説明

医療用コネクタ

【課題】液体通路を閉鎖する方向にバルブ部材を付勢する弾性部材を、ハウジング内に配設しつつ、ハウジングの外径を小さくできる医療用コネクタを提供する。
【解決手段】医療用コネクタ100は、一方端にオスルアー213を有し、他方端にメスルアー230を有するハウジング200と、液体通路を開閉するバルブ部材300と、弾性復帰力によって液体通路を閉鎖する方向にバルブ部材300を付勢する弾性部材400とを備える。弾性部材400は、シリコンゴムなどで筒状に形成され、バルブ部材300とハウジング200との間に配設され、かつ、軸方向に対して斜めの方向に延びる相互に平行な複数の溝401を外周に形成してある。弾性部材400は、溝401を備えることで軸回りにねじれながら縮むので、縮んだときに径方向内外に向かう変形が少なく、弾性部材400を収容する空間を狭くでき、ハウジングの外径を小さくして、コネクタを小型化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用コネクタに関し、詳しくは、一方端にオスルアーを有し、他方端にメスルアーを有する医療用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用コネクタとして、一方端にオスルアーを有し、他方端にメスルアーを有したハウジングと、バルブ部材と、弾性部材とを備え、ハウジングのオスルアーにメスルアーを接続したときに液体通路が開放し、ハウジングのオスルアーからメスルアーを外したときに、液体通路をバルブ部材で閉鎖する医療用コネクタが知られている。
【0003】
上記医療用コネクタにおいて、弾性部材は、液体通路を閉鎖する方向にバルブ部材を付勢する部品であり、例えば特許文献1に開示される医療用コネクタは、ハウジングの外周に嵌合するリング部と、バルブ部材の外周に嵌合するリング部とを、一対の弾性帯状部で連結させたシリコンゴム製の弾性部材を用い、一対の弾性帯状部を伸び方向に弾性変形させて液体通路を開放させ、一対の弾性帯状部が縮んで液体通路を閉鎖する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−500112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように、ハウジングの外周とバルブ部材の端部とを弾性部材で連結させ、弾性部材を伸び方向に弾性変形させて液体通路を開放させる構造の場合、コネクタの軸方向の長さが長くなり、また、部品の形状及び組み付けが複雑になるという問題があった。
ここで、弾性部材を、ハウジング内部に配設し、この弾性部材を縮ませることで液体通路が開放し、弾性部材が弾性復帰力によって伸びて液体通路を閉鎖する構造とすれば、弾性部材をハウジングやバルブ部材に固定することなく、オスルアーを閉鎖する方向にバルブ部材を付勢することができ、コネクタの軸方向の長さを短くでき、また、部品の形状及び組み付けを簡易化することが可能となる。
【0006】
しかし、シリコンゴムなどの弾性部材をハウジングの軸方向に押し潰すように弾性変形させる場合、同時にハウジングの径方向内外にも変形し、この径方向の変形を許容する空間をハウジング内に確保しようとすると、ハウジングの外径が大きくなってしまうという問題があった。
そこで、本発明の目的は、液体通路を閉鎖する方向にバルブ部材を付勢する弾性部材を、ハウジング内に配設しつつ、ハウジングの外径を小さくできる医療用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、本発明に係る医療用コネクタは、一方端にオスルアーを有し、他方端にメスルアーを有するハウジングと、前記ハウジングに内設されるバルブ部材であって、前記オスルアーの内部空間に嵌合し、前記オスルアーの内部空間を経由する液体通路を閉鎖する第1位置と、前記オスルアーから離間して前記液体通路を開放する第2位置との間で移動可能なバルブ部材と、弾性材料によって筒状に形成され、前記バルブ部材と前記ハウジングとの間に配設され、前記バルブ部材を前記オスルアーの内部空間に嵌合する方向に付勢する弾性部材であって、前記バルブ部材の移動に伴って軸回りにねじれながら軸方向に伸縮する弾性部材と、を備える。
【0008】
ここで、前記弾性部材が、軸方向に対して斜めに延びる複数の溝を有する構成とすることができる。
また、前記ハウジングが、前記メスルアーに連続する内部空間を有する筒状部を、前記ハウジングの外周壁で囲まれる空間内に有し、前記筒状部の外周と前記ハウジングの外周壁の内周とで挟まれる環状空間内に、前記筒状の弾性部材を配設することができる。
【0009】
また、前記バルブ部材の前記メスルアー側の端部を前記筒状部の内部空間に嵌挿し、前記筒状部の内部空間内に一端が開放される前記バルブ部材の内部通路を介して、前記オスルアーと前記メスルアーとを連通させる構成であって、前記バルブ部材と前記筒状部との間をシールする第1シール部材と、前記バルブ部材と前記オスルアーとの間をシールする第2シール部材とを有することができる。
【0010】
また、前記バルブ部材の前記オスルアー側の先端が複数片に分割され、前記複数片が、前記第1位置において前記オスルアーの内部空間に嵌合し、該嵌合状態において径方向の内側に向けて弾性変形して前記バルブ部材の内部空間を閉鎖し、前記バルブ部材が前記第2位置に移動したときに前記複数片それぞれが径方向の外側に向けて広がって、前記バルブ部材の内部空間を開放するように構成できる。
【0011】
また、前記バルブ部材の周壁に、前記バルブ部材の内部通路と前記オスルアーの内部空間とを連通させる孔が形成され、前記第1位置において、前記バルブ部材の前記オスルアー側の先端が前記オスルアーの内部空間に嵌合して、前記オスルアーの内部空間を閉鎖し、前記第2位置において、前記バルブ部材の前記オスルアー側の先端と前記オスルアーとの間に隙間が形成されて、前記バルブ部材の内部通路、前記バルブ部材の孔、及び、前記バルブ部材の外周とオスルアー内周とで挟まれる環状空間を経由する液体通路を開放するように構成できる。
【0012】
更に、前記バルブ部材が、前記メスルアー側から前記オスルアー側に向けて延びる少なくとも1個のストラットを備え、前記オスルアーに接続したメスルアーが前記ストラットを押圧することで、前記弾性部材を弾性変形させながら前記バルブ部材が前記第1位置から第2位置にまで移動する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る医療用コネクタによると、弾性部材は、バルブ部材の移動に伴って軸回りにねじれながら軸方向に伸縮するので、弾性部材が軸方向に押し潰される場合に、径方向内外に向けて変形することを抑制でき、弾性部材を収容するハウジング内の空間を狭くしてハウジングの径を小さくでき、医療用コネクタを小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る医療用コネクタの実施形態を示す側面断面図である。
【図2】実施形態の医療用コネクタを構成するハウジングを示す図であり、(A)は上面図、(B)は側面断面図である。
【図3】実施形態の医療用コネクタを構成するバルブ部材を示す図であり、(A)は上面図、(B)は側面断面図、(C)は側面図である。
【図4】実施形態の医療用コネクタを構成する弾性部材を示す図であり、(A)は上面図、(C)は側面部分断面図である。
【図5】実施形態の医療用コネクタを構成する弾性部材の伸縮特性を説明するための図である。
【図6】実施形態の医療用コネクタのオスルアーにメス型ルアーコネクタを接続した状態を示す側面断面図である。
【図7】実施形態の医療用コネクタを構成するバルブ部材の別の例を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る医療用コネクタの実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態の医療用コネクタ100の側面断面図である。
医療用コネクタ100は、一方端にオスルアー213を有し、他方端にメスルアー230を有するハウジング200と、液体通路を開閉するバルブ部材300と、液体通路を閉鎖する方向にバルブ部材300を付勢する弾性部材400とを備える。
そして、医療用コネクタ100のオスルアー213にメスルアーを接続すると内部の液体通路が開放され、メスルアー230とオスルアー213との間を液体が流れ、オスルアー213からメスルアーを外すと内部の液体通路が閉鎖され、メスルアー230とオスルアー213との間における液体の流れを阻止する。
【0016】
ハウジング200は、図2(A),(B)に示すように、ロックリング付のオス型ルアーコネクタ210を有するオス部品220と、メスルアー230を有するメス部品240との2部品で構成され、オス部品220とメス部品240とを溶着等で接合することで、バルブ部材300及び弾性部材400を収容するハウジング200が形成される。
ハウジング200(オス部品220及びメス部品240)は、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリスチレン,ポリカーボネートなどの合成樹脂で形成される。
【0017】
ロックリング付のオス型ルアーコネクタ210は、内周壁にメスねじ211を形成した有底筒状のロックリング212と、ロックリング212の底壁212aから立設するオスルアー213とを備える。
オスルアー213は両端開放の筒状に形成され、かつ、オスルアー213の内部空間213aは、外部に開放する先端側が傾斜部213cを介して徐々に狭められてシート部213bを形成し、このシート部213bにバルブ部材300の先端が嵌合することで、オスルアー213の内部空間213aが閉鎖され、オスルアー213の内部空間213aを経由する液体の流れを阻止する。
【0018】
また、オス部品220は、ロックリング212に連続してハウジング200の外周を形成するスカート部221を備え、このスカート部221の内周にメス部品240の開放端を接合することで、オス部品220とメス部品240とが一体化してハウジング200を形成する。
オスルアー213の根元周囲の底壁212aには、オスルアー213の中心軸を挟んで両側にストラット用貫通孔214,214が開口し、この貫通孔214,214を介して、ロックリング212とオスルアー213とで挟まれる環状の空間H1と、オスルアー213の基端側が開放する空間H2とが連通する。
【0019】
一方、メス部品240は、メスルアー230に連続してオスルアー213側に延びる内部空間241aを有する筒状部241を備えると共に、環状空間H3を介して筒状部241の外周を囲むように、ハウジング外壁を形成する外周部243を備え、外周部243は、オス部品220のスカート部221の内側に嵌合する。
これによってオス部品220のオス型ルアーコネクタ210とメス部品240のメスルアー230とを連通させる液体通路が、ハウジング200内に形成される。
【0020】
図3(A),(B),(C)は、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリスチレン,ポリカーボネートなどの合成樹脂で形成され、ハウジング200に内設されるバルブ部材300を示す。
バルブ部材300は、図3(B),(C)の上側をオス型ルアーコネクタ210側とし、図3(B),(C)の下側をメスルアー230側として、ハウジング200内に組み付けられる。
【0021】
バルブ部材300は、筒状のバルブ本体部301、バルブ本体部301の外周に形成したフランジ部302、フランジ部302のオスルアー213側の端面からオスルアー213側に向けて立設する一対のストラット303,303、及び、フランジ部302の周縁からメスルアー230側に延びる筒状部304を一体的に備える。
尚、バルブ部材300が、ストラット303を1本だけ或いは3本以上備えることができ、ストラット303の本数及び位置に合わせて、ストラット用貫通孔214がハウジング200側に形成される。
【0022】
更に、フランジ部302よりも下側(メスルアー230側)のバルブ本体部301の外周に第1オーリング(第1シール部材)311を嵌合し、フランジ部302よりも上側(オスルアー213側)のバルブ本体部301の外周に第2オーリング(第2シール部材)312を嵌合してある。
第1及び第2のオーリング(Oリング)311,312は、シリコンゴムなどの弾性材料によって環状に形成され、バルブ部材300の外周に凹陥形成した溝305に嵌合する。
【0023】
そして、バルブ本体部301のオス部品220側の端部を、オスルアー213の内部空間213aに挿置したときに、バルブ本体部301の外周とオスルアー213の内周との隙間G1を、第2オーリング(第2シール部材)312が塞ぐことで、隙間G1及び貫通孔214,214を介して液体がハウジング200の外部に漏れ出ることを阻止する。
また、バルブ本体部301のメス部品240側の端部は、メス部品240の筒状部241内に挿置され、バルブ本体部301の外周と筒状部241内周との隙間G2を、第1オーリング(第1シール部材)311が塞ぐことで、隙間G2及び貫通孔214,214を介して液体がハウジング200の外部に漏れ出ることを阻止する。
【0024】
バルブ本体部301のオス部品220側の先端は、中心軸を含む平面で2つに分割することで、半円柱状の先端シール部306,306を有し、これら先端シール部306,306は、除荷状態で相互に径方向外側に変位して離れ、相互に近づく方向の力(径方向の中心に向かう力)を加えると弾性変形して相互に密着し、バルブ本体部301の内部空間301aの先端側を閉塞し、係る密着状態では、オスルアー213のシート部213bに嵌合する径の円柱状になる。
尚、本実施形態では、バルブ本体部301のオス部品220(オスルアー213)側の先端を2つに分割したが、複数片に分割するものであればよく、分割数を3以上に設定することができる。
【0025】
また、一対のストラット303,303は、オスルアー213側のストラット用貫通孔214,214に位置合わせして、バルブ本体部301を挟んで両側に設けてあり、バルブ本体部301の軸と平行に、オスルアー213側に向けて延びる。
そして、ハウジング200にバルブ部材300を組み付けるときに、図1に示すように、ストラット303,303を、オスルアー213側のストラット用貫通孔214,214に対してメスルアー230側から挿通させ、ストラット303,303の先端303aが、ロックリング212の内周とオスルアー213の外周とで囲まれる環状空間H1内に位置させるようにする。
【0026】
バルブ部材300の筒状部304は、ハウジング200のメス部品240に設けた環状空間H3に差し入れることが可能な内外径に形成してあり、弾性部材400は、シリコンゴムなどの弾性材料によって、前記環状空間H3に挿置可能な内外径の筒状に形成してある。
弾性部材400は、図4(A),(B)に示すように、軸方向に対して斜めの方向に延びる相互に平行な複数の溝401を外周に形成してあり、係る溝401を備えることで、弾性部材400を軸方向に押し潰す力が加わったときに、軸回りにねじれながら縮み、除荷したときに、縮んだときのねじれを解放しながら伸びて元の長さに戻るようにしてある。
【0027】
例えば、図4(B)に示した方向に溝401を形成した場合であって、図4(B)の弾性部材400の上側から押し潰し荷重を加えると、図5に示すように、各溝401の幅を狭めるように弾性部材400が潰れることで、押し潰し荷重を加える面側から見たときに、弾性部材400は時計回りにねじれながら潰れ、除荷すると、逆に反時計回りにねじれながら伸びることになる。
ハウジング200に対して、バルブ部材300及び弾性部材400を組み付けた状態では、図1に示すように、弾性部材400の上端縁に、バルブ部材300の筒状部304の開放端縁が当接して、弾性部材400を軸方向に圧縮し、これによって発生する弾性部材400の弾性復帰力(軸方向に伸びようとする力)が、バルブ部材300をオスルアー213の内部空間213aに嵌合させる方向に付勢する力として作用する。
【0028】
そして、この付勢力によって、バルブ本体部301の先端シール部306,306が相互に密着した状態でシート部213bに嵌合する状態を保持し、このときにシート部213bの内周にバルブ本体部301の先端外周が密着し、更に、先端シール部306,306が相互に密着しているので、オスルアー213の内部空間213aを介した液体の流れは阻止される。
ここで、例えば、点滴バッグに一端を接続したチューブの他端に接続したオスルアーを、医療用コネクタ100のメスルアー230に接続しても、バルブ本体部301の先端がシート部213bに嵌合する閉鎖状態を保持し、医療用コネクタ100を介して点滴バッグ内の液体が漏れ出ることはない。
【0029】
一方、図6に示すように、オス型ルアーコネクタ210に、例えばカテーテルの一端に接続したメス型ルアーコネクタ500を接続する場合に、メス型ルアーコネクタ500を回転させてロックリング212に螺合させる動作によって、メス型ルアーコネクタ500の先端が、環状空間H1内で底壁212aに向けて徐々に変位することになる。
このとき、メス型ルアーコネクタ500の先端がストラット303,303の先端303aに当接することで、メス型ルアーコネクタ500の動きに連動してバルブ部材300が、メスルアー230に近づく方向に変位し、バルブ部材の筒状部304とハウジング200との間に挟まれる弾性部材400は、軸方向に押圧されて軸方向に縮むことになる。
【0030】
バルブ本体部301の先端シール部306,306には、径方向外側に向かう弾性復帰力が作用しているので、バルブ部材300がメスルアー230に近づく方向に変位することで、先端シール部306,306がシート部213bから抜けて傾斜部213cに至り、相互に離間できる空間が生じると、先端シール部306,306が相互に離間し、先端シール部306,306の間に隙間が発生し、バルブ本体部301の内部空間301aが、シール部306,306の間の隙間を介してオスルアー213の内部空間213aと連通することになる。
【0031】
上記のように、バルブ部材300がオスルアー213から離間した第2位置に位置するときに、バルブ本体部301のメス部品240側の端部は、メス部品240の筒状部241内に嵌合した状態で軸方向に変位するので、メス型ルアーコネクタ500、オスルアー213、バルブ本体部301、筒状部241及びメスルアー230からなる液体通路が連通し、点滴バッグ内の液体(薬液)は、医療用コネクタ100を介してカテーテル側に流れ込むことになる。
【0032】
一方、メス型ルアーコネクタ500をオス型ルアーコネクタ210から外す動作を行うと、バルブ部材300は、弾性部材400の弾性復帰力によってオス型ルアーコネクタ210に向けて付勢されているので、メス型ルアーコネクタ500の先端が底壁212aから離れる動作に連動してオス型ルアーコネクタ210に近づく方向に変位する。
そして、バルブ本体部301の先端シール部306,306が、オスルアー213の内部空間213aの傾斜部213cに押し付けられるようになると、先端シール部306,306を径方向内側に弾性変形させる力が発生し、傾斜部213c内を進むことで先端シール部306,306が徐々に近づき、傾斜部213cの最も狭くなった部分で先端シール部306,306が相互に密着する。
【0033】
先端シール部306,306が相互に密着すると、シート部213bに嵌合可能な径の円柱状になって、バルブ本体部301の先端がシート部213bに嵌合する。
このようにして、バルブ本体部301の先端がシート部213bに嵌合するバルブ部材300の第1位置において、シート部213bの内周にバルブ本体部301の先端外周が密着し、更に、先端シール部306,306が相互に密着しているので、バルブ本体部301の内部空間301a及びオスルアー213の内部空間213aが閉鎖され、オスルアー213の内部空間213aを介した液体の流れが阻止され、点滴バッグ内の液体が医療用コネクタ100から外部に漏れ出ることを阻止する。
【0034】
以上のように、本実施形態の医療用コネクタ100は、オス型ルアーコネクタ210に対するメス型ルアーコネクタ500の脱着に応じて、バルブ部材300がハウジング200内の液体通路を閉鎖する第1位置と、ハウジング200内の液体通路を開放する第2位置との間を移動するコネクタである。
メス型ルアーコネクタ500をオス型ルアーコネクタ210に接続したときに(バルブ部材300の第1位置において)、弾性部材400は、軸方向に押し潰された状態になるが、弾性部材400の外周に斜めの溝401を形成してあることで、弾性部材400はねじれながら潰れるので、弾性部材400の径方向内外に向かう変形を抑制できる。
弾性部材400を、斜めの溝401を備えない、一定の厚さの直管状に形成すると、弾性部材400はねじれることなく押し潰されることになり、この場合、弾性部材400には軸方向にうねりを生じ、このうねった部分は、径方向の内側或いは外側に突出することになる。
【0035】
弾性部材400を、メス部品240の筒状部241の外周と外周部243の内周とで挟まれる環状空間H3内に設置するから、弾性部材400が押し潰されたときに軸方向に沿ってうねりが生じると、このうねった部分(径方向の外側或いは内側に突出する部分)が、筒状部241の外周壁や外周部243の内周壁に押し当たることがある。
この場合、メス型ルアーコネクタ500を外し、弾性部材400が伸びるときに、うねった部分が筒状部241の外周壁や外周部243の内周壁に引っ掛かることで、弾性部材400が元の形状に戻らず、これによって、バルブ部材300をオスルアー213に向けて押し上げる付勢力が不足し、バルブ本体部301の先端シール部306,306が相互に密着した状態でシート部213bに嵌合する閉鎖状態に復帰させることができなくなり、液漏れを発生させる可能性がある。
【0036】
上記の閉鎖不良(液漏れ)の発生を防止するには、環状空間H3を拡大して、弾性部材400が軸方向に沿ってうねっても、筒状部241の外周壁や外周部243の内周壁に引っ掛かることがないようにすればよい。しかしながら、環状空間H3を拡大することは、ハウジング200(メス部品240)の外径を大きくすることになり、医療用コネクタ100が大型化する。
これに対し、本実施形態の弾性部材400は、外周に斜めの溝401を形成してあり、これによって、ねじれながら潰れ、弾性部材400の径方向内外に向かう変形が抑制されるから、環状空間H3を拡大しなくても、筒状部241の外周壁や外周部243の内周壁に変形部位が引っ掛かることを抑制して、液体漏れの発生を未然に防止できる。換言すれば、外周に斜めの溝401を形成した弾性部材400を用いることで、小型でかつ安定的に液体通路を閉鎖できる医療用コネクタ100を提供できる。
【0037】
尚、上記実施形態では、弾性部材400がねじれながら潰れるように、弾性部材400の外周に斜めの溝401を形成したが、内外周の双方又は内周側にのみ溝を形成してもよい。
更に、弾性部材400の周壁中に、軸に対して斜めの方向に沿って延びる孔を複数平行に設けることで、弾性部材400がねじれながら潰れるようにしたり、環状のフレーム部材を軸方向の両端にそれぞれ配置し、弾性材料で棒状に形成した部材を、この環状のフレーム部材の間に、軸方向に対して斜めになるように掛け渡して、一対のフレーム部材間を複数の棒状弾性部材で連結させることで、弾性部材400がねじれながら潰れるようにしたりすることができる。
即ち、弾性部材400の周壁を、軸に対して斜めの方向に沿って延びる剛性が低い部分(空間を含む)と、この剛性が低い部分と平行な剛性が相対的に高い部分との繰り返しで構成することで、軸回りにねじれながら潰れるようにできる。
【0038】
また、上記実施形態では、メス型ルアーコネクタ500をオス型ルアーコネクタ210に接続したときに、バルブ本体部301の先端に設けた先端シール部306,306が相互に離間して、オスルアー213の内部空間213aと、バルブ本体部301の内部空間301aとが連通する構成としたが、特表2009−500112号公報に開示される医療用コネクタのように、バルブ本体部301の先端を、オスルアー213の内部空間213aを閉塞するためのバルブとして用いる一方、バルブ本体部301の周壁に開口させた孔を介して、オスルアー213の内部空間213aと、バルブ本体部301の内部空間301aとを連通させる構成とすることができる。
【0039】
具体的には、図7に示すように、バルブ本体部301の先端をシート部213bに嵌合する円柱状に形成する一方、バルブ本体部301の周壁に、バルブ本体部301の内部空間301aとオスルアー213の内部空間213aとを連通させる孔315を形成する。
そして、メス型ルアーコネクタ500をオス型ルアーコネクタ210から外した状態では、バルブ本体部301の先端の円柱状部316が、オスルアー213のシート部213bに嵌合する第1位置に移動することで、オスルアー213の内部空間213aを閉鎖し、オスルアー213の内部空間213aを介した液体の流れが阻止される。
【0040】
一方、メス型ルアーコネクタ500をオス型ルアーコネクタ210に取り付けた状態(図7の状態)では、バルブ部材300がメスルアー230に近づく方向に変位して第1位置に位置するようになることで、バルブ本体部301の先端の円柱状部316が、オスルアー213のシート部213bから抜け、バルブ本体部301の先端の円柱状部316とシート部213bとの間に隙間が形成される。これにより、バルブ本体部301の内部空間301a、バルブ本体部301の孔315、及び、バルブ本体部301の外周とオスルアー213内周とで挟まれる環状空間を経由する液体通路が開放される。
【0041】
また、上記実施形態では、バルブ部材300のストラット303,303が、バルブ部材300の軸回りの回転を阻止する回り止めとして機能し、弾性部材400がねじれながら伸縮するときに、バルブ部材300は連動して回転せず、弾性部材400はバルブ部材300に対して摺接しながらねじれるが、バルブ部材300が弾性部材400のねじれに連動して回転しながら軸方向前後に移動するように構成することが可能である。
バルブ部材300が回転しながら軸方向前後に移動するようにするための構造としては、例えば、ストラット用貫通孔214,214の周方向の長さを、バルブ部材300の回転を許容できる程度の長さに設定することで、弾性部材400のねじれに伴うバルブ部材300の回転が、ストラット303と貫通孔214,214との係合によって制限されない構造を採用することができる。
【0042】
また、バルブ部材300の軸方向前後の動きに伴って積極的にバルブ部材300を軸回りに回転させるようにでき、例えば、ストラット303を斜めに立ち上げることで、ストラット303とストラット用貫通孔214,214との係合部分で、回転方向に作用する分力を生じさせるようにすることができる。
バルブ部材300が回転しながら軸方向前後に移動する構造とすれば、本実施形態のように、先端シール部306,306の離接によって液体通路の開閉を行う構造の医療用コネクタにおいては、先端シール部306,306が、傾斜部213cなどに引っ掛かることを抑制でき、より滑らかな開閉動作を行わせること可能となる。
【符号の説明】
【0043】
100…医療用コネクタ、200…ハウジング、210…オス型ルアーコネクタ、213…オスルアー、214…ストラット用貫通孔、220…オス部品、230…メスルアー、240…メス部品、303…ストラット、300…バルブ部材、306…先端シール部、311…第1オーリング(第1シール部材)、312…第2オーリング(第2シール部材)、315…孔、400…弾性部材、401…溝、500…メス型ルアーコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端にオスルアーを有し、他方端にメスルアーを有するハウジングと、
前記ハウジングに内設されるバルブ部材であって、前記オスルアーの内部空間に嵌合し、前記オスルアーの内部空間を経由する液体通路を閉鎖する第1位置と、前記オスルアーから離間して前記液体通路を開放する第2位置との間で移動可能なバルブ部材と、
弾性材料によって筒状に形成され、前記バルブ部材と前記ハウジングとの間に配設され、前記バルブ部材を前記オスルアーの内部空間に嵌合する方向に付勢する弾性部材であって、前記バルブ部材の移動に伴って軸回りにねじれながら軸方向に伸縮する弾性部材と、
を備えた医療用コネクタ。
【請求項2】
前記弾性部材が、軸方向に対して斜めに延びる複数の溝を有してなる請求項1記載の医療用コネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングが、前記メスルアーに連続する内部空間を有する筒状部を、前記ハウジングの外周壁で囲まれる空間内に有し、
前記筒状部の外周と前記ハウジングの外周壁の内周とで挟まれる環状空間内に、前記筒状の弾性部材を配設した請求項1又は2記載の医療用コネクタ。
【請求項4】
前記バルブ部材の前記メスルアー側の端部を前記筒状部の内部空間に嵌挿し、前記筒状部の内部空間内に一端が開放される前記バルブ部材の内部通路を介して、前記オスルアーと前記メスルアーとを連通させる構成であって、
前記バルブ部材と前記筒状部との間をシールする第1シール部材と、前記バルブ部材と前記オスルアーとの間をシールする第2シール部材とを有する請求項3記載の医療用コネクタ。
【請求項5】
前記バルブ部材の前記オスルアー側の先端が複数片に分割され、前記複数片が、前記第1位置において前記オスルアーの内部空間に嵌合し、該嵌合状態において径方向の内側に向けて弾性変形して前記バルブ部材の内部空間を閉鎖し、前記バルブ部材が前記第2位置に移動したときに前記複数片それぞれが径方向の外側に向けて広がって、前記バルブ部材の内部空間を開放する請求項4記載の医療用コネクタ。
【請求項6】
前記バルブ部材の周壁に、前記バルブ部材の内部通路と前記オスルアーの内部空間とを連通させる孔が形成され、
前記第1位置において、前記バルブ部材の前記オスルアー側の先端が前記オスルアーの内部空間に嵌合して、前記オスルアーの内部空間を閉鎖し、
前記第2位置において、前記バルブ部材の前記オスルアー側の先端と前記オスルアーとの間に隙間が形成されて、前記バルブ部材の内部通路、前記バルブ部材の孔、及び、前記バルブ部材の外周とオスルアー内周とで挟まれる環状空間を経由する液体通路を開放する請求項4記載の医療用コネクタ。
【請求項7】
前記バルブ部材が、前記メスルアー側から前記オスルアー側に向けて延びる少なくとも1個のストラットを備え、
前記オスルアーに接続したメスルアーが前記ストラットを押圧することで、前記弾性部材を弾性変形させながら前記バルブ部材が前記第1位置から第2位置にまで移動する請求項1〜6のいずれか1つに記載の医療用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−223278(P2012−223278A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92040(P2011−92040)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(392035721)株式会社パルメディカル (6)
【Fターム(参考)】