ筒240は、スリット252が設けられることで、C字形の断面形状になるように形成される。これにより、スリット252からメネジ筒240に棒軸234を嵌着することができる。
【0082】
図6(K)に示すように、メネジ筒240には、成形時に一対の割溝246a,246bが形成される。各々の割溝246a,256bは、テーパーのついた軸をメネジ筒240の貫通孔248に貫通させることにより切断部247a,247bが切断される。これにより、メネジ筒240には、割溝246a,246b間の切断片251が除去され、スリット252が形成される。
【0083】
この割溝246a,246bは、第1の実施の形態における割溝46と同様に、メネジ筒240の外周壁からメネジ243の谷部の底に至る手前までの深さの楔状に形成される。よって、割溝246a,246bにおけるメネジ筒240の肉厚は、メネジ243の山部とメネジ筒240の外周壁の内周の一部とが環状に繋がった極薄肉として成形される。メネジ筒240は、割溝246a,246bが形成される部分に応力が集中し、切断されやすくなっている。メネジ筒240は、押出杆230への螺合に際してメネジ243の山部とメネジ筒240の外周壁の内周の一部とが割られてその一部が除去され、割溝246a,246b間にスリット252が形成される。
【0084】
なお、割溝246a,246bを深く形成し、成形時にメネジ243の山部のみが繋がっているようにしてもよい。この場合にも、応力集中を利用して割溝246a,246bを割り、スリット252を形成することが可能である。
【0085】
スリット252のスリット幅は、棒軸234のオネジ235の外径より小さくなるように形成される。これにより、棒軸234をメネジ筒240に押し込んで嵌入することが可能であると共に、嵌入された棒軸234がメネジ筒240から抜けることを防止できる。これにより、押出杆230をスリット252に押し当て、押し込めば、メネジ243とオネジ235との螺合は完了する。この動作は、ワンタッチで行うことが可能である。
【0086】
メネジ筒240の外周壁より、スリット252に平行に縦リブ244a,244bが突設され、スリット252の反対側の外周壁より縦リブ244cが突設される。これらの縦リブ244a〜244cが基筒220内径の段部222とローレット221に係合することで、基筒220とメネジ筒240は一体化される(図6(J’)参照)。
【0087】
縦リブ244a〜244cのうち中央の縦リブ244cは、メネジ筒240におけるスリット252と対向する位置の外周壁、即ちスリット252の180°反対側の外周壁に形成される。スリット252と対向する位置の外周壁に形成される縦リブ244cは、一本ではなく二本以上であってもよい。つまり、複数の縦リブ244a〜244cのうち少なくとも一つの縦リブ244cが、スリット252と対向する位置の外周壁に形成される。
【0088】
ここで、メネジ筒240の内周壁には、その全周に渡ってメネジ243が形成されている。メネジ筒240のメネジ243と棒軸234のオネジ235との螺合によって、メネジ筒240には、棒軸234から離れる方向の力が作用する。そのため、棒軸234は、スリット252のスリット幅を拡げてメネジ筒240からはみ出ようとし、メネジ筒240は、棒軸234から離れようとする。
【0089】
メネジ筒240には、スリット252と対向する位置の外周壁に縦リブ244cが設けられるため、ローレット221と係合した縦リブ244cがストッパとして機能し、メネジ筒240が棒軸234から離れようとするのを防止し、メネジ243とオネジ235との螺合を確実なものにする。
【0090】
更に、両端の縦リブ244a,244bは、メネジ筒240のスリット252に臨む自由端付近の外周壁に形成される。これにより、棒軸234からスリット252のスリット幅を拡げるような力が作用した場合に、ローレット221と係合した縦リブ244a,244bがメネジ筒240の自由端を支持するストッパとして機能するため、メネジ筒240が変形してスリット252のスリット幅が大きくなることを防止できる。よって、メネジ筒240の剛性が増し、メネジ243とオネジ235との螺合を確実なものとし、棒軸234がメネジ筒240から抜けることを防止できる。
【0091】
なお、メネジ243は、第1の実施の形態におけるメネジ43と同様に、メネジ筒240内周の下端の一部にのみ形成されるが、この位置に限らず、メネジ筒240の軸方向の任意の位置に形成することが可能である。よって、メネジ243の軸方向の位置や条数を気にすることなく、天地に関係なくメネジ筒240を組み付けることができる。
【0092】
本発明の化粧材繰出容器201は、以下の手順で組付けられる。
【0093】
まず、メネジ筒240のスリット252に、押出杆230の棒軸234を押し込んで嵌着する。この作業は、ワンタッチで行う事ができる。
【0094】
スリット252のスリット幅は、オネジ235の直径寸法より小径に設定されているため、メネジ筒240が棒軸234に嵌着されると同時に、棒軸234の円周上に螺刻されたオネジ235とメネジ筒240のメネジ243とが螺合する。
【0095】
また、棒軸234に嵌着されたメネジ筒240は、棒軸234から脱出することも軸方向に位置がずれることもない。
【0096】
係合条部233の後端面と、メネジ筒240の前端面とが接触する位置で嵌着し、この状態で先筒210の下端面217より押出杆230の爪片232を摺動溝213に挿入していくと、爪片232に延設される係合条部233も摺動溝213内に誘導され、回転止機構が構成される。
【0097】
そして、先筒210の下端面217とメネジ筒240の前端面とが当接する。押出杆230が、その円筒部236から順次、基筒220の先端開口孔225より基筒220内に挿入されると、メネジ筒240の縦リブ244a,244b,及び244cは、基筒220内径の段部222とローレット221とに係合して、メネジ筒240と基筒220とは一体化される。そのとき、先筒210の環状凸部218と基筒220内周の嵌合凹部223とは、回動可能に嵌合する事で組付が完了する。
【0098】
次に、化粧材繰出容器201の作用について説明する。
【0099】
図6(J)に示すように、化粧材Cが下降限に位置する化粧材繰出容器201において、先筒210と基筒220とを相対回転させると、押出杆230の係合条部233は、先筒210の摺動溝213に位置して回転止機構を構成し、棒軸234の円周上に螺刻したオネジ235は、メネジ筒240のメネジ243に螺合して繰出機構を構成する。また、メネジ筒240が基筒220と一体化されているため、化粧材Cは、棒軸234のオネジ235のリードに従って前進する。化粧材Cは、先筒210の先端開口孔211より突出して化粧が可能となる。
【0100】
図6(J)の繰下下降限の位置にある状態で更なる後退させる回動負荷がかかった場合、メネジ筒240のスリット252の反対側に設置したメネジ243から、棒軸234外周に螺刻したオネジ235は、螺合が解けてスリット252方向に微かに移動する。
【0101】
しかし、棒軸234におけるオネジ235の直径寸法は、スリット252の幅より大きいため、スリット252より脱出はしない。螺合が解けたオネジ235は、スリット252付近の内径面に押されて螺合復帰する。
【0102】
この作動により、パチパチと音をたてて螺合離脱と螺合復帰を繰返す事で、繰下の下降限位置を使用者に知らせる。
【0103】
繰出ピッチの小さい繰出容器では、化粧材Cの充填は、機械によって自動回転させるのがほとんどである。そのため、回動負荷による繰上上昇限、繰下下降限のクラッチ機構は、必要な絶対条件である。
【0104】
本発明の繰下下降限におけるクラッチは、繰上上昇限でも行われ、パチパチと音をたてて繰上上昇限を知らせ、メネジ筒240及び押出杆230の棒軸234のオネジ235に損傷を与える事がない。
【0105】
繰下下降限及び繰上上昇限におけるクラッチ時には、メネジ筒240に作用する棒軸234から離れる方向の力が、オネジ235とメネジ243との通常の螺合時と比べて大きくなる。このようなクラッチ時にもまた、スリット252と対向する位置の外周壁に設けられ、ローレット221と係合した縦リブ244cが、ストッパとして機能し、メネジ筒240が棒軸234から離れようとするのを防止できる。また、両端のメネジ筒240のスリット252に臨む自由端の外周壁に形成される縦リブ244a,244bもまたストッパとして機能し、棒軸234がメネジ筒240から抜けることを防止できる。
【0106】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0107】
メネジ筒240にスリット252が形成されるため、押出杆230に形成されたオネジ235を、メネジ筒40に押し込んでワンタッチで嵌着することができる。また、化粧材Cの上昇限及び下降限にて更なる回動負荷がかかった場合には、スリット252が開くことによって螺合解除と螺合復帰とを繰り返すクラッチ機構が働く。
【0108】
したがって、オネジ235が形成される押出杆230とメネジ筒240との組み付け性が向上し、オネジ235とメネジ243の強い螺合力を得られるとともに、メネジ筒240並びに他部材の損傷を防止できる。
【0109】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の化粧材繰出容器は、棒状化粧材などの化粧材を繰り出して使用するための容器として利用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 化粧材繰出容器
2 容器本体
10 先筒
20 基筒
23 ローレット
30 押出杆
32 棒軸
33 オネジ
40 メネジ筒
43 メネジ
44 縦リブ
46 割溝
47 切断部
50 ストッパー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に先端開口孔が形成され、化粧材が内挿される先筒と、
前記先筒に回転自在に組み付けられる基筒と、
外周にオネジが形成され、前記先筒と前記基筒との相対回転によって進退して前記化粧材を前記先端開口孔から進出させる押出杆と、
前記オネジと螺合するメネジが内周に形成されるとともに、前記基筒の内周に係合して同期回転するメネジ筒と、を備える化粧材繰出容器であって、
前記メネジ筒は、当該メネジ筒の他の部分より薄く形成された割溝を有し、当該割溝の周の一部が割られて切断部が形成された状態で前記押出杆に組み付けられることを特徴とする化粧材繰出容器。
【請求項2】
前記メネジは、前記化粧材の上昇限及び下降限にて更なる回動負荷がかかると、前記切断部が開くことによって前記オネジとの間で螺合解除と螺合復帰とを繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の化粧材繰出容器。
【請求項3】
前記メネジ筒の外周には、前記基筒の内周に向かって突設した複数の縦リブが形成され、
前記基筒の内周には、前記縦リブが係合して前記メネジ筒と同期回転可能にするローレットが形成され、
前記縦リブのうち少なくとも一つは、前記割溝と対向する位置の外周から突設されることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧材繰出容器。
【請求項4】
前記メネジ筒は、一対の前記割溝を有し、
各々の前記割溝は、前記押出杆との螺合に際して割られ、前記メネジ筒には、前記割溝間が除去された切欠部が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧材繰出容器。
【請求項5】
前記メネジ筒の外周には、前記基筒の内周に向かって突設した複数の縦リブが形成され、
前記基筒の内周には、前記縦リブが係合して前記メネジ筒と同期回転可能にするローレットが形成され、
前記縦リブのうち少なくとも一つは、前記切欠部と対向する位置の外周から突設されることを特徴とする請求項4に記載の化粧材繰出容器。
【請求項6】
前記割溝は、前記メネジ筒の外周から内周に向けて楔状に形成され、その先端に前記切断部が形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の化粧材繰出容器。
【請求項7】
前記割溝は、前記メネジの山部と前記メネジ筒の外周壁の内周の一部とが環状に繋がって形成され、前記押出杆への螺合に際して前記メネジの山部と前記メネジ筒の外周壁の内周の一部とが割られて前記切断部が形成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の化粧材繰出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−5769(P2012−5769A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146610(P2010−146610)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000252090)鈴野化成株式会社 (32)
【Fターム(参考)】