説明

化粧板原紙

【課題】坪量が20〜50g/mの薄物でありながら、十分な紙力と隠蔽性を兼ね備え、かつ電子線照射による強度低下が少なく、さらには印刷適性、基材への貼合適性が良好な化粧板原紙を提供すること。
【解決手段】原紙上に電子線照射により硬化するトップコート樹脂層を設け、これを電子線により硬化させた後、基板に貼り合わせて化粧板を製造するのに用いられる化粧板原紙において、前記原紙はヤンキードライヤーを持つ抄紙機で製造され、ベントナイトと酸化チタンを凝集体させたもの、電荷調整剤と歩留り向上剤を含み、坪量が20〜50g/mの範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧板原紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント化粧板としては、無地あるいは柄をグラビア印刷し、樹脂コートを施したプリント用紙又は薄葉紙を合板、MDF(中質繊維板)、パーティクルボード等の基材上に貼りつけた化粧板が、内装建築材や家具類に広く使用されている。
【0003】
プリント化粧板に使用される原紙(以下、化粧板原紙)としてはセルロース繊維等を原料に、坪量23〜60g/m2に調整し、基材の色ムラを原紙で隠蔽するため、酸化チタンや着色剤を添加した物が広く使用されている。
【0004】
酸化チタン混抄プリント化粧板原紙では表面の耐性を持たせるために熱硬化性樹脂を塗布しトップコート層を形成させている。トップコート層には、一般に溶剤系ウレタン樹脂等を用い加熱、硬化させているが、この工程では、大量の熱エネルギーを消費する、乾燥工程時の回収VOCが多い、養生時間が長い等の問題があった。これらの欠点に鑑みて省エネルギー及び作業工程の簡略化、生産の効率化、耐性の向上を目的として、電子線照射で硬化する無溶剤系アクリル樹脂等が用いられている。例えば電子線照射硬化性樹脂を塗布したコート紙が開発され、それを化粧板原紙として使用する技術が普及してきた(特許文献1等を参照)。
【0005】
電子線照射による化粧板原紙のトップコート層の硬化処理では、電子線がトップコート層を突き抜け化粧板原紙に到達することがあり、この際電子線はパルプ繊維を劣化させるため、化粧板原紙の強度低下が起きる。一方、酸化チタン自体は電子線照射による影響を受けないため、化粧板原紙に配合することで、電子線を遮蔽しパルプ繊維の劣化を防ぐことがあることが知られている。
【0006】
酸化チタン混抄紙では、酸化チタンの配合量を増やすと原紙におけるパルプ繊維同士の絡みが阻害され、原紙そのものの強度を低下させる問題がある。また、酸化チタンは物理的にパルプ繊維間に留まっているだけのため、抄紙中の脱水時に脱落を起因とした細かなピンホールが発生しやすく、印刷時にインキ裏抜けの問題が発生する。さらに従来のウレタン樹脂よりも粘度が低い電子線照射硬化性樹脂をコートした際、樹脂が紙に染み込みやすくなり均一な樹脂コート層が形成できない事で、プリント化粧板として必要なグラビア印刷、耐汚染性、加工時の貼合適性が充分に得られなかった。
【特許文献1】特開昭60−75697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みて、坪量が20〜50g/mの薄物でありながら、十分な紙力と隠蔽性を兼ね備え、かつ電子線照射による強度低下が少なく、さらには印刷適性、基材への貼合適性が良好な化粧板原紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、原紙上に電子線照射により硬化するトップコート樹脂層を設け、これを電子線により硬化させた後、基板に貼り合わせて化粧板を製造するのに用いられる化粧板原紙において、前記原紙はヤンキードライヤーを持つ抄紙機で製造され、少なくとも、ベントナイトと酸化チタンを凝集させたものを含有し、さらに、電荷調整剤と歩留り向上剤を含み、坪量が20〜50g/mの範囲にあることを特徴とする化粧板原紙に関する。
【0009】
本発明においては、歩留り向上剤と電荷調整剤の含有比率は、固形分換算での歩留り向上剤の重量を1とした場合に、固形分換算での電荷調整剤の重量が1.0〜30.0の範囲であることが好ましい。また、歩留り向上剤がポリアクリル酸エステルを主成分とする歩留向上剤であることが好ましい。さらに、電荷調整剤がスルホン酸化合物を主成分とする電荷調整剤であるであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化粧板原紙は、坪量が20〜50g/mの薄物でありながら、十分な紙力と隠蔽性を兼ね備え、かつ電子線照射による強度低下が少なく、さらには印刷適性、基材への貼合適性が良好なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の化粧板原紙は具体的には以下のように使用することができる。当該原紙にグラビア印刷等によって所望の絵柄又は模様を印刷した後、その表面に、電子線照射により硬化するトップコート樹脂層を塗工し、これを電子線により硬化させることによって化粧紙を製造する。この化粧紙を接着剤や粘着テープによって基板に貼り合わせて化粧板を製造するものである。
【0012】
本発明の化粧板原紙はヤンキードライヤーを持つ抄紙機(以下「ヤンキーマシン」という)で生産されたものである。ヤンキーマシンで生産した紙は、印刷され電子線硬化型トップコート樹脂が塗布される面が艶面であり、平滑性が高いため、印刷適性が良くなる。
【0013】
本発明の化粧板原紙は、原料パルプからなるパルプスラリーに対して、少なくとも酸化チタン、電化調整剤、及び歩留り向上剤を添加して抄造される。
【0014】
酸化チタンはパルプスラリー中ではパルプ繊維に自己定着しにくいため、酸化チタンを効率良く紙に歩留らせるため歩留りシステムとして電荷調整剤、歩留り向上剤を併用する。酸化チタンを凝集させカチオン化させることによりパルプ繊維との結合が安定化し原紙のピンホールが減少する、また、電子線の影響を受けない酸化チタンが適度に凝集して定着することにより、電子線照射時の強度低下が少ない、という効果がある。酸化チタンの歩留りの詳細機構としては、アニオン性電荷調整剤で酸化チタンの表面をアニオン性とし、カチオン性の歩留り向上剤にて酸化チタンを取り込んだカチオン性の凝集物を作り、アニオン性のパルプ繊維に化学的に結合させる。
【0015】
従来は酸化チタンが単体で紙に抄き込まれており、物理的に存在しているのみで化学的なパルプ繊維との結合を有していなかったため、酸化チタンの配合量を増やすとパルプ繊維同士の結びつきを阻害し、紙力を低下させるとともに、ヤンキーマシンで生産時に酸化チタンがワイヤーより欠落しピンホールの原因ともなっていた。本発明で採用している歩留りシステムは化学的に結合させるため、紙の強度低下がなく、従来の歩留りシステムより酸化チタンの歩留りが向上する。添加順としては酸化チタンを一番に添加して、パルプ原料を含んだスラリー中に分散させておき、二番目に電荷調整剤を添加し、三番目に歩留り向上剤を添加することが好ましい。
【0016】
本発明では粒径が0.1μm〜2.5μmの酸化チタンを使用することが好ましく、構造としてはアナターゼ型、ルチル型のどちらを使用してもよい。酸化チタンは電子線の影響を受けず紙中に存在することで、紙の強度低下を防止する役目を果たすが、径が大きいほど効果がある。
【0017】
電子線の影響を効率よく防止するために、酸化チタンとベントナイトの凝集体を形成させて用いる。当該凝集体の粒径は1μm〜100μmであることが好ましい。ベントナイトを添加して凝集体を形成する機構としては酸化チタンがアニオン性を示し、ベントナイトがカチオン性を示すため化学的に凝集する。ベントナイトの代わりに、カチオン性の強いポリアクリルアミドやポリエチレンイミンなどを添加すると、酸化チタンとの凝集力が強く、凝集塊となり、紙に抄き込まれ欠点となる。逆に、カチオン性の弱いカチオン澱粉やグラフト共重合体を使用すると酸化チタンが凝集せず、電子線照射を防ぐ大きさにならない。そのため、電子線を照射した際、電子線がパルプ繊維を傷つけ原紙の強度を低下させ、化粧板貼合時に破れの問題を起こすことが考えられる。凝集体の粒径が100μmを超えると凝集物の存在する部分の隠蔽性が他の部分に比べて高くなるため好ましくない。
【0018】
ベントナイトの添加量としては酸化チタン(固形分)に対して0.1〜1.0重量%が好ましい。ベントナイトの添加量が0.1重量%未満の場合酸化チタンを凝集させることができず、電子線の影響を十分に遮断できない。1.0重量%を超えると酸化チタンの凝集が促進され、抄紙した際欠点となる場合がある。
【0019】
酸化チタン以外の填料としてはタルク、クレー、炭酸カルシウム等公知のものが配合可能であるが、隠蔽性を高める上で酸化チタンが好ましい。
【0020】
酸化チタンの含有量は固形分換算で原料パルプに対して5重量%〜20重量%の範囲で調整することが好ましい。酸化チタンの含有量が5重量%未満の場合隠蔽性が不足するのみではなく、電子線照射による強度低下が発生する傾向があり好ましくない。また、20重量%を超えると原紙中のパルプ繊維同士の絡みを阻害し、紙そのものの強度を低下させるため好ましくない。
【0021】
本発明の化粧板原紙の坪量としては20〜50g/mであり、好ましくは23〜40g/mである。坪量が20g/m未満の場合、化粧板原紙は引張紙力、引裂紙力、あるいは隠蔽性にやや劣る。50g/mを超える場合、紙の引張紙力、引裂紙力、隠蔽性は十分であるが、トップコート樹脂を塗布する面の平滑度がやや低下し、均一に成膜されないため、電子線硬化後の仕上がりが良くない。また、平滑度が低いためグラビア印刷適性も良くない。
【0022】
電荷調整剤の含有量は、電荷測定機(BTG Muetek社製 Gmbh PCD−T3)にて測定したパルプやその他薬品を含んだ原料の電荷が−0meq/g〜−30meq/gとなるように調整すればよい。
【0023】
歩留り向上剤と電荷調整剤の含有比率は、歩留り向上剤の固形分含有重量を1とした場合に、電荷調整剤の固形分含有重量が1.0〜30.0の範囲であることが好ましく、より好ましくは5.0〜20.0の範囲である。歩留り向上剤の含有量に対する電荷調整剤の含有比率が1.0を下回ると、酸化チタン表面の電荷を十分にアニオン性とすることが出来ず、酸化チタンと歩留り向上剤の凝集物を効率的に作ることができない。また、歩留り向上剤の含有量に対する電荷調整剤の含有比率が30を上回るとパルプ繊維の表面のアニオン性が強くなりすぎ、パルプ原料を含んだスラリー中に含まれる油脂が凝集した凝集物が欠点として紙に抄き込まれ、ピッチという問題を引き起こしやすくなる。
【0024】
歩留り向上剤としてはカチオン性のものを好ましく使用することができ、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステルをモノマーの一成分としてカチオン化剤とともに重合させたカチオン性ポリアクリル酸エステル、カチオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリエチレンイミン、カチオン澱粉等が使用できる。しかし、カチオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリエチレンイミン、カチオン澱粉などはカチオン性が強すぎて酸化チタンの凝集物を大きくする、あるいはカチオン性が弱く酸化チタンとの凝集物形成力に劣るため、電子線照射対応の化粧板原紙での歩留り向上剤としてはカチオン性ポリアクリル酸エステルが好ましい。カチオン性ポリアクリル酸エステルを主成分とする歩留り向上剤としては、例えば、栗田工業社製のハイホールダー220、第一工業製薬社製ハイセットCシリーズ、浅田化学工業社製パラロック490K307等が挙げられる。
【0025】
カチオン性ポリアクリル酸エステルが、電子線を照射した場合に架橋反応して硬化するものであると、原紙の強度がより向上する。そのようなカチオン性ポリアクリル酸エステルとしては、エステル基に不飽和結合を有するものが好ましい。また、当該カチオン性ポリアクリル酸エステルは、電荷調整剤でアニオン化された酸化チタンの周囲を取り囲むように化学的に結合し、アニオン性であるパルプ繊維とも化学的に結合するため、ピンホールの発生がなくなり、さらに隠蔽性を高める効果が有り、しかも凝集した酸化チタンの原紙への歩留りが高くなるため、電子線を照射した際、電子線の影響を受けないため、電子線照射後の紙力の低下を防ぐ効果がある。
【0026】
歩留り向上剤の添加がない場合、酸化チタンを十分に紙に歩留らせることができないため、隠蔽性が不足し、また、原紙中に酸化チタンが凝集して存在しないため、電子線を照射した際の電子線の遮蔽効果が落ち原紙の紙力を低下させ、貼合時破れの問題を引き起こす。
【0027】
電荷調整剤としてはアニオン性のものを好ましく使用することができ、例えば、スルホン酸化合物(好ましくは、スチレンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、アクリルアミドスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム等のうち少なくとも1種をモノマーとして重合させて得られるスルホン酸化合物)、ポリアクリル酸ソーダ、コロイダルシリカ等が挙げられる。このうちスルホン酸化合物が好ましく、スルホン酸化合物を主成分とする電荷調整剤としては、例えば、栗田工業社製のハイホールダーD550、日本エヌエスシー社製のVERSA−TL502、日本エヌエスシー社製のVERSA−TL3等が挙げられる。
【0028】
電荷調整剤の添加がない場合、酸化チタンの表面を十分にアニオン化できず、カチオン性である歩留り向上剤が十分に作用せず、原紙への酸化チタンの歩留りが低下する。歩留りが低下することにより隠蔽性が不足し、また、原紙中に酸化チタンが凝集して存在しないため、電子線を照射した際の電子線の遮蔽効果が落ち原紙の紙力を低下させ、貼合時破れの問題を引き起こす。
【0029】
本発明の化粧板原紙の抄紙pHについては3〜9の範囲であり、酸性、中性の区別はない。pHが9を超えると操業性が悪化し、さらに片艶紙の特徴であるグラビア印刷適性が悪くなる。pH3未満の場合サイズ剤や紙力剤の定着性が低下することが考えられる。
【0030】
本発明の化粧板原紙では、上記以外に、サイズ剤や、紙力増強剤等を添加することができる。
【0031】
サイズ剤としては特に限定されないが、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、ロジンエマルジョンサイズ、強化ロジンサイズ剤など公知のサイズ剤を適宜使用することができる。
【0032】
紙力増強剤としては特に限定されないが、両性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド等を使用することができる。配合量としては原料パルプに対して、固形分換算で0.3重量%〜4.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%〜3.0重量%、さらに好ましくは0.7重量%〜2.5重量%である。0.3重量%未満の場合は紙力増強剤が不足しパルプ繊維を繋ぎ止めることができず紙の紙力が充分ではない場合がある。4.0重量%を超える場合紙力増強剤がパルプ繊維の隙間だけでなく表面まで被覆するように存在するため電子線照射による架橋反応が進み、硬化がパルプ繊維全体まで及び、紙が剛直化し化粧板への貼合時紙破れの問題を引き起こしやすくなる。
【0033】
本発明の化粧板原紙は、JIS P 8138で規定する不透明度が65%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上である。不透明度が65%未満であれば、原紙の隠蔽性が不足し、隠蔽性アップのための印刷などの工程を加える必要があるため好ましくない。
【0034】
トップコート樹脂の原紙への浸透を抑えるため、本発明の化粧板原紙は、JIS P 8117で規定する透気度が50秒以上であることが好ましく、より好ましくは60秒以上、さらに好ましくは70秒以上である。透気度は使用するパルプ種、パルプの叩解度にて調整することができる。透気度が50秒未満の場合、電子線で硬化するトップコート樹脂が原紙層に浸透し、電子線照射後紙力を低下させやすい。
【0035】
本発明において、トップコート樹脂を塗布する艶面は平滑であることが好ましいので、JIS P8119で規定する平滑度が500秒以上であることが好ましく、より好ましくは600秒以上、さらに好ましくは700秒以上である。平滑度が500秒未満の場合、凹部は樹脂が多く塗布され、凸部は樹脂の塗布が少ないため、電子線にて硬化後光沢ムラとなることがある。所望の平滑度を得るためにカレダンー掛け、ドライヤー剥離剤の使用も可能である。
【0036】
JIS P 8113で規定する引張紙力(縦)は電子線照射後(照射条件は加速電圧125kV・照射線量3.0Mrad)で2.5kN/m以上が好ましく、より好ましくは2.7kN/mである。2.5kN/mを下回ると紙の引張紙力が弱く、貼合時紙切れの問題がある。
【0037】
電子線照射前後での引張紙力を測定し、保持率(照射後引張紙力÷照射前引張紙力)が90%以上であることが好ましい。保持率が90%未満の場合照射条件によっては大幅な引張紙力ダウンが考えられ、貼合時の紙切れの発生が考えられる。
【0038】
JIS P 8116で規定する引裂紙力(縦)は電子線照射後(照射条件は加速電圧125kV・照射線量3.0Mrad)で100mN以上が好ましく、より好ましくは120mN以上である。100mNを下回ると紙の引裂紙力が弱く、貼合時紙切れの問題が発生する。
【0039】
電子線照射前後での引裂紙力を測定し、保持率(照射後引裂紙力÷照裂前引張紙力)が70%以上であることが好ましい。保持率が70%未満の場合照射条件によっては大幅な引裂紙力ダウンが考えられ、貼合時の紙切れの発生が考えられる。
【0040】
本発明で使用することができるパルプ種としては広葉樹パルプ(特に広葉樹クラフトパルプ)、針葉樹パルプ(特に針葉樹クラフトパルプ)、古紙パルプ等が挙げられ、古紙パルプとしては市中回収古紙、抄紙工程で発生する仕損品も含まれる。一般的に広葉樹パルプは繊維が短く細く、逆に針葉樹パルプは長くて太いため、広葉樹パルプの配合量が多いと透気度が高く、広葉樹パルプの配合量が低いと透気度が低くなることが言える。また、針葉樹パルプは地合を乱すため配合率は、原料パルプ全量に対して20重量%以下とすることが好ましい。古紙パルプの影響は古紙の種類がヤンキー紙、上質、塗工紙であるのか等で異なるため一概には言えない。
【0041】
原料パルプの叩解度は、カナダ標準濾水度(フリーネス)で100〜400mLの範囲に調整することが好ましい。叩解にはDDR(ダブルディスクリファイナー)を使用することができる。より好ましくは150〜350mLである。100mL未満とすると叩解が進み、繊維長の短いパルプの比率が高まり、透気度が上がる。透気度が高すぎることにより、ヤンキードライヤーでの乾燥時水分の蒸発がしにくくなり、ヤンキードライヤーへの張り付きが弱くなり平滑度の低下を招くため好ましくない。400mLを超えると繊維長の長いパルプの比率が高まり、透気度が下がる。透気度が下がることにより、電子線により硬化するトップコート樹脂を塗布した際紙中まで樹脂が浸透し、電子線を照射した際原紙の強度を低下させる問題が発生する。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を掲げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1〜31及び比較例1〜7
以下の重量比の数値はすべて固形換算の数値である。
【0043】
原料パルプとしては、表1記載のフリーネスを示す広葉樹クラフトパルプ(LKP)を表1記載の割合(重量%)で用いた。実施例14及び15では、LKPとともに、フリーネスが550mLの針葉樹クラフトパルプ(NKP)を用いた。
【0044】
別途、酸化チタン(チタン工業社製、KA−100)に対して、ベントナイト(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、ハイドロコールONZ)を表1記載の量(重量%)で添加しスラリーを調製して、酸化チタンの一次凝集体を得た。
【0045】
調整した原料パルプスラリーに対して、記載順に薬品を添加するものとし、前記一次凝集体である酸化チタンを表1記載の量(重量%)で、紙力剤(両性ポリアクリルアミド、星光PMC社製、DS4366)を表1記載の量(重量%)で、硫酸アルミニウム0.01重量%、ロジン系サイズ剤(荒川化学工業社製、SPE)1.5重量%、電荷調整剤(スルホン酸化合物、栗田工業社製、ハイホールダーD550、ただし実施例26のみコロイダルシリカ、片山ナルコ社製、ナルコ8692を使用)を表1記載の量で、歩留り向上剤(カチオン性ポリアクリル酸エステル、栗田工業社製、ハイホールダー220、ただし実施例27のみカチオン性ポリアクリルアミド、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、パーコールDP7833)を表1記載の量で添加し、ヤンキーマシン(ただし比較例1では長網多筒マシン)に供給し、表1記載の坪量に抄紙することにより電子線照射対応の化粧板原紙を製造した。
【0046】
抄造した化粧板原紙に電子線を照射(照射条件は加速電圧125kV・照射線量3.0Mrad)し、その前後でJIS P 8113による引張紙力(縦)、及びJIS P 8116による引裂紙力(縦)を測定し、電子線照射前後での紙力の保持率を算出した。実施例における貼合適性は、トップコート塗工後電子線照射した状態での結果を表1に示す。
【0047】
化粧紙の製造方法:グラビア印刷機により、顔料入りインキで印刷を施したのち、電子線硬化型樹脂(ポリウレタンアクリレート、荒川化学社製、ビームセットEM−90)を片面コートした。
【0048】
基材への貼合方法:巻取りの(電子線硬化処理した)化粧板用紙を繰り出し、酢酸ビニル系の糊を塗布した基材MDFにホットプレスで貼合をし、化粧板を製造した。
評価。結果を表1に示す。
(1)隠蔽性
◎:化粧板の色ムラが透けて見えない
○:化粧板の色ムラがわずかに透けて見えるが、製品化可能
△:化粧板の色ムラが所々透けて見えるが、製品化可能
×:化粧板の色ムラが全体で透けて見え、製品化不可
(2)印刷適性
◎:白抜けが確認できない
○:白抜けがわずかに確認できるが、製品化可能
△:白抜けが所々確認できるが、製品化可能
×:白抜けが全体で確認でき、製品化不可
(3)貼合適性
◎:貼合時のシワや破れなどの異常なし
○:貼合時のシワや破れが1ヶ所発生
△:貼合時のシワや破れが2ヶ所発生
×:貼合時のシワや破れが3ヶ所以上発生
【0049】
【表1】

表1中の実施例1〜31から明らかなように、ヤンキードライヤーを有する抄紙機で生産され、ベントナイトと酸化チタンを凝集体としたもの、電荷調整剤、及び歩留り向上剤を含有し、坪量が20〜50g/mの範囲にある化粧板原紙は、酸化チタンを混抄した薄紙でありながら十分な紙力を有するとともに、電子線照射前後の紙力の保持率が高く、隠蔽性、印刷適性、及び基材への貼合適性のいずれにも優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙上に電子線照射により硬化するトップコート樹脂層を設け、これを電子線により硬化させた後、基板に貼り合わせて化粧板を製造するのに用いられる化粧板原紙において、
前記原紙はヤンキードライヤーを持つ抄紙機で製造され、
少なくとも、ベントナイトと酸化チタンを凝集させたものを含有し、
さらに、電荷調整剤と歩留り向上剤を含み、
坪量が20〜50g/mの範囲にあることを特徴とする化粧板原紙。
【請求項2】
前記歩留り向上剤と前記電荷調整剤の含有比率は、固形分換算での歩留り向上剤の含有重量を1とした場合に、固形分換算での電荷調整剤の含有重量が1.0〜30.0の範囲である請求項1記載の化粧板原紙。
【請求項3】
前記歩留り向上剤がポリアクリル酸エステルを主成分とする歩留向上剤である請求項1又は2記載の化粧板原紙。
【請求項4】
前記電荷調整剤がスルホン酸化合物を主成分とする電荷調整剤である請求項1〜3のいずれかに記載の化粧板原紙。

【公開番号】特開2008−231630(P2008−231630A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75201(P2007−75201)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】