医療安全システム
【課題】例えば突発的な使用器具の交換等の、使用器具に関する想定外の事象に左右されることのない高い医療ステージ判定精度を実現した医療安全システムを提供すること。
【解決手段】医療スタッフの位置及び動き量を測定する映像取得/医療スタッフ識別システム2と、前記医療スタッフの位置及び動き量に基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻を判定し、且つ医療ステージの種類及び実施時刻を前記医療行為の種類及び実施時刻と、他の医療ステージの種類及び実施時刻とに基づいて判定するステージ/作業判定部14と、前記医療行為の種類及び実施時刻の情報を、前記医療ステージの種類及び実施時刻の情報とともに記録するステージ記録部16と、を具備する医療安全システム。
【解決手段】医療スタッフの位置及び動き量を測定する映像取得/医療スタッフ識別システム2と、前記医療スタッフの位置及び動き量に基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻を判定し、且つ医療ステージの種類及び実施時刻を前記医療行為の種類及び実施時刻と、他の医療ステージの種類及び実施時刻とに基づいて判定するステージ/作業判定部14と、前記医療行為の種類及び実施時刻の情報を、前記医療ステージの種類及び実施時刻の情報とともに記録するステージ記録部16と、を具備する医療安全システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療行為の管理を行う為の医療安全システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に医療の現場では、例えば手術等の医療行為が行われた場合、当該医療行為に関わった医師等によりその詳細が文書として記録される。この記録には、医療行為中の様々な機器から出力されたデータを示すチャートや写真や映像などが添付されることもある。
【0003】
しかしながら、このような記録は、多種多様なデータが時系列的な順序とは無関係に記載されていることが多い。したがって、医師等の専門家にとっても、このような記録に基づいて当該医療行為の手順等を事後に確認・検証することは困難であると言える。
【0004】
このような事情から、医療行為の手順を容易に確認・検証することを可能とするような情報を提供する技術が種々提案されており、例えば特許文献1には次のような技術が開示されている。
【0005】
すなわち、特許文献1に開示されている医療情報システムは、複数のイベントの組み合わせにより達成されるステージを複数含んだ医療行為の管理のための情報処理を行う医療情報システムであって、前記医療行為に関する医療器具および/または人間の状態を示す状態情報を時系列的に収集する収集手段と、前記状態情報に基づいて判定される前記イベントの発生状況に基づいて前記複数のステージの実施順序を判定する第1の判定手段と、前記複数のステージのそれぞれの開始タイミングを前記状態情報に基づいて判定する第2の判定手段と、前記実施順序と、前記複数のステージのそれぞれの開始タイミングとを示した手順情報を生成する手段とを具備する。これにより、特許文献1に開示されている医療情報システムによれば、医療行為の手順を容易に確認・検証することを可能とする情報が提供される。
【特許文献1】特開2006−164251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来より医療行為の管理を行う為のシステムによる医療ステージ(医療行為の開始から終了までの一連の作業を、作業目的により区分した工程又は期間の単位のこと)の判定においては、例えば突発的な使用器具の交換等の、使用器具に関する想定外の事象に起因する判定精度の悪化の問題が存在している。なお、特許文献1に開示された技術は、この問題を解決するものではない。
【0007】
本発明は、前記のような事情に鑑みて為されたものであり、例えば突発的な使用器具の交換等の、使用器具に関する想定外の事象に左右されることのない高い医療ステージ判定精度を実現した医療安全システムを提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の本発明による医療安全システムは、少なくとも当該医療行為に係わる医療スタッフの位置及び動き量を測定する位置及び動き量測定部と、前記位置及び動き量測定部により測定された前記医療スタッフの位置及び動き量に基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻を判定する医療行為判定部と、当該医療行為の準備から当該医療行為の完了までの一連の流れを作業目的により区分した工程又は期間の単位を表す医療ステージの種類及び実施時刻を、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻と、他の医療ステージの種類及び実施時刻とに基づいて判定する医療ステージ判定部と、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻の情報を、前記医療ステージ判定部により判定された医療ステージの種類及び実施時刻の情報とともに記録する記録部と、を具備することを特徴とする。
【0009】
前記の目的を達成するために、請求項3に記載の本発明による医療安全システムは、少なくとも当該医療行為に係わる医療スタッフの心拍数及びその変化量を示す情報である生体情報を測定する生体情報測定部と、前記生体情報測定部により測定された医療スタッフの生体情報に基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻を判定する医療行為判定部と、当該医療行為の準備から当該医療行為の完了までの一連の流れを作業目的により区分した工程又は期間の単位を表す医療ステージの種類及び実施時刻を、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻と、他の医療ステージの種類及び実施時刻とに基づいて判定する医療ステージ判定部と、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻の情報を、前記医療ステージ判定部により判定された医療ステージの種類及び実施時刻の情報とともに記録する記録部と、を具備することを特徴とする。
【0010】
前記の目的を達成するために、請求項5に記載の本発明による医療安全システムは、少なくとも当該医療行為に係わる医療スタッフの位置及び動き量を測定する位置及び動き量測定部と、少なくとも当該医療行為に係わる医療スタッフの心拍数及びその変化量を示す情報である生体情報を測定する生体情報測定部と、前記位置及び動き量測定部により測定された医療スタッフの位置及び動き量と、前記生体情報測定部により測定された医療スタッフの生体情報とに基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻を判定する医療行為判定部と、当該医療行為の準備から当該医療行為の完了までの一連の流れを作業目的により区分した工程又は期間の単位を表す医療ステージの種類及び実施時刻を、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻と、他の医療ステージの種類及び実施時刻とに基づいて判定する医療ステージ判定部と、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻の情報を、前記医療ステージ判定部により判定された医療ステージの種類及び実施時刻の情報とともに記録する記録部と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば突発的な使用器具の交換等の、使用器具に関する想定外の事象に左右されることのない高い医療ステージ判定精度を実現した医療安全システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る医療安全システムの構成を示している。同図に示すように、本第1実施形態に係る医療安全システム1は、映像取得/医療スタッフ識別システム2と、医療スタッフ計測数値収集部4と、医療スタッフ計測数値分析部6と、医療行為データ記録部8と、医療行為計画情報保存部10と、ステージ判定ルール記憶部12と、医療ステージ/作業判定部14と、医療ステージ記録部16と、インシデント判定部18と、警告装置20と、医療行為記録閲覧装置22と、医療行為記録分析装置24と、を具備する。
【0014】
前記映像取得/医療スタッフ識別システム2は、映像を取得し、且つ該映像中の医療スタッフを識別し、さらに映像分析を行ない、各々の医療スタッフの動き量を計測するシステムである。この映像取得/医療スタッフ識別システム2の詳細については、図2及び図3を参照して説明する。
【0015】
前記医療スタッフ計測数値収集部4は、医療スタッフの心拍数を収集する。
【0016】
前記医療スタッフ計測数値分析部6は、前記医療スタッフ計測数値収集部4によって収集された医療スタッフの心拍数を分析し、その変化量等を算出する。
【0017】
前記医療行為データ記録部8は、映像記録部8Aと医療スタッフ計測数値記録部8Bとを有する。前記映像記録部8Aは、前記映像取得/医療スタッフ識別システム2によって取得された映像を記録する。前記医療スタッフ計測数値記録部8Bは、前記医療スタッフ計測数値収集部4によって収集された医療スタッフの心拍数、及び前記医療スタッフ計測数値分析部6によって分析された医療スタッフの心拍数の変化量等を記録する。
【0018】
前記医療行為計画情報保存部10は、所定の医療行為計画システム(不図示)で計画された医療行為計画に関する情報である医療行為計画情報を保存する。
【0019】
前記ステージ判定ルール記憶部12は、特定の動作や医療ステージ(例えば手術の準備から手術完了までの一連の流れを、作業目的により区分した工程又は期間の単位)に対応する判定ルール(後述する動作判定ルール及び医療ステージ判定ルール等)、及び警告をユーザーに報知する際のルールである警告ルール等を記憶する。
【0020】
前記医療ステージ/作業判定部14は、映像判定部14Aと医療スタッフ計測数値判定部14Bとを有する。詳細は後述するが、前記医療ステージ/作業判定部14は、各医療ステージ毎に規定され且つ前記ステージ判定ルール記憶部12に記憶された前記医療ステージ判定ルールに従って、医療ステージの種類及び実施時刻等を判定する。
【0021】
前記医療ステージ記録部16は、前記医療ステージ/作業判定部14によって判定された医療ステージの種類及び実施時刻等に関する情報を記録する。
【0022】
前記インシデント判定部18は、前記医療ステージ/作業判定部14による映像判定結果及び医療ステージ判定結果に基づいて、インシデントを判定する。
【0023】
前記警告装置20は、前記インシデント判定部18によるインシデント判定結果に基づいて、警告を報知する。
【0024】
前記医療行為記録閲覧装置22は、前記医療ステージ記録部16に記録された情報を閲覧する為の装置である。
【0025】
前記医療行為記録分析装置24は、前記医療ステージ記録部16に記録された情報に基づいて当該医療行為の分析を行い、該分析結果に基づいて分析レポートを作成して出力する装置である。
【0026】
図2は、前記映像取得/医療スタッフ識別システム2の一構成例を示す図である。同図に示すように、前記映像取得/医療スタッフ識別システム2は、映像記憶部2Aと、映像分析部2Bと、被写体識別装置31と、位置計測装置33と、映像取得装置35とを有する。
【0027】
なお、前記被写体識別装置31は、RFタグ(不図示)と無線送受信部(不図示)とから構成される。また、位置計測装置33は、超音波発振器(不図示)と超音波センサ(不図示)と計測系位置計算部(不図示)とから構成される。
【0028】
前記RFタグ及び前記超音波発信器は、信号発信体(不図示)に内蔵されている。そして、この信号発信体は、医療スタッフに装着されている。
【0029】
前記無線送受信部と前記超音波センサと前記計測系位置計算部は、発信体計測装置(不図示)に内蔵される。この発信体計測装置は、さらに制御信号発信部を備え、医療現場内に設置される。
【0030】
前記RFタグは、ICチップとアンテナを含み構成される。ICチップには、信号発信体を装着している医療スタッフの識別符号が予め記憶されている。医療スタッフの識別符号は、医療スタッフ毎に一意に割り当てられたIDであり、医療スタッフ識別情報の一種である。
【0031】
前記RFタグは、外部から発せられた電波をアンテナで受信する。外部から電波を受信すると共振作用によってICチップに供給される起電力が生じ、前記RFタグは、ICチップが記憶しているスタッフの識別符号をアンテナを介して送信する。
【0032】
また、前記RFタグは、外部から医療スタッフの識別符号が含まれた制御信号を受信し、受信した医療スタッフの識別符号がICチップ内に記憶されていると、超音波発信器にトリガ信号を出力する。
【0033】
前記無線送受信部は、アンテナを含み構成される。前記無線送受信部は、RFタグに起電力を生じさせる電波を発信し、またRFタグから送信された医療スタッフの識別符号を受信する。
【0034】
前記被写体識別装置31では、RFタグから無線送受信部に医療スタッフの識別符号が送信されることにより、その識別符号で表される医療スタッフが特定される。制御信号発信部は、信号発信体に対して制御信号を送信する。制御信号には、位置計測する医療スタッフの識別符号が含まれる。
【0035】
前記制御信号発信部は、無線送受信部がスタッフの識別符号を受信すると、その受信を契機にこの受信したスタッフの識別符号を制御信号に含めて送信する。複数の医療スタッフの識別符号を受信していると、混信をさけるために所定間隔おいて順次制御信号に含めて送信する。
【0036】
前記超音波発振器は、RFタグからのトリガ信号の入力を契機に超音波信号を外部へ発振する。前記超音波センサは、超音波発振器が発振した超音波信号を受信する。この超音波センサは、所定距離離間して複数個が医療現場に設置されている。各超音波センサは、設置された位置と信号発信体との距離関係によって位相差が異なった超音波を受信する。
【0037】
前記計測系位置計算部は、各超音波センサが受信した超音波の位相差から、超音波センサを原点とした計測系座標(Xs,Ys,Zs)で表された信号発信体の計測系位置情報を算出する。
【0038】
前記位置計測装置33は、存在が確認された医療スタッフが装着している信号発信体にそれが記憶している医療スタッフの識別符号を送信することで、その信号発信体のみを呼応させて超音波を発振させ、受信した超音波からその信号発信体の位置を計算することで、位置計算された信号発信体を装着している医療スタッフの位置を計測系座標において取得する。
【0039】
前記発信体計測装置は、被写体識別装置31が取得した医療スタッフを識別する識別符号と、計測系位置計算部が取得した医療スタッフの計測系位置情報とを対にして被写体識別位置情報として、前記映像記録部2Aに出力する。
【0040】
前記映像記憶部2Aは、識別情報・位置記憶部2A1と、映像信号記憶部2A2とを備える。
【0041】
前記識別情報・位置記憶部2A1は、前記被写体識別装置31及び前記位置計測装置33によって取得された前記被写体識別位置情報を記憶する。
【0042】
前記映像信号記憶部2A2は、例えばビデオカメラ等の映像取得装置35が取得した映像信号を記憶する。
【0043】
前記映像分析部2Bは、映像位置計算部2B1と、条件指定部2B2と、ROI設定部2B3と、映像分析部2B4と、分析結果記憶部2B5とを備える。
【0044】
前記映像位置計算部2B1は、前記発信体計測装置から出力された計測系位置情報から、信号発信体、即ち信号発信体を装着している医療スタッフが映像上のどの画素に映っているかを表す映像系位置情報を計算する。
【0045】
前記条件指定部2B2は、例えば映像内における関心領域の設定等の各種条件の設定を行う。
【0046】
前記ROI設定部2B3は、主にCPUを含み構成され、表示装置(不図示)に表示されている画面上に関心領域が指定されると、その関心領域を記憶する。
【0047】
前記映像分析部2B4は、主にCPUを含み構成され、前記映像信号記憶部2A2に記憶されている映像信号及び前記映像位置計算部2B1によって算出された前記映像系位置情報に基づいて、映像上の医療スタッフ画像の形状変化から映像に映る各医療スタッフの動き量を個々に算出する。また、ROI設定部2B3で関心領域が設定されているときは、映像上、関心領域内に医療スタッフが存在するか否かを判断し、関心領域内に医療スタッフが存在するときに限って動き量を算出する。
【0048】
前記分析結果記憶部2B5は、前記映像分析部2B4による映像分析結果すなわち各医療スタッフの動き量及び前記映像位置計算部2B1によって算出された映像系位置情報を時系列で記憶する。
【0049】
なお、前記映像取得/医療スタッフ識別システム2の構成は、上述した図2に示す構成に限られず、例えば図3に示すように前記映像記録部2Aを設けずに、前記識別情報・位置記憶部2A1と前記映像信号記憶部2A2とを前記映像分析部2Bに設け、これら識別情報・位置記憶部2A1及び映像信号記憶部2A2を例えばバッファメモリとして一時的な保存に用いる構成としてもよい。さらには、このような一時的な保存も行わず、リアルタイムで処理を行うように構成しても勿論よい。
【0050】
以下、前記医療ステージ/作業判定部14による処理の流れについて、図4を参照して詳細に説明する。
【0051】
まず、医療行為計画情報が、医療行為計画情報保存部10から映像判定部14Aに入力される(ステップS1)。続いて、動作判定ルールが、ステージ判定ルール記憶部12から映像判定部14Aに入力される(ステップS2)。さらに、基本医療ステージ情報(医療ステージ判定ルール、警告ルール)が、ステージ判定ルール記憶部12から映像判定部14Aに供給される(ステップS3)。
【0052】
そして、映像判定部14Aが、ステージ判定ルール記憶部12から供給された動作判定ルールから、当該医療行為計画において実行予定の動作に対応する動作判定ルールを選択する(ステップS4)。
【0053】
さらに、映像判定部14Aが、ステージ判定ルール記憶部12から供給された医療ステージ判定ルール及び警告ルールから、当該医療行為計画に含まれる医療ステージに対応する医療ステージ判定ルール及び警告ルールを選択する(ステップS5)。
【0054】
当該医療行為の開始後、上述したように前記映像取得/医療スタッフ識別システム2によって、上述したように映像が取得され且つ該映像に映る医療スタッフが識別され、且つ映像分析により医療スタッフの動き量が算出される。このようにして前記映像取得/医療スタッフ識別システム2が取得した前記被写体識別位置情報が、前記医療行為データ記録部8に記録される(ステップS6)。
【0055】
そして、当該医療行為の開始後、前記医療スタッフ計測数値収集部4によって、医療スタッフの心拍数が時刻情報と共に計測され、医療スタッフ計測数値分析部6による分析の後、医療スタッフ計測数値記録部8Bに記録される(ステップS7)。
【0056】
前記映像判定部14Aは、医療行為判定(動作判定)として、上述の各種計測された(記録された)データから、ステップS4において選択された動作判定ルールに基づいて、例えば吸引動作、切開動作等の各種動作の有無・時刻・実施期間を判定する(ステップS8)。
【0057】
さらに、前記映像判定部14Aは、医療ステージ判定として、時系列的に過去及び将来における医療スタッフの動作、動き量、位置や医療ステージの判定結果(種類、時刻、期間)、及び上述した各種計測・記録されたデータとその時刻情報から、前記ステップS5で選択された医療ステージ判定ルールに基づいて、実行された医療ステージの種類、開始時刻、及び終了時刻(実施期間)を判定する(ステップS9)。
【0058】
そして、前記映像判定部14Aは、前記ステップS8において行った医療行為判定(動作判定)の判定結果、及び前記ステップS9において行った医療ステージ判定の判定結果を、前記ステージ記録部16に記録する(ステップS10)。
【0059】
本第1実施形態に係る医療安全システムの主な特徴の一つは、医療スタッフの動作、動き量、位置及び医療ステージの判定結果に含まれる時刻情報を、更に別の医療行為判定(動作判定)及び医療ステージ判定における判定材料として再び用いることである。なお、例えばどの医療ステージに関する情報を、どの医療ステージの判定に用いるかについては、必ずしもそれらの事象が発生した時系列的順序に従わせる必要は無い。
【0060】
以下、前記映像判定部14Aによる医療スタッフの動き量及び位置に基づいた医療ステージ判定について、詳細に説明する。
【0061】
医療スタッフの動き量及び位置の算出に係る処理は、上述した通り前記映像取得/医療スタッフ識別システム2によって行われる。なお、前記映像取得/医療スタッフ識別システム2により算出された各々の医療スタッフの動き量と時刻情報とは、例えば図5に示すように関連付けられて不図示のメモリ等に保存される。ここで、動き量の算出はリアルタイムで行われる。
【0062】
前記映像取得/医療スタッフ識別システム2によれば、映像取得/医療スタッフ識別システム2により取得した映像上における指定された領域(図6Aに示すROI 001乃至ROI 003)内の動き量を知ることができる。図6Aは、映像上において設定されたROIを示す図であり、図6Bにおける直線状のグラフはROI 001における医療スタッフ(ID 001乃至ID 006)の動き量を示すグラフである。ここで、図6Bにおいて太線で示される時間帯は当該IDナンバーの人物がROI 001中に存在する時間帯であり、同図において細線で示される時間帯は当該IDナンバーの人物がROI 001中に不在の時間帯であることを示している。また、同グラフにおいて平行四辺形が付された時間帯は、ROI 001中において手術手技に関わる動き量が検出された時間帯であり、該動き量は同グラフにおける“ROI ID:001術野”の折れ線グラフに示されている。
【0063】
なお、このようなグラフを上記表示装置(不図示)に表示させ、ユーザにより所定の時刻がクリック操作されると、当該時刻における映像が上記表示装置(不図示)を表示させるようにしても勿論よい。
【0064】
すなわち、例えば手術室中の手術手技が行われる領域や、麻酔・患者バイタルモニター関連機器が配置された領域をユーザーが映像上で指定し、該領域内の動き量を算出することで、各々の手術手技に関わる動き量や、麻酔・患者容体維持に関わる医療スタッフの動き量を知ることができる。
【0065】
具体的には、例えば図6A及び図6Bに示すように、どの医療スタッフ(同図に示すID 001乃至ID 006)が、どの領域(同図に示すROI 001乃至ROI 003)内に入ったかを知ることができる。なお、これらの情報もリアルタイムで算出される。
【0066】
ここで、医療スタッフの動き量と医療ステージとの関係について説明する。
【0067】
当然ながら、各々の医療ステージ毎によって、各医療スタッフの動き量は変化する。図7は、悪性脳腫瘍摘出術における医療スタッフの動き量の変化を示すグラフである。なお、映像取得の為の撮影範囲は、おおよそ図8に示す撮影範囲60である。すなわち、図8に示す撮影範囲60内において、執刀医61と助手63による手術手技、器械台看護師65による手術器具受け渡しが撮影されている。
【0068】
なお、図7に示すグラフでは、縦軸に動き量(ここでは処理を簡便化する為に、映像ファイルを1分毎に分割して可変ビデオレートで圧縮保存し、ファイルサイズの大きさを動き量としている)、横軸に映像記録開始時点からの経過時間を分単位で記している。
【0069】
図7に示すグラフで表される手術における手術手技に係る作業は、大きく分類すると例えば次のように順番付けられた医療ステージの連鎖で構成される。なお、以下の記載において、[ ]で括って示す工程は医療ステージを表す。
【0070】
すなわち、[開頭準備]→[開頭]→[腫瘍へのアプローチ]→[画像診断(1)]→[腫瘍摘出(1)]→[画像診断(2)]→[腫瘍摘出(2)]→[画像診断(3)]→[閉創]である。
【0071】
なお、図7に示すグラフには、当該悪性脳腫瘍摘出術の冒頭において、麻酔医67と看護師69による[麻酔導入]医療ステージが含まれている。また、同図に示すグラフのうち、何れの医療ステージにも含まれていない工程は、次の医療ステージの準備作業を行う工程である。
【0072】
前記[開頭準備]医療ステージは、患者頭部に固定フレームを装着する作業である。
【0073】
前記[開頭]医療ステージは、開頭箇所にマーキングし、消毒し、皮切・骨切し、術野を確保するために硬膜を吊り上げる作業である。これも通常、執刀医61と助手63が行う。但し、図7に示すグラフの例では、事前に開頭検査が実施されていた為、骨切作業は行われていない。
【0074】
前記[腫瘍へのアプローチ]医療ステージは、脳組織を圧排、切除しながら腫瘍部を術野に露出させるまでの作業であり、手術顕微鏡下で行われる。
【0075】
以上説明した[開頭準備]医療ステージ乃至[腫瘍へのアプローチ]医療ステージにおける作業は、何れも通常、執刀医と助手の2名が、直視下で行う作業である。ここで、[開頭準備]医療ステージ及び[開頭]医療ステージにおける作業は、当該作業時における医療スタッフの動きが大きい。これに対し、[腫瘍へのアプローチ]医療ステージにおける作業は、[開頭準備]医療ステージ及び[開頭]医療ステージと同じく執刀医61と助手63とが2名で行う作業ではあるが、顕微鏡下の精密な作業である為、当該作業者の動きが小さい。
【0076】
つまり、動き量について比較した場合、[腫瘍へのアプローチ]医療ステージにおける作業は、[開頭準備]医療ステージ及び[開頭]医療ステージにおける作業よりも、執刀医61及び助手63の動き量が小さい。
【0077】
前記[画像診断(1)]医療ステージにおける画像診断では、手術顕微鏡71や器械台73をいったん退避させた後、麻酔医67・看護師65など複数の医療スタッフが、患者69を載せた手術寝台75を画像診断装置77まで移動させるため、一時的に動き量が大きくなる。
【0078】
一方、画像診断作業の最中では、必要最小限の医療スタッフが手術室内に残り、待機するのみである為、患者69の容体が急変しない限り、動きはほとんどなくなる。そして、画像診断作業が終わると、手術寝台75、手術顕微鏡71、及び器械台73等を元通りの位置に戻す作業を行う為、再び動き量が大きくなる。
【0079】
前記[腫瘍摘出(1)]医療ステージは、手術顕微鏡71下で行う腫瘍摘出であり、この腫瘍摘出作業が始まるときには、動き量が小さくなる。
【0080】
その後、[画像診断(2)]医療ステージにおける画像診断、[腫瘍摘出(2)]医療ステージにおける腫瘍摘出、及び[画像診断(3)]における画像診断が行われ、目的通り腫瘍が摘出したことが確認されると、[閉創]医療ステージにて閉創作業が行われる。
【0081】
この[閉創]医療ステージにおける閉創は直視下で行われる為、動き量が大きくなる。なお、図7に示すグラフを作成する為のデータを収集した悪性脳腫瘍摘出術では、執刀医61、助手63に加えて、研修医(不図示)が2名乃至3名が参加した為、同じ直視下の作業である[開頭準備]医療ステージや[開頭]医療ステージにおける動き量よりも、[閉創]医療ステージにおける動き量の方が大きくなっている。
【0082】
以上説明したように、作業を行う医療スタッフの人数や作業に伴う医療スタッフの体動の大きさ(動き量)は、各々の医療ステージによって異なる。従って、このような動き量等と医療ステージとの相関関係を利用することで、医療ステージの判別を行うことが可能となる。
【0083】
なお、同じ術式の手術の場合であって、同じ施設で行われる又は同じ手術責任者により行われる場合には、個々の症例によって医療ステージ毎に要する時間や画像診断の実施回数が異なることはあるが、当該手術における医療スタッフの動き量は、おおよそ同じ変化をする。
【0084】
従って、例えば前記医療行為計画システム(不図示)に保存されている医療ステージの順序や作業に参加する医療スタッフ、作業予定時間等の情報を用いることで、実施中の当該手術において今現在どの医療ステージが進行しているのかを推定することができる。
【0085】
なお、上述した医療ステージの判定には直接的に関わらない為、説明は省略するが、図8において符号91が付されているのは麻酔器・呼吸器であり、符号92が付されているのはバイタルモニタであり、符号93が付されているのはBISモニタであり、符号94が付されているのは投薬装置のBOXであり、符号95が付されているのは外回り看護師であり、符号96が付されているのは看護師カートである。
【0086】
図9は、前記医療行為計画情報として予め前記医療行為計画情報保存部10に保存されている情報の一例を示す図である。ここでは、悪性脳腫瘍摘出術を例に、動き量に基づいた医療ステージの判定について説明する。なお、当該悪性脳腫瘍摘出術を行う手術室には、外科医が手技を行う術野周辺の映像を取得する為のビデオカメラが予め設置されているものとする。
【0087】
図9に示す例では、前記医療行為計画情報として、実施予定の医療ステージと、担当の医療スタッフと、医療ステージの順序と、予想所要時間と、及び使用医療機器とが互いに対応付けられて、前記医療行為計画情報保存部10に保存されている。なお、この例においては、例えば医療機器のセットアップ等、医療行為ではない作業であっても、手術中に一定時の時間を要する作業については医療ステージと見做している。
【0088】
図10は、前記医療ステージ判定ルールの一例を示す図である。すなわち、撮影範囲内に存在する医療スタッフ及び撮影範囲内における医療スタッフの動き量等に対応する条件は、医療ステージ判定ルールとして、例えば図10に示すように定められている。なお、撮影範囲内に存在する医療スタッフ及び撮影範囲内における医療スタッフの動き量等の情報は、上述した前記映像取得/医療スタッフ識別システム2による処理結果から、既知となる情報である。
【0089】
図10に示す医療ステージ判定ルールによれば、まず当該手術を開始する直前に本第1実施形態に係る医療安全システムを稼動させると、次のように判定が行われる。なお、冗長な説明を避ける為、ここでは[頭部固定]医療ステージ及び[ドレープかけ、手術器具準備]医療ステージの判定についてのみ詳細に説明し、これらの医療ステージ判定の説明と図10に示す医療ステージ判定ルールとから自明となる他の医療ステージ判定についての説明は省略する。
【0090】
まず、動き量が580乃至620の範囲で且つ医療スタッフID001、医療スタッフID002及び機器ID100が撮影範囲内に存在すれば、前記医療行為計画情報と照合して、[頭部固定]医療ステージであると判定する。
【0091】
続いて40分程度の時間が経過し、動き量が400乃至500程度まで下がれば、[ドレープかけ、手術器具準備]医療ステージに切り替わったと判定する。このように、動き量に関する条件によって医療ステージを判定する場合には、一定時間内における増量/減量等の変化量を指定してもよい。
【0092】
なお、医療ステージ判定ルールに基づく判定に際しては、定められた全ての条件が満たされた場合に医療ステージ判定を行うとしても良いし、定められた条件のうちの一部の条件が満たされた場合に医療ステージ判定を行うとしても良い。
【0093】
例えば、定められた全ての条件が満たされた場合に医療ステージ判定を行う例としては、次のような例を挙げることができる。すなわち、腫瘍へのアプローチや腫瘍摘出作業は、手術顕微鏡を用いずに行われることはあり得ないことから、たとえ動き量や撮影領域内の手術医療スタッフに関する条件を満たす場合であっても、使用機器として手術顕微鏡が用いられていなければ、それらの医療ステージに入ったとは見做さないとする。このような処理を行うことで、より現実に即した医療ステージ判定を行うことができるようになる。
【0094】
さらには、例えば一部の条件が満たされていないことを、警告としてユーザーに報知するようにしてもよい。例えば、ある医療ステージが予定所要時間の2倍の時間が経過しても次の医療ステージに移行しない場合や、条件として定められた動き量の1.5倍を超える動き量が医療ステージ中に計測された場合等に、それら一部の条件が満たされていない旨をユーザーに報知するとよい。このように、医療ステージ判定ルールを警告ルールとして利用することも可能である。
【0095】
以下、本第1実施形態に係る医療安全システムによる、医療スタッフの心拍データ(心拍数及びその変化量)に基づいた医療ステージ判定について詳細に説明する。
【0096】
医療スタッフの心拍データに基づく医療ステージ判定とは、前記医療スタッフ計測数値収集部4により収集され、前記医療スタッフ計測数値分析部6によって分析され、前記医療行為データ記録部8によって記録された医療スタッフの心拍数及びその変化量に基づいて、前記ステージ/作業判定部14の有する前記医療スタッフ計測数値判定部14Bが行う医療ステージの判定のことであり、以下説明する原理を利用した判定である。
【0097】
手術中の医療スタッフの心拍を測定すると、当該作業内容に応じて心拍変化の仕方が変わる。つまり、心拍変化と医療ステージとには相関関係があり、それは次のような関係である。
【0098】
まず、呼吸とR−R間隔との関係について説明する。なお、R−R間隔とは、R波とR波との間隔を示す数値であり、例えばR−R間隔が1.0を示すとき心拍数は60であり、R−R間隔が0.6を示すとき心拍数は100である。
【0099】
このR−R間隔の変動幅に大きな影響を与える因子としては、呼吸の仕方を挙げることができる。例えば、呼吸を止めたときや呼吸が制限されたときには、自然な呼吸をしているときに比べると、R−R間隔の変動幅が小さくなることが知られている。
【0100】
図11は、被験者が椅子に座り自然な呼吸をしている時に測定したR−R間隔の時間変動のグラフ(縦軸;R−R間隔、横軸;時間)を示す図である。図12は、被験者が椅子に座り呼吸を止めた時のR−R間隔の時間変動のグラフ(縦軸;R−R間隔、横軸;時間)を示す図である。
【0101】
図11及び図12に示すグラフから分かるように、息を止めた場合(図12参照)、そうでない場合(図11参照)に比べて、被験者のR−R間隔の変動が極端に少なくなる。このように、大きな体動・運動(息が荒くなるような)を伴わない場合でも、呼吸の仕方のみによってR−R間隔の変動の仕方は大きく変わる。
【0102】
図13は、皮切作業を行う執刀医のR−R間隔のグラフ(縦軸;R−R間隔、横軸;時間)を示す図である。図14は、同じ執刀医が腫瘍摘出作業を行っているときのR−R間隔のグラフ(縦軸;R−R間隔、横軸;時間)を示す図である。
【0103】
図13及び図14に示すグラフを比較すると明らかなように、皮切作業中と腫瘍摘出作業中とで、同じ執刀医であってもR−R間隔の変動幅が明らかに異なる。このようなR−R間隔の変動幅の相違は、各々の作業に要求される精密さの違いにより、各々の作業を行う執刀医の呼吸の仕方が異なることに起因する。
【0104】
具体的には、図13に示すグラフのように皮切作業は直視下で行われる比較的な大まかな作業であり、図14に示すグラフのように腫瘍摘出作業は手術顕微鏡下で行われる精密作業である。
【0105】
そして、腫瘍摘出作業のように精密な作業を行うときには、当該作業を行う執刀医は、自らの体の動きを小さくする為に呼吸を小さくし、且つほぼ一定の間隔で“息継ぎ”を行っている。この為、精密な作業を行っている時のR−R間隔の変動幅(図14参照)は、そうでないときのR−R間隔の変動幅(図13参照)に比べて小さくなる傾向がある。
【0106】
以上説明したように、R−R間隔の変動幅は各々の作業内容によって異なる為、執刀医の心拍データをリアルタイムで収集してR−R間隔の変動幅を分析することで、現在執刀医により行われている作業が精密な作業であるか、比較的大まかな作業であるかを判別することができる。
【0107】
以下、このような心拍データに基づいた医療ステージ判定について詳細に説明する。
【0108】
R−R間隔の変動に関するルールとしては、例えば次のようなルールを定めるとよい。すなわち、図15に示すように、R−R間隔の値の上昇開始点及び下降開始点を特定し、これら上昇開始点及び下降開始点に基づいてR−R間隔の変動の幅の大きさを算出して閾値を設定し、該閾値を基準として、精密な作業とそうでない作業とを判別する。
【0109】
なお、前期閾値を上回った(又は下回った)連続回数による制限を設けてもよい。また、例えば過去5回の平均(又は過去30秒の平均)等、一定の範囲に属するデータの平均値を用いて判定してもよい。
【0110】
具体的には、皮切作業、開頭作業、及び閉創作業等の、比較的大まかな作業においては、心拍数変化が閾値以下になることは通常無い。この為、変化量が閾値以上であることを判定条件と定めればよい。
【0111】
また、例えば腫瘍摘出等の精密な作業が行われる医療ステージにおいては、心拍数変化が閾値以下になること、且つその状態が一定期間(回数)続くことを判定条件に定めればよい。このようなルールは、前記ステージ判定ルール記憶部12に予め記憶させておく。また、収集されたデータ値が閾値を上回るか否か、その状態がどの程度の期間連続しているか等の分析は、前記医療スタッフ計測数値分析部6によって行われる。
【0112】
なお、上述した医療スタッフの心拍数の変化情報に基づく医療ステージの判定は、当然ながら図4に示す処理の流れ図を参照して説明した一連の医療ステージ判定処理の中で、医療スタッフの動き量及び位置に基づく判定の代わりに行う。
【0113】
つまり、医療スタッフの動き量及び位置に基づく一連の医療ステージ判定処理と同様、医療ステージの判定結果に含まれる情報を、更に別の医療行為判定(動作判定)及び医療ステージ判定において、再び適用することは勿論である。
【0114】
以上説明したように、本第1実施形態によれば、例えば突発的な使用器具の交換等の、使用器具に関する想定外の事象に左右されることのない高い医療ステージ判定精度を実現した医療安全システムを提供することができる。
【0115】
具体的には、本第1実施形態に係る医療安全システムによれば、医療ステージの中で、特に精密な作業が行われた時間帯を容易に特定することができる。これにより、効率的な医療行為の分析が可能となる。
【0116】
例えば脳腫瘍摘出手術においては、腫瘍摘出医療ステージが非常に長時間(数時間以上)に及ぶ場合があるが、実際には間断なく腫瘍摘出作業が続いているわけではなく、途中、助手や麻酔医との相談やナースへの指示が行われる時間帯も多く存在する。
【0117】
本第1実施形態に係る医療安全システムによれば、例えば安全上の問題等で適切な手技が行われたか否かを後日記録を参照して分析する場合には、実際に精密作業がなされた時間帯(腫瘍摘出作業が行われた時間帯)を容易に特定することができるので、当該分析に係る作業の大幅な時間短縮が可能となる。
【0118】
作業を行う医療スタッフ及びその場所を認識・識別し、且つそれらの動き量から医療ステージを判定する為、器具の使用状況等から判定する方法を採る従来技術と比較して、一時的な作業中断等の影響を受けにくく、判定精度が向上する。
【0119】
さらに、当該医療現場に設ける装置としてはビデオカメラだけでよいので、本第1実施形態に係る医療安全システムが当該医療行為を妨害する怖れは無く、且つ煩雑な処理等も不要である。
【0120】
なお、医療スタッフの動き量及び位置に基づいた医療ステージの判定と、医療スタッフの心拍数の変化情報に基づいた医療ステージの判定とを適宜組み合わせることで、より精密な医療ステージの判定を行っても勿論よい。
【0121】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る医療安全システムについて説明する。なお、説明の便宜上、前記第1実施形態に係る医療安全システムとの相違点のみを説明する。
【0122】
図16は、本第2実施形態に係る医療安全システムの一構成例を示す図である。同図に示すように、本第2実施形態に係る医療安全システム50は、映像取得/医療スタッフ識別システム2と、医療スタッフ計測数値収集部4と、医療スタッフ計測数値分析部6と、医療行為データ記録部8と、医療行為計画情報保存部10と、ステージ判定ルール記憶部12と、医療ステージ/作業判定部14と、医療ステージ記録部16と、インシデント判定部18と、警告装置20と、医療行為記録閲覧装置22と、医療行為記録分析装置24と、医療器具情報収集部51と、各種計測数値収集部53と、端末入力装置55と、端末処理装置57と、端末表示装置59と、を具備する。
【0123】
前記医療行為データ記録部8は、上述した映像記録部8A及び医療スタッフ計測数値記録部8Bの他に、本第2実施形態に係る医療安全システムに特有の各種計測数値記録部8Cと、医療器具情報記録部8Dとを有する。
【0124】
前記医療ステージ/作業判定部14は、上述した映像判定部14A及び医療スタッフ計測数値判定部14Bの他に、本第2実施形態に係る医療安全システムに特有の各種計測数値判定部14Cと、医療器具情報判定部14Dとを有する。
【0125】
前記医療器具情報収集部51は、手術で使用する各種の医療器具各々の位置、医療器具の使用者、医療器具の使用時刻、医療機器の動作状況、医療スタッフの位置等を収集する。
【0126】
前記医療器具情報記録部8Dは、前記医療器具情報収集部51により収集された情報を記録する。
【0127】
前記医療器具情報判定部14Dは、前記医療器具情報収集部51により収集され前記医療器具情報記録部8Dに記録された医療器具の位置、医療器具の使用者、医療器具の使用時刻、医療機器の動作状況、医療スタッフの位置、医療行為計画等に基づいて、実施された医療行為の種類を判定する。
【0128】
前記各種計測数値収集部53は、心拍、呼吸、血圧等の生体情報に関する計測値を図示しないセンサから計測時刻とともに収集する。
【0129】
前記各種計測数値記録部8Cは、前記各種計測数値収集部53により収集された情報を記録する。
【0130】
前記各種計測数値判定部14Cは、前記各種計測数値収集部53により収集され前記各種計測数値記録部8Cに記録された心拍、呼吸、血圧等の生体情報に関する計測値及び計測時刻に基づいて、実施された医療行為の種類を判定する。
【0131】
ところで、前記端末入力装置55と、前記端末処理装置57と、前記端末表示装置59とは当該医療安全システム50のマンマシンインタフェースとしての端末を構成する部材である。
【0132】
上述した構成により、本第2実施形態に係る医療安全システムでは、前記第1実施形態に係る医療安全システムと同様の処理による医療ステージ判定のみならず、医療器具に係る情報に基づいた医療ステージの判定を行うことも可能となる。
【0133】
つまり、医療スタッフの動き量及び位置、医療スタッフの心拍数の変化情報、及び医療器具に係る情報のうち、少なくとも何れか一つの情報を用いることで、医療ステージの判定を行うことができる。また、医療スタッフの動き量及び位置、医療スタッフの心拍数の変化情報、及び医療器具に係る情報を適宜組み合わせて用いることで、より精密な医療ステージ判定を行っても勿論よい。
【0134】
以上説明したように、本第2実施形態によれば、前記第1実施形態に係る医療安全システムよりも更に高い判定精度を実現した医療安全システムを提供することができる。
【0135】
具体的には、本第2実施形態に係る医療安全システムによれば、映像処理によっては検出が困難な小型の器具(メス等)の使用状況を医療ステージ判定の条件として付け加える(例えば“and”や“or”等で適宜条件として組み合わせる)ことが可能となり、これにより判定精度の更なる向上を実現することができる。例えば、ドリルが使用されていない場合は、他の条件を満たしたとしても、[開頭]医療ステージに移行したとみなさないとする処理等が考えられる。
【0136】
また、例えば[開頭]医療ステージは頭皮を切開する皮切作業と、頭蓋骨を開ける骨切作業とから成る医療ステージであるが、何れの作業についても、当該作業を担当する医療スタッフや医療スタッフの動き量が殆どの場合同じである。従って、それらを明確に区別することは困難であるが、それぞれ使用される器具が異なる為、本第2実施形態を適用することによって、それらを明確に区別することが可能となる。
【0137】
なお、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の第1実施形態に係る医療安全システムの構成を示す図。
【図2】映像取得/医療スタッフ識別システムの一構成例を示す図。
【図3】映像取得/医療スタッフ識別システムの一構成例を示す図。
【図4】医療ステージ/作業判定部による処理の流れを示す図。
【図5】個々の医療スタッフの動き量と時刻情報とを関連付けて保存する一例を示す図。
【図6A】指定された領域内における医療スタッフの動き量を算出することで、それぞれ手術手技に関わる動き量、麻酔・患者容体維持に関わる動き量を算出する一例を示す図。
【図6B】指定された領域内における医療スタッフの動き量を算出することで、それぞれ手術手技に関わる動き量、麻酔・患者容体維持に関わる動き量を算出し、それらをグラフ化した一例を示す図。
【図7】悪性脳腫瘍摘出術における動き量の変化のグラフを示す図。
【図8】撮影範囲の一例を示す図。
【図9】医療行為計画情報の一例を示す図。
【図10】医療ステージ判定ルールの一例を示す図。
【図11】被験者が椅子に座り自然な呼吸をしている時に測定したR−R間隔の時間変動のグラフを示す図。
【図12】被験者が椅子に座り呼吸を止めた時のR−R間隔の時間変動のグラフを示す図。
【図13】皮切作業を行う執刀医のR−R間隔のグラフを示す図。
【図14】執刀医が腫瘍摘出作業を行っているときのR−R間隔のグラフを示す図。
【図15】R−R間隔の値の上昇開始点及び下降開始点を特定し、これらに基づいてR−R間隔の変動幅の大きさを算出して閾値を設定し、該閾値を基準として、精密な作業とそうでない作業とを判別する際の、前記変動幅の算出例を示す図。
【図16】本発明の第2実施形態に係る医療安全システムの一構成例を示す図
【符号の説明】
【0139】
1…医療安全システム、 2…医療スタッフ識別システム、 2A…映像記憶部、 2B…映像分析部、 2A1…識別情報・位置記憶部、 2A2…映像信号記憶部、 2B1…映像位置計算部、 2B2…条件指定部、 2B3…ROI設定部、 2B4…映像分析部、 2B5…分析結果記憶部、 4…医療スタッフ計測数値収集部、 6…医療スタッフ計測数値分析部、 8…医療行為データ記録部、 8A…映像記録部、 8B…医療スタッフ計測数値記録部、 8C…種計測数値記録部、 8D…医療器具情報記録部、 10…医療行為計画情報保存部、 12…ステージ判定ルール記憶部、 14…医療ステージ/作業判定部、 14A…映像判定部、 14B…医療スタッフ計測数値判定部、 14C…種計測数値判定部、 14D…医療器具情報判定部、 16…医療ステージ記録部、 18…インシデント判定部、 20…警告装置、 22…医療行為記録閲覧装置、 24…医療行為記録分析装置、 30…表示装置、 31…被写体識別装置、 33…位置計測装置、 35…映像取得装置、 50…医療安全システム、 51…医療器具情報収集部、 53…種計測数値収集部、 55…端末入力装置、 57…端末処理装置、 59…端末表示装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療行為の管理を行う為の医療安全システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に医療の現場では、例えば手術等の医療行為が行われた場合、当該医療行為に関わった医師等によりその詳細が文書として記録される。この記録には、医療行為中の様々な機器から出力されたデータを示すチャートや写真や映像などが添付されることもある。
【0003】
しかしながら、このような記録は、多種多様なデータが時系列的な順序とは無関係に記載されていることが多い。したがって、医師等の専門家にとっても、このような記録に基づいて当該医療行為の手順等を事後に確認・検証することは困難であると言える。
【0004】
このような事情から、医療行為の手順を容易に確認・検証することを可能とするような情報を提供する技術が種々提案されており、例えば特許文献1には次のような技術が開示されている。
【0005】
すなわち、特許文献1に開示されている医療情報システムは、複数のイベントの組み合わせにより達成されるステージを複数含んだ医療行為の管理のための情報処理を行う医療情報システムであって、前記医療行為に関する医療器具および/または人間の状態を示す状態情報を時系列的に収集する収集手段と、前記状態情報に基づいて判定される前記イベントの発生状況に基づいて前記複数のステージの実施順序を判定する第1の判定手段と、前記複数のステージのそれぞれの開始タイミングを前記状態情報に基づいて判定する第2の判定手段と、前記実施順序と、前記複数のステージのそれぞれの開始タイミングとを示した手順情報を生成する手段とを具備する。これにより、特許文献1に開示されている医療情報システムによれば、医療行為の手順を容易に確認・検証することを可能とする情報が提供される。
【特許文献1】特開2006−164251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来より医療行為の管理を行う為のシステムによる医療ステージ(医療行為の開始から終了までの一連の作業を、作業目的により区分した工程又は期間の単位のこと)の判定においては、例えば突発的な使用器具の交換等の、使用器具に関する想定外の事象に起因する判定精度の悪化の問題が存在している。なお、特許文献1に開示された技術は、この問題を解決するものではない。
【0007】
本発明は、前記のような事情に鑑みて為されたものであり、例えば突発的な使用器具の交換等の、使用器具に関する想定外の事象に左右されることのない高い医療ステージ判定精度を実現した医療安全システムを提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の本発明による医療安全システムは、少なくとも当該医療行為に係わる医療スタッフの位置及び動き量を測定する位置及び動き量測定部と、前記位置及び動き量測定部により測定された前記医療スタッフの位置及び動き量に基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻を判定する医療行為判定部と、当該医療行為の準備から当該医療行為の完了までの一連の流れを作業目的により区分した工程又は期間の単位を表す医療ステージの種類及び実施時刻を、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻と、他の医療ステージの種類及び実施時刻とに基づいて判定する医療ステージ判定部と、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻の情報を、前記医療ステージ判定部により判定された医療ステージの種類及び実施時刻の情報とともに記録する記録部と、を具備することを特徴とする。
【0009】
前記の目的を達成するために、請求項3に記載の本発明による医療安全システムは、少なくとも当該医療行為に係わる医療スタッフの心拍数及びその変化量を示す情報である生体情報を測定する生体情報測定部と、前記生体情報測定部により測定された医療スタッフの生体情報に基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻を判定する医療行為判定部と、当該医療行為の準備から当該医療行為の完了までの一連の流れを作業目的により区分した工程又は期間の単位を表す医療ステージの種類及び実施時刻を、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻と、他の医療ステージの種類及び実施時刻とに基づいて判定する医療ステージ判定部と、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻の情報を、前記医療ステージ判定部により判定された医療ステージの種類及び実施時刻の情報とともに記録する記録部と、を具備することを特徴とする。
【0010】
前記の目的を達成するために、請求項5に記載の本発明による医療安全システムは、少なくとも当該医療行為に係わる医療スタッフの位置及び動き量を測定する位置及び動き量測定部と、少なくとも当該医療行為に係わる医療スタッフの心拍数及びその変化量を示す情報である生体情報を測定する生体情報測定部と、前記位置及び動き量測定部により測定された医療スタッフの位置及び動き量と、前記生体情報測定部により測定された医療スタッフの生体情報とに基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻を判定する医療行為判定部と、当該医療行為の準備から当該医療行為の完了までの一連の流れを作業目的により区分した工程又は期間の単位を表す医療ステージの種類及び実施時刻を、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻と、他の医療ステージの種類及び実施時刻とに基づいて判定する医療ステージ判定部と、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻の情報を、前記医療ステージ判定部により判定された医療ステージの種類及び実施時刻の情報とともに記録する記録部と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば突発的な使用器具の交換等の、使用器具に関する想定外の事象に左右されることのない高い医療ステージ判定精度を実現した医療安全システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る医療安全システムの構成を示している。同図に示すように、本第1実施形態に係る医療安全システム1は、映像取得/医療スタッフ識別システム2と、医療スタッフ計測数値収集部4と、医療スタッフ計測数値分析部6と、医療行為データ記録部8と、医療行為計画情報保存部10と、ステージ判定ルール記憶部12と、医療ステージ/作業判定部14と、医療ステージ記録部16と、インシデント判定部18と、警告装置20と、医療行為記録閲覧装置22と、医療行為記録分析装置24と、を具備する。
【0014】
前記映像取得/医療スタッフ識別システム2は、映像を取得し、且つ該映像中の医療スタッフを識別し、さらに映像分析を行ない、各々の医療スタッフの動き量を計測するシステムである。この映像取得/医療スタッフ識別システム2の詳細については、図2及び図3を参照して説明する。
【0015】
前記医療スタッフ計測数値収集部4は、医療スタッフの心拍数を収集する。
【0016】
前記医療スタッフ計測数値分析部6は、前記医療スタッフ計測数値収集部4によって収集された医療スタッフの心拍数を分析し、その変化量等を算出する。
【0017】
前記医療行為データ記録部8は、映像記録部8Aと医療スタッフ計測数値記録部8Bとを有する。前記映像記録部8Aは、前記映像取得/医療スタッフ識別システム2によって取得された映像を記録する。前記医療スタッフ計測数値記録部8Bは、前記医療スタッフ計測数値収集部4によって収集された医療スタッフの心拍数、及び前記医療スタッフ計測数値分析部6によって分析された医療スタッフの心拍数の変化量等を記録する。
【0018】
前記医療行為計画情報保存部10は、所定の医療行為計画システム(不図示)で計画された医療行為計画に関する情報である医療行為計画情報を保存する。
【0019】
前記ステージ判定ルール記憶部12は、特定の動作や医療ステージ(例えば手術の準備から手術完了までの一連の流れを、作業目的により区分した工程又は期間の単位)に対応する判定ルール(後述する動作判定ルール及び医療ステージ判定ルール等)、及び警告をユーザーに報知する際のルールである警告ルール等を記憶する。
【0020】
前記医療ステージ/作業判定部14は、映像判定部14Aと医療スタッフ計測数値判定部14Bとを有する。詳細は後述するが、前記医療ステージ/作業判定部14は、各医療ステージ毎に規定され且つ前記ステージ判定ルール記憶部12に記憶された前記医療ステージ判定ルールに従って、医療ステージの種類及び実施時刻等を判定する。
【0021】
前記医療ステージ記録部16は、前記医療ステージ/作業判定部14によって判定された医療ステージの種類及び実施時刻等に関する情報を記録する。
【0022】
前記インシデント判定部18は、前記医療ステージ/作業判定部14による映像判定結果及び医療ステージ判定結果に基づいて、インシデントを判定する。
【0023】
前記警告装置20は、前記インシデント判定部18によるインシデント判定結果に基づいて、警告を報知する。
【0024】
前記医療行為記録閲覧装置22は、前記医療ステージ記録部16に記録された情報を閲覧する為の装置である。
【0025】
前記医療行為記録分析装置24は、前記医療ステージ記録部16に記録された情報に基づいて当該医療行為の分析を行い、該分析結果に基づいて分析レポートを作成して出力する装置である。
【0026】
図2は、前記映像取得/医療スタッフ識別システム2の一構成例を示す図である。同図に示すように、前記映像取得/医療スタッフ識別システム2は、映像記憶部2Aと、映像分析部2Bと、被写体識別装置31と、位置計測装置33と、映像取得装置35とを有する。
【0027】
なお、前記被写体識別装置31は、RFタグ(不図示)と無線送受信部(不図示)とから構成される。また、位置計測装置33は、超音波発振器(不図示)と超音波センサ(不図示)と計測系位置計算部(不図示)とから構成される。
【0028】
前記RFタグ及び前記超音波発信器は、信号発信体(不図示)に内蔵されている。そして、この信号発信体は、医療スタッフに装着されている。
【0029】
前記無線送受信部と前記超音波センサと前記計測系位置計算部は、発信体計測装置(不図示)に内蔵される。この発信体計測装置は、さらに制御信号発信部を備え、医療現場内に設置される。
【0030】
前記RFタグは、ICチップとアンテナを含み構成される。ICチップには、信号発信体を装着している医療スタッフの識別符号が予め記憶されている。医療スタッフの識別符号は、医療スタッフ毎に一意に割り当てられたIDであり、医療スタッフ識別情報の一種である。
【0031】
前記RFタグは、外部から発せられた電波をアンテナで受信する。外部から電波を受信すると共振作用によってICチップに供給される起電力が生じ、前記RFタグは、ICチップが記憶しているスタッフの識別符号をアンテナを介して送信する。
【0032】
また、前記RFタグは、外部から医療スタッフの識別符号が含まれた制御信号を受信し、受信した医療スタッフの識別符号がICチップ内に記憶されていると、超音波発信器にトリガ信号を出力する。
【0033】
前記無線送受信部は、アンテナを含み構成される。前記無線送受信部は、RFタグに起電力を生じさせる電波を発信し、またRFタグから送信された医療スタッフの識別符号を受信する。
【0034】
前記被写体識別装置31では、RFタグから無線送受信部に医療スタッフの識別符号が送信されることにより、その識別符号で表される医療スタッフが特定される。制御信号発信部は、信号発信体に対して制御信号を送信する。制御信号には、位置計測する医療スタッフの識別符号が含まれる。
【0035】
前記制御信号発信部は、無線送受信部がスタッフの識別符号を受信すると、その受信を契機にこの受信したスタッフの識別符号を制御信号に含めて送信する。複数の医療スタッフの識別符号を受信していると、混信をさけるために所定間隔おいて順次制御信号に含めて送信する。
【0036】
前記超音波発振器は、RFタグからのトリガ信号の入力を契機に超音波信号を外部へ発振する。前記超音波センサは、超音波発振器が発振した超音波信号を受信する。この超音波センサは、所定距離離間して複数個が医療現場に設置されている。各超音波センサは、設置された位置と信号発信体との距離関係によって位相差が異なった超音波を受信する。
【0037】
前記計測系位置計算部は、各超音波センサが受信した超音波の位相差から、超音波センサを原点とした計測系座標(Xs,Ys,Zs)で表された信号発信体の計測系位置情報を算出する。
【0038】
前記位置計測装置33は、存在が確認された医療スタッフが装着している信号発信体にそれが記憶している医療スタッフの識別符号を送信することで、その信号発信体のみを呼応させて超音波を発振させ、受信した超音波からその信号発信体の位置を計算することで、位置計算された信号発信体を装着している医療スタッフの位置を計測系座標において取得する。
【0039】
前記発信体計測装置は、被写体識別装置31が取得した医療スタッフを識別する識別符号と、計測系位置計算部が取得した医療スタッフの計測系位置情報とを対にして被写体識別位置情報として、前記映像記録部2Aに出力する。
【0040】
前記映像記憶部2Aは、識別情報・位置記憶部2A1と、映像信号記憶部2A2とを備える。
【0041】
前記識別情報・位置記憶部2A1は、前記被写体識別装置31及び前記位置計測装置33によって取得された前記被写体識別位置情報を記憶する。
【0042】
前記映像信号記憶部2A2は、例えばビデオカメラ等の映像取得装置35が取得した映像信号を記憶する。
【0043】
前記映像分析部2Bは、映像位置計算部2B1と、条件指定部2B2と、ROI設定部2B3と、映像分析部2B4と、分析結果記憶部2B5とを備える。
【0044】
前記映像位置計算部2B1は、前記発信体計測装置から出力された計測系位置情報から、信号発信体、即ち信号発信体を装着している医療スタッフが映像上のどの画素に映っているかを表す映像系位置情報を計算する。
【0045】
前記条件指定部2B2は、例えば映像内における関心領域の設定等の各種条件の設定を行う。
【0046】
前記ROI設定部2B3は、主にCPUを含み構成され、表示装置(不図示)に表示されている画面上に関心領域が指定されると、その関心領域を記憶する。
【0047】
前記映像分析部2B4は、主にCPUを含み構成され、前記映像信号記憶部2A2に記憶されている映像信号及び前記映像位置計算部2B1によって算出された前記映像系位置情報に基づいて、映像上の医療スタッフ画像の形状変化から映像に映る各医療スタッフの動き量を個々に算出する。また、ROI設定部2B3で関心領域が設定されているときは、映像上、関心領域内に医療スタッフが存在するか否かを判断し、関心領域内に医療スタッフが存在するときに限って動き量を算出する。
【0048】
前記分析結果記憶部2B5は、前記映像分析部2B4による映像分析結果すなわち各医療スタッフの動き量及び前記映像位置計算部2B1によって算出された映像系位置情報を時系列で記憶する。
【0049】
なお、前記映像取得/医療スタッフ識別システム2の構成は、上述した図2に示す構成に限られず、例えば図3に示すように前記映像記録部2Aを設けずに、前記識別情報・位置記憶部2A1と前記映像信号記憶部2A2とを前記映像分析部2Bに設け、これら識別情報・位置記憶部2A1及び映像信号記憶部2A2を例えばバッファメモリとして一時的な保存に用いる構成としてもよい。さらには、このような一時的な保存も行わず、リアルタイムで処理を行うように構成しても勿論よい。
【0050】
以下、前記医療ステージ/作業判定部14による処理の流れについて、図4を参照して詳細に説明する。
【0051】
まず、医療行為計画情報が、医療行為計画情報保存部10から映像判定部14Aに入力される(ステップS1)。続いて、動作判定ルールが、ステージ判定ルール記憶部12から映像判定部14Aに入力される(ステップS2)。さらに、基本医療ステージ情報(医療ステージ判定ルール、警告ルール)が、ステージ判定ルール記憶部12から映像判定部14Aに供給される(ステップS3)。
【0052】
そして、映像判定部14Aが、ステージ判定ルール記憶部12から供給された動作判定ルールから、当該医療行為計画において実行予定の動作に対応する動作判定ルールを選択する(ステップS4)。
【0053】
さらに、映像判定部14Aが、ステージ判定ルール記憶部12から供給された医療ステージ判定ルール及び警告ルールから、当該医療行為計画に含まれる医療ステージに対応する医療ステージ判定ルール及び警告ルールを選択する(ステップS5)。
【0054】
当該医療行為の開始後、上述したように前記映像取得/医療スタッフ識別システム2によって、上述したように映像が取得され且つ該映像に映る医療スタッフが識別され、且つ映像分析により医療スタッフの動き量が算出される。このようにして前記映像取得/医療スタッフ識別システム2が取得した前記被写体識別位置情報が、前記医療行為データ記録部8に記録される(ステップS6)。
【0055】
そして、当該医療行為の開始後、前記医療スタッフ計測数値収集部4によって、医療スタッフの心拍数が時刻情報と共に計測され、医療スタッフ計測数値分析部6による分析の後、医療スタッフ計測数値記録部8Bに記録される(ステップS7)。
【0056】
前記映像判定部14Aは、医療行為判定(動作判定)として、上述の各種計測された(記録された)データから、ステップS4において選択された動作判定ルールに基づいて、例えば吸引動作、切開動作等の各種動作の有無・時刻・実施期間を判定する(ステップS8)。
【0057】
さらに、前記映像判定部14Aは、医療ステージ判定として、時系列的に過去及び将来における医療スタッフの動作、動き量、位置や医療ステージの判定結果(種類、時刻、期間)、及び上述した各種計測・記録されたデータとその時刻情報から、前記ステップS5で選択された医療ステージ判定ルールに基づいて、実行された医療ステージの種類、開始時刻、及び終了時刻(実施期間)を判定する(ステップS9)。
【0058】
そして、前記映像判定部14Aは、前記ステップS8において行った医療行為判定(動作判定)の判定結果、及び前記ステップS9において行った医療ステージ判定の判定結果を、前記ステージ記録部16に記録する(ステップS10)。
【0059】
本第1実施形態に係る医療安全システムの主な特徴の一つは、医療スタッフの動作、動き量、位置及び医療ステージの判定結果に含まれる時刻情報を、更に別の医療行為判定(動作判定)及び医療ステージ判定における判定材料として再び用いることである。なお、例えばどの医療ステージに関する情報を、どの医療ステージの判定に用いるかについては、必ずしもそれらの事象が発生した時系列的順序に従わせる必要は無い。
【0060】
以下、前記映像判定部14Aによる医療スタッフの動き量及び位置に基づいた医療ステージ判定について、詳細に説明する。
【0061】
医療スタッフの動き量及び位置の算出に係る処理は、上述した通り前記映像取得/医療スタッフ識別システム2によって行われる。なお、前記映像取得/医療スタッフ識別システム2により算出された各々の医療スタッフの動き量と時刻情報とは、例えば図5に示すように関連付けられて不図示のメモリ等に保存される。ここで、動き量の算出はリアルタイムで行われる。
【0062】
前記映像取得/医療スタッフ識別システム2によれば、映像取得/医療スタッフ識別システム2により取得した映像上における指定された領域(図6Aに示すROI 001乃至ROI 003)内の動き量を知ることができる。図6Aは、映像上において設定されたROIを示す図であり、図6Bにおける直線状のグラフはROI 001における医療スタッフ(ID 001乃至ID 006)の動き量を示すグラフである。ここで、図6Bにおいて太線で示される時間帯は当該IDナンバーの人物がROI 001中に存在する時間帯であり、同図において細線で示される時間帯は当該IDナンバーの人物がROI 001中に不在の時間帯であることを示している。また、同グラフにおいて平行四辺形が付された時間帯は、ROI 001中において手術手技に関わる動き量が検出された時間帯であり、該動き量は同グラフにおける“ROI ID:001術野”の折れ線グラフに示されている。
【0063】
なお、このようなグラフを上記表示装置(不図示)に表示させ、ユーザにより所定の時刻がクリック操作されると、当該時刻における映像が上記表示装置(不図示)を表示させるようにしても勿論よい。
【0064】
すなわち、例えば手術室中の手術手技が行われる領域や、麻酔・患者バイタルモニター関連機器が配置された領域をユーザーが映像上で指定し、該領域内の動き量を算出することで、各々の手術手技に関わる動き量や、麻酔・患者容体維持に関わる医療スタッフの動き量を知ることができる。
【0065】
具体的には、例えば図6A及び図6Bに示すように、どの医療スタッフ(同図に示すID 001乃至ID 006)が、どの領域(同図に示すROI 001乃至ROI 003)内に入ったかを知ることができる。なお、これらの情報もリアルタイムで算出される。
【0066】
ここで、医療スタッフの動き量と医療ステージとの関係について説明する。
【0067】
当然ながら、各々の医療ステージ毎によって、各医療スタッフの動き量は変化する。図7は、悪性脳腫瘍摘出術における医療スタッフの動き量の変化を示すグラフである。なお、映像取得の為の撮影範囲は、おおよそ図8に示す撮影範囲60である。すなわち、図8に示す撮影範囲60内において、執刀医61と助手63による手術手技、器械台看護師65による手術器具受け渡しが撮影されている。
【0068】
なお、図7に示すグラフでは、縦軸に動き量(ここでは処理を簡便化する為に、映像ファイルを1分毎に分割して可変ビデオレートで圧縮保存し、ファイルサイズの大きさを動き量としている)、横軸に映像記録開始時点からの経過時間を分単位で記している。
【0069】
図7に示すグラフで表される手術における手術手技に係る作業は、大きく分類すると例えば次のように順番付けられた医療ステージの連鎖で構成される。なお、以下の記載において、[ ]で括って示す工程は医療ステージを表す。
【0070】
すなわち、[開頭準備]→[開頭]→[腫瘍へのアプローチ]→[画像診断(1)]→[腫瘍摘出(1)]→[画像診断(2)]→[腫瘍摘出(2)]→[画像診断(3)]→[閉創]である。
【0071】
なお、図7に示すグラフには、当該悪性脳腫瘍摘出術の冒頭において、麻酔医67と看護師69による[麻酔導入]医療ステージが含まれている。また、同図に示すグラフのうち、何れの医療ステージにも含まれていない工程は、次の医療ステージの準備作業を行う工程である。
【0072】
前記[開頭準備]医療ステージは、患者頭部に固定フレームを装着する作業である。
【0073】
前記[開頭]医療ステージは、開頭箇所にマーキングし、消毒し、皮切・骨切し、術野を確保するために硬膜を吊り上げる作業である。これも通常、執刀医61と助手63が行う。但し、図7に示すグラフの例では、事前に開頭検査が実施されていた為、骨切作業は行われていない。
【0074】
前記[腫瘍へのアプローチ]医療ステージは、脳組織を圧排、切除しながら腫瘍部を術野に露出させるまでの作業であり、手術顕微鏡下で行われる。
【0075】
以上説明した[開頭準備]医療ステージ乃至[腫瘍へのアプローチ]医療ステージにおける作業は、何れも通常、執刀医と助手の2名が、直視下で行う作業である。ここで、[開頭準備]医療ステージ及び[開頭]医療ステージにおける作業は、当該作業時における医療スタッフの動きが大きい。これに対し、[腫瘍へのアプローチ]医療ステージにおける作業は、[開頭準備]医療ステージ及び[開頭]医療ステージと同じく執刀医61と助手63とが2名で行う作業ではあるが、顕微鏡下の精密な作業である為、当該作業者の動きが小さい。
【0076】
つまり、動き量について比較した場合、[腫瘍へのアプローチ]医療ステージにおける作業は、[開頭準備]医療ステージ及び[開頭]医療ステージにおける作業よりも、執刀医61及び助手63の動き量が小さい。
【0077】
前記[画像診断(1)]医療ステージにおける画像診断では、手術顕微鏡71や器械台73をいったん退避させた後、麻酔医67・看護師65など複数の医療スタッフが、患者69を載せた手術寝台75を画像診断装置77まで移動させるため、一時的に動き量が大きくなる。
【0078】
一方、画像診断作業の最中では、必要最小限の医療スタッフが手術室内に残り、待機するのみである為、患者69の容体が急変しない限り、動きはほとんどなくなる。そして、画像診断作業が終わると、手術寝台75、手術顕微鏡71、及び器械台73等を元通りの位置に戻す作業を行う為、再び動き量が大きくなる。
【0079】
前記[腫瘍摘出(1)]医療ステージは、手術顕微鏡71下で行う腫瘍摘出であり、この腫瘍摘出作業が始まるときには、動き量が小さくなる。
【0080】
その後、[画像診断(2)]医療ステージにおける画像診断、[腫瘍摘出(2)]医療ステージにおける腫瘍摘出、及び[画像診断(3)]における画像診断が行われ、目的通り腫瘍が摘出したことが確認されると、[閉創]医療ステージにて閉創作業が行われる。
【0081】
この[閉創]医療ステージにおける閉創は直視下で行われる為、動き量が大きくなる。なお、図7に示すグラフを作成する為のデータを収集した悪性脳腫瘍摘出術では、執刀医61、助手63に加えて、研修医(不図示)が2名乃至3名が参加した為、同じ直視下の作業である[開頭準備]医療ステージや[開頭]医療ステージにおける動き量よりも、[閉創]医療ステージにおける動き量の方が大きくなっている。
【0082】
以上説明したように、作業を行う医療スタッフの人数や作業に伴う医療スタッフの体動の大きさ(動き量)は、各々の医療ステージによって異なる。従って、このような動き量等と医療ステージとの相関関係を利用することで、医療ステージの判別を行うことが可能となる。
【0083】
なお、同じ術式の手術の場合であって、同じ施設で行われる又は同じ手術責任者により行われる場合には、個々の症例によって医療ステージ毎に要する時間や画像診断の実施回数が異なることはあるが、当該手術における医療スタッフの動き量は、おおよそ同じ変化をする。
【0084】
従って、例えば前記医療行為計画システム(不図示)に保存されている医療ステージの順序や作業に参加する医療スタッフ、作業予定時間等の情報を用いることで、実施中の当該手術において今現在どの医療ステージが進行しているのかを推定することができる。
【0085】
なお、上述した医療ステージの判定には直接的に関わらない為、説明は省略するが、図8において符号91が付されているのは麻酔器・呼吸器であり、符号92が付されているのはバイタルモニタであり、符号93が付されているのはBISモニタであり、符号94が付されているのは投薬装置のBOXであり、符号95が付されているのは外回り看護師であり、符号96が付されているのは看護師カートである。
【0086】
図9は、前記医療行為計画情報として予め前記医療行為計画情報保存部10に保存されている情報の一例を示す図である。ここでは、悪性脳腫瘍摘出術を例に、動き量に基づいた医療ステージの判定について説明する。なお、当該悪性脳腫瘍摘出術を行う手術室には、外科医が手技を行う術野周辺の映像を取得する為のビデオカメラが予め設置されているものとする。
【0087】
図9に示す例では、前記医療行為計画情報として、実施予定の医療ステージと、担当の医療スタッフと、医療ステージの順序と、予想所要時間と、及び使用医療機器とが互いに対応付けられて、前記医療行為計画情報保存部10に保存されている。なお、この例においては、例えば医療機器のセットアップ等、医療行為ではない作業であっても、手術中に一定時の時間を要する作業については医療ステージと見做している。
【0088】
図10は、前記医療ステージ判定ルールの一例を示す図である。すなわち、撮影範囲内に存在する医療スタッフ及び撮影範囲内における医療スタッフの動き量等に対応する条件は、医療ステージ判定ルールとして、例えば図10に示すように定められている。なお、撮影範囲内に存在する医療スタッフ及び撮影範囲内における医療スタッフの動き量等の情報は、上述した前記映像取得/医療スタッフ識別システム2による処理結果から、既知となる情報である。
【0089】
図10に示す医療ステージ判定ルールによれば、まず当該手術を開始する直前に本第1実施形態に係る医療安全システムを稼動させると、次のように判定が行われる。なお、冗長な説明を避ける為、ここでは[頭部固定]医療ステージ及び[ドレープかけ、手術器具準備]医療ステージの判定についてのみ詳細に説明し、これらの医療ステージ判定の説明と図10に示す医療ステージ判定ルールとから自明となる他の医療ステージ判定についての説明は省略する。
【0090】
まず、動き量が580乃至620の範囲で且つ医療スタッフID001、医療スタッフID002及び機器ID100が撮影範囲内に存在すれば、前記医療行為計画情報と照合して、[頭部固定]医療ステージであると判定する。
【0091】
続いて40分程度の時間が経過し、動き量が400乃至500程度まで下がれば、[ドレープかけ、手術器具準備]医療ステージに切り替わったと判定する。このように、動き量に関する条件によって医療ステージを判定する場合には、一定時間内における増量/減量等の変化量を指定してもよい。
【0092】
なお、医療ステージ判定ルールに基づく判定に際しては、定められた全ての条件が満たされた場合に医療ステージ判定を行うとしても良いし、定められた条件のうちの一部の条件が満たされた場合に医療ステージ判定を行うとしても良い。
【0093】
例えば、定められた全ての条件が満たされた場合に医療ステージ判定を行う例としては、次のような例を挙げることができる。すなわち、腫瘍へのアプローチや腫瘍摘出作業は、手術顕微鏡を用いずに行われることはあり得ないことから、たとえ動き量や撮影領域内の手術医療スタッフに関する条件を満たす場合であっても、使用機器として手術顕微鏡が用いられていなければ、それらの医療ステージに入ったとは見做さないとする。このような処理を行うことで、より現実に即した医療ステージ判定を行うことができるようになる。
【0094】
さらには、例えば一部の条件が満たされていないことを、警告としてユーザーに報知するようにしてもよい。例えば、ある医療ステージが予定所要時間の2倍の時間が経過しても次の医療ステージに移行しない場合や、条件として定められた動き量の1.5倍を超える動き量が医療ステージ中に計測された場合等に、それら一部の条件が満たされていない旨をユーザーに報知するとよい。このように、医療ステージ判定ルールを警告ルールとして利用することも可能である。
【0095】
以下、本第1実施形態に係る医療安全システムによる、医療スタッフの心拍データ(心拍数及びその変化量)に基づいた医療ステージ判定について詳細に説明する。
【0096】
医療スタッフの心拍データに基づく医療ステージ判定とは、前記医療スタッフ計測数値収集部4により収集され、前記医療スタッフ計測数値分析部6によって分析され、前記医療行為データ記録部8によって記録された医療スタッフの心拍数及びその変化量に基づいて、前記ステージ/作業判定部14の有する前記医療スタッフ計測数値判定部14Bが行う医療ステージの判定のことであり、以下説明する原理を利用した判定である。
【0097】
手術中の医療スタッフの心拍を測定すると、当該作業内容に応じて心拍変化の仕方が変わる。つまり、心拍変化と医療ステージとには相関関係があり、それは次のような関係である。
【0098】
まず、呼吸とR−R間隔との関係について説明する。なお、R−R間隔とは、R波とR波との間隔を示す数値であり、例えばR−R間隔が1.0を示すとき心拍数は60であり、R−R間隔が0.6を示すとき心拍数は100である。
【0099】
このR−R間隔の変動幅に大きな影響を与える因子としては、呼吸の仕方を挙げることができる。例えば、呼吸を止めたときや呼吸が制限されたときには、自然な呼吸をしているときに比べると、R−R間隔の変動幅が小さくなることが知られている。
【0100】
図11は、被験者が椅子に座り自然な呼吸をしている時に測定したR−R間隔の時間変動のグラフ(縦軸;R−R間隔、横軸;時間)を示す図である。図12は、被験者が椅子に座り呼吸を止めた時のR−R間隔の時間変動のグラフ(縦軸;R−R間隔、横軸;時間)を示す図である。
【0101】
図11及び図12に示すグラフから分かるように、息を止めた場合(図12参照)、そうでない場合(図11参照)に比べて、被験者のR−R間隔の変動が極端に少なくなる。このように、大きな体動・運動(息が荒くなるような)を伴わない場合でも、呼吸の仕方のみによってR−R間隔の変動の仕方は大きく変わる。
【0102】
図13は、皮切作業を行う執刀医のR−R間隔のグラフ(縦軸;R−R間隔、横軸;時間)を示す図である。図14は、同じ執刀医が腫瘍摘出作業を行っているときのR−R間隔のグラフ(縦軸;R−R間隔、横軸;時間)を示す図である。
【0103】
図13及び図14に示すグラフを比較すると明らかなように、皮切作業中と腫瘍摘出作業中とで、同じ執刀医であってもR−R間隔の変動幅が明らかに異なる。このようなR−R間隔の変動幅の相違は、各々の作業に要求される精密さの違いにより、各々の作業を行う執刀医の呼吸の仕方が異なることに起因する。
【0104】
具体的には、図13に示すグラフのように皮切作業は直視下で行われる比較的な大まかな作業であり、図14に示すグラフのように腫瘍摘出作業は手術顕微鏡下で行われる精密作業である。
【0105】
そして、腫瘍摘出作業のように精密な作業を行うときには、当該作業を行う執刀医は、自らの体の動きを小さくする為に呼吸を小さくし、且つほぼ一定の間隔で“息継ぎ”を行っている。この為、精密な作業を行っている時のR−R間隔の変動幅(図14参照)は、そうでないときのR−R間隔の変動幅(図13参照)に比べて小さくなる傾向がある。
【0106】
以上説明したように、R−R間隔の変動幅は各々の作業内容によって異なる為、執刀医の心拍データをリアルタイムで収集してR−R間隔の変動幅を分析することで、現在執刀医により行われている作業が精密な作業であるか、比較的大まかな作業であるかを判別することができる。
【0107】
以下、このような心拍データに基づいた医療ステージ判定について詳細に説明する。
【0108】
R−R間隔の変動に関するルールとしては、例えば次のようなルールを定めるとよい。すなわち、図15に示すように、R−R間隔の値の上昇開始点及び下降開始点を特定し、これら上昇開始点及び下降開始点に基づいてR−R間隔の変動の幅の大きさを算出して閾値を設定し、該閾値を基準として、精密な作業とそうでない作業とを判別する。
【0109】
なお、前期閾値を上回った(又は下回った)連続回数による制限を設けてもよい。また、例えば過去5回の平均(又は過去30秒の平均)等、一定の範囲に属するデータの平均値を用いて判定してもよい。
【0110】
具体的には、皮切作業、開頭作業、及び閉創作業等の、比較的大まかな作業においては、心拍数変化が閾値以下になることは通常無い。この為、変化量が閾値以上であることを判定条件と定めればよい。
【0111】
また、例えば腫瘍摘出等の精密な作業が行われる医療ステージにおいては、心拍数変化が閾値以下になること、且つその状態が一定期間(回数)続くことを判定条件に定めればよい。このようなルールは、前記ステージ判定ルール記憶部12に予め記憶させておく。また、収集されたデータ値が閾値を上回るか否か、その状態がどの程度の期間連続しているか等の分析は、前記医療スタッフ計測数値分析部6によって行われる。
【0112】
なお、上述した医療スタッフの心拍数の変化情報に基づく医療ステージの判定は、当然ながら図4に示す処理の流れ図を参照して説明した一連の医療ステージ判定処理の中で、医療スタッフの動き量及び位置に基づく判定の代わりに行う。
【0113】
つまり、医療スタッフの動き量及び位置に基づく一連の医療ステージ判定処理と同様、医療ステージの判定結果に含まれる情報を、更に別の医療行為判定(動作判定)及び医療ステージ判定において、再び適用することは勿論である。
【0114】
以上説明したように、本第1実施形態によれば、例えば突発的な使用器具の交換等の、使用器具に関する想定外の事象に左右されることのない高い医療ステージ判定精度を実現した医療安全システムを提供することができる。
【0115】
具体的には、本第1実施形態に係る医療安全システムによれば、医療ステージの中で、特に精密な作業が行われた時間帯を容易に特定することができる。これにより、効率的な医療行為の分析が可能となる。
【0116】
例えば脳腫瘍摘出手術においては、腫瘍摘出医療ステージが非常に長時間(数時間以上)に及ぶ場合があるが、実際には間断なく腫瘍摘出作業が続いているわけではなく、途中、助手や麻酔医との相談やナースへの指示が行われる時間帯も多く存在する。
【0117】
本第1実施形態に係る医療安全システムによれば、例えば安全上の問題等で適切な手技が行われたか否かを後日記録を参照して分析する場合には、実際に精密作業がなされた時間帯(腫瘍摘出作業が行われた時間帯)を容易に特定することができるので、当該分析に係る作業の大幅な時間短縮が可能となる。
【0118】
作業を行う医療スタッフ及びその場所を認識・識別し、且つそれらの動き量から医療ステージを判定する為、器具の使用状況等から判定する方法を採る従来技術と比較して、一時的な作業中断等の影響を受けにくく、判定精度が向上する。
【0119】
さらに、当該医療現場に設ける装置としてはビデオカメラだけでよいので、本第1実施形態に係る医療安全システムが当該医療行為を妨害する怖れは無く、且つ煩雑な処理等も不要である。
【0120】
なお、医療スタッフの動き量及び位置に基づいた医療ステージの判定と、医療スタッフの心拍数の変化情報に基づいた医療ステージの判定とを適宜組み合わせることで、より精密な医療ステージの判定を行っても勿論よい。
【0121】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る医療安全システムについて説明する。なお、説明の便宜上、前記第1実施形態に係る医療安全システムとの相違点のみを説明する。
【0122】
図16は、本第2実施形態に係る医療安全システムの一構成例を示す図である。同図に示すように、本第2実施形態に係る医療安全システム50は、映像取得/医療スタッフ識別システム2と、医療スタッフ計測数値収集部4と、医療スタッフ計測数値分析部6と、医療行為データ記録部8と、医療行為計画情報保存部10と、ステージ判定ルール記憶部12と、医療ステージ/作業判定部14と、医療ステージ記録部16と、インシデント判定部18と、警告装置20と、医療行為記録閲覧装置22と、医療行為記録分析装置24と、医療器具情報収集部51と、各種計測数値収集部53と、端末入力装置55と、端末処理装置57と、端末表示装置59と、を具備する。
【0123】
前記医療行為データ記録部8は、上述した映像記録部8A及び医療スタッフ計測数値記録部8Bの他に、本第2実施形態に係る医療安全システムに特有の各種計測数値記録部8Cと、医療器具情報記録部8Dとを有する。
【0124】
前記医療ステージ/作業判定部14は、上述した映像判定部14A及び医療スタッフ計測数値判定部14Bの他に、本第2実施形態に係る医療安全システムに特有の各種計測数値判定部14Cと、医療器具情報判定部14Dとを有する。
【0125】
前記医療器具情報収集部51は、手術で使用する各種の医療器具各々の位置、医療器具の使用者、医療器具の使用時刻、医療機器の動作状況、医療スタッフの位置等を収集する。
【0126】
前記医療器具情報記録部8Dは、前記医療器具情報収集部51により収集された情報を記録する。
【0127】
前記医療器具情報判定部14Dは、前記医療器具情報収集部51により収集され前記医療器具情報記録部8Dに記録された医療器具の位置、医療器具の使用者、医療器具の使用時刻、医療機器の動作状況、医療スタッフの位置、医療行為計画等に基づいて、実施された医療行為の種類を判定する。
【0128】
前記各種計測数値収集部53は、心拍、呼吸、血圧等の生体情報に関する計測値を図示しないセンサから計測時刻とともに収集する。
【0129】
前記各種計測数値記録部8Cは、前記各種計測数値収集部53により収集された情報を記録する。
【0130】
前記各種計測数値判定部14Cは、前記各種計測数値収集部53により収集され前記各種計測数値記録部8Cに記録された心拍、呼吸、血圧等の生体情報に関する計測値及び計測時刻に基づいて、実施された医療行為の種類を判定する。
【0131】
ところで、前記端末入力装置55と、前記端末処理装置57と、前記端末表示装置59とは当該医療安全システム50のマンマシンインタフェースとしての端末を構成する部材である。
【0132】
上述した構成により、本第2実施形態に係る医療安全システムでは、前記第1実施形態に係る医療安全システムと同様の処理による医療ステージ判定のみならず、医療器具に係る情報に基づいた医療ステージの判定を行うことも可能となる。
【0133】
つまり、医療スタッフの動き量及び位置、医療スタッフの心拍数の変化情報、及び医療器具に係る情報のうち、少なくとも何れか一つの情報を用いることで、医療ステージの判定を行うことができる。また、医療スタッフの動き量及び位置、医療スタッフの心拍数の変化情報、及び医療器具に係る情報を適宜組み合わせて用いることで、より精密な医療ステージ判定を行っても勿論よい。
【0134】
以上説明したように、本第2実施形態によれば、前記第1実施形態に係る医療安全システムよりも更に高い判定精度を実現した医療安全システムを提供することができる。
【0135】
具体的には、本第2実施形態に係る医療安全システムによれば、映像処理によっては検出が困難な小型の器具(メス等)の使用状況を医療ステージ判定の条件として付け加える(例えば“and”や“or”等で適宜条件として組み合わせる)ことが可能となり、これにより判定精度の更なる向上を実現することができる。例えば、ドリルが使用されていない場合は、他の条件を満たしたとしても、[開頭]医療ステージに移行したとみなさないとする処理等が考えられる。
【0136】
また、例えば[開頭]医療ステージは頭皮を切開する皮切作業と、頭蓋骨を開ける骨切作業とから成る医療ステージであるが、何れの作業についても、当該作業を担当する医療スタッフや医療スタッフの動き量が殆どの場合同じである。従って、それらを明確に区別することは困難であるが、それぞれ使用される器具が異なる為、本第2実施形態を適用することによって、それらを明確に区別することが可能となる。
【0137】
なお、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の第1実施形態に係る医療安全システムの構成を示す図。
【図2】映像取得/医療スタッフ識別システムの一構成例を示す図。
【図3】映像取得/医療スタッフ識別システムの一構成例を示す図。
【図4】医療ステージ/作業判定部による処理の流れを示す図。
【図5】個々の医療スタッフの動き量と時刻情報とを関連付けて保存する一例を示す図。
【図6A】指定された領域内における医療スタッフの動き量を算出することで、それぞれ手術手技に関わる動き量、麻酔・患者容体維持に関わる動き量を算出する一例を示す図。
【図6B】指定された領域内における医療スタッフの動き量を算出することで、それぞれ手術手技に関わる動き量、麻酔・患者容体維持に関わる動き量を算出し、それらをグラフ化した一例を示す図。
【図7】悪性脳腫瘍摘出術における動き量の変化のグラフを示す図。
【図8】撮影範囲の一例を示す図。
【図9】医療行為計画情報の一例を示す図。
【図10】医療ステージ判定ルールの一例を示す図。
【図11】被験者が椅子に座り自然な呼吸をしている時に測定したR−R間隔の時間変動のグラフを示す図。
【図12】被験者が椅子に座り呼吸を止めた時のR−R間隔の時間変動のグラフを示す図。
【図13】皮切作業を行う執刀医のR−R間隔のグラフを示す図。
【図14】執刀医が腫瘍摘出作業を行っているときのR−R間隔のグラフを示す図。
【図15】R−R間隔の値の上昇開始点及び下降開始点を特定し、これらに基づいてR−R間隔の変動幅の大きさを算出して閾値を設定し、該閾値を基準として、精密な作業とそうでない作業とを判別する際の、前記変動幅の算出例を示す図。
【図16】本発明の第2実施形態に係る医療安全システムの一構成例を示す図
【符号の説明】
【0139】
1…医療安全システム、 2…医療スタッフ識別システム、 2A…映像記憶部、 2B…映像分析部、 2A1…識別情報・位置記憶部、 2A2…映像信号記憶部、 2B1…映像位置計算部、 2B2…条件指定部、 2B3…ROI設定部、 2B4…映像分析部、 2B5…分析結果記憶部、 4…医療スタッフ計測数値収集部、 6…医療スタッフ計測数値分析部、 8…医療行為データ記録部、 8A…映像記録部、 8B…医療スタッフ計測数値記録部、 8C…種計測数値記録部、 8D…医療器具情報記録部、 10…医療行為計画情報保存部、 12…ステージ判定ルール記憶部、 14…医療ステージ/作業判定部、 14A…映像判定部、 14B…医療スタッフ計測数値判定部、 14C…種計測数値判定部、 14D…医療器具情報判定部、 16…医療ステージ記録部、 18…インシデント判定部、 20…警告装置、 22…医療行為記録閲覧装置、 24…医療行為記録分析装置、 30…表示装置、 31…被写体識別装置、 33…位置計測装置、 35…映像取得装置、 50…医療安全システム、 51…医療器具情報収集部、 53…種計測数値収集部、 55…端末入力装置、 57…端末処理装置、 59…端末表示装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも当該医療行為に係わる医療スタッフの位置及び動き量を測定する位置及び動き量測定部と、
前記位置及び動き量測定部により測定された前記医療スタッフの位置及び動き量に基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻を判定する医療行為判定部と、
当該医療行為の準備から当該医療行為の完了までの一連の流れを作業目的により区分した工程又は期間の単位を表す医療ステージの種類及び実施時刻を、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻と、他の医療ステージの種類及び実施時刻とに基づいて判定する医療ステージ判定部と、
前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻の情報を、前記医療ステージ判定部により判定された医療ステージの種類及び実施時刻の情報とともに記録する記録部と、
を具備することを特徴とする医療安全システム。
【請求項2】
医療器具に係る情報である医療器具情報を取得する器具情報取得部を更に具備し、
前記医療行為判定部は、前記器具情報取得部により取得された医療器具情報と、前記位置及び動き量測定部により測定された医療スタッフの位置及び動き量とに基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻を判定することを特徴とする請求項1に記載の医療安全システム。
【請求項3】
少なくとも当該医療行為に係わる医療スタッフの心拍数及びその変化量を示す情報である生体情報を測定する生体情報測定部と、
前記生体情報測定部により測定された医療スタッフの生体情報に基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻を判定する医療行為判定部と、
当該医療行為の準備から当該医療行為の完了までの一連の流れを作業目的により区分した工程又は期間の単位を表す医療ステージの種類及び実施時刻を、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻と、他の医療ステージの種類及び実施時刻とに基づいて判定する医療ステージ判定部と、
前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻の情報を、前記医療ステージ判定部により判定された医療ステージの種類及び実施時刻の情報とともに記録する記録部と、
を具備することを特徴とする医療安全システム。
【請求項4】
医療器具に係る情報である医療器具情報を取得する器具情報取得部を更に具備し、
前記医療行為判定部は、前記器具情報取得部により取得された医療器具情報と、前記生体情報測定部により測定された医療スタッフの生体情報とに基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻とを判定することを特徴とする請求項3に記載の医療安全システム。
【請求項5】
少なくとも当該医療行為に係わる医療スタッフの位置及び動き量を測定する位置及び動き量測定部と、
少なくとも当該医療行為に係わる医療スタッフの心拍数及びその変化量を示す情報である生体情報を測定する生体情報測定部と、
前記位置及び動き量測定部により測定された医療スタッフの位置及び動き量と、前記生体情報測定部により測定された医療スタッフの生体情報とに基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻を判定する医療行為判定部と、
当該医療行為の準備から当該医療行為の完了までの一連の流れを作業目的により区分した工程又は期間の単位を表す医療ステージの種類及び実施時刻を、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻と、他の医療ステージの種類及び実施時刻とに基づいて判定する医療ステージ判定部と、
前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻の情報を、前記医療ステージ判定部により判定された医療ステージの種類及び実施時刻の情報とともに記録する記録部と、
を具備することを特徴とする医療安全システム。
【請求項6】
医療器具に係る情報である医療器具情報を取得する器具情報取得部を更に具備し、
前記医療行為判定部は、前記器具情報取得部により取得された医療器具情報と、前記位置及び動き量測定部により測定された医療スタッフの位置及び動き量と、前記生体情報測定部により測定された医療スタッフの生体情報とに基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻とを判定することを特徴とする請求項5に記載の医療安全システム。
【請求項7】
前記医療ステージ判定部は、前記医療ステージの種類及び実施時刻を、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻と、前記他の医療ステージの種類及び実施時刻と、計画された医療ステージの手順と、に基づいて判定することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち何れか一つに記載の医療安全システム。
【請求項8】
前記医療ステージ判定部が医療ステージの種類及び実施時刻を判定する為の判定規則を記憶する判定規則記憶部を更に具備することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち何れか一つに記載の医療安全システム。
【請求項1】
少なくとも当該医療行為に係わる医療スタッフの位置及び動き量を測定する位置及び動き量測定部と、
前記位置及び動き量測定部により測定された前記医療スタッフの位置及び動き量に基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻を判定する医療行為判定部と、
当該医療行為の準備から当該医療行為の完了までの一連の流れを作業目的により区分した工程又は期間の単位を表す医療ステージの種類及び実施時刻を、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻と、他の医療ステージの種類及び実施時刻とに基づいて判定する医療ステージ判定部と、
前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻の情報を、前記医療ステージ判定部により判定された医療ステージの種類及び実施時刻の情報とともに記録する記録部と、
を具備することを特徴とする医療安全システム。
【請求項2】
医療器具に係る情報である医療器具情報を取得する器具情報取得部を更に具備し、
前記医療行為判定部は、前記器具情報取得部により取得された医療器具情報と、前記位置及び動き量測定部により測定された医療スタッフの位置及び動き量とに基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻を判定することを特徴とする請求項1に記載の医療安全システム。
【請求項3】
少なくとも当該医療行為に係わる医療スタッフの心拍数及びその変化量を示す情報である生体情報を測定する生体情報測定部と、
前記生体情報測定部により測定された医療スタッフの生体情報に基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻を判定する医療行為判定部と、
当該医療行為の準備から当該医療行為の完了までの一連の流れを作業目的により区分した工程又は期間の単位を表す医療ステージの種類及び実施時刻を、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻と、他の医療ステージの種類及び実施時刻とに基づいて判定する医療ステージ判定部と、
前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻の情報を、前記医療ステージ判定部により判定された医療ステージの種類及び実施時刻の情報とともに記録する記録部と、
を具備することを特徴とする医療安全システム。
【請求項4】
医療器具に係る情報である医療器具情報を取得する器具情報取得部を更に具備し、
前記医療行為判定部は、前記器具情報取得部により取得された医療器具情報と、前記生体情報測定部により測定された医療スタッフの生体情報とに基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻とを判定することを特徴とする請求項3に記載の医療安全システム。
【請求項5】
少なくとも当該医療行為に係わる医療スタッフの位置及び動き量を測定する位置及び動き量測定部と、
少なくとも当該医療行為に係わる医療スタッフの心拍数及びその変化量を示す情報である生体情報を測定する生体情報測定部と、
前記位置及び動き量測定部により測定された医療スタッフの位置及び動き量と、前記生体情報測定部により測定された医療スタッフの生体情報とに基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻を判定する医療行為判定部と、
当該医療行為の準備から当該医療行為の完了までの一連の流れを作業目的により区分した工程又は期間の単位を表す医療ステージの種類及び実施時刻を、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻と、他の医療ステージの種類及び実施時刻とに基づいて判定する医療ステージ判定部と、
前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻の情報を、前記医療ステージ判定部により判定された医療ステージの種類及び実施時刻の情報とともに記録する記録部と、
を具備することを特徴とする医療安全システム。
【請求項6】
医療器具に係る情報である医療器具情報を取得する器具情報取得部を更に具備し、
前記医療行為判定部は、前記器具情報取得部により取得された医療器具情報と、前記位置及び動き量測定部により測定された医療スタッフの位置及び動き量と、前記生体情報測定部により測定された医療スタッフの生体情報とに基づいて、前記医療スタッフにより実施された医療行為の種類及び実施時刻とを判定することを特徴とする請求項5に記載の医療安全システム。
【請求項7】
前記医療ステージ判定部は、前記医療ステージの種類及び実施時刻を、前記医療行為判定部により判定された医療行為の種類及び実施時刻と、前記他の医療ステージの種類及び実施時刻と、計画された医療ステージの手順と、に基づいて判定することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち何れか一つに記載の医療安全システム。
【請求項8】
前記医療ステージ判定部が医療ステージの種類及び実施時刻を判定する為の判定規則を記憶する判定規則記憶部を更に具備することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち何れか一つに記載の医療安全システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−134418(P2009−134418A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308806(P2007−308806)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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