説明

医用画像処理装置

【課題】3次元画像データ中に被検体が大きく占める場合でも投影角度に関係なく、常に3次元画像データの端の領域も投影画像に含まれるように自動で調整が出来る投影画像の生成方法を提供する。
【解決手段】3次元画像データから投影画像を生成する際に、投影画像の投影角度に応じて3次元画像データを構成する3次元ボリュームデータのボクセル間隔を縮小させて投影画像を生成する、あるいは3次元画像データを構成する3次元ボリュームデータのデータポイント数を増加させて3次元ボリュームデータを拡大することにより、その拡大領域を用いて投影画像を生成することで投影画像のサイズを自動で調整することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びそれを用いた投影像生成方法に係り、特に、MRI装置等の医用画像処理装置で撮影した3次元画像データの投影画像の生成において、所望の角度からの投影画像を欠損なく観察可能にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴イメージング装置(以下に、MRI装置と称する)で撮像された被検体の断層像を作成し、これら各断層像の位置関係を明確にした状態でメモリに格納することにより、スライス面に垂直な方向に積み重ねた3次元画像データを得ることが可能である。
【0003】
3次元画像データを基にして3次元画像に対する任意の投影方向における投影画像を作成し、その投影画像を画面に表示することができる。
【0004】
3次元画像を投影する手法として、一般的に光線軌跡法が採用される。この方法では、3次元画像データと2次元平面(投影面)を3次元空間に配置し、2次元平面から3次元画像データに向かって仮想的な光線を投射し、光線上にある3次元画像データ中の所定の画素の値を用いて、2次元平面上の対応する画素の値を決定する。その際、光線上の画素のうち最大輝度値を投影する手法が最大値投影法(MIP; Maximum Intensity Projection)、最小輝度値を投影する手法が最小値投影法であり、描出しようとする組織に応じて適宜選択される。また3次元画像データの各画素に不透明度を与え、通過する光の量に基づいて投影像を構成するボリュームレンダリング法などの手法もある。
【0005】
投影画像を生成する場合、3次元画像データの投影に工夫を加えない限り、必要のない領域まで含んで投影されたり、投影画像の一部が含まれなくなったりして、特に、医療画像の場合には、診断に適さない投影画像となる場合がある。前者の工夫の一つとして、投影対象領域を制限する投影処理方法が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−340939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような投影画像の生成の際に、MRI装置で撮像された3次元画像データ中に被検体の領域が占める割合が多い場合には、この3次元画像データから投影画像を生成するときに投影角度によっては被検体の端の領域が欠損して投影画像に反映されない場合がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、3次元画像データ中に被検体の領域が大きく占める場合でも投影角度に関係なく、常に3次元画像データの端の領域も投影画像に含まれるように自動で調整が出来る投影画像の生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の画像処理装置の主要な構成は、次の通りとなる。
(1)磁場空間に置かれた被検体に高周波を照射し、被検体から放出される核磁気共鳴信号を基に該被検体の撮像部位の3次元画像を取得する画像処理装置において、静磁場空間を発生する静磁場発生手段と、被検体に高周波を照射する照射手段と、静磁場空間に重畳して勾配磁場を印加する傾斜磁場発生手段と、被検体から放出される核磁気共鳴信号を受信する受信手段と、3次元画像に処理を加えて2次元画像を得る信号処理計測手段と、撮像部位の3次元画像および2次元画像を記憶する記憶装置と、3次元画像、2次元画像、あるいは信号処理計測手段に用いる情報を表示する表示手段とを備え、3次元画像を基準面に対して投影して生成される2次元画像の投影領域を第1投影対象領域とし、基準面に対して所望の投影角度を有する投影面に対して3次元画像を投影して生成される2次元画像の投影領域を第2投影対象領域とするとき、第1投影対象領域に対して、前記第2投影対象領域の一部領域がはみ出す場合に、信号処理計測手段により、投影角度に応じて算出された縮小率を用いて、3次元画像を構成する3次元ボリュームデータのボクセル間隔を縮小し、第2投影対象領域が、第1投影対象領域に収納されるように自動調整することを特徴とする。
(2)磁場空間に置かれた被検体に高周波を照射し、前記被検体から放出される核磁気共鳴信号を基に該被検体の撮像部位の3次元画像を取得する画像処理装置において、静磁場空間を発生する静磁場発生手段と、被検体に高周波を照射する照射手段と、静磁場空間に重畳して勾配磁場を印加する傾斜磁場発生手段と、被検体から放出される核磁気共鳴信号を受信する受信手段と、3次元画像に処理を加えて2次元画像を得る信号処理計測手段と、撮像部位の3次元画像および2次元画像を記憶する記憶装置と、3次元画像、2次元画像、あるいは信号処理計測手段に用いる情報を表示する表示手段とを備え、3次元画像を基準面に対して投影して生成される2次元画像の投影領域を第1投影対象領域とし、基準面に対して所望の投影角度を有する投影面に対して3次元画像を投影して生成される2次元画像の投影領域を第2投影対象領域とするとき、第1投影対象領域に対して、第2投影対象領域の一部領域がはみ出す場合に、信号処理計測手段により、投影角度に応じて算出される拡大率を用いて、3次元画像を構成する3次元ボリュームデータのデータポイント数を増加させて3次元ボリュームデータを拡大することにより、第2投影対象領域が、1投影対象領域に収納されるように自動調整することを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の投影像生成方法の主要な構成は、次の通りとなる。
(1)静磁場空間を発生する静磁場発生手段と、静磁場空間に置かれた被検体に高周波を照射する照射手段と、静磁場空間に重畳して勾配磁場を印加する傾斜磁場発生手段と、被検体から放出される核磁気共鳴信号を受信する受信手段と、照射手段により被検体に高周波を照射し、被検体から放出される核磁気共鳴信号を基に該被検体の撮像部位の3次元画像を取得し、該画像の処理を行う信号処理計測手段と、3次元画像を記憶する記憶装置と、画像の処理結果を表示する表示手段と備え、信号処理計測手段により、3次元画像を所望の投影面に投影する投影像生成方法において、3次元画像を基準面に対して投影して生成される2次元画像の投影領域を第1投影対象領域とし、基準面に対して所望の投影角度を有する投影面に対して3次元画像を投影して生成される2次元画像の投影領域を第2投影対象領域とするとき、第1投影対象領域に対して、第2投影対象領域の一部領域がはみ出す場合に、信号処理計測手段により、投影角度に応じた縮小率を算出するステップと、第2の投影画像を生成する際に、3次元画像を構成する3次元ボリュームデータのボクセル間隔を縮小するステップと、第2投影対象領域が、第1投影対象領域に収納された投影画像を前記表示手段に表示するステップとを有することを特徴とする。
(2)静磁場空間を発生する静磁場発生手段と、静磁場空間に置かれた被検体に高周波を照射する照射手段と、静磁場空間に重畳して勾配磁場を印加する傾斜磁場発生手段と、被検体から放出される核磁気共鳴信号を受信する受信手段と、照射手段により前記被検体に高周波を照射し、被検体から放出される核磁気共鳴信号を基に該被検体の撮像部位の3次元画像を取得し、該画像の処理を行う信号処理計測手段と、3次元画像を記憶する記憶装置と、画像の処理結果を表示する表示手段と備え、信号処理計測手段により、3次元画像を所望の投影面に投影する投影像生成方法において、3次元画像を基準面に対して投影して生成される2次元画像の投影領域を第1投影対象領域とし、基準面に対して所望の投影角度を有する投影面に対して3次元画像を投影して生成される2次元画像の投影領域を第2投影対象領域とするとき、第1投影対象領域に対して、第2投影対象領域の一部領域がはみ出す場合に、信号処理計測手段により、投影角度に応じた拡大率を算出するステップと、第2の投影画像を生成する際に、3次元画像を構成する3次元ボリュームデータのデータポイント数を増加させて3次元ボリュームデータを拡大するステップと、第2投影対象領域が、第1投影対象領域に収納された投影画像を表示手段に表示するステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、3次元画像データ中に被検体の領域が大きく占める場合でも投影角度に関係なく、常に3次元画像データの端の領域も投影画像に含まれるように自動で調整が出来る投影画像の生成方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明が適用されるMRI装置の全体構成を示す概要図。
【図2A】(a)、(b)は3次元画像データと生成される投影画像との関係を示し、(c)(d)は投影角度(回転角)45度の場合の3次元画像データと生成される投影画像との関係を示す説明図。
【図2B】(a)、(b)は3次元画像データと生成される投影画像との関係を示し、(c)(d)は任意の投影角度(回転角)の場合の3次元画像データと生成される投影画像との関係を示す説明図。
【図3】(a)、(b)は投影角度(回転角)45度の場合の3次元画像データと生成される投影画像との関係を示し、(c)、(d)は縮小された3次元画像データを構成する3次元ボリュームデータ領域と投影画像との関係を示す説明図。
【図4】(a)、(b)は投影角度(回転角)45度の場合の3次元画像データと生成される投影画像との関係を示し、(c)、(d)は拡大された3次元画像データを構成する3次元ボリュームデータ領域と投影画像の関係を示す説明図。
【図5】本発明の実施例1で示す投影画像の生成方法の一例を示す処理フロー図。
【図6】本発明の実施例2で示す投影画像の生成方法の一例を示す処理フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を用いて発明の形態を説明する。
【0014】
MRI装置100は、NMR(核磁気共鳴)現象を利用して被検体中の所望の検査部位における原子核スピンの密度分布や緩和時間分布等を計測して、その計測から被検体の任意の断面を画像表示する装置である。
【0015】
図1は、本発明が適用されるMRI装置の全体構成を示す概要図である。図1において、MRI装置100は、被検体112に静磁場を与える静磁場コイル101と、被検体112に傾斜磁場を与える傾斜磁場コイル102と傾斜磁場電源103と、被検体112の生態組織を構成する原子の原子核にNMR現象を起こさせる高周波パルス(以下RFパルスという)を所定のパルスシーケンスで繰り返し印加する照射コイル104と、この照射コイルからのRFパルスにより被検体にRF磁場を照射する送信系105と、NMR現象による放出されるエコー信号を検出する受信コイル106と受信系107と、この受信系で検出したエコー信号を用いて画像再構成演算を行う信号処理計測系(CPU)108と、画像を表示する表示手段(ディスプレイ)109と、これらを制御するための操作卓(入力装置)110と、データを蓄積する記憶装置111を備えている。
【0016】
傾斜磁場は、エコー信号に位置情報を与えるために与えられるもので、直交する3軸方向の傾斜磁場がそれぞれ所定のパルスシーケンスにより印加される。これらの装置により、被検体112の任意断面の画像を得る。
【0017】
図1において、信号処理計測系(CPU)108は、MRI装置100から送られてくる3次元画像データを入力して画像処理を行い、画像として表示するとともに、操作者(ユーザ)に操作手段として提供するGUI(Graphical User Interface)を表示させる。
【0018】
メモリ113は、3次元画像データやその他のデータを一時的に記憶する。記憶装置111は、MRI装置100から送られる画像や信号処理計測系(CPU)108で作成された投影画像、GUIのためのテンプレートなどの画像を保存する。
【0019】
本発明は、上記MRI装置100で撮像された画像データから投影画像を生成する際に、投影画像の投影角度に応じて投影画像のサイズを自動で調整する方法を提供する。
【0020】
具体的には、本発明の装置は、被検体の所望の部位を撮像して得られた3次元ボリュームデータを任意の方向より投影して投影像を生成する手段を備え、所望の部位の投影像上における輪郭の大きさが、上記の投影する方向に応じて変化しても、所望の部位の全体が投影像の所定の領域からはみ出さないように、調整する調整手段を備えたことを特徴とする。
【0021】
すなわち、本発明は、3次元画像データから投影画像を生成する際に、投影画像の投影角度から計算される比率で3次元画像データを構成する3次元ボリュームデータを縮小させて投影画像を生成することである。
また、投影角度から計算される比率で逆に3次元画像データを構成する3次元ボリュームデータのポイントデータ数を増加させ、3次元ボリュームデータを拡大させて投影画像を生成することである。
【0022】
MRI装置100により被検体112の複数のスライス面で撮像された画像データを基にして、3次元画像データを得ることができる。この3次元画像データは、3次元空間における画素(ボクセル)により構成され、各画素は3次元空間座標でその位置が指定され、各画素には画素値が与えられている。
【0023】
そして、この3次元画像データを投影面上に所望の方向から投影して投影画像(2次元画像)を得る。例えば、3次元画像を投影する手法として、一般的に光線軌跡法が採用される。この方法では、3次元画像データと2次元平面(投影面)を3次元空間に配置し、2次元平面から3次元画像データに向かって仮想的な光線を投射し、光線上にある3次元画像データ中の所定の画素の値を用いて、2次元平面上の対応する画素の値を決定する。その際、光線上の画素のうち最大輝度値を投影する最大値投影法(MIP; Maximum Intensity Projection)がある。その他、最小輝度値を投影する手法が最小値投影法や、3次元画像データの各画素に不透明度を与えて通過する光の量に基いて投影画像を構成するボリュームレンダリング法などがあるが、投影法は、描出しようとする組織に応じて適宜選択される。
【0024】
また、投影面は、CPU108に入力した投影範囲、投影角度、投影倍率などの設定値に基づいて決定される。投影画像を構成する各画素は、2次元の空間座標によってそれぞれの位置が与えられる。
【0025】
具体的には、メモリ113には、記憶装置111に保存された3次元画像データが送信され、格納されている。信号処理計測系(CPU)108は、3次元画像データを基に、任意の投影方向からの2次元画像を作成し、その2次元画像を構成する2次元画像データを投影画像メモリ(図示せず)に格納する。また、投影像作成の際に用いる3次元位置データは、3次元位置データメモリ(図示せず)に格納され、任意の断面画像の決定の際に読み出されて、利用される。
【実施例1】
【0026】
本発明の第1の実施例は、3次元画像データから投影画像を生成する際に、投影画像の投影角度から計算される比率で3次元画像データを縮小させて投影画像を生成する方法である。
【0027】
図2A(a)は、被検体112を撮像して得られた画像データから3次元画像データを生成し、その3次元画像データのうちのAX(アキシャル)方向からの画像を示す。
【0028】
この3次元画像データに基き生成される投影画像について以下に述べる。例えば、図2A(a)で示す披検体112の3次元画像の投影方向が投影方向(1)の場合、すなわちCOR(コロナル)基準断面に対して右へ45度回転した面からの投影方向、またはSAG(サジタル)基準断面に対して左へ45度回転した面からの投影方向の場合には、投影画像は、図2A(b)のように生成される。
【0029】
それに対して、図2A(c)のように投影方向を投影方向(1)から右へ45度回転したSAG(サジタル)基準断面に対する投影、すなわち投影方向(2a)から投影した場合、投影画像は、図2A(d)に示すように、被検体の一部が図中の四角の太線枠で示す投影対象領域内からはみ出して、点線で示すような投影画像の対象外領域が発生する。
【0030】
ここで、図2A(a)において、四角の太線枠は、上記3次元画像を構成する3次元ボリュームデータ領域を示すものとする。従って、投影画像は、この3次元ボリュームデータ領域内のデータに基いて生成される。
また、投影角度は、投影方向が基準断面に対してなす角度を示すものとし、上記実施例では、その角度が45度の場合を示している。なお、本実施例では、簡単のために、基準断面の一つに対してなす角度を投影角度としているが、複数の基準断面に対してなす角度を用いることもできる。
【0031】
図3(a)で示す投影方向(2a)から投影して投影画像を生成した場合、図3(b)に示すように、投影画像の対象外領域が発生している。なお、図3(a)、(b)は、それぞれ図2A(c)、(d)に対応している。
【0032】
本実施例1では、この対象外領域を解消すべく、図3(c)に示すように被検体112の3次元画像を構成する3次元ボリュームデータを縮小し、その縮小された3次元ボリュームデータを基に投影画像が生成される。
【0033】
ここで、3次元ボリュームデータの縮小の一例として、各3次元画像を構成するボクセル(又はピクセル)の相互間隔を縮小する方法を採用した。具体的には、本実施例で示す装置は、被検体の所望の部位を撮像して得られた3次元ボリュームデータを任意の方向より投影して投影像を生成する手段を備え、所望の部位の投影像上における輪郭の大きさが、上記の投影する方向に応じて変化しても、所望の部位の全体が投影像の所定の領域からはみ出さないように、3次元ボリュームデータのボクセル間隔を縮小することにより、調整する調整手段を具備する。
【0034】
この方法により、投影対象領域は、図3(b)の時と同様な大きさを有する投影対象領域としたままで、図3(d)に示すような投影画像が生成され、投影画像の対象外領域も発生していないことが分かる。
【0035】
なお、図3(d)から見て取れるように、投影画像の全体が縮小され、図中では左右と同様に同率で上下方向も縮小されている。これは各3次元画像を構成するボクセルの相互間隔を縮小したことから当然に生じる結果であり、この縮小は投影角度に応じて縮小率が決定される。すなわち、縮小率は、投影画像の対象外領域が発生しない程度の範囲で設定される。
【0036】
その設定は、図1で示す操作卓(入力装置)110からユーザが入力しても良いし、あるいは、図1で示す記憶装置111を備えられたデータベースを用いて、信号処理計測系(CPU)108で算出しても良い。
【0037】
図2A(c)では、基準断面から45度の角度をなす投影方向(2a)から投影した場合を示したが、45度の場合に縮小率が最大となる。45度以外の角度をなす場合を図2Bに示す。図2B(c)では、基準断面からθ(<45度)の角度をなす投影方向(2b)を図示している。この図から分かるように、投影画像の対象外領域は、45度の場合に比べ、狭い領域となっている。なお、θは45度より小さい角度の場合を検討すれば十分であり、45度より大きく、90度より小さい場合も45度より小さい角度と同様である。
【0038】
従って、縮小率の決定は、45度の場合を想定して設定すれば、いずれの投影角度の場合にも投影画像の対象外領域の発生をなくすことができる。
【0039】
なお、縮小率は、上述したように投影画像も縮小することになるので、3次元ボリュームデータ中に被検体の3次元画像データが占める割合に応じて、投影画像の対象外領域が発生しない範囲で、必要以上に画像が縮小されないように設定すれば良い。
【0040】
次に本発明の第1の投影画像生成方法について説明する。本発明の投影画像の生成方法の各処理ステップは、システムにおいて、図5に示すフローに基いて実行される。
【0041】
(1)入力された複数のスライス画像データから3次元画像データを生成する(ステップ 501)。
【0042】
(2)直交3方向を基準面として、AX、COR、SAG方向の投影画像を生成してディスプレイ上に表示する(ステップ 502)。
【0043】
(3)ユーザは、入力装置を介して所望の投影角度(回転角度)を入力する(ステップ 503)。
【0044】
(4)図3に示すように、ユーザが入力した投影角度から投影面のサイズに合うように3次元画像を構成する3次元ボリュームデータの縮小率を計算する(ステップ 504)。
【0045】
(5)計算された縮小率で3次元ボリュームデータを縮小する(ステップ 505)。
【0046】
(6)縮小された3次元ボリュームデータからユーザの入力した投影角度で投影画像を生成してディスプレイ上に表示する(ステップ 506)。
【0047】
本実施例1で示す方法は、3次元ボリュームデータのメモリ容量に変更を加えるものではないので、メモリ容量に負担を掛けることはない。ただし、投影画像は、縮小されるので、ユーザが画像を観察する際の画像は、縮小する前の画像に比べれば小さくなる。
【実施例2】
【0048】
本発明の第2の実施例は、3次元ボリュームデータから投影画像を生成する際に、投影画像の対象外領域が発生する場合に、その対象外領域に相当する領域分の3次元ボリュームデータのデータポイント数を増加させ、投影対象領域を拡大させる手段を示す。
【0049】
図4(a)は、図2A(c)と同様に、被検体112を撮像して得られた画像データから3次元画像データを生成し、その3次元画像データのうちのAX(アキシャル)方向からの画像を示す。披検体112の3次元画像の投影方向を投影方向(2)の場合、すなわちCOR(コロナル)基準断面に対して右へ45度回転した面からの投影方向、またはSAG(サジタル)基準断面に対して左へ45度回転した面からの投影方向の場合を示す。
【0050】
図4(b)は、図4(a)の投影画像であるが、図2A(d)に示すように、被検体の一部が投影画像に含まれない投影画像の対象外領域が発生する。本実施例2では、この対象外領域を解消すべく、図4(c)に示すように被検体112の3次元画像データを構成する3次元ボリュームデータ領域を拡大し、拡大した3次元ボリュームデータを基に投影画像が生成される。この方法により、図4(d)に示すような投影画像が生成され、投影画像の対象外領域は発生していないことが分かる。
【0051】
本実施例では、この対象外領域を解消するために、その対象外領域に相当する領域分の3次元ボリュームデータのデータポイント数を増加させ、投影対象領域を拡大する方法を採用する。具体的には、本実施例で示す装置は、被検体の所望の部位を撮像して得られた3次元ボリュームデータを任意の方向より投影して投影像を生成する手段を備え、所望の部位の投影像上における輪郭の大きさが、上記の投影する方向に応じて変化しても、所望の部位の全体が投影像の所定の領域からはみ出さないように、3次元ボリュームデータを格納するデータポイント数を大きくさせて、調整する調整手段を具備する。
【0052】
データポイント数を増加させて投影対象領域を拡大する拡大率は、投影角度に応じて決定される。すなわち、拡大率は、投影画像の対象外領域が発生しない程度の範囲で設定される。
【0053】
投影角度は、45度の場合を例に図示したが、実施例1の場合と同様に、45度より小さい角度θの場合にも適用でき、その拡大率は、45度の場合より小さくできる。すなわち、計算領域を45度の場合より小さくできる。
【0054】
次に本発明の第2の投影画像生成方法について説明する。本発明の投影画像の生成方法の各処理ステップは、システムにおいて、図6に示すフローに基づいて実行される。
【0055】
(1)入力された複数のスライス画像データから3次元画像データを生成する(ステップ 601)。
【0056】
(2)直交3方向を基準面として、AX、COR、SAG方向の投影画像を生成してディスプレイ上に表示する(ステップ 602)。
【0057】
(3)ユーザは、入力装置を介して所望の投影角度(回転角度)を入力する(ステップ 603)。
【0058】
(4)図4に示すように、ユーザが入力した投影角度から3次元画像データの全ての領域が投影されるように3次元画像を構成する3次元ボリュームデータのデータポイント数を増加させ、3次元ボリュームデータを拡大する(ステップ 604)。
【0059】
(5)拡大された3次元ボリュームデータからユーザの入力した投影角度で投影画像を生成してディスプレイ上に表示する(ステップ 605)。
【0060】
本実施例2で示す方法は、投影画像は縮小されないので、ユーザが画像を観察する際に、画像の見易さは一定に保持できる。ただし、3次元ボリュームデータのメモリ容量が増大するので、メモリ容量に負担を掛けることになる。投影角度に応じて、拡大率を設定すれば、この負担は軽減できる。
【符号の説明】
【0061】
100…MRI装置、
101…静磁場コイル、
102…傾斜磁場コイル、
103…傾斜磁場電源、
104…照射コイル、
105…送信系、
106…受信コイル、
107…受信系、
108…信号処理計測系(CPU)、
109…ディスプレイ、
110…操作卓(入力装置)、
111…記憶装置、
112…被検体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の所望の部位を撮像して得られた3次元ボリュームデータを任意の方向より投影して投影像を生成する手段を備えた医用画像処理装置において、
前記所望の部位の投影像上における輪郭の大きさが、前記方向に応じて変化しても、前記所望の部位の全体が前記投影像の所定の領域からはみ出さないように、調整する調整手段を備えたことを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記3次元ボリュームデータのボクセル間隔を縮小することにより、調整することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記調整手段は、前記3次元ボリュームデータを格納するデータポイント数を大きくさせて、調整することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の医用画像処理装置において、
静磁場空間を発生する静磁場発生手段と、
前記被検体に高周波を照射する照射手段と、
前記静磁場空間に重畳して勾配磁場を印加する傾斜磁場発生手段と、
前記被検体から放出される核磁気共鳴信号を受信する受信手段と、
前記3次元画像に処理を加えて2次元画像を得る信号処理計測手段と、
前記撮像部位の3次元画像および前記2次元画像を記憶する記憶装置と、
前記3次元画像、前記2次元画像、あるいは前記信号処理計測手段に用いる情報を表示する表示手段と、を備え、
前記3次元画像を基準面に対して投影して生成される2次元画像の投影領域を第1投影対象領域とし、
前記基準面に対して所望の投影角度を有する投影面に対して前記3次元画像を投影して生成される2次元画像の投影領域を第2投影対象領域とするとき、
前記第1投影対象領域に対して、前記第2投影対象領域の一部領域がはみ出す場合に、
前記調整手段は、前記信号処理計測手段により、前記投影角度に応じて縮小率を算出し、該縮小率に基づいて前記3次元画像を構成する3次元ボリュームデータのボクセル間隔を縮小し、前記第2投影対象領域が、前記第1投影対象領域に収納されるように自動調整することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項5】
前記投影角度がいずれの角度の時も、前記投影角度が45度で求めた縮小率を用いることを特徴とする請求項4に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の医用画像処理装置において、
静磁場空間を発生する静磁場発生手段と、
前記被検体に高周波を照射する照射手段と、
前記静磁場空間に重畳して勾配磁場を印加する傾斜磁場発生手段と、
前記被検体から放出される核磁気共鳴信号を受信する受信手段と、
前記3次元画像に処理を加えて2次元画像を得る信号処理計測手段と、
前記撮像部位の3次元画像および前記2次元画像を記憶する記憶装置と、
前記3次元画像、前記2次元画像、あるいは前記信号処理計測手段に用いる情報を表示する表示手段と、を備え、
前記3次元画像を基準面に対して投影して生成される2次元画像の投影領域を第1投影対象領域とし、
前記基準面に対して所望の投影角度を有する投影面に対して前記3次元画像を投影して生成される2次元画像の投影領域を第2投影対象領域とするとき、
前記第1投影対象領域に対して、前記第2投影対象領域の一部領域がはみ出す場合に、
前記調整手段は、前記信号処理計測手段により、前記投影角度に応じて拡大率を算出し、該拡大率に基づいて前記3次元画像を構成する3次元ボリュームデータのデータポイント数を増加させて前記3次元ボリュームデータを拡大することにより、前記第2投影対象領域が、前記第1投影対象領域に収納されるように自動調整することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項7】
前記投影角度がいずれの角度の時も、前記投影角度が45度で求めた拡大率を用いることを特徴とする請求項6に記載の医用画像処理装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−183121(P2012−183121A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46886(P2011−46886)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】