説明

医療用コネクタ

【課題】医療用管具の端部に設けられ、雄管部に他の医療用管具の雌管部を外嵌させて接続し、筒状体を回転して他の医療用管具の雌管部の外周面に形成された雄ネジに筒状体の雌ネジを螺合させることにより、他の医療用管具との接続を維持するようにロックする医療用コネクタにおいて、ロックの緩みを防止すると共に、操作性を向上させたものを提供する。
【解決手段】雄管部21の外周面に配置され、雄管部21に他の医療用管具200の雌管部を外嵌し雌ネジ32aを他の医療管具200の雄ネジに螺合させてロックした状態で、筒状体3の基端に接触し筒状体3の基端側への移動を阻止自在な阻止手段53を備える。これにより、外部からの衝撃によって、筒状体3が回転しながら基端側に移動しロックが緩むことを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用チューブや三方活栓等の管具の端部に設けられる医療用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用管具としての医療用チューブや三方活栓等の端部に設けられた医療用コネクタであって、他の医療用チューブや三方活栓等の端部に接続されるものが知られている。
【0003】
医療用コネクタは、他の医療用チューブ等の端部に形成された雌管部が外嵌され先端部がテーパ状に形成された雄管部と、雄管部を内挿し雄管部に対して回転自在に設けられた筒状体と、雄管部の外周面に設けられ筒状体が雄管部から抜け落ちることを防止するように径方向外方に張り出す張出部と、筒状体の内周面に形成された雌ネジとを備える。
【0004】
そして、医療用コネクタの雄管部に他の医療用チューブ等の雌管部を外嵌させて医療用コネクタに他の医療用チューブ等を接続し、筒状体を回転して他の医療用チューブ等の外周面に形成された雄ネジに筒状体の雌ネジを螺合させることにより、医療用コネクタと他の医療用チューブ等との接続を維持するようにロックする。
【0005】
しかしながら、従来の医療用コネクタでは、外部からの衝撃により筒状体が回転して雄管部の基端側に移動することによりロックが緩み、最悪の場合、医療用コネクタから他の医療用チューブ等が外れてしまう虞がある。このため、医療従事者は常にロックが緩んでいないかどうかの確認を行う必要があり、面倒であった。
【0006】
これを回避すべく、雄管部の外周面であって張出部よりも基端側に第2の雄ネジを形成し、張出部と第2の雄ネジとの間に周方向に延びる環状の溝部を設け、筒状体の内周面であって雌ネジよりも基端側に第2の雄ネジ部に螺合する第2の雌ネジを形成すると共に第2の雌ネジの先端側に位置させて径方向内方に突出する凸部を形成したものも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
これによれば、ロックする際には、筒状体を回転させて凸部が第2の雄ネジを乗り越えながら第2の雌ネジが第2の雄ネジに螺合しつつ先端側に移動する。そして、凸部が溝部に係合することにより、筒状体が基端側に移動することが阻止される。筒状体は基端側に移動できなければ、第2の雌ネジと第2の雄ネジとの螺合により回転することができない。従って、上記の如く構成することにより、筒状体によるロックの緩みを防止することができる。
【0008】
しかしながら、この構成では、凸部が溝部に嵌合する前に第2の雌ネジを乗り越える必要があるため、凸部と第2の雌ネジとの間で摩擦力が発生し、筒状体を回し難く操作性が悪いという問題があった。
【特許文献1】実用新案登録第3108825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、ロックの緩みを防止すると共に、操作性を向上させた医療用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、医療用管具の端部に設けられ、他の医療用管具の端部に接続される医療用コネクタであって、前記他の医療用管具の端部に形成された雌管部が外嵌され先端部がテーパ状に形成された雄管部と、該雄管部を内挿し該雄管部に対して回転自在に設けられた筒状体と、該雄管部の外周面に設けられ該筒状体が該雄管部から抜け落ちることを防止するように径方向外方に張り出す張出部とを備え、該筒状体の内周面に雌ネジを形成し、前記他の医療用管具の雌管部が前記雄管部に外嵌した状態で、前記筒状体を回転して前記雌ネジを前記雌管部の外周面に形成された雄ネジと螺合させることにより、前記医療用管具と前記他の医療用管具との接続を維持するようにロックするものにおいて、前記雄管部の外周面に配置され、前記雄管部に前記他の医療用管具の雌管部を外嵌し前記雌ネジを前記雄ネジに螺合させてロックした状態で、前記筒状体の基端に接触し該筒状体の基端側への移動を阻止自在な阻止手段を備えることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、前記阻止手段により前記筒状体の基端側への移動を阻止しているため、前記筒状体が回転しながら基端側に移動しロックが緩むことを防止することができる。
【0012】
また、前記阻止手段により前記筒状体の基端側への移動を阻止しているため、従来品のように凸部と第2の雄ネジと溝部とを設ける必要がない。このため、従来品のように凸部と第2の雄ネジとの間で摩擦力が発生することも無く、容易に前記筒状体を回転することができ、操作性を向上させることができる。
【0013】
また、前記阻止手段は、前記筒状体の基端を先端側に押圧するように接触自在に構成され、前記阻止手段の押圧により前記阻止手段と前記張出部とで前記筒状体を挟み込んで前記筒状体の回転を抑制することが好ましい。
【0014】
外部からの強い衝撃により前記筒状体が回転してしまうと、前記筒状体が前記雄管部の基端側に移動しなくても、前記雌ネジが前記他の医療用管具の雄ネジを互いに離隔する方向に押圧し、前記雄管部と前記雌管部との嵌合が緩む虞もある。
【0015】
この場合、上記の如く構成すれば、前記筒状体の回転を抑制し、前記雄管部と前記他の医療用管具の雌管部との嵌合が緩むことを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を図1から図5を参照して説明する。図1は本発明の医療用コネクタの第1実施形態を一部断面で示す正面図、図2は第1実施形態の医療用コネクタを示す平面図、図3は本発明の医療用コネクタの第2実施形態を示す平面図、図4は第2実施形態の医療用コネクタを一部断面で示す正面図、図5は第2実施形態の医療用コネクタの阻止手段を示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、本発明の第1実施形態の医療用コネクタ10は、三方活栓2の一端に設けられたものである。三方活栓2は、T字状に配列され他の三方活栓や医療チューブの端部に接続される3つの管部21,22,23を備える。
【0018】
管部21は雄管部で他の医療用管具200の端部に設けられた雌管部が外嵌されるものであり、その先端部は基端から先端に向かって先細となるテーパ状に形成されている。また、管部21の外周面には径方向外方に張り出す環状の張出部21aが形成されている。また、管部21を内挿する筒状体3が回転自在に設けられている。張出部21aを有する管部21と筒状体3とで実施形態の医療用コネクタ1が構成される。
【0019】
筒状体3の内周面は、管部21の基端側から先端側に向かって、小径部31と大径部32とに形成されている。小径部31の先端側には、径方向内方に突出する環状の凸条31a(最小径部)が設けられている。凸条31aの内縁の径は、管部21の外周よりも大きく、且つ張出部21aの外縁の径よりも小さく形成されている。この凸条31aが張出部21aと当接することにより、筒状体3が管部21の先端から抜けないように係止される。大径部32には雌ネジ32aが形成されている。また、他の2つの管部22,23は、雌管部であり、その外周面には雄ネジ22a,23aが形成されている。
【0020】
各管部21,22,23が連結する部分には、各管部21,22,23の軸方向に対して直交する方向に延びて各管部21,22,23に連通する筒部24が形成されている。図2に示すように、筒部24には、上端部に平面視でT字状のレバー41を有する円柱部材4が液密に且つ回動自在に内挿されている。円柱部材4には、T字状のレバー41に合わせてT字状の連通孔4aが形成されている。レバー41を回動操作することにより連通孔4aも回動し、これにより薬液等を流す流路として管部21,22,23を選択することができる。
【0021】
また、図1に示すように、円柱部材4の下端部は、筒部24の下方から露出しており、この部分に回転自在にはめ込まれたリング状部材51が設けられている。リング状部材51には、筒部24の外周面で管部22の反対側に沿うように片部52が一体に設けられている。片部52は、リング状部材51の回転方向に沿って管部21を上下間に挟みこむように形成された二股部53を備えている。
【0022】
二股部53は、リング状部材51と一体の片部52を回動させることにより、管部21を挟みこんだ状態と管部21から抜け出した状態とを選択的に切り換えることができる。二股部53は、管部21を挟みこんだ状態では、筒状体3の基端縁に接触して筒状体3を管部21の先端側に押圧し、筒状体3の基端側への移動を阻止すると共に、筒状体3を二股部53と張出部21aとで挟みこむようにして筒状体3の回転を阻止する。管部21から抜け出した状態では、二股部53は筒状体3の基端縁と接触せず、筒状体3の基端側への移動を許容する。第1実施形態においては、二股部53が阻止手段に相当する。
【0023】
次に、医療用コネクタ10に他の医療用管具200を接続する方法について説明する。
【0024】
まず、他の医療用管具200の端部に形成された雌管部を管部21に外嵌させる。そして、筒状体3を回転して、他の医療用管具200の雌管部の外周面に形成された雄ネジ(図示省略)に筒状体3の雌ネジ32aを螺合させる。そして、片部52を回動させて二股部53により管部21を挟みこんだ状態とし、二股部53を筒状体3の基端縁に接触させて、筒状体3の基端側への移動を阻止すると共に先端側に押圧し、筒状体3を二股部53と張出部21aとで挟持して筒状体3の回転を抑制する。
【0025】
管部21から他の医療用管具200を取り外す際には、片部52を逆方向に回動させて、二股部53が管部21から抜け出した状態とし、二股部53による筒状体3の押圧を解除する。そして、筒状体3を逆方向に回転させて基端側に移動させ、雌ネジ32aと他の医療用管具200の雄ネジ(図示省略)との螺合を解除する。そして、管部21から他の医療用管具200の雌管部を取り外して、医療用コネクタ10と他の医療用管具200との接続を解除する。
【0026】
次に、図3〜5を参照して、第2実施形態の医療用コネクタ11について説明する。
【0027】
第2実施形態の医療用コネクタ11は、第1実施形態の医療用コネクタ11と同様に三方活栓の端部に設けられたものである。医療用コネクタ11は、阻止手段として、管部21の軸線に直交する方向にスライドさせて管部21を挟持するように差し込まれる板状のU字型部材54(図5)を備える。
【0028】
U字型部材54は、肉厚の厚い肉厚部54aと肉厚の薄い肉薄部54bとを有する。そして、管部21が肉厚部54aで挟まれた状態では、筒状体3が肉厚部54aと管部21の張出部21aとで挟持されてロックされ、管部21が肉薄部54bで挟まれた状態では、筒状体3が管部21の基端側に移動可能で且つ回転自在となる。
【0029】
また、管部21の外周面にU字型部材54のスライドを案内するガイドレール21bを設け、U字型部材54にガイドレール21bを受け入れる溝部54cを設けて、U字型部材54をガイドレール21bに沿うようにスライドさせる。また、ガイドレール21bにより、U字型部材54が管部21に沿って基端側へ移動することを阻止している。図3〜5においては、第1実施形態の医療用コネクタ10と同一のものについては同一の符号を付している。
【0030】
医療用コネクタ11に他の医療用管具200を接続する方法は、第1実施形態の場合とほとんど同一であり、筒状体3の雌ネジ32aを他の医療用管具200の雄ネジ(図示省略)に螺合させた後、U字型部材54をガイドレール21bに沿ってスライドさせ、肉厚部54aにより筒状体3の基端側への移動を阻止し先端側に押圧する点のみ異なっている。
【0031】
第2実施形態の管部21から他の医療用管具200を取り外す際には、U字型部材54をガイドレール21bに沿って逆方向にスライドさせ、肉薄部54bにより管部21を挟んだ状態とすればよい。
【0032】
両実施形態の医療用コネクタ10,11によれば、阻止手段としての、二股部53またはU字型部材54と管部21の張出部21aとで筒状体3を挟み込んで回転を阻止するため、二股部53またはU字型部材54が筒状体3を押圧する状態であるか否かにより、筒状体3が回り止めされているか否かを容易に確認することができる。また、従来品のように筒状体3の内周面に第2の雄ネジを乗り越えて溝部に嵌合する凸部を形成する必要がないため、操作性を損うことなく確実に筒状体3の回り止めをすることができる。
【0033】
なお、両実施形態の医療用コネクタは、三方活栓の端部に設けられたものを用いて説明したが、これに限られず、例えば、医療用コネクタは医療用チューブの端部に設けても本発明の効果を得ることができる。また、第2実施形態のガイドレール21bは、単にU字型部材54が管部21に沿って基端側へ移動することを阻止するだけのものに置き換えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の医療用コネクタの第1実施形態を一部断面で示す正面図。
【図2】第1実施形態の医療用コネクタを示す平面図。
【図3】本発明の医療用コネクタの第2実施形態を示す平面図。
【図4】第2実施形態の医療用コネクタを一部断面で示す正面図。
【図5】第2実施形態の医療用コネクタの阻止手段を示す斜視図。
【符号の説明】
【0035】
10,11…医療用コネクタ、 2…三方活栓(医療用管具)、 21…雄管部、 21a…張出部、 21b…ガイドレール、 22…管部、 23…管部、 3…筒状体、 31…小径部、 31a…凸条、 32…大径部、 32a…雌ネジ、 4…円柱部材、 41…レバー、 51…リング状部材、 52…片部、 53…二股部(阻止手段)、 54…U字型部材(阻止手段)、 54a…肉厚部、 肉薄部54b、 54c…溝部、 200…他の医療用管具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用管具の端部に設けられ、他の医療用管具の端部に接続される医療用コネクタであって、前記他の医療用管具の端部に形成された雌管部が外嵌され先端部がテーパ状に形成された雄管部と、該雄管部を内挿し該雄管部に対して回転自在に設けられた筒状体と、該雄管部の外周面に設けられ該筒状体が該雄管部から抜け落ちることを防止するように径方向外方に張り出す張出部とを備え、該筒状体の内周面に雌ネジを形成し、前記他の医療用管具の雌管部が前記雄管部に外嵌した状態で、前記筒状体を回転して前記雌ネジを前記雌管部の外周面に形成された雄ネジと螺合させることにより、前記医療用管具と前記他の医療用管具との接続を維持するようにロックするものにおいて、
前記雄管部の外周面に配置され、前記雄管部に前記他の医療用管具の雌管部を外嵌し前記雌ネジを前記雄ネジに螺合させてロックした状態で、前記筒状体の基端に接触し該筒状体の基端側への移動を阻止自在な阻止手段を備えることを特徴とする医療用コネクタ。
【請求項2】
前記阻止手段は、前記筒状体の基端を先端側に押圧するように接触自在に構成され、
前記阻止手段の押圧により前記阻止手段と前記張出部とで前記筒状体を挟み込んで前記筒状体の回転を抑制することを特徴とする請求項1記載の医療用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−39276(P2009−39276A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206801(P2007−206801)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】