説明

化粧板材

【課題】化粧面の外観に悪影響を与えるおそれがなく、化粧板材の取り付け時における作業効率を改善することができる構造の化粧板材を提供する。
【解決手段】建物躯体18に取り付けられる建築用の外装化粧板材10であって、化粧板材10を建物躯体18に取り付けた状態で、化粧板材10の屋外14側の面12に化粧部20を有し、化粧部20の上側に化粧部20よりも屋外14側へ突出した突起リブ24が設けられ、突起リブ24の上側の突起リブ24の屋外14側端部よりも躯体18側の位置に、化粧材10を建物躯体18に取り付けるためのビス28の座面が当接するビス打ち部22が設けられる化粧板材を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築で用いられる化粧板材に関し、特に外観および取り付け作業性を考慮した破風および鼻隠しなどの化粧板材の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家屋の屋根の末端部の外観デザインを向上させるための化粧板材として破風、鼻隠しが用いられている。こうした化粧板材として、化粧板材の前面の上側および下側2箇所に凹溝状のビス打ち部を形成した構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、破風に渡し部を設けることにより水切り用の金属製軒先のぐらつきを防止した構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、建物外壁に複数の保持金具を設け、化粧板材の引っ掛け溝を金具にかけて固定する取り付け容易性を高めた構造が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−270164号公報
【特許文献2】実開平5−81427号公報
【特許文献3】特開平10−30313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来の化粧板材は、セメント製の重量物として製造される場合が多い。よって、この化粧板材を建物躯体に取り付ける場合には、足場を組んで化粧板材を建物の屋根近傍まで持ち上げ、1人または複数の作業員が化粧板材を保持している間に、別の作業員が化粧板材にビス打ちを行う必要があった。従って、1つの化粧板材の取り付け作業に複数の作業員を必要とし、取り付け作業が煩雑になっていた。
【0007】
また、上記の従来の化粧板材は、ビスの頭部やビス打ち部が化粧面に露出して見栄えを損なうおそれがあった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、化粧面の外観に悪影響を与えるおそれがなく、化粧板材の取り付け時における作業効率を改善することができる構造の化粧板材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る化粧板材の1つの実施態様は、建物躯体に取り付けられる建築用の外装化粧板材であって、前記化粧板材が前記建物躯体に取り付けられた状態において、前記化粧板材の屋外側の面に化粧部を有し、前記化粧部の上側に前記化粧部よりも屋外側へ突出した突起リブが設けられ、前記突起リブの上側の前記突起リブの屋外側端部よりも躯体側の位置に、前記化粧材を前記建物躯体に取り付けるためのビス打ち部が設けられることを特徴とする。
【0010】
本実施態様によれば、突起リブが化粧部よりも上側に設けられるので、化粧部の美観を損ねることがない。更に、建物躯体に取り付けられた化粧部材を見上げた際、突起リブがビス打ち部に打ち込まれたビス頭を遮って隠すので、ビス頭が看者から見えることがなく、建物に取り付けられている化粧板材の美観を損ねることがない。
なお、突起リブは、建物躯体に取り付けた場合において、化粧板材の横方向に連続的に延びる場合も考えられるし、ビスの取り付け位置に対応した位置にだけ設けられる場合も考えられる。
【0011】
本発明に係る化粧板材のその他の実施態様は、上記において、前記ビス打ち部が、取り付けられた前記ビスのビス頭が前記突起リブの屋外側端部よりも屋外側に突出することがないように配置されていることを特徴とする。
【0012】
本実施態様によれば、突起リブがビス頭を完全に遮って隠すので、ビス頭が看者から見えることがなく、建物に取り付けられている化粧板材の美観を損ねることがない。
【0013】
本発明に係る化粧板材のその他の実施態様は、上記において、前記突起リブがケラバ包みを支持することを特徴とする。
【0014】
本実施態様によれば、突起リブがケラバ包みを支持するので、ケラバ包みのぐらつきを防止することができる。
【0015】
本発明に係る化粧板材のその他の実施態様は、上記において、前記化粧板材を前記建物躯体に取り付けた状態において、前記突起リブの前記ビス止め部を隔てた上方に、前記化粧部よりも前記屋外側へ突出した第二の突起リブが設けられることを特徴とする。
【0016】
本実施態様によれば、2つの化粧板材を上下逆さまにして互いの突起リブが内側にくるように向かい合わせた状態で運搬する場合を考えると、化粧板材の両端で各2つの突起リブによって化粧板材の重量を支持することができるので、荷重の集中が緩和される。従って、化粧板材に各々1つの突起リブを設ける場合に比べ、運搬時における突起リブの破損発生をより低減することができる。
【0017】
本発明に係る化粧板材のその他の実施態様は、上記において、前記化粧板材の躯体側の面に、前記建物躯体に設けられた係合具に係合可能な被係合部が形成されることを特徴とする。
【0018】
本実施態様によれば、化粧板材を建物躯体側に取り付ける際に、建物躯体側に設けられた係合具に対して被係合部を係合させ、化粧板材の重量を建物躯体側に預けることにより仮固定することができる。従って、従来、化粧板材を支える作業員とビス打ちを行なう作業員とを要したのに対して、1人の作業員で仮固定された化粧板材のビス打ちを行なうことができる。
【0019】
本発明に係る化粧板材のその他の実施態様は、上記において、前記被係合部が、前記建物躯体側に設けられたL字状金具のL字に対応した凹み部を有することを特徴とする。
【0020】
本実施態様によれば、建物躯体側に設けられたL字状金具に対して、L字に対応した凹み部を引っ掛けることにより化粧板材の仮固定を容易にすることができる。
【0021】
本発明に係る化粧板材のその他の実施態様は、上記において、前記化粧板材が、セメント系押出成形品であることを特徴とする。
【0022】
本実施態様によれば、化粧部、突起部、ビス打ち部等が一体的に形成された、意匠性に優れかつ重量感のあるセメント系化粧板材を、低い製造コストで効率よく提供することができる。
【0023】
本発明に係る化粧板材のその他の実施態様は、上記において、前記化粧板材が、破風または鼻隠しとして用いられることを特徴とする。
【0024】
本実施態様によれば、屋根末端に設けられる破風または鼻隠しの取り付け作業を容易にするとともに、化粧板材としての破風または鼻隠しの外観を損ねないようにすることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明に係る化粧板材によれば、化粧板材の化粧面における見栄えを損ねるおそれがなく、更に、より少数の人員で化粧板材の取り付け作業を手間なく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る化粧板材の実施形態について家屋の屋根の端部に設けられる破風用の化粧板材を例にとり図面を参照して説明する。
(本発明に係る化粧板材の一実施形態の説明)
図1は、本発明に係る化粧板材が建物躯体に取り付けられた一実施形態を示す概略断面図であり、図2は、図1に示す化粧板材単体の構造を示す概略断面図である。また、図3は、建物躯体に設けられる保持金具を示す概略断面図であり、図4は、保持金具の概略正面図である。
【0027】
図1に示すように、本発明に係る化粧板材10は、家屋の屋根の端部に設けられる破風用として用いられる略長方形状の断面を有しており、長手方向すなわち図1の紙面に垂直な方向に長い板状の部材となっている。化粧板材10の表面12側は屋外14側に向けられ、化粧板材10の裏面16側は建物躯体18側に向けられるように配置されており、ビス止めにより建物躯体18に取り付けられる。
【0028】
以下に、図1および図2を参照しながら、建物躯体18に取り付けられた化粧板材10の説明を行う。化粧板材10の表面12側には化粧部としての化粧面20が設けられており、長手方向すなわち図1の紙面に垂直な方向に延びるように形成された複数の凹凸によって化粧面20にストライプ模様の陰影を与えるようにデザインされている。ただし、これに限られるものではなく、家屋の外観として成り立つ程度であれば、化粧面に対する単なる着色、塗装等であっても何ら差し支えなく、その他の任意のデザインを用いることができる。また、化粧材の輪郭は、下に進むに従い建物躯体18側に引っ込むように若干傾斜する面とされており表面12を伝い落ちる雨水の水切りに有利なようになっていてもよい。
【0029】
ここで、化粧板材10は、長手方向すなわち図1の紙面に垂直な方向に等断面のセメント系押出成形品として構成される。なお、セメント系に限られるものではなく、樹脂系材料を始めとするその他の任意の材料を用いることができるが、樹脂系材料と比べ重量感のあるセメント系押出成形体を用いた場合に、本発明の効果がより具現化される。また、化粧板材10の寸法としては、例えば、長手方向の長さ3m、上下方向の高さ15cm、厚さ2cm程度を例示することができるが、その他の任意の寸法を用いることができる。
【0030】
化粧面20の上側には、表面12から屋外14側へ向かって突き出る第一突起リブ24が設けられ、第一突起リブ24の上側の該第一突起リブ24の屋外側端部よりも躯体側の位置にビス打ち部22設けられ、ビス打ち部22の上側には表面12から屋外14側へ向かって突き出る第二突起リブ26が設けられる。この場合、ビス打ち部22は、取り付けたビス28の頭30が突起リブ24の屋外側端部よりも屋外側に突き出ることがないような凹溝形状(図2参照)を有する必要がある。突起リブ24、26は、例えば、化粧面20から屋外14側へ5mm程度突き出るようにして形成するようにしてもよい。なお、ビス打ち部22とは、単にビスが打ち込まれる部分のことであり、特段のマーキングを施す必要はない。ただし、第一突起リブのみの場合等のようにビス打ち位置を誤る恐れがある場合、ビスライン等を付与すればよい。
【0031】
このように、第一突起リブ24をビス打ち部22の下側かつ化粧面20よりも上側に設けることにより、ビス打ち部22に打ち込まれるビス28の頭30が第一突起リブ24に隠れて下側から見えないようにするとともに、外観面となる化粧面20のデザインを損ねないようにしている。
【0032】
化粧板材10は、ビス打ち部22に打ち込まれるビス28によって、化粧板材10の裏面16側に対向するように建物躯体18側から延びる木材32に固定される。ここで、化粧板材10の裏面16に対向する建物躯体18の外壁34には、外壁34から屋外14側へ水平方向に突き出て上方に屈曲した先端をなすL字断面状の部分を上下2箇所に備える係合具としての保持金具36が設けられる。保持金具36は、例えば図3および図4のように略矩形平板状の上側と下側とにL字状の屈曲部38を備えるようにして構成される。
【0033】
また、図2に示すように、化粧板材10の裏面16側には、被係合部としての逆L字状の鍵状部40(凹み部)が、保持金具36の屈曲部38に対応するように上下2箇所に形成されている。そして、上下の鍵状部40の各下側には化粧板材10の取り付けの際に建物躯体18側または保持金具36に当接するように設けられた突出部42が形成されている。
【0034】
化粧板材10の表面12側には、金属製のケラバ包み板44(ケラバ水切り)が、建物躯体18の上端を被覆して水平に延びて下側に曲がって、第二突起リブ26とビス打ち部22の下側の第一突起リブ24の先端を覆うように配置される。このような位置関係により、第一24および第二突起リブ26は、ケラバ包み板44の建物躯体18側への水平方向の変位を拘束するので、ケラバ包み板44のグラツキ防止用の支持部材として機能することができる。また、第一突起リブ24は、取り付け後の化粧部材10を下から見上げた場合において上側のビス頭30を遮って隠すことができる。したがって化粧板材10の美観を損ねない。
【0035】
他方、突起リブを突起リブ24、26のように化粧面20の上側に2つ設けることで、運搬時における突起リブの破損事故を防止することができる。例えば、2つの化粧板材10を上下逆さまにし、互いの突起リブが内側になるようにするとともに薄いシートを介して向かい合わせた態様で運搬する場合において、例えば突起リブ24のみのように突起リブが1つだけ設けられた化粧板材10を運搬する場合には、向かい合わされた2つの化粧板材10は両端に位置する突起リブ24において化粧板材10の荷重を支持する態様となる。これは突起リブ24の設けられた片側に着目すると一点支持状態となって荷重が集中しているので、運搬に伴う揺動等によって突起リブ24は容易に破壊し易い状態である。
【0036】
しかし、2つの突起リブ24、26を化粧面20の上側に設けた化粧板材10を向かい合わせて運搬する場合には、化粧板材10の両側はそれぞれ2つの突起リブ24、26による二点支持状態とされることから荷重が分散され揺動等による突起リブ24、26の破壊は容易に起きないので化粧板材10の運搬時における突起リブ24、26の破損発生を低減することができる。
【0037】
(本発明に係る化粧板材の施工手順の説明)
次に、本発明に係る化粧板材10を、建物躯体18側に取り付ける場合の施工手順について、以下に説明する。
まず、建物躯体18側の外壁34には予め保持金具36を設けておく。次に、化粧板材10の裏面16側に形成された被係合部としての鍵状部40を保持金具36に載せて引っ掛けることにより、化粧板材10の重量を建物躯体18側に一旦預け、これにより化粧板材10を建物躯体18に仮固定する。このように保持金具36および鍵状部40は後工程のビス打ち作業を補助するために用いられる。こうすることで、後工程のビス打ち作業に備えて化粧板材10を位置決めするための、これを支持する人員を要せずに済む。
【0038】
仮固定が済んだら、ビス打ち部22における長手方向のビスラインに対して所定間隔でビス28を打ち込み、化粧板材10を建物躯体18から延びた木材32へ本固定する。これにより、化粧板材10の取り付け作業が完了する。こうすることで、化粧板材10の建物躯体18への取り付け作業を容易かつ効率的にすることができる。とくに化粧板材10を取り付けるための作業員が屋根のような高所に留まる時間が短縮されるとともに、複数人が協働することを要する煩雑な作業を回避できるので作業安全性も高まる。
【0039】
上記の実施形態において、ビス打ち部22に打ち込むビス28は例えば板金ビスを用いることができる。また、ビス打ち部22に対しては下穴を設けていても良いし、下穴を設けなくても良い。また、建物躯体18に設けられる保持金具36は、化粧板材10の被係合部を保持金具36へ差し込むことで仮固定する公知のキャッチ式の金具でも良く、後工程のビス止め作業を簡便に行えるように化粧板材10の重量を建物躯体18側へ一時的に仮置きできるものであればL字形状の保持金具36に限らずどのような形状および構造を用いることができる。このようにしても本発明と同一の作用効果を奏することができ、化粧板材10の取り付け作業を容易にするとともに、化粧板材10の化粧面20における見栄えを損ねないようにすることができる。
【0040】
上記の実施形態において、本発明に係る化粧板材10を製造する場合には、例えば、第一および第二突起リブ24、26用の凹部を設けた金型を用い、セメント系材料を押出成形することにより製造することができる。
【0041】
なお、上記の実施形態においては、破風用の化粧板材10の場合について説明したが、本発明に係る化粧板材は鼻隠し用の化粧板材にも適用できて、かつ上記の実施形態における作用効果と同一の作用効果を奏することは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る化粧板材が建物躯体側に取り付けられた一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】図1に示す化粧板材の構造を示す概略断面図である。
【図3】建物躯体に設けられる保持金具を示す概略断面図である。
【図4】建物躯体に設けられる保持金具を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 化粧板材
12 表面
14 屋外
16 裏面
18 建物躯体
20 化粧面
22 ビス打ち部
24 第一突起
26 第二突起
28 ビス
30 ビスの頭
32 木材
34 外壁
36 保持金具
40 鍵状部
42 突出部
44 ケラバ包み板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体に取り付けられる建築用の外装化粧板材であって、
前記化粧板材が前記建物躯体に取り付けられた状態において、
前記化粧板材の屋外側の面に化粧部を有し、
前記化粧部の上側に前記化粧部よりも屋外側へ突出した突起リブが設けられ、
前記突起リブの上側の前記突起リブの屋外側端部よりも躯体側の位置に、前記化粧材を前記建物躯体に取り付けるためのビス打ち部が設けられることを特徴とする化粧板材。
【請求項2】
前記ビス打ち部が、取り付けられた前記ビスのビス頭が前記突起リブの屋外側端部よりも屋外側に突出することがないように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の化粧板材。
【請求項3】
前記突起リブがケラバ包みを支持することを特徴とする請求項1または2に記載の化粧板材。
【請求項4】
前記化粧板材を前記建物躯体に取り付けた状態において、
前記突起リブの前記ビス止め部を隔てた上方に、前記化粧部よりも前記屋外側へ突出した第二の突起リブが設けられることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の化粧板材。
【請求項5】
前記化粧板材の躯体側の面に、前記建物躯体に設けられた係合具に係合可能な被係合部が形成されることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の化粧板材。
【請求項6】
前記被係合部が、前記建物躯体側に設けられたL字状金具のL字に対応した凹み部を有することを特徴とする請求項5に記載の化粧板材。
【請求項7】
前記化粧板材が、セメント系押出成形品であることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の化粧板材。
【請求項8】
前記化粧板材が、破風または鼻隠しとして用いられることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の化粧板材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−133108(P2009−133108A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310085(P2007−310085)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)