医療用ドレーンチューブ

【課題】体内留置部先端側からも十分な体液排出が可能であり、かつ治癒後のドレーンチューブ抜去時に患者に苦痛を与えることなく、容易に抜去できる医療用ドレーンチューブを提供する。
【解決手段】
後端部から先端部まで略同一の内外径を有する体外筒状部と、該体外筒状部の先端部に接着若しくは一体的に付設され複数の側孔を有する体内留置部と、で構成されたドレーンチューブであって、前記体内留置部は長軸方向に三等分してなる先端部、中央部及び基端部を有し、前記体内留置部における側孔の総面積が先端部>中央部>基端部であることを特徴とする医療用ドレーンチューブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ドレーンチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
ドレーンチューブは、外科用医療用具として体液の排出用に多用されており、様々な内外径、断面構造、形状を持った製品が市販されている。従来のドレーンチューブは、図2に示したように、体液の貯留部位に挿入した場合はドレーンチューブの先端部分から、あるいはドレーンチューブに側孔のある場合はドレーンチューブの先端及び、側孔部分から体液がドレーンチューブ内に流入し、排出される構造になっている。これらのドレーンチューブの使用に伴う問題点は、患者の創部が治癒する前に、体組織がドレーンチューブの側孔内へ向かって成長し、側孔が塞がれるだけでなく、ドレーンチューブ抜去時に体組織が引き裂かれる結果になり、患者に大きな痛みを与える点にある。
【0003】
これらの対策として、ドレーンチューブの外側に複数の溝を設け、その溝によって体液の排出を行うもの(例えば、特許文献1参照)が提案されている。これは、図3に示したように、留置時に体外に出る部分については円形のストレートチューブとし、体内に留置される部分については、上記のような溝を設けた構造になっている。従って、ドレーンチューブの長手方向の外面に溝が設けられている構造により、患者の傷の治癒後には痛みを伴うことなく抜去することができる。
【0004】
しかしながら、図2、3いずれのドレーンチューブも体内留置部からの排液の吸引量は、チューブ基端部から先端部にかけて一定ではなく、基端部から多く、先端部から十分な体液の吸引ができないことがあった。
【0005】
【特許文献1】特公平2−17185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、体内留置部先端側からも十分な体液排出が可能であり、かつ治癒後のドレーンチューブ抜去時に患者に苦痛を与えることなく、容易に抜去できる医療用ドレーンチューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)後端部から先端部まで略同一の内外径を有する体外筒状部と、該体外筒状部の先端部に接着若しくは一体的に付設され複数の側孔を有する体内留置部と、で構成されたドレーンチューブであって、前記体内留置部は長軸方向に三等分してなる先端部、中央部、基端部を有し、前記体内留置部における側孔の総面積が先端部>中央部>基端部であることを特徴とする医療用ドレーンチューブ。
(2)前記体内留置部が先端に向かって縮径していることを特徴とする(1)に記載の医療用ドレーンチューブ。
(3)側孔が楕円形もしくは長円形をなしていることを特徴とする(1)または(2)に記載の医療用ドレーンチューブ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、体内留置部先端側からも十分な体液排出が可能であり、かつ治癒後のドレーンチューブ抜去時に患者に苦痛を与えることなく、容易に抜去できる医療用ドレーンチューブを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、共通する構成要素には同一符号を付し、以下の説明において詳細な説明を適宜省略する。
【0010】
図1に示すとおり、本発明の医療用ドレーンチューブ(1)(以下、単に「ドレーンチューブ」ということがある)は、後端部から先端部まで略同一の内外径を有する体外筒状部(2)と、上記体外筒状部(2)の先端部に接着若しくは一体的に付設され複数の側孔(7)を有する体内留置部(3)とで構成されている。体内留置部(3)の接続部分の外径は、体外筒状部(2)のストレートチューブの外径に等しく、3mm以上、20mm以下が好ましい。更に吸引性能、抜去抵抗の軽減などの実用性を考慮すると、5mm以上、12mm以下が更に好ましい。内径は吸引性能に支障のないこと、チューブが肉薄になり、所望の留置位置にチューブが配置できるようにコシがなくならない程度であればよく、特に限定するものではないが、2mm以上、19mm以下が好ましい。更に実用性を考慮すると、4mm以上、11mm以下が更に好ましい。
【0011】
体内留置部(3)は体内に留置する先端方向に向かって縮径していることが好ましい。 体内留置部(3)の形状を上記のようにすることで、チューブ抜去時の抜去抵抗を軽減 することができる。
【0012】
本発明のドレーンチューブは、上記体内留置部(3)における側孔の総面積が先端部(4)>中央部(5)>基端部(6)であることを特徴とする。
ここで、図1(a)に示すように、側孔の大きさは全て同じとし、上記体内留置部(3)の3等分された部分の側孔(7)の数量を先端部(4)>中央部(5)>基端部(6)としてもいいし、図1(b)に示すように、側孔(7)の数量は3等分された部分で同じとし、側孔(7)の大きさを先端部(4)>中央部(5)>基端部(6)としてもかまわない。又、上記2つの側孔の作成方法を併せたものでもかまわない。いずれにしても、体内留置部(3)における側孔(7)の総面積が先端部(4)>中央部(5)>基端部(6)の条件を満たしていれば良く、こうすることで従来のドレーンチューブと違って先端部に設けられた側孔からも十分なドレナージを行うことができる。
【0013】
側孔(7)の形状は円形、楕円形もしくは長円形であることが好ましい。その場合は、チューブ長手方向と長径が同一になるように設けることが好ましい。側孔(7)の直径は体内留置部(3)内に収まり、使用時に体内留置部(3)の引張強度に耐え得る強度を有し、排液を確実に吸引できる大きさであれば限定するものではないが、0.5mm以上、2mm以下が好ましい。側孔(7)の形状は、側孔(7)からの吸引量を確保するため、楕円形や長円形であっても良い。この側孔(7)は体内留置部(3)の内腔(8)に通じており、体内留置部(3)の内腔から体外筒状部(2)の内腔へ連通し、本発明のドレーンチューブ(1)全体を貫通している。本発明のドレーンチューブの長さは特に限定されないが、体内留置部(3)、体外筒状部(2)ともに100mm以上、400mm以下が好ましい。更に実用性を考慮すると、100mm以上、200mm以下が好ましい。
【0014】
本発明のドレーンチューブ(1)の材質は、軟質塩化ビニル樹脂やシリコーンゴムなど、医療用として一般に使用されているものでよく、特に限定されるものではない。ドレーンチューブの断面形状は円形のほか、チューブ強度を増すために、楕円形や長円形であっても良い。
【0015】
体内留置部(3)と体外筒状部(2)を別々に形成して、接着、組立しても良いが、一体成形とする方が、内外面とも接着部における段差を無くすことができ、また、コスト的にも有利である。しかしながら、体内留置部(3)のテーパー形状について、シリコーンゴムは伸縮性に優れているため、テーパー形状の押出成形は困難となる。よって、テーパー形状とストレート形状を圧縮一体成形とするか、テーパー形状に圧縮成形したチューブと、ストレート押出成形してチューブを接着、組立してもよい。
【0016】
側孔(7)の加工方法としては、チューブの押出成形後に側孔数が少なければ、位置を確認し個々にポンチでくり抜いても良いが、側孔数が多い場合は、専用の側孔加工機で加工を施す方がコスト的に有利で工数削減となり好ましい。更に、ドレーンチューブ(1)には、使用目的に応じて、X線不透過材料による造影ラインを設けたり、体外留置部(2)の末端に吸引器などと接続するためのコネクターを設けること、あるいは体内穿刺用の尖刀針を取り外し可能に付設しても良い。
【0017】
次に、本発明のドレーンチューブ(1)の使用方法について述べる。患者の体内に留置されたドレーンチューブ(1)は体外筒状部(2)の末端に接続された吸引器の吸引圧により、体内に貯留した体液などがチューブ先端と側孔(7)からチューブ内に吸引され、体外に排出される。本発明のドレーンチューブを用いれば、チューブ留置時は体内留置部(3)のチューブ先端までほぼ同等の吸引量で排液を吸引することが可能であり、チューブ抜去時はチューブがテーパー形状であることより、患者に苦痛を与えることなく、抜去を容易に行うことができる。
【実施例】
【0018】
次に、本発明の医療用ドレーンチューブと従来の側孔仕様のドレーンチューブとの下記項目における比較試験を実施した。結果を表1に示す。
【0019】
(実施例1〜7)
外径6.4mm、内径4.2mm、長さ400mmのドレーンチューブを用い、先端 部、中央部及び基端部における側孔面積の比が表1に示す数値になるように側孔を作成 した。1つの側孔の直径は1.25mmとした。
図4に示すように、先端部、中央部及び基端部の側孔部分が3つの各容器内に収まる ように配置し、3つの容器を貫くようにドレーンチューブを配置した。容器同士はチュ ーブで接続され、容器同士の間隔は150mmとした。容器とチューブの隙間も接着剤 にて埋め、容器に水を入れた際に漏れのないようにした。ドレーンチューブに吸引機を 接続し、150cmH2Oの圧力にて各容器に入れた150mLの水を吸引した際に、 先端部、中央部及び基端部の3つの側孔部からの吸引量の違いを測定した。3つの各容 器の吸引量を相対比較するため、基端部の吸引量が50mLとなった時の他の容器の吸 引量を記録した。
【0020】
(比較例)
外径6.4mm、内径4.2mm、長さ400mmに切断した図2に示すような側孔 仕様(先端部、中央部及び基端部の側孔の形状大きさ同等)のドレーンチューブを用い 、先端部、中央部及び基端部における側孔面積の比が表1に示す数値(1:1:1)に なるように側孔を作成した。
1つの側孔の直径は1.25mmとした。3つの側孔部分が3つの各容器内に収まる ように配置した。3つの容器を貫くようにのドレーンチューブを配置した。容器同士は チューブで接続され、容器とチューブの隙間も接着剤にて埋め、容器に水を入れた際に 漏れのないようにした。ドレーンチューブに吸引機を接続し、150cmH2Oの圧力 にて各容器に入れた150mLの水を吸引した際に、先端部、中央部及び基端部の3つ の側孔部からの吸引量の違いを測定した。3つの各容器の吸引量を相対比較するため、 基端部の吸引量が50mLとなった時の他の容器の吸引量を記録した。
【0021】
【表1】

【0022】
表1の結果から明らかなように、本発明のドレーンチューブを用いた実施例1〜7は、体内留置部の基端部の側孔からだけでなく、先端部、中央部の側孔からも十分な排液の排出が可能であり、先端部の側孔面積が基端部の側孔面積の10倍となる実施例7においてほぼ均一に吸引できることを確認した。
一方、従来のドレーンチューブである比較例においては、均一な割合で側孔が設けられているため、体内留置部の先端部、中央部からの吸引量は基端部より吸引量が少なく、特に先端部からの吸引量は基端部の60%程度であった。
上記模擬実験と実際の治療現場における使用例とは必ずしも同じ条件ではないが、治療現場では一度ドレーンチューブの先端側の側孔が詰まると従来の側孔を有するドレーンチューブでは吸引力が元々基端部側より弱いため、十分な排液ができず浸出液がそのまま残ることにより治癒が遅くなり、ひいては入院期間の延長をきたす場合がある。この点、本発明のドレーンチューブを用いれば先端側からも十分な排液が期待でき、入院期間の短縮が図れる可能性があるものといえる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の医療用ドレーンチューブの一実施例となる斜視図で、先端部、中央部、基端部において(a)は数量の異なる実施例、(b)は側孔の大きさの異なる実施例である。
【図2】従来の側孔付きドレーンチューブを示す図で、(a)は先端正面図、(b)は側面図である。
【図3】従来の溝付きドレーンチューブを示す図で、(a)は先端正面図、(b)は側面図である。
【図4】実施例にて行った試験方法(実施例7)を示す概略図である。
【符号の説明】
【0024】
1 医療用ドレーンチューブ
2 体外筒状部
3 体内留置部
4 先端部
5 中央部
6 基端部
7 側孔
8 内腔
11 側孔付きドレーンチューブ
12 溝付きドレーンチューブ
13 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端部から先端部まで略同一の内外径を有する体外筒状部と、該体外筒状部の先端部に接着若しくは一体的に付設され複数の側孔を有する体内留置部と、で構成されたドレーンチューブであって、前記体内留置部は長軸方向に三等分してなる先端部、中央部、基端部を有し、前記体内留置部における側孔の総面積が先端部>中央部>基端部であることを特徴とする医療用ドレーンチューブ。
【請求項2】
前記体内留置部が先端に向かって縮径している請求項1に記載の医療用ドレーンチューブ。
【請求項3】
側孔の形状が円形、楕円形もしくは長円形をなしている請求項1または2に記載の医療用ドレーンチューブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−5282(P2010−5282A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170730(P2008−170730)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,911)
【Fターム(参考)】