説明

医療用熱交換器及びその製造方法並びに人工肺装置

【課題】複数段の細管束に熱媒体液を順次通過させる簡潔な構造により、血液流路の容積を抑制しながら、熱交換効率を向上させる。
【解決手段】複数の伝熱細管1からなる細管束モジュール2と、血液流路5を形成して細管束モジュールを封止し、伝熱細管の両端は露出させたシール部材3a〜3cと、細管束モジュール両端を包囲する流動室を形成する冷温水ヘッダー6、7を備える。細管束モジュールは細管束12a〜12cの積層構造に分割され、スペーサ13により各細管束間に間隔が形成される。流動室は隔壁6b、7bにより流動分室に区画され、冷温水は、流動分室14bから複数段の細管束を順次通過し、流動分室15aから流出する。血液流路における細管束の間隙に、血液流路5と連通する流路を有する介挿部材20が配置される。一対のスペーサは細管束の両側部に配置された一対の連結桟により連結され、介挿部材が連結桟に結合されて一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器、特に人工心肺装置等の医療機器に用いるのに適した医療用熱交換器、及びその製造方法、並びにそれを備えた人工肺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓手術においては、患者の心臓を停止させ、その間の呼吸及び循環機能を代行するために、人工心肺装置が用いられている。また、手術中は患者の酸素消費量を減少させるため、患者の体温を低下させ、それを維持する必要がある。このため、人工心肺装置には、患者から取り出した血液の温度を制御するための熱交換器が備えられている。
【0003】
このような医療用の熱交換器としては、従来、蛇腹管式の熱交換器や、多管式の熱交換器(例えば、特許文献1参照)が知られている。このうち、多管式の熱交換器は、蛇腹管式の熱交換器と装置容積が同じであるとすると、熱交換面積が大きく得られるため、蛇腹管式の熱交換器に比べて熱交換効率が高いという利点がある。
【0004】
従来例の多管式の熱交換器について、図11A〜図11Cを参照して説明する。図11Aは多管式の熱交換器上面図、図11Bは側面図である。図11Cは、熱交換器のハウジング内部を示す斜視図であり、部分的に断面で示されている。
【0005】
この熱交換器は、熱媒体液である冷温水を流す複数本の伝熱細管101から構成される細管束モジュール102と、細管束モジュール102を封止するシール部材103a〜103cと、それらを収容したハウジング104とから構成されている。
【0006】
複数本の伝熱細管101は、平行に配列され積層されて細管束を形成している。図11A及び12Cに示すように、中央部のシール部材103cは、細管束モジュール102の長手方向中央部に、各々の伝熱細管101の表面を横断して、被熱交換液である血液を流通させるための熱交換流路として、円形断面を有する血液流路105を形成している。両端部のシール部材103a、103bは各々、細管束モジュール102の両端を露出させている。
【0007】
ハウジング104には、血液流路105の両端に面して、血液をハウジング内に導くための血液導入口106と、血液をハウジングから導出するための血液導出口107とが設けられている。また、シール部材103a〜103cのそれぞれの間には、間隙108が設けられ、ハウジング102には、間隙108に対応する漏液排出孔109が設けられている。
【0008】
以上の構成において、血液を、血液導入口106から流入させて血液流路105を通り血液導出口107から流出するように流動させる。同時に、図11A、図11Bに示すように冷温水を、細管束モジュール102の露出された一端から流入させて、露出された他端から流出するように流動させる。それにより、血液流路105において、血液と冷温水の間で熱交換が行われる。
【0009】
間隙108は、シール漏れによって血液あるいは冷温水が漏洩した場合に、漏洩を検出するために設けられている。すなわち、第3のシール部材103cのシール漏れがあった場合には、漏洩した血液が間隙108に現れることにより、漏洩を検出することができる。また、第1のシール部材103a又は第2のシール部材103bのシール漏れによって冷温水が漏洩した場合も、漏洩した冷温水は間隙108に現れ、漏洩を検出することができる。間隙108に出た血液あるいは冷温水は漏液排出孔109から熱交換器の外部へと排出される。
【特許文献1】特開2005−224301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のような多管式の熱交換器に対して、熱交換効率を更に向上させることが要求されている。すなわち、血液流路105における血液充填量を極力少なくし、しかも、十分な熱交換能を得るためには、熱交換効率を向上させる必要があるからである。
【0011】
本発明者らが検討した人工肺用の熱交換器の場合、実用上、熱交換効率が0.43以上であることが望ましいことが判った。この目標値をクリアするために必要な熱交換面積は、血液流量2L/minのときに0.014m2であった。これを、熱交換器の能力を血液流量7L/minに向上させた構造に適用した場合、熱交換面積シミュレーションの結果、0.43以上の熱交換効率を得るためには0.049m2の熱交換面積が必要であることが判った。
【0012】
例えば外径が1.25mmの伝熱細管1を用いた場合、伝熱細管101の積層数(細管層数)を6層にすれば、0.057m2の熱交換面積が得られることが判る。しかし、そのような6層構成の細管束モジュール102からなる熱交換モジュールを用い、血液流路105の開口径を70mmとして熱交換効率を測定したところ、0.24という、目標値よりはるかに低い値しか得られなかった。
【0013】
そこで、外径が1.25mmの伝熱細管101を用い、血液流路105の開口径を70mmとして、細管層数を種々に増大させた熱交換モジュールを作製し、熱交換効率を測定したところ、熱交換効率0.43をクリアするためには、細管層数を18層以上にする必要があることが判った。しかし、上述の条件で細管層数を18層にすると、血液流路における血液充填量が42.3mLとなり、血液充填量の望ましい値である30mLをはるかに超えることになる。血液充填量を30mL以下にするためには、計算によれば、細管層数を13層以下にしなければならない。
【0014】
このように、単純に熱交換面積を大きくすることでは、所望の熱交換効率を得ることは困難である。そのため、熱交換効率を低下させると思われる原因について分析を行った。その結果、熱交換効率を低下させる原因としては、伝熱細管の内腔を流れる冷温水の流速の影響が大きいことが判った。これは、冷温水の流速が境膜抵抗の変化に影響を与えることによるものと考えられる。
【0015】
そこで本発明らは、伝熱細管の内腔における冷温水の流れを適切に制御して、血液流路の容積を小さく抑制しながら、熱交換効率を向上させることが可能な熱交換器の構成について検討した。その結果、細管束モジュールを血液流路の方向(縦方向)において分割して、各々が複数本の伝熱細管を含む複数段の細管束の積層構造を形成し、冷温水を、複数段の細管束を順次通過させる構成が有効であることが判った。
【0016】
そのためには、複数段の細管束の間にスペーサを装着して、各段間に所定長さの間隔を形成すれば、冷温水を所望の順序で各細管束を順次通過させる簡潔な構成を実現できる。そのようなスペーサを用いた場合、細管束モジュールを封止したシール部材の領域では、各段間の間隔に対応する部分には、シール部材の材料が充填されるので間隙が残ることはない。
【0017】
ところが、血液流路内の領域では、スペーサが装着されることにより、細管束の各段間にその間隔に対応する間隙が形成される。この間隙は、血液流路における血液の充填量を増大させる原因となる。
【0018】
そこで本発明は、縦方向複数段の細管束に熱媒体液を順次通過させるための簡潔な構造により熱交換効率を向上させ、しかも各段間の間隙に起因する血液流路の容積の増大を抑制するための製造容易な構造を有する医療用熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の医療用熱交換器は、内腔に熱媒体液を流通させる複数本の伝熱細管を配列し積層して形成された細管束モジュールと、前記伝熱細管の両端は露出するように前記細管束モジュールを封止し、前記伝熱細管の各々の外表面に接触するように血液を通過させる血液流路を形成したシール部材と、前記シール部材及び細管束モジュールを収容するとともに、前記血液流路の両端に面して各々血液の導入口及び導出口を有するハウジングと、前記細管束モジュールの両端部をそれぞれ包囲するように流動室を形成し、前記熱媒体液の導入及び導出ポートを有する一対の伝熱細管ヘッダーとを備える。
【0020】
上記課題を解決するために、前記細管束モジュールは前記血液流路の方向において分割されて、各々が複数本の前記伝熱細管を含む複数段の細管束の積層構造が形成され、前記複数段の細管束の段間に所定の間隔が形成されるように一対のスペーサが前記血液流路を挟む両側の領域にそれぞれ装着される。少なくとも一方の前記流動室は、前記間隔に対応させて設けられた隔壁により複数の流動分室に区画されて、前記導入ポートから流入する前記熱媒体液が、いずれかの前記流動分室を経由して前記複数段の細管束を順次通過し、他のいずれかの前記流動分室を経由して前記導出ポートから流出するように流路が形成される。そして、前記血液流路内の領域中で、前記細管束の前記間隔により形成された間隙に、その容積の一部を埋めるように介挿部材が配置され、前記介挿部材は前記血液流路と連通する流路を有する。前記一対のスペーサは前記細管束の両側部に配置された一対の連結桟により互いに連結されるとともに、前記介挿部材が前記連結桟に結合されて、前記一対のスペーサと前記介挿部材が一体化された一体化スペーサ部材が形成されている。
【発明の効果】
【0021】
上記構成の熱交換器によれば、複数段に分割された細管束に順次、熱媒体液を通過させる構成により、伝熱細管を流れる熱媒体液の流速を容易に大きくすることができるので、伝熱細管の内壁における境膜抵抗が低減され、血液流路の容積の増大を抑制しながら、熱交換効率を向上させることが可能となる。
【0022】
また、細管束の各段間にスペーサを装着して形成した間隔に対応させて、細管束モジュールの端部の流動室を分割することにより、複数段の細管束に順次熱媒体液を通過させる簡潔な構造が得られる。
【0023】
更に、スペーサが装着されることによる血液流路の容積の増大を、血液流路内の細管束の間の間隙に介挿部材を配置することにより抑制できる。介挿部材は、連結桟を介して一対のスペーサとともに一体化することにより、血液流路を形成するための封止に際して、血液流路となるべき領域に精度よく保持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の医療用熱交換器は、上記構成を基本として、以下のような態様をとることができる。
【0025】
すなわち、前記介挿部材は、最外周に外枠部を有し、前記外枠部は、前記血液流路を囲む前記シール部材の内周面に沿って設けられた前記シール部材とは異なる材料からなる環状封止部により封止され、前記伝熱細管は金属材料からなり、前記ハウジング及び前記一体化スペーサ部材は第1樹脂材料からなり、前記環状封止部は、前記第1樹脂材料との接着性の良好な第2樹脂材料からなり、前記シール部材は、前記伝熱細管の金属材料との接着性の良好な第3樹脂材料からなる構成とすることができる。
【0026】
また、前記第3樹脂材料は前記第2樹脂材料よりも前記伝熱細管の金属材料との接着性が良好であり、前記環状封止部とシール部材の界面が前記一体化スペーサ部材の前記連結桟と交差する点から、前記介挿部材の外枠部と前記環状封止部の界面に沿って前記外枠部の内周面に至る経路が、所定の長さよりも長くなるように、前記外枠部の表面上に凹凸構造が形成されている構成とすることが好ましい。
【0027】
また、前記細管束は、両端部に配置された細管列保持部材により前記伝熱細管の配列状態が保持され、前記一対のスペーサは、隣接する前記細管束の段間で対向する前記細管列保持部材の間に装着されている構成とすることができる。
【0028】
また、前記血液流路は、前記環状封止部の内周面により形成された円筒状であり、前記介挿部材の外枠部は、円環状である構成とすることが好ましい。
【0029】
また、前記熱媒体液が、前記血液流路の下流側に配置された下流段の前記細管束から上流側に配置された上流段の前記細管束に向かって順次通過するように、前記伝熱細管ヘッダーが構成されることが好ましい。
【0030】
本発明の人工肺装置は、上記いずれかの構成の医療用熱交換器と、ガス流路と交差してガス交換を行うための血液流路を有する人工肺とを備え、前記医療用熱交換器と前記人工肺とは積層されて、前記医療用熱交換器の前記血液流路と前記人工肺の前記血液流路が連通している構成とすることができる。
【0031】
以下、本発明の実施の形態における医療用の熱交換器及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
(実施の形態1)
図1Aは、実施の形態1における熱交換器を示す平面図である。図1Bは、図1AのA−A断面図である。この熱交換器は、熱媒体液として冷温水を流通させるための複数本の伝熱細管1から構成された細管束モジュール2と、細管束モジュール2を封止したシール部材3a〜3cと、それらを収容したハウジング4とから構成されている。
【0033】
複数本の伝熱細管1は、平行に配列され積層されて細管束を形成し、各々の伝熱細管1の内腔に冷温水が流される。中央部のシール部材3cは、細管束モジュール2の長手方向中央部に、各々の伝熱細管1の外表面に接触して被熱交換液である血液を流通させるための熱交換領域として、円形断面を有する血液流路5を形成している。両端部のシール部材3a、3bは、細管束モジュール2の両端を露出させている。
【0034】
ハウジング4は、細管束モジュール2の両端に面して伝熱細管ヘッダー、すなわち冷温水を導入、導出するため冷温水導入ヘッダー6及び冷温水導出ヘッダー7を有する。ハウジング4は更に、血液流路5の両端に面して血液導入口8、および血液導出口9(図1B参照)を有する。冷温水導入ヘッダー6及び冷温水導出ヘッダー7にはそれぞれ、冷温水導入ポート6a、及び冷温水導出ポート7aが設けられている。また、シール部材3a〜3cのそれぞれの間には、間隙10が設けられ、ハウジング4には、間隙10に対応させた漏液排出孔11が設けられている。
【0035】
図1Bに示すように、冷温水導入ヘッダー6及び冷温水導出ヘッダー7は、両端部のシール部材3a、3bから露出した細管束モジュール2の両端をそれぞれ包囲する空室である流動室を形成している。従って、導入され導出される冷温水は全て、冷温水導入ヘッダー6及び冷温水導出ヘッダー7が形成する流動室を経由して流動する。
【0036】
以上の構成において、血液を、血液導入口8から血液流路5に流入させて、血液導出口9から流出するように流動させる。同時に、冷温水を、冷温水導入ヘッダー6から細管束モジュール2に流入させて、冷温水導出ヘッダー7から流出するように流動させる。それにより、血液流路5において、血液と冷温水の間で熱交換が行われる。また、血液が漏洩した場合、及び冷温水が漏洩した場合のいずれの場合においても、従来例と同様、間隙10により即座にシール漏れを検知でき、また、血液汚染の発生を防止できる。
【0037】
細管束モジュール2は、図1Bに示すように、各々3層の伝熱細管1を含む3段の第1〜第3細管束12a〜12cに分割されている。すなわち、第1〜第3細管束12a〜12cは各々が、伝熱細管1を3層に積層して構成されている。そして、第1〜第3細管束12a〜12cが積層されて、細管束モジュール2が構成されている。第1〜第3細管束12a〜12cの各段間にはスペーサ13が装着され、所定長さの間隔が形成されている。スペーサ13で間隔を設けることにより、以下に説明するように、冷温水導入ヘッダー6及び冷温水導出ヘッダー7の内部の流動室を、複数の流動分室に区画することが容易になる。
【0038】
冷温水導入ヘッダー6はその内部の流動室が、隔壁6bにより上部流動分室14aと下部流動分室14bとに区切られている。上部流動分室14a内には第1、第2細管束12a、12bの端部が配置され、下部流動分室14b内には第3細管束12cの端部が配置されている。また、冷温水導出ヘッダー7はその内部の流動室が、隔壁7bにより上部流動分室15aと下部流動分室15bとに区切られている。上部流動分室15a内には第1細管束12aの端部が配置され、下部流動分室15b内には第2、第3細管束12b、12cの端部が配置されている。
【0039】
このように、冷温水導入ヘッダー6の流動室を、隔壁6bにより上部流動分室14aと下部流動分室14bとに区画し、また、冷温水導出ヘッダー7の流動室を、隔壁7bにより上部流動分室15aと下部流動分室15bとに区画するためには、スペーサ13により、第1〜第3細管束12a〜12cの各段間に間隔を形成することが必要である。隔壁6b及び隔壁7bの第1〜第3細管束12a〜12cに対向する端部を、間隔に対応させて位置させることにより、容易に流動室を所定の状態に区画することができるからである。但し、スペーサ13を配置することにより、血液流路5内の領域では第1〜第3細管束12a〜12cの各段間に間隙が形成される。その間隙を埋めるための介挿部材20が配置されている。これについては、後に詳述する。
【0040】
細管束の各段間の間隔を形成するためのスペーサ13の形態について、図2A〜図4を参照して説明する。図2Aは、細管束間にスペーサを装着したモジュールの形態を示す斜視図である。但し、図示の便宜上、3段の細管束のうちの2段の第1及び第2細管束12a、12bのみを取り出して示す。また、図示の煩雑さを避けるため、一対のスペーサ13の連結構造、および介挿部材20については図示を省略する。図2Bは、同モジュールの正面図である。
【0041】
図2Aに示すように、細管束12a、12bは、伝熱細管1の軸方向に沿って4箇所に配置された細管列保持部材16a〜16dにより、複数本の伝熱細管1を結束して構成されている。スペーサ13は、細管束12a、12bの段間における細管列保持部材16a〜16dの間に装着されている。
【0042】
1組の細管列保持部材16a〜16dにより、一列(層)の細管列が結束される。その結束状態を、図3Aの斜視図に示す。図3Bはその正面図である。互いに平行な状態で一列に配列された複数本の伝熱細管1(図3Aの例では16本)が、細管列保持部材16a〜16dにより保持されて、一層分の伝熱細管群が形成されている。細管列保持部材16a〜16dは、各々が伝熱細管1を横切る帯状に形成されており、伝熱細管1が貫通している。このような形態の伝熱細管群は、複数本の伝熱細管1が配置された金型に樹脂を流し込んで、細管列保持部材16a〜16dを形成することによって、即ち、インサート成形によって形成することができる。細管列保持部材16a〜16dの上下面には、伝熱細管1を嵌合可能な複数の細管受け凹部17が形成されている。
【0043】
図2Aに示した細管束12a、12bは、図3Aの伝熱細管群を各々3層積層して形成される。積層する際には、各伝熱細管群を構成する伝熱細管1は、上下に隣り合う別の伝熱細管群の細管列保持部材16a〜16dに設けられた細管受け凹部17に嵌め込まれる。そのため、上下に隣り合う層ごとに、細管列保持部材16a〜16dが交互にずれて配置される。また、細管列保持部材16a〜16dは、伝熱細管1の両端の領域に一対づつ配置されている。すなわち、一端側に細管列保持部材16a、16bが、他端側に細管列保持部材16c、16dが、それぞれ近接して配置されている。この配置により、両端の細管列保持部材16b、16dの間に、図1B等に示した間隙10が形成されている。
【0044】
また、細管束12a、12bの段間の細管列保持部材16a〜16dの間に介在するようにスペーサ13が装着され、所定の大きさの間隔18を形成している。スペーサ13は、間挿部13a、13bと、その両者間を結合する結合部13cを有する。間挿部13a、13bを上下の細管列保持部材16a〜16dの間に介在させることにより、細管束12a、12b間の間隔18が保持される。
【0045】
図4に、スペーサ13の連結構造を示す。但し、介挿部材20については図示を省略し、介挿部材20との一体化構造については後述する。図4に示す連結構造では、それぞれ間挿部13a、13b、および結合部13cを含む一対のスペーサ13が、連結桟19により連結されている。このように一対のスペーサを一体化することにより、製造工程での取り扱いが容易になる。
【0046】
ところで、シール部材3a〜3cの領域では、各段間の間隔に対応する部分には、シール樹脂が充填されるので間隙が形成されることはない。しかし、スペーサ13が装着されることにより、血液流路5内の領域では、第1〜第3細管束12a〜12cの各段間にその間隔に対応する間隙が形成される。この間隙は、血液流路5内の血液充填量を増大させる原因となる。この血液充填量の増大を抑制するために、段間の間隙には、図1Bに示すように介挿部材20が配置されている。介挿部材20を配置することにより、細管束12a〜12cの各段間の間隙の一部を埋めて、その容積を低減させることができる。
【0047】
介挿部材20の形状の例を、図5Aに示す。この介挿部材20は、同心円状に配列された複数本の円環リブ21と、円環リブ21の径方向に放射状に延在して、円環リブ21を連結する接続リブ22からなる。最外周の円環リブ21は円環枠23に支持されている。円環枠23の部分で、シール部材3c中に封止されている。図1Bに示す接続リブ22の箇所は、円環リブ21間の隙間24に対応する。血液流路5はこの隙間24の部分で介挿部材20を貫通して、流路の連続性が確保されている。
【0048】
図5Bは、介挿部材20の一部を示す断面図である。円環リブ21は、血液流路5の方向を短軸とする楕円形の断面を有する。それにより、熱交換効率を減少させることなく、血液充填量を減少させることができる。
【0049】
本実施の形態のように、介挿部材20を配置することにより、血液流路5内の血液充填率を低減させる効果に加えて、第1〜第3細管束12a〜12cの各段間に間隙のみが存在する場合に比べて、当初間隙に存在する気泡が、抜け易くなる効果も得られる。気泡が抜けることにより、熱交換効率も向上する。
【0050】
介挿部材20を配置することにより、熱交換効率がある程度低下することは止むを得ないが、熱交換効率の低下を抑制するためには、伝熱細管1と介挿部材20の重なりができる限り少なくなるように、介挿部材20の形状を設定する。図5Aに示したような同心円状の円環リブ21により構成することは、血液充填量の低減と熱交換効率の維持のバランスを、満足できる範囲に調整するために有効である。
【0051】
介挿部材20は、各段間に配置されるので、スペーサ13と一体化すれば、第1〜第3細管束12a〜12cと組み合わせて一体に組み立てる際の作業が容易になる。一方、介挿部材20をスペーサ13とは別体として分離した場合、第1〜第3細管束12a〜12cと組み合わせてシール部材3a〜3cにより封止する際に、介挿部材20を血液流路5に対して位置決めするための構造が必要となる。これに対して、介挿部材20をスペーサ13と一体化すれば、介挿部材20がスペーサ13を介して位置決めされるので、シール部材3a〜3cによる封止を精度よく行うことができる。
【0052】
図6Aに、介挿部材20をスペーサ13と一体化した構造の例を示す。この一体化構造は、一対のスペーサ13を連結桟19により一体とし、さらに、介挿部材20を連結桟19と結合させたものである。このような構造であれば、第1〜第3細管束12a〜12cに対して、スペーサ13を上下の細管列保持部材16a〜16d(図2A参照)の間に介在させることにより、一体化構造全体が第1〜第3細管束12a〜12cの間で位置決めされる。従って、介挿部材20は、円環枠23の部分がシール部材3cにより封止されたときに血液流路5となるべき領域に精度よく保持される。
【0053】
本実施の形態において、伝熱細管1を構成する材料としては、例えばステンレス鋼等の金属材料が好適である。ハウジング4の材料としては、例えば、透明で且つ耐破損強度に優れたポリカーボネート樹脂のような樹脂材料を用いることができる。シール部材3a〜3cを形成するための樹脂材料としては、例えば、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。このうち、伝熱細管1を構成する材料(例えば、金属材料)との接着性に優れている点からは、エポキシ樹脂が好ましい。スペーサ13の材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂を用いることができる。介挿部材20は、スペーサ13と同一の材料により一体成形される。
【0054】
本実施の形態の一体化構造では、介挿部材20の円環枠23の部分に、凹凸構造25が形成されている。凹凸構造25の断面形状を図6Bに示す。この断面は、介挿部材20の径方向に沿った断面である。円環枠23の外周部23aと内周部23bの間に凹凸構造25が設けられ、円環枠23の径方向に沿って凹凸を繰り返している。このような凹凸構造25を設ける理由について、図7を参照して説明する。
【0055】
図7は、第1〜第3細管束12a〜12cが、スペーサ13と介挿部材20の一体構造を介して積層され、シール部材3a〜3cにより封止された状態を示す平面図である。標準的には、シール部材3a〜3cとしては、エポキシ樹脂を用いる。伝熱細管1を構成する材料(例えば、金属材料)との接着性に優れているからである。スペーサ13の材料としては、ポリカーボネート樹脂を用いるので、介挿部材20もポリカーボネート樹脂により形成される。そのため、シール部材3cのうち、介挿部材20の円環枠23を封止する環状封止部26には、ポリウレタン樹脂を用いる。ハウジング4および介挿部材20のポリカーボネート樹脂との接着性が良好だからである。
【0056】
しかし、ポリカーボネート樹脂とエポキシ樹脂との接着性や、ポリウレタン樹脂と金属製の伝熱細管との接着性は、十分に良好ではない。そのため、図6に示すようなスペーサと介挿部材を一体にした部材を細管束で挟持した構造を、ポリウレタン樹脂のみでシールした場合、ポリウレタン樹脂と伝熱細管との接合部を伝わって、液が滲出する恐れがある。そのような経路による液の浸出(入)を防止するため、エポキシ樹脂からなるシール部材3cにより、ポリカーボネート樹脂からなる連結桟19までを封止した構成としている。
【0057】
一方、ポリウレタン樹脂を使用しない場合、即ち、伝熱細管をエポキシ樹脂のみでシールした場合は、介挿部材20や連結桟19を形成するポリカーボネート樹脂とエポキシ樹脂との接着性が良好でないため、その接合部より、液が滲出する恐れがある。従って、図7に示すように、エポキシ樹脂製のシール部材3cと円環枠23との境界部をポリウレタン樹脂でシールした環状封止部26を形成することで、液洩れを防止する。
【0058】
以上のような構造を採用しても、更に、シール部材3cが連結桟19を封止している部分では、連結桟19とシール部材3cの界面を通して、細管列保持部材16a〜16dの領域まで連通する経路が形成され易い。従って、もしも血液流路5が、ポリウレタン樹脂からなる環状封止部26とポリカーボネート樹脂からなる円環枠23との界面を通して、連結桟19とシール部材3cの界面まで連通すると、血液流路5は、細管列保持部材16a〜16dの領域、従って外部と連通する。その結果、血液が漏洩する恐れが発生する。
【0059】
環状封止部26のポリウレタン樹脂と、円環枠23のポリカーボネート樹脂の界面は、図7に矢印Bあるいは矢印Cで示すような経路で、連結桟19とシール部材3cの界面まで連通する。矢印Bの経路は最も長く、矢印Cの経路は最も短い。実験によれば、ポリウレタン樹脂とポリカーボネート樹脂の界面が、例えば、接着距離が所定値、例えば10mm以上であれば、漏洩を回避可能な状態に設定することが可能である。円環枠23の凹凸構造25は、環状封止部26における接着距離を長くして、そのような漏洩を回避するための手段として形成されている。
【0060】
すなわち凹凸構造25は、図6Bに示したように、円環枠23の外周部23aと内周部23bの間で、表面に凹凸の繰り返しを形成するものである。この凹凸の繰り返しにより、円環枠23の径方向における環状封止部26と円環枠23の界面の距離が長くなる。これにより、ポリウレタン樹脂とポリカーボネート樹脂の接着距離を所定値、例えば10mm以上にすることができる。
【0061】
図7に示すように、凹凸構造25は4箇所に形成されており、それらの箇所では、凹凸構造25が形成されていない場合には、上述のような接着距離が所定値未満となる。このような箇所に凹凸構造25を設けることにより、漏洩を回避する効果を得ることができる。なお、10mm以上というような漏洩回避に必要な接着距離の値は、種々の条件によって変動する。従って、環状封止部26と円環枠23の界面の距離における漏洩の可能性のある箇所を、仕様に応じて各々選択して凹凸構造25を設けることが必要である。
【0062】
以上のように構成された熱交換器によって得られる作用および効果について、以下に述べる。冷温水導入ポート6aから冷温水導入ヘッダー6の下部流動分室14bに導入された冷温水は、第3細管束12cの伝熱細管1の内腔を経由して、冷温水導出ヘッダー7の下部流動分室15bに流れ込む。そこで更に、第2細管束12bの伝熱細管1に進入して、冷温水導入ヘッダー6の上部流動分室14aに達する。そこで次に、第1細管束12aの伝熱細管1に進入して、冷温水導出ヘッダー7の上部流動分室15aに達し、冷温水導出ポート7aから流出する。
【0063】
このようにして、冷温水導入ヘッダー6及び冷温水導出ヘッダー7は、導入される冷温水が、3段の第1〜第3細管束12c〜12aを順次通過するように構成されている。このように、導入される冷温水が、分割された複数段の細管束を順次通過する構成を、以降の記載においては分割通流と称する。これに対して従来例ように、導入される冷温水が冷温水導入ヘッダー6において全ての伝熱細管1に一斉に流入する構成を一斉通流と称する。
【0064】
分割通流を採用することにより、一斉通流の場合に比べて、冷温水流量が同一であれば、細管束12c〜12aの各々の伝熱細管1を流れる冷温水の流速を大きくすることができる。それにより、伝熱細管1の内壁における境膜抵抗が低減され、熱交換効率を向上させることができる。なお、従来の一斉通流において、冷温水の供給源からの供給流量(流速)を増大させれば熱交換効率を向上させることはできるが、冷温水供給源の流速を医療施設側で増大させることは、実際には困難である。従って、本実施の形態のようにして熱交換効率を向上させることは、実用的に極めて効果的である。
【0065】
また、図1Bに示した実施の形態においては縦方向折り返し構造、すなわち、細管束モジュール2が血液の流通方向すなわち縦方向において分割されて、複数段の細管束が形成された構造が採用されている。しかも冷温水は、血液流路5の下流側に配置された下流段の細管束12cから上流段に向かって、細管束12b、細管束12aと順次経由して流動する。これにより、血流に対して冷温水の流れが向流になり、より高い熱交換効率を得るために効果的である。
【0066】
以上のように、分割通流により熱交換効率が向上する効果について実験した結果を、図8に示す。但し、介挿部材がない状態での実験結果である。図8における「分割並流」及び「分割向流」が、一斉通流に対する本実施の形態による分割通流の場合を示す。「分割向流」は、図1Bに示したような、熱媒体液の流通方向に細管束モジュールが分割され、熱媒体液が向流となるように設定された場合である。「分割並流」は、分割の態様は同様であるが、熱媒体液が血液の流通と同じ向きである並流となるように設定された場合を示す。いずれの場合も、血液流路5の開口径は70mm、伝熱細管1の層数は12層とした。
【0067】
図8から、一斉通流の場合に比べて、分割通流である分割並流及び分割向流の場合の熱交換効率が高いことが判る。これは、上述のように、分割通流の方が伝熱細管1を流れる冷温水の流速が大きいことにより、境膜抵抗が低減するためである。また、血液下流側においても、熱媒体液と血液との温度差を高く維持できるので、分割並流の場合よりも分割向流の場合の方が熱交換効率が高い結果が得られている。一斉通流に対して、分割並流の場合は熱交換効率が36%向上し、分割向流の場合は熱交換効率が54%向上している。
【0068】
次に、図1Bに示したように、細管束モジュール2を熱媒体液の流通方向に分割して、複数層の細管束を構成する場合の、適切な細管束の段数、及び各細管束を構成する伝熱細管1の適切な層数について検討した結果を、図9に示す。
【0069】
図9の(a)は、細管束の段数が2段、すなわち冷温水の流れを折り返す段数が2段の場合であり、各段の細管束を構成する伝熱細管が3層(積層本数)、4層、5層、及び6層の場合の熱交換効率の測定結果を示す。図9の(b)は、折り返し細管束の段数が3段の場合であり、各段の細管束を構成する伝熱細管が2層、3層、及び4層の場合の熱交換効率の測定結果を示す。横軸の下部に示したESAは、有効膜面積(Effective Surface Area)、Uは熱媒体の流速を示す。図9から、折り返し細管束段数は、(a)の2段の場合に比べて、(b)の3段の場合の方が高い熱交換効率を得易いことが判る。
【0070】
折り返し細管束段数が3段の場合、細管束を構成する伝熱細管の層数が2層、すなわち図9の(b)の左端の2−2−2層の構成の場合、3層、及び4層の場合に比べて若干熱交換効率が劣る。しかし、2段の場合に比べれば高い熱交換効率を得ることが可能である。しかも、3段を合計した伝熱細管の層数は6層であり、これに対応する伝熱細管層数を有する2段で3−3層の構成に比べれば、十分に高い熱交換効率が得られる。伝熱細管層数が同一ということは、血液充填量が同程度であることを意味する。従って、2−2−2層の構成によれば、血液充填量を抑制しながら、熱交換効率を向上させることが可能であることが判る。
【0071】
また、3段の場合に、細管束を構成する伝熱細管の層数が3層と4層との間では、熱交換効率に有意な差は見られないことが判る。但し、4段以上はオーバースペックであり、圧損の増大のため、流量も増えない。この結果を考慮すれば、3層の伝熱細管により構成された細管束を3段に積層した場合に、実用上最も良好な構造が得られることが判る。
【0072】
また、3段折り返し構造のように、奇数回の返し構造の場合、冷温水導入ポート6aと冷温水導出ポート7aを細管束モジュール2の両端に振り分けることができ、ポートレイアウトのバランスが良い利点もある。
【0073】
なお、上述の図面には図示されていないが、ハウジング4は、例えばハウジング底部とハウジング上部のように分割して形成され、細管束モジュール2等を収容して一体に結合させる構造を有する。
【0074】
また、上述の説明では、細管束が3段の場合の冷温水導入ヘッダー及び冷温水導出ヘッダーの構造を示したが、他の段数の場合も同様に構成することは容易である。すなわち、上流端または下流端に位置する1段の細管束に対応する流動分室を必ず設ける。従って、少なくとも冷温水導入ヘッダー及び冷温水導出ヘッダーには流動分室が形成される。また、他の2段毎の細管束に対応させて流動分室を区画する。導入ポートおよび導出ポートは、1段の細管束に対応する流動分室に対して設ける。それにより、導入ポートから流入する熱媒体液が複数段の細管束を順次通過し、導出ポートから流出するように流路が形成される。
【0075】
細管束の段間に介挿部材を配置することによる熱交換効率の低下については、形状的に、介挿部材と伝熱細管の重なりが多い構造の場合は低下が大きい。介挿部材が血流を遮って、伝熱細管の外表面に沿った血流が制限されるためであると考えられる。従って、伝熱細管1との重なりができる限り少なくなるように、介挿部材20の形状を適切に設定することにより、熱交換効率の低下を実用上問題のない範囲に抑制して、血液流路における血液充填率を低減させることができる。
【0076】
(実施の形態2)
図10は、実施の形態2における人工心肺装置を示す断面図である。この人工心肺装置は、実施の形態1における熱交換器30を人工肺40と組み合わせて構成されている。
【0077】
熱交換器30は、人工肺40の上に積層されており、人工肺40のハウジング31に熱交換器30のハウジング4が結合されている。但し、熱交換器30のハウジング4と人工肺40のハウジング31が一体に形成された構造とすることもできる。人工肺40の領域には、酸素ガスを導入するためガス導入路32、血液中の二酸化炭素等を導出するためのガス導出路33が設けられている。
【0078】
人工肺40は、複数本の中空糸膜34と、シール部材35とを備えている。シール部材35は、ガス導入路32やガス導出路33に血液が侵入しないように、中空糸膜34をシールしている。シール部材35によるシールは、中空糸膜34を構成する中空糸の両端が露出するように行われている。ガス導入路32とガス導出路33とは、中空糸膜34を構成する中空糸によって連通している。
【0079】
また、人工肺40においてシール部材35の存在していない空間は、円筒状の血液流路36を構成しており、血液流路36内には中空糸膜34が露出している。更に、血液流路36の血液入口側は、熱交換器30の血液流路5の出口側に連通している。
【0080】
以上の構成により、血液流路5を通って熱交換された血液は、血液流路36へと流れ込み、そこで、中空糸膜34に接触する。このとき、血液には、中空糸膜34を流れる酸素ガスが取り込まれる。また、酸素ガスが取り込まれた血液は、ハウジング31に設けられた血液導出口37から、外部に導出され、患者に返血される。一方、血液中の二酸化炭素は、中空糸膜34に取り込まれ、その後、ガス導出路33によって導出される。
【0081】
このように、図10に示す人工心肺装置においては、熱交換器30によって血液の温度調整が行われ、温度調整が行われた血液は人工肺40によってガス交換される。また、このとき、熱交換器30にシール漏れが発生し、伝熱細管1を流れる冷温水が流出しても、冷温水は間隙10に溜まり、その後、外部に排出される。このため、図10に示す人工心肺装置によれば、シール漏れを検知でき、又冷温水による血液の汚染を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、伝熱細管を流れる冷温水の流速を大きくできるので、伝熱細管の内壁における境膜抵抗を低減して、血液流路の容積の増大を抑制しながら、熱交換効率を向上させることが可能であり、人工心肺装置等に用いる熱交換器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1A】実施の形態1における医療用熱交換器の構成を示す上面図
【図1B】同医療用熱交換器のA−A断面図
【図2A】同医療用熱交換器の細管束間にスペーサを装着したモジュールの斜視図
【図2B】同医療用熱交換器の図2Aに示すモジュールの正面図
【図3A】同医療用熱交換器の細管束を構成する単位細管列の斜視図
【図3B】同医療用熱交換器の図3Aに示す単位細管列の正面図
【図4】スペーサの形態を示す斜視図
【図5A】実施の形態1における医療用熱交換器の介挿部材を示す平面図
【図5B】同介挿部材の一部の断面図
【図6A】同介挿部材とスペーサの一体構造を示す斜視図
【図6B】同介挿部材とスペーサの一体構造における要部を示す断面図
【図7】同一体構造の問題を説明するための平面図
【図8】細管束モジュールの分割の態様と熱交換係数の関係を示す図
【図9】実施の形態1における熱交換器の折り返し構造と熱交換係数の関係を示す図
【図10】実施の形態2における人工心肺装置を示す断面図
【図11A】従来例の熱交換器の構成を示す上面図
【図11B】同熱交換器の構成を示す側面図
【図11C】同熱交換器におけるハウジング内部を一部断面で示す斜視図
【符号の説明】
【0084】
1、101 伝熱細管
2、102 細管束モジュール
3a〜3c、103a〜103c シール部材
4、104 ハウジング
5、105 血液流路
6 冷温水導入ヘッダー
6a 冷温水導入ポート
6b、7b 隔壁
7 冷温水導出ヘッダー
7a 冷温水導出ポート
8、106 血液導入口
9、107 血液導出口
10、108 間隙
11、109 漏液排出孔
12a〜12c 第1〜第3細管束
13 スペーサ
13a、13b 間挿部
13c 結合部
14a、15a 上部流動分室
14b、15b 下部流動分室
16a〜16d 細管列保持部材
17 細管受け凹部
18 間隔
20 介挿部材
21 円環状リブ
22 接続リブ
23 円環枠
23a 外周部
23b 内周部
24 隙間
25 凹凸構造
26 環状封止部
30 熱交換器
31 ハウジング
32 ガス導入路
33 ガス導出路
34 中空糸膜
35 シール部材
36 血液流路
37 血液導出口
40 人工肺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内腔に熱媒体液を流通させる複数本の伝熱細管を配列し積層して形成された細管束モジュールと、
前記伝熱細管の両端は露出するように前記細管束モジュールを封止し、前記伝熱細管の各々の外表面に接触するように血液を通過させる血液流路を形成したシール部材と、
前記シール部材及び細管束モジュールを収容するとともに、前記血液流路の両端に面して各々血液の導入口及び導出口を有するハウジングと、
前記細管束モジュールの両端部をそれぞれ包囲するように流動室を形成し、前記熱媒体液の導入及び導出ポートを有する一対の伝熱細管ヘッダーとを備えた医療用熱交換器において、
前記細管束モジュールは前記血液流路の方向において分割されて、各々が複数本の前記伝熱細管を含む複数段の細管束の積層構造が形成され、
前記複数段の細管束の段間に所定の間隔が形成されるように一対のスペーサが前記血液流路を挟む両側の領域にそれぞれ装着され、
少なくとも一方の前記流動室は、前記間隔に対応させて設けられた隔壁により複数の流動分室に区画されて、前記導入ポートから流入する前記熱媒体液が、いずれかの前記流動分室を経由して前記複数段の細管束を順次通過し、他のいずれかの前記流動分室を経由して前記導出ポートから流出するように流路が形成され、
前記血液流路内の領域中で、前記細管束の前記間隔により形成された間隙に、その容積の一部を埋めるように介挿部材が配置され、前記介挿部材は前記血液流路と連通する流路を有し、
前記一対のスペーサは前記細管束の両側部に配置された一対の連結桟により互いに連結されるとともに、前記介挿部材が前記連結桟に結合されて、前記一対のスペーサと前記介挿部材が一体化された一体化スペーサ部材が形成されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記介挿部材は、最外周に外枠部を有し、
前記外枠部は、前記血液流路を囲む前記シール部材の内周面に沿って設けられた前記シール部材とは異なる材料からなる環状封止部により封止され、
前記伝熱細管は金属材料からなり、
前記ハウジング及び前記一体化スペーサ部材は第1樹脂材料からなり、
前記環状封止部は、前記第1樹脂材料との接着性の良好な第2樹脂材料からなり、
前記シール部材は、前記伝熱細管の金属材料との接着性の良好な第3樹脂材料からなる請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第3樹脂材料は前記第2樹脂材料よりも前記伝熱細管の金属材料との接着性が良好であり、
前記環状封止部とシール部材の界面が前記一体化スペーサ部材の前記連結桟と交差する点から、前記介挿部材の外枠部と前記環状封止部の界面に沿って前記外枠部の内周面に至る経路が、所定の長さよりも長くなるように、前記外枠部の表面上に凹凸構造が形成されている請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記細管束は、両端部に配置された細管列保持部材により前記伝熱細管の配列状態が保持され、
前記一対のスペーサは、隣接する前記細管束の段間で対向する前記細管列保持部材の間に装着されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用熱交換器。
【請求項5】
前記血液流路は、前記環状封止部の内周面により形成された円筒状であり、
前記介挿部材の外枠部は、円環状である請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記熱媒体液が、前記血液流路の下流側に配置された下流段の前記細管束から上流側に配置された上流段の前記細管束に向かって順次通過するように、前記伝熱細管ヘッダーが構成された請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱交換器と、
ガス流路と交差してガス交換を行うための血液流路を有する人工肺とを備え、
前記熱交換器と前記人工肺とは積層されて、前記熱交換器の前記血液流路と前記人工肺の前記血液流路が連通している人工肺装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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