説明

医療用軟質容器及びこれを用いた栄養供給システム

【課題】液状物の注入作業時に、開口部を大きく開口させた状態で安定して保持することができ、また、応力集中が生じにくい、高品位の医療用軟質容器を提供する。
【解決手段】可撓性袋部材20の外面に、指を挿入可能な挿入路45a,45bが形成されるように、その中央部を弛ませて一対の開閉操作部40a,40bが設けられている。一対の開閉操作部の少なくとも一方の上側及び下側の少なくとも一方の端部42a,42b,43a,43bは可撓性袋部材の外面にヒートシールにより固定されている。少なくとも一方の端部をヒートシールにより固定する際の加熱領域52a,52b,53a,53bは、少なくとも一方の端部の終端縁の全てを含む。加熱領域の外周縁と開閉操作部の側端縁との交点において外周縁は開閉操作部の長手方向に対して傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用軟質容器及びこれを用いた栄養供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
経口によらずに患者に栄養や薬剤を投与する方法として経腸栄養法又は静脈栄養法が知られている。経腸栄養法では、患者の鼻腔から胃又は十二指腸にまで通されたチューブを介して栄養剤、流動食、又は薬剤などの液状物が投与される。また、静脈栄養法では、患者の静脈に挿入された輸液回路を介してブドウ糖などの栄養成分及び/又は薬剤成分を含む液状物(一般に「輸液」と呼ばれる)が投与される。
【0003】
経腸栄養法又は静脈栄養法を行う際には、患者に投与する液状物を空の医療用軟質容器に予め注入する作業が必要である。
【0004】
図17は、従来の医療用軟質容器900の一例の概略構成を示した正面図であり、図18は、図17に示した医療用軟質容器900を開封し、その上端の開口部922を片手で把持して開口部922を開口させた様子を示した図であり、図19は、図17に示した医療用軟質容器900内に液状物を注いでいる様子を示した図である。
【0005】
この医療用軟質容器900は、液状物を収納する収容部921と、収容部921内に収納された液状物を取り出すための貫通孔が形成された排出ポート930とを備えている。収容部921は、柔軟な2枚のシートを重ね合わせて、それらの外周縁をヒートシール(熱接着)により相互に接合してなる袋状物である。排出ポート930は収容部921を構成する上記シートに比べて相対的に硬い樹脂材料からなる。
【0006】
空の医療用軟質容器900への液状物の注入は以下のようにして行われる。まず、ノッチ928を始点として、切り取り線929に沿って開口部922の上部を切り取って開封し、ジップ923の係合を解除する。次いで、図18に示されるように、開口部922の外端縁を一方の手で把持しつつ、開口部922を開く。次いで、図19に示されるように、他方の手(図示せず)で、薬や栄養剤等の液状物が入った容器998を持ち、開口部922から収容部921内に液状物を注入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−314245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の医療用軟質容器900への液状物の注入作業では、液状物の注入作業の開始から終了まで、開口部922の外端縁を片手で把持して、開口部922を開口させ且つ医療用軟質容器900を保持しなければならない。液状物の注入量が増えるにしたがって医療用軟質容器900の重量は徐々に増大する。一方、医療用軟質容器900は、開口部922を含めて柔軟な材料からなるので、開口部922は大きな把持力を加えると簡単に変形してしまう。したがって、医療用軟質容器900を落としてしまったり、開口部922を十分に開口させることができなくて液状物をこぼしてしまったりする恐れがある。このように、従来の医療用軟質容器900への液状物の注入作業は、作業者にとって精神的及び肉体的な負担が大きい。
【0009】
そこで、医療用軟質容器を、その開口部を開いた状態で安定して保持することができるような部材を、医療用軟質容器に設けることが望まれる。
【0010】
但し、医療用軟質容器を構成するシートは一般に機械的強度が低いので、そのような部材を設けた場合、開口部の開閉操作や注入された液状物の重量によって応力集中が生じないことが望まれる。また、そのような部材を設けたことによって、医療用軟質容器の品位が低下することは避けなければならない。
【0011】
本発明は、液状物の注入作業時に、開口部を大きく開口させた状態で安定して保持することができ、また、応力集中が生じにくい、高品位の医療用軟質容器を提供することを目的とする。また、本発明は、このような医療用軟質容器を備えた栄養供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の医療用軟質容器は、少なくとも2枚の軟質樹脂シートが貼り合わされてなり、上端に開閉可能な開口部を備えた可撓性袋部材と、前記可撓性袋部材の下端に設けられた排出ポートと、指を挿入可能な挿入路が形成されるように、その中央部を弛ませて前記可撓性袋部材に設けられた一対の開閉操作部とを備える。前記一対の開閉操作部の少なくとも一方の上側及び下側の少なくとも一方の端部は、前記可撓性袋部材の外面にヒートシールにより固定されている。前記少なくとも一方の端部をヒートシールにより固定する際の加熱領域は、前記少なくとも一方の端部の終端縁の全てを含み、且つ、前記加熱領域の外周縁と前記開閉操作部の両側の側端縁との交点において前記外周縁は前記開閉操作部の長手方向に対して傾斜している。
【0013】
本発明の栄養供給システムは、上記の本発明の医療用軟質容器を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、可撓性袋部材に設けられた一対の開閉操作部によって形成された挿入路に指を挿入することで、開口部を開口させた状態で医療用軟質容器を安定して保持することができる。
【0015】
また、開閉操作部の端部をヒートシールによって固定する際の加熱領域が当該端部の終端縁の全てを含むので、終端縁が軟質樹脂シートに密着する。従って、開閉操作部を設けたことによって手触り感や見映えが低下することはなく、医療用軟質容器の品位の低下を防止することができる。
【0016】
また、加熱領域の外周縁と開閉操作部の側端縁との交点において外周縁は開閉操作部の長手方向に対して傾斜している。従って、開閉操作部の中央部に、中央部を可撓性袋部材から引きはがすような外力が作用したときに、当該交点に大きな応力集中が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る医療用軟質容器の斜視図である。
【図2A】図2Aは、本発明の実施形態1に係る医療用軟質容器の正面図である。
【図2B】図2Bは、本発明の実施形態1に係る医療用軟質容器の右側面図である。
【図2C】図2Cは、本発明の実施形態1に係る医療用軟質容器の背面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態1に係る医療用軟質容器の分解斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態1に係る医療用軟質容器を含む経腸栄養供給システムの概略構成を示した図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態1に係る医療用軟質容器を片手で保持し、その開口部を開口させた状態を示した斜視図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態1に係る医療用軟質容器を片手で保持し、その開口部に液状物を注いでいる様子を示した斜視図である。
【図7】図7Aは本発明の実施形態1において正面側の開閉操作部の上端部及びヒートシールによる加熱領域を示した、図2Aの部分7Aの拡大図、図7Bは本発明の実施形態1において裏面側の開閉操作部の上端部及び及びヒートシールによる加熱領域を示した、図2Cの部分7Bの拡大図である。
【図8】図8Aは本発明の実施形態1において正面側の開閉操作部の下端部及びヒートシールによる加熱領域を示した、図2Aの部分8Aの拡大図、図8Bは本発明の実施形態1において裏面側の開閉操作部の上端部及び及びヒートシールによる加熱領域を示した、図2Cの部分8Bの拡大図である。
【図9】図9Aは正面側の開閉操作部の上端部及びヒートシールによる比較例に係る加熱領域を示した拡大図、図9Bは正面側の開閉操作部の上端部及びヒートシールによる別の比較例に係る加熱領域を示した拡大図である。
【図10】図10Aは本発明の実施形態2において正面側の開閉操作部の上端部及びヒートシールによる加熱領域を示した拡大図、図10Bは本発明の実施形態2において正面側の開閉操作部の下端部及びヒートシールによる加熱領域を示した拡大図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態3に係る医療用軟質容器の斜視図である。
【図12A】図12Aは、本発明の実施形態3に係る医療用軟質容器の正面図である。
【図12B】図12Bは、本発明の実施形態3に係る医療用軟質容器の右側面図である。
【図13】図13は、本発明の実施形態3において正面側の開閉操作部の上端部及びヒートシールによる加熱領域を示した拡大図である。
【図14】図14は、本発明の実施形態4に係る医療用軟質容器の斜視図である。
【図15A】図15Aは、本発明の実施形態4に係る医療用軟質容器の正面図である。
【図15B】図15Bは、本発明の実施形態4に係る医療用軟質容器の右側面図である。
【図16】図16は、本発明の実施形態4に係る医療用軟質容器の分解斜視図である。
【図17】図17は、従来の医療用軟質容器の一例の概略構成を示した正面図である。
【図18】図18は、図17に示された医療用軟質容器の開口部を片手で把持し、開口部を開口させた様子を示した図である。
【図19】図19は、図17に示された医療用軟質容器内に液状物を注いでいる様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、可撓性袋部材に対してヒートシールによって固定された開閉操作部の端部のうちの少なくとも一つが、以下の2つの条件を満足する。
【0019】
第1に、端部をヒートシールにより固定する際の加熱領域は、前記端部の終端縁の全てを含む(以下、「第1条件」という)。ここで、加熱領域が終端縁の全てを「含む」とは、終端縁の全てが加熱領域内に存在する(終端縁の一部が加熱領域の外周縁上に位置する場合を含む)ことを意味する。好ましくは、終端縁の全てが加熱領域の外周縁に接することなく、外周縁よりも内側に存在することを意味する。
【0020】
第2に、加熱領域の外周縁と開閉操作部の両側の側端縁との交点において、前記外周縁は開閉操作部の長手方向に対して傾斜している(以下、「第2条件」という)。ここで、前記交点において前記外周縁が開閉操作部の長手方向に対して「傾斜している」とは、交点における外周縁の接線の方向が、開閉操作部の長手方向に対して平行でも垂直でもないことを意味する。開閉操作部の長手方向は、開閉操作部の可撓性袋部材に固定されている上下の端部を結ぶ方向を意味する。
【0021】
本発明において、前記加熱領域は、略円弧と前記略円弧の両端を繋ぐ線分とを有し、前記略円弧が前記開閉操作部の前記側端縁と交差することが好ましい。これにより、開閉操作部の中央部に、中央部を可撓性袋部材から引きはがすような如何なる方向の外力が作用しても、加熱領域の外周縁と開閉操作部の側端縁との交点はもちろん、これ以外の箇所にも大きな応力集中が発生するのを防止することができる。
【0022】
あるいは、前記加熱領域は略台形形状を有し、前記略台形形状の斜辺が前記開閉操作部の前記側端縁と交差してもよい。これにより、ヒートシールをする際に使用される金型の形状が簡単となるので、金型を容易に作成することができる。
【0023】
前記一対の開閉操作部は前記可撓性袋部材を構成する前記軟質樹脂シートと別個の部材として作成されていてもよい。この場合、前記一対の開閉操作部のそれぞれの上側の端部及び下側の端部は前記可撓性袋部材の外面にヒートシールにより固定されていることが好ましい。
【0024】
上記において、前記一対の開閉操作部のそれぞれの上側の端部が、上記第1条件及び第2条件を満足する加熱領域で加熱されたヒートシールによって前記可撓性袋部材の外面に固定されていることが好ましい。これにより、大きな力が作用することが多い上側の端部において大きな応力集中が発生するのを防止することができる。
【0025】
あるいは、前記一対の開閉操作部のぞれぞれは前記可撓性袋部材を構成する前記軟質樹脂シートと一体的に作成されていてもよい。この場合、前記一対の開閉操作部のそれぞれの下側の端部は前記可撓性袋部材の外面にヒートシールにより固定されていることが好ましい。これにより、大きな力が作用することが多い開閉操作部の上側の端部が軟質樹脂シートと一体的に作成されるので、当該端部での開閉操作部と軟質樹脂シートとの接続強度が向上する。
【0026】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、以下の各図中の寸法は、実際の寸法および寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0027】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る医療用軟質容器1の斜視図である。図2Aは医療用軟質容器1の正面図、図2Bは医療用軟質容器1の右側面図、図2Cは医療用軟質容器1の背面図である。図3は医療用軟質容器1の分解斜視図である。本発明では、実際の使用状態に則して医療用軟質容器1の「上側」(図1の紙面の上側)及び「下側」(図1の紙面の下側)を定義する。また、医療用軟質容器1を正面側から(図2A参照)又は背面側から(図2C参照)見たときの左右方向を、「幅方向」と呼ぶ。
【0028】
図1、図2A〜図2Cに示されているように、本実施形態の医療用軟質容器1は、平袋状の可撓性袋部材20と、可撓性袋部材20の下端に固定された排出ポート30とを備える。
【0029】
可撓性袋部材20は、液状物を収容するための収容部21と、収容部21と連通する開口部22とを備える。開口部22には、開口部22を幅方向に横切って、開口部22を可逆的に開閉可能にするジップ23(再開閉を自在とする係合部である。別名「チャックシール」とも言う。)が設けられている。可撓性袋部材20は、その開口部22よりも上方に吊り下げ部26を備える。吊り下げ部26には、医療用軟質容器1をスタンド等に吊り下げる際に使用される吊り下げ用穴27が形成されている。
【0030】
図2A、図2Cに示されているように、吊り下げ用穴27及び排出ポート30を通る上下方向軸を医療用軟質容器1の中心軸1aという。本実施形態では、中心軸1aは、可撓性袋部材20の後述する切り欠き20cよりも下側の部分を幅方向に二等分する。
【0031】
図3に示すように、可撓性袋部材20は、例えば、2枚の軟質樹脂シート20a,20bを重ね、それらの外周縁を相互にヒートシール(熱接着)することにより形成される。図1、図2A〜図2Cの参照符号24は、2枚の軟質樹脂シート20a,20bのヒートシール領域を示す。
【0032】
図3において、参照符号23a,23bは、ジップ23を構成するジップテープである。ジップテープ23a,23bは、軟質樹脂シート20a,20bの互いに対向する面(内面)に、例えばヒートシール等の公知の方法で固定されている。
【0033】
軟質樹脂シート20aの軟質樹脂シート20bとは反対側の面には、可撓性袋部材20内に注入された液状物の量を確認するための目盛り25が設けられている。目盛り25は中心軸1aに沿って設けられている。上述した吊り下げ部26は、軟質樹脂シート20bに設けられている。以下の説明では、目盛り25が設けられた軟質樹脂シート20aの外面(軟質樹脂シート20bと対向しない面)を医療用軟質容器1の「正面」と呼び、軟質樹脂シート20bの外面(軟質樹脂シート20aと対向しない面)を医療用軟質容器1の「裏面」と呼ぶ。
【0034】
排出ポート30は、その中央に貫通孔が形成された、例えば管状体である。排出ポート30は、軟質樹脂シート20a,20b間に挟まれて可撓性袋部材20に固定されている。排出ポート30の貫通孔は、可撓性袋部材20の内外を連通させる。排出ポート30は、例えば、軟質樹脂シート20a,20b間に配置した状態で軟質樹脂シート20a,20bをヒートシール領域24でヒートシールすることで、軟質樹脂シート20a,20bに一体化させることができる。
【0035】
軟質樹脂シート20a,20bの、互いに相手方とは反対側の面(即ち、外面)には、開閉操作部40a,40bがそれぞれ固定されている。図2A及び図2Cに示されているように、開閉操作部40a,40bは、中心軸1aに沿って配置されている。開閉操作部40a,40bは、例えば軟質樹脂からなるシート状物からなる。開閉操作部40a,40bの上端部42a,42b及び下端部43a,43bが、軟質樹脂シート20a,20bの外面にそれぞれヒートシールされる。このとき、上端部42a,42b及び下端部43a,43bの間の中央部41a,41bが軟質樹脂シート20a,20bに対して弛むように、上端部42a,42bと下端部43a,43bとの間の上下方向間隔が適切に設定される。その結果、図1及び図2Bに示すように、開閉操作部40a,40bの中央部41a,41bと軟質樹脂シート20a,20bとの間に、指を挿入することができる挿入路45a,45bが形成される。
【0036】
図2A及び図2Cに示されているように、正面側又は裏面側から見たとき、医療用軟質容器1は、その中心軸1aに対して左右非対称である。即ち、図2Aに示すように医療用軟質容器1を正面側から見たとき、可撓性袋部材20の上側部分の左側端が切り欠かれて切り欠き20cが形成されている。また、開閉操作部40a,40bの幅方向(即ち、左右方向)の両側の側端縁46a,46bのうち切り欠き20cに近い側の側端縁46aは中心軸1aに対して傾斜しており、切り欠き20cから遠い側の側端縁46bは中心軸1aとほぼ平行である。
【0037】
本実施形態の医療用軟質容器1の使用方法を説明する。
【0038】
図4に示されるように、医療用軟質容器1は、例えばその排出ポート30に輸液セット91を接続して栄養供給システム90を構成することができる。輸液セット91は、その一端が排出ポート30に接続される可撓性チューブ92と、可撓性チューブ92上に設けられた点滴筒93及び流量調整器94と、可撓性チューブ92の他端に設けられたコネクタ95と、コネクタ95に被せられたコネクタカバー96等を含む。点滴筒93は、輸液セット91を流れる液状物の流量を可視化させる。流量調整器94は、可撓性チューブ92を押圧してその流路断面積を変化させて、輸液セット91を流れる液状物の流量調整を可能にする。コネクタ95は、患者の鼻腔又は静脈に挿入されたチューブ(図示せず)に接続される。但し、本発明の栄養供給システムは図4に示された構成に限定されるものではなく、例えば本実施形態の医療用軟質容器1に従来より公知の任意の輸液セットを組み合わせて栄養供給システムを構成してもよい。
【0039】
最初に、流量調整器94を操作して可撓性チューブ92を押し潰して流路を閉じる。この状態で、図5に示すように、開閉操作部40aの挿入路45aに左手の親指を挿入し、開閉操作部40bの挿入路45bに左手の他の指(図5では人差し指)を挿入して医療用軟質容器1を左手で保持する。挿入路45a,45bに親指及び人差し指を挿入した状態で親指及び人差し指を接離すれば、開口部22を自由に開閉することができる。
【0040】
次に、図6に示すように、開口部22を開口させた状態で医療用軟質容器1を左手で保持しながら、右手(図示せず)で保持したカップ98内の液状物(例えば輸液)を開口部22に注ぐ。
【0041】
挿入路45a,45bに親指及び人差し指を挿入しているので、開口部22を大きく開口させた状態で、医療用軟質容器1を安定して保持することができる。従って、医療用軟質容器1を落としてしまったり、開口部22を十分に開口させることができなくて液状物をこぼしてしまったりする恐れが低減される。よって、医療用軟質容器1への液状物の注入作業での作業者の精神的及び肉体的な負担が軽減される。
【0042】
また、図6に示すように、医療用軟質容器1の正面(目盛り25が設けられた側の面)を作業者に向けて医療用軟質容器1を左手で保持すると、切り欠き20c(図2A、図2Cを参照)内に左手の手のひらが嵌り込むので、小さな手の作業者であっても挿入路45a,45bに指を深く挿入することができる。
【0043】
左手の手首関節を自然な角度にしたときに、図6のように医療用軟質容器1の正面が作業者に向くので、正面に付された目盛り25を容易に視認することができる。また、目盛り25は、左手などで隠れることもない。開閉操作部40a,40b及び目盛り25が中心軸1aに沿って設けられているので(図2A、図2Cを参照)、開閉操作部40a,40bで保持された医療用軟質容器1は、中心軸1aが重力方向とほぼ平行になるように保持され、目盛り25で注入量を正確に測量することができる。
【0044】
液状物の注入後、ジップ23を係合させて開口部22を閉じる。
【0045】
このようにして液状物が充填された医療用軟質容器1を、開口部22よりも上方に配置された吊り下げ部26の吊り下げ用穴27を利用してスタンドなどに吊り下げる。医療用軟質容器1は、その中心軸1aが重力方向とほぼ平行になり、且つ、排出ポート30が最下位となるように吊り下げられる。コネクタ95を患者に挿入されたチューブに接続し、流量調整器94を開く。これにより、医療用軟質容器1内の液状物を患者に投与することができる。排出ポート30が最下位に位置するので、医療用軟質容器1内の液状物は残らず流出する。
【0046】
開閉操作部40a,40bの可撓性袋部材20に対する取り付け位置は、開口部22を開口させた状態で医療用軟質容器1を片手で保持することができれば特に制限はない。一般には、開口部22の上端近傍に、左右方向に貫通する挿入路45a,45bが形成されるように、開閉操作部40a,40bを取り付けることが好ましい。開口部22にジップ23を備える場合には、挿入路45a,45bに指を入れた状態でジップ23の開動作を行えるようにしてもよい。従って、本実施形態のように、開閉操作部40a,40bの上端部42a,42b及び下端部43a,43bがジップ23を上下に挟むように、開閉操作部40a,40bを開口部22にに取り付けることが好ましい。
【0047】
図7Aは正面側の開閉操作部40aの上端部42a及びヒートシールによる加熱領域52aを示した、図2Aの部分7Aの拡大図、図7Bは裏面側の開閉操作部40bの上端部42b及びヒートシールによる加熱領域52bを示した、図2Cの部分7Bの拡大図である。図7A及び図7Bに示す実線で囲まれた加熱領域52a,52bは上端部42a,42bを軟質樹脂シート20a,20bにヒートシールにて融着する際の加熱領域である。ヒートシールは、一般に加熱した金型を被融着部材に押し当てることにより行われる。従って、加熱領域52a,52bは、ヒートシールをする際に押し当てられた金型によって形成された金型痕でもある。
【0048】
開閉操作部40a,40bの上端部42a,42bは、加熱領域52a,52bとの重複領域にて軟質樹脂シート20a,20bに固定される。
【0049】
加熱領域52a,52bの外形は、略円弧52a1,52b1と、略円弧52a1,52b1の両端を繋ぐ線分52a2,52b2とを有する。略円弧52a1,52b1は、線分52a2,52b2よりも、開閉操作部40a,40bの中央部41a,41b側に配置されている。
【0050】
本実施形態では、加熱領域52a,52bは、開閉操作部40a,40bの中央部41a,41bとは反対側の終端縁47a,47bの全てを含む(第1条件)。また、加熱領域52a,52bの外周縁(本実施形態では略円弧52a1,52b1)と開閉操作部40a,40bの幅方向の両側の側端縁46a,46bとの交点P12a,P12bにおいて、加熱領域52a,52bの外周縁(略円弧52a1,52b1)は開閉操作部40a,40bの長手方向(本実施形態では中心軸1a方向)に対して傾斜している(第2条件)。
【0051】
図8Aは正面側の開閉操作部40aの下端部43a及びヒートシールによる加熱領域53aを示した、図2Aの部分8Aの拡大図、図8Bは裏面側の開閉操作部40bの下端部43b及びヒートシールによる加熱領域53bを示した、図2Cの部分8Bの拡大図である。図8A及び図8Bに示す実線で囲まれた加熱領域53a,53bは下端部43a,43bを軟質樹脂シート20a,20bにヒートシールにて融着する際の加熱領域であり、ヒートシールをする際に押し当てられた金型によって形成された金型痕でもある。
【0052】
開閉操作部40a,40bの下端部43a,43bは、加熱領域52a,52bとの重複領域にて軟質樹脂シート20a,20bに固定される。
【0053】
図7A及び図7Bに示した加熱領域52a,52bと同様に、加熱領域53a,53bの外形は、略円弧53a1,53b1と、略円弧53a1,53b1の両端を繋ぐ線分53a2,53b2とを有する。略円弧53a1,53b1は、線分53a2,53b2よりも、開閉操作部40a,40bの中央部41a,41b側に配置されている。
【0054】
本実施形態では、加熱領域53a,53bは、開閉操作部40a,40bの中央部41a,41bとは反対側の終端縁48a,48bの全てを含む(第1条件)。また、加熱領域53a,53bの外周縁(本実施形態では略円弧53a1,53b1)と開閉操作部40a,40bの幅方向の両側の側端縁46a,46bとの交点P13a,P13bにおいて、加熱領域52a,52bの外周縁(略円弧52a1,52b1)は開閉操作部40a,40bの長手方向(本実施形態では中心軸1a方向)に対して傾斜している(第2条件)。
【0055】
開閉操作部40a,40bの上下の端部42a,42b,43a,43bが、上記のような加熱領域52a,52b,53a,53bによってヒートシールされていることの効果を以下に説明する。
【0056】
比較のために、開閉操作部40aの上端部42aを本発明とは異なる加熱領域で軟質樹脂シート20aにヒートシールにより固定した例を図9A及び図9Bに示す。
【0057】
図9Aに示す加熱領域102aは、開閉操作部40aの上端部42aの終端縁48a及び側端縁46a,46bよりも内側に配置された略矩形形状を有している。従って、この加熱領域102aは、本実施形態の加熱領域と異なり、開閉操作部40aの中央部41aとは反対側の終端縁48aを含んでいない(即ち、第1条件を満足しない)。また、加熱領域102aの外周縁は、開閉操作部40aの幅方向の両側の側端縁46a,46bと交差していない(即ち、第2条件を満足しない)。
【0058】
一方、図9Bに示す加熱領域112aは、開閉操作部40aの上端部42aよりはみ出した略矩形形状を有している。従って、この加熱領域112aは、本実施形態の加熱領域と同様に、開閉操作部40aの中央部41aとは反対側の終端縁48aを含んでいる(第1条件)。しかしながら、本実施形態の加熱領域と異なり、加熱領域112aの外周縁と開閉操作部40aの幅方向の両側の側端縁46a,46bとの交点P12a,P12bにおいて、加熱領域112aの外周縁は開閉操作部40aの長手方向に対して垂直である(即ち、第2条件を満足しない)。
【0059】
図9Aに示した加熱領域102aのように、加熱領域が開閉操作部40aの中央部41aとは反対側の終端縁48aを含んでいないと、開閉操作部40aの終端縁48aが軟質樹脂シート20aに密着せずに、軟質樹脂シート20aから浮き上がる。従って、終端縁48aが作業者の肌に引っ掛かるなどして医療用軟質容器の手触り感が低下したり、見映えが悪く安っぽさを感じさせたりして、品位を低下させるという問題がある。これに対して、本発明では、図7Aに示すように、加熱領域52aは、開閉操作部40aの中央部41aとは反対側の終端縁47aの全てを含む(第1条件)。従って、終端縁48aは軟質樹脂シート20aに密着されるので、上記の問題を解消することができる。
【0060】
また、加熱領域52aが開閉操作部40aの終端縁47aの全てを含む(第1条件)ことにより、開閉操作部40aの上端部42aが軟質樹脂シート20aにヒートシールされる領域である、加熱領域52aと上端部42aとの重複領域が大きくなる。従って、開閉操作部40aの軟質樹脂シート20aに対する必要な取り付け強度を容易に確保することができる。
【0061】
一方、図9Bに示した加熱領域112aのように、交点P12a,P12bにおいて、加熱領域の外周縁が開閉操作部40aの長手方向に対して傾斜していないと、以下の問題が生じる。即ち、図5及び図6に示したように開閉操作部40aの挿入路45aに指を挿入して開口部22を開口させたり、挿入路45aに指を挿入した状態で医療用軟質容器1に液状物を注入したりすると、開閉操作部40aの中央部41aに、中央部41aを軟質樹脂シート20aから引きはがすような外力が作用する。この外力は、軟質樹脂シート20aに対して垂直方向から見たとき、多くの場合、開閉操作部40aの長手方向に対して斜め方向に作用する。図9Bのように、交点P12a,P12bにおいて加熱領域112aの外周縁が開閉操作部40aの長手方向に対して垂直であると、上記の斜め方向の外力は交点P12a,P12bに局所的に作用し、交点P12a,P12bに応力が集中し、最悪の場合には交点P12a,P12bで軟質樹脂シート20aが破れてしまうという問題が生じる。これに対して、本発明では、図7Aに示すように、交点P12a,P12bにおいて加熱領域52aの外周縁が開閉操作部40aの長手方向に対して傾斜している(第2条件)。従って、上記の斜め方向の外力は、交点P12a,P12bを含む加熱領域52aの外周縁上の領域A1,A2に分散して作用する。従って、図9Bのような大きな応力集中が生じることはなく、軟質樹脂シート20aが破れてしまうという事態を防止することができる。
【0062】
上記では、図7Aに示した開閉操作部40aの上端部42aに対する加熱領域52aの効果を例に説明したが、他の加熱領域52b,53a,53bについても同様である。
【0063】
本実施形態では、開閉操作部40a,40bの上下の端部42a,42b,43a,43bの全てが、第1条件及び第2条件を満足する加熱領域52a,52b,53a,53b(図7A、図7B,図8A,図8B参照)をともなうヒートシールによって可撓性袋部材20に固定される。しかしながら、本発明はこれに限定されない。即ち、本発明では、ヒートシールによって固定される端部42a,42b,43a,43bのうちの少なくとも一つが第1条件及び第2条件を満足する加熱領域をともなうヒートシールによって固定されればよい。好ましくは、上端部42a及び/又は上端部42bが第1条件及び第2条件を満足する加熱領域をともなうヒートシールによって固定される。上端部42a,42bは、医療用軟質容器1に注入された液状物の重量が作用しやすく、図9Bで説明した応力集中が発生しやすいからである。
【0064】
本実施形態において、加熱領域52a,52b,53a,53bを構成する略円弧52a1,52b1,53a1,53b1は、曲率が一定の厳密な意味での円弧である必要はない。開閉操作部40a,40bの中央部41a,41b側に凸である曲線であればよく、その曲率は変化していてもよい。例えば、楕円の一部等であってもよい。
【0065】
また、加熱領域52a,52b,53a,53bを構成する線分52a2,52b2,53a2,53b2は、厳密な意味での直線である必要はなく、湾曲又は屈曲等した部分を含んでいてもよい。
【0066】
可撓性袋部材20を構成する軟質樹脂シート20a,20b及び開閉操作部40a,40bの材料は、特に制限はないが、例えば医療用軟質容器に用いられる、従来より公知の軟質樹脂シートを使用できる。具体的には、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリアミド、エチレン−メタクリレート共重合体等からなる単層シート、又は上記単層シートが2層以上積層された積層シートが挙げられる。積層シートの具体的層構成としては、例えば、ナイロン/ポリエチレン、ナイロン/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエチレン、ナイロン/ポリプロピレン/ポリエチレン等が挙げられる。あるいは、グレード(例えば成膜方法、機械的特性、または組成など)が異なる同種の樹脂を積層した積層シート(例えば、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)/無延伸ポリプロピレン(CPP)等)であってもよい。軟質樹脂シート20a,20b及び開閉操作部40a,40bの材料は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。ヒートシールされる側の表面は、易ヒートシール性を有する材料(例えばポリプロピレン)で構成されることが好ましい。軟質樹脂シート20a,20bの厚さは、特に限定はないが、例えば0.1〜0.6mm程度である。軟質樹脂シート20a,20bは透光性(または半透明性)を有していると、収容部21内の液状物を外から視認することができるので好ましい。より好ましくは、軟質樹脂シート20a,20bは透明である。
【0067】
排出ポート30の材料は、特に制限はないが、軟質樹脂シート20a,20bの材料よりも硬い材料が好ましい。具体的には、例えば、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0068】
(実施形態2)
本実施形態2は、開閉操作部40a,40bの上下の端部42a,42b,43a,43bの加熱領域の形状に関して、実施形態1と異なる。以下、実施形態1と異なる点を中心に本実施形態2を説明する。
【0069】
図10Aは本実施形態2において正面側の開閉操作部40aの上端部42a及びヒートシールによる加熱領域62aを示した拡大図、図10Bは本実施形態2において正面側の開閉操作部40aの下端部43a及びヒートシールによる加熱領域63aを示した拡大図である。開閉操作部40aの上端部42a及び下端部43aは、加熱領域62a,63aとの重複領域にて軟質樹脂シート20aに固定される。
【0070】
図示を省略するが、裏面側の開閉操作部40bの上端部42b及び下端部43bに対する加熱領域は、加熱領域62a,63aと面対称である。従って、以下の開閉操作部40aの上端部42a及び下端部43aに対する加熱領域62a,63aについての説明は、裏面側の開閉操作部40bの上端部42b及び下端部43bに対する加熱領域にも同様に適用される。
【0071】
本実施形態の加熱領域62a,63aの外形は、いずれも略台形形状を有している。略台形形状を構成する略平行な二辺のうち短辺62a2,63a2は、長辺62a1,63a1よりも、開閉操作部40aの中央部41a側に配置されている。
【0072】
本実施形態では、加熱領域62a,63aは、開閉操作部40aの中央部41aとは反対側の終端縁47a,48aの全てを含む(第1条件)。また、加熱領域62a,63aの外周縁(本実施形態では略台形の斜辺62a3,62a4;63a3,63a4)と開閉操作部40aの幅方向の両側の側端縁46a,46bとの交点P12a,P12b;P13a,P13bにおいて、加熱領域62a,63aの外周縁(斜辺62a3,62a4;63a3,63a4)は開閉操作部40a,40bの長手方向(本実施形態では中心軸1a方向)に対して傾斜している(第2条件)。
【0073】
本実施形態の加熱領域62a,63aは、第1条件及び第2条件を満足するので、実施形態1の加熱領域52a,52b,53a,53bと同様の効果を奏する。
【0074】
即ち、加熱領域62a,63aが、開閉操作部40aの中央部41aとは反対側の終端縁47a,48aの全てを含む(第1条件)ので、終端縁47a,48aは軟質樹脂シート20aに密着される。従って、手触り感や見映えが低下することはなく、品位の低下を防止することができる。
【0075】
また、加熱領域62a,63aが開閉操作部40aの終端縁47a,48aの全てを含む(第1条件)ことにより、開閉操作部40aの上端部42a及び下端部43aが軟質樹脂シート20aにヒートシールされる領域が大きくなる。従って、開閉操作部40aの軟質樹脂シート20aに対する必要な取り付け強度を容易に確保することができる。
【0076】
また、交点P12a,P12bにおいて加熱領域62a,63aの外周縁(即ち斜辺62a3,62a4;63a3,63a4)が開閉操作部40a,40bの長手方向に対して傾斜している(第2条件)。従って、開閉操作部40aの中央部41aに、中央部41aを軟質樹脂シート20aから引きはがすような外力が作用しても、大きな応力集中が生じることはなく、軟質樹脂シート20aが破れてしまうという事態を防止することができる。
【0077】
本実施形態2は、上記以外は実施形態1と同じである。
【0078】
(実施形態3)
本実施形態3は、開閉操作部40a,40bの上端部42a,42bの軟質樹脂シート20a,20bに対する取り付け方法に関して、実施形態1と異なる。以下、実施形態1と異なる点を中心に本実施形態3を説明する。
【0079】
図11は本実施形態3に係る医療用軟質容器3の斜視図、図12Aはその正面図、図12Bはその右側面図である。
【0080】
実施形態1では、開閉操作部40a,40bの上端部42a,42bの軟質樹脂シート20a,20bにヒートシールされる面と、開閉操作部40a,40bの下端部43a,43bの軟質樹脂シート20a,20bにヒートシールされる面とは、同じ側の面であった。これに対して、本実施形態では、開閉操作部40a,40bの上端部42a,42bの軟質樹脂シート20a,20bにヒートシールされる面は、開閉操作部40a,40bの下端部43a,43bの軟質樹脂シート20a,20bにヒートシールされる面と反対側の面である。
【0081】
開閉操作部40a,40bの下端部43a,43bの軟質樹脂シート20a,20bに対するヒートシール方法は実施形態1と同じである(図8A、図8Bを参照)。
【0082】
図13は本実施形態3において正面側の開閉操作部40aの上端部42a及びヒートシールによる加熱領域52aを示した拡大図である。
【0083】
図示を省略するが、裏面側の開閉操作部40bの上端部42b及びこれに対する加熱領域は、正面側の上端部42a及び加熱領域52aと面対称である。従って、以下の開閉操作部40aの上端部42aに対する加熱領域52aについての説明は、裏面側の開閉操作部40bの上端部42bに対する加熱領域にも同様に適用される。
【0084】
加熱領域52aの外形は、図7Aと同様に、略円弧52a1と、略円弧52a1の両端を繋ぐ線分52a2とを有する。略円弧52a1は、線分52a2よりも、開閉操作部40aの中央部41a側に配置されている。開閉操作部40aの上端部42aは、加熱領域52aとの重複領域にて軟質樹脂シート20aに固定される。
【0085】
実施形態1と同様に、本実施形態でも、加熱領域52aは、開閉操作部40aの中央部41aとは反対側の終端縁47aの全てを含む(第1条件)。また、加熱領域52aの外周縁(本実施形態では略円弧52a1)と開閉操作部40aの幅方向の両側の側端縁46a,46bとの交点P12a,P12bにおいて、加熱領域52aの外周縁(略円弧52a1)は開閉操作部40a,40bの長手方向(本実施形態では中心軸1a方向)に対して傾斜している(第2条件)。
【0086】
以上のように、本実施形態では、軟質樹脂シート20a,20bに対して開閉操作部40a,40bの上端部42a,42bが取り付けられる向き、及び加熱領域52a,52bの向きが、実施形態1と上下逆転している。本実施形態においても、上端部42a,42bに対する加熱領域は第1条件及び第2条件を満足する。従って、本実施形態は、実施形態1と同じ効果を奏する。
【0087】
なお、本実施形態において、加熱領域が実施形態2で説明した略台形形状を有していてもよい。
【0088】
本実施形態では、開閉操作部40a,40bの両面が軟質樹脂シート20a,20bにヒートシールされる。従って、開閉操作部40a,40bの両表面は、易ヒートシール性を有する材料(例えばポリプロピレン)で構成されることが好ましい。
【0089】
本実施形態3は、上記以外は実施形態1,2と同じである。
【0090】
(実施形態4)
実施形態1〜3では、開閉操作部40a,40bが軟質樹脂シート20a,20bと別個の部材であった(図3参照)のに対して、本実施形態4では、開閉操作部40a,40bが軟質樹脂シート20a,20bにそれぞれ一体的に設けられている。以下、実施形態1と異なる点を中心に本実施形態4を説明する。
【0091】
図14は本実施形態4に係る医療用軟質容器4の斜視図、図15Aはその正面図、図15Bはその右側面図である。また、図16は医療用軟質容器4の分解斜視図である。
【0092】
図16に示されているように、軟質樹脂シート20a,20bの上端に開閉操作部40a,40bがそれぞれ一体的に形成されている。開閉操作部40a,40bはそれぞれ下方に湾曲されて、その先端が軟質樹脂シート20a,20bの外面にヒートシールにより固定される。開閉操作部40a,40bの軟質樹脂シート20a,20bに固定された先端は、下端部43a,43b(図14、図15A、図15Bを参照)となる。下端部43a,43bのヒートシールによる加熱領域53a,53bは実施形態1(図8A、図8Bを参照)と同じである。
【0093】
本実施形態4では、開閉操作部40a,40bの下端部43a,43bが実施形態1と同じ加熱領域53a,53bによって軟質樹脂シート20a,20bにヒートシールにより固定されている。加熱領域53a,53bは第1条件及び第2条件を満足する。従って、本実施形態は、実施形態1と同じ効果を奏する。
【0094】
また、本実施形態では、開閉操作部40a,40bの下端部43a,43bとは反対側の端部(上端部)は軟質樹脂シート20a,20bと連続し一体化されている。従って、当該端部の軟質樹脂シート20a,20bに対する接続強度が向上する。また、手触り感や見映えも良好である。また、医療用軟質容器4を構成する部品点数が少なくなり、低コスト化が可能である。
【0095】
なお、本実施形態において、下端部43a,43bの加熱領域が実施形態2で説明した略台形形状を有していてもよい。
【0096】
本実施形態の医療用軟質容器4は、実施形態1の医療用軟質容器1が有していた、吊り下げ用穴27が形成された吊り下げ部26を有していない。医療用軟質容器4を吊り下げるための吊り下げ用穴は、軟質樹脂シート20a,20bに直接形成してもよい。あるいは、吊り下げ用穴が形成された吊り下げ部を別個の部材として作成し、軟質樹脂シートにヒートシール等の方法で固定してもよい。あるいは、吊り下げ用穴が形成された吊り下げ部を、開閉操作部40a,40bとは別に軟質樹脂シートに一体的に形成してもよい。
【0097】
本実施形態では、開閉操作部40a,40bの両方が軟質樹脂シート20a,20bにそれぞれ一体的に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、開閉操作部40aは本実施形態4と同様に軟質樹脂シート20aに一体的に形成し、開閉操作部40bは軟質樹脂シート20bとは別個の部材として作成し、その上端部及び下端部を実施形態1〜3と同様に軟質樹脂シート20bにヒートシールにより固定してもよい。
【0098】
上記の実施形態1〜4は例示に過ぎない。本発明はこれらの実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
【0099】
例えば、上記の実施形態では、開閉操作部40a,40bの終端縁47a,47b,48a,48bは、いずれも開閉操作部の長手方向と垂直方向に延びる直線であったが、本発明の終端縁はこれに限定されない。例えば、終端縁が、湾曲又は屈曲等していてもよい。
【0100】
上記の実施形態では、開閉操作部40a,40bの側端縁46aは中心軸1aに対して傾斜し、側端縁46bは中心軸1aと略平行であったが、側端縁46a,46bの向きは任意に設定することができる。また、側端縁46a,46bは湾曲、屈曲等していてもよい。
【0101】
上記の実施形態では、開閉操作部40a,40bは、上端部42a,42bが広幅で下端部43a,43bが狭幅の略テーパ形状を有していたが、本発明の開閉操作部40a,40bの形状はこれに限定されず、任意の形状を有していてもよい。
【0102】
可撓性袋部材20の形状は、特に制限はなく、長方形、楕円形等の任意の形状であってもよい。但し、可撓性袋部材20内の液状物等が排出ポート30から残らず流出するように、収容部21の下側端が排出ポート30に向かって緩やかに傾斜していることが好ましい。
【0103】
上記の実施形態では、小さな手でも挿入部45a,45bに指を挿入することができるように、可撓性袋部材20に切り欠き20cを設けたが、切り欠き20cを省略することもできる。あるいは、切り欠き20cを可撓性袋部材20の左側端ではなく、右側端に形成してもよい。あるいは、右側端及び左側端の両方に形成してもよい。
【0104】
目盛り25は、軟質樹脂シート20aではなく、軟質樹脂シート20bに形成してもよい。あるいは、軟質樹脂シート20a及び軟質樹脂シート20bの両方に形成してもよい。あるいは、目盛り25を省略してもよい。
【0105】
上記の実施形態では、目盛り25は中心軸1aに沿って設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、中心軸1aと平行な直線に沿って可撓性袋部材20の幅方向の両側の端縁のうちの一方の近傍に設けられていてもよい。また、目盛り25を軟質樹脂シート20a及び軟質樹脂シート20bの両方に形成する場合に、両シート20a,20bに形成する目盛り25の位置は、互いに対向する位置であってもよく、あるいは互いに対向しない位置であってもよい。
【0106】
上記の実施形態では、開口部22を可逆的に開閉可能にするために、開口部22にジップ23が設けられていたが、開口部22を可逆的に開閉可能にする、ジップ23以外の任意の構造を開口部22に設けてもよい。あるいは、ジップ23を省略してもよい。
【0107】
開口部22に、開口部22を一旦開封した後は、再度閉じることができない不可逆的な構造を設けてもよい。
【0108】
上記の実施形態では、可撓性袋部材20は2枚の軟質樹脂シート20a,20bで構成されていたが、3枚以上の軟質樹脂シートで構成してもよい。例えば、収容部21の容量を増大させるため、あるいは、開口部22を大きく開口させるために、軟質樹脂シート20a,20bの間にマチを構成する軟質樹脂シートを介在させてもよい。
【0109】
排出ポート30の形状は、特に限定はない。例えば、輸液セットの上流側端に設けられるコネクタと適合する任意の形状を有していてもよい。排出ポート30と当該コネクタとの接続を確実にするために、排出ポート30に、当該コネクタと係合し合う係合構造を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の利用分野は、特に制限はなく、液状物を貯蔵する医療用の容器として広範囲に利用することができる。中でも、経腸栄養療法や静脈栄養療法に使用される容器として好ましく利用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1,3,4 医療用軟質容器
20 可撓性袋部材
20a,20b 軟質樹脂シート
21 収容部
22 開口部
30 排出ポート
40a,40b 開閉操作部
41a,41b 開閉操作部の中央部
42a,42b 開閉操作部の上端部
43a,43b 開閉操作部の下端部
45a,45b 挿入路
46a,46b 開閉操作部の側端縁
47a,47b,48a,48b 開閉操作部の終端縁
52a,52b,53a,53b,62a,63a 加熱領域
52a1,52b1,53a1,53b1 加熱領域の略円弧
52a2,52b2,53a2,53b2 加熱領域の線分
62a1,63a1 略台形形状の加熱領域の長辺
62a2,63a2 略台形形状の加熱領域の短辺
90 栄養供給システム
91 輸液セット
P12a,P12b,P13a,P13b 交点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚の軟質樹脂シートが貼り合わされてなり、上端に開閉可能な開口部を備えた可撓性袋部材と、
前記可撓性袋部材の下端に設けられた排出ポートと、
指を挿入可能な挿入路が形成されるように、その中央部を弛ませて前記可撓性袋部材に設けられた一対の開閉操作部とを備えた医療用軟質容器であって、
前記一対の開閉操作部の少なくとも一方の上側及び下側の少なくとも一方の端部は、前記可撓性袋部材の外面にヒートシールにより固定されており、
前記少なくとも一方の端部をヒートシールにより固定する際の加熱領域は、前記少なくとも一方の端部の終端縁の全てを含み、且つ、前記加熱領域の外周縁と前記開閉操作部の両側の側端縁との交点において前記外周縁は前記開閉操作部の長手方向に対して傾斜していることを特徴とする医療用軟質容器。
【請求項2】
前記加熱領域は、略円弧と前記略円弧の両端を繋ぐ線分とを有し、前記略円弧が前記開閉操作部の前記側端縁と交差する請求項1に記載の医療用軟質容器。
【請求項3】
前記加熱領域は略台形形状を有し、前記略台形形状の斜辺が前記開閉操作部の前記側端縁と交差する請求項1に記載の医療用軟質容器。
【請求項4】
前記一対の開閉操作部は前記可撓性袋部材を構成する前記軟質樹脂シートと別個の部材として作成され、前記一対の開閉操作部のそれぞれの上側の端部及び下側の端部は前記可撓性袋部材の外面にヒートシールにより固定されている請求項1〜3のいずれかに記載の医療用軟質容器。
【請求項5】
前記一対の開閉操作部のそれぞれの上側の端部が、前記加熱領域で加熱されたヒートシールによって前記可撓性袋部材の外面に固定されている請求項1〜4のいずれかに記載の医療用軟質容器。
【請求項6】
前記一対の開閉操作部のぞれぞれは前記可撓性袋部材を構成する前記軟質樹脂シートと一体的に作成され、前記一対の開閉操作部のそれぞれの下側の端部は前記可撓性袋部材の外面にヒートシールにより固定されている請求項1〜3のいずれかに記載の医療用軟質容器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の医療用軟質容器を備えた栄養供給システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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