説明

化粧用パッティング脱脂綿及び化粧用パッティング脱脂綿の製造方法

【課題】低コストで製造可能な化粧用パッティング脱脂綿及びその製造方法を提供する。
【解決手段】複数の化粧用パックシートが積層され、積層方向に隣接する各化粧用パックシートが互いに剥離可能に接合された化粧用パッティング脱脂綿であって、各化粧用パックシートは、吸水可能な吸水層と、この吸水層に熱溶融繊維により固着され、剥離面を構成する剥離層とからなり、積層方向に隣接する各剥離層の繊維は互いに太さが異なる。このような構成としたことにより、圧着手段を用いることなく製造でき、また、化粧用パッティング脱脂綿の製造と、化粧用パックシートを剥離可能とする処理を同時に行うことができるため、コストを大きく下げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱脂綿を含む複数の化粧用パックシートが積層され、積層方向に隣接する各化粧用パックシートが互いに剥離面において剥離可能に接合された化粧用パッティング脱脂綿であって、特に、各層を構成する化粧用パックシート単位で剥離することにより、化粧用パックシートを用いてパックすることができる化粧用パッティング脱脂綿及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、皮膚の状態を良好に保つスキンケアが非常に重要視されており、化粧水等の基礎化粧品が多用されている。そして、化粧水等を皮膚に塗布する化粧用具として、化粧用脱脂綿が広く使用されている。この化粧用脱脂綿にはパッティングした後にも多量の化粧水等が含まれているため、そのまま廃棄すると化粧水等が無駄となり不経済である。そこで、化粧用脱脂綿を複数の化粧用脱脂綿シートを積層した積層構造に構成して、パッティングの後に、化粧水等が残存する化粧用脱脂綿から各化粧用脱脂綿シートを剥離し、この剥離した化粧用脱脂綿シートを皮膚に貼り付け、パック材として使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、化粧用パックシートを複数積層した化粧用パッティング材が開示されており、各化粧用パックシートは、該化粧用パッティング材の側縁部近傍の領域を側縁部に沿って圧着することにより剥離可能に接合される。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の化粧用パッティング材は、その製造工程において両側側縁部近傍の領域を側縁部に沿ってプレス装置により圧着する必要がある。このため、プレス装置の設備費用などランニングコストがかかり、化粧用パッティング材を低コストで製造することができない。また、同文献1記載のパッティング材を脱脂綿で製造する場合、パッティング材を構成するパック材はその表裏両面をウォータージェット加工により平滑化し、水を含んでもパック材単位で剥離可能となるようにする必要がある。この処理を経なければ、剥離作業の際にパック材としての形状を保つことができず、パックするときの使用感は大きく低下するからである。しかしながら、パック材をウォータージェット加工し、パック材ごとの剥離を可能とするための工程は、少なくともパッッティング材の内側の層となるパック材については表裏両面を対象に行わなければならない。したがって、パック材を積層してパッティング材を製造する工程とは同時に行うことができず、予め別の設備で行っておく必要がある。よって、さらに大きな労力を必要とし、設備費用、ランニングコストも増すことになる。
【特許文献1】特開2005−349143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に基づきなされたものであり、その目的は、脱脂綿を含む複数の化粧用パックシートが積層され、積層方向に隣接する各化粧用パックシートが互いに剥離面において剥離可能に接合された化粧用パッティング脱脂綿であって、圧着手段を用いることなく低コストで製造することができる化粧用パッティング脱脂綿及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、化粧用脱脂綿を構成する化粧用パックシートの剥離可能とするための処理を独立の設備で行うことなく、化粧用パッティング脱脂綿の製造と化粧用パックシートの剥離可能とするための処理とを同時に行うことができる、化粧用パッティング脱脂綿及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の化粧用パックシートが積層され、積層方向に隣接する各化粧用パックシートが互いに剥離可能に接合された化粧用パッティング脱脂綿であって、各化粧用パックシートは、吸水可能な吸水層と、この吸水層に熱溶融繊維により固着され、剥離面を構成する剥離層とからなり、積層方向に隣接する各剥離層は互いに、繊維の太さが異なることを特徴とする。
【0007】
また、積層方向に隣接する剥離層のうち一方の剥離層は、他方の剥離層よりも繊維を1.6〜2.2倍太くしてもよい。さらに、吸水層は、吸水繊維と熱溶融繊維とからなり、熱溶融繊維を9〜12質量%含むようにすることができる。
【0008】
加えて、本発明は、複数の化粧用パックシートが積層され、積層方向に隣接する各化粧用パックシートが互いに剥離可能に接合された化粧用パッティング脱脂綿の製造方法であって、吸水繊維及び熱溶融繊維からなる吸水層に、剥離面を含む剥離層を積層して各化粧用パックシートを得る第1の積層工程と、パックシート製造工程で得られた複数の化粧用パックシートを積層する第2の積層工程と、熱溶融繊維を熱溶融させる加熱工程と、を有し、化粧用パックシートは、積層方向に隣接する他の化粧用パックシートの剥離層とは太さの異なる繊維で構成された剥離層を有しており、第2の積層工程において、これらの剥離層が接触するように積層処理を行うことを特徴とする。本発明は、別の観点として、複数の化粧用パックシートが積層され、前記積層方向に隣接する各化粧用パックシートが互いに剥離可能に接合された化粧用パッティング脱脂綿の製造方法であって、第1の剥離層とこの第1の剥離層とは繊維の太さが異なる第2の剥離層とを吸水繊維及び熱溶融繊維からなる吸水層を介して積層し、前記各化粧用パックシートを得る第1の積層工程と、前記第1の積層工程で得られた複数の前記化粧用パックシートを積層する第2の積層工程と、前記熱溶融繊維を熱溶融させる加熱工程と、を有し前記第2の積層工程において、前記第1及び第2の剥離層とが接触するように積層処理を行うことを特徴とする。
【0009】
ここで、加熱工程は、積層工程の後に行ってもよい。さらに、加熱工程の前に、積層工程で得られた積層体に水分を含ませる含水工程と、積層体に当接して含水部で含水した水分を除水する除水工程と、乾燥を兼ねて熱処理する工程とを設けてもよい。また、搬送手段を設け、この搬送手段上において第1及び第2の積層工程における積層処理を行ってもよい。剥離層の剥離面に加圧処理を施すのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、化粧用パックシートの吸水層と剥離層とが熱溶融繊維により固着されているため、各化粧用パックシートをその形状を保持した状態で、剥離させることができる。また、各化粧用パックシートは、剥離面において異なる太さの繊維の交絡させることにより接合されているため、各化粧用パックシートを容易に剥離させることができる。この剥離は、製造工程において化粧用パックシートの剥離面の繊維を寝かせることにより、一層容易となる。加えて、化粧用パッティング脱脂綿を製造するために圧着手段を用いる必要がなく、さらにまた、化粧用パッティング脱脂綿の製造と化粧用パックシートを剥離可能とする処理とを同時に行うことができるので、大幅に労力とコストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
本実施形態の化粧用パッティング脱脂綿は、脱脂綿を含む複数の化粧用パックシートを積層することにより構成されており、積層方向に隣接する各化粧用パックシートは、互いに剥離可能に接合されている。
【0013】
各化粧用パックシートは、吸水可能な吸水層と、この吸水層に熱溶融繊維により固着された、剥離面を構成する剥離層とから構成されている。このように吸水層及び剥離層を熱溶融繊維によって固着することにより、各化粧用パックシートを形状を保持した状態で、剥離させることができる。
【0014】
また、積層方向に隣接する各剥離層は互いに、接触して、太さの異なる繊維を交絡させることにより接合されている。太さが異なる繊維を交絡させた場合には、太さが同じ繊維を交絡させた場合よりも、化粧用パックシート間の接合力が弱いため(つまり、不完全な交絡状態)、剥離作業を容易にすることができる。
【0015】
図1は、本発明による化粧用パッティング脱脂綿10(以下単に化粧用脱脂綿10と称す)の一実施形態を示す斜視図である。また、図2は図1のAA’間の断面図である。図1に示すように、本実施形態における化粧用脱脂綿10は化粧用パックシート11が4枚積層された複層構造を有する。
【0016】
化粧用脱脂綿10の断面図である図2に示すように、化粧用パックシート11は、吸水層13とこの吸水層13の層厚方向の端面にそれぞれ固着された剥離層12とからなる。
【0017】
吸水層13は、脱脂綿からなる4枚の吸水シート13aを積層することにより構成されており、各吸水シート13aには熱溶融繊維が含まれている。吸水層13及び剥離層12は、この熱溶融繊維を熱溶融させることにより、一体化されている。このように、熱溶融繊維を用いて吸水層13及び剥離層12を一体化させることにより、図3に示すように、各化粧用パックシート11の形状を保持した状態で、剥離させることができる。
【0018】
ここで、吸水層13への熱溶融繊維の含有割合は、好ましくは9〜12質量%である。熱溶融繊維の含有割合が12質量%よりも大きい場合には、熱溶融繊維による剥離層12と吸水層13との固着力は向上するが、吸水層13の脱脂綿繊維が熱溶融繊維によりコーティングされて、脱脂綿特有の触感が失われてしまう。一方、9質量%未満である場合は、剥離層12と吸水層13との固着力が低下して、化粧用パックシート11の形状を保持した状態で剥離することがむずかしくなる。熱溶融繊維としては、溶融温度が120〜130℃のポリプロピレンを例示できる。
【0019】
剥離層12は、吸水層13の上側の端面に固着された細剥離層12bと下側の端面に固着された太剥離層12aとからなり、細剥離層12bの資材としては、コーマ綿を例示でき、太剥離層12aの資材としてはコーマ綿よりも繊維の太いデシ綿を例示できる。
【0020】
積層方向に隣接する各化粧用パックシート11の細剥離層12b及び太剥離層12aは互いに接触しており、細剥離層12b及び太剥離層12aの各繊維は互いに交絡した状態となっている。なお、細剥離層12b及び太剥離層12aの各接触面が剥離面である。
【0021】
このように、太さの異なる繊維を交絡させた場合には、太さの同じ繊維を交絡させた場合よりも交絡強度(接合力)を小さくできるため、各化粧用パックシート11を剥離面から容易に剥離させることができる。すなわち、一般に、綿繊維は水を含むと繊維同士がより強く交絡して、接合力が大きくなることが知られている。したがって、剥離面において太さの同じ繊維を交絡させた状態で、化粧水を含浸させた場合には、接合力が強すぎ、各化粧用パックシート11は剥離面において剥離しにくくなる。そこで、本実施例では、太さの異なる繊維を交絡させることにより、各化粧用パックシート11の剥離面での剥離を容易にしている。
【0022】
ここで、太剥離層12aを構成する繊維の太さをR、細剥離層12bを構成する繊維の太さをRとしたときに、R及びRの大小の比を1.6R≦R≦2.2Rに設定するのが好ましい。1.6R≦R≦2.2Rに設定することにより、各化粧用パックシート11を剥離面から極めて容易に剥離させることができる。
【0023】
化粧用脱脂綿10の形状等は特に限定されないが、例えば方形とすることができ、その大きさは、例えば長さが80 mm、幅が60 mm、厚みが8 mmとすることができる。
【0024】
また、このときの化粧用脱脂綿10の目付けは240 g/mである。但しこれに限定されるものではなく、形状や大きさについては任意に設定することができる。また、積層される化粧用パックシート11の数についても4枚に限定されるものではなく、化粧水などをパッティングするときの摘み易さや、湿潤の具合等を考慮して任意に設定することができる。
【0025】
一方、1枚の化粧用パックシート11の目付けについても例えば60 g/mとすることができるが、これに限定されるものではない。また、吸水層13を構成する吸水シート13aの数についても上述した数に限定されるものではない。さらに、吸水シート13aの主構成繊維は脱脂綿繊維であればよく、その太さは特に限定されない。
【0026】
さらにまた、熱溶融繊維を含有する吸水シートと含有しない吸水シートとを混在させて吸水層が構成されてもよい。加えて、本実施形態においては、熱溶融繊維を吸水層が含有しているが、剥離層と吸水層とが熱溶融繊維により固着されるかぎり、これに限定されるものではない。
【0027】
次に、図4及び図5を参照しながら、脱脂綿体10の製造方法について詳述する。図4は本実施形態の脱脂綿10を製造するための工程図である。図5は、化粧用パックシートを積層しながら搬送する積層コンベアの搬送方向の断面図である。
【0028】
まず、化粧用パックシート11を製造するパックシート製造部Aについて説明する。
【0029】
パックシート製造部Aは4つ設けられており、積層コンベア40(図5参照)の搬送方向に沿って、上流側から第1〜第4のパックシート製造部11a〜11dの順序で配置されている。
【0030】
第1のパックシート製造部11aは、吸水層製造部A1、太剥離層製造部A2及び細剥離層製造部A3からなり、吸水層製造部A1は4つ設けられている。また、細剥離層製造部A3は太剥離層製造部A2よりも上流側に配置され、細剥離層製造部A3及び太剥離層製造部A2の間に、4つの吸水層製造部A1が並設されている。
【0031】
吸水層製造部A1は、混打綿機及び梳綿機からなり、不図示の混打綿機において、アリゾナ綿及びコーマ綿を混合した脱脂綿繊維及び熱溶融繊維が混合される。なお、脱脂綿繊維にデシ綿を混合してもよい。
【0032】
この混打綿機にはエア噴出口が設けられており、得られた混合綿は、このエア噴出口から噴出されたエアを介して、不図示の梳綿機に搬送される。
【0033】
梳綿機には針群が設けられており、梳綿機に搬送された各混合繊維は、針の間を通って繊維の方向が矯正され、吸水シート13aが連続的に製造される。各梳綿機から排出された4枚の吸水シート13aは積層され吸水層13が製造される。
【0034】
細剥離層製造部A3は、混打綿機及び梳綿機からなり、吸水層製造部A1と同様の方法により、シート状のコーマ綿からなる細剥離層12bが製造される。なお、混打綿機では2〜3種類の綿繊維を混合する。
【0035】
太剥離層製造部A2は、混打綿機及び梳綿機からなり、吸水層製造部A1と同様の方法により、シート状のデシ綿からなる太剥離層12aが製造される。なお、混打綿機ではデシ綿100%を使用する。
【0036】
積層コンベア40は、不図示の駆動装置から伝達された駆動力を受けて回動する無端回動式のベルトコンベアであり、各化粧用パックシート11を矢印X方向に搬送する。
【0037】
積層コンベア40の上方には、搬送方向上流から順に第1〜第4ロールプレス41a〜41dが配置され、下流側のロールプレス41ほど上側に配置される。
【0038】
次に、図5及び図6を参照して、化粧用パックシート及び化粧用パッティング脱脂綿の製造方法について説明する。図6は、化粧用パックシート11及び化粧用パッティング脱脂綿10の製造工程を図示した模式図である。ただし、第2〜第4パックシート製造部11b〜11dは第1パックシート製造部と構成が同じであるため、省略して図示している。
【0039】
細剥離層製造部A3から排出された細剥離層12bは積層コンベア40に供給され、この積層コンベア40上の細剥離層12bの上に、吸水層製造部A1から排出された4枚の吸水シート13aが順次積層され、これらの吸水シート13aの上に太剥離層製造部A3から排出された太剥離層12aが積層され、一枚の化粧用パックシート11が製造される。
【0040】
この第1のパックシート製造部11aで製造された化粧用パックシート11は、第1ロールプレス41aによって加圧され、この加圧された化粧用パックシート11の上に、第2のパックシート製造部11bで製造された細剥離層12b、4枚の吸水シート13a及び太剥離層12aが順次積層され、2枚の化粧用パックシートからなる積層体が製造される。同様の方法により、第2のパックシート製造部11bで製造され、第2のロールプレス41bによって加圧された化粧用パックシート11の上に、第3のパックシート製造部11cで製造された細剥離層12b、4枚の吸水シート13a及び太剥離層12aが順次積層され、3枚の化粧用パックシートからなる積層体が製造される。さらに、第3のパックシート製造部11cで製造され、第3のロールプレス41cで加圧された化粧用パックシート11の上に、第4のパックシート製造部11dで製造された細剥離層12b、4枚の吸水シート13a及び太剥離層12aが順次積層され、4枚の化粧用パックシートからなる化粧用パッティング脱脂綿10が製造される。この化粧用パッティング脱脂綿10は、第4のロールプレス41dによって、積層方向に加圧される。
【0041】
このように、積層コンベア40上において、化粧用パックシート11及び化粧用パッティング脱脂綿10の製造を並行して行うことにより、効率良く化粧用パッティング脱脂綿10を得ることができる。また、第1〜第4ロールプレス41a〜41dで加圧することにより、各化粧用パックシート11の太剥離層12aの表面上の毛羽立った繊維を寝かせることができる。これにより、ロールプレスせずに積層した場合よりも、太剥離層12a及び細剥離層12bの交絡する繊維の本数を減らすことができる。その結果、各化粧用パックシート11の接合力が更に弱まり、剥離作業を容易とすることができる。
【0042】
積層部Bで得られた化粧用脱脂綿10は、浸水部Cに搬送され、水に浸された後に、絞り部Dに搬送される。絞り部Dにはマングルが設けられており、このマングルの絞り作用により、化粧用脱脂綿10の繊維に含まれた水が絞り出される。
【0043】
絞り部Dにおいて水が絞り出された化粧用脱脂綿10は、加熱部Eに搬送され、加熱される。このとき、加熱温度を吸水層13に含まれる熱溶融繊維の融点よりも15〜20℃高い温度とした場合、残った水分が蒸発するとともに吸水層13の中に含まれる熱溶融繊維が溶融して、溶融繊維の一部が細剥離層12b及び太剥離層12aの接触面に達する。すなわち、化粧用脱脂綿の乾燥をはやめる工程と、吸水層の熱溶融繊維を溶融させる工程とを同時に行うことができる。
【0044】
加熱部Eで加熱された化粧用脱脂綿10は、空冷部Fに搬送され、空冷部Fにおける冷却作用により、溶融した熱溶融繊維が固まり、吸水層13及び剥離層12が固着される。
【0045】
製造された化粧用脱脂綿10は、通常の方法に従って所望のサイズに切断するなどして製品化することができる。
【0046】
上述の実施例では、4枚の各化粧用パックシートを同じ構成としているが、化粧用脱脂綿10の上下両端に配置される細剥離層12b及び太剥離層12aを不要とすることもできる。また、化粧用パックシートを4枚としているが、複数であれば5枚以上としてもよいし、3枚以下とすることもできる。
【0047】
最後に、本実施形態における化粧用脱脂綿10の使用方法について、化粧水を例として用いて詳述する。
【0048】
例えば顔などにパッティングを行うにあたり、まず、化粧用脱脂綿10に化粧水を染込ませる。これを指頭によって把持し、顔などの任意の部位にパッティングする。パッティングの後も化粧用脱脂綿10には多量の化粧水が残存しているので、図3に示すように化粧用脱脂綿10を構成する化粧用パックシート11を剥離する。化粧用パックシート11を構成する吸水層13と剥離層12とは熱溶融繊維により固着されており、また、化粧用パックシート11間の接合は、細剥離層12bの繊維と太剥離層12aの繊維との交絡によるため、化粧用パックシート11ごとの剥離は容易に行うことができる。剥離した後は、化粧用パックシート11を顔などの所望の部位に貼り付け、パックに使用する。そのため、化粧用脱脂綿10に染込ませた化粧水を余すところなく使用することができる。
【0049】
なお、化粧用脱脂綿10に染込ませる液体化粧料は化粧水に限定されるものではない。また、脱脂綿10の用途は化粧料の塗布に限らず、例えば化粧落とし材としても使用することがでる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。
【0051】
比較例1は、吸水層の両面にコーマ綿からなる剥離層を固着した化粧用パックシートを4枚積層した化粧用パッティング脱脂綿であり、吸水層は短繊維と中繊維を夫々50質量%含む脱脂綿と、溶融繊維との混綿で構成した。混綿中に含まれる溶融繊維の割合は、9〜12質量%とした。
【0052】
比較例2は、吸水層の両面にデシ綿からなる剥離層を固着した化粧用パックシートを4枚積層した化粧用パッティング脱脂綿であり、吸水層は短繊維と中繊維を夫々50質量%含む脱脂綿と、溶融繊維との混綿で構成した。混綿中に含まれる溶融繊維の割合は、9〜12質量%とした。
【0053】
実施例1及び2は、吸水層の上面にデシ綿からなる剥離層、下面にコーマ綿からなる剥離層を固着した化粧用パックシートを4枚積層した化粧用パッティング脱脂綿である。
【0054】
これらの化粧用パッティング脱脂綿は、図5の設備を用いて製造した。ただし、実施例1では、化粧用ロールプレス41a〜41dによるプレス処理を行っていない。
【0055】
これらの化粧用パッティング脱脂綿に化粧水を含浸させた後に、化粧用パックシートを剥離して、被験者(女性)の顔部に貼り付けた。化粧水には、資生堂製のベネフィークNTローションを使用した。
【0056】
評価項目は、毛羽の発生、剥離容易性、使用感とした。毛羽の発生については、被験者が剥離面の毛羽が少ないと視認した場合には良好として‘O’で示し、毛羽が多いと視認した場合には不良として‘×’で示した。
【0057】
剥離容易性については、被験者が剥離し易いと感じた場合には良好として‘O’で示し、剥離し難いと感じた場合には不良として‘×’で示した。
【0058】
使用感については、被験者が皮膚に剥離面の繊維が絡みつかないと感じた場合には良好として‘O’で示し、絡みつくと感じた場合には不良として‘×’で示した。
【0059】
総合評価については、毛羽の発生、剥離容易性及び使用感が共に‘O’である場合には合格とし、毛羽の発生、剥離容易性及び使用感のうちいずれか一つが‘×’の場合には不合格とした。なお、被験者は10人であり、評価は全員同じであった。
【0060】
【表1】

【0061】
比較例1は、剥離性及び使用感は良好であったが、毛羽の発生が著しく総合評価は不合格であった。比較例2は、毛羽の発生は良好であったが、剥離性及び使用感が不良であり総合評価は不合格であった。実施例1は毛羽の発生及び剥離性が良好であり、コーマ綿側を皮膚に貼り付けた場合には使用感が良好であり、総合評価は合格であった。実施例2は毛羽の発生及び剥離性が良好であり、コーマ綿側及びデシ綿側のいずれを皮膚に貼り付けた場合でも使用感が良好であり、総合評価は合格であった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態の化粧用パッティング脱脂綿の斜視図である。
【図2】図1のAA’断面拡大図である。
【図3】本実施形態の化粧用パッティング脱脂綿の斜視図である。
【図4】本実施形態の化粧用パッティング脱脂綿を製造するための工程図である。
【図5】本実施形態の化粧用パッティング脱脂綿の各化粧用パックシートを搬送するベルトコンベアの断面図である。
【図6】化粧用パックシート及び化粧用パッティング脱脂綿の製造工程を図示した模式図である。
【符号の説明】
【0063】
10:化粧用パッティング脱脂綿
11:化粧用パックシート
12:剥離層
13:吸水層
14:巻取りローラ
40:ベルトコンベア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の化粧用パックシートが積層され、前記積層方向に隣接する各化粧用パックシートが互いに剥離可能に接合された化粧用パッティング脱脂綿であって、
前記各化粧用パックシートは、吸水可能な吸水層と、この吸水層に熱溶融繊維により固着され、剥離面を構成する剥離層とからなり、
前記積層方向に隣接する前記各剥離層は互いに、繊維の太さが異なることを特徴とする化粧用パッティング脱脂綿。
【請求項2】
前記積層方向に隣接する剥離層のうち一方の剥離層は、他方の剥離層よりも繊維が1.6〜2.2倍太いことを特徴とする請求項1に記載の化粧用パッティング脱脂綿。
【請求項3】
前記吸水層は、吸水繊維と前記熱溶融繊維とからなり、前記熱溶融繊維を9〜12質量%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧用パッティング脱脂綿。
【請求項4】
複数の化粧用パックシートが積層され、前記積層方向に隣接する各化粧用パックシートが互いに剥離可能に接合された化粧用パッティング脱脂綿の製造方法であって、
吸水繊維及び熱溶融繊維からなる吸水層に、剥離面を含む剥離層を積層して前記各化粧用パックシートを得る第1の積層工程と、
前記第1の積層工程で得られた複数の前記化粧用パックシートを積層する第2の積層工程と、
前記熱溶融繊維を熱溶融させる加熱工程と、を有し
前記化粧用パックシートは、積層方向に隣接する他の前記化粧用パックシートの前記剥離層とは太さの異なる繊維で構成された前記剥離層を有しており、前記第2の積層工程において、これらの剥離層が接触するように積層処理を行うことを特徴とする化粧用パッティング脱脂綿の製造方法。
【請求項5】
搬送手段を有し、前記第1及び第2の積層工程における積層処理を前記搬送手段上において行うことを特徴とする請求項4に記載の化粧用パッティング脱脂綿の製造方法。
【請求項6】
前記剥離層の剥離面に加圧処理を施す加圧工程を有することを特徴とする請求項4又は5に記載の化粧用パッティング脱脂綿の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−73277(P2008−73277A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256733(P2006−256733)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(390037604)カクイ株式会社 (12)
【Fターム(参考)】