医療用恒温器の管理システム
【課題】メーカーや型式の違いによる異なる仕様の医療用恒温器を試験室に複数台設けて統合管理する場合でも、細胞の取り違えミスや交叉汚染を確実に防止するためのシステムを容易に構築することができる。
【解決手段】培養作業室12内に培養器24を複数台設け、それぞれの培養器24で異なるドナーの細胞を扱う管理システムにおいて、培養器24ごとの扉24Aの開閉を管理するロックユニット38、110を、培養作業室12の床面60に立設された支持フレーム40に設けることにより、培養器24とは別体でロックユニット38、110を設ける。
【解決手段】培養作業室12内に培養器24を複数台設け、それぞれの培養器24で異なるドナーの細胞を扱う管理システムにおいて、培養器24ごとの扉24Aの開閉を管理するロックユニット38、110を、培養作業室12の床面60に立設された支持フレーム40に設けることにより、培養器24とは別体でロックユニット38、110を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用恒温器の管理システムに係り、特にヒトや動物の細胞や組織を原材料として、培養や加工を行う施設に設けられる医療用恒温器の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ関連会社のようにヒトや動物の細胞や組織を原材料として、培養や加工を行う施設(例えば委託された特定の細胞の培養や、培養皮膚、培養軟骨等を製造する施設)や、大規模病院のように自家移植治療を目的として、患者の細胞を培養する培養器(例えば、CO2 インキュベーター)を備えた施設では、数週間かけて細胞を培養している。以下、細胞という場合には組織も含むものとする。
【0003】
この培養作業では、培養液の交換作業(培地交換)や、増殖した細胞を複数の容器に分ける継代作業を行うが、培養作業においては、雑菌の混入、交叉汚染、他人の細胞との取り違えミス等を防止することは、安全性を確保する上で最も重要な項目であり、細心の注意が必要とされている。そして、このためには、一つの培養作業室(細胞を培養する室)内では、一人のドナーに限定して培養する必要があった。
【0004】
従って、複数のドナーの細胞を対象として同時期に培養できるようにするには、ドナーの数だけ培養作業室が必要になる。これにより、培養作業室を多数集めた細胞調製室を建造しなくてはならず、設備が大型化すると共に、無菌管理が複雑になり、建設コストや維持コストが膨大になるという問題がある。また、病院内の既存設備スペースを利用する場合には、十分なドナー数の培養作業室を確保できない可能性が高い。
【0005】
このような背景から、同じ培養作業室に複数の培養器を設け、一つの培養器で一人のドナーの細胞を培養管理することが必要になるが、2台以上の培養器を同じ培養作業室に設ける場合には、ドナー細胞の取り違えミスが発生しないような管理システムが絶対的に必要になる。
【0006】
ドナー細胞の取り違えミスを防止する方法としては、(1) 標準作業手順書を作成してこれに従って行う、(2) 書類上の記載と実際の対象細胞との照合についてダブルチェックする、(3) 細胞の培養容器、培養器等に識別マークやバーコードを取り付けて管理する等が一般的に行われているが、十分ではない。
【0007】
この対策として、例えば、特許文献1では、各検体個々の登録から廃棄までに必要な情報を、コンピュータによって管理するようにした検体(細胞)取り違え防止及び管理システムが開示されている。また、特許文献2では、複数の各培養器(各セル)は個別のキーに対応する検出器を有し、この検出器の応答により各セルの開閉扉の開閉が可能となるが、この一つのセル検出器の応答により他のセルの検出器の機能が連動して遮断されるようにすることで、他の培養器から細胞を取り出してしまう等の誤作業を防止するようにしたヒト細胞・組織培養システムが開示されている。
【特許文献1】特開2004−215611号公報
【特許文献2】特開2004−16094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のように各検体個々の登録から廃棄までに必要な情報を、コンピュータによって管理するようにしても、人間の行う作業なので、判断ミス、多忙時等におけるうっかりミス等の原因で、作業者がある作業時間帯に2台の培養器から細胞を取り出して、別人のドナー細胞を並行して取り扱うことがあるという欠点がある。例えば、一人のドナー細胞を遠心分離している待ち時間の間に、他のドナーの培養器から取り出した細胞を顕微鏡で観察する。この場合には、作業者が異なるドナーの細胞に触れることで、交叉汚染の危険も生じると共に、培養器に戻すときに、戻し間違ってしまう場合もある。
【0009】
また、特許文献2のように、個々の培養器の扉の開閉を検出器に対応させたキーで管理して細胞の取り違えを防止しようとすると、鍵は培養器の台数分必要になり繁雑であるだけでなく、培養器の扉の開閉に使用した鍵は汚染されるので、その都度滅菌して再使用する必要がある。従って、キーで管理する方法は、管理の煩雑さと滅菌操作ミスによる交叉汚染の可能性があり適当ではない。
【0010】
このように、同じ培養作業室に複数の培養器を設け、一つの培養器で一人のドナーの細胞を培養管理する場合に、取り違えミスや交叉汚染等を確実に防止する方法がないのが実情である。
【0011】
また、複数の培養器自体にロック機構を設けて、そのロック機構を例えばコンピュータで制御することで、目的の培養器の扉のみが開閉できるようにするシステムも考えられるが、培養器のメーカーや型式によってロック機構が異なったり、培養器の形状や大きさ等が異なることが多い。これにより、システムが複雑になるので、異なるメーカーや型式の培養器を一緒に使用できない。従って、メーカーや型式に限定されずに、例えば培養する細胞ごとに使用者の要求仕様にあった異なる仕様の培養器を培養作業室に複数設けて統合管理したいと考えても、それができないのが実情である。
【0012】
このような、メーカーや型式の違いによる異なる仕様に限定されずに、取り違えミスや交叉汚染等を確実に防止するシステムは、何も培養器に限ったことではなく、医療やバイオテクノロジー等で異なるサンプルを扱う医療用恒温器全般に必要な技術である。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、メーカーや型式の違いによる異なる仕様の医療用恒温器を試験室に複数台設けて統合管理する場合でも、サンプル例えば細胞の取り違えミスや交叉汚染を確実に防止するためのシステムを容易に構築することができる医療用恒温器の管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、試験室内に医療用恒温器を複数台設け、それぞれの医療用恒温器で異なるサンプルを扱う医療用恒温器の管理システムにおいて、前記医療用恒温器ごとの扉の開閉を管理するロックユニットを、前記試験室の床に立設された支持フレームに設けることにより、前記医療用恒温器とは別体で前記ロックユニットを設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項1は、医療用恒温器ごとの扉の開閉を管理するロックユニットを、試験室の床に立設された支持フレームに設けることにより、医療用恒温器とは別体でロックユニットを設けたので、メーカーや型式の違いによる異なる仕様の医療用恒温器を試験室に複数台設けて統合管理する場合でも、サンプル例えば細胞の取り違えミスや交叉汚染を確実に防止するためのシステムを容易に構築することができる。
【0016】
請求項2は請求項1において、前記試験室は前記サンプルとして細胞の培養に関する作業を行う培養作業室であると共に、前記医療用恒温器は培養器であることを特徴とする。
【0017】
請求項2は、本発明を最大限に有効活用できる例であり、培養作業室に複数の培養器を設けて、一つの培養器で一人のドナーの細胞を培養管理する場合である。
【0018】
請求項3は請求項1又は2において、前記ロックユニットは、前記医療用恒温器の扉が開成不可能なロック位置及び開成可能な開成位置に移動自在なロックアームと、前記ロックアームを前記ロック位置にロックするロック手段と、前記ロック手段のロックを解除するスイッチ手段と、前記扉の開成の許可を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項3のロックユニットは、ロックアームを人が手動で移動させる手動タイプの構成である。スイッチ手段でロック手段のロックを解除すると、作業者はロックアームを開成位置に移動させることができる。これにより、作業者は医療用恒温器の扉を開けることができる。また、扉を閉めてロックアームをロック位置に戻すと、ロック手段がロックされてロックアームがロック位置で動かなくなる。これにより、医療用恒温器の扉がロックされて開かなくなる。
【0020】
請求項4は請求項1又は2において、前記ロックユニットは、前記医療用恒温器の扉が開成不可能なロック位置及び開成可能な開成位置に移動自在なロックアームと、前記ロックアームを前記ロック位置と前記開成位置との間で移動させる駆動手段と、前記駆動手段をON−OFFするスイッチ手段と、前記扉の開成の許可を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項4のロックユニットは、ロックアームを自動で移動させる自動タイプの構成である。スイッチ手段をONにすると、駆動手段はロックアームを開成位置に自動的に移動させる。これにより、作業者は医療用恒温器の扉を開けることができる。また、扉を閉めてスイッチ手段をOFFにすると、駆動手段はロックアームをロック位置に戻す。これにより、医療用恒温器の扉がロックされて開かなくなる。
【0022】
請求項5は請求項3又は4において、前記ロックアームが前記ロック位置にあるか開成位置にあるかを確認するロックアーム位置確認センサーを備えたことを特徴とする。
【0023】
ロックアームがロック位置にあるか開成位置にあるかを確認するロックアーム位置確認センサーを備え、医療用恒温器の扉が確実にロックされたかを確認することができので、ロック忘れを確実に防止できる。
【0024】
請求項6は請求項3〜5の何れか1において、前記ロックユニットには、前記医療用恒温器の扉が開成状態か閉成状態かを確認する扉開閉確認センサーを備えたことを特徴とする。
【0025】
医療用恒温器の扉の開閉状態を確認する扉開閉確認センサーを設け、医療用恒温器の扉が確実に閉められたかを確認することができるので、扉の不十分な閉じ方により医療用恒温器内の温度条件等が変動することを防止できる。
【0026】
請求項7は請求項3〜6の何れか1において、前記スイッチ手段と前記表示手段とは、押すとスイッチが入りランプが点灯する押しボタンランプにより1つの手段として構成されていることを特徴とする。
【0027】
これにより、ロックユニットをコンパクト化することができる。
【0028】
請求項8は請求項1〜7の何れか1において、前記支持フレームには、前記ロックユニットが複数設けられ、複数のロックユニットは個別に、前記医療用恒温器の上下方向、幅方向、奥行き方向の少なくとも1方向にスライドするスライド機構が設けられていることを特徴とする。
【0029】
ロックユニットを個別に、医療用恒温器の上下方向、幅方向、奥行き方向の少なくとも1方向にスライドすることができるので、メーカーや型式の違いにより医療用恒温器の形状や大きさ等が異なる場合でも一層対応し易くなる。
【0030】
請求項9は請求項3〜8の何れか1において、前記ロックユニットの前記表示手段は、前記培養作業室の外に設けた集中制御盤からの信号によって表示されることを特徴とする。
【0031】
これにより、培養作業室に入って作業を行う作業者は、複数の医療用恒温器のうちのどれが作業を行う医療用恒温器であるかを目視で確認することができるので、他の医療用恒温器と取り違えるミスを防止できる。
【0032】
請求項10は請求項9において、前記集中管理盤には、前記試験室内に設けられた複数の医療用恒温器ごとに一人の作業者を指定するための作業者指定機構が設けられていることを特徴とする。
【0033】
このように、複数の医療用恒温器ごとに担当する一人の作業者を指定すれば、他の医療用恒温器と取り違えるミスを防止できるだけでなく、交叉汚染も生じることがない。
【0034】
請求項11は請求項10において、前記作業者指定機構は、パスワード管理とバーコード管理の2重管理であることを特徴とする。
【0035】
このように、作業者の指定を、パスワード管理とバーコード管理の2重管理すれば、取り違えミスや交叉汚染に対して一層安全である。
【0036】
請求項12は請求項1〜11の何れか1において、前記支持フレームは、前記医療用恒温器を載置する架台を兼用することを特徴とする。
【0037】
支持フレームに医療用恒温器を載置する架台の機能を設けることで、装置全体をコンパクト化できる。
【0038】
請求項13は請求項3〜12の何れか1において、前記ロックユニットには、前記スイッチ手段の起動に連動してタイマー手段が動作し、タイムアップした場合に警報を鳴らす警報手段が設けられていることを特徴とする。
【0039】
これにより、作業者が医療用恒温器の扉を閉め忘れたまま、培地交換作業や継代作業等を行うことを防止できる。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように、本発明の医療用恒温器の管理システムによれば、メーカーや型式の違いによる異なる仕様の医療用恒温器を試験室に複数台設けて統合管理する場合でも、サンプル例えば細胞の取り違えミスや交叉汚染を確実に防止するためのシステムを容易に構築するこがのできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下添付図面に従って本発明に係る医療用恒温器の管理システムにおける好ましい実施の形態について詳説する。尚、本実施の形態では、試験室として細胞の培養に関する作業を行う培養作業室、医療用恒温器として培養器(インキュベータ)の例で説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、医療やバイオテクノロジー等において異なるサンプルを扱う医療用恒温器全般に適用することが可能である。
【0042】
図1は、本発明の医療用恒温器の管理システムが組み込まれる細胞調製室10の一例を示す見取り図である。
【0043】
図1に示すように、細胞調製室10は、培養作業室12、更衣室14、脱衣室16の3つの室に区画されており、培養作業室12で作業を行う作業者は更衣室用ドア18から更衣室14に入る。更衣室14において、作業者は、私服をクリーンスーツやクリーンシューズに着替えると共に、手洗い場15で手を消毒した後、培養作業室入口ドアー20から培養作業室12に入る。培養作業室12内には、クリーンベンチ22、複数台の培養器24、24…、遠心分離機26、作業台28に置かれた倒立型位相差顕微鏡30等が設けられる。また、培養作業室12を形成する側壁の外側面には、培養作業室12内に設けられた複数台の培養器24を統合管理する集中管理盤13が設けられる。
【0044】
クリーンベンチ22は、クラス100以下の雰囲気で細胞の調製作業を行う装置であり、作業者は、ディッシュやフラスコ等の容器から細胞を取り出して酵素液や洗浄液を添加したり、細胞を新しい容器に分ける継代作業等を行う。
【0045】
培養器24は、細胞をディッシュやフラスコ等の容器に入れた状態で保管し、細胞を培養する機器であり、温度や二酸化炭素濃度がコントロールされ、培養条件が一定になるようにコントロールされている。本発明では、この培養器24が培養作業室12に複数台設けられ、それぞれの培養器24ごとに異なるドナーの細胞が培養される。
【0046】
遠心分離機26は、容器内に酵素液を加えた細胞を遠心管に入れて、細胞と液を遠心分離したり、洗浄液を入れて遠心分離したりする機器であり、分離された細胞は、作業者によって上記のクリーンベンチ22内で新しい容器に分けられる。
【0047】
倒立型位相差顕微鏡30は、培養器24から取り出した培養中の細胞を容器ごと観察し、培養中に異常(例えば汚染)がないかを確認する機器である。
【0048】
上記の装置及び機器を使用して、作業者が培養作業室12で行う一般的な作業としては、次の通りである。即ち、細胞を培地を入れた容器に入れて、培養器24で培養する(培養作業)。この培地を3日前後で交換する(培地交換作業)。容器内の細胞は1週間前後で容器内に満杯になるので、細胞を新しい容器に分ける(継代作業)。継代作業を4回前後行うことで、細胞培養が終了する。培養中は定期的(1日に1回位)に培養器24の細胞を倒立型位相差顕微鏡30で観察する。
【0049】
培養作業室12での作業が終了した作業者は、培養作業室出口ドアー32から脱衣室16に入り、クリーンスーツ、クリーンシューズ等を脱衣して私服に着替えると共に、手洗い場34で手を消毒してから脱衣室ドアー36から細胞調製室10の外にでる。
【0050】
ところで、上記のように、同じ培養作業室12内に複数台の培養器24を設け、一つの培養器24で一人のドナーの細胞を培養管理する場合には、作業者が作業する際に、細胞の取り違えミスや交叉汚染等を確実に防止することが必要である。
【0051】
図2及び図3は、同じ培養作業室12に2段積みで2列、合計4台の培養器24が配設されており、培養器24ごとの扉24Aの開閉を管理する手動タイプのロックユニット38を説明する説明図である。このロックユニット38は、培養作業室12の床面60に立設された支持フレーム40に支持された状態で培養器24ごとの扉24Aの開閉を管理する装置であり、培養器24とは別体の装置として設けられる。また、図2及び図3の培養器24は、培養器24の左側(図2及び図3の(B)参照)に扉24Aのヒンジ17があり、右から左に扉24Aが開かれる。
【0052】
ロックユニット38のタイプとしては、ロックアーム42の駆動を作業者の人力で行う手動タイプと、ロックアーム42の駆動を駆動手段で自動で行う自動タイプとがあるが、先ず図2及び図3で手動タイプの例で説明する。図2は全体構成図であり、図3はロックユニット近傍の拡大図であると共に、図2及び図3において、(A)は正面図、(B)は上面図、(C)は右側面図、(D)は左側面図である。
【0053】
図2及び図3に示すように、手動タイプのロックユニット38は、主として、培養器24の扉24Aが開成不可能なロック位置a及び開成可能な開成位置bに移動自在なロックアーム42と、ロックアーム42をロック位置aにロックするロック手段44と、ロック手段44のロックを解除するスイッチ手段と、ロックアーム42がロック位置aにあるか開成位置bにあるかを確認するロックアーム位置確認センサー46と、扉24Aの開成の許可を表示する表示手段と、扉24Aが開成状態か閉成状態かを確認する扉開閉確認センサー48と、図示しない警報タイマーと少なくとも連動した警報器50と、警報器50の警報を止めると共に警報タイマーをリセットする警報用押しボタンランプ52とで構成され、これらの全てが支持フレーム40に支持される。また、スイッチ手段と表示手段は押しボタンランプ54により1つの手段として構成されている。
【0054】
図2に示すように、支持フレーム40は逆T字状をした2本の支柱56、56を培養器24の幅に相当する間隔を開けて対向配置し、2本の支柱56、56の下端位置と上部位置とをそれぞれ連結棒58、58で連結した構造を有している。そして、この2本の支柱56、56を培養作業室12の床面60と天井面62との間に突っ張り治具等のようなもので突っ張らせることにより安定的に床面60上に立設させる。
【0055】
そして、培養器24の段積みされる段数の数に相当するロックユニット38が支持フレーム40に設けられる。図2では、培養器24を2段積みで2列設けているので、上記の支持フレーム40の列ごとに1基ずつ合計2基設け、それぞれの支持フレーム40の上段と下段にそれぞれ2つのロックユニット38を設ける。尚、支持フレーム40としては、図9で後述するように、培養器24を載置する架台を兼用するタイプのものでもよい。
【0056】
次にロックユニット38の構造について説明すると、2本の支柱56、56にそれぞれ固定されたヒンジ64、64に一対の揺動アーム66、66の基端部が揺動自在に支持されると共に、一対の揺動アーム66、66の先端部にロックアーム42の両端がそれぞれ支持される。これにより、作業者が人力でロックアーム42をロック位置aから開成位置bに揺動させることにより、培養器24の扉24Aが開成可能になり、ロック位置aに戻すことで扉24Aがロックされる。ロックアーム42の材質としては、培養器24の扉24Aに当たったときに衝撃を小さくするように、弾性部材例えばシリコンゴムを使用するとよい。尚、本実施の形態では、ロックアーム42を揺動させることにより、ロック位置aと開成位置bとの間を移動できるようにしたが、揺動に限ったものではなく、ロック位置aと開成位置bとの間を直線的に移動する場合でもよい。
【0057】
また、図2(C)及び図3(C)の右側の支柱56には、ロックユニット38の機器ボックス68が支持され、この機器ボックス68に上記したロック手段44、押しボタンランプ54、ロックアーム位置確認センサー46、扉開閉確認センサー48、警報器50、警報用押しボタンランプ52が設けられる。
【0058】
ロックアーム42をロック位置aでロックするロック手段44としては、例えばソレノイドバルブを好適に使用することができる。図4に示すように、ソレノイドバルブの駆動部(図示せず)には、C−D方向に揺動可能であると共にC方向に付勢されたフック部材44Aが設けられる。一方、揺動アーム66の基端部側の下面にはフック部材44Aに係合するL字型の係合部材66Aが設けられる。これにより、作業者がロックアーム42を下方向(ロック位置a方向)に揺動させると、係合部材66Aがフック部材のテーパー部44Bに当たってフック部材44AをD方向に揺動させながら、フック部材44Aと係合部材66Aとが係合する。これによりロックアーム42の移動がロックされる。ロックを解除する場合には、押しボタンランプ54を押してソレノイドバルブのロックを解除することにより、ソレノイドバルブの駆動部が駆動してフック部材44AをD方向に揺動させる。これにより、フック部材44Aと係合部材66Aとの係合が解除されてロックアーム42の開成位置bへの移動が可能になる。
【0059】
一方、図3(D)に示すように、左側の支柱56には、ロックアーム42の揺動を支持する揺動支持機構70が設けられる。揺動支持機構70は、支柱56に支持されたL字部材72と、揺動アーム66の中央部との間に、太筒と細筒がスライド自在に嵌合した入れ子構造の支持棒74の両端をピン76、76で連結した構造を有している。これにより、ロックアーム42がロック位置aと開成位置bとの間で揺動すると、ピン連結された入れ子構造の支持棒74が伸縮するので、ロックアーム42の揺動を支持することができる。
【0060】
このように、培養器24の扉24Aの開閉を管理するロックユニット38を、培養器24には設けずに、培養器24とは別体の装置とすることで、異なるメーカーや型式の培養器24であっても問題ない。
【0061】
図5は、ロックユニット38の変形例で、複数台のロックユニット38を個別に、培養器24の上下方向(Z−Z方向)、幅方向(Y−Y方向)、及び奥行き方向(X−X方向)にスライドできるようにしたものである。図5(A)は右側面図、図5(B)は上面図である。
【0062】
即ち、支柱56には、上下方向(Z−Z方向)に平行な一対のレール78、78が設けられ、このレール78にリニアベアリング80を介してL字型の搭載台82がスライド自在に支持される。この搭載台82の上面には、培養器24の幅方向(Y−Y方向)に平行な一対レール84、84が設けられ、このレール84にリニアベアリング86を介して板状のスライド台88がスライド自在に支持される。また、レール84の両端にはストッパ84Aが設けられる。スライド台88の上面には、培養器24の奥行き方向(X−X方向)に平行な一対のレール90、90が設けられ、このレール90にリニアベアリング92を介して機器ボックス68がスライド自在に支持される。また、レール90の両端にはストッパ90Aが設けられる。
【0063】
これにより、ロックユニット38は、培養器24の上下方向(Z−Z方向)、幅方向(Y−Y方向)、及び奥行き方向(X−X方向)にスライドできる。搭載台82、スライド台88、機器ボックス68をそれぞれスライドさせる駆動源としては、特に図示しないがボールネジ機構やシリンダ機構等を好適に使用することができる。尚、図5(B)の符号67は、ロックユニット38を培養器24の上下方向(Z−Z方向)に移動した後で、ロックユニット38を確実に固定する為の安全ピンであり、支柱56と搭載台82とを連結する。
【0064】
このように、支柱56に設けた複数のロックユニット38を個別に、培養器24の上下方向(Z−Z方向)、幅方向(Y−Y方向)、及び奥行き方向(X−X方向)にスライドできるので、扉24Aの高さ、あるいは幅や奥行きが異なる培養器24を段積みした場合であっても、培養器24に合わせて適切な位置にロックアーム42を位置合わせすることができるので、一層便利になる。
【0065】
一方、培養作業室12の側壁外側に設けられた集中管理盤13は、統合管理されている複数の培養器24の中で、作業者が培養作業室12内で作業を行う1台の培養器24に対応するロックユニット38の押しボタンランプ54のみを点灯される信号を送信するための選択スイッチを備えている。そして、集中管理盤13からの発信された信号は、支持フレーム40の上側の連結棒58に取り付けられた中継端子ボックス94(図2参照)を介してロックユニット38の機器ボックス68に送信される。送信方法は、有線であっても無線であってもよい。
【0066】
図6に示すように、集中管理盤13の選択スイッチとしては、図6(A)に示したタッチパネル方式や、図6(B)に示したキーセレクト方式を好ましく使用することができる。図6(A)のタッチパネル方式は、タッチパネル96に形成されたパスワード入力画面96A上の選択タッチスイッチ表示96B(例えば数字等)に人がタッチしてパスワードを入力することにより作業目的の培養器24(No1〜No4)に対応するロックユニット38を選択する方式である。また、図6(B)に示すキーセレクト方式は、セレクトスイッチキー98をキー穴100に差し込んでセレクトレバー102のロックを解除し、セレクトレバー102で作業目的の培養器(No1〜No4)に対応するロックユニット38を選択する方式である。尚、本実施の形態では、タッチパネル方式で説明する。
【0067】
また、集中管理盤13には主電源及び操作電源の電源である電源用押しボタンランプ104が設けられると共に、作業目的の培養器24に対応するロックユニット38のロックが解除中であることを知らせるパイロットランプ106が設けられる。尚、クリーンベンチ22、培養器24、遠心分離機26、作業台に置かれた倒立型位相差顕微鏡30等の駆動電源は、集中管理盤13から取っても、別途電源盤を設けるようにしてもよい。
【0068】
図7は、ロックユニット38の支持フレーム40を構成する支柱56を、培養器24の扉24Aのヒンジ17側に1本だけ立設し、この1本の支柱56に複数のロックユニット38を設けたものである。図7(A)は正面図、図7(B)は上面図である。
【0069】
この場合、ロックアーム42は、揺動アーム66及びヒンジ64を介して支柱56に揺動自在に肩持ち支持される。
【0070】
このように、1本の支柱56で支持フレーム40を構成する場合には、支柱56を必ず培養器24の扉24Aのヒンジ17側に立設することが必要である。ヒンジ17側に立設すれば、培養器24の扉24Aを完全に閉めないと、ロックアーム42をロック位置aに揺動することができないからである。
【0071】
図8は、自動タイプのロックユニット110の一例であり、(A)は正面図、(B)は上面図、(C)は右側面図である。尚、手動タイプのロックユニット38と同じ部材には同符号を付して説明する。
【0072】
図8に示すように、自動タイプのロックユニット110は、主として、培養器24の扉24Aが開成不可能なロック位置a及び開成可能な開成位置bに移動自在なロックアーム42と、ロックアーム42をロック位置aと開成位置bとの間で移動させる駆動手段112と、駆動手段をON−OFFするスイッチ手段と、扉24Aの開成の許可を表示する表示手段と、ロックアーム42がロック位置aにあるか開成位置bにあるかを確認するロックアーム位置確認センサー46と、扉24Aが開成状態か閉成状態かを確認する扉開閉確認センサー48と、図示しない警報タイマーと少なくとも連動した警報器50と、警報器50の警報を止めると共に警報タイマーをリセットする警報用押しボタンランプ52とが機器ボックス114に設けられ、この機器ボックス114が支持フレーム40に支持される。
【0073】
スイッチ手段と表示手段は押しボタンランプ54により1つの手段として構成されている。また、ロックアーム42をロック位置a及び開成位置bに移動させる駆動手段112としては、例えばロータリーソレノイド112Aと回転力を付勢する付勢手段112B(例えばゼンマイバネ等)との組み合わせを好適に使用することができる。即ち、ロータリーソレノイド112Aに回転軸116が支持され、その先端にロックアーム42が取り付けられると共に、回転軸116が付勢手段112Bで開成位置bからロック位置aに回転力が付与されている。機器ボックス114には、ロックアーム42が回転移動する部分に切欠き113が形成されており、ロックアーム42が開成位置bにあるときには、ロックアーム42が機器ボックス114内に収納される。
【0074】
そして、駆動手段112のスイッチである押しボタンランプ54を押してスイッチをONにすると、ロータリーソレノイド112Aが駆動されてロックアーム42がロック位置aから開成位置bに回転移動する。また、押しボタンランプ54を再び押してスイッチをOFFにすると、付勢手段112Bによりロックアーム42が開成位置bからロック位置aに戻る。尚、符号118は軸受であり、120は回転軸116を支持する筒部材(ブッシュ)であり、122は集中管理盤13とロックユニット38との送受信ケーブルである。尚、自動タイプのロックユニット110では、ロックユニット110を個別に、培養器24の上下方向(Z−Z方向)、幅方向(Y−Y方向)、及び奥行き方向(X−X方向)にスライドさせるための機構は示さなかったが、図5で示したと同様のスライド機構を設けることが好ましい。
【0075】
図9は、自動タイプのロックユニット110を、2段積みで2列、合計4台の培養器24に適用したものである。支持フレーム40は、培養器24を載置する架台を兼用するタイプのもので、左右の側板40A、40Bと、底板40Cと、天板40Dと、棚板40Eとで構成され、底板40Cにはキャスター124と、支持フレーム40の移動をロックするロック部材126とが設けられる。そして、天板40Dと棚板40Eとに、4台の培養器24に対応してそれぞれロックユニット38が設けられる。
【0076】
図10及び図11は、医療用恒温器の管理システムの運転方法のステップフローを示したフローチャートである。尚、培養作業室12内には、No1〜No4の4台の培養器24が設けられており、それぞれの培養器24で異なるドナーの細胞が培養される一例で説明する。
【0077】
集中管理盤13の電源用の押しボタンランプ104を押して主電源及び操作電源を入れる(ステップ10)。これにより、電源用の押しボタンランプ104が点灯し、集中管理盤13の操作が可能となる。次に、培養作業室12で作業する作業者とは別の人で、管理システムを管理する管理者が集中管理盤13のタッチパネル96に形成されたパスワード入力画面96A上の選択タッチスイッチ96Bである数字の1〜4にタッチして管理者のパスワードを入力する(ステップ12、ステップ14)。これにより、本発明の管理システムが立ち上がって作業者のタッチパネル入力が可能になる。管理者が間違ってパスワードを入力した場合には再びステップ14に戻る。
【0078】
次に作業者は、パスワード入力画面96A上の選択タッチスイッチ96Bにタッチして作業者のパスワードを入力する(ステップ16)。これにより、選択タッチスイッチ96Bの数字のうちの1の数字のみが点滅する(ステップ18)。作業者が間違ってパスワードを入力した場合には再びステップ16に戻る。培養作業室12内に設けられたNo1〜No4の4台の培養器24(図10にはincuと記載)は、培養器24ごとに作業者が指定されており、その作業者のパスワードと培養器24のNoとが関連づけられている。図10では、作業者はNo1の培養器24のパスワードを有している。このように、作業者のパスワードと培養器24のNoとを関連づけて、1台の培養器24を1人の作業者が取り扱う作業者指定機構を集中管理盤13に設けることで、他の培養器24の細胞を取り違えたり、交叉汚染を招くことを防止することができる。この場合、確率的には極めて小さいが、作業者が間違って入力したパスワードが別の作業者のパスワードに一致してしまう危険を避けるために、パスワード入力とは別に、例えば作業者固有のバーコード等の識別情報を有するカードを集中管理盤13の読み取り器(図示せず)に挿入することで、2重チェックすることが一層好ましい。
【0079】
次に、作業者が点滅している1の数字にタッチすると点滅から点灯になり、間違った数字にタッチした場合には再びステップ18に戻る。作業者は、1の数字が点滅から点灯になったことを確認してタッチパネル画面96上の「確認」97のタッチスイッチにタッチする(ステップ20)。これにより、集中管理盤13のNo1〜No4のパイロットランプ(PL)106のうちのNo1のパイロットランプが点灯すると共に、培養作業室12内のNo1の培養器24に対応するロックユニット38の押しボタンランプ54が点灯する。従って、作業者は、培養作業室12に入ったときに、どの培養器24のロックユニット38を取り扱うべきかを間違えることなく認識することができる。作業者が「確認」97以外の間違った部分にタッチしてしまった場合には、ステップ20に戻る。
【0080】
次に、作業者は、培養作業室12に入って、点灯しているロックユニット38の押しボタンランプ54を押す(ステップ22)。これにより、ロックアーム42の移動をロックしているスイッチ(例えばソレノイドバルブ)がロックを自動解除する。このロックの自動解除により、集中管理盤13のNo1パイロットランプ106が点灯から点滅に変わると共に、ロックユニット38の押しボタンランプ54が点灯から点滅に変わる。この点灯から点滅に変わったことで、管理者は集中管理盤13によりNo1培養器24のロックが解除中であることを知ることができると共に、作業者はロックユニット38の押しボタンランプ54によりNo1培養器24のロックが解除中であることを知ることができる。もし、作業者がNo1培養器24以外のロックユニット38の押しボタンランプ54(点灯していない)を間違って押した場合には、ロックは解除されないので、再びステップ20に戻って点灯しているロックユニット38の押しボタンランプ54を押す。
【0081】
次に、作業者は、手動タイプのロックユニット38の場合には、人力でロックアーム42をロック位置aから開成位置bに移動する(ステップ24)。また、自動タイプのロックユニット110の場合には、押しボタンランプ54を押してロックを自動解除すると、それに連動してロックアーム42の駆動手段112が駆動して自動的にロックアーム42をロック位置aから開成位置bに移動する。これにより、No1培養器24の扉24Aの開成が可能となるので、作業者は、扉24Aを開けて培養している細胞の培養容器を取り出して培養作業室12で作業を行う。このロックアーム42のロック位置aから開成位置bへの移動により、ロックアーム位置確認センサー46がOFF状態になり、それに連動して監視タイマーが作動し始める。作業者は、監視タイマーのタイムアップ(例えば1分)以内に、No1培養器24の扉24Aを開けて培養している細胞の培養容器を取り出し、再び扉24Aを閉めてロックアーム42を開成位置bからロック位置aまで戻しておく(ステップ26〜ステップ30)。これにより、ロックアーム位置確認センサー46がON状態になり、監視タイマーがリセットされると共に、ロックアーム42の移動をロックしているスイッチ(例えばソレノイドバルブ)がロック作動する。このロック作動により、集中管理盤13において点滅していたNo1パイロットランプ106が点滅から点灯に変わると共に、ロックユニット38において点滅していた押しボタンランプ54が点滅から点灯に変わる。この点滅から点灯に変わったことで、管理者は集中管理盤13によりNo1培養器24の扉24Aが閉められて再びロックされたことを知ることができると共に、作業者はロックユニット38の押しボタンランプ54によりNo1培養器24が再びロックされたことを知ることができる。もし、培養器24の扉24Aを閉めても、ロックアーム42がロック位置aに戻されない場合には、ロックアーム位置確認センサー46がOFF状態のままなので、警報器50が警報を発する。これにより、培養器24の扉24Aがロックされないまま作業者が培養作業室12から出てしまうのを防止できる。
【0082】
また、扉24Aの開閉により扉開閉確認センサー48が作動し、扉24Aが開のときには扉開閉確認センサー48がOFF状態になり、扉24Aが閉のときにはON状態になる。自動タイプの場合には、押しボタンランプ54を再度押してOFFにすることで、ロックアーム42の駆動手段112が自動的にロックアームを開成位置bからロック位置aに移動駆動するようにしてもよく、あるいは扉開閉確認センサー48がON状態になると、駆動手段112が駆動するようにしてもよい。
【0083】
もし、作業者がNo1培養器24から培養容器を取り出した後、扉24Aを閉め忘れて監視タイマーのタイムアップ(例えば1分)が過ぎてしまった場合には、扉異常警報用の押しボタンランプ52が点滅すると共に、警報器50が鳴って、扉24Aが開状態であることを作業者に知らせる。扉異常警報用の押しボタンランプ52を押すことにより警報器50が止まるので、警報器50が鳴った原因を解除した後、再度押しボタンランプ52を押すと監視タイマーがリセットされる。
【0084】
作業者が培養作業室12での作業が終了したら、作業者は再び図10でAで示されたステップ位置に戻り、ステップ22〜ステップ30の操作を繰り返して培養容器をNo1培養器24内に戻し、脱衣室16を通って細胞調製室10の外に出る。
【0085】
管理者は、作業者が細胞調製室10の外に出てきたことを確認したら、集中管理盤13のタッチパネル96に形成されたパスワード入力画面96A上の選択タッチスイッチ96Bである数字の1〜4にタッチして管理者のパスワードを入力する(ステップ32、ステップ34)。これにより、作業者のタッチパネル入力が可能になる。管理者が間違ってパスワードを入力した場合には再びステップ34に戻る。
【0086】
次に作業者は、パスワード入力画面96A上の選択タッチスイッチ96Bにタッチして作業者のパスワードを入力する(ステップ36)。これにより、選択タッチスイッチ96Bの数字のうちの1の数字のみが点滅する(ステップ38)。作業者が間違ってパスワードを入力した場合には再びステップ36に戻る。次に、作業者が点滅している1の数字にタッチすると点滅から点灯になり、間違った数字にタッチした場合には再びステップ38に戻る。次に、作業者は、1の数字が点滅から点灯になったことを確認してタッチパネル画面96上の「確認」97のタッチスイッチにタッチする(ステップ40)。これにより、集中管理盤13のNo1のパイロットランプ(PL)106が消灯すると共に、培養作業室12内のNo1の培養器24に対応するロックユニット38の押しボタンランプ54が消灯する。これにより、No1培養器24の例で示した医療用恒温器の管理システムの一連のステップが終了する。もし、作業者が培養作業室12で再度作業を行う場合には、図10のBで示したステップ位置に戻って最初から行う。
【0087】
この場合、図10のBで示したステップ位置に戻ると、本発明の管理システムの立ち上げから行うことになるので、効率的でない。従って、もし、作業者が培養作業室12で再度作業を行う場合には、作業者が自分のパスワードを入力するステップ16に戻るようにしてもよい。
【0088】
また、上記ステップフローでは、作業者のパスワードと培養器24のNoとを関連づけた作業者指定機構を設けることで、作業者がパスワード画面96A上の選択タッチスイッチ96Bにタッチして自分のパスワードを入力すると、その作業者に指定された例えばNo1培養器24のみを取り扱えるようにした。しかし、別の態様として、管理者が作業者に作業させる培養器24や作業内容を全て管理者自身で管理するようにしてもよい。例えば、管理者が作業者にNo1培養器24で培養されている細胞について継代作業をさせる場合には、複数の培養器24でそれぞれ管理する細胞ごとに割り当てられた細胞識別登録番号(培養器番号と細胞番号)のうち、No1培養器24に対応する細胞識別登録番号を選択タッチスイッチ96Bに入力する。これにより、No1培養器24のみのロックユニット38がロック解除になる。また、細胞識別登録番号を入力することで、パスワード画面96A上には作業内容、例えば「培養」、「工程検査」、「継代」、「保守」等の作業内容が表示されるので、作業者は自分のパスワードを選択タッチスイッチ96Bに入力したら、管理者から言われた作業内容である「継代」の部分をタッチする。これにより、集中管理盤13のNo1〜No4のパイロットランプ(PL)106のうちのNo1のパイロットランプが点灯すると共に、培養作業室12内のNo1の培養器24に対応するロックユニット38の押しボタンランプ54が点灯する。もし、作業者が間違った作業内容の表示にタッチした場合には、パイロットランプもロックユニット38の押しボタンランプ54も点灯しない。図10のAから後の操作は同様である。
【0089】
従って、作業者は、培養作業室12に入ったときに、どの培養器24のロックユニット38を取り扱うべきかを間違えることなく認識することができると共に、培養作業室12に入る際に、これから何の作業を行うかを認識することができる。
【0090】
以上説明したように、本発明の管理システムを採用し、上記のように運転することで、メーカーや型式の違いによる異なる仕様の医療用恒温器を試験室に複数台設けて統合管理する場合でも、細胞の取り違えミスや交叉汚染を確実に防止するためのシステムを容易に構築することができる。
【0091】
尚、本実施の形態では、4台の培養器24の例で説明したが複数台であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の医療用恒温器の管理システムを組み込む細胞調製室の見取り図
【図2】培養作業室内に設けた4台にそれぞれロックユニットを設けた場合の全体図
【図3】手動タイプのロックユニットの構造を説明する説明図
【図4】ロックアームのロック及び解除の機構を説明する説明図
【図5】ロックユニットに設けたスライド機構の説明図
【図6】集中管理盤の説明図
【図7】ロックユニットを培養器のヒンジ側に設けた場合の説明図
【図8】自動タイプのロックユニットの構造を説明する説明図
【図9】培養作業室内に設けた4台にそれぞれ自動タイプのロックユニットを設けた場合の全体図
【図10】本発明の医療用恒温器の管理システムの運転ステップを説明するフローチャート図
【図11】図10のフローチャートの続きで、本発明の医療用恒温器の管理システムの運転ステップを説明するフローチャート図
【符号の説明】
【0093】
10…細胞調製室、12…培養作業室、13…集中管理盤、14…更衣室、16…脱衣室、22…クリーンベンチ、24…培養器、26…遠心分離機、28…作業台、30…倒立型位相差顕微鏡、38…手動タイプのロックユニット、40…支持フレーム、42…ロックアーム、44…ロック手段、46…ロックアーム位置確認センサー、48…扉開閉確認センサー、50…警報器、52…警報用押しボタンランプ、54…スイッチ手段と表示手段を一緒にした押しボタンランプ、56…支柱、58…連結棒、60…床面、62…天井面、64…ヒンジ、66…揺動アーム、68…機器ボックス、70…揺動支持機構、72…L字部材、74…支持棒、76…ピン、78…レール、80…リニアベアリング、82…搭載台。84…レール、86…リニアベアリング、88…スライド台、90…レール、92…リニアベアリング、94…中継端子ボックス、96…タッチパネル、96A…パスワード入力画面、96B…選択タッチスイッチ表示、97…確認表示、98…セレクトスイッチキー、100…キー穴、102…セレクトレバー、104…電源用押しボタンランプ、106…パイロットランプ、110…自動タイプのロックユニット、112…駆動手段、112A…ロータリーソレノイド、112B…付勢手段、113…切欠き、114…機器ボックス、116…回転軸、118…軸受、120…筒部材(ブッシュ)
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用恒温器の管理システムに係り、特にヒトや動物の細胞や組織を原材料として、培養や加工を行う施設に設けられる医療用恒温器の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ関連会社のようにヒトや動物の細胞や組織を原材料として、培養や加工を行う施設(例えば委託された特定の細胞の培養や、培養皮膚、培養軟骨等を製造する施設)や、大規模病院のように自家移植治療を目的として、患者の細胞を培養する培養器(例えば、CO2 インキュベーター)を備えた施設では、数週間かけて細胞を培養している。以下、細胞という場合には組織も含むものとする。
【0003】
この培養作業では、培養液の交換作業(培地交換)や、増殖した細胞を複数の容器に分ける継代作業を行うが、培養作業においては、雑菌の混入、交叉汚染、他人の細胞との取り違えミス等を防止することは、安全性を確保する上で最も重要な項目であり、細心の注意が必要とされている。そして、このためには、一つの培養作業室(細胞を培養する室)内では、一人のドナーに限定して培養する必要があった。
【0004】
従って、複数のドナーの細胞を対象として同時期に培養できるようにするには、ドナーの数だけ培養作業室が必要になる。これにより、培養作業室を多数集めた細胞調製室を建造しなくてはならず、設備が大型化すると共に、無菌管理が複雑になり、建設コストや維持コストが膨大になるという問題がある。また、病院内の既存設備スペースを利用する場合には、十分なドナー数の培養作業室を確保できない可能性が高い。
【0005】
このような背景から、同じ培養作業室に複数の培養器を設け、一つの培養器で一人のドナーの細胞を培養管理することが必要になるが、2台以上の培養器を同じ培養作業室に設ける場合には、ドナー細胞の取り違えミスが発生しないような管理システムが絶対的に必要になる。
【0006】
ドナー細胞の取り違えミスを防止する方法としては、(1) 標準作業手順書を作成してこれに従って行う、(2) 書類上の記載と実際の対象細胞との照合についてダブルチェックする、(3) 細胞の培養容器、培養器等に識別マークやバーコードを取り付けて管理する等が一般的に行われているが、十分ではない。
【0007】
この対策として、例えば、特許文献1では、各検体個々の登録から廃棄までに必要な情報を、コンピュータによって管理するようにした検体(細胞)取り違え防止及び管理システムが開示されている。また、特許文献2では、複数の各培養器(各セル)は個別のキーに対応する検出器を有し、この検出器の応答により各セルの開閉扉の開閉が可能となるが、この一つのセル検出器の応答により他のセルの検出器の機能が連動して遮断されるようにすることで、他の培養器から細胞を取り出してしまう等の誤作業を防止するようにしたヒト細胞・組織培養システムが開示されている。
【特許文献1】特開2004−215611号公報
【特許文献2】特開2004−16094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のように各検体個々の登録から廃棄までに必要な情報を、コンピュータによって管理するようにしても、人間の行う作業なので、判断ミス、多忙時等におけるうっかりミス等の原因で、作業者がある作業時間帯に2台の培養器から細胞を取り出して、別人のドナー細胞を並行して取り扱うことがあるという欠点がある。例えば、一人のドナー細胞を遠心分離している待ち時間の間に、他のドナーの培養器から取り出した細胞を顕微鏡で観察する。この場合には、作業者が異なるドナーの細胞に触れることで、交叉汚染の危険も生じると共に、培養器に戻すときに、戻し間違ってしまう場合もある。
【0009】
また、特許文献2のように、個々の培養器の扉の開閉を検出器に対応させたキーで管理して細胞の取り違えを防止しようとすると、鍵は培養器の台数分必要になり繁雑であるだけでなく、培養器の扉の開閉に使用した鍵は汚染されるので、その都度滅菌して再使用する必要がある。従って、キーで管理する方法は、管理の煩雑さと滅菌操作ミスによる交叉汚染の可能性があり適当ではない。
【0010】
このように、同じ培養作業室に複数の培養器を設け、一つの培養器で一人のドナーの細胞を培養管理する場合に、取り違えミスや交叉汚染等を確実に防止する方法がないのが実情である。
【0011】
また、複数の培養器自体にロック機構を設けて、そのロック機構を例えばコンピュータで制御することで、目的の培養器の扉のみが開閉できるようにするシステムも考えられるが、培養器のメーカーや型式によってロック機構が異なったり、培養器の形状や大きさ等が異なることが多い。これにより、システムが複雑になるので、異なるメーカーや型式の培養器を一緒に使用できない。従って、メーカーや型式に限定されずに、例えば培養する細胞ごとに使用者の要求仕様にあった異なる仕様の培養器を培養作業室に複数設けて統合管理したいと考えても、それができないのが実情である。
【0012】
このような、メーカーや型式の違いによる異なる仕様に限定されずに、取り違えミスや交叉汚染等を確実に防止するシステムは、何も培養器に限ったことではなく、医療やバイオテクノロジー等で異なるサンプルを扱う医療用恒温器全般に必要な技術である。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、メーカーや型式の違いによる異なる仕様の医療用恒温器を試験室に複数台設けて統合管理する場合でも、サンプル例えば細胞の取り違えミスや交叉汚染を確実に防止するためのシステムを容易に構築することができる医療用恒温器の管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、試験室内に医療用恒温器を複数台設け、それぞれの医療用恒温器で異なるサンプルを扱う医療用恒温器の管理システムにおいて、前記医療用恒温器ごとの扉の開閉を管理するロックユニットを、前記試験室の床に立設された支持フレームに設けることにより、前記医療用恒温器とは別体で前記ロックユニットを設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項1は、医療用恒温器ごとの扉の開閉を管理するロックユニットを、試験室の床に立設された支持フレームに設けることにより、医療用恒温器とは別体でロックユニットを設けたので、メーカーや型式の違いによる異なる仕様の医療用恒温器を試験室に複数台設けて統合管理する場合でも、サンプル例えば細胞の取り違えミスや交叉汚染を確実に防止するためのシステムを容易に構築することができる。
【0016】
請求項2は請求項1において、前記試験室は前記サンプルとして細胞の培養に関する作業を行う培養作業室であると共に、前記医療用恒温器は培養器であることを特徴とする。
【0017】
請求項2は、本発明を最大限に有効活用できる例であり、培養作業室に複数の培養器を設けて、一つの培養器で一人のドナーの細胞を培養管理する場合である。
【0018】
請求項3は請求項1又は2において、前記ロックユニットは、前記医療用恒温器の扉が開成不可能なロック位置及び開成可能な開成位置に移動自在なロックアームと、前記ロックアームを前記ロック位置にロックするロック手段と、前記ロック手段のロックを解除するスイッチ手段と、前記扉の開成の許可を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項3のロックユニットは、ロックアームを人が手動で移動させる手動タイプの構成である。スイッチ手段でロック手段のロックを解除すると、作業者はロックアームを開成位置に移動させることができる。これにより、作業者は医療用恒温器の扉を開けることができる。また、扉を閉めてロックアームをロック位置に戻すと、ロック手段がロックされてロックアームがロック位置で動かなくなる。これにより、医療用恒温器の扉がロックされて開かなくなる。
【0020】
請求項4は請求項1又は2において、前記ロックユニットは、前記医療用恒温器の扉が開成不可能なロック位置及び開成可能な開成位置に移動自在なロックアームと、前記ロックアームを前記ロック位置と前記開成位置との間で移動させる駆動手段と、前記駆動手段をON−OFFするスイッチ手段と、前記扉の開成の許可を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項4のロックユニットは、ロックアームを自動で移動させる自動タイプの構成である。スイッチ手段をONにすると、駆動手段はロックアームを開成位置に自動的に移動させる。これにより、作業者は医療用恒温器の扉を開けることができる。また、扉を閉めてスイッチ手段をOFFにすると、駆動手段はロックアームをロック位置に戻す。これにより、医療用恒温器の扉がロックされて開かなくなる。
【0022】
請求項5は請求項3又は4において、前記ロックアームが前記ロック位置にあるか開成位置にあるかを確認するロックアーム位置確認センサーを備えたことを特徴とする。
【0023】
ロックアームがロック位置にあるか開成位置にあるかを確認するロックアーム位置確認センサーを備え、医療用恒温器の扉が確実にロックされたかを確認することができので、ロック忘れを確実に防止できる。
【0024】
請求項6は請求項3〜5の何れか1において、前記ロックユニットには、前記医療用恒温器の扉が開成状態か閉成状態かを確認する扉開閉確認センサーを備えたことを特徴とする。
【0025】
医療用恒温器の扉の開閉状態を確認する扉開閉確認センサーを設け、医療用恒温器の扉が確実に閉められたかを確認することができるので、扉の不十分な閉じ方により医療用恒温器内の温度条件等が変動することを防止できる。
【0026】
請求項7は請求項3〜6の何れか1において、前記スイッチ手段と前記表示手段とは、押すとスイッチが入りランプが点灯する押しボタンランプにより1つの手段として構成されていることを特徴とする。
【0027】
これにより、ロックユニットをコンパクト化することができる。
【0028】
請求項8は請求項1〜7の何れか1において、前記支持フレームには、前記ロックユニットが複数設けられ、複数のロックユニットは個別に、前記医療用恒温器の上下方向、幅方向、奥行き方向の少なくとも1方向にスライドするスライド機構が設けられていることを特徴とする。
【0029】
ロックユニットを個別に、医療用恒温器の上下方向、幅方向、奥行き方向の少なくとも1方向にスライドすることができるので、メーカーや型式の違いにより医療用恒温器の形状や大きさ等が異なる場合でも一層対応し易くなる。
【0030】
請求項9は請求項3〜8の何れか1において、前記ロックユニットの前記表示手段は、前記培養作業室の外に設けた集中制御盤からの信号によって表示されることを特徴とする。
【0031】
これにより、培養作業室に入って作業を行う作業者は、複数の医療用恒温器のうちのどれが作業を行う医療用恒温器であるかを目視で確認することができるので、他の医療用恒温器と取り違えるミスを防止できる。
【0032】
請求項10は請求項9において、前記集中管理盤には、前記試験室内に設けられた複数の医療用恒温器ごとに一人の作業者を指定するための作業者指定機構が設けられていることを特徴とする。
【0033】
このように、複数の医療用恒温器ごとに担当する一人の作業者を指定すれば、他の医療用恒温器と取り違えるミスを防止できるだけでなく、交叉汚染も生じることがない。
【0034】
請求項11は請求項10において、前記作業者指定機構は、パスワード管理とバーコード管理の2重管理であることを特徴とする。
【0035】
このように、作業者の指定を、パスワード管理とバーコード管理の2重管理すれば、取り違えミスや交叉汚染に対して一層安全である。
【0036】
請求項12は請求項1〜11の何れか1において、前記支持フレームは、前記医療用恒温器を載置する架台を兼用することを特徴とする。
【0037】
支持フレームに医療用恒温器を載置する架台の機能を設けることで、装置全体をコンパクト化できる。
【0038】
請求項13は請求項3〜12の何れか1において、前記ロックユニットには、前記スイッチ手段の起動に連動してタイマー手段が動作し、タイムアップした場合に警報を鳴らす警報手段が設けられていることを特徴とする。
【0039】
これにより、作業者が医療用恒温器の扉を閉め忘れたまま、培地交換作業や継代作業等を行うことを防止できる。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように、本発明の医療用恒温器の管理システムによれば、メーカーや型式の違いによる異なる仕様の医療用恒温器を試験室に複数台設けて統合管理する場合でも、サンプル例えば細胞の取り違えミスや交叉汚染を確実に防止するためのシステムを容易に構築するこがのできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下添付図面に従って本発明に係る医療用恒温器の管理システムにおける好ましい実施の形態について詳説する。尚、本実施の形態では、試験室として細胞の培養に関する作業を行う培養作業室、医療用恒温器として培養器(インキュベータ)の例で説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、医療やバイオテクノロジー等において異なるサンプルを扱う医療用恒温器全般に適用することが可能である。
【0042】
図1は、本発明の医療用恒温器の管理システムが組み込まれる細胞調製室10の一例を示す見取り図である。
【0043】
図1に示すように、細胞調製室10は、培養作業室12、更衣室14、脱衣室16の3つの室に区画されており、培養作業室12で作業を行う作業者は更衣室用ドア18から更衣室14に入る。更衣室14において、作業者は、私服をクリーンスーツやクリーンシューズに着替えると共に、手洗い場15で手を消毒した後、培養作業室入口ドアー20から培養作業室12に入る。培養作業室12内には、クリーンベンチ22、複数台の培養器24、24…、遠心分離機26、作業台28に置かれた倒立型位相差顕微鏡30等が設けられる。また、培養作業室12を形成する側壁の外側面には、培養作業室12内に設けられた複数台の培養器24を統合管理する集中管理盤13が設けられる。
【0044】
クリーンベンチ22は、クラス100以下の雰囲気で細胞の調製作業を行う装置であり、作業者は、ディッシュやフラスコ等の容器から細胞を取り出して酵素液や洗浄液を添加したり、細胞を新しい容器に分ける継代作業等を行う。
【0045】
培養器24は、細胞をディッシュやフラスコ等の容器に入れた状態で保管し、細胞を培養する機器であり、温度や二酸化炭素濃度がコントロールされ、培養条件が一定になるようにコントロールされている。本発明では、この培養器24が培養作業室12に複数台設けられ、それぞれの培養器24ごとに異なるドナーの細胞が培養される。
【0046】
遠心分離機26は、容器内に酵素液を加えた細胞を遠心管に入れて、細胞と液を遠心分離したり、洗浄液を入れて遠心分離したりする機器であり、分離された細胞は、作業者によって上記のクリーンベンチ22内で新しい容器に分けられる。
【0047】
倒立型位相差顕微鏡30は、培養器24から取り出した培養中の細胞を容器ごと観察し、培養中に異常(例えば汚染)がないかを確認する機器である。
【0048】
上記の装置及び機器を使用して、作業者が培養作業室12で行う一般的な作業としては、次の通りである。即ち、細胞を培地を入れた容器に入れて、培養器24で培養する(培養作業)。この培地を3日前後で交換する(培地交換作業)。容器内の細胞は1週間前後で容器内に満杯になるので、細胞を新しい容器に分ける(継代作業)。継代作業を4回前後行うことで、細胞培養が終了する。培養中は定期的(1日に1回位)に培養器24の細胞を倒立型位相差顕微鏡30で観察する。
【0049】
培養作業室12での作業が終了した作業者は、培養作業室出口ドアー32から脱衣室16に入り、クリーンスーツ、クリーンシューズ等を脱衣して私服に着替えると共に、手洗い場34で手を消毒してから脱衣室ドアー36から細胞調製室10の外にでる。
【0050】
ところで、上記のように、同じ培養作業室12内に複数台の培養器24を設け、一つの培養器24で一人のドナーの細胞を培養管理する場合には、作業者が作業する際に、細胞の取り違えミスや交叉汚染等を確実に防止することが必要である。
【0051】
図2及び図3は、同じ培養作業室12に2段積みで2列、合計4台の培養器24が配設されており、培養器24ごとの扉24Aの開閉を管理する手動タイプのロックユニット38を説明する説明図である。このロックユニット38は、培養作業室12の床面60に立設された支持フレーム40に支持された状態で培養器24ごとの扉24Aの開閉を管理する装置であり、培養器24とは別体の装置として設けられる。また、図2及び図3の培養器24は、培養器24の左側(図2及び図3の(B)参照)に扉24Aのヒンジ17があり、右から左に扉24Aが開かれる。
【0052】
ロックユニット38のタイプとしては、ロックアーム42の駆動を作業者の人力で行う手動タイプと、ロックアーム42の駆動を駆動手段で自動で行う自動タイプとがあるが、先ず図2及び図3で手動タイプの例で説明する。図2は全体構成図であり、図3はロックユニット近傍の拡大図であると共に、図2及び図3において、(A)は正面図、(B)は上面図、(C)は右側面図、(D)は左側面図である。
【0053】
図2及び図3に示すように、手動タイプのロックユニット38は、主として、培養器24の扉24Aが開成不可能なロック位置a及び開成可能な開成位置bに移動自在なロックアーム42と、ロックアーム42をロック位置aにロックするロック手段44と、ロック手段44のロックを解除するスイッチ手段と、ロックアーム42がロック位置aにあるか開成位置bにあるかを確認するロックアーム位置確認センサー46と、扉24Aの開成の許可を表示する表示手段と、扉24Aが開成状態か閉成状態かを確認する扉開閉確認センサー48と、図示しない警報タイマーと少なくとも連動した警報器50と、警報器50の警報を止めると共に警報タイマーをリセットする警報用押しボタンランプ52とで構成され、これらの全てが支持フレーム40に支持される。また、スイッチ手段と表示手段は押しボタンランプ54により1つの手段として構成されている。
【0054】
図2に示すように、支持フレーム40は逆T字状をした2本の支柱56、56を培養器24の幅に相当する間隔を開けて対向配置し、2本の支柱56、56の下端位置と上部位置とをそれぞれ連結棒58、58で連結した構造を有している。そして、この2本の支柱56、56を培養作業室12の床面60と天井面62との間に突っ張り治具等のようなもので突っ張らせることにより安定的に床面60上に立設させる。
【0055】
そして、培養器24の段積みされる段数の数に相当するロックユニット38が支持フレーム40に設けられる。図2では、培養器24を2段積みで2列設けているので、上記の支持フレーム40の列ごとに1基ずつ合計2基設け、それぞれの支持フレーム40の上段と下段にそれぞれ2つのロックユニット38を設ける。尚、支持フレーム40としては、図9で後述するように、培養器24を載置する架台を兼用するタイプのものでもよい。
【0056】
次にロックユニット38の構造について説明すると、2本の支柱56、56にそれぞれ固定されたヒンジ64、64に一対の揺動アーム66、66の基端部が揺動自在に支持されると共に、一対の揺動アーム66、66の先端部にロックアーム42の両端がそれぞれ支持される。これにより、作業者が人力でロックアーム42をロック位置aから開成位置bに揺動させることにより、培養器24の扉24Aが開成可能になり、ロック位置aに戻すことで扉24Aがロックされる。ロックアーム42の材質としては、培養器24の扉24Aに当たったときに衝撃を小さくするように、弾性部材例えばシリコンゴムを使用するとよい。尚、本実施の形態では、ロックアーム42を揺動させることにより、ロック位置aと開成位置bとの間を移動できるようにしたが、揺動に限ったものではなく、ロック位置aと開成位置bとの間を直線的に移動する場合でもよい。
【0057】
また、図2(C)及び図3(C)の右側の支柱56には、ロックユニット38の機器ボックス68が支持され、この機器ボックス68に上記したロック手段44、押しボタンランプ54、ロックアーム位置確認センサー46、扉開閉確認センサー48、警報器50、警報用押しボタンランプ52が設けられる。
【0058】
ロックアーム42をロック位置aでロックするロック手段44としては、例えばソレノイドバルブを好適に使用することができる。図4に示すように、ソレノイドバルブの駆動部(図示せず)には、C−D方向に揺動可能であると共にC方向に付勢されたフック部材44Aが設けられる。一方、揺動アーム66の基端部側の下面にはフック部材44Aに係合するL字型の係合部材66Aが設けられる。これにより、作業者がロックアーム42を下方向(ロック位置a方向)に揺動させると、係合部材66Aがフック部材のテーパー部44Bに当たってフック部材44AをD方向に揺動させながら、フック部材44Aと係合部材66Aとが係合する。これによりロックアーム42の移動がロックされる。ロックを解除する場合には、押しボタンランプ54を押してソレノイドバルブのロックを解除することにより、ソレノイドバルブの駆動部が駆動してフック部材44AをD方向に揺動させる。これにより、フック部材44Aと係合部材66Aとの係合が解除されてロックアーム42の開成位置bへの移動が可能になる。
【0059】
一方、図3(D)に示すように、左側の支柱56には、ロックアーム42の揺動を支持する揺動支持機構70が設けられる。揺動支持機構70は、支柱56に支持されたL字部材72と、揺動アーム66の中央部との間に、太筒と細筒がスライド自在に嵌合した入れ子構造の支持棒74の両端をピン76、76で連結した構造を有している。これにより、ロックアーム42がロック位置aと開成位置bとの間で揺動すると、ピン連結された入れ子構造の支持棒74が伸縮するので、ロックアーム42の揺動を支持することができる。
【0060】
このように、培養器24の扉24Aの開閉を管理するロックユニット38を、培養器24には設けずに、培養器24とは別体の装置とすることで、異なるメーカーや型式の培養器24であっても問題ない。
【0061】
図5は、ロックユニット38の変形例で、複数台のロックユニット38を個別に、培養器24の上下方向(Z−Z方向)、幅方向(Y−Y方向)、及び奥行き方向(X−X方向)にスライドできるようにしたものである。図5(A)は右側面図、図5(B)は上面図である。
【0062】
即ち、支柱56には、上下方向(Z−Z方向)に平行な一対のレール78、78が設けられ、このレール78にリニアベアリング80を介してL字型の搭載台82がスライド自在に支持される。この搭載台82の上面には、培養器24の幅方向(Y−Y方向)に平行な一対レール84、84が設けられ、このレール84にリニアベアリング86を介して板状のスライド台88がスライド自在に支持される。また、レール84の両端にはストッパ84Aが設けられる。スライド台88の上面には、培養器24の奥行き方向(X−X方向)に平行な一対のレール90、90が設けられ、このレール90にリニアベアリング92を介して機器ボックス68がスライド自在に支持される。また、レール90の両端にはストッパ90Aが設けられる。
【0063】
これにより、ロックユニット38は、培養器24の上下方向(Z−Z方向)、幅方向(Y−Y方向)、及び奥行き方向(X−X方向)にスライドできる。搭載台82、スライド台88、機器ボックス68をそれぞれスライドさせる駆動源としては、特に図示しないがボールネジ機構やシリンダ機構等を好適に使用することができる。尚、図5(B)の符号67は、ロックユニット38を培養器24の上下方向(Z−Z方向)に移動した後で、ロックユニット38を確実に固定する為の安全ピンであり、支柱56と搭載台82とを連結する。
【0064】
このように、支柱56に設けた複数のロックユニット38を個別に、培養器24の上下方向(Z−Z方向)、幅方向(Y−Y方向)、及び奥行き方向(X−X方向)にスライドできるので、扉24Aの高さ、あるいは幅や奥行きが異なる培養器24を段積みした場合であっても、培養器24に合わせて適切な位置にロックアーム42を位置合わせすることができるので、一層便利になる。
【0065】
一方、培養作業室12の側壁外側に設けられた集中管理盤13は、統合管理されている複数の培養器24の中で、作業者が培養作業室12内で作業を行う1台の培養器24に対応するロックユニット38の押しボタンランプ54のみを点灯される信号を送信するための選択スイッチを備えている。そして、集中管理盤13からの発信された信号は、支持フレーム40の上側の連結棒58に取り付けられた中継端子ボックス94(図2参照)を介してロックユニット38の機器ボックス68に送信される。送信方法は、有線であっても無線であってもよい。
【0066】
図6に示すように、集中管理盤13の選択スイッチとしては、図6(A)に示したタッチパネル方式や、図6(B)に示したキーセレクト方式を好ましく使用することができる。図6(A)のタッチパネル方式は、タッチパネル96に形成されたパスワード入力画面96A上の選択タッチスイッチ表示96B(例えば数字等)に人がタッチしてパスワードを入力することにより作業目的の培養器24(No1〜No4)に対応するロックユニット38を選択する方式である。また、図6(B)に示すキーセレクト方式は、セレクトスイッチキー98をキー穴100に差し込んでセレクトレバー102のロックを解除し、セレクトレバー102で作業目的の培養器(No1〜No4)に対応するロックユニット38を選択する方式である。尚、本実施の形態では、タッチパネル方式で説明する。
【0067】
また、集中管理盤13には主電源及び操作電源の電源である電源用押しボタンランプ104が設けられると共に、作業目的の培養器24に対応するロックユニット38のロックが解除中であることを知らせるパイロットランプ106が設けられる。尚、クリーンベンチ22、培養器24、遠心分離機26、作業台に置かれた倒立型位相差顕微鏡30等の駆動電源は、集中管理盤13から取っても、別途電源盤を設けるようにしてもよい。
【0068】
図7は、ロックユニット38の支持フレーム40を構成する支柱56を、培養器24の扉24Aのヒンジ17側に1本だけ立設し、この1本の支柱56に複数のロックユニット38を設けたものである。図7(A)は正面図、図7(B)は上面図である。
【0069】
この場合、ロックアーム42は、揺動アーム66及びヒンジ64を介して支柱56に揺動自在に肩持ち支持される。
【0070】
このように、1本の支柱56で支持フレーム40を構成する場合には、支柱56を必ず培養器24の扉24Aのヒンジ17側に立設することが必要である。ヒンジ17側に立設すれば、培養器24の扉24Aを完全に閉めないと、ロックアーム42をロック位置aに揺動することができないからである。
【0071】
図8は、自動タイプのロックユニット110の一例であり、(A)は正面図、(B)は上面図、(C)は右側面図である。尚、手動タイプのロックユニット38と同じ部材には同符号を付して説明する。
【0072】
図8に示すように、自動タイプのロックユニット110は、主として、培養器24の扉24Aが開成不可能なロック位置a及び開成可能な開成位置bに移動自在なロックアーム42と、ロックアーム42をロック位置aと開成位置bとの間で移動させる駆動手段112と、駆動手段をON−OFFするスイッチ手段と、扉24Aの開成の許可を表示する表示手段と、ロックアーム42がロック位置aにあるか開成位置bにあるかを確認するロックアーム位置確認センサー46と、扉24Aが開成状態か閉成状態かを確認する扉開閉確認センサー48と、図示しない警報タイマーと少なくとも連動した警報器50と、警報器50の警報を止めると共に警報タイマーをリセットする警報用押しボタンランプ52とが機器ボックス114に設けられ、この機器ボックス114が支持フレーム40に支持される。
【0073】
スイッチ手段と表示手段は押しボタンランプ54により1つの手段として構成されている。また、ロックアーム42をロック位置a及び開成位置bに移動させる駆動手段112としては、例えばロータリーソレノイド112Aと回転力を付勢する付勢手段112B(例えばゼンマイバネ等)との組み合わせを好適に使用することができる。即ち、ロータリーソレノイド112Aに回転軸116が支持され、その先端にロックアーム42が取り付けられると共に、回転軸116が付勢手段112Bで開成位置bからロック位置aに回転力が付与されている。機器ボックス114には、ロックアーム42が回転移動する部分に切欠き113が形成されており、ロックアーム42が開成位置bにあるときには、ロックアーム42が機器ボックス114内に収納される。
【0074】
そして、駆動手段112のスイッチである押しボタンランプ54を押してスイッチをONにすると、ロータリーソレノイド112Aが駆動されてロックアーム42がロック位置aから開成位置bに回転移動する。また、押しボタンランプ54を再び押してスイッチをOFFにすると、付勢手段112Bによりロックアーム42が開成位置bからロック位置aに戻る。尚、符号118は軸受であり、120は回転軸116を支持する筒部材(ブッシュ)であり、122は集中管理盤13とロックユニット38との送受信ケーブルである。尚、自動タイプのロックユニット110では、ロックユニット110を個別に、培養器24の上下方向(Z−Z方向)、幅方向(Y−Y方向)、及び奥行き方向(X−X方向)にスライドさせるための機構は示さなかったが、図5で示したと同様のスライド機構を設けることが好ましい。
【0075】
図9は、自動タイプのロックユニット110を、2段積みで2列、合計4台の培養器24に適用したものである。支持フレーム40は、培養器24を載置する架台を兼用するタイプのもので、左右の側板40A、40Bと、底板40Cと、天板40Dと、棚板40Eとで構成され、底板40Cにはキャスター124と、支持フレーム40の移動をロックするロック部材126とが設けられる。そして、天板40Dと棚板40Eとに、4台の培養器24に対応してそれぞれロックユニット38が設けられる。
【0076】
図10及び図11は、医療用恒温器の管理システムの運転方法のステップフローを示したフローチャートである。尚、培養作業室12内には、No1〜No4の4台の培養器24が設けられており、それぞれの培養器24で異なるドナーの細胞が培養される一例で説明する。
【0077】
集中管理盤13の電源用の押しボタンランプ104を押して主電源及び操作電源を入れる(ステップ10)。これにより、電源用の押しボタンランプ104が点灯し、集中管理盤13の操作が可能となる。次に、培養作業室12で作業する作業者とは別の人で、管理システムを管理する管理者が集中管理盤13のタッチパネル96に形成されたパスワード入力画面96A上の選択タッチスイッチ96Bである数字の1〜4にタッチして管理者のパスワードを入力する(ステップ12、ステップ14)。これにより、本発明の管理システムが立ち上がって作業者のタッチパネル入力が可能になる。管理者が間違ってパスワードを入力した場合には再びステップ14に戻る。
【0078】
次に作業者は、パスワード入力画面96A上の選択タッチスイッチ96Bにタッチして作業者のパスワードを入力する(ステップ16)。これにより、選択タッチスイッチ96Bの数字のうちの1の数字のみが点滅する(ステップ18)。作業者が間違ってパスワードを入力した場合には再びステップ16に戻る。培養作業室12内に設けられたNo1〜No4の4台の培養器24(図10にはincuと記載)は、培養器24ごとに作業者が指定されており、その作業者のパスワードと培養器24のNoとが関連づけられている。図10では、作業者はNo1の培養器24のパスワードを有している。このように、作業者のパスワードと培養器24のNoとを関連づけて、1台の培養器24を1人の作業者が取り扱う作業者指定機構を集中管理盤13に設けることで、他の培養器24の細胞を取り違えたり、交叉汚染を招くことを防止することができる。この場合、確率的には極めて小さいが、作業者が間違って入力したパスワードが別の作業者のパスワードに一致してしまう危険を避けるために、パスワード入力とは別に、例えば作業者固有のバーコード等の識別情報を有するカードを集中管理盤13の読み取り器(図示せず)に挿入することで、2重チェックすることが一層好ましい。
【0079】
次に、作業者が点滅している1の数字にタッチすると点滅から点灯になり、間違った数字にタッチした場合には再びステップ18に戻る。作業者は、1の数字が点滅から点灯になったことを確認してタッチパネル画面96上の「確認」97のタッチスイッチにタッチする(ステップ20)。これにより、集中管理盤13のNo1〜No4のパイロットランプ(PL)106のうちのNo1のパイロットランプが点灯すると共に、培養作業室12内のNo1の培養器24に対応するロックユニット38の押しボタンランプ54が点灯する。従って、作業者は、培養作業室12に入ったときに、どの培養器24のロックユニット38を取り扱うべきかを間違えることなく認識することができる。作業者が「確認」97以外の間違った部分にタッチしてしまった場合には、ステップ20に戻る。
【0080】
次に、作業者は、培養作業室12に入って、点灯しているロックユニット38の押しボタンランプ54を押す(ステップ22)。これにより、ロックアーム42の移動をロックしているスイッチ(例えばソレノイドバルブ)がロックを自動解除する。このロックの自動解除により、集中管理盤13のNo1パイロットランプ106が点灯から点滅に変わると共に、ロックユニット38の押しボタンランプ54が点灯から点滅に変わる。この点灯から点滅に変わったことで、管理者は集中管理盤13によりNo1培養器24のロックが解除中であることを知ることができると共に、作業者はロックユニット38の押しボタンランプ54によりNo1培養器24のロックが解除中であることを知ることができる。もし、作業者がNo1培養器24以外のロックユニット38の押しボタンランプ54(点灯していない)を間違って押した場合には、ロックは解除されないので、再びステップ20に戻って点灯しているロックユニット38の押しボタンランプ54を押す。
【0081】
次に、作業者は、手動タイプのロックユニット38の場合には、人力でロックアーム42をロック位置aから開成位置bに移動する(ステップ24)。また、自動タイプのロックユニット110の場合には、押しボタンランプ54を押してロックを自動解除すると、それに連動してロックアーム42の駆動手段112が駆動して自動的にロックアーム42をロック位置aから開成位置bに移動する。これにより、No1培養器24の扉24Aの開成が可能となるので、作業者は、扉24Aを開けて培養している細胞の培養容器を取り出して培養作業室12で作業を行う。このロックアーム42のロック位置aから開成位置bへの移動により、ロックアーム位置確認センサー46がOFF状態になり、それに連動して監視タイマーが作動し始める。作業者は、監視タイマーのタイムアップ(例えば1分)以内に、No1培養器24の扉24Aを開けて培養している細胞の培養容器を取り出し、再び扉24Aを閉めてロックアーム42を開成位置bからロック位置aまで戻しておく(ステップ26〜ステップ30)。これにより、ロックアーム位置確認センサー46がON状態になり、監視タイマーがリセットされると共に、ロックアーム42の移動をロックしているスイッチ(例えばソレノイドバルブ)がロック作動する。このロック作動により、集中管理盤13において点滅していたNo1パイロットランプ106が点滅から点灯に変わると共に、ロックユニット38において点滅していた押しボタンランプ54が点滅から点灯に変わる。この点滅から点灯に変わったことで、管理者は集中管理盤13によりNo1培養器24の扉24Aが閉められて再びロックされたことを知ることができると共に、作業者はロックユニット38の押しボタンランプ54によりNo1培養器24が再びロックされたことを知ることができる。もし、培養器24の扉24Aを閉めても、ロックアーム42がロック位置aに戻されない場合には、ロックアーム位置確認センサー46がOFF状態のままなので、警報器50が警報を発する。これにより、培養器24の扉24Aがロックされないまま作業者が培養作業室12から出てしまうのを防止できる。
【0082】
また、扉24Aの開閉により扉開閉確認センサー48が作動し、扉24Aが開のときには扉開閉確認センサー48がOFF状態になり、扉24Aが閉のときにはON状態になる。自動タイプの場合には、押しボタンランプ54を再度押してOFFにすることで、ロックアーム42の駆動手段112が自動的にロックアームを開成位置bからロック位置aに移動駆動するようにしてもよく、あるいは扉開閉確認センサー48がON状態になると、駆動手段112が駆動するようにしてもよい。
【0083】
もし、作業者がNo1培養器24から培養容器を取り出した後、扉24Aを閉め忘れて監視タイマーのタイムアップ(例えば1分)が過ぎてしまった場合には、扉異常警報用の押しボタンランプ52が点滅すると共に、警報器50が鳴って、扉24Aが開状態であることを作業者に知らせる。扉異常警報用の押しボタンランプ52を押すことにより警報器50が止まるので、警報器50が鳴った原因を解除した後、再度押しボタンランプ52を押すと監視タイマーがリセットされる。
【0084】
作業者が培養作業室12での作業が終了したら、作業者は再び図10でAで示されたステップ位置に戻り、ステップ22〜ステップ30の操作を繰り返して培養容器をNo1培養器24内に戻し、脱衣室16を通って細胞調製室10の外に出る。
【0085】
管理者は、作業者が細胞調製室10の外に出てきたことを確認したら、集中管理盤13のタッチパネル96に形成されたパスワード入力画面96A上の選択タッチスイッチ96Bである数字の1〜4にタッチして管理者のパスワードを入力する(ステップ32、ステップ34)。これにより、作業者のタッチパネル入力が可能になる。管理者が間違ってパスワードを入力した場合には再びステップ34に戻る。
【0086】
次に作業者は、パスワード入力画面96A上の選択タッチスイッチ96Bにタッチして作業者のパスワードを入力する(ステップ36)。これにより、選択タッチスイッチ96Bの数字のうちの1の数字のみが点滅する(ステップ38)。作業者が間違ってパスワードを入力した場合には再びステップ36に戻る。次に、作業者が点滅している1の数字にタッチすると点滅から点灯になり、間違った数字にタッチした場合には再びステップ38に戻る。次に、作業者は、1の数字が点滅から点灯になったことを確認してタッチパネル画面96上の「確認」97のタッチスイッチにタッチする(ステップ40)。これにより、集中管理盤13のNo1のパイロットランプ(PL)106が消灯すると共に、培養作業室12内のNo1の培養器24に対応するロックユニット38の押しボタンランプ54が消灯する。これにより、No1培養器24の例で示した医療用恒温器の管理システムの一連のステップが終了する。もし、作業者が培養作業室12で再度作業を行う場合には、図10のBで示したステップ位置に戻って最初から行う。
【0087】
この場合、図10のBで示したステップ位置に戻ると、本発明の管理システムの立ち上げから行うことになるので、効率的でない。従って、もし、作業者が培養作業室12で再度作業を行う場合には、作業者が自分のパスワードを入力するステップ16に戻るようにしてもよい。
【0088】
また、上記ステップフローでは、作業者のパスワードと培養器24のNoとを関連づけた作業者指定機構を設けることで、作業者がパスワード画面96A上の選択タッチスイッチ96Bにタッチして自分のパスワードを入力すると、その作業者に指定された例えばNo1培養器24のみを取り扱えるようにした。しかし、別の態様として、管理者が作業者に作業させる培養器24や作業内容を全て管理者自身で管理するようにしてもよい。例えば、管理者が作業者にNo1培養器24で培養されている細胞について継代作業をさせる場合には、複数の培養器24でそれぞれ管理する細胞ごとに割り当てられた細胞識別登録番号(培養器番号と細胞番号)のうち、No1培養器24に対応する細胞識別登録番号を選択タッチスイッチ96Bに入力する。これにより、No1培養器24のみのロックユニット38がロック解除になる。また、細胞識別登録番号を入力することで、パスワード画面96A上には作業内容、例えば「培養」、「工程検査」、「継代」、「保守」等の作業内容が表示されるので、作業者は自分のパスワードを選択タッチスイッチ96Bに入力したら、管理者から言われた作業内容である「継代」の部分をタッチする。これにより、集中管理盤13のNo1〜No4のパイロットランプ(PL)106のうちのNo1のパイロットランプが点灯すると共に、培養作業室12内のNo1の培養器24に対応するロックユニット38の押しボタンランプ54が点灯する。もし、作業者が間違った作業内容の表示にタッチした場合には、パイロットランプもロックユニット38の押しボタンランプ54も点灯しない。図10のAから後の操作は同様である。
【0089】
従って、作業者は、培養作業室12に入ったときに、どの培養器24のロックユニット38を取り扱うべきかを間違えることなく認識することができると共に、培養作業室12に入る際に、これから何の作業を行うかを認識することができる。
【0090】
以上説明したように、本発明の管理システムを採用し、上記のように運転することで、メーカーや型式の違いによる異なる仕様の医療用恒温器を試験室に複数台設けて統合管理する場合でも、細胞の取り違えミスや交叉汚染を確実に防止するためのシステムを容易に構築することができる。
【0091】
尚、本実施の形態では、4台の培養器24の例で説明したが複数台であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の医療用恒温器の管理システムを組み込む細胞調製室の見取り図
【図2】培養作業室内に設けた4台にそれぞれロックユニットを設けた場合の全体図
【図3】手動タイプのロックユニットの構造を説明する説明図
【図4】ロックアームのロック及び解除の機構を説明する説明図
【図5】ロックユニットに設けたスライド機構の説明図
【図6】集中管理盤の説明図
【図7】ロックユニットを培養器のヒンジ側に設けた場合の説明図
【図8】自動タイプのロックユニットの構造を説明する説明図
【図9】培養作業室内に設けた4台にそれぞれ自動タイプのロックユニットを設けた場合の全体図
【図10】本発明の医療用恒温器の管理システムの運転ステップを説明するフローチャート図
【図11】図10のフローチャートの続きで、本発明の医療用恒温器の管理システムの運転ステップを説明するフローチャート図
【符号の説明】
【0093】
10…細胞調製室、12…培養作業室、13…集中管理盤、14…更衣室、16…脱衣室、22…クリーンベンチ、24…培養器、26…遠心分離機、28…作業台、30…倒立型位相差顕微鏡、38…手動タイプのロックユニット、40…支持フレーム、42…ロックアーム、44…ロック手段、46…ロックアーム位置確認センサー、48…扉開閉確認センサー、50…警報器、52…警報用押しボタンランプ、54…スイッチ手段と表示手段を一緒にした押しボタンランプ、56…支柱、58…連結棒、60…床面、62…天井面、64…ヒンジ、66…揺動アーム、68…機器ボックス、70…揺動支持機構、72…L字部材、74…支持棒、76…ピン、78…レール、80…リニアベアリング、82…搭載台。84…レール、86…リニアベアリング、88…スライド台、90…レール、92…リニアベアリング、94…中継端子ボックス、96…タッチパネル、96A…パスワード入力画面、96B…選択タッチスイッチ表示、97…確認表示、98…セレクトスイッチキー、100…キー穴、102…セレクトレバー、104…電源用押しボタンランプ、106…パイロットランプ、110…自動タイプのロックユニット、112…駆動手段、112A…ロータリーソレノイド、112B…付勢手段、113…切欠き、114…機器ボックス、116…回転軸、118…軸受、120…筒部材(ブッシュ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験室内に医療用恒温器を複数台設け、それぞれの医療用恒温器で異なるサンプルを扱う医療用恒温器の管理システムにおいて、
前記医療用恒温器ごとの扉の開閉を管理するロックユニットを、前記試験室の床に立設された支持フレームに設けることにより、前記医療用恒温器とは別体で前記ロックユニットを設けたことを特徴とする医療用恒温器の管理システム。
【請求項2】
前記試験室は前記サンプルとして細胞の培養に関する作業を行う培養作業室であると共に、前記医療用恒温器は培養器であることを特徴とする請求項1の医療用恒温器の管理システム。
【請求項3】
前記ロックユニットは、
前記医療用恒温器の扉が開成不可能なロック位置及び開成可能な開成位置に移動自在なロックアームと、
前記ロックアームを前記ロック位置にロックするロック手段と、
前記ロック手段のロックを解除するスイッチ手段と、
前記扉の開成の許可を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする請求項1又は2の医療用恒温器の管理システム。
【請求項4】
前記ロックユニットは、
前記医療用恒温器の扉が開成不可能なロック位置及び開成可能な開成位置に移動自在なロックアームと、
前記ロックアームを前記ロック位置と前記開成位置との間で移動させる駆動手段と、
前記駆動手段をON−OFFするスイッチ手段と、
前記扉の開成の許可を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする請求項1又は2の医療用恒温器の管理システム。
【請求項5】
前記ロックアームが前記ロック位置にあるか開成位置にあるかを確認するロックアーム位置確認センサーを備えたことを特徴とする請求項3又は4の医療用恒温器の管理システム。
【請求項6】
前記ロックユニットには、
前記医療用恒温器の扉が開成状態か閉成状態かを確認する扉開閉確認センサーを備えたことを特徴とする請求項3〜5の何れか1の医療用恒温器の管理システム。
【請求項7】
前記スイッチ手段と前記表示手段とは、押すとスイッチが入りランプが点灯する押しボタンランプにより1つの手段として構成されていることを特徴とする請求項3〜6の何れか1の医療用恒温器の管理システム。
【請求項8】
前記支持フレームには、前記ロックユニットが複数設けられ、複数のロックユニットは個別に、前記医療用恒温器の上下方向、幅方向、奥行き方向の少なくとも1方向にスライドするスライド機構が設けられていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1の医療用恒温器の管理システム。
【請求項9】
前記ロックユニットの前記表示手段は、前記培養作業室の外に設けた集中制御盤からの信号によって表示されることを特徴とする請求項3〜8の何れか1の医療用恒温器の管理システム。
【請求項10】
前記集中管理盤には、前記試験室内に設けられた複数の医療用恒温器ごとに一人の作業者を指定するための作業者指定機構が設けられていることを特徴とする請求項9の医療用恒温器の管理システム。
【請求項11】
前記作業者指定機構は、パスワード管理とバーコード管理の2重管理であることを特徴とする請求項10の医療用恒温器の管理システム。
【請求項12】
前記支持フレームは、前記医療用恒温器を載置する架台を兼用することを特徴とする請求項1〜11の何れか1の医療用恒温器の管理システム。
【請求項13】
前記ロックユニットには、前記スイッチ手段の起動に連動してタイマー手段が動作し、タイムアップした場合に警報を鳴らす警報手段が設けられていることを特徴とする請求項3〜12の何れか1の医療用恒温器の管理システム。
【請求項1】
試験室内に医療用恒温器を複数台設け、それぞれの医療用恒温器で異なるサンプルを扱う医療用恒温器の管理システムにおいて、
前記医療用恒温器ごとの扉の開閉を管理するロックユニットを、前記試験室の床に立設された支持フレームに設けることにより、前記医療用恒温器とは別体で前記ロックユニットを設けたことを特徴とする医療用恒温器の管理システム。
【請求項2】
前記試験室は前記サンプルとして細胞の培養に関する作業を行う培養作業室であると共に、前記医療用恒温器は培養器であることを特徴とする請求項1の医療用恒温器の管理システム。
【請求項3】
前記ロックユニットは、
前記医療用恒温器の扉が開成不可能なロック位置及び開成可能な開成位置に移動自在なロックアームと、
前記ロックアームを前記ロック位置にロックするロック手段と、
前記ロック手段のロックを解除するスイッチ手段と、
前記扉の開成の許可を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする請求項1又は2の医療用恒温器の管理システム。
【請求項4】
前記ロックユニットは、
前記医療用恒温器の扉が開成不可能なロック位置及び開成可能な開成位置に移動自在なロックアームと、
前記ロックアームを前記ロック位置と前記開成位置との間で移動させる駆動手段と、
前記駆動手段をON−OFFするスイッチ手段と、
前記扉の開成の許可を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする請求項1又は2の医療用恒温器の管理システム。
【請求項5】
前記ロックアームが前記ロック位置にあるか開成位置にあるかを確認するロックアーム位置確認センサーを備えたことを特徴とする請求項3又は4の医療用恒温器の管理システム。
【請求項6】
前記ロックユニットには、
前記医療用恒温器の扉が開成状態か閉成状態かを確認する扉開閉確認センサーを備えたことを特徴とする請求項3〜5の何れか1の医療用恒温器の管理システム。
【請求項7】
前記スイッチ手段と前記表示手段とは、押すとスイッチが入りランプが点灯する押しボタンランプにより1つの手段として構成されていることを特徴とする請求項3〜6の何れか1の医療用恒温器の管理システム。
【請求項8】
前記支持フレームには、前記ロックユニットが複数設けられ、複数のロックユニットは個別に、前記医療用恒温器の上下方向、幅方向、奥行き方向の少なくとも1方向にスライドするスライド機構が設けられていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1の医療用恒温器の管理システム。
【請求項9】
前記ロックユニットの前記表示手段は、前記培養作業室の外に設けた集中制御盤からの信号によって表示されることを特徴とする請求項3〜8の何れか1の医療用恒温器の管理システム。
【請求項10】
前記集中管理盤には、前記試験室内に設けられた複数の医療用恒温器ごとに一人の作業者を指定するための作業者指定機構が設けられていることを特徴とする請求項9の医療用恒温器の管理システム。
【請求項11】
前記作業者指定機構は、パスワード管理とバーコード管理の2重管理であることを特徴とする請求項10の医療用恒温器の管理システム。
【請求項12】
前記支持フレームは、前記医療用恒温器を載置する架台を兼用することを特徴とする請求項1〜11の何れか1の医療用恒温器の管理システム。
【請求項13】
前記ロックユニットには、前記スイッチ手段の起動に連動してタイマー手段が動作し、タイムアップした場合に警報を鳴らす警報手段が設けられていることを特徴とする請求項3〜12の何れか1の医療用恒温器の管理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−136250(P2006−136250A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329284(P2004−329284)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000005452)日立プラント建設株式会社 (1,767)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000005452)日立プラント建設株式会社 (1,767)
【Fターム(参考)】
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