説明

医療用器材

【課題】材料の強度低下を伴わず、かつ耐久性に優れ、吸水性、親水性、接着性、印刷性、帯電防止性等が付与された改質された高分子材料を提供する。
【解決手段】改質された高分子材料は、高分子材料を、(1)溶剤または含浸処理する工程、(2)活性化処理する工程、(3)触媒または開始剤の存在下に高分子溶液で処理する工程、(4)単量体をグラフト化する工程、および(5)洗浄する工程の順に処理することを特徴とする改質方法により得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料の強度を低下させずに、吸水性、接着性、塗装性、印刷性、帯電性を向上させた高分子材料と用途、その高分子材料の改質方法及びそれらを含む複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン材料は、軽さ、強さ、耐薬品性等に優れており、フィルム、不織布、自動車部品・電気機器部品などの成形品に広く使用されている。しかし、ポリオレフィン材料はその化学構造に起因して極性が低く、また結晶性が高いために、親水性に乏しく、かつ化学的改質を受け難いという特性がある。これらの材料の親水性、接着性、印刷性、帯電性を改善するために、従来からオゾン処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、高圧放電処理、コロナ放電処理、サンドブラスト処理、火炎処理等の各種表面活性化処理を施すことが試みられてきた。しかし、これらの表面処理を行っても、ポリオレフィン材料が水を自重の数倍吸収するほどの吸水性を付与するまでには至らない。また、ポリオレフィン材料は親水性、接着性、塗装性、印刷性についても実用的な改良はなされなかった。このためポリプロピレンなどの高分子材料を改質するため種々の試みがなされてきた。例えば、オゾン酸化処理を施すことによって、メッキ性、塗装性、接着性、印刷性を改良する方法が検討された(特許文献1参照)。しかし、オゾン処理のみで所望の表面特性を付与しようとすると、オゾン処理を過酷にする必要があり、被処理物の強度低下が著しくなるため実用に供さなくなってしまうという問題がある。また、オゾン酸化処理のみでは吸水性を十分に付与することはできない。
【0003】
また、ポリオレフィン繊維の不織布にエステル結合を有するビニルモノマーをグラフト重合させた後、このエステル結合を加水分解させて酸基を生成させることで親水性やイオン交換能をもたせる方法も提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、開示されている方法によりポリオレフィン繊維やフィルムにビニルモノマーのグラフト化を行っても親水性を付与するのに十分な量をグラフトさせることは容易ではないという問題がある。またグラフト重合後にさらに加水分解する必要もあり、手間がかかるという問題がある。
一方、ポリオレフィン繊維からなる不織布を過硫酸塩の存在下に親水性樹脂で処理することにより親水性を付与する方法が提案された(特許文献3参照)。この方法では不織布については実用的レベルまでの親水性を付与することができたが、親水性の耐久力は必ずしも十分とはいえないものであった。また不織布以外のフィルムや成型品を処理した場合には十分な親水性を付与し、あるいは接着剤による接着性、塗装性、印刷性、帯電性を改良することができなかった。例えば、洗剤で加熱洗浄すると、親水性は失われる。
【0004】
不織布をポリビニルアルコールで被覆して親水性を付与する方法も知られている(特許文献4参照)。しかし得られる被覆物の親水性は高いものの、単なる被覆であるため親水性の耐久力が充分ではないという問題がある。また例えば電池用セパレータとして用いられた場合、被覆物単独では電池槽中で収縮を起こし、電池セパレータ用としては短絡の問題を生じるという欠点がある。
さらに、ポリオレフィン以外の難加工性高分子、例えば、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタンについても、上記のこれまでの方法では、親水性、接着性、塗装性、印刷性、帯電性についての実用的な改良はなされなかった。
【0005】
また本発明者は、先に高分子材料の表面を活性化処理した後、アクリルアミドなどのモノマーをグラフト重合させ、あるいはさらにグラフト化した化合物のアミド基をホフマン転移させることにより、特に染色性を改良した高分子材料の表面改質方法を提案した(特許文献5参照)。
【0006】
この方法を基本として、親水性を付与した高分子材料を製造することができるが、この方法では処理する高分子材料の種類に限界があった。
さらに本発明者は、高分子材料を、(1)活性化処理する工程および(2)親水性高分子で処理する工程の順に処理すること。または、高分子材料を、(1)活性化処理する工程(2)親水性高分子で処理する工程および(3)単量体のグラフト化工程の順に処理すること、または、高分子材料を、(1)含浸処理工程、(2)活性化処理する工程、(3)親水性高分子で処理する工程および(4)単量体グラフト化工程の組合せを特徴とする高分子材料の改質方法を提案した(特許文献6参照))。
これらの方法によれば、優れた親水性を付与した高分子材料を安価で容易に製造することができる。しかし、安定剤や酸化防止剤等の添加剤を含んだ高分子材料の成形物を処理して強力な耐久性のある親水性を求める際に、これら添加剤が活性化処理の効果を低減させる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平3−103448号公報
【特許文献2】特開平11−7937号公報
【特許文献3】特開平11−67183号公報
【特許文献4】特開平1−248460号公報
【特許文献5】特開平8−109228号公報
【特許文献6】特開2002−201297号公報
【0008】
以上のような技術的要請は、ポリオレフィンのみならず、それよりも表面活性に優れた他の高分子材料に関しても存在する。高分子本来の表面性質を改質して所望の表面性質を付与することが求められる場合がある。たとえば、ポリプロピレン材料、ポリエチレン材料、超高分子量ポリエチレン材料、ポリエステル材料、ポリカーボネート材料、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミドなどの難加工性材料については、他の材料に対して、接着剤による接着または溶剤による接着を可能にできるものの、接着強度には限界があった。また、これらの材料を水性塗料または油性塗料で塗装した場合、その塗装膜の剥離テスト(クロスカットテスト)で、全く剥離しないという結果(満点100/100)を得るには材料の成分の影響を受ける場合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記欠点を克服することを目的とし、材料の強度低下を伴わず、かつ耐久性に優れた高分子材料の表面改質方法と、その改質法で改質された高分子材料を提供することにある。特に、難加工性高分子材料について、耐久性のある親水性、接着性、塗装性、帯電性、を付与する事を目的とする。また、本発明は、このように改質した材料からなる医療・衛生・化粧用品、すなわち、使い捨て生理用品、ガーゼ、消毒用貼付け布、各種清潔用途・洗顔パック、ナプキン等のための吸水材料、農業・乾燥地緑地化材料等の保水材料、微生物培地材料、合成紙、濾過材、拭き取り清掃用材料、歯列矯正用ブラケット、医療用機器材料(輸液・点滴用接続器具、カニューラ類、人工臓器、関節、各種の管状、糸状、板状の成型品)、耐久性のある親水性、接着性、塗装性、帯電性を付与された高分子材料および高分子材料との複合材料等を提供することを目的とする。接着性の付与とは、接着剤を用いた接着、接着剤を用いないで溶剤を用いた接着、粘着テープの接着を可能とする事である。
(印刷性の改良)元来、表面改質の困難なポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂などに対して、従来の表面改質処理を行っても、耐久性のある印刷を達成する事ができなかった。耐久性とは、クロスカットセロファンテープ剥離テストで100/100が得られ、さらに、40℃の温水に1週間浸漬する耐水性試験で印刷がはがれない事である。本発明は水性インク、油性インク、水性塗料、油性塗料、UVインクによって、耐久性のある印刷を可能とするように、表面改質された高分子材料を作る事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上述の目的を達成するために種々の高分子材料について表面改質方法を鋭意検討した結果、溶媒処理、含浸処理、活性化処理、高分子溶液による処理、ビニル単量体のグラフト化、洗浄処理を組み合わせることが有効であることを見いだして本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、高分子材料を、(1)活性化処理する工程、(2)触媒または開始剤の存在下に高分子溶液で処理する工程、(3)単量体のグラフト化工程および(4)洗浄する工程の順に処理することを特徴とする改質方法により得られた改質された接着性と塗装性と印刷性と帯電性のある高分子材料と改質方法に関するものである
【0012】
または、本発明は、高分子材料を、(1)活性化処理する工程、(2)触媒または開始剤の存在下に高分子溶液で処理する工程および(3)洗浄する工程の順に処理することを特徴とする改質方法により得られた改質された接着性と塗装性のある高分子材料と改質方法に関するものである。
【0013】
または、本発明は、高分子材料を、(1)溶剤処理工程、(2)活性化処理する工程、(3)触媒または開始剤の存在下に高分子溶液で処理する工程および(4)洗浄する工程の順に処理することを特徴とする改質方法により得られた改質された接着性と塗装性と印刷性と帯電性のある高分子材料と改質方法に関するものである。
【0014】
または、本発明は、高分子材料を、(1)該高分子材料に対して含浸性のある化合物に接触させ、表面から1000ミクロン以内の含浸量が0.1〜40重量%(対高分子材料)の範囲で含浸させ、かつ材料の形状を実質的に変化させない含浸処理工程、(2)該高分子材料表面にカルボニル基を導入する活性化処理工程、(3)触媒、開始剤、加熱、紫外線照射の少なくともひとつの存在下に単量体をグラフト化する工程および(4)洗浄する工程により、この順に処理することを特徴とする改質方法により得られた改質された接着性と塗装性と印刷性と帯電性のある高分子材料と改質方法に関するものである
【0015】
または、本発明は、高分子材料を、(1)溶剤処理工程、(2)活性化処理する工程、(3)触媒または開始剤の存在下に高分子溶液で処理する工程、(4)単量体のグラフト化工程および(5)洗浄する工程の順に処理することを特徴とする改質方法により得られた改質された接着性と塗装性と印刷性と帯電性のある高分子材料と改質方法に関するものである。印刷性のある高分子材料とは、水性インク、油性インク、および紫外線硬化型インク(UVインク)による印刷性が改良されて、クロスカット剥離試験で印刷インクが剥がれにくい良好な結果を示す材料である。
【0016】
または、本発明は高分子材料からなるサンプル管の内壁を、(1)該高分子材料に対して含浸性のある化合物に接触させ、表面から1000ミクロン以内の含浸量が0.1〜40重量%(対高分子材料)の範囲で含浸させ、かつ材料の形状を実質的に変化させない含浸処理工程、(2)該高分子材料表面にカルボニル基を導入する活性化処理工程、(3)触媒、開始剤、加熱、紫外線照射の少なくともひとつの存在下に単量体をグラフト化する工程および(4)洗浄する工程により、この順に処理することを特徴とする改質方法により得られた改質された高分子材料からなるサンプル管に関するものである。
【0017】
または、本発明は、かかる改質方法により得られた親水性をもった高分子材料、接着剤または溶剤よる接着、および粘着テープの貼り付けを可能とした高分子材料、塗料による塗装性、帯電性付与を可能とした高分子材料に関する。
【0018】
または、本発明は、かかる改質方法により得られた親水性をもった高分子材料、接着剤または溶剤よる接着、および粘着テープの貼り付けを可能とした高分子材料、塗料による塗装性、帯電性付与を可能とした高分子材料に関する。
【0019】
特に、ポリオレフィン、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリアラミド樹脂に関する。高分子材料保水材料、微生物培地用材料、合成紙、濾過材、拭き取り清掃用布、使い捨て医療・衛生・化粧用品(オムツ、生理用品、包帯、ガーゼ、ナプキン、テープ、その他の医療・衛生用品、各種清潔用途・洗顔パック等の化粧用品等)、接着性改良材料、歯列矯正用ブラケット、医療用機器材料(輸液・点滴用接続用具、カニューラ、カテーテル、人工臓器、管、糸、板状の成型品)、各種シール材料(メカニカルシール、ガスケット、パッキン用材料等)等に関するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の工程で処理した高分子材料は、一般に接着剤で接着しないといわれる材料に対して、材料が破壊するか、接着剤層が破壊するほどに強力に接着可能となる。また、粘着テープの着かなかったシリコン樹脂製品を改質する事によって、シリコン樹脂製品に対して粘着テープの付着を可能とする。未処理の状態では油性および水性塗料で塗装不可能である高分子材料でも、本発明の工程で処理した高分子材料は塗装可能となり、塗装の耐久性に優れ、塗装膜の剥離試験には満点となる。塗装可能となった高分子材料は、水性または油性インクによる印刷が可能となり、紫外線硬化インクによる印刷と紫外線照射による硬化・固定を可能とする。
特に、これまで困難であったポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド、芳香族ポリアミド、フッ素樹脂、特に、エチレンーテトラフルオロエチレン共重合体や、ポリふっ化ビニリデン、ポリふっ化ビニルなどの材料は、クロスカットテストで100/100となるような強力な水性ペイントの塗装が可能となる。さらに、これらの材料を改質すれば、水性または油性インクによる印刷、UVインク印刷、および各種接着材剤による接着、溶剤接着、粘着テープの貼り付けが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、実施例を基に本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0022】
用いた材料、試薬、試験法について説明する。
(高分子材料)
本発明において用いられ高分子材料とは、高分子の単独材料、混合材料もしくはこれらの改質物、またはこれらの高分子材料とガラス、金属、炭素材料等との混合または複合により得られた材料に含まれる高分子材料を意味する。合成高分子としては、熱可塑性高分子および熱硬化性高分子のいずれも用いることができる。合成法としては各種方法が例示されるが、本発明の高分子材料には、これらのいずれの方法により得られる合成高分子も含まれる。
例えば、(1)付加重合体:オレフィン、オレフィン以外のビニル化合物、ビニリデン化合物およびその他の炭素−炭素二重結合を有する化合物からなる群から選ばれる単量体の単独重合体または共重合体、またはこれらの単独重合体もしくは共重合体の混合物あるいは改質物、フッ素樹脂:ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンープロピレン共重合体、パーフルオロエチレンプロペン共重合体、エチレンーテトラフルオロエチレン共重合体、ポリふっ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチン、エチレンークロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレンーパーフルオロジオキソール共重合体、ポリふっ化ビニルが挙げられる。
【0023】
ポリオレフィン以外の高分子材料としては、オレフィン以外のビニル化合物、ビニリデン化合物およびその他の炭素−炭素二重結合を有する化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の単量体、例えば、塩化ビニル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のエステル、酢酸ビニル、ビニルエーテル類、ビニルカルバゾール、アクリロニトリル、等の単独重合体または共重合体が挙げられる。オレフィン以外のビニリデン化合物とはビニリデン基を含む化合物であり、塩化ビニリデン、ふっ化ビニリデン、イソブチレン等の単独重合体または共重合体が挙げられる。アクリロニトリル共重合体(アクリル系繊維およびそれらの成形物、ABS樹脂等)、ブタジエンを含む共重合体(合成ゴム)等が挙げられる。
【0024】
上記オレフィン以外のビニル化合物とは、ビニル基を有する化合物であり、例えば、塩化ビニル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のエステル、酢酸ビニル、ビニルエーテル類、ビニルカルバゾール、アクリロニトリル等が挙げられる。オレフィン以外のビニリデン化合物とはビニリデン基を含む化合物であり、塩化ビニリデン、ふっ化ビニリデン、イソブチレン等が挙げられる。
オレフィン、ビニル化合物、ビニリデン化合物以外の炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、無水マレイン酸、無水ピロメリット酸、1ーブテン酸、四ふっ化エチレン、三ふっ化塩化エチレン等および二重結合を1個以上含む化合物、例えばブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0025】
(1)重縮合体:ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートや脂肪族および全芳香族ポリエステルを含む)、ポリカーボネート、ポリベンゾエート、ポリイミド、ポリアミド(ナイロンを始めとする脂肪族ポリアミドおよび芳香族ポリアミドを含む)など、またはこれらの重合体の混合物あるいは改質物、(2)付加縮合体:フェノール樹脂(カイノール:商品名、日本カイノール(株)製を含む)、尿素樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂など、またはこれらの重合体の混合物あるいは改質物、(3)重付加生成物:ポリウレタン、ポリ尿素など、またはこれらの重合体の混合物あるいは改質物、(4)開環重合体:シクロプロパン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ラクトン、ラクタムなどの単独重合体または共重合体、またはこれらの単独重合体もしくは共重合体の混合物あるいは改質物、(5)環化重合体:ジビニル化合物(例えば、1,4−ペンタジエン)やジイン化合物(例えば、1,6−ヘプタジイン)などの単独重合体または共重合体、またはこれらの単独重合体もしくは共重合体の混合物あるいは改質物、(6)異性化重合体:例えばエチレンとイソブテンの交互共重合体など、(7)電解重合体:ピロール、アニリン、アセチレンなどの単独重合体または共重合体、またはこれらの単独重合体もしくは共重合体の混合物あるいは改質物、(8)ケイ素樹脂、シリコーン樹脂、(9)アルデヒドやケトンのポリマー、(10)ポリエーテルスルホン、(11)ポリペプチド、などが挙げられる。天然高分子としては、セルロース、タンパク質、多糖類等の単独物または混合物やこれらの改質物等が挙げられる。
【0026】
本発明においては、特に前記の付加重合体が好ましく用いられる。付加重合体を構成する単量体は特に限定されないが、オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、オクテン−1等の任意のα−オレフィンの単独重合体もしくはこれらの2種以上の共重合体、またはこれらの単独重合体および/または共重合体の混合物を適適宜使用することができる。
【0027】
好ましい付加重合体は、これらの単量体の単独重合体もしくは2種以上の単量体の共重合体またはこれらの重合体の混合物を適宜使用することができる。特に好ましくは、ポリエチレン、エチレンと他のα−オレフィンの共重合体、ポリプロピレン、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体である。共重合体としてはランダム共重合体、ブロック共重合体を含む。
本発明においては、特に処理の困難といわれるポリオレフィンに親水性等を付与するのに有効であるため、高分子材料としてポリオレフィンが好ましく用いられる。
【0028】
上記以外の高分子化合物としては、例えば、ケイ素樹脂、シリコン樹脂、ポリアセタール、ポリフェノール、ポリフェニレンエーテル、ポリアルキルパラオキシベンゾエート、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンズオキサゾール、繊維ではアセテート、再生セルロース繊維(レーヨン、キュプラ、ポリノジック等)、ビニロン、ビニルアルコールと塩化ビニルの共重合体の繊維(ポリクラール、商品名:コーデラン等)、などを例示することができる。さらに、炭素繊維や木綿、麻その他の植物繊維、絹、羊毛等の動物性繊維等の天然繊維も使用できる。また、これらの高分子材料の複数を混合または複合したものも好ましく使用できる。
本発明において用いられる高分子材料は上記したものに限られず、すべての高分子化合物に適用することができる。
【0029】
高分子材料は、酸化防止剤、安定剤、造核剤、難燃剤、充填剤、発泡剤、帯電防止剤、その他の高分子材料に通常添加される各種添加剤を含有しても差し支えない。一般には、酸化防止剤等の安定剤は表面活性化の障害となるので、その存在が好ましくないとされており、無添加材料を用意するか、安定剤を除去する等の対策が望ましいとされている。これに対して、本発明は、高分子材料が安定剤等の添加剤を含有している場合にも効果的な表面改質を達成できるものである。したがって、通常の製法で得られた成形体を、高分子材料としてそのまま使用できる。
【0030】
本発明において、改質処理を施す高分子材料の成形物の形態には特に制限はない。例えば、繊維、織物、不織布、布、板、フィルム、シート、管、棒、中空容器、三方コック形状体、箱、発泡体、積層体のいずれの形態でも使用することできる。特に、吸水性改善の観点からは繊維、織物、不織布、布、フィルム、シートなどの成形物は容易に処理できる。特に、フィルターや合成紙用に製造された多孔性のフィルムおよびシートは、耐久性のある有効な親水化処理ができる。また、あらかじめ所定の形状に成形した部材・部品用の成形体に本発明の処理方法を施すことにより、従来使用できなかった高分子材料を使用可能にした。各種プラスチック製品(ボルト、ナット、チェーン、電気器具の部品、キャップ、カバー等)などについても、本発明によって、親水化させることにより、濡れ性、接着性、塗装性が向上し、また帯電性が軽減される。
繊維や繊維製品としては、各種繊維やこれらの織物や不織布などが好ましく使用できる。繊維の形態は単一成分からなる繊維、複数種の繊維の混合物、混紡繊維、複合繊維(芯鞘型、並列型、多芯型、多島海型、放射型等)のいずれであってもよい。
【0031】
高分子材料の表面改質を行うに当たり、高分子材料の表面を適当な液体で洗浄して不純物を除去しておくことが好ましい。例えば、ポリオレフィン、各種シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどはアルコールまたはトルエンで洗浄することが好ましく行われる。アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリウレタンなどはアルコールで洗浄するのが好ましい。レーヨン、キュプラなどのセルロース系材料は洗剤で洗浄後、アルコールで洗浄するのが好ましい。
【0032】
(溶剤処理工程)
溶剤処理とは、高分子または高分子を含む材料を、その高分子に対する溶解性の低い溶剤に、溶解しない程度の条件で浸漬することである。高分子を室温〜80℃ 程度の温度で5秒〜60分程度、溶剤に浸漬して、高分子が変形せずに、溶剤を表面のみに、その重量の0.1〜10%程度吸収した状態とする。溶剤につけた 後、材料の表面のみを素早く乾燥させることによって実現できる。高分子が不織布や繊維の場合は、必ずしも行わなくても良いが、フィルムや板のように表面積 の少ない形状物、あるいは酸化防止剤その他の添加剤を多く含むような材料である場合は効果的である。ポリプロピレンの場合は、室温〜50℃の溶剤処理用液体(トルエン、キシレン、デカリン、テトラリン、シクロヘキサン等)に10秒〜30分間浸漬してから、表面を乾かして終了する。なお、すぐに次の活性化処理を 行うことが好ましい。ポリエチレンの溶剤処理用液体はデカリン、テトラリン、キシレン、α−クロルナフタレン等が有効である。その他、各高分子には、その 高分子を溶かさないように溶剤と温度を組み合わせて行う。例えば、繊維の太さが直径5〜10μm程度の円形のポリオレフィン不織布の場合、室温の トルエンに10秒間浸漬して、絞り、遠心脱水機にかけてトルエンを振り切り、扇風機の風を当てて、表面のトルエンが見掛け上蒸発した状態になったら終了す る。ポリオレフィンのフィルム、板および成型品の場合は、50℃の溶剤処理用液体に30秒〜30分間程度浸漬してから、上述の程度に絞り、乾燥させる。これ らの場合の重量増加は1から5%程度である。
【0033】
(含浸処理)
含浸処理とは、高分子材料に親和性のある化合物をそのままかまたは溶液もしくは分散液として用い、高分子材料とその軟化点以下の温度で接触させて、該化合物を表面から含浸させる方法である。このとき、高分子材料は実質的に変形しない。この目的で用いられる化合物を含浸剤と呼ぶ。この含浸処理工程は含浸剤が高分子化合物の非結晶領域にしみ込んで、材料内部に隙間をつくる工程と言える。次に施す活性化処理、グラフト化処理等を容易にする作用がある。含浸された含浸剤は、後続の処理工程後の洗浄によって除去される。
高分子材料に対する含浸剤の含浸量の好ましい範囲を重量増加率で示すと、高分子材料の厚さが1000ミクロン未満の場合に0.1〜40重量%であり、材料の厚さが1000ミクロン以上の場合、材料の表面から深さ1000ミクロン以内の材料部分について0.1〜40重量%である。厚さや直径が10mm以下程度の高分子材料の場合、簡便的には、含浸量が0.1〜10重量%程度が好ましい。
【0034】
含浸剤として使用できる化合物は、高分子材料に親和性のある化合物であれば、有機・無機を問わず、また気体、液体、固体のいずれであっても使用できる。液体含浸剤は、そのままもしくは他の液体との溶液、分散液等の混合物として、固体であれば、その溶液または分散液、乳化液として、あるいは気体の場合にはそのまま使用できる。本発明における含浸剤はいわゆる溶剤を包含するものであるがこれに限定されるものではない。
含浸剤は、被処理高分子材料の種類に対応して選択する。合成繊維、特にポリエステル系合成繊維のキャリアー染色に使用される化合物や市販のキャリアー染色用助剤は好ましく使用できる。また、それに相当する多種の化合物も使用できる。これらは、ポリエステル以外にもポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリル酸樹脂、ポリウレタンなどの広範な高分子材料に適用できる。この例としては、ジフェニル、オルトまたはパラヒドロキシビフェニル、他のジフェニル誘導体、または、サリチル酸ナトリウムまたはその誘導体、ハロゲン化芳香族化合物(例えば、モノ、ジまたはトリクロルベンゼン)等これらについてはヘキサンやメタノールなどを溶媒とした有機液体溶液、水分散液または界面活性剤を用いた乳化液として用いることができる。
または、高分子材料に親和性のある有機液体を含浸剤として用いることもできる。この場合の有機液体の選択の目安は、処理すべき高分子材料の溶解度パラメータ(SP値)の近い単一の液体または複数の液体の混合物である。高分子の溶解度パラメーターより、+1またはー1程度の差のある溶剤で処理するのが好ましい。これ以内の差の溶剤では低温で短時間に処理すれば使用できる。高分子の表面にしみ込むだけで、溶解させないこと。高温で溶解性のある有機溶剤でも、溶解性を示さない低温で短時間に処理すれば使用できる。
液体含浸剤の例として、ポリプロピレンの場合は、トルエン、キシレン、デカリン、テトラリン、シクロヘキサン、ジクロロエタン1容とエタノール4容の混合物等、ポリエチレンには、トルエン、キシレン、α−クロルナフタレン、ジクロロベンゼン1容とメタノール1容の混合物、ポリスチレンには、トルエン1容とメタノール10容、ポリエチレンテレフタレートには、フェノール1容とヘキサン10容の混合物等を使用できる。
【0035】
含浸処理の温度や時間等の条件は、材料の形状によって適宜選択する。例えば、繊維の直径5〜10μm程度のポリオレフィン繊維からなる不織布の場合、室温の含浸剤(例えばトルエン)に30秒間浸漬して、遠心脱水機(回転数500〜1000回/分)にかけて含浸剤を振り切り、表面の含浸剤が見掛け上乾燥した状態になったら終了とする。ポリオレフィンのフィルム、板および成型品(厚さが1〜5mm程度)の場合は、室温〜羅70℃の含浸剤に1秒〜30分間程度浸漬してから、上述のように脱液する。これらの場合の含浸重量率は1から10重量%程度である。
羊毛の場合は、炭酸ナトリウム水溶液とメタノールの混合物等に室温で1秒〜10分浸漬してからメタノールですすいで遠心分離器で脱液する。
フィルムや板のように表面積の大きい成形物、あるいは酸化防止剤その他の添加剤を多く含むような材料である場合は本含浸処理は効果的である。
【0036】
(活性化処理工程)
本発明における高分子材料を活性化処理する工程とは、材料表面にカルボニル基を導入するための処理を意味する。カルボニル基以外に、酸素あるいは窒素などを含む官能基または不飽和結合等を導入することも含む。活性化処理の好ましい方法は、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射処理、高圧放電処理等の各種処理である。本発明の目的には、いずれも公知の設備を用いることができる。活性化処理の程度は、改質の目的に応じて適宜調節するが、本発明においては、カルボニル基の導入が確認できる最小限の活性化処理が好ましい。従来提案されている活性化処理方法では本発明の目的には過剰な処理である場合が多い。判断の目安として、処理した高分子材料の赤外線吸収スペクトルの測定が有効である。例えば、導入されたカルボニル基に基づく吸収の吸光度と未変化の結晶部分の構造に基づく吸収の吸光度の比を、ベースライン法により求めて、酸化の程度を知ることができる。例えば、ポリプロピレンの場合には導入されたカルボニル基に基づく1710cm-付近の吸光度と未変化の結晶部分メチル基に基づく吸収の973cm-での吸光度の比が0.1以下程度であることが好ましい。
活性化処理条件の設定の好ましい方法は、あらかじめ目的とする高分子材料について処理時間とカルボニル吸収の関係を求めておき、この関係式に基づいて、材料強度の低下を伴わない程度の活性化処理条件を定める。赤外吸収スペクトル法で検知できる最小限のカルボニル基が存在する場合であっても強度低下が生じる場合は、この関係式に基づいて赤外吸収で測定できない吸光度に対応する時間へ内挿して適切な処理時間を求める。このようにすることで、材料強度の低下を伴わずに有効な表面活性化処理が達成できる。
【0037】
(オゾン処理)
オゾン処理は、高分子材料の表面をオゾン分子と接触させて、酸化反応を主とする改質反応を行うことを目的としている。オゾン処理は、高分子材料をオゾンに暴露することによって行われる。暴露方法は、オゾンが存在する雰囲気に所定時間保持する方法、オゾン気流中に所定時間暴露する方法等適宜の方法で行うことができる。オゾンは、空気、酸素ガスまたは酸素添加空気等の酸素含有気体をオゾン発生装置に供給することによって発生させることができる。得られたオゾン含有気体を、材料を保持してある容器、槽等に導入して、オゾン処理を行うことができる。オゾン含有気体中のオゾン濃度、暴露時間、暴露温度の諸条件は、高分子材料の種類、形状および表面改質の目的に応じて適宜定めることができる。通常は、酸素または空気の気流を用い、流量10ml〜10L/分で−10〜100g/mの濃度のオゾンを発生させて、温度10〜80℃、時間30秒〜10時間で処理することができる。例えば、ポリプロピレンやポリ塩化ビニル繊維の場合は、オゾン濃度10〜40g/mで、室温下、30秒〜30分程度の処理が適当である。また、フィルム形状の場合は、オゾン濃度10〜80g/m程度で、室温下−1分〜1時間程度の処理が適当である。空気を用いた場合の発生オゾン濃度は、酸素を用いた場合の約50%程度となる。オゾン処理により高分子材料の表面には酸化を主とする反応によって、ヒドロペルオキシ基(−O−OH)などが導入され、その一部は水酸基やカルボニル基等の官能基に変化すると推定される。
【0038】
(プラズマ処理)
プラズマ処理は、高分子材料をアルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素、二酸化窒素、酸素あるいは空気等を含む容器内におき、グロー放電により生ずるプラズマにさらし、材料の表面に酸素、窒素などを含む官能基を導入することを目的とする。アルゴンやネオンなどの不活性ガスが低圧で存在する場合、高分子材料表面は発生したプラズマの攻撃を受け、その表面にラジカルが発生すると考えられる。その後、空気に晒されることにより、ラジカルは酸素と結合して、高分子材料表面には、カルボン酸基やカルボニル基、アミノ基などが導入されると考えられる。なお、微量の窒素、二酸化炭素、酸素または空気中でのプラズマ処理によって、直接、官能基が導入されると考えられる。プラズマ発生の放電形式は、(1)直流放電および低周波放電、(2)ラジオ波放電、(3)マイクロ波放電等に分類される。プラズマ処理装置はコロナ放電装置でも代用できる。
【0039】
(紫外線照射処理)
紫外線照射処理は、空気中で高分子材料の表面に紫外線を照射する方法である。紫外線を照射する光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等を用いることができる。照射前に紫外線吸収性溶剤で高分子材料の表面を処理してもよい。紫外線の波長は適宜選択できるが、材料の劣化を少なくするためには、360nm付近または以下が好ましい。高分子材料に紫外線が照射されると、成形物の表面領域の二重結合等の化学構造に紫外線が吸収され、吸収されたエネルギーにより化学結合が切断され、生成したラジカルに空気中の酸素が結合し、中間に過酸化物構造を経由するなどして、カルボニル基、カルボキシル基等を生成すると考えられる。
【0040】
(高圧放電処理)
高圧放電処理は、トンネル状の処理装置内に処理される高分子材料を移動させるためのベルトコンベアーを設置し、高分子材料を移動させながら、処理装置の内側の壁面に多数付けられた電極間に数十万ボルトの高電圧を加え、空気中で放電させて処理する方法である。放電によって空気中の酸素と被処理物の表面が活性化され、高分子材料の表面に酸素が取り込まれ、極性基が生成すると考えられる。
【0041】
(コロナ放電処理)
コロナ放電処理は、接地された金属ロールとそれに数mmの間隔で置かれた針金状の電極との間に数千ボルトの高電圧をかけてコロナ放電を発生させ、この放電中の電極−ロール間を被処理高分子材料を通過させる方法である。この方法はフィルムまたは薄様物の処理に適している。
【0042】
オゾン処理以外の方法は、材料に放射することによって表面を活性化するものであり、放射が当たらない影になる部分については工夫を要する。従って、不織布のような繊維集合体や、材料の形態によって影になる部分が存在する材料の全体を処理するにはオゾン処理が好ましい。また、オゾン処理は設備費等の面からも安価であり好適である。
【0043】
(単量体グラフト処理工程)
本発明においてグラフト化する単量体は、グラフト可能なものであれば制限はないが少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する化合物、たとえばビニル化合物または類似の化合物が好ましい。単量体のうち、親水性単量体が好ましい。親水性単量体としては、たとえば、(メタ)アクリルアミド、1−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、1−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、1−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの(アルキル)アミノアルキル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールアリルエーテル、エチレングリコールビニルエーテル、(メタ)アクリル酸、アミノスチレン、ヒドロキシスチレン、酢酸ビニル、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、プロピオン酸ビニル、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−(1−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、メタクリロイルモルホリン、N−ビニル−1−ピロリドン、N−ビニル−3ーメチル−1−ピロリドン、N−ビニル−4−メチル−1−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−1−ピロリドン、N−ビニル−6−メチル−1−ピロリドン、N−ビニル−3−エチル−1−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−1−ピロリドン、N−ビニル−5,5−ジメチル−1−ピロリドン、N−ビニル−3,3,5−トリメチル−1−ピロリドン、N−ビニル−1−ピペリドン、N−ビニル−3−メチル−1−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−1−ピペリドン、N−ビニル−5−メチル−1−ピペリドン、N−ビニル−6−メチル−1−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−1−ピペリドン、N−ビニル−3,5−ジメチル−1−ピペリドン、N−ビニル−4,4−ジメチル−1−ピペリドン、N−ビニル−1−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−1−カプロラクタム、N−ビニル−4−メチル−1−カプロラクタム、N−ビニル−7−メチル−1−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−1−カプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチル−1−カプロラクタム、N−ビニル−4,6−ジメチル−1−カプロラクタム、N−ビニル−3,5,7−トリメチル−1−カプロラクタムなどのN−ビニルラクタム、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニルフタルイミドなどのN−ビニルアミド、ビニル酢酸、1−ブテン酸、エチレンスルホン酸、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、無水マレイン酸、無水ピロメリット酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体またはこれらの群から選ばれる少なくとも2種の単量体との混合物が好ましい。
本発明において、耐薬品性と吸水性を求める場合は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、NービニルラクタムおよびNービニルアミド等の単一化合物または混合物の使用が特に好ましい。
【0044】
さらに、接着性、塗装性や印刷性の改良の目的では、親水性単量体よりも親水性の乏しい単量体であるアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン等のビニルモノマー等を使用できる。親水化の改良では、親水性単量体のみを用いることが好ましいが、親水性単量体と親水性の乏しい単量体との混合物を用いることによって、グラフト化率が増大して、グラフトポリマー中に含まれる親水性単量体が材料の親水性を付与することができる場合がある。
【0045】
単量体のグラフト化は、(1)触媒または開始剤(以下総称して「開始剤」という。)の存在下に行う方法、(2)開始剤の存在下または不存在下に加熱する方法、または(3)触媒または開始剤の存在下または不存在下に紫外線照射を行う方法のいずれも好ましい。開始剤としては、過酸化物(過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロキシペルオキシド、ジ−t−ブチルヒドロキシペルオキシド等)、アゾ化合物(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)、硝酸二セリウムアンモニウム(IV)、過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなど)、酸化還元系開始剤(酸化剤:過硫酸塩、過酸化水素、ヒドロペルオキシドなどと、無機還元剤:銅塩、鉄塩、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなど、または有機還元剤:アルコール、アミン、シュウ酸などとの組み合わせ、および酸化剤:ヒドロペルオキシドなどと無機還元剤:銅塩、鉄塩、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなど、または有機還元剤:過酸化ジアルキル、過酸化ジアシルなどと還元剤:第三アミン、ナフテン酸塩、メルカプタン、有機金属化合物(トリエチルアルミニウム、トリエチルホウ素など)との組み合わせ)、その他の公知のラジカル重合開始剤などが挙げられる。アクリル酸をモノマーとして用いる場合は、硝酸二セリウムアンモニウム(IV)や過硫酸カリウム等の水溶性の重合開始剤が好ましく用いられるが、過酸化ベンゾイルや2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等の非水溶性開始剤は、メタノールやアセトンに溶解して、水と混合して用いることができる。紫外線照射の場合には、触媒として、これらの重合開始剤の他に、ベンゾフェノンや過酸化水素などの光増感剤を加えても良い。
【0046】
単量体のグラフト化は、一般的なグラフト化方法を使用できる。具体例を以下に示す。水溶性の開始剤の場合は水に必要量を溶解する。水不溶性の開始剤の場合は、アルコールやアセトンなどのような水と混合する有機溶剤(たとえばアセトン、メタノール等)に溶解してから、開始剤が析出しないように水と混合する。開始剤溶液に、活性化処理または後記する親水性高分子処理を施された材料を入れ単量体を加えてグラフト化を行う。処理容器内は必要に応じて窒素置換しておく。加熱グラフトさせる場合は、この反応混合物を適宜の温度で適宜の時間加熱する。または、紫外線照射の下でグラフトさせる場合は、適宜の温度、時間で紫外線照射を照射する。紫外線ランプは特に限定はないが、高圧水銀灯(例えば東芝(株)製、商品名:H400P)を用いることができる。波長は360nm付近の紫外線をフィルターでとり出してもよいが、全波長光を照射してもよい。
【0047】
単量体としてアミド基を有するビニル単量体を使用し、本発明者の特開平8−109228号に記載された方法よりアミド基をホフマン転移する方法も好ましく使用できる。
【0048】
(親水性高分子)
本発明において親水性高分子とは、水溶性高分子または易水溶性ではないが親水性を有する高分子を意味する。具体例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、エチレンービニルアルコール共重合体、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ−α−ヒドロキシビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリ−α−ヒドロキシアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。またこれらのスルホン化物も使用できる。他に、アルギン酸ナトリウム、デンプン、絹フィブロイン、絹セリシン、ゼラチン、各種タンパク質、多糖類等が挙げられる。
【0049】
(高分子溶液による処理)
活性化処理された高分子材料に高分子溶液処理をするに際しては、触媒もしくは開始剤の存在下に行うのが好ましい。触媒および開始剤は、単量体によるグラフト化の場合と同様のものを使用できる。
高分子溶液処理工程においては、高分子は溶液状態で使用するのが好ましい。水溶性高分子であれば水溶液として使用できる。水溶性に乏しい場合は適当な溶媒に溶解して使用する。以下に水溶性高分子を使用する場合について説明する。開始剤の非存在下に水溶性高分子による処理を行う場合には、活性化処理を施された高分子材料を親水性高分子の水溶液中に入れ処理を行う。
開始剤の存在下に水溶性高分子による処理を行う場合には、先ず水溶性高分子の水溶液をつくり、水溶性の開始剤の場合は、ここに必要量を溶解する。水不溶性の開始剤の場合は、アルコールやアセトンなどのような水と混合する有機溶剤に溶解してから水溶性高分子の水溶液に加える。開始剤を加えた水溶性高分子の溶液に活性化処理を施した高分子材料を入れて処理を行う。処理容器内は窒素置換しておくことが望ましい。しかし簡易的には、窒素置換しておかなくても実用可能な処理はできる。
水溶性高分子と開始剤による処理の温度は特に制限はなく、通常10〜80℃、好ましくは60〜90℃が適当である。親水性の耐久力を良好にするため高い温度で長時間(例えば11時間程度)処理することも行われる。
【0050】
(洗浄処理工程)
本発明の方法で改質された高分子材料について、耐久性のある親水性、接着性、塗装性の改良を求める場合には、高分子処理またはグラフト化処理した後の高分子材料について、表面に付着した余分な高分子を充分に洗浄する工程が必須となる。通常の洗浄と異なり、処理高分子材料に付着した高分子を入念に洗浄して除去する工程である。例えば、親水性高分子で処理した高分子材料については脂肪酸ナトリウム水溶液(濃度1〜10重量%)で煮沸洗浄を1〜10分間行い、その後、よく水洗する。例えば、洗浄後の超高分子量ポリエチレン材料の表面について、全反射赤外線吸収スペクトルを測定した際に、その赤外線吸収スペクトルと活性化処理だけを行った超高分子量ポリエチレン材料の赤外線吸収スペクトルの違いが見られない程度に洗浄する。親水性の乏しい単量体または高分子、例えば、メタクリル酸メチルまたはその高分子、または酢酸ビニルまたはその高分子で処理した場合には、クロロホルムで40℃で10〜60分間洗浄して、さらにクロロホルムまたはアセトン、メタノールで充分に洗浄する。同様に全反射赤外線吸収スペクトル測定において、結合高分子のカルボニル基による1710cm-付近の吸収が、活性化処理のみの高分子材料と比べて、0〜5%程度の吸光度の増加が見られる程度まで洗浄する。効果的に洗浄工程を行うためには、加熱したうえで、超音波洗浄器で洗浄する事が好ましい。また、付着高分子を溶解する溶媒とソックスレー抽出器を用いて、1〜6時間の抽出を行う事が好ましい。なお、処理材料について、一定の洗浄の条件を決めておけば、材料について、全反射赤外線吸収スペクトル測定を行う必要はない。
【0051】
(用途)
本発明の方法で改質された高分子材料は、親水性、吸水性、接着性、塗装性などが大幅に改善され、その特性の耐久性が優れる。を活かして、各種用途に適用することが可能となる。接着性の改良とは、本来接着の困難な高分子材料を改質して、接着剤を用いた接着:一般的な接着剤、例えば、でんぷん、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂系、重合性シアノアクリレート等の接着剤によって、紙、木材、金属等に接着できること、または溶剤接着:処理高分子材料と別の高分子材料を接着する場合、両者の溶剤を微量塗布してから、塗布部分を密着させると、溶剤が蒸発した後、強力に接合させる事、の両方が可能となる事を意味する。また、本発明によって接着性の改良された高分子材料は、これまで困難であった塗料による塗装が可能となる。塗料の種類は、油性のアクリル樹脂塗料、油性のニトロセルロース塗料、水性の合成樹脂塗料、金属紛含有塗料、耐熱塗料、蛍光塗料など、あらゆる塗料で塗装して、塗膜が剥がれなくなるようにできる。
さらに本発明の改質方法は、特に改質の困難と言われるポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ケイ素樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミドを始めとする多くの高分子材料に適用できる。ポリオレフィンの不織布、あるいはポリオレフィンと他の高分子からなる混合不織布については、自重の7〜10倍程度の吸水性を与えることが可能であり、得られた吸水性は耐アルカリ性、耐酸性、耐酸化性に優れる。以下に各用途について説明するが、本発明の用途は以下に限定されるものではない。
【0052】
(1)拭き取り清掃用材料:現在、主として、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、および合成繊維の複合繊維をベースに、親水性を持たせるためにレーヨンを混紡させた上で、界面活性剤を含む水溶液を含浸させたものが、家庭用の使い捨て清掃用材料またはワイパーとして市販されている。この使い捨て清掃用材料を、本発明の改質された吸水性高分子材料の繊維で製造すると、軽量かつ高強度で、吸水性および界面活性剤吸収性に優れるため、使用耐久性を増した製品が得られる。使用後、数回は、水洗することにより再利用が可能となる。
【0053】
(2)吸水材料:本発明により製造された吸水性を有する高分子材料を意味する。
【0054】
(3)保水材料:本発明により製造された親水化ポリオレフィン不織布は、植物に給水させるための保水材料として有用である。このための保水材料としての材料形状は、織布、不織布、または布の形状を有しない繊維、裁断された繊維状廃棄物でもよい。構成繊維の径は10〜500μm程度が使いやすい。
【0055】
(4)医療・衛生・化粧用品:使い捨て仕様の各種用品を意味する。例示すると、オムツ、生理用品、包帯、ガーゼ、衛生ナプキン、消毒用貼付け布・テープ、その他の医療用品、各種清潔用途・洗顔パック・パッド等の化粧用品等が挙げられる。使い捨てオムツまたは生理用品は、パルプ、デンプン、アクリル酸ポリマーなどを原料とした吸水性素材を内部に含み、外側は、尿、水分および血液等を透過しないように、撥水性のあるポリオレフィン不織布で覆われている。身体から出された水分は内側の親水化された不織布を透過して、内部の吸水性素材に吸収される。水分に強く、破れにくい材料として、親水化ポリオレフィン不織布は、最も望ましい素材である。しかし、内側に用いられる親水化不織布の親水化は水で容易に落ちる界面活性剤や水溶性の処理剤を含浸させているだけである。そのために、親水性に耐久性がなく、水で容易に流されてしまう。また、皮膚に対する界面活性剤の影響も問題である。そこで、安価で容易で、かつ、耐久性のある親水化技術が望まれるのである。本発明の親水化技術により得られる吸水・保水性ポリオレフィン材料は、使い捨てオムツまたは生理用品の内側縫製用の布として最適材料となる。また本発明によって高吸水性化した高分子材料は使い捨てオムツまたは生理用品の内部の吸水性材料にも用いられる。軽量かつ高強度で、安全性もあり、繰返し用途に耐えうるようになる。また本発明により得られる親水性または吸水性材料は、軽量かつ高強度で、洗剤、薬品、接着剤等を含浸させることができるため、ガーゼ、拭き取り用繊維製品、貼付け消毒用布・テープ、その他の化粧用品素材に適している。使い捨ての医療・衛生・化粧用品として用いる場合、その材料形状は、織布または不織布が好ましく、目付および厚さは適宜選定すればよい。ただし、織布または不織布の構成繊維の径は1〜500μm程度が使いやすい。
【0056】
(5)衣料、ベッド、布団などの内部材料:
本発明により得られる親水性または吸水性高分子材料は、軽量かつ高強度であり、吸水性をコントロールして、衣料用の繊維製品、ベッド、布団などの内部材料に適している。
【0057】
(6)濾過材:
ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリエステル等の疎水性素材製の多孔性のフィルムからなる濾過材は、紙製の濾過材と比べると、高強度であるが、親水化に乏しいために、水溶液の濾過には不適当である。現在、界面活性剤や水溶性高分子を塗布して、対応しているが、これらの親水化部分は濾過中に溶出して、耐久性に欠ける。このような疎水性材料からなる濾過材を、本発明の親水化処理を施すことによって、耐久性のある、吸水性の濾過材が得られる。
【0058】
(7)歯列矯正用ブラケット:
本発明による処理法により、高分子材料の接着性を改良できる。接着性を必要とする各種材料、複合材料および繊維強化プラスチックに配合する強化繊維に利用できるため、プラスチック製の歯列矯正用ブラケットと歯の接着性を改善できる。
【0059】
(8)医療用機器材料用部品:輸液用のドレインチューブ、排液器具、接続用フィルター、点滴用キットの点滴筒とその接続用チューブ・管、チューブ接続用の三方コック、各種カテーテル、人工血管、人工臓器、人工関節、管状、糸状、板状の高分子材料部品を意味する。特に、医療用具は異なる材料からなる管状部材、例えば軟質部材と硬質部材とを脱離し難いように接合して用いる場合が多く、本発明によれば、異なる複数の管状部材を溶剤接着で接合する事が可能となるので、接着剤の輸液への溶解を防ぐことが可能となる。例えば、ポリプロピレン製の点滴筒の先端の突出部を表面改質して、未処理のポリブタジエンやポリ塩化ビニル製の管と、溶剤(クロロホルム、トルエン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、水など、またはこれらの混合物)を用いて、接合できる。また、これらの材料の親水性を改良して医療用としての適合性を改善できる。例えば人体または人体組織と接触して使用するもの(カテーテル、排液器具)、体液吸収材料、コンタクトレンズ、合成繊維製包帯、ガーゼ点滴器具等が挙げられる。ポリプロピレン製の接続用三方コックの外面をと接続するシリコンゴム製管の内壁を改質すれば、両者は溶剤接着できるようになる。
【0060】
(9)高分子材料性サンプル管・ピペットチップ、カテーテル、チューブの改質:ポリプロピレンまたはその他の高分子製の化学薬品試料管、血液採取管の内面を改質して、親水化を行えば、親水性高分子溶液に、血液抗凝固剤を混ぜた溶液を塗り、加熱処理すると、血液採集後の凝固を防ぐ事ができる。また、カテーテル、その他のチューブ、血液と接する部品の表面処理を行い、抗血液凝固活性物質、例えば、ヘパリン、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、トロンボモジュリン、プラスミノーゲンアクチベータ、ヒルジン、プロスタサイクリン、アンチトロンビンを接着性樹脂(水溶性高分子またはアクリル樹脂溶液など)を用いて塗布し、加熱して乾燥すると、抗血液凝固作用を付与できる。
親水化処理高分子材料に結合している水酸基を利用して、例えば、抗タンパク質吸着作用のあるホスホリルコリン(PC)のようなリン酸化合物にシランカップリング基を結合させたもので処理すると、高分子材料の表面がPCで覆われた状態となる。内壁を親水化したポリプロピレン製のサンプル管をPC化合物で処理すれば、それに血液などを採取した際に、血液中のタンパク質の付着を防ぐことが可能となる。なお、抗タンパク質吸着作用を期待するならば、本技術の基本操作の「グラフト化行程」で、PCをメククリル酸エステル化したモノマーである1ーメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)をモノマーとするか、またはMPCを重合して得られるオリゴマーにビニル基を導入して得られるマクロモノマーの使用が有効となる。
【0061】
MPCを重合して得られる高分子に、アミノ系シランカップリング剤を作用させて得られるアミノ系シランMPCポリマーを、改質高分子材料に塗布後、加熱して、改質高分子材料にMPCポリマーを結合させる事が可能となる。カップリング処理に使用するカップリング剤は、例えばN−(1−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、アリルオキシ−1−アミノエチルアミノメチルジシラザン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラザン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン等のアミノ系シランカップリング剤を挙げることができる。
【0062】
(10)シール材料:シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等から製造されたシール用のパッキン、ガスケット、その他のシール用に成形した材料の表面を本発明の方法で改質して、接着性を付与できる。接着性が向上したこれらの改質シール材料を、黒鉛、ステンレス、セラミックス等からなる別の成形物に接着させることによって、表面に柔軟性を付与した積層構造のシール材料が得られる。
【0063】
(11)高分子材料複合材料:複合材料および繊維強化プラスチックに配合する強化繊維の接着性を向上させて、強度の優れた高分子材料複合材料に利用できる。合成繊維の接着性を向上させて、プラスチックに混合して複合材料とすれば、強度があり回収しやすい材料がつくられるので、好ましい。
【0064】
(12)合成紙:ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンやポリエステル等の高分子材料からなる合成紙は気泡や充填剤を加えて白度を与え、紙の代替品として使用される。本発明による表面の親水化を行い、接着性や印刷性を向上させることができる。
【0065】
(13)インクジェット用紙 :高分子材料の紙状成型体を親水化して得られた物は紙と同様の親水性を示すので、さらに処理してインクジェットプリンター用紙に加工する事が可能となる。例えば、親水化ポリエチレン合成紙について、インクジェットプリンター用紙を製造するためのコート層(多孔性微粒子系または高分子系)を形成するために用いるバインダー(例:ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマー)と、無機微粒子(例:炭酸カルシウム、アルミナ、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等、コロイダルアルミナ)または有機微粒子(例:アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、スチレンおよびスチレン誘導体などのモノマーを乳化重合して得られるポリマー)をコーティングして、軽量なインクジェットプリンター用の印刷用合成紙を製造することが可能となるまた、
【0066】
(14)接着性が改良された材料:上記、歯列矯正用ブラケットや複合材料用強化繊維の接着性の改良の他に、各種高分子フィルムや成形品の接着性を改良して、同種または異なる材料との接着性を向上できる。特に、溶剤接着も可能とする。本方法で接着性が改良された高分子材料には、粘着テープ用の粘着剤の塗布が可能となり、これまで不可能であった粘着テープの製造が可能となる。
【0067】
本方法で改質された高分子材料は各種粘着テープと強力に貼付けができるようになる。例えば、点滴用の注射針(カニューラ)の針の保持部分はシリコンゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン等から構成される。本発明の方法で改質したシリコンゴムをクランピングチューブとした場合に、医療用の粘着テープで改質シリコンゴムチューブ部分を注射器具装着部分に貼付けることが可能となる。
【0068】
(15)親水性フィルムの他用途
本発明により、ポリオレフィンやポリエステル等の高分子フィルムに高親水性を付与できる。例えば、吸水性ポリエステルフィルムは、接着性に優れ、水に濡れやすいため、ガラスや鏡に貼付けることによって防曇効果が得られる。
【実施例2】
【0069】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。用いた材料、試薬類、および試験・評価方法を以下に示す。
【0070】
(A)高分子材料を含む材料
(B)試薬類
(1)ポリビニルアルコール(重合度1500〜1800)
(2)カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC):和光純薬(株)製、製品番号039ー01355
(3)アクリル酸:和光純薬(株)製、製品番号011−00776
(4)メタクリル酸:和光純薬(株)製、製品番号138−10805
(5)メタクリル酸メール(PVA):和光純薬(株)製、製品番号160−11485(平均重合度チル:和光純薬(株)製、製品番号139−01716
(6)過硫酸ナトリウム(SPS):和光純薬(株)製、製品番号195ー04985
(7)2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):和光純薬(株)製、製品番号019ー04931
(8)硝酸二セリウムアンモニウム(IV)(CAN):和光純薬(株)製、製品番号036−01741
(9)ベンゾフェノン:和光純薬(株)製、製品番号013−01071
(10)メタノール:和光純薬(株)製、製品番号136−09475
(11)水酸化ナトリウム:和光純薬(株)製、製品番号194−01135
(12)塩酸:和光純薬(株)製、製品番号080−01066
(13)トルエン:和光純薬(株)製、製品番号104−01866、この液体そのものを用いた(含浸剤A)。
(14)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS):東京化成工業(株)、製品番号D1138、界面活性剤として使用した。
(15)デカヒドロナフタレン(シス、トランス混合物):和光純薬(株)製、製品番号048ーO0066、この液体そのものを用いた(含浸剤B)。
(16)オルトヒドロキシビフェニール(OHB):和光純薬(株)製、製品B番号080ーO1401、オルトヒドロキシビフェニール1gと水酸化ナトリウム0.1g、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.1gを水100mlに混合して得た溶液をして用いた(含浸剤C)。
またはオルトヒドロキシビフェニール0.5gをメタノール300mlに溶解して得た溶液をキャリヤーとして用いた水に分散させて用いた(キャリヤーD)。
(17)サリチル酸ナトリウム(SS):和光純薬(株)製、製品番号195−O3145(含浸剤D)
サリチル酸ナトリウム1gを水100mlに溶解し、10%塩酸0.5mlを混合して得た溶液を用いた水に分散させて用いた(含浸剤E)。
(18)ジフェニル(DP):和光純薬(株)製、製品番号040−18411。ジフェニル1.5gと界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.1gを水100mlに混合して得た溶液を用いた(含浸剤F)。
(19)キャリアント(商品名、東邦化学(株)製):ポリエステル系合成繊維染色用キャリヤー、芳香族エーテル系アニオン活性剤配合品。水に分散させて用いた(キャリヤー1)。
(20)キャリヤーTW100(商品名、日華化学(株)製):ポリエステル・羊毛混紡用系合成繊維染色用キャリヤー、メチルナフタレンその他の配合品、水に分散させて用いた(キャリヤー1)。
【0071】
(C)オゾン処理:
試験片を容積1Lまたは10Lの硬質ガラス製容器(ガスの導入口と出口付き)に入れ、オゾン発生機(三菱電機(株)製OS−1N)より、オゾン発生量1g/h、濃度10g/mのオゾンを含む酸素を800ml/分の流量で10〜110分間吹き込んだ。次に、オゾンを含まない酸素を10分間吹き込んだ。オゾンの濃度はヨウ素滴定により求めた。酸化の程度は処理試験片の表面部材を削り、赤外線吸収スペクトルを測定して、1710cm-付近の吸収ピーク(カルボニル基の吸収)の吸光度の変化および、この吸光度と973cm-の吸光度の比より判断した。赤外線吸収スペクトルは島津プレステージ21を用いて測定した。
【0072】
(D)プラズマ処理:
大気圧プラズマ処理装置(ヤマト科学YAP500、出力500W)の反応槽内の電極間に試験片(布、フィルムなど)を置いた。アルゴン、ヘリウム、窒素、酸素の気体を流量1〜1000mL/分で流した雰囲気で、供給電力を300〜500Wの間の値として、主に10秒から1分間照射した。放電後、処理試験片をとりだした。処理の程度は、フィルムに対する水の接触角の低下により判断した。また、同社製の低温プラズマ処理装置も用いた。
【0073】
(E)紫外線照射処理:
活性化処理の場合は、試料に対して、高圧水銀ランプ(東芝高圧水銀灯H400P)を5〜30cmの距離から直接照射した。冷却ファンを用いて送風して、試料表面の温度上昇を60℃程度に押さえて、試料の劣化を防いだ。
グラフト化の場合は、反応混合物を硬質ガラス製の反応容器に入れて、温度10〜70℃にして、高圧水銀ランプ(東芝高圧水銀灯H400P)を5〜30cmの距離から照射した。試料が平面状でない場合は、光が均一に照射されるように、反応管は、自転しながら、ランプの周りを公転させた。
【0074】
(F)水の接触角の測定:
接触角測定装置(協和界面科学(株)製CA−X)を用いた。10℃において、注射器から直径1mm程度の水滴を試験片の表面に滴下したものを、ビデオカメラで拡大した像のサイズから計算によって求めた。
は縦目方向のみを示した。
【0075】
(G)耐洗濯性試験:
試験片を弱アルカリ性の脂肪酸ナトリウム石鹸(商品名:ライオン(株)製ライオン粉石鹸)0.4%水溶液に、浴比1:150で入れ、撹拌しながら5分間、沸騰洗浄を行った。その後、十分に水洗後、乾燥した。吸水率、水吸上げ速度、および引張強度を測定し洗濯前と比較した。
【0076】
(H)引張強度試験:
試験片を1.5cm×7cmの長方形に切り、両端から1cmまたは1cmの部分を引張試験機(今田製作所社製SV55−0−10M)のクランプに固定し、つかみ間隔を5cmとして、引張速度100mm/分で引っ張った。縦目と横目の各方向について測定した。各実施例においては縦目方向のみを示した。
【0077】
(I)接着剥離強度試験:
(1)フィルムの場合:
試験片を30mm(縦目方向)×5mmの大きさに切り、一端の5mm×5mmの部分に接着剤0.1gをつけ、ベニヤ板(厚さ1mm、サイズ10mm×10mm)または付箋紙((厚さ0.2mm、サイズ10mm×10mm)につけて、ポリエチレンフィルムにはさんで500gの分銅を11時間のせておく。ベニヤ板の接着していない部分10mmとフィルムの接着していない一端10mmを引張試験機(島津製作所製オートグラフAGSーH)のクランプにはさみ、引張速度50mm/分で引っ張り、接着部分の剥離に要したエネルギー(接着剥離エネルギー)を求めた。接着条件を規格化するために、同様に行った未処理の材料の接着剥離エネルギーを1.0として相対値を求めた。用いた接着剤は、ベニヤ板の場合は、ポリシアノアクリレート系(アロンアルファ:東亜合成(株)製)と付箋紙の場合は、文具用の紙用途接着剤(商品名:コクヨ(株)製、プリット)である。
(2)板状の場合:
試験片のサイズに応じて、試験片と他の材料を接着剤で接着した。接着部分は、材料の幅いっぱい、長さを1cmとした。両端から1cmの部分をクランプにはさみ、引張速度50mm/分で引っ張り、接着部分の剥離に要した荷重を求めた。
【0078】
(J)塗装:
油性塗料はニッペホームプロダクツ(株)製、ニッペホームペイント・スプレーラッカー(商品名、色:チョコレート、成分:合成樹脂(アクリル)、顔料、有機溶剤、用途:鉄・木材)を用いた。水性塗料は、(株)アサヒペン製、水性スーパーコート(商品名、色:オーシャンブルー、成分:合成樹脂(シリコン、アクリル、フッ素)、顔料、紫外線劣化防止剤、さび止め剤、水1)を用いた。高分子材料に塗装後、乾燥した。乾燥時間は80℃で、水性塗料は1時間、油性塗料は1時間を基本としたが、50℃で5時間とする事も行った。
【0079】
(K)クロスカットテスト(碁盤目試験):
塗装の評価のためのクロスカットテストは、JISK5400に準拠し、次のようにして行う。塗装面にカッターナイフを用いて、直行する縦横11本ずつの平行線を1mmの間隔で引いて1cm2の中に100個のます目が出来るように碁盤目状の切り傷を付ける。碁盤目の部分にセロファン製粘着テープを密着させ、急激に引き離す。判定は、全く剥離がなければ「100/100剥離なし、合格」とし、剥離した碁盤目がある場合には、残った碁盤目の数を記録する。本検討では、必ず、未処理材料と比較した。
【0080】
(L)血液凝固試験:
処理または未処理の高分子材料に、牛血漿(SIGMA社製)50μLに総量180μLになるようにトリス緩衝液(SIGMA社製、登録商標TRIZMABASE)を加えた。この溶液を温度37℃で、5分間保温した後、11.5NIH単位/mLの牛トロンビン(SIGMA社製)溶液を10μL加えて、塗布した。温度37℃の恒温槽中で保温し、3分後の溶液の凝固の有無を確認することにより抗血液凝固活性を確認した。
【0081】
(M)血液タンパク質付着試験:処理または未処理の高分子材料に1μg/mLのFITC(フルオレセインイソチオシアネート)標識ウシ血清アルブミン溶液を、高分子材料に500μL添加し、37℃にて1時間吸着させた。吸着後のアルブミン溶液の付着量を蛍光強度測定により算出した。
【実施例3】
【0082】
医療用の点滴用具のポリプロピレン製点滴筒とポリブタジエン製チューブの改質による溶剤接着
1)活性化処理として、マスキングによって、点滴用具の部品であるポリプロピレン製点滴筒の端部に設けられた小径管状突出部の表面のみに、酸化剤処理を行った。酸化は、室温下でオゾン処理を60秒行った。
2)次に、この活性化された管状突出部に、高分子処理として、ポリ酢酸ビニルのクロロホルム溶液(濃度1重量%)を塗り、80℃で1分間加熱した。
3)突出部をクロロホルムに浸けて、室温で10分間洗浄後、1分間乾燥した。
4)処理した管状突出部にクロロホルムを1滴つけて、ポリブタジエン製チューブを挿入した。これを5分間放置して乾燥した。
5)点滴筒とポリブタジエン製チューブの接着部分を左右に30kgfの荷重で引っ張って、接続部が抜けなくなった。未処理物の接続部分は1kgfの荷重で抜けた。
【実施例4】
【0083】
実施例3の1)の活性化処理として、紫外線照射を5cmの距離から30秒間行った。ほかの操作は実施例3と同様に行い、実施例3と同様の効果が得られた。
【実施例5】
【0084】
実施例3の1)の活性化処理として、プラズマ処理を30秒間行った。ほかの操作は実施例3と同様に行い、実施例3と同様の効果が得られた。
【実施例6】
【0085】
実施例3の1)の活性化処理として、コロナ放電処理を60秒間行った。ほかの操作は実施例3と同様に行い、実施例3と同様の効果が得られた。
【実施例7】
【0086】
ポリプロピレン製三方コックとシリコンゴム製チューブ改質による溶剤接着
1)活性化処理として、実施例1と同様に、シリコンゴム製チューブの端から長さ1cmの深さの内側、およびポリプロピレン製三方コックの端から1cm長さの外側に、紫外線照射を5cmの距離から30秒間行った。
2)次にグラフト化処理として、この活性化された管状突出部に、酢酸ビニルとメタクリル酸のアセトン溶液(体積混合比1:1、濃度5重量%)を塗り、80℃で5分間加熱した。
3)次に洗浄過程として、45℃のクロロホルムに浸け、超音波洗浄器に10分間かけた。さらにクロロホルムですすいで洗浄、乾燥した。
4)溶剤接着:処理したポリプロピレン製三方コックの端1cm長さの部分にクロロホルムを1滴つけて、シリコンゴム製チューブを挿入した。これを1分間放置した。
5)ポリプロピレン製三方コックとシリコンゴム製チューブの接合部分を左右に40kgfの荷重で引っ張っても、接続部が抜けなくなった。未処理物の接続部分は1kgfの荷重で抜けた。
【実施例8】
【0087】
実施例7の1)の活性化処理として、オゾン酸化を30秒間行った。ほかの操作は実施例7と同様に行い、実施例7と同様の効果が得られた。
【実施例9】
【0088】
実施例7の1)の活性化処理として、プラズマ処理を30秒間行った。ほかの操作は実施例7と同様に行い、実施例7と同様の効果が得られた。
【実施例10】
【0089】
実施例7の1)の活性化処理として、コロナ放電処理を60秒間行った。ほかの操作は実施例7と同様に行い、実施例7と同様の効果が得られた。
【実施例11】
【0090】
実施例7の2)の単量体の代わりに、高分子処理として、混合重量比1:1のカルボメチルセルロースとデンプンの水溶液(重量濃度2%)を30秒間行った。ほかの操作は実施例7と同様に行い、実施例7と同様の効果が得られた。
【実施例12】
【0091】
医療用の輸液用具のポリプロピレン製チューブとポリウレタン製チューブの改質による溶剤接着
ポリプロピレン製チューブの外壁部分とポリウレタン製チューブの端から10mmの内壁部分について、実施例3の活性化処理の前に、溶剤処理としてポリプロピレンにはトルエン、ウレタンにはベンジルアルコールを塗布し、15分間放置した。この後の操作は、実施例7と同様の処理をした。実施例7と同様に、溶剤接着が可能となった。
【実施例13】
【0092】
医療用の輸液用具のポリエステル製部品とポリウレタン製チューブの改質による溶剤接着
実施例7〜11と同様に処理して、溶剤接着が可能となった。
【実施例14】
【0093】
医療用の輸液用具のポリプロピレン製管状容器と軟質高分子材料の管状細管(ナイロンエラストマー、低密度ポリエチレン、シリコーンゴムチューブ、ポリ塩化ビニル製)について、実施例7〜10と同様に処理して、溶剤接着性が改良された。また、UV硬化接着剤(東亜合成(株)製:光硬化型接着剤アロニックスLCR0618A)による接着も可能となった。
【実施例15】
【0094】
ポリプロピレン製成型物の水性塗料による塗装を可能とする改質
1)ポリプロピレン製成型物の表面に、活性化処理として、紫外線照射を5cmの距離から60秒間行った。
2)ポリメタクリル酸メチルとポリメタクリル酸のトルエン溶液(体積比1:1、濃度1重量%)を塗り、60℃で10分加熱した。
3)60℃のトルエンに30分間浸けて超音波洗浄をした。さらに室温で、トルエンですすいでから、10分間乾燥した。
4)処理部分に水性塗料を塗装した。前記水性塗料は、(株)アサヒペン製、水性スーパーコート(商品名、色:オーシャンブルー、成分:合成樹脂(シリコン、アクリル、フッ素)、顔料、紫外線劣化防止剤、さび止め剤、水1)を用いた。
5)80℃で1時間乾燥後、クロスカットテストを行った結果、全く剥がれない、100/100の評価が得られた。
6)処理部分に油性塗料を塗装した。
前記油性塗料は、ニッペホームプロダクツ(株)製、ニッペホームペイント・スプレーラッカー(商品名、色:チョコレート、成分:合成樹脂(アクリル)、顔料、有機溶剤、用途:鉄・木材)を用いた。
7)80℃で1時間乾燥後、クロスカットテストを行った結果、全く剥がれない、100/100の評価が得られた。
8)塗装の耐水性試験:上記水性塗料を塗装した改質ポリプロピレン製成型物を40℃の水に10日間、浸漬した。この試料を乾燥後、クロスカットテストを行った結果、全く剥がれない、100/100の評価が得られた。
【実施例16】
【0095】
実施例15の1)の活性化処理として、オゾン酸化を30秒間行った。ほかの操作は実施例15と同様に行い、実施例15と同様の効果が得られた。
【実施例17】
【0096】
実施例15の1)の活性化処理として、プラズマ処理を30秒間行った。ほかの操作は実施例15と同様に行い、実施例15と同様の効果が得られた。
【実施例18】
【0097】
実施例15の2)の高分子処理として、混合重量比1:1のカルボメチルセルロースとデンプンの水溶液(重量濃度2%)を30秒間行った。ほかの操作は実施例15と同様に行い、実施例15と同様の効果が得られた。
【実施例19】
【0098】
ポリプロピレン製成型物の印刷性の改良
1)実施例15と同様に処理したポリプロピレン製板状成型物について、UVインク(東洋インキ インクジェット用FDSSシリーズ(色彩193赤))により厚み3.0μmのUVインキ層を形成させた。インキ層には、UVランプ(メタルハライドランプ1.5KW)を照射距離H=50mmで、移動速度V=5mm/secで照射した。
2)次に、70℃の温度で、インキ層を1分間加熱した後、室温に1時間放置した。インク層が固定された後に、耐久性試験として、クロスカットセロファンテープ剥離テストを行い、100/100が得られた。さらに、40℃の温水に1週間浸漬する耐水性試験でも印刷ははがれなかった。
【実施例20】
【0099】
ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂製板状成形物の印刷性の改良
実施例15〜18と同様に処理したポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂製板状成形物について、実施例19と同様のUVインクによる印刷性の改良が得られた。
【実施例21】
【0100】
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂製板状成形物の印刷性の改良
実施例15〜18と同様に処理したポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂製板状成形物については、水性顔料インク(プラチナINK−G−1500)、溶剤顔料インク(ローランド社ECO−SOLMAインク)およびインクジェット印刷機用の水性顔料インク(キヤノンBCI−3eBK)による印刷性試験で良好な印刷性が得られた。
【実施例22】
【0101】
シリコン樹脂製板状成型物の水性塗料による塗装を可能とする改質
実施例15〜18と同様に処理して、同水性塗料による塗装が可能となった。また、油性塗料による塗装も可能となった。クロスカットテストを行った結果、95/100〜100/100の評価が得られた。
【実施例23】
【0102】
ポリプロピレン製サンプル管の内壁の親水化と抗血栓性薬剤の塗布
1)ポリプロピレン製サンプル管(容量5ml)の内壁について、活性化処理として、オゾン処理を10秒間行った。
2)次に、この活性化された管状突出部に、親水性高分子(カルボキシメチルセルロース)の水溶液(濃度5重量%)を塗り、紫外線照射を1分間行った。
3)処理後、沸騰水で10分間煮沸洗浄をしたのち、水で充分に濯いでから乾燥した。
4)処理ポリプロピレン製サンプル管の内壁は純水で接触角10度以下に濡れた。
5)処理ポリプロピレン製サンプル管の内壁に抗血液凝固性薬剤抗血液凝固活性物質ヘパリンを混合した塗布液を塗ってから60℃で1時間加熱した。
6)処理ポリプロピレン製サンプル管を60℃の水で充分に洗浄した。
7)血液凝固テストで良好な結果が得られた。
【実施例24】
【0103】
実施例23の1)の活性化処理として、オゾン酸化を30秒間行った。ほかの操作は実施例23と同様に行い、実施例23と同様の効果が得られた。
【実施例25】
【0104】
実施例23の1)の活性化処理として、プラズマ処理を30秒間行った。ほかの操作は実施例23と同様に行い、実施例23と同様の効果が得られた。
【実施例26】
【0105】
実施例23の2)の高分子処理の代わりに、グラフト化処理として、この活性化された管状突出部に、酢酸ビニルとメタクリル酸のアセトン溶液(体積混合比1:1、濃度5重量%)を塗り、80℃で5分間加熱した。30秒間行った。ほかの操作は実施例23と同様に行い、実施例23と同様の効果が得られた。
【実施例27】
【0106】
ポリプロピレン製サンプル管の内壁の親水化と抗血栓性薬剤の塗布
1)ポリプロピレン製サンプル管(容量5ml)の内壁について、溶剤処理として酢酸エチルを塗布してから15分置いた。活性化処理として、紫外線照射を10秒間行った。
2)次に、この活性化された管状突出部に、ポリアクリル酸の水溶液(濃度1重量%)を塗り、紫外線照射を1分行った。
3)処理後、沸騰水で10分間洗浄し、もはやポリアクリル酸が解け出さない事を確認した。
4)処理ポリプロピレン製サンプル管の内壁は純水で接触角10度以下に濡れた。
5)処理ポリプロピレン製サンプル管の内部に、MPC高分子にN−(1−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランを混ぜて、40℃で14時間放置して得られたアミノ基含有シラン化MPC高分子を塗布して、過硫酸カリウム水溶液(濃度10重量%)を塗り、50℃で1時間放置後、60℃の水で繰り返し洗浄した。
6)処理ポリプロピレン製サンプル管の内部に、1μg/mLのFITC標識ウシ血清アルブミン溶液を 500μL添加し、40℃で1時間吸着させた。吸着後のアルブミン溶液の蛍光強度測定により吸着量を算出した。表面改質したポリプロピレン製サンプル管の内壁に対するタンパク質の吸着量は、未処理のポリプロピレン製サンプル管に比べると減少した。
【実施例28】
【0107】
実施例27と同様にして得られた処理ポリプロピレン製サンプル管の内壁に、ポリ(1−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)(商品名:リピジュア(日油株式会社製))の10重量%水溶液とポリビニルアルコール水溶液10重量%の混合物(混合体積比9:1)を塗布して60℃で1時間浸漬した。次に、60℃の水で充分に洗浄した。乾燥後、血液凝固試験で良好な結果が得られた。
【実施例29】
【0108】
ポリプロピレン製サンプル管の内壁の親水化と抗血栓性薬剤の塗布
1)ポリプロピレン製サンプル管(容量5ml)の内壁について含浸処理として、10mlのオルトヒドロキシビフェニール0.5gをメタノール300mlに溶解して得た溶液(キャリヤーD)を入れて70℃で10分間置いた。
2)活性化処理として、オゾン処理を30秒行った。
3)次に、この活性化された管状突出部に、ポリアクリル酸の水溶液(濃度1重量%)を塗り、紫外線照射を1分行った。
4)処理後、沸騰水で10分間洗浄した。
5)処理ポリプロピレン製サンプル管の内壁は純水で接触角10度以下に濡れた。
6)処理ポリプロピレン製サンプル管の内壁にポリ(1−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)(商品名:リピジュア(日油株式会社製))の10重量%水溶液に80℃で1時間浸漬した。次に、40℃の水で洗浄した。
7)乾燥後、血液凝固テストで良好な結果が得られた。
【実施例30】
【0109】
実施例29の1)の活性化処理として、紫外線照射を5cmの距離から30秒間行った。ほかの操作は実施例29と同様に行い、実施例29と同様の効果が得られた。
【実施例31】
【0110】
実施例29の1)の活性化処理として、プラズマ処理を30秒間行った。ほかの操作は実施例29と同様に行い、実施例29と同様の効果が得られた。
【実施例32】
【0111】
超高分子量ポリエチレンの接着性の改良
1)超高分子量ポリエチレンの板(形状:直方体、大きさ:長さ60mm、幅10mm、厚さ3mm)に活性化処理として、紫外線照射を60秒間行った。
2)次に、この活性化された超高分子量ポリエチレンの板に、ポリアクリル酸の水溶液(濃度1重量%)とベンゾキノンを塗り、紫外線照射を1分行った。
3)処理後、洗浄工程として、沸騰水で10分間洗浄し、50℃で超音波洗浄を10分行い、もはやポリアクリル酸が解け出さない事を確認した。
4)処理超高分子量ポリエチレンの板は純水で接触角10度以下に濡れた。
5)この処理超高分子量ポリエチレンの板と同じサイズのアクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート製)を、接着部分サイズ10cm x15cmとして、シアノアクリレート接着剤で接着した。
6)乾燥後、引張剥離試験(接着面に並行に引張る試験)を行った結果、1kN(110kgf)でアクリル樹脂部分が材料破壊した。未処理超高分子量ポリエチレンの板では接着しなかった。
【実施例33】
【0112】
実施例32の1)の活性化処理として、オゾン処理を120秒間行った。ほかの操作は実施例32と同様に行い、実施例32と同様の効果が得られた。
【実施例34】
【0113】
ポリプロピレンの接着性の改良
実施例32〜33と同様にポリプロピレン板を処理して、シアノアクリレート接着剤でアルミニウム板と接着して、同様の引張剥離試験を行い、1.6kN(166kgf)で、接着剤部分が破壊した(凝集破壊)。
【実施例35】
【0114】
フッ素樹脂エチレンーテトラフルオロエチレン共重合体の塗装性と接着性の改良
1)エチレンーテトラフルオロエチレンコポリマー製の板(形状:直方体、大きさ:長さ100mm、幅30mm、厚さ1mm)に、光増感剤であるベンゾフェノンのメタノール溶液(濃度10重量%)を塗り、10分後に、紫外線照射を2分間行った。
2)次に、実施例30と同様に処理した。
3)処理後、洗浄工程として、沸騰水で10分間洗浄し、50℃で超音波洗浄を10分行い、もはやポリアクリル酸が解け出さない事を確認した。
4)処理エチレンーテトラフルオロエチレン共重合体製の板は純水で接触角10度以下に濡れた。
5)この処理エチレンーテトラフルオロエチレン共重合体製の板に水性塗料を塗布、乾燥後、クロスカットテストを行った結果、100/100と良好な評価が得られた。また、油性塗料による塗装も同じく100/100が得られた。
6)この処理エチレンーテトラフルオロエチレンコポリマー製の板を、シアノアクリレート接着剤でアルミニウム板と接着して、実施例32と同様の引張剥離試験を行い、1.8kN(186kgf)で、接着剤の層が破凝集破壊した。
【実施例36】
【0115】
実施例35の1)の活性化処理として、オゾン酸化を30秒間行った。ほかの操作は実施例35と同様に行い、実施例35と同様の効果が得られた。
【実施例37】
【0116】
実施例35の1)の活性化処理として、プラズマ処理を30秒間行った。ほかの操作は実施例35と同様に行い、実施例35と同様の効果が得られた。
【実施例38】
【0117】
実施例35の2)の高分子処理の代わりに、グラフト化処理として、この活性化された管状突出部に、酢酸ビニルとメタクリル酸のアセトン溶液(体積混合比1:1、濃度5重量%)を塗り、80℃で5分間加熱した。30秒間行った。ほかの操作は実施例35と同様に行い、実施例35と同様の効果が得られた。
【実施例39】
【0118】
フッ素樹脂ポリふっ化ビニリデンの塗装性と接着性の改良
ポリふっ化ビニリデン樹脂の板について、実施例35〜38と同様の処理を行った。得られた試料について、実施例35と同様の試験を行った結果、同様に、塗装性のクロスカットテストでは100/100が得られた。また、アルミニウム板との接着では接着剤の層が凝集破壊した。
【実施例40】
【0119】
フッ素樹脂ポリテトラフルオロエチレンの接着性の改良
1)実施例35〜38と同様の処理をした。
2)洗浄処理として、次に、沸騰水で1分間洗浄してから、80℃の水で超音波洗浄を5分間行った。乾燥後、ポリテトラフルオロエチレン製の板には良好な親水性が得られた:水の接触角15〜30度。
3)この処理ポリテトラフルオロエチレン製の板に水性塗料を塗布、乾燥後、クロスカットテストを行った結果、70/100という評価が得られた。また、油性塗料による塗装では80/100が得られた。未処理試料は水性・油性塗料では全く濡れなかった。
【実施例41】
【0120】
フッ素樹脂ポリテトラフルオロエチレンの接着性試験
1)実施例40で処理されたポリテトラフルオロエチレン製の板を、シアノアクリレート接着剤でアルミニウム板と接着した。実施例35と同様の引張剥離試験を行い、1.4kN(143kgf)と、かなりの強度の接着が得られた。ポリテトラフルオロエチレン製の板の界面で剥離した。未処理試料は水性・油性塗料では全く濡れなかった。
2)この処理ポリテトラフルオロエチレン製の板に両面テープ(スリーエム社製、3M−VHBアクリルフォーム構造用接合テープ(一般用途)ハイソフトタイプ Y4608)を貼付けて、木版に接着した。接着したポリテトラフルオロエチレン製の板は、引張剥離試験を行い、50kgf/平方センチメートル の引張り力でも剥離しなかった。未処理ポリテトラフルオロエチレン製の板は、同様の引張剥離試験で0〜1kgf/平方センチメートルの引張り力で剥離した。
【実施例42】
【0121】
改質フッ素樹脂ポリテトラフルオロエチレンの接着性試験
発泡性ポリテトラフルオロエチレンシートについて、実施例35〜38と同様の表面改質処理をした。改質された発泡性ポリテトラフルオロエチレンシートを直径50mmの円形に切断し、中央に直径45mmの円形の穴をあけてリング状とした。改質された発泡性ポリテトラフルオロエチレンシート2枚に、ポリビニールー酢酸ビニル糊(ヤマト(株)製、アラビックヤマト)を塗り、この2枚の改質された発泡性ポリテトラフルオロエチレンシートのリングで、同形のステンレス製リング(厚さ1mm)をはさんで接着し、乾燥して、積層型のブラケットを製造した。この積層型のブラケットは、同じサイズの断面のステンレス管どうしの接続で良好なブラケット気密性を示した。
【実施例43】
【0122】
改質ポリプロピレン繊維を用いた複合材料の製造と強度試験
ポリプロピレン繊維の平織布 (試料サイズ:100×100mm、厚さ:0.6mm、目付10g/平方メートル)について、実施例15〜18と同様の処理を行った。改質ポリプロピレン繊維の平織布をビスフェノーA型エポキシ樹脂(日新レジン(株)製 低粘度エポキシ樹脂Z−1)と硬化剤、変性脂環式ポリアミン(日新レジン(株)製 透明型硬化剤Craft Resin))の混合物に挟んで所定時間、固化させて複合材料試験片(試料サイズ:100×100mm、厚さ:1.8mm)を作成した。未処理のポリプロピレン繊維の平織布についても、同様に複合材料試験片を作成した。改質前後での層間せん断強度を測定した結果、層間せん断強度は未処理ポリプロピレン繊維の平織布の複合材料試験片で1.3MPa、改質ポリプロピレン繊維の平織布の複合材料試験片で18.6MPaとなり、強度が増大した。さらに、従来のガラス繊維またはカーボン繊維を用いた複合材料試験片を同様に作成した結果、ガラス繊維またはカーボン繊維用いた複合材料は、破壊分離するが、改質ポリプロピレン繊維の平織布の複合材料試験片では材料が破壊しても改質ポリプロピレン繊維が切れずに材料を分離しない状態につなげられる事がわかった。
【実施例44】
【0123】
改質ポリプロピレン製成型物の帯電性試験
実施例15〜18と同様の処理で得られた改質ポリプロピレン製成型物について、摩擦に対する染色堅ろう度試験方法(JIS L 0849:2004)を参考にして、摩擦帯電性試験を行った。摩擦帯電性試験は、ポリプロピレン試料(サイズ100x100mm)と羊毛織物(サイズ100x100mm)を30回往復摩擦し、接地がない状態で、静電電位測定器(シシド静電気(株)STATIRON-DZ3)により帯電量を測定した。その結果、帯電量は、未処理ポリプロピレン製成型物ではマイナス8.00kV、改質ポリプロピレン製成型物ではマイナス3.50kVとなり、改質ポリプロピレン製成型物では帯電性が減少した。
【実施例45】
【0124】
ポリプロピレン以外の高分子材料の帯電性
ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、シリコン樹脂、フッ素樹脂等の材料についても、実施例15〜18と同様の処理を行い、帯電性が減少した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料を、(1)活性化処理する工程、(2)触媒または開始剤の存在下に高分子溶液で処理する工程、(3)単量体のグラフト化工程および(4)洗浄する工程の順に処理することを特徴とする改質方法により得られた改質された接着性と塗装性と印刷性と帯電性のある高分子材料。
【請求項2】
高分子材料を、(1)活性化処理する工程、(2)触媒または開始剤の存在下に高分子溶液で処理する工程および(3)洗浄する工程の順に処理することを特徴とする改質方法により得られた改質された接着性と塗装性と印刷性と帯電性のある高分子材料。
【請求項3】
高分子材料を、(1)溶剤処理工程、(2)活性化処理する工程、(3)触媒または開始剤の存在下に高分子溶液で処理する工程および(4)洗浄する工程の順に処理することを特徴とする改質方法により得られた改質された接着性と塗装性と印刷性と帯電性のある高分子材料。
【請求項4】
高分子材料を、(1)該高分子材料に対して含浸性のある化合物に接触させ、表面から1000ミクロン以内の含浸量が0.1〜40重量%(対高分子材料)の範囲で含浸させ、かつ材料の形状を実質的に変化させない含浸処理工程、(2)該高分子材料表面にカルボニル基を導入する活性化処理工程、(3)触媒、開始剤、加熱、紫外線照射の少なくともひとつの存在下に単量体をグラフト化する工程および(4)洗浄する工程により、この順に処理することを特徴とする改質方法により得られた改質された接着性と塗装性と印刷性と帯電性のある高分子材料。
【請求項5】
高分子材料を、(1)溶剤処理工程、(2)活性化処理する工程、(3)触媒または開始剤の存在下に高分子溶液で処理する工程、(4)単量体のグラフト化工程および(5)洗浄する工程の順に処理することを特徴とする改質方法により得られた改質された接着性と塗装性と印刷性と帯電性のある高分子材料。
【請求項6】
前記接着性のある高分子材料とは、接着剤を用いる接着および、接着剤を用いないで溶剤を用いる接着が可能となった高分子材料を示す。
【請求項7】
高分子材料からなるサンプル管の内壁を、(1)該高分子材料に対して含浸性のある化合物に接触させ、表面から1000ミクロン以内の含浸量が0.1〜40重量%(対高分子材料)の範囲で含浸させ、かつ材料の形状を実質的に変化させない含浸処理工程、(2)該高分子材料表面にカルボニル基を導入する活性化処理工程、(3)触媒、開始剤、加熱、紫外線照射の少なくともひとつの存在下に単量体または高分子をグラフト化する工程および(4)洗浄する工程により、この順に処理することを特徴とする改質方法により得られた改質された高分子材料からなるサンプル管。
【請求項8】
前記高分子材料が、フッ素樹脂、シリコン樹脂、オレフィン、オレフィン以外のビニル化合物、ビニリデン化合物およびその他の炭素−炭素二重結合を有する化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の単量体の単独重合体または共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリベンゾエート、ポリベンズオキサゾール、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール、ポリアルキルパラオキシベンゾエート、ポリベンズイミダゾール、炭素材料、ポリフェノール、アセテート、再生セルロース、ビニロン、ポリクラール、カゼイン、羊毛、絹、または麻であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の高分子材料の改質方法。
【請求項9】
前記高分子材料が、繊維、織物、編物、不織布、板、棒、管、ホース、試料用サンプル管、フィルム、シート、多孔性フィルムおよびシートならびに所定形状に成形した部材もしくは製品からなる群から選ばれる成形体または他の材料との複合材料であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の高分子材料の改質方法。
【請求項10】
前記高分子材料が、異なる材料からなる管状部材、例えば軟質部材と硬質部材とを脱離し難いように接合されてあることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の高分子材料の改質方法。
【請求項11】
前記高分子材料が、異なる材料からなる管状部材、例えば軟質部材と硬質部材とを脱離し難いように溶剤接着で接合されてあることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の高分子材料の改質方法。
【請求項12】
前記高分子材料が、医療用輸液用具で、異なる材料からなる管状部材、例えば軟質部材と硬質部材とを脱離し難いように接合されてあることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の高分子材料の改質方法。
【請求項13】
前記高分子材料が、医療用点滴用具で、小径管状突出部を端部に設けられた点滴筒と、それに結合する管状部材であることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の高分子材料の改質方法。
【請求項14】
前記活性化処理が、酸化剤処理、オゾン処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および高圧放電処理からなる群から選ばれる少なくとも1種の処理であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の高分子材料の改質方法。
【請求項15】
前記高分子溶液が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ−α−ヒドロキシビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール、デンプン、グルコマンナン、フィブロイン、セリシン、寒天、ゼラチン、卵白タンパク質およびアルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、シリコン樹脂、フッ素含有樹脂の溶液からなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子化合物であることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の高分子材料の改質方法。
【請求項16】
前記単量体のグラフト化工程において、単量体が炭素−炭素二重結合を有する化合物であることを特徴とする請求項1、4、5、7のいずれかに記載の高分子材料の改質方法。
【請求項17】
前記単量体がアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、2−ブテン酸、エチレンスルホン酸、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、アルキレングリコールモノアクリレート、アルキレングリコールモノメタアクリレート、N−ビニル−モノアルキル−カプロラクタム、N−ビニル−ジアルキル−カプロラクタム、無水マレイン酸、無水ピロメリット酸からなる群から選ばれる少なくも1種の単量体またはこれらの群から選ばれる少なくとも1種の単量体と他のビニルモノマーとの混合物であることを特徴とする請求項1、4、5、7のいずれかに記載の高分子材料の改質方法。
【請求項18】
前記単量体のグラフト化工程において、触媒または開始剤の存在下にこの工程を実施することを特徴とする請求項1、4、5、7のいずれかに記載の高分子材料の改質方法。
【請求項19】
前記単量体のグラフト化工程が、(1)触媒または開始剤の存在下または非存在下での加熱処理、(2)触媒または開始剤または光増感剤の存在下または
非存在下での紫外線照射、のいずれか単独または複数の方法により実施することを特徴とする請求項1、4、5、7のいずれかに記載の高分子材料の改質方法。
【請求項20】
前記開始剤が、過酸化物、硝酸二セリウムアンモニウム(IV)、過硫酸塩、酸化還元系開始剤およびその他のラジカル重合開始剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜7、16または18のいずれかに記載の高分子材料の改質方法。
【請求項21】
請求項1から20のいずれかに記載の高分子材料の改質方法により得られた改質された高分子材料。
【請求項22】
請求項1から20のいずれかに記載の高分子材料の改質方法により得られた改質された高分子材料を含む複合材料。
【請求項23】
請求項1から9および14から20のいずれかに記載の高分子材料の改質方法により得られた溶剤接着性が改良された高分子材料。
【請求項24】
請求項1から9および14から20のいずれかに記載の高分子材料の改質方法により得られた紫外線硬化インクによる印刷性が改良された高分子材料。
【請求項25】
請求項1から9および14から20のいずれかに記載の高分子材料の改質方法により得られた接着性が改良された高分子材料を用いて製造されたガスケット。
【請求項26】
請求項1から20のいずれかに記載の高分子材料の改質方法により得られた粘着テープの接着性が改良された高分子材料。
【請求項27】
請求項1から20のいずれかに記載の高分子材料の改質方法により得られた粘着テープの接着性が改良された高分子材料を用いた医療用器具。
【請求項28】
請求項1から20のいずれかに記載の高分子材料の改質方法により得られた改質された高分子材料を含む医療用器材。



【公開番号】特開2011−208133(P2011−208133A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53551(P2011−53551)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(393020340)
【Fターム(参考)】