説明

医用画像診断装置

【課題】被検体あるいは装着器具とガントリとの接触を防止する医用画像診断装置を提供することを目的とする。
【解決手段】PET装置1は、ガントリ41の他に、被検体Mを収容する開口部43aを有することで被検体Mを収容するガイド機構43を別に備える。ガイド機構43はガントリ41の開口部41aに収容される。被検体Mをガントリ41に収容する前にガイド機構43に被検体Mを収容することで被検体Mの位置決めを行い、被検体Mの位置決めを行った状態で、ガイド43機構をガントリ41に対して移動させて、被検体Mとともにガイド機構43をガントリ41に収容するので、被検体Mあるいは装着器具とガントリ41との接触を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医用画像を取得して診断を行う医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、PET(Positron Emission Tomography)装置を例に採って説明する。PET装置は、医用画像としてPET画像を取得するために開口部を有したガントリを備え、その開口部に被検体を収容して撮像を行うことで核医学診断が行われる(例えば、特許文献1参照)。被検体の撮像を実際に行う場合には、図9に示すように被検体Mを載置する天板102をガントリ131に送り込むことで被検体Mをガントリ131の開口部131aに収容する。なお、図9中の符号101はPET装置で、符号103はPET検出部で、符号132はγ線検出器である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−222439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のPET装置では、被検体の体格の違いや被検体が不意に動いてしまったりすることで、被検体がガントリに接触してしまったり、被検体の移動に伴い点滴やガス吸入器等の被検体に装着する装着器具がガントリに接触してしまう可能性がある。また、オペレータ(操作者)は、被検体のセッティングおよび撮像中での被検体の移動に注意を十分に払う必要がある。
【0005】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、被検体あるいは装着器具とガントリとの接触を防止する医用画像診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、この発明に係る医用画像診断装置は、医用画像を取得して診断を行う医用画像診断装置であって、前記医用画像を取得するための被検体を収容する開口部を有したガントリと、前記ガントリの開口部に収容される収容機構とを備え、前記収容機構に前記被検体を収容する開口部を有し、前記収容機構が前記ガントリに対して相対的に移動するように構成することを特徴とするものである。
【0007】
[作用・効果]この発明に係る医用画像診断装置によれば、被検体を収容する開口部を有することで被検体を収容するガントリの他に、被検体を収容する開口部を有することで被検体を収容する収容機構を別に備える。この収容機構はガントリの開口部に収容される。被検体をガントリに収容する前に収容機構に被検体を収容することで被検体の位置決めを行う。被検体の位置決めを行った状態で、収容機構をガントリに対して相対的に移動させて、被検体とともに収容機構をガントリに収容するので、被検体あるいは装着器具とガントリとの接触を防止することができる。収容機構がガントリに対して相対的に移動するとは、ガントリを固定して収容機構のみを移動させる場合のみならず、収容機構を固定してガントリのみを移動させる場合や、収容機構およびガントリの双方を移動させる場合も含む。
【0008】
上述した医用画像診断装置において、収容機構に、撮像領域を表示する表示機構を備えるのが好ましい。特に、操作者は、被検体をガントリに収容する前に収容機構を介して表示機構に表示された撮像領域を観察することで、撮像領域を把握することができる。その結果、被検体のセッティングが容易になり、検査時間の短縮を図ることが可能になる。
【0009】
上述したこれらの医用画像診断装置において、収容機構に映像機構を備えるのが好ましい。被検体と収容機構との位置関係が変わらないので、被検体の移動時でも被検体は目線を移動させる必要はない。特に、被検体は、収容機構を介して映像機構での映像を見ることで、例えば閉所恐怖症等の被検体への精神的な負担が映像により軽減し、例えば映像により撮像状況を被検体が把握することができ、あるいは例えば視覚用または刺激用の映像により被検体の視覚または刺激に関する検査が可能になる。
【0010】
上述したこれらの医用画像診断装置において、収容機構の少なくとも一部が、光透過性を有する物質であるのが好ましい。光透過性を有する物質で一部が形成された収容機構を介して、収容機構に収容された被検体の様子を把握することができる。
【0011】
また、収容機構の少なくとも一部が、光透過性を有する物質の場合には、上述の撮像領域を表示する表示機構を備え、その表示機構は導光手段であって、その導光手段を収容機構の光透過性を有する物質に配設することで光により撮像領域を把握することができる。より好ましくは、複数の導光手段をいずれかに選択する選択手段を備え、その選択手段によって撮像領域の大きさを可変にする。これにより、様々な撮像領域に応じた検査が可能になり、検査の種類等に応じて撮像領域を変更することができる。
【0012】
上述したこれらの医用画像診断装置において、被検体を載置する載置機構と、その載置機構と収容機構とを同期移動させて制御する制御手段とを備えるのが好ましい。収容機構を少なくとも移動させることで収容機構がガントリに対して相対的に移動する場合には、被検体をガントリに収容する前に被検体の位置決めを行った状態で収容機構を移動させても、収容機構の移動に同期して被検体を載置する載置機構が移動するので、移動中や移動終了後のガントリでの被検体の収容時に被検体と収容機構との位置関係がズレにくい。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る医用画像診断装置によれば、被検体をガントリに収容する前に収容機構に被検体を収容することで被検体の位置決めを行い、被検体の位置決めを行った状態で、収容機構をガントリに対して相対的に移動させて、被検体とともに収容機構をガントリに収容するので、被検体あるいは装着器具とガントリとの接触を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1に係るPET装置の側面図である。
【図2】実施例1に係るPET装置のブロック図である。
【図3】ガイド移動機構の具体的構成の概略図である。
【図4】実施例2に係る頭部用PET装置の側面図である。
【図5】(a)、(b)は、実施例2に係る頭部用ガイド機構での表示機構の実施態様の一例である。
【図6】実施例2に係る頭部用ガイド機構での映像機構の実施態様の一例であり、(a)は映像機構の概略図、(b)は映像機構の側面図である。
【図7】実施例2に係るPET装置のブロック図である。
【図8】実施例3に係る頭部用PET装置の側面図である。
【図9】従来のPET装置の側面図である。
【実施例1】
【0015】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係るPET装置の側面図であり、図2は、実施例1に係るPET装置のブロック図である。なお、後述する実施例2、3も含めて、本実施例1では、医用画像診断装置として、PET装置を例に採って説明するとともに、医用画像としてPET装置で取得された投影データや断層画像を例に採って説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施例1に係るPET装置1は、水平姿勢の被検体Mを載置する天板2を備えている。この天板2は、床面に設置されたベッド3に対して被検体Mの体軸に沿って進退移動可能に構成されている。また、ベッド3は床面に対して被検体Mの体軸に沿ってスライド移動可能に構成されている。なお、天板2を昇降移動させるようにベッド3を高さ方向に伸縮自在に構成してもよい。PET装置1は、天板2に載置された被検体Mを診断するPET検出部4を備えている。天板2は、この発明における載置機構に相当する。
【0017】
PET検出部4は、開口部41aを有したガントリ41と被検体Mから発生したγ線を検出するγ線検出器42とを備えている。γ線検出器42は、被検体Mの体軸周りを取り囲むようにしてリング状に配置されており、ガントリ41内に埋設されている。ガントリ41は床面に対して被検体Mの体軸に沿ってスライド移動可能に構成されている。ガントリ41は、この発明におけるガントリに相当する。
【0018】
その他に、本実施例1では、ガントリ41の開口部41aに収容されるガイド機構43を備え、ガイド機構43に被検体Mを収容する開口部43aを有している。ガイド機構43の外壁部分は、ガントリ41の開口部41aの形状に合わせた形状となっている。ガイド機構43は、天板2の水平移動(体軸に沿った進退移動)に連動して移動可能に構成されている。被検体Mをガントリ41に収容する前にガイド機構43に被検体Mを収容することで被検体Mの位置決めを行う。被検体Mの位置決めを行った状態で、ガイド機構43が移動することで被検体Mをガントリ41に案内(ガイド)する機能を有する。ガイド機構43は、この発明における収容機構に相当する。
【0019】
なお、被検体Mの視認性を保つためにガイド機構43の一部または全部をアクリル等の透明な部材で形成してもよい。また、ガイド機構43には突起43bが設けられており、この突起43bがガントリ41に接触することにより、ガイド機構43がガントリ41よりも先(ガントリ41のベッド3側とは逆側)に移動しないようにする。したがって、突起43bはストッパの機能を有する。
【0020】
続いて、PET装置1のブロック図について説明する。図2に示すように、PET装置1は、上述した天板2やベッド3やPET検出部4の他に、ベッド移動機構5と天板移動機構6とガントリ移動機構7とガイド移動機構8とコンソール9とを備えている。PET検出部4は、上述したガントリ41やγ線検出器42やガイド機構43の他に、増幅器44とAD変換器45と同時計数回路46とを備えている。ベッド移動機構5や天板移動機構6やガントリ移動機構7やガイド移動機構8の具体的な構成については、図3で後述する。
【0021】
コンソール9は、データ収集部91と画像再構成部92とメモリ部93と入力部94と出力部95とコントローラ96とを備えている。
【0022】
増幅器44は、γ線検出器42で検出されて出力された電気信号を増幅させる。AD変換器45は、増幅器44で増幅された電気信号のアナログ値をディジタル値に変換してディジタル出力する。
【0023】
同時計数回路46は、γ線がγ線検出器42で同時に検出(すなわち同時計数)されたか否かを判定する。同時計数回路46で同時計数されたエミッションデータをデータ収集部91に送り込む。
【0024】
データ収集部91は、同時計数回路46で同時計数されて収集されたエミッションデータを収集する。データ収集部91は、投影データ(エミッションデータ)を画像再構成部92に送り込む。画像再構成部92は、投影データを再構成して断層画像を生成する。
【0025】
メモリ部93は、コントローラ96を介して、PET検出部4で得られた各々のデータや画像再構成部92で再構成された断層画像などのデータを書き込んで記憶し、適宜必要に応じて読み出して、コントローラ96を介して、各々のデータを出力部95に送り込んで出力する。メモリ部93は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体で構成されている。
【0026】
入力部94は、オペレータが入力したデータや命令をコントローラ96に送り込む。入力部94は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。出力部95は、モニタなどに代表される表示部やプリンタなどで構成されている。
【0027】
コントローラ96は、本実施例1に係るPET装置1を構成する各部分を統括制御する。コントローラ96は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。PET検出部4で得られた各々のデータや画像再構成部92で再構成された断層画像などのデータを、コントローラ96を介して、メモリ部93に書き込んで記憶、あるいは出力部95に送り込んで出力する。出力部95が表示部の場合には出力表示し、出力部95がプリンタの場合には出力印刷する。さらに、コントローラ96は、ベッド移動機構5や天板移動機構6やガントリ移動機構7やガイド移動機構8を制御する。コントローラ96は、この発明における制御部に相当する。
【0028】
次に、ベッド移動機構5や天板移動機構6やガントリ移動機構7やガイド移動機構8の具体的な構成について、図3を参照して説明する。図3は、ガイド移動機構の具体的構成の概略図である。なお、ベッド移動機構5や天板移動機構6やガントリ移動機構7の具体的な構成については、図3のガイド移動機構8と同様の構成であるから、ガイド移動機構8との相違点のみを述べて、図示を省略するとともに、その説明を省略する。
【0029】
ガイド移動機構8は、支柱81とネジ棒82とモータ83とエンコーダ84とを備えている。支柱81はガイド機構43を上端側に装着支持し、下端側にネジ棒82にネジ結合している。ネジ棒82はガントリ41の開口部41aの内壁部分に沿って延在するとともに、被検体Mの体軸方向に沿って延在しており、モータ83の回転によって回転する。例えば、モータ83を正転させると、図3中の一点鎖線に示すように支柱81とともにガイド機構43がガントリ41のベッド3側とは逆側に平行移動(進出)し、モータ83を逆転させると、図3中の二点鎖線に示すように支柱81とともにガイド機構43がガントリ41のベッド3側に平行移動(退出)する。エンコーダ84はガイド機構43の移動方向と移動量(移動距離)に対応したモータ83の回転方向および回転量を検出する。エンコーダ84による検出結果をコントローラ96に送る。
【0030】
ベッド移動機構5の支柱はベッド3を上端側に装着支持し、ベッド移動機構5のネジ棒は床面に沿って延在する他は、ガイド移動機構8と同じ構成である。天板移動機構6の支柱は天板2を上端側に装着支持し、天板移動機構6のネジ棒はベッド3に沿って延在する他は、ガイド移動機構8と同じ構成である。ガントリ移動機構7の支柱はガントリ41を上端側に装着支持し、ガントリ移動機構7のネジ棒は床面に沿って延在する他は、ガイド移動機構8と同じ構成である。
【0031】
このようにガイド移動機構8を構成することで、ガイド機構43を被検体Mの体軸に沿って進退移動させる。また、ベッド移動機構5や天板移動機構6やガントリ移動機構7をこのように構成することで、天板2やベッド3やガントリ41を被検体Mの体軸に沿って平行移動させる。
【0032】
なお、ガイド機構43を天板2に連動して移動させるべくガイド機構43と天板2とを同期移動させてコントローラ96が制御するために、ガイド移動機構8のモータ83の回転方向、および天板移動機構6の回転方向が同じになるように、コントローラ96は各モータを同時に制御する。また、ガイド機構43の移動速度および天板2の移動速度が互いに同速度で移動すべくガイド機構43の移動量と天板2の移動量とが同じになるように、コントローラ96は各モータの回転量を制御する。
【0033】
被検体Mをガントリ41内に収容する設定を行う時には、先ずガイド機構43をガントリ41から引き出して、ガイド機構43に被検体Mの撮像部位が収容されるように被検体Mの位置決めを行う。位置決め終了後に被検体Mをガントリ41内に送り込む際に、被検体Mとともに天板2の移動に連動して、コントローラ96の制御によりガイド移動機構8がガイド機構43を自動的に移動させることにより、被検体Mとガイド機構43との位置関係を変えないようにする。
【0034】
上述の構成を備えた本実施例1に係るPET装置1によれば、被検体Mを収容する開口部41aを有することで被検体Mを収容するガントリ41の他に、被検体Mを収容する開口部43aを有することで被検体Mを収容する収容機構(本実施例1ではガイド機構43)を別に備える。この収容機構(ガイド機構43)はガントリ41の開口部41aに収容される。被検体Mをガントリ41に収容する前に収容機構(ガイド機構43)に被検体Mを収容することで被検体Mの位置決めを行う。被検体Mの位置決めを行った状態で、収容機構(ガイド機構43)をガントリ41に対して相対的に移動(本実施例1では、ガントリ41を固定でガイド機構43のみを移動、あるいはガントリ41およびガイド機構43をともに移動)させて、被検体Mとともに収容機構(ガイド機構43)をガントリ41に収容するので、被検体Mあるいは装着器具とガントリ41との接触を防止することができる。収容機構(ガイド機構43)がガントリ41に対して相対的に移動するとは、本実施例1のようにガントリ41を固定して収容機構(ガイド機構43)のみを移動させる場合のみならず、後述する実施例3のように収容機構を固定してガントリ41のみを移動させる場合や、本実施例1のように収容機構(ガイド機構43)およびガントリ41の双方を移動させる場合も含む。
【0035】
本実施例1では、好ましくは、収容機構(本実施例1ではガイド機構43)の少なくとも一部(本実施例1ではガイド機構43の一部または全部)が、光透過性を有する物質(本実施例1ではアクリル等の透明な部材)である。光透過性を有する物質(透明な部材)で一部が形成された収容機構(ガイド機構43)を介して、収容機構(ガイド機構43)に収容された被検体Mの様子を把握することができる。
【0036】
本実施例1では、好ましくは、制御手段(本実施例1ではコントローラ96)は、被検体Mを載置する載置機構(本実施例1では天板2)と、その載置機構(天板2)と収容機構(本実施例1ではガイド機構43)とを同期移動させて制御している。ガントリ41の固定・移動を問わずに、収容機構(ガイド機構43)を少なくとも移動させることで収容機構(ガイド機構43)がガントリ41に対して相対的に移動する場合には、被検体Mをガントリ41に収容する前に被検体Mの位置決めを行った状態で収容機構(ガイド機構43)を移動させても、収容機構(ガイド機構43)の移動に同期して被検体Mを載置する載置機構(天板2)が移動するので、移動中や移動終了後のガントリ41での被検体Mの収容時に被検体Mと収容機構(ガイド機構43)との位置関係がズレにくい。
【実施例2】
【0037】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
図4は、実施例2に係る頭部用PET装置の側面図であり、図5は、実施例2に係る頭部用ガイド機構での表示機構の実施態様の一例であり、図6は、実施例2に係る頭部用ガイド機構での映像機構の実施態様の一例であり、図7は、実施例2に係るPET装置のブロック図である。上述の実施例1と共通する箇所については同じ符号を付して、その箇所の説明については省略する。
【0038】
上述の実施例1では、被検体M全身を撮像するPET装置を例に採って説明したが、本実施例2では、被検体Mの頭部を撮像する頭部用PET装置を例に採って説明する。図4に示すように、本実施例2に係るPET装置1は、上述の実施例1と同様に、天板2やベッド3やPET検出部4を備えている。ただし、頭部を撮像するので、PET検出部4のガントリ41については、実施例1のガントリ41よりもサイズを小さくすることができる。また、PET検出部4のガイド機構43についても、頭部のみを収容するので実施例1のガイド機構43よりもサイズを小さくすることができる。
【0039】
PET検出部4は、上述の実施例1と同様に、ガントリ41やγ線検出器42やガイド機構43を備えている。
【0040】
本実施例2では、頭部用ガイド機構43も、頭部用ガントリ41の開口部41aに収容され、ガイド機構43に被検体Mの頭部を収容する開口部43aを有している。上述の実施例1と同様に、ガイド機構43の外壁部分は、ガントリ41の開口部41aの形状に合わせた形状となっている。上述の実施例1と同様に、ガイド機構43は、天板2の水平移動(体軸に沿った進退移動)に連動して移動可能に構成されている。本実施例2においても、被検体Mの位置決めを行った状態で、ガイド機構43が移動することで被検体Mをガントリ41に案内(ガイド)する機能を有する。
【0041】
本実施例2でも、被検体Mの視認性を保つためにガイド機構43の一部または全部をアクリル等の透明な部材で形成してもよい。このように光透過性を有する物質としてアクリル等の透明な部材を採用し、この光透過性を有する物質でガイド機構43の少なくとも一部を形成する場合には、図5に示すようにガイド機構43に、撮像領域(ここでは被検体Mの頭部)を表示する表示機構47を備える。表示機構47は、この発明における表示機構に相当する。
【0042】
図5(a)の概略図では、アクリル等の透明な部材で形成されたガイド機構43上に撮像領域に沿って表示ライン47aを描くことで、表示機構47を構成する。表示ライン47aとしては、例えばアクリルに有色(例えば黒色)のテープを貼り付ける、あるいはアクリルに有色(例えば)の液を塗布することで形成すればよい。また、撮像領域が固定であれば、アクリルに切削を施して表示ライン47aを形成してもよい。
【0043】
また、撮像領域を変更する場合には、図5(b)の概略図に示すようにアクリル等の透明な部材で形成されたガイド機構43上に光ファイバなどに代表される導光手段を用いて撮像領域に沿って複数の表示ライン47bを描くことで、表示機構47を構成する。そして、複数の光ファイバからなる表示ライン47bをいずれかに選択するスイッチ48を備え、光源Lからの光を、スイッチ48を介して表示ライン47bに導く。このスイッチ48によって撮像領域の大きさを可変にする。なお、この図5(b)の表示ライン47bと、上述した図5(a)の表示ライン47aとを両方組み合わせてもよい。表示ライン47bは、この発明における導光手段に相当し、スイッチ48は、この発明における選択手段に相当する。
【0044】
また、本実施例2では、図6に示すようにガイド機構43に映像機構49を備える。なお、図6では図5の表示機構47の図示を省略する。図6(a)の概略図および図6(b)の側面図に示すように映像機構49を、ガイド機構43の一部をスクリーン49aとしたものと、投影機49bとで構成する。そして、投影機49bからの映像をスクリーン49aに映し出す。本実施例2のようにガイド機構43の一部または全部をアクリル等の透明な部材で形成する場合には、スクリーン49aとしてハーフミラー等を用いてもよい。被検体Mが検査状況を把握することできるような映像や、緊張が緩和する(リラックスする)ような映像を、スクリーン49aに映し出せばよい。また、視覚検査のときには視覚用の映像をスクリーン49aに映し出し、脳波等の検査のように刺激に関する検査のときには刺激用の映像をスクリーン49aに映し出す。これらの映像については被検体Mに供する。映像機構49は、この発明における映像機構に相当する。
【0045】
その他に、本実施例2では、上述の実施例1と同様に、図4に示すようにガイド機構43にストッパの機能を有する突起43bを設ける。また、ガントリ41とガイド機構43とを支持する支持台41Aを設けてもよい。もちろん、上述の実施例1と同様にガントリ41およびガイド機構43を個別に床面に設けてもよい。
【0046】
続いて、PET装置1のブロック図について説明する。図7に示すように、PET装置1は、上述した天板2やベッド3やPET検出部4の他に、上述の実施例1と同様に、ベッド移動機構5と天板移動機構6とガントリ移動機構7とガイド移動機構8とコンソール9とを備えている。また、図5(b)のように表示機構47を構成する場合には、スイッチ48および光源Lを備え、図6に示す映像機構49を備える場合には、スクリーン49aおよび投影機49bを備えている。
【0047】
各移動機構5〜8やコンソール9については、上述の実施例1と同じ構成であるので、その説明を省略する。ただし、コンソール9のコントローラ96は、スイッチ48および投影機49bを制御する。もちろん、入力部94からスイッチ48および投影機49bを直接に手動で操作してもよい。また、入力部94からの入力データを、コントローラ96を介してスイッチ48および投影機49bに送り込んで、スイッチ48および投影機49bを間接的に操作してもよい。
【0048】
上述の構成を備えた本実施例2に係るPET装置1によれば、上述の実施例1と同様に、収容機構(本実施例2ではガイド機構43)を別に備え、この収容機構(ガイド機構43)はガントリ41の開口部41aに収容される。被検体Mの位置決めを行った状態で、収容機構(ガイド機構43)をガントリ41に対して相対的に移動させて、被検体Mとともに収容機構(ガイド機構43)をガントリ41に収容するので、被検体Mあるいは装着器具とガントリ41との接触を防止することができる。
【0049】
本実施例2でも、好ましくは、収容機構(本実施例2ではガイド機構43)の少なくとも一部が、光透過性を有する物質(本実施例2ではアクリル等の透明な部材)である。光透過性を有する物質(透明な部材)で一部が形成された収容機構(ガイド機構43)を介して、収容機構(ガイド機構43)に収容された被検体Mの様子を把握することができる。
【0050】
本実施例2でも、好ましくは、制御手段(本実施例2ではコントローラ96)は、被検体Mを載置する載置機構(本実施例2では天板2)と、その載置機構(天板2)と収容機構(本実施例2ではガイド機構43)とを同期移動させて制御している。収容機構(ガイド機構43)を少なくとも移動させることで収容機構(ガイド機構43)がガントリ41に対して相対的に移動する場合には、収容機構(ガイド機構43)の移動に同期して被検体Mを載置する載置機構(天板2)が移動するので、移動中や移動終了後のガントリ41での被検体Mの収容時に被検体Mと収容機構(ガイド機構43)との位置関係がズレにくい。
【0051】
本実施例2のように収容機構(本実施例2ではガイド機構43)の少なくとも一部が、光透過性を有する物質(本実施例2ではアクリル等の透明な部材)の場合には、上述の撮像領域を表示する表示機構47を備え、その表示機構47は導光手段(本実施例2では光ファイバからなる表示ライン47b)であって、その導光手段(表示ライン47b)を収容機構(ガイド機構43)の光透過性を有する物質(アクリル等の透明な部材)に配設することで光により撮像領域を把握することができる。より好ましくは、図5(b)に示すように複数の表示ライン47bをいずれかに選択する選択手段(図5(b)ではスイッチ48)を備え、その選択手段(スイッチ48)によって撮像領域の大きさを可変にする。これにより、様々な撮像領域に応じた検査が可能になり、検査の種類等に応じて撮像領域を変更することができる。
【0052】
また、光透過性を有する物質(本実施例2ではアクリル等の透明な部材)で収容機構(本実施例2ではガイド機構43)を形成する如何に問わずに、上述の表示機構47を備えることで、特に、オペレータ(操作者)は、被検体Mをガントリ41に収容する前に収容機構(ガイド機構43)を介して表示機構47に表示された撮像領域を観察することで、撮像領域を把握することができる。その結果、被検体Mのセッティングが容易になり、検査時間の短縮を図ることが可能になる。
【0053】
本実施例2では、好ましくは、収容機構(本実施例2ではガイド機構43)に映像機構49を備えている。被検体Mと収容機構(ガイド機構43)との位置関係が変わらないので、被検体Mは目線を移動させる必要はない。特に、被検体Mは、収容機構(ガイド機構43)を介して映像機構49での映像を見ることで、例えば閉所恐怖症等の被検体Mへの精神的な負担が映像(例えばリラックスするような映像)により軽減し、例えば映像により撮像状況を被検体Mが把握することができ、あるいは例えば視覚用または刺激用の映像により被検体Mの視覚または刺激に関する検査が可能になる。
【実施例3】
【0054】
次に、図面を参照してこの発明の実施例3を説明する。
図8は、実施例3に係る頭部用PET装置の側面図である。上述の実施例1、2と共通する箇所については同じ符号を付して、その箇所の説明については省略する。上述の実施例2と同様に、被検体Mの頭部を撮像する頭部用PET装置を例に採って説明する。
【0055】
上述の実施例1、2と相違して、本実施例3では、被検体Mを座位姿勢にして被検体Mの頭部を撮像する。すなわち、上述の実施例1、2では被検体Mを水平姿勢(臥位姿勢)にて撮像を行うために天板2を備えたが、本実施例3では、図8に示すように座位用のベッド(椅子)3に被検体Mを腰掛けさせて撮像を行う。ベッド3には背もたれがついており、背もたれ自体を傾斜(リクライニング)させてもよい。
【0056】
本実施例3に係るPET装置1は、上述の実施例1、2の天板を備えずに座位用のベッド3を替わりに備える以外は、実施例1、2と同様にPET検出部4を備えている。ただし、PET検出部4のガントリ41は回転可能であって、斜め方向に配置された収容機構43を撮像時に収容することが可能である。また、PET検出部4の収容機構43は、被検体Mの座位に合わせて斜め方向に配置される。
【0057】
上述の実施例1、2と相違して、本実施例3では、被検体Mの位置決めを行った状態では、微調整を除いて収容機構43を固定して、ガントリ41のみを移動させて、被検体Mとともに収容機構43をガントリ41に収容する。したがって、本実施例3では収容機構43は、上述の実施例1、2のような被検体Mをガントリ41に案内(ガイド)する機能を有さない。もちろん、収容機構43を上述の実施例1、2と同様のガイド機構43として、図8の矢印に示す斜め方向に移動させてもよい。また、図8のようにガントリ41および収容機構43を機械的に接触させて、収容機構43をガントリ41に連動可能に構成してもよい。本実施例3の収容機構43は、この発明における収容機構に相当する。
【0058】
収容機構43を除けば、PET検出部4は、上述の実施例1、2と同様に、ガントリ41やγ線検出器42を備えている。
【0059】
上述の実施例2と同様に、本実施例3では、収容機構43は被検体Mの頭部を収容する開口部43aを有している。本実施例3でも、被検体Mの視認性を保つために収容機構43の一部または全部をアクリル等の透明な部材で形成してもよい。
【0060】
上述の実施例2と同様に、収容機構43に、撮像領域(ここでは被検体Mの頭部)を表示する表示機構47(図5を参照)を備えてもよいし、収容機構43に映像機構49(図6を参照)を備えてもよい。表示機構47や映像機構49については、上述の実施例2と同じ構成であるので、その説明を省略する。
【0061】
上述の実施例1、2と同様に、図8に示すように収容機構43にストッパの機能を有する突起43bを設ける。また、ガントリ41と収容機構43とを支持する支持台41Aを設けてもよい。
【0062】
PET装置1のブロック図については、上述の実施例2と同じ構成であるので、その説明を省略する。ただし、本実施例3では天板を備えないので天板移動機構6(図7を参照)を備えていない。また、ベッド3が固定式の場合にはベッド移動機構5(図7を参照)を必ず備える必要はない。また、ガントリ移動機構7(図7を参照)は、ガントリ41を回転させる。また、本実施例3の収容機構43を上述の実施例1、2と同様のガイド機構43として、図8の矢印に示す斜め方向に移動させる場合には、ガイド移動機構8(図7を参照)は、ガイド機構43を斜め方向に平行移動させる。
【0063】
上述の構成を備えた本実施例3に係るPET装置1によれば、上述の実施例1、2と同様に、収容機構(本実施例3では収容機構43)を別に備え、この収容機構43はガントリ41の開口部41aに収容される。被検体Mの位置決めを行った状態で、収容機構43をガントリ41に対して相対的に移動(本実施例3では収容機構43を固定でガントリ41のみを移動)させて、被検体Mとともに収容機構43をガントリ41に収容するので、被検体Mあるいは装着器具とガントリ41との接触を防止することができる。
【0064】
収容機構43の少なくとも一部が、光透過性を有する物質である効果については、上述の実施例1、2と同じであるので、省略する。また、表示機構47(図5を参照)や映像機構49(図6を参照)を備えたときの効果についても、上述の実施例2と同じであるので省略する。
【0065】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0066】
(1)上述した各実施例では、PET装置単体を例に採って説明したが、PET装置とトランスミッション装置とを組み合わせた装置や、PET装置とX線CT装置とを組み合わせた装置や、PET装置と核磁気共鳴装置 (MRI: Magnetic Resonance Imaging)とを組み合わせた装置などに例示されるように、PET装置と他の装置を組み合わせた組み合わせ型PET装置に適用してもよい。また、PET装置以外の核医学診断装置として、単一のγ線を検出して被検体の断層画像を再構成するSPECT(Single Photon Emission CT)装置や、ガンマカメラに適用してもよい。
【0067】
(2)上述した各実施例では、医用画像としてPET装置で取得された投影データや断層画像を例に採って説明し、医用画像診断装置として、PET装置を例に採って説明したが、ガントリを備えた医用画像診断装置であれば、上述のMRIに例示されるように、特に限定されない。
【0068】
(3)上述した各実施例では、収容機構の少なくとも一部が、アクリル等の透明な部材であったが、光透過性を有する物質であれば、半透明な部材であってもよい。
【0069】
(4)上述した各実施例では、収容機構の少なくとも一部が、光透過性を有する物質(各実施例ではアクリル等の透明な部材)であったが、収容機構に収容された被検体の様子を把握しないのであれば、必ずしも光透過性を有する必要はない。例えば、収容機構はカーボンなどであってもよい。また、カーボンなどに代表される光透過性を有さない物質で収容機構を構成し、その収容機構に実施例2、3の表示機構や映像機構を備えてもよい。
【0070】
(5)上述した実施例1の被検体の全身を撮像する装置では、実施例2、3の被検体の頭部を撮像する装置のように、表示機構や映像機構を備えなかったが、図5の表示機構や図6の映像機構を実施例1においても備えてもよい。
【0071】
(6)上述した実施例1、2では、被検体を載置する載置機構(実施例1、2では天板2)と収容機構とを同期移動させたが、必ずしも同期移動させる必要はない。また、載置機構と収容機構とを機械的に接触させて、収容機構を載置機構に連動可能に構成してもよい。
【0072】
(7)上述した実施例2、3では、表示機構および映像機構をともに備えたが、必ずしも備える必要はない。表示機構または映像機構のいずれか一つを備えてもよいし、いずれも備えなくてもよい。
【0073】
(8)上述した実施例1では、図1に示すようにガイド機構43はガントリ41に組み込まれていたが、ガイド機構43をガントリ41から切り離して構成してもよい。
【0074】
(9)収容機構(実施例1、2ではガイド機構43、実施例3では収容機構43)の形状については、ガントリの開口部に収容されるのであれば、円筒形状に例示されるように特に限定されない。
【0075】
(10)上述した実施例1、2では、被検体は臥位(水平姿勢)で、上述した実施例3では、被検体は座位であったが、立位姿勢の被検体を撮像する装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 … PET装置
2 … 天板
41 … ガントリ
43 … ガイド機構、収容機構
47 … 表示機構
48 … スイッチ
49 … 映像機構
96 … コントローラ
M … 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像を取得して診断を行う医用画像診断装置であって、
前記医用画像を取得するための被検体を収容する開口部を有したガントリと、
前記ガントリの開口部に収容される収容機構と
を備え、
前記収容機構に前記被検体を収容する開口部を有し、
前記収容機構が前記ガントリに対して相対的に移動するように構成することを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医用画像診断装置において、
前記収容機構に、撮像領域を表示する表示機構を備えることを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の医用画像診断装置において、
前記収容機構に映像機構を備えることを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の医用画像診断装置において、
前記収容機構の少なくとも一部が、光透過性を有する物質であることを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の医用画像診断装置において、
前記収容機構に、撮像領域を表示する表示機構を備え、
その表示機構は導光手段であって、
その導光手段を前記収容機構の前記光透過性を有する物質に配設することを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項6】
請求項5に記載の医用画像診断装置において、
複数の前記導光手段をいずれかに選択する選択手段を備え、
その選択手段によって前記撮像領域の大きさを可変にすることを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の医用画像診断装置において、
前記被検体を載置する載置機構と、
その載置機構と前記収容機構とを同期移動させて制御する制御手段と
を備えることを医用画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−234856(P2011−234856A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108296(P2010−108296)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】