説明

医療用圧定布II

本発明は、医療用圧定布、なかでも、特別に有用な折目が設けられたガーゼ圧定布に関する。さらに、本発明は、複数枚の圧定布を重ねた積層物および該圧定布を製造する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状平坦繊維製の医療用圧定布、特に、適用に便利な形態のガーゼ圧定布に関する。本発明は、さらに、該圧定布を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
医療用圧定布は、救急医療での創傷の応急治療用として、または外科手術に使用されるものとして久しく以前から公知である。これらの圧定布は、使用素材が様々であり、その差異からガーゼ圧定布と不織布圧定布とに大別される。そのうちのガーゼ圧定布は、通常、織り密度の如何に応じて、目の粗いまたは細かい格子構造を有する木綿織物から製造されている。圧定布形成ガーゼに課される要求はDIN EN 14079に規定されている。
【0003】
ガーゼ圧定布は、末端の糸が解れかねないという欠点を持つ格子構造なので、この緩みを防止する対策が何度も提案されてきた。例えばDE 2261889には、網目構造を有する少なくとも1つの細巾から成る圧定布について記載されている。糸で網目構造を形成することにより、帯状素材の向い合う両端に、糸が解れ出すことのない縁が形成される。圧定布は、最終的には、この帯状素材の部分切片から形成されるが、その場合、切片の切断縁は絎け縫いされる。その他DE 9014500には、切断縁から極近いところに熱可塑性の糸、帯状素材、細巾または細幅不織布が配置されたガーゼ圧定布が提案されている。これらの追加素材はガーゼと共に熔接、シーリングまたは接着加工される。市場で知られているガーゼ圧定布としては、例えばES圧定布が既存している。これら提案された解決策または既存製品はいずれも共通して、製造のための作業および/またはコストに関して負担がかかり過ぎると見なされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上記のものに代り、使用面で高度な取り扱い安全性をもたらす一方、同時に製造コスト面で有利な医療用圧定布を提供することにある。また、そのような圧定布を複数枚容易に積み重ねできるようにした上で、できる限りコンパクトにまとめることも目的である。さらには、この圧定布を製造するための方法を提供することも本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの課題は請求項1に記載の医療用圧定布によって解決される。それによれば、本発明に係る医療用圧定布は、少なくとも8層のシート状平坦繊維素材から成っており、ここで、各層は少なくとも1つの折目縁を介して隣接する次の層と結合しており、少なくとも2つの折目縁は互いに垂直な位置にある。圧定布は、向い合う平行な2つの切断縁Aと向い合う平行な2つの切断縁Bとを有するシート状平坦素材の長方形切片から形成されている。この場合、切断縁Aの縁長aは切断縁Bの縁長bより大きくしてある。圧定布は、少なくとも1つの第1折目縁と少なくとも1つの第2折目縁とから形成される第1囲い縁を持つように折られている。この場合、第1折目縁は直ぐ隣の層と層またはそれら層の部分切片と部分切片とを連結しており、切断縁Bに平行に形成されている。第2折目縁は、圧定布の押し当て面を形成する外側の層と層を結合させている。その場合、第1囲い縁が、直ぐ隣の層を少なくとも2つ、特に4つ結合させる第1折目縁を有するように設定することが好ましい。
【0006】
本発明の文脈においては、折目縁とは、素材切片における2つのサブユニットの完全な、または部分的な重ね合わせ、折り重ねまたは絎け縫いによって形成される縁または縁の副部分と理解される。なお、素材切片のこれらサブユニットは折目縁によって結合している。この場合、素材切片の両サブユニットは、重ね合わせ、折り重ねまたは絎け縫いされた後、直に隣接させる、すなわち、直接接触させることが可能であるが、別の層を挟んで距離を置いてもよい。本発明の文脈においては、重ね合わされた、または折り重ねられた部分切片が少なくとも1つの別の層の挿入によって距離が置かれている場合、これを囲い縁と言う。本明細書において、囲い縁は、少なくとも1つの切断縁および/または少なくとも1つの折目縁と、この切断縁または折目縁とは異なる、重ね合わされたまたは折り重ねられた部分切片を結合する折目縁とから形成され、関与する縁は互いに直接接合するか、または向い合っている。したがって、重ね合わされた、または折り重ねられた双方の部分切片を結合させる外側にある折目縁は、内側にある切断縁および/または折目縁を包み込んでいる。この場合、囲い縁は切断縁および/または折目縁と、重ね合わされた、または折り重ねられた部分切片を結合する折目縁と、から形成されている。外側にある折目縁と内側にある切断縁および/または折目縁とが互いに直接接合しているか、向い合っていることが理想的である。この場合では縁間に間隔は空いていない。しかし、切断縁および/または折目縁が、重ね合わされたまたは折り重ねられた部分切片を結合させる折目縁とは別の囲い縁によって距離を置くように設定することもできる。本発明では、このように、関与する切断縁および/または折目縁が外側にある折目縁から極僅かな間隔、すなわち最大で10%の間隔しか空いていないような縁も囲い縁と称される。その場合、相互間距離の値は、それぞれ最終的に折畳まれた状態での圧定布の外側縁の長さを基準とするが、測定基礎としては圧定布の外側縁で数値的に最大の縁長を有する外側縁を使用する。
【0007】
それに対し、シート状平坦材料における素材切片の切断縁とは、第1の素材切片を包含するより大きな素材切片から第1の素材切片を切り離すことによって形成される縁であり、この場合、第1の素材切片の切断縁と、残りの素材切片の切断縁とに振り分けることができる。これには、ナイフまたは鋏、レーザビーム、噴流水による、およびその他技術による切断など今日公知のすべての分離技術を適用することができる。
【0008】
上記の他に、突合せ縁があるが、これは、前記の切断縁または折目縁、あるいはそれら切断縁または折目縁の副部分を、別の切断縁または折目縁に、あるいはそれら別の切断縁または折目縁の副部分に突き合わせることによって形成されるが、その形成に関わる切断縁または折目縁、あるいはそれら切断縁または折目縁の副部分のことを言う。但し、関与する切断縁または折目縁あるいはそれらの副部分は同一平面上に存在するものとする。本発明に係る圧定布の突合せ縁は、互いに直接接合するか、または相互結合する位置にあることが理想的である。この場合では両縁間に距離はない。しかし本発明においては、当該の切断縁または折目縁が接合位置から極僅かにずれている、すなわち相互間距離が最大限15%まで、および/またはオーバラップ幅が15%までの縁も突合せ縁と称される。但し、相互間距離またはオーバラップ幅のそれぞれの値は、最終的に折畳まれた状態の圧定布の外側縁の長さを基準とするが、測定基礎としては圧定布の外側縁で数値的に最大の縁長を有する外側縁を使用する。
【0009】
さらに、本発明の文脈において(別途記載がなければ)、外側縁とは完成した圧定布の外縁と理解されるべきである。
【発明の効果】
【0010】
最終的に仕上げられた圧定布の外側縁を構成する、本発明に係る囲い縁を形成することにより、剥き出しの切断縁を有さず、しかも材料の節約、延いては製造コストの削減をも可能にする圧定布を提供することが可能となる。さらに、折目縁から囲い縁を形成することにより、切断縁から糸が解れて、所定使用中に糸が傷口に達するという事態が防止される。しかも、本発明に係る圧定布、特に少なくとも8層に仕上げられた圧定布では、1回広げただけでは切断縁が露出しないという利点を有している。この圧定布は取り扱い上、非常に安全で、かつ使用者にとって便利である。それは、使用者自体が例えば8層形式の圧定布を4層式の圧定布として使用するか、または8層式の圧定布として使用するかを決定することができるからである。いずれの場合も切断縁は剥き出しの状態にはならない。すなわち、素材切片のいずれの切断縁も少なくとも1つの素材層によって隠されている。
【0011】
圧定布は、基本的には、向い合う平行な2つの切断縁Aと向い合う平行な2つの切断縁Bとを有する、シート状平坦素材の長方形切片から作製することができる。切断縁Aの縁長aは切断縁Bの縁長bより大きくする。圧定布の形成では、小さいほうの切断縁Bに平行に形成される少なくとも1つの第1折目縁およびこの第1折目縁を包み込む、本発明に係る囲い縁を有する圧定布を使用したほうが、大きいほうの切断縁Aに平行に形成される第1折目縁およびこの第1折目縁を包み込む囲い縁を有する圧定布を使用した場合と比較して、相当な素材の節減が達成できる。例えば8層の正方形圧定布で同素材とした場合、押し当て面および最初の折り返し部分領域の大きさに応じて5〜15%の素材節減となる。
【0012】
その他、圧定布の押し当て面を形成する外層の形態が長方形または正方形になるように圧定布が折畳まれていれば有利であることも明かになった。特に医療用圧定布は、圧定布の押し当て面を形成する外層の全体が完全に、シート状平坦素材のそれぞれ一続きの領域によって形成されるように折畳まれており、つまり、押し当て面を形成するこの層は突合せ縁を有していない。なお、押し当て面は長方形または正方形にする。特別際立って好ましい圧定布は、最終的に仕上げられた圧定布のすべての外側縁が折目縁または囲い縁から形成されるように折畳まれている。
【0013】
この押し当て面は、本発明に係る圧定布を、向い合う平行な2つの切断縁Aと向い合う平行な2つの切断縁Bとを有するシート状平坦素材の長方形切片から作製することによって実現可能である。切断縁Aの縁長aは切断縁Bの縁長bよりも大きく取られ、圧定布のそれぞれの切断縁、折目縁、突合せ縁、囲い縁および/または外側縁は圧定布の別の切断縁、折目縁、突合せ縁、囲い縁および/または外側縁に平行または垂直に形成されており、圧定布の少なくとも1つの切断縁、折目縁、囲い縁または突合せ縁は圧定布の別の切断縁、折目縁、囲い縁または突合せ縁に垂直に形成されている。さらに、素材切片の切断縁Bに平行に形成されている折目縁が第1折目縁を形成していることが好ましい。加えて、素材切片の切断縁Bに平行に形成された折目縁が、圧定布の別の折目縁と共に、最終的に形成された圧定布の第1囲い縁を形成する折目縁を形成することが好ましく、この場合、切断縁Aが圧定布の第1突合せ縁を形成していることが特に好ましい。切断縁Bに平行に形成された折目縁は、直接隣接する圧定布の2つの層を互いに結合させている。一方、これとは別の折目縁は、圧定布の押し当て面を形成する2つの層を互いに結合させている。素材切片の切断縁Bに平行に形成されている折目縁が第1折目縁を構成していることが特に好ましく、この第1折目縁が、別の折目縁と共に、最終的に仕上げられた圧定布の第1囲い縁を形成し、切断縁Aが圧定布の第1突き合せ縁を形成していることが特に好ましい。さらには、好ましいことに、圧定布を上から見た場合に切断縁Bの副部分が圧定布内で合同に配置されるように設定することもできる。
【0014】
このように、本発明に係る圧定布は、外側縁をCおよびDとする長方形または正方形の押し当て面を有することが好ましいが、その場合、外側縁Cの縁長cは外側縁Dの縁長dより大きいか、または等しく、好ましくは、圧定布を上から見た場合切断縁Bの副部分が合同に配置され、特に外側縁Dと平行になるように折畳まれている。本発明に係る圧定布は、特に多い例として、縁長dの外側縁Dを有する正方形の押し当て面Fを有している。しかし、本発明に係る圧定布は、外側縁がCおよびDである長方形の押し当て面を有するように想定することもでき、その場合では外側縁Cの縁長cが外側縁Dの縁長dより大きく取られ、圧定布は外側縁Dに平行な第1折目縁と、それとは別の折目縁とを囲い縁として有している。この例では、長方形をなす素材切片の切断縁Aが外側縁Cに平行であり、長方形をなす素材切片の切断縁Bが外側縁Dに平行である。なお、本発明に係る圧定布は機械および手作業のいずれによっても作製できることをこの場で注記しておく。
【0015】
さらに、好ましいことに、本発明に係る圧定布は最少で8層、最多で12層から成っている。本発明に係る圧定布は、特に、その横断面で見れば、少なくとも1つの8層から成る第1領域、および10層または12層から成る第2領域を有する種類の圧定布である。これは、圧定布を横断面で見たとき、その横方向または縦方向の全領域に亘って均一な層構造を有しているというものではなく、圧定布は第1部分領域では10層または12層構造を有し、少なくとも1つのより幅広い部分領域では8層構造を有するということを意味する。特に、第1辺縁領域が8層で、第2辺縁領域が12層になっている圧定布であることが好ましい。しかし、圧定布は第1辺縁領域が8層で、第1辺縁領域とは異なる第2辺縁領域が8層で、中央領域が10層になるように設定することもできる。さらにまた、圧定布は10層または12層の均一構造を持つように設定することもできる。
【0016】
本発明の特別な実施形態の1つによれば、圧定布の各外側縁が折目縁および/または囲い縁だけから成るように設定されている。この圧定布は、取り扱い上非常に安定しているという利点がある。しかも、折目縁のこの配置により、指が圧定布の中に入り込む可能性が最小限に抑えられるという長所もある。すなわち、本発明に係る圧定布を積重ねて配置した場合でも、当該の圧定布を1枚掴むことができ、意図に反して別の層の隣接する圧定布を掴むことがなくなる。このような意図に反する事態は、特に、圧定布が、基礎となる素材切片の例えば切断縁を含んでいる場合に起こる。
【0017】
本発明の別の実施形態の1つとして、圧定布が突合せ縁として、さらに別に2つの切断縁および/または折目縁を有するように設定することもできる。特に、この突合せ縁は第2折目縁に平行であるものとする。その他、突合せ縁は囲い縁に垂直であることが好ましい。圧定布は、切断縁Aまたは切断縁Aの部分領域が突き合せ縁として形成されるように折畳まれていることが特に好ましい。そうすることで、全ての切断縁を圧定布の内部に配置させることができる。これにより、特に、圧定布のすべての外側縁が折目縁から形成されるようにすることができる。
【0018】
本発明のさらに別の実施形態の1つによれば、切断縁Bまたは切断縁Bの副部分は、そのどの点においても、平行な第1囲い縁までの距離が第1囲い縁に垂直な位置にある外側縁の長さの最小で15%、最大で85%となるように設定されている。特に好ましい圧定布は、切断縁Bまたはその副部分のどの点においても、それらに平行な第1囲い縁までの距離が第1囲い縁に垂直な位置にある外側縁の長さの最小で20%、最大で60%となる切断縁Bまたはその副部分を有している。これらの圧定布で特別に好ましいものは、切断縁Bまたはその副部分のどの点においても、それらに平行な第1囲い縁までの距離が第1囲い縁に垂直な位置にある外側縁の長さの最小で20%、最大で40%となる切断縁Bまたはその副部分を有している。
【0019】
本発明に係る圧定布の製造におけるシート状平坦素材としては、非製織のシート状平坦素材、いわゆるノンウォブン・クロスまたは不織布の部類とは異なるシート状平坦繊維素材であればいずれも使用することができる。本発明は不織布による圧定布には関与しない。本発明ではシート状平坦繊維素材としては、特に織物、編物またはメリヤス地を使用することができる。非常に好ましいのは織物で、それも特に平織物が好んで使用される。
【0020】
以上のほか、シート状平坦繊維素材は天然起源の繊維またはフィラメントを含む、および/または合成繊維を含む糸または繊維素材からも製造することができる。本発明に係る圧定布は、天然起源の繊維として、特に木綿、麻、亜麻またはリネンから成る繊維を含んでいる。シート状平坦素材が、合成繊維を含有する糸材または繊維素材を含んでいる場合、ビスコース、ポリエステル、酢酸セルロース(Celluloseacetat)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースから成る繊維またはフィラメントを使用することができる。特に好ましいシート状平坦繊維素材は、DIN EN 14079の要求を満たす、木綿および/またはビスコースから成る糸材または繊維素材を含んでいるものである。
【0021】
これらの素材、特にガーゼは、公知の非繊維系若しくはノンウォブン・ファブリックまたは不織布など非製織系のシート状平坦素材と比較して、無段の連続法での加工には適していない。この理由から、本発明に係る圧定布は、非連続の素材切片から作製しなければならない。
【0022】
本発明に係る医療用圧定布の特に好ましい実施形態はガーゼ圧定布である。このガーゼ圧定布は、DIN EN 14079に規定された少なくとも8層のガーゼを含んでおり、各層は少なくとも1つの折目縁を介して別の1層と結合しているが、その場合少なくとも1つの第1折目縁と少なくとも1つの第2折目縁とは互いに垂直な位置にある。ガーゼ圧定布は、第1突合せ縁として少なくとも2つの折目縁を有するように折畳まれており、その場合この第1突合せ縁により、直に隣接する層が結合されている。特に医療用圧定布は、第1突合せ縁として2つの折目縁を有し、第2突合せ縁として2つの切断縁を有している。この医療用圧定布は、さらに、これ迄に述べてきた種類のその他すべての特徴を個別に、または組み合わせた状態で有することができる。
【0023】
本発明によれば、このようにして、折り曲げられた切断縁が公知のES圧定布のように縁部分で重なり合うように折畳まれている圧定布が提供される。しかし本発明に係る圧定布は、この辺縁領域では、16層から成るこのES圧定布とは違い、12層しかない構造になっている。それにより、より平坦で、保管空間も少なくて済む圧定布が提供される。本発明に係る折畳みによれば、このように、遥かに積み重ね易い圧定布を提供することもできる。
【0024】
本発明をさらに発展させた考えにより、複数枚の本発明に係る医療用圧定布を含む圧定布積層物も本発明の対象とする。この積層物には前記種類の複数の圧定布が含まれている。この積層物は、特に、同じ圧定布を複数枚含むこともできるが、それぞれの圧定布は前記圧定布の個別の特徴、または組み合わされた特徴を有している。
【0025】
したがって、特に、少なくとも8層のシート状平坦繊維素材を含む複数の医療用圧定布、なかでもDIN EN 14079に規定されたガーゼを少なくとも8層含む、複数のガーゼ圧定布で構成される圧定布積層物も本発明の対象である。個別の圧定布の各々を構成するこれら少なくとも8層はいずれも、少なくとも1つの折目縁を介して圧定布中の別の層と結合しているが、少なくとも2つの折目縁は互いに垂直な位置にある。圧定布は、向い合う平行な2つの切断縁Aと向い合う平行な2つの切断縁Bとを有するシート状平坦素材からの長方形素材切片で形成されており、その切断縁Aの縁長aは切断縁Bの縁長bよりも長い。圧定布は、少なくとも1つの第1折目縁と第2折目縁とから形成される第1囲い縁を有するように折畳まれており、第1折目縁は直に隣接し合う層同士、または直に隣接し合う層の部分切片同士を結合し、切断縁Bに平行に形成されており、第2折目縁は圧定布の押し当て面を形成する外層を結合している。この場合、好ましいことに、その第1囲い縁が、直に隣接する層を結合させる少なくとも2つ、特に4つの第1折目縁を含み持つように設定することができる。
【0026】
折目縁を第1囲い縁として配置することによって、市販の圧定布と比較して、より安定であり、場所を取らない、よりコンパクトな圧定布積層物を提供することができる。それにより、特に包装材を節約することができる。例えば市販のES圧定布を積み重ねた場合、100部の圧定布から成る圧定布積層物を含めた包装の高さ(包装の外径)は155mmになる。それに対し、本発明に係る圧定布を積み重ねて(100部)同条件で包装すると、外径は139mmとなる(同一測定条件)。したがって、特に包装材および保管場所の節減が可能である。
【0027】
本発明に係る圧定布積層物としては、さらに、長方形または正方形の押し当て面を有する圧定布を含んでいることが好ましく、その場合、各圧定布は縁長cの向い合う2つの外側縁Cおよび縁長dの向い合う2つの外側縁Dを有しており、縁長cは縁長dより大きくするか、あるいは両者同じとする。この積層物は、特に正方形の押し当て面を持つ複数の圧定布を含んでいる。
【0028】
本発明のさらに別の実施形態の1つでは、本発明に係る圧定布積層物は、向い合う平行な2つの切断縁Aと向い合う平行な2つの切断縁Bとを有するシート状平坦繊維素材の長方形切片から形成されている複数の圧定布を有しており、その切断縁Aの縁長aは切断縁Bの縁長bよりも長くしてある。本発明に係る圧定布積層物で特別に好ましいものは、切断縁Bまたは切断縁Bの副部分のどの点においても、平行な第1囲い縁までの距離が第1囲い縁に垂直な位置にある第2外側縁の長さの最小で15%、最大で85%となる複数の圧定布を有している。
【0029】
これらの圧定布は、それぞれ1つ目の圧定布の第1押し当て面が2つ目またはそれ以降の圧定布の第1押し当て面と合同になるように積み重ねられている。その際さらに、切断縁Bに対応して形成される折目縁および圧定布の押し当て面を形成するシート状平坦繊維素材の両外層を互いに結合させる別の折目縁を有する、圧定布の各第1囲い縁が合同に重なり合っていればより好ましい場合がある。
【0030】
本発明をさらに発展させたものとして、シート状平坦繊維素材から成る少なくとも8層で構成される医療用圧定布を製造する方法も本発明の対象である。それによれば、各層は少なくとも1つの折目縁を介して別の層と結合しており、少なくとも2つの折目縁が互いに垂直な位置にある。特に、前記種類の圧定布を製造する方法を提供することが課題である。該方法は以下の作業工程を含んでいる。
a)向き合う2つの第1切断縁Aと向き合う2つの第2切断縁Bとを有する、シート状平坦素材から成る長方形の素材切片を用意すること(ここで、切断縁Aの縁長aは切断縁Bの縁長bよりも大きいものとする);
b)切断縁Bに平行な第1折目線および切断縁Bに平行な第2折目線に沿って、長方形素材切片の第2切断縁Bを折り返すことにより、2つの第1折目縁を形成すること;
c)切断縁Bに平行な第3折目線に沿って、b)で形成された少なくとも1つの折目縁を折り返すことにより、別の折目縁または囲い縁を形成すること;
d)切断縁Bに平行な第4折目線に沿って、c)で形成された折目縁または囲い縁を折り返すことにより、少なくとも1つの第1折目縁および第2折目縁を有する第1囲い縁を形成すること;および
e)切断縁または形成された折目縁若しくは折り返し縁をさらに折り返すことにより、突き合せ縁または別の折目縁若しくは折り返し縁を形成すること。
【0031】
2つの突き合せ縁の形成を目的として、長方形素材切片の第1切断縁Aの折り返しを、特に作業工程e)において行う。
【0032】
さらには、作業工程b)では、長方形素材切片の第2切断縁Bの折り返しを行うことが好ましい。その場合、各折目線はどの点においても最も近い切断縁Bから少なくとも5mm、最大で30mmの間隔を空けておく。
【0033】
本発明に係る方法に関しては、特に、最少で8層、最多で12層のシート状平坦素材から成る医療用圧定布を製造する方法を提供しなければならない。本発明に係る方法は、横断面で見た場合、少なくとも1つの8層から成る第1領域、および10層または12層から成る第2領域を有する圧定布を製造する方法であることが特に好ましい。これは、圧定布は横断面で見て、横または縦の広がり全域に亘って均一な層構造を有しているということを意味しているのではなく、圧定布は第1部分領域では10層〜12層であり、少なくとも1つの別の部分領域では8層であることを意味すると理解されなければならない。特に主流になるのは、8層から成る第1辺縁領域と12層から成る第2辺縁領域とを有する圧定布である。しかし、圧定布が8層から成る第1辺縁領域とその第1辺縁領域とは異なる、8層から成る第2辺縁領域および10層から成る中央領域を持つように設定することもできる。さらには、圧定布が10層または12層の均一な層構造を持つように設定することも可能である。
【0034】
上記のほか、さらに好ましい方法の1つでは、2つの囲い縁の形成目的で、作業工程b)で形成された両折目縁の折り返しを作業工程c)において行うように設定されている。
【0035】
また、代替法の1つとして、2つの囲い縁の形成目的に、および2つの突き合せ縁の形成目的に、作業工程b)で形成された両折目縁の特に対称的な折り返しを作業工程c)において行うように設定することもできる。
【0036】
さらに、別の代替法の1つでは、切断縁Bに平行な第3の折目線に沿って、1つの折目縁をもう一方の折目縁上へ折り返すことを作業工程c)において行うように設定することもできる。
【0037】
特に、その面積がd2で表わされる正方形の押し当て面Fを有する圧定布の製造方法を提供することが課題である(ここで、dは圧定布の外側縁Dの縁長である)。この方法では、母材料としては、切断縁AおよびBを有する長方形の素材切片を使用することが好ましい。この場合、この素材切片において切断縁Aの縁長aがa=4d+2eであり、切断縁Bの縁長bがb=d+2e’であればさらに好ましい。但し、dは最終的に折畳まれた圧定布の縁長、eは切断縁Aの副部分の縁長でe≦1/2d、e’は切断縁Bの副部分の縁長でe’≦1/2dとする。このようにすれば、大きな裁断屑やごみを出さずに精確な折畳みだけで、押し当て面全体を通じて極めて均一な素材分布が配慮された、最少で8層、最多で10層または12層の圧定布を作製することができる。
【0038】
ここに記述されている方法は、医療用圧定布のコスト的に有利な製造を保証する方法である。
【0039】
本発明の好ましいまたは別の実施形態について本明細書で列挙した特徴は個別の好ましい形態または別の形態に限定されるものでないことをこの場で強調しておく。むしろ、実施形態の組み合わせまたは別の形態の個別的特徴の組み合わせも同じく本発明に係る実施形態に挙げられる。同様に、本発明は下記の図面説明によって実質的に減縮されることはないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は本発明に係る圧定布の製造のための素材切片を示す上面図である。
【図2a】図2aは本発明に係る圧定布の製造のための中間生成物を示す上面図である。
【図2b】図2bは図2aに基づく中間生成物の様々な横断面を示す図である。
【図2c】図2cは図2aに基づく中間生成物の様々な横断面を示す図である。
【図2d】図2dは図2aに基づく中間生成物の様々な横断面を示す図である。
【図3a】図3aは本発明に係る圧定布の製造のための中間生成物を示す上面図である。
【図3b】図3bは図3aに基づく中間生成物の様々な横断面を示す図である。
【図3c】図3cは図3aに基づく中間生成物の様々な横断面を示す図である。
【図3d】図3dは図3aに基づく中間生成物の様々な横断面を示す図である。
【図4a】図4aは本発明に係る圧定布を示す上面図である。
【図4b】図4bは図4aに基づく圧定布の様々な横断面を示す図である。
【図4c】図4cは図4aに基づく圧定布の様々な横断面を示す図である。
【図4d】図4dは図4aに基づく圧定布の様々な横断面を示す図である。
【図4e】図4eは図4aに基づく圧定布の様々な横断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、本発明に係る押し当て面が正方形の圧定布を製造するためのDIN EN 14079に記載されている長方形の素材切片(10)を示している。この素材切片は、縁長a=230.0mmの向い合う2つの第1切断縁A(14、15)を有している。上記素材切片は、さらに、縁長b=99.0mmの向い合う2つの第2切断縁B(16、17)を有している。
【0042】
以下では図面を参照して、少なくとも8層から成る圧定布を製造する方法を説明する。それによれば、第1の作業工程において上述の長方形の素材切片(10)を用意する。第2の作業工程では、切断縁B(16、17)を折目線I(11、12)に沿って矢印IaおよびIbの方向に折り返すことにより、素材切片の表側に第1折目縁G(26)およびG’(27)を形成する。切断縁B(16、17)を折り返すことによって、素材切片の折り返されたサブユニットおよび残されたサブユニットがそれぞれ単独の層を形成し、これら2つのサブユニットが重なり合っているため、形成されたこれらの層は直に隣接し、形成された折目縁G(26)およびG’(27)を介して結合している。折目線Iとそれに平行する近いほうの切断縁Bとの距離eについては、それぞれe=14.5mmである。次に、第3の作業工程では、切断縁A(14、15)を折目線II(18、19)に沿って矢印IIaおよびIIbの方向に折り返すことにより、素材切片の表側に第2の折目縁H(24)およびH’(25)を形成する。折目線II(18、19)とそれに平行する近いほうの切断縁Aとの距離e’については、それぞれ24.5mmである。切断縁A(14、15)を折り返すことによって第2の折目縁H(24)およびH’(25)が形成される。この場合これらの折目縁HまたはH’はそれぞれ、囲い縁(33a、33b、33a’、33b’)として形成されている、互いに離間した2つの領域を有している。さらに、切断縁Aの部分領域からは突合せ縁(28a、29a、28b、29b、28b’、29b’)が形成される。
【0043】
図2aは、第3作業工程後に得られる、切断縁B(16、17)に平行な外側縁bb(36)、bb’(37)および切断縁A(14、15)に平行な外側縁aa(34)、aa’(35)を有する中間生成物A(30)を示している。ここで、外側縁aa(34)は、第2折目縁H(24)の副部分(24a)、並びに折目縁Hのその他の副部分(24a’、24b、24a’’、24b’)から形成される囲い縁(33a、33a’)によって形成される(図2cを参照:切断線B−Bに沿って切断したときの中間生成物Aの横断面および図2dを参照:切断線C−Cに沿って切断したときの中間生成物Aの横断面)。同様に、外側縁aa’(35)は第2折目縁H’(25)の副部分(25a)、並びに折目縁H’のその他の副部分(25a’、25b、25a’’、25b’)から形成される囲い縁(33b、33b’)によって形成される。外側縁bb(36)は、第1折目縁G(26)の重なり合う副部分(26a、26b、26c)から形成されており、外側縁bb’(37)は、第1折目縁G’(27)の重なり合う副部分(27a、27b、27c)から形成されている(図2bを参照:切断線A−Aに沿って切断したときの中間生成物Aの横断面)。切断縁A(14、15)の折り返しにより、切断縁Aから突合せ縁(28a、29a、28b、29b、28b’、29b’)が形成されるが、これらの突合せ縁間にはそれぞれ1.0mmの間隔を空けておく。切断縁Bのすべての部分領域(16a、16b、16c、17a、17b、17c)は、その上に素材領域が被さっているため隠れている(図では、被さっている素材層で隠されている縁は破線で描いてある)。
【0044】
中間生成物A(30)は後続の作業工程でさらに加工される。ここで、中間生成物Aに形成された外側縁bb(36)およびbb’(37)を折目線III(31、32)に沿って矢印IIIaおよびIIIbの方向へ折り返すことにより、素材切片の表側にさらに別の突合せ縁(38a、39a、38b、39b)を形成する。1つ目の折目線III(31)と、それに平行で最短の外側縁aa(36)との距離e’’については、e’’=50.0mmである。2つ目の折目線III(32)と、それに平行で最短の外側縁aa’(37)との距離e’’’についても、e’’’=50.0mmである。
【0045】
このように、この作業工程では外側縁aa(36)およびbb’(37)が対称的に折り曲げられる。外側縁bb(36)およびbb’(37)のこの折り返しによって、囲い縁I(41)、I’(42)、並びに中間生成物Bの突合せ縁(38a、39a、38b、39b、38c、39c)が形成される。この場合、形成された、中間生成物の各突合せ縁(38a、39a、38b、39b、38c、39c)は折目縁G(26)およびG’(27)の副部分から形成されているので、これらの突合せ縁は直に隣接する層を結合させている。結合された層と層の間には別の層が挿入または中間配置されてはいない。
【0046】
図3aは、第4作業工程後に得られる、切断縁Bに平行な外側縁bbb(56)、bbb’(57)と切断縁Aに平行な外側縁aaa(54)、aaa’(55)を有する中間生成物B(50)を再現したものである。ここで、外側縁aaa(54)は第2折目縁Hの重なり合う副部分(24d、24c’、24c’’)および第3作業工程で形成された囲み縁(33a、33a’)によって形成されている(図3cを参照:切断線E−Eに沿って切断したときの中間生成物Bの横断面および図3dを参照:切断線F−Fに沿って切断したときの中間生成物Aの横断面)。同様に外側縁aaa’(55)は第2折目縁H’の重なり合う副部分(25c’、25d、25c’’)および第3作業工程で形成された囲み縁(33b、33b’)によって形成されている。外側縁bbb(56)は囲い縁I(41)により形成されており、外側縁aaa’(57)は囲い縁I’(42)により形成されている(図3bを参照:切断線D−Dに沿って切断したときの中間生成物Bの横断面)。ここで、内側にある折目縁(43、44)はそれぞれ、外側に存在する折目縁(41a、42a)によって包み込まれている。内側にある折目縁はいずれも、外側にある対応折目縁に直接接合しているので、その間に距離はない。中間生成物Bは、切断縁Aまたはその部分領域から形成された、外側縁aaa(54)およびaaa’(55)に平行な突き合せ縁(28c’、29c’、28c’’、29c’’、28b、29b、28b’、29b’)を有する。中間生成物Bの別の階層では、切断縁Aの別の副部分から別の突き合せ縁(28d、29d)が形成されている。この両突き合せ縁は直に向い合っているが、両者間に1.0mmの距離が置かれている。折目縁GおよびG’から形成された突き合せ縁(38a、39a、38b、39b)も同様に1.0mmの間隔が取られている。切断縁Bおよびその各副部分(16a、16b、16c、17a、17b、17c)、並びに、切断縁Aの副部分から形成される突合せ縁(28b、29b、28c’、29c’、28c’’、29c’’、28d、29d、28b’、29b’)は、これらの上に存在する素材層で隠されている。したがって、この中間生成物B(50)においては剥き出しの切断縁は表に現われない。
【0047】
その後、中間生成物B(50)は、最終作業工程でさらに加工される。ここでは、前工程で囲い縁I’(42)から形成された中間生成物B(50)の外側縁bbb’(57)を折目線IV(51)に沿って矢印IVaの方向に折り返し、それにより、折り返された外側縁bbb’(57)を中間生成物B(50)の囲い縁Iから形成された外側縁bbb(56)の上に重ね合わせる。折目線IV(51)から外側縁bbb(56)までの距離fについては、f=50.5mmである。このように、折目線IV(51)は、対状の突き合せ縁(38a、39a、38b、39b、38c、39c)の丁度間にある。この作業工程により折目線IV(51)に沿って新たな折目縁J(47a)およびJ’(46a)が形成される。中間生成物B(50)の突き合せ縁(38a、39a、38b、39b、38c、39c)を形成する折目縁GおよびG’あるいはそれらの部分領域(26a、26b、27a、27b、26c、27c)は、折目縁J’(46a)にのみ接している。折目縁GまたはG’の各部分領域と折目縁J’(46a)との間には間隔がないので、関与している縁は直接接合している。このようにして、この作業工程では囲い縁K’(46)も形成される。
【0048】
図4aは、前記の方法で作製した圧定布(60)を図示したものである。該圧定布は、縁長としてはd=50.0mmであり、同じ長さの4外側縁D’、D’’、D’’’およびD’’’’(64、65、66および67)を有し、面積d2=25.0cm2の正方形の押し当て面Fを有している。切断縁Bのすべての部分領域および切断縁Aのすべての部分領域は、別の素材層の陰に隠れている。図4aには、切断縁Bの上方部分領域(17b、17c)と突合せ縁として形成されている切断縁Aの上方部分領域(28d’’、29d’’)だけが描かれている。折目縁H(24)の部分領域と折目縁H’(25)の部分領域とから形成される第1突合せ縁(28d’’、29d’’)は間近に接近しており、両者の間隔は1.0mmである。この間隔は、完成した圧定布の外側縁(縁はすべて同じ長さ)と比較して、その長さの2%に相当する。第2切断縁Bまたはその副部分(16a、16b、16c、17a、17b、17c)はぴったり合同に重なり合っており、そのどの点からでも、平行な第1外側縁D’(67)までの距離は14.5mmである。これは第1外側縁に垂直な第2外側縁D’’(64)の長さの29%に相当する。
【0049】
続いての図4b、4c、4dおよび4eでは、圧定布(60)の層構造および最終的な形成状態での囲み縁が図解されている。図4bは切断線I−Iで切断した横断面、図4cは切断線G−Gで切断した横断面、図4dは切断線J−Jで切断した横断面および図4eは切断線H−Hで切断した横断面を示している。図を分かり易くするために、個々の層およびその中にある折り目縁は(すべての横断面図に共通して)互いに分離させて、あるいは互いに間隔を取って描いてある。特に、押し当て面Fを形成する外側の層(61、62)の両方が、折目縁J(47a)によって互いに結合されているのが明瞭に示されている。これら両層はいずれも素材切片の一続きの素材領域によって形成されている。その他の層はいずれもこの両外層に包み込まれている状態なので、その他の層はすべて両外層(61、62)の間に存在する。
【0050】
さらに、圧定布の第1外側縁D’を形成する囲い縁K(47)が示されている。囲い縁K(47)は、内側の位置にある折目縁GおよびG’、あるいはそれらの副部分(26a、26b、27a、27b、26c、27c)と外側の位置にある折目縁J(47a)とから形成されており、内側にある折目縁は、それら内側の折目縁と共に同じく囲い縁K’(46)を形成している別の折目縁J’(46a)により、外側にある折目縁とは隔てられている。その間隔は、0.5mm未満である使用素材の厚さに対応して無視できる程度なので、内側にある縁も外側の位置にある折目縁に直に接する状態にある。内側にある各折目縁GおよびG’、あるいはそれらの副部分(26a、26b、27a、27b、26c、27c)は、直に隣接する2つの層同士またはそれらの層の部分切片同士を結合させている(図4bおよび4c参照)。例えば折目縁G’(27)の第1副部分(27b、27c)はそれぞれ、第3層(61e、61e’)の部分切片のそれぞれと、圧定布の第4層(61d、61d’)の部分切片とを結合している。さらに別の副部分(27a)は圧定布の第5層(61c)と第6層(61b)とを結合している。上記の囲い縁K(47)またはK’(46)と垂直な位置に、切断縁Aから形成された突合せ縁(28d’’、29d’’)および切断縁Aまたはそれらの副部分から形成されたその他の突合せ縁(28c’、29c’、28c’’、29c’’、28d’、29d’、28b、29b、28b’、29b’)が存在する。
【0051】
さらに、圧定布の第2外側縁D’’(64)が折目縁Hの重なり合う副部分(24c’、24d’、24c’’、24d’’)および第3作業工程で形成された囲い縁(33a、33a’)から形成され、第3外側縁D’’’(65)が折目縁H’の重なり合う副部分(25c’、25d’、25c’’、25d’’)および第3作業工程で形成された囲い縁(33b、33b’)から形成され、第4外側縁D’’’’(66)が重なり合う囲い縁I(41)およびI’(42)から形成されていることが分かる。重なり合うすべての縁は上から見たとき合同になっている。したがって、圧定布の外側縁は折目縁または囲い縁で形成されたものだけである。圧定布(60)の外側縁に素材切片(10)の切断縁が関わっていないことが特記される。この圧定布の各層は、少なくとも1つの折目縁を介して圧定布の別の層と結合している。圧定布は、その横断面を見ると、第1辺縁領域と第2辺縁領域とを有している。第1辺縁領域が8層形式であるのに対して、第2辺縁領域は12層形式に構成されている。第2辺縁領域の追加的な4つの層は、切断縁B(16、17)の折り返しによって生じたものである(図4b、4c参照)。
【0052】
8層形式としての当圧定布は1回広げただけでは剥き出しの切断縁は現れない(図3a参照)。したがって、この圧定布は4層式または8層式としても使用できよう。圧定布(60)は、それぞれ測定時の検査圧力を2g/cm2とした場合、第1辺縁領域(8層)の厚さは1.12mmであり、第2辺縁領域(12層)の厚さは1.36mmである(下記参照)。本圧定布は、このように、全領域に亘って均一な素材分布を示しているので、容易に複数枚積み重ねることができる。
【0053】
以下では、積み重ねの高さを比較表示する。例えば市販のES圧定布(Paul Hartmann(株)の5×5cm大のES圧定布)を積み重ねた場合、100枚の積み重ね包装とすれば高さは155mm(包装の外径)となる。それに対し、本発明に係る圧定布(60)を100枚積み重ね、同条件、同包装材で包装した場合、外径は139mmとなる(同一測定条件)。これは積み重ねの高さにして約10%の縮減に相当する。
【0054】
5枚限定の部分的積み重ねおよび単独1枚の圧定布について次の値が得られた。但し、検査圧力として2g/cm2を遵守した。各圧定布はそれぞれが同一になるように折畳み、積み重ねはぴったり合同になるように行った。
【0055】
【表1】

【0056】
折目縁を設けることにより、市販の圧定布に比べて安定であり、場所を取らない圧定布を提供することができる。
【0057】
次表では、向い合う平行な2つの切断縁Aと向い合う平行な2つの切断縁Bとを有する長方形の素材切片から、前記方法に従って形成した正方形の圧定布の例が挙げられている。用意した素材切片の切断縁Aの縁長aは、切断縁Bの縁長bより大きくしている。比較対象の圧定布の最終的に折畳まれた状態での外縁長dは、それぞれ表記の通りである。表を参照して、公知のPaul Hartmann社製ES圧定布(1.折畳み試料)に対し、同素材でどれほどの素材節減が実現されるかを検証する。
【0058】
【表2】

【0059】
例えば、押し当て面が正方形であり、縁長dがd=5cm(圧定布1)であり、第1工程で折り返される切片の幅eが両者同じくe=1.5cmとした場合、既存のES圧定布に対する本発明に係る圧定布の素材節減率は約11.5%に達する。本発明に係る圧定布の場合、突き合せ縁も囲い縁も間隔は取られていない。素材の節減は、このように、新たな方法で精確に折目形成することによって達成可能である。その場合、その折畳み方により本発明に係る突き合せ縁が実現される。
【0060】
ここで説明したこの医療用圧定布は、特に救急医療で、並びに外科手術にも使用することができる。当圧定布は、非常に高い使用安全性と非常に均一な素材分布とに秀でている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも8層を有するシート状平坦繊維素材から成り、これら各層が少なくとも1つの折目縁を介して隣接する次の層と結合しており、少なくとも2つの折目縁が互いに垂直な位置に存在し、向い合う平行な2つの切断縁A(14、15)と向い合う平行な2つの切断縁B(16、17)とを有するシート状平坦素材(10)の長方形切片から形成され、ここで、切断縁Aの縁長aが切断縁Bの縁長bより大きい、医療用圧定布(60)であって、前記圧定布が、少なくとも1つの第1折目縁(26a、26b、26c、27a、27b、27c)と第2折目縁(47a)とから形成される第1囲い縁(47)を有するように折畳まれていること、前記の第1折目縁(26a、26b、26c、27a、27b、27c)が直に隣接し合う層、または直に隣接し合う層の部分切片を結合しており、前記切断縁B(16、17)に平行に形成されていること、および前記の第2折目縁が前記圧定布の押し当て面(61、62)を形成する外層を結合していることを特徴とする医療用圧定布。
【請求項2】
前記第1囲い縁(47)が、直ぐ隣の層を少なくとも2つ、特に4つ結合している第1折目縁(26a、26b、26c、27a、27b、27c)を有することを特徴とする、請求項1に記載の医療用圧定布。
【請求項3】
前記圧定布が、前記圧定布の押し当て面を形成する外層(61、62)の全体が完全に、シート状平坦素材のそれぞれ一続きの領域によって形成されるように折畳まれていることを特徴とする、前記請求項のうちの少なくとも一項に記載の医療用圧定布。
【請求項4】
前記圧定布を上から見た場合に、前記切断縁Bの副部分(16a、16b、16c、17a、17b、17c)が前記圧定布の内部で合同に配置されていることを特徴とする、前記請求項のうちの少なくとも一項に記載の医療用圧定布。
【請求項5】
前記切断縁Bまたは前記切断縁Bの副部分(16、17、16a、16b、16c、17a、17b、17c)については、そのどの点においても、前記囲い縁(47)までの距離が前記囲い縁に垂直な位置にある外側縁(64、65)の長さの最小で20%、最大で80%になることを特徴とする、前記請求項のうちの少なくとも一項に記載の医療用圧定布。
【請求項6】
前記圧定布の各外側縁(64、65、66、67)が折目縁または囲い縁だけから形成されていることを特徴とする、前記請求項のうちの少なくとも一項に記載の医療用圧定布。
【請求項7】
前記圧定布が、突き合せ縁(28d’’、29d’’)として2つの切断縁または折目縁を有していることを特徴とする、前記請求項のうちの少なくとも一項に記載の医療用圧定布。
【請求項8】
前記圧定布が、前記切断縁Aまたは前記切断縁Aの部分領域が突き合せ縁(28d’’、29d’’)として形成されていることを特徴とする、前記請求項のうちの少なくとも一項に記載の医療用圧定布。
【請求項9】
前記圧定布が、横断面で見た場合、8層から成る第1辺縁領域および12層から成る第2辺縁領域を有していることを特徴とする、前記請求項のうちの少なくとも一項に記載の医療用圧定布。
【請求項10】
前記請求項のうちの少なくとも1つに記載の圧定布(60)を複数枚含む圧定布積層物。
【請求項11】
シート状平坦繊維素材を少なくとも8層含む医療用圧定布(60)であって、これら各層が少なくとも1つの折目縁を介して隣接する次の層と結合しており、少なくとも2つの折目縁が互いに垂直な位置にある圧定布、特に前記請求項のうちの少なくとも一項に記載の圧定布(60)を製造する方法であって、
下記の作業工程:
a)向き合う2つの第1切断縁A(14、15)と向き合う2つの第2切断縁B(16、17)とを有する、シート状平坦素材から成る長方形の素材切片(10)を用意すること、ここで、前記切断縁Aの縁長aは前記切断縁Bの縁長bよりも大きい;
b)切断縁B(16、17)に平行な第1折目線(11)および前記切断縁B(16、17)に平行な第2折目線(12)に沿って、前記長方形素材切片(10)の前記切断縁B(16、17)を折り返すことにより、2つの第1折目縁(26、27)を形成すること;
c)切断縁B(16、17)に平行な第3折目線(31、32)に沿って、b)で形成された少なくとも1つの折目縁(26、27)を折り返すことにより、別の折目縁または囲い縁(41、42)を形成すること;
d)切断縁B(16、17)に平行な第4折目線(51)に沿って、c)で形成された折目縁または囲い縁(41、42)を折り返すことにより、少なくとも1つの第1折目縁(26a、26b、27a、27b、26c、27c)および第2折目縁(47a)を含む第1囲い縁(47)を形成すること;および
e)切断縁または形成された折目縁または折り返し縁をさらに折り返すことにより、突き合せ縁または別の折目縁もしくは折り返し縁を形成すること
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記作業工程e)において、前記長方形素材切片の前記第1切断縁A(14、15)が特に対称的に折り返されることにより、2つの突き合せ縁(28、29)が形成されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記作業工程c)において、作業工程b)で形成された両折目縁(26、27)が特に対称的に折り返されることにより、2つの囲い縁(41、42)が形成されることを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記作業工程c)において、作業工程b)で形成された両折目縁(26、27)が特に対称的に折り返されることにより、2つの囲い縁(41、42)および2つの突き合せ縁(38a、39a、38b、39b、38c、39c)が形成されることを特徴とする、請求項11、12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記作業工程c)において、折目縁(26、27)が、切断縁B(16、17)に平行な第3折目線に沿って他の折目縁(26、27)上に折り返されることを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【請求項16】
前記作業工程b)において、前記長方形素材切片の前記第1切断縁B(16、17)が折り返されること、さらに、各折目線(11、12)が、それらのどの点においても、最も近くの前記切断縁B(16、17)から最小で5mm、最大で30mm離れていることを特徴とする、請求項11または15に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【公表番号】特表2010−534533(P2010−534533A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518521(P2010−518521)
【出願日】平成20年7月12日(2008.7.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005717
【国際公開番号】WO2009/015757
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(500038020)パウル ハルトマン アクチェンゲゼルシャフト (64)
【Fターム(参考)】