説明

医療用酸素供給装置

【課題】本体部に設けた紫外線センサが炎を検知する機能を備えた医療用酸素供給装置の提供。
【解決手段】 炎センサと温度センサを備えた医療用酸素供給装置であって、炎センサが炎を検出した時は制御部により報知手段を駆動させて報知を行い、更に温度センサが所定の温度以上の温度を検出した時には前記制御部により報知手段を駆動させて報知を行うとともに酸素発生手段の停止を行なうように制御することを特徴とする。また、炎センサは、紫外線センサであり、本体部内部に設けられ、紫外線透過窓を備えたことを特徴とする。また、炎センサは、2つ以上設けられ、指向軸が互いに異なる視野角であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用酸素供給装置に関し、延焼の抑制や火災防止手段を備えた医療用酸素供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、喘息、肺気腫症、慢性気管支炎等の呼吸器疾患の患者の治療法として有効な酸素吸入療法に使用される医療用酸素供給装置には、空気中の酸素を透過し窒素を選択的に吸着するゼオライトを吸着剤として用いた吸着法が広く使われている。
【0003】
また、この種の医療用酸素供給装置は、在宅患者が通常家庭内に据置いて使用するものであるため、医療用酸素供給装置の運転の安全性を確保するために、圧力異常や生成された酸素濃度異常、機器温度異常などの機器異常を検知するシステムも備えている。
【0004】
しかし、酸素には助燃性があるため、医療用酸素供給装置の使用の際、周囲の火気は厳禁であるにも関わらず、使用者(患者)又は装置付近にいる使用者の家族や介護者の装置使用時の喫煙や、ストーブなどの火気が存在する近くでの装置使用により、鼻カニューラや口マスクが接続された延長チューブに引火して火災事故などが発生している。発火による火災を未然に防ぐ手段として、医療用酸素供給装置に煙検知機能を備え、装置周辺での喫煙に対して警報を発し(特許文献1)、また軟質チューブの周囲に難燃性繊維で被覆した導管手段の使用(特許文献2)や濃縮酸素出口と導管との接続部が不燃材料の導管継手で構成される(特許文献3)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−314507号公報
【特許文献2】特許第2598126号
【特許文献3】特開2006−280470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
呼吸器疾患の患者に対して行われる酸素吸入療法において、喫煙による鼻カニューラや口マスク等の酸素吸入口への着火や、ストーブなどの火気が存在する近くでの装置使用による引火の可能性が存在し、火災の恐れがある。
【0007】
本発明は上記の問題を解決するものであり、酸素吸入療法を行っている使用者(患者)又は使用者の家族や介護者が医療用酸素供給装置の傍で喫煙をした場合や、近距離にストーブなどの火気が存在する場合、本体部に設けた紫外線センサが炎を検知する機能を備えた医療用酸素供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、炎センサと温度センサを備えた医療用酸素供給装置であって、炎センサが炎を検出した時は制御部により報知手段を駆動させて第1の報知を行い、更に温度センサが所定の温度以上の温度を検出した時には制御部により報知手段を駆動させて第2の報知を行うとともに酸素発生手段の停止を行なうように制御することを特徴とする。また、炎センサは、紫外線センサであり、本体部内部に設けられ、紫外線透過窓を備えたことを特徴とする。また、炎センサは、2つ以上設けられ、指向軸が互いに異なる視野角であることを特徴とする。また、本発明によれば、炎センサと温度センサを備えた医療用酸素供給装置の駆動制御方法であって、炎センサが炎を検出した時は制御部により報知手段を駆動させて報知を行うステップと、更に温度センサが所定の温度以上の温度を検出した時には制御部により報知手段を駆動させて報知を行うステップと、更に酸素発生手段の停止を行なうステップからなることを特徴とする。 本発明はまた、炎センサと温度センサを備えた医療用酸素供給装置の駆動制御方法のプログラムコードが記憶されたコンピュータで読取り可能な記憶媒体であって、炎センサが炎を検出した時は制御部により報知手段を駆動させて報知を行うステップのプログラムコードと、更に前記温度センサが所定の温度以上の温度を検出した時には制御部により報知手段を駆動させて報知を行うステップのプログラムコードと、更に酸素発生手段の停止を行なうステップのプログラムコードからなることを特徴とする医療用酸素供給装置の駆動制御方法のプログラムコードが記憶されたコンピュータで読取り可能な記憶媒体である。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、炎センサによる炎の検出では注意喚起にとどめ、別に設けられた温度センサが装置の温度の上昇を検出した段階で酸素生成の停止を行なうことで、誤報の発生の低減、誤報による医療用酸素供給装置の停止のリスクを低減できる。また、炎センサは、2つ以上設けられ、指向軸が互いに異なる視野角であることを特徴とするので、広い範囲の炎を死角なく検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態である医療用酸素供給装置1の外観斜視図である。
【図2】医療用酸素供給装置1の配管図を兼ねたブロック図である。
【図3】医療用酸素供給装置1における炎センサ,温度センサの検出に基づく駆動制御のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明するが適宜変更でき、実施例に限定されるものではない。また、本発明の医療用酸素供給装置は、高濃度酸素を得手段としてPSA方式、VSA方式、VPSA方式、膜型など、各種の圧力スイング方式を用いることができるが本実施形態では、PSA方式(正圧力変動吸着法)を用いた医療用酸素供給装置で説明する。
【0012】
図1(a)は、一実施形態に係る医療用酸素供給装置1を前方左斜め上から見た外観斜視図、図1(b)は、図1(a)のX―X’断面図で後述する紫外線センサ221と酸素出口7との位置関係を示す図である。この医療用酸素供給装置1は、設置場所を最小にするために上下方向に細長いスマートな、一見して小型旅行カバン風の外観形状を備えている。このため一瞥しただけでは他人に医療用酸素供給装置1であることが知られないように配慮している。
【0013】
また、特徴としては従来の装置の約3の1の重さの軽量化、省エネを追求したことの他に、付属された充電式バッテリと家庭用電源で使用できることなどがある。また、充電式バッテリは停電時におけるバックアップ電源としても使用できるので安心して使える。さらに、充電式バッテリ使用モードでは90%以上程度の濃度の酸素流量が毎分所定流量、例えば1.25L以上に設定された場合には、バッテリ節約のために吸気に同調して酸素を送り出す「同調モード」に自動的に切り替わる機能を備えている。
【0014】
医療用酸素供給装置1の本体部を構成する表面カバー2aと裏面カバー2bを射出成形樹脂部品とし、さらに吸着筒を含む他の構成部品についても極力軽量化することで総重量が約10kgの軽量化(AC電源使用でキャリアを設けない場合)とした。
【0015】
この結果、大人が片手で持ち運べる、所謂可搬型にするための取手部分となるとともに、医療用酸素供給装置1を持ち上げる力に十分に耐え得る強度を備えるハンドル4を上方に設けており、デザイン的な特徴を演出している。
【0016】
この医療用酸素供給装置1の外形寸法は、全体が丸みを帯びており、具体的には幅Wが350mm×奥行きDが250mm×高さHが550mmである。このため、床面上の占有面積を極力小さくできることから上記の軽量化とともに小型化を図っている。
【0017】
また、医療用酸素供給装置1のデザイン上の特徴点としては、設置床面から医療用酸素供給装置1の前面を3次元的に覆うようにした表面カバー2aを、図1に示すようにハンドル4の底面に連続するアクセントラインを左右に上下方向に凹状に一体形成し、さらにこれらのアクセントラインで挟まれる部分を淡い暖色系とし、この上方に同色系の操作パネル5を配置する一方で、裏面カバー2bを含む残りの部分をベージュないしクリーム系の色としている。
【0018】
以上のようなデザインおよび配色を施した所謂ツートンカラーの近代的なデザインとすることで、室内に医療用酸素供給装置1を設置したときに家具などの他の調度品との調和を図れるように配慮している。また、表面カバー2aと裏面カバー2bは、耐衝撃性を有する熱可塑性樹脂である例えばABS樹脂製とすることでデザイン的自由度を確保している。また、キヤリア12上にボルト12aを介して医療用酸素供給装置1を載置し、キヤリア12に一体的に設けられたキャスタ12bにより室内などで移動を容易にしている。
【0019】
医療用酸素供給装置1の本体部に設けられた操作パネル5は、表示部128を備えており、ハンドル4の下方の開口部において裏面カバー2bとの接合面まで、例えば約10度の角度で斜め上に延設され、その上に左から順に、電源スイッチ6と、酸素出口7と、酸素流量設定ボタン8が配置されている。この酸素出口7の上方には、酸素出口7に形成された段差部に対して気密状態に係合されるとともに、着脱自在に設けられる樹脂製のカプラ13が示されている。本体部に設けられた酸素出口7との接続部としてのカプラ13には長さ1〜15m程度のカニューラの一部を形成する延長チューブ15の開口部が連通し、鼻カニューラ(酸素吸入具)14の開口部が連通するようにセットされる。なお、延長チューブ15は、塩化ビニル樹脂等で外径5〜10mm、内径3〜6mm程度に形成されている。
【0020】
操作パネル5は、標準身長(160〜170cm)の患者が起立状態で両手を下げた腰部分に略該当する高さ付近に設けられているので、立ったままの姿勢で医療用酸素供給装置1の運転操作を行なうことができる。このため従来の装置のようにいちいち座ったり、覗き込んだりする必要がなくなる。したがって、特に患者の胸腹部への負担は大きく軽減される。さらには、左利きの人であっても酸素出口7を中央にして左右対称位置に各ダイヤルが配置されているので、何ら違和感なく操作できることになる。
【0021】
また、鼻カニューラ(酸素吸入具)14に接続された延長チューブ15を引っかけるための不図示のフックを設けてもよい。鼻カニューラ14に接続された延長チューブ15は、患者が生活する同じ部屋内で移動する範囲に略相当する全長を有しており、未使用時は、延長チューブ15を数回巻き付けた後に、延長チューブ15をフックに引っかける。
【0022】
また、例えば患者が躓くなどして操作パネル5に対して激しくぶつかった場合でも、怪我などをしないように安全上の配慮がされている。この電源スイッチ6のオン位置に相当する位置には緑と赤に点灯する例えば発光LEDを内蔵した運転状態ランプ128aが設けられている。また、この運転状態ランプ128aの上にはバッテリ残量表示部128dが設けられている。
【0023】
また、中央の酸素出口7についても図示のように殆どの囲い部分が操作パネル5の操作面から奥側(図面の裏面側)に引っ込むように形成した凹部5bに設けられており、さらに炎センサとしての紫外線センサ221が酸素出口7近傍に取り付けられている。この紫外線センサ221は、ZnO紫外線センサ、GaN紫外線センサ、AlGaN紫外線センサ、ダイヤモンド紫外線センサなどが使用されている。この紫外線センサ221は、カプラ13から鼻カニューラ14の所定距離、例えば20〜50cmの距離までが所定の視野角(θ)内、例えば20〜45度に入るように、好ましくは医療用酸素供給装置1の正面から見て同一軸となるように操作パネル5の裏面に設けられている。操作パネル5には、紫外線センサ221が前記の所定の視野角を得られるように開口部221bがテーパ状(外側に向かって広く)に設けられていて、好ましくはこの開口部221bには、波長185〜260nmの紫外線を選択的に透過するよう硼珪酸ガラスなどの紫外線透過窓が嵌挿されている。この酸素出口7の上には「点検」の文字を印刷した警報表示部128cが設けられている。なお、紫外線センサ221は、2ケ以上(好ましくは2ケ)設けることで、互いに紫外線に対する指向性,視野角が異なるので、より精度よく、炎を検出できる。また、温度センサ222も医療用酸素供給装置1の適所(図1(b)では、酸素出口7の近傍)に設けられている。温度センサ222は、バンドギャップ電圧を用いる半導体型温度センサ,サーモパイル型赤外線センサ,サーミスタ,熱電対型温度センサが用いられる。これらのセンサからの出力値に基づき、制御部200にて温度値に変換される。警報表示部128cの下方には緑と赤に点灯する例えば発光LEDを内蔵した酸素ランプ128bが設けられている。また、設定した酸素流量(L/分)表示部128eも備えている。バッテリ残量表示部128dは、電源オンで約2秒間全点灯する。その後に、内蔵電池228の残量が100%であると、5段階の発光LEDの全てが点灯表示される。また、バッテリ残量が20%減るごとに、右側から消灯して点灯数が少なくなり、残り1つになると内蔵のブザーで警告する。
【0024】
そして、内蔵電池228の残量が10%以下になると左側に設けられた発光LEDを内蔵したランプが赤色に点滅(間欠的に光る)するとともに、5分おきに内蔵のブザーで警告する。このようにして、特に外出時におけるバッテリ駆動モードでの使用上の安全性を確保している。警報表示部128cは「点検」の文字が印刷されており、酸素濃度が低下したときに内蔵のランプが点灯して知らせるようにしている。また装置側の異常発生時にはブザーが鳴り知らせるようにしている。また、停電で装置が停止したときには、点滅して知らせる一方で、ブザーを鳴らすことで特に視覚障害者に知らせるようにしている。酸素ランプ128bは、酸素が正常に流れているときには内蔵のLEDが緑色に点灯し、酸素が出ていない時には消灯する。そして、呼吸同調モードのときに一定時間、呼吸状態を検出できなかったときに赤色に点灯し、ブザーを鳴らすようにしている。
【0025】
なお、電源スイッチ6をオンすると、ブザーが鳴り、全てのランプが2秒間緑色に点灯する。そして、バッテリ駆動モードで使用するときには、その後に5段階の発光LEDにおいて残量に応じて点灯表示される。患者は医師の処方にしたがって酸素流量設定ボタン8で所定流量に設定すると、酸素供給が開始される。停止時には、電源スイッチ6をオフすると、酸素ランプ128bが消灯し、しばらくの間、運転ランプ128aが点滅した後に自動的に終了する。患者が毎日行う作業として、裏面カバー2bに設けられた外気導入フィルタ22に付着したゴミ、埃を掃除機で取り除くことがある。この作業を簡単にできるようにするために外気導入フィルタ22を容易に着脱できるように構成されている。
【0026】
<医療用酸素供給装置1の配管およびブロック図の説明>
図2は、医療用酸素供給装置1のブロック図を兼ねて図示した配管の模式図である。本図において、既に説明済みの構成部品については同様の符号を附して説明を割愛する。図中の二重線は空気、酸素、窒素ガスの流路となる配管24であり概ね配管24で示されている。また、細い実線は電源供給または電気信号の配線を示している。
【0027】
ここで、以下の説明では酸素発生手段を構成するコンプレッサ10として水平対向2筒式のコンプレッサを使用した場合について述べる。また、外気(空気)を吸気口2c、フィルタ22を介してコンプレッサ10に導入し、排気口2dを介して外部に排出する主筐体2については密閉容器として図中において概ね破線で図示されている。
【0028】
図2において、導入空気の流れに沿って順次述べる。吸気口2c、フィルタ22、配管24を介して原料空気(外気)が図1に破線で図示した防音室3内に位置するコンプレッサ10に入る。
【0029】
濾過された原料空気は、後述するコンプレッサ10の圧縮機構で加圧されて圧縮空気となるが、このとき温度上昇した状態で配管24が形成されたアルミ製の下部マニホルドM1(破線で示す)に送り出され下部マニホルドM1の放熱効果により冷却されるため、送風ファン30の小型化が図れる。冷却された圧縮空気が酸素発生手段を構成する第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108bに導入される。こうして、高温では機能低下してしまう吸着剤であるゼオライトが十分に機能できるようになる結果、酸素を90%程度以上にまで濃縮できるようになる。
【0030】
圧縮空気は、配管24を介して並列に2本分が上記のように配置された、第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108bに対して交互に供給されることになる。このため切換弁である3方向切換弁109a、109bが図示のように接続されている。これらの3方向切換弁109a、109bと、さらに第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108bの不要ガスを脱離させるための浄化工程を行うために、3方向切換弁109a、109bに対して配管24が図示のように接続されている。
【0031】
以上の第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108b内に夫々貯蔵されている触媒吸着剤であるゼオライトは、Si0/Al比が2.0〜3.0であるX型ゼオライトであり、かつこのAlの四面体単位の少なくとも88%以上をリチウムカチオンと結合させたものを用いることで、単位重量当たりの窒素の吸着量を増やせるようにしている。特に約0.3〜0.6mm程度の顆粒測定値を有するとともに、四面体単位の少なくとも88%以上をリチウムカチオンと融合させたものが好ましい。
【0032】
このようなゼオライトを使用することで、同じ酸素を生成するために必要となる原料空気の使用量を削減できるようになる。この結果、圧縮空気を発生するためのコンプレッサ10をより小型のタイプとすることができ、一層の低騒音化を図ることができる。
【0033】
一方、第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108bの上方の出口側には逆止弁と、絞り弁と開閉弁とからなる均等圧弁107が図示のように分岐接続されている。分離生成された90%程度以上の濃度の酸素を貯蔵するための容器となる製品タンク111が、図示のように配管24に対して接続されている。
【0034】
製品タンク111の下流側には、出口側の酸素の圧力を一定に自動調整する所謂レギュレータである圧力調整器112が配管されている。この圧力調整器112の下流側には、後述する酸素濃度センサ114が配管24を介して接続されており、酸素濃度の検出を間欠(10〜30分毎)または連続で行うようにしている。この下流側には上記の酸素流量設定ボタン8に連動して開閉する比例開度弁115が配管24を介して接続されており、その下流側には酸素流量センサ116がさらに接続されている。また、酸素流量センサ116の下流には呼吸同調制御のための負圧回路基板118を介してデマンド弁117が接続されており、滅菌フィルタ119を経て、医療用酸素供給装置1の酸素出口7に対して接続されている。以上の構成により、鼻カニューラ14等を経て患者に対する最大流量5L/分で約90%程度以上に濃縮された酸素の吸入が可能になる。
【0035】
次に、電源系統は、コネクタ130を中継して接続されるACアダプタ19と、主筐体2の底部に内蔵される内蔵電池228と、上記のコネクタ131を介して着脱自在可能に設けられる外部電池227と電源制御回路226から構成されている。内蔵電池228および外部電池227は繰り返し充電可能な2次電池であり、内蔵電池228は電源制御回路226からの電力供給を受けて充電される。なお、内蔵電池228は、少なくとも500回程度の繰り返し充放電が可能で、電池残量、使用充放電サイクル数、劣化程度、出力電圧等のマネジメント機能を有するものが使用され、電池残量、残充電容量、充放電回数を外部の携帯端末などで確認可能なマネジメント機能を有するものが好ましい。また、外部電池227については、コネクタ131を介する接続状態において、電源制御回路226からの電力供給を受けて充電することもできるが、通常は別途準備される電池充電器を用いて繰り返し充電されることになる。または、専用設計された電池充電器を一体化した外部電池227として準備してもよい。
【0036】
以上の電源系統の構成において、医療用酸素供給装置1はACアダプタ19からの電力供給を受けて作動する第1電力供給状態と、内蔵電池228からの電力供給を受けて作動する第2電力供給状態と、外部電池からの電力供給を受けて作動する第3電力供給状態との3系統の電力供給状態の内の一つに自動切換えして使用されることになる。
【0037】
この自動切換えのための優先順位は上記の第1電力供給状態、第3電力供給状態、第2電力供給状態の順序で自動決定するように中央制御部200により電源制御回路226が制御される。
【0038】
また、電源制御回路226には、IDタグコード識別回路230がさらに接続される場合があり、後述するように携帯時に充電式電池切れとなる事態を防止できるようにしている。すなわち、携帯時に充電式電池切れとなる事態を防止するためには、複数の内蔵電池228を接続するモジュラー電源装置とすると良いが、このように複数の電池を接続すると電源切り替えの手段が複雑になる上、さらに個別に電力消費をモニタすることができなくなる。
【0039】
そこで複数の内蔵電池228、・・・228の内で、放電済の電池からフル充電された充電式電池に自動的に切り換える制御を可能にするために個別に識別IDタグコード及び充電状態検出手段を設けておき、放電済の電池を確認可能にしてフル充電された電池に切り換えるようにしている。さらにまた、電池使用したい時間に合致させて、接続する電池の数を自由に選択し、利便性を高めるようにしている。
【0040】
また、マイクロコンピュータを含む中央制御部(CPU)200は、生成する酸素量に応じた、最適な動作モードに切り替えるプログラムが記憶されており、多くの酸素生成をする場合は自動的にコンプレッサ10、送風ファン30を高速駆動し、少ない酸素生成時の場合には低速に回転駆動する制御を行うモータ制御部201、ファンモータ制御部203を介して夫々行うことで、特に、内蔵電池228を温存させるようにしている。この結果、外部電池227を充電し忘れた場合であっても突然の外出時や停電時等の対応が可能になる。
【0041】
この中央制御部200には所定動作プログラムを記憶したROMが内蔵されるとともに、外部記憶装置210と、揮発メモリと一時記憶装置とリアルタイムクロックからなる回路207がさらに接続されており、外部コネクタ133を介して通信回線などと接続することで記憶内容へのアクセスが可能となるように構成されている。
【0042】
また、上記の3方向切換弁109a、109bと均等圧弁107とをオンオフ制御することで、第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108b内の不要ガスを脱離させるように制御する制御回路208と、上記の酸素濃度センサ114と比例開度弁115と、流量センサ116とデマンド弁117とを駆動制御する流量制御部202が中央制御部200に接続されている。なお、酸素濃度センサ114にはガルバニ電池式、超音波式、ジルコニア式等のセンサが使用可能だが、大きさの点や測定精度の点からもジルコニア式酸素濃度センサが好ましい。
【0043】
総重量が約500gのコンプレッサ10は、モータ制御部201に内蔵される可変速度制御部により正弦波駆動波形でアウターロータ式の電動モータを含む直流モータの駆動制御が行われることで運転音を低くしている。
【0044】
このコンプレッサ10は、上記のように圧縮空気発生のみの機能を備えるものであり、取り出される酸素流量に応じて回転数が自動制御され、回転速度が500rpmから3000rpmの間で制御される。また、このコンプレッサ10は、空気を60〜150kPa程度に圧縮する性能を備えている。
【0045】
このコンプレッサ10を取り巻く操作温度は、0℃〜40℃であり、コンプレッサ10の駆動電圧は、自動車やトラックなどのシガーライターアダプタから得られる電源である直流12Vまたは24Vであって、電力使用量は、約30W程度である。このため、最悪の場合にはコネクタ131に接続して電源供給することもできる。下部マニホルドM1に放熱・冷却効果があるため、必要最小限のファンでよく騒音の低下、電力の低減に貢献する。
【0046】
3方向切換弁109a、109bには、一般的に直動式と呼ばれる弁の動作を通電時の磁力で行う電磁弁が使用可能である。この種の電磁弁は電気の力だけで主弁を動作させるため消費電力が高いという問題点がある。そこで、3方向切換弁109a、109bとしてパイロット式3方向切換弁を使用することもできる。このパイロット式3方向切換弁によれば、僅かな消費電力とコンプレッサからの空気圧を有効利用して動作させることが出来るために従来の8Wから0.5Wにまで低減されるので大幅な電力低減が図れることになる。
【0047】
以上の各構成部品は、低騒音化された医療用酸素供給装置1の組立作業性および点検整備性の向上を配慮して、一方向から主に主筐体2をその取り付け部として固定できるように設計されている。すなわち、各種制御基板と、上記のように酸素の圧力を一定に自動調整する圧力調整器112と、圧力調整器112の下流側の酸素濃度センサ114と比例開度弁115と、酸素流量センサ116と呼吸同調制御のための負圧回路基板118に接続されるデマンド弁117を、全て一方向から固定できるように構成されている。特に振動または騒音発生の伴う構成部品は防音室3の内部において防音状態かつ防振状態で設けることで、圧縮空気の供給音と、外部空気の導入音と、原料空気を作るための濾過空気の導入音と周期的に発生する排気音が外部に漏れないようにして騒音低減を図っている。また、3方向切換弁の作動音は上記のように防音材(防音シート)11で覆うことで防音している。さらに主筐体2は、その吸気口2cを介して内部に導入し、排気口2dを介して外部に排出する必要最小限の開口を備えた密閉カバーとして構成されることから、さらなる騒音低減を図ることが可能になる。
【0048】
<炎センサ,温度センサに基づく制御部による駆動制御>
炎センサとしての紫外線センサ221は、炎を検知し、温度センサ222は、所定温度、例えば、80℃以上かどうか検知する。紫外線センサ221および温度センサ222の検知結果に基づいて、中央制御部200にコンプレッサ10の動作と、比例開度弁115またはデマンド弁117を閉じ直ちに、濃縮酸素の供給を停止させ、音声ガイドを行う電気信号を送るようにしてある。この炎の有無を知らせる電気信号により、中央制御部200はモータ制御部201に対して、コンプレッサ10の動作を停止させる電気信号を、流量制御部202に対しては、比例開度弁115またはデマンド弁117を閉じ、濃縮酸素の供給を停止させる電気信号を、送ることとなる。また、この紫外線センサ221の炎の検知方法としては、例えば水素が燃える炎は、185〜260nmの範囲で強い紫外線の波長の光を放出するため、波長が185〜260nmの範囲の紫外線を検知することで、炎の有無を判定するなどが挙げられる。
【0049】
図3は、紫外線センサ221により炎を検知し、所定以上の温度が検出されると、コンプレッサ10の動作と、濃縮酸素の供給を停止させ、音声ガイドを行う動作説明の一例を示すフローチャートである。はじめに医療用酸素供給装置1が起動されるとステップS11に進み、炎センサの検出が第1の所定秒、例えば5秒以上継続したか否か判断される。炎センサの検出が第1の所定秒、例えば5秒以上の場合、ステップS12に進み、中央制御部200によって制御された音声合成IC250が、報知手段である音声ガイド手段としてのスピーカー251を介して、音声ガイドを実行し、例えば「酸素吸入中は火気厳禁です」というような第1の音声ガイドを行なう制御を行なう。次に、ステップS13に進み、温度センサ222による温度検出が所定値、例えば80℃以上か否か判断される。温度センサの検出が所定値、例えば80℃以上の場合、制御手段である中央制御部200によって制御された音声合成IC250が、報知手段である音声ガイド手段としてのスピーカー251を介して、音声ガイドを実行し、例えば「火災が発生しました。酸素の出力を停止します」というような第2の音声ガイドを行なう制御を行なう。次に、ステップS15に進み、中央制御部200によってモータ制御部201を介してコンプレッサ10の駆動を停止させ、流量制御部202に濃縮酸素の供給を停止させる。なお、ステップS11において、紫外線センサ221が炎を検知しないとき、元の処理フローに戻り、上記のステップS11から繰り返す。ステップS13において、温度センサの検出が所定値、例えば80℃未満の場合、元の処理フローに戻る。なお、紫外線センサ221を2ケ以上設ける場合には、炎の検出時間(秒)の大きい値を優先して処理することで、火災防止に対してより効果が高くなる。
【0050】
<音声ガイドの説明>
音声ガイドは、中央制御部200によって制御された音声合成IC250が、音声ガイド手段としてのスピーカー251を介して、音声ガイドを実行する。このときスピーカー251は、音声ガイドが聞き取りやすい位置に設けてあれば良いので、医療用酸素供給装置1本体内部に限定することはなく、表示パネル5や医療用酸素供給装置1の表面などに設けてあってもよい。
【0051】
また、患者は常に追加の新鮮な充電済みの外部電池を持つことで、より長時間の外出等が可能となり、その際のQOLが大幅に向上する。また、適当な接続部を介して濃縮酸素の流れに湿気を加えるための加湿手段(不図示)を備えていてもよい。
【0052】
なお、本発明は一実施形態としてPSA方式(正圧力変動吸着法)を用いた医療用酸素供給装置で説明したが、ほかに高濃度酸素を得る手段として、膜式酸素濃縮、電気分解による酸素発生、空気液化分離、化学反応による酸素発生など高濃度酸素を得る方法であれば、何であってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎センサと温度センサを備えた医療用酸素供給装置であって、
前記炎センサが炎を検出した時は制御部により報知手段を駆動させて第1の報知を行い、更に前記温度センサが所定の温度以上の温度を検出した時には前記制御部により報知手段を駆動させて第2の報知を行うとともに酸素発生手段の停止を行なうように制御することを特徴とする医療用酸素供給装置。
【請求項2】
前記炎センサは、紫外線センサであり、前記本体部内部に設けられ、紫外線透過窓を備えたことを特徴とする請求項1に記載の医療用酸素供給装置。
【請求項3】
前記炎センサは、2つ以上設けられ、指向軸が互いに異なる視野角であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の医療用酸素供給装置。
【請求項4】
炎センサと温度センサを備えた医療用酸素供給装置の駆動制御方法であって、
前記炎センサが炎を検出した時は制御部により報知手段を駆動させて報知を行うステップと、更に前記温度センサが所定の温度以上の温度を検出した時には前記制御部により報知手段を駆動させて報知を行うステップと、更に酸素発生手段の停止を行なうステップからなることを特徴とする医療用酸素供給装置の駆動制御方法。
【請求項5】
炎センサと温度センサを備えた医療用酸素供給装置の駆動制御方法のプログラムコードが記憶されたコンピュータで読取り可能な記憶媒体であって、
前記炎センサが炎を検出した時は制御部により報知手段を駆動させて報知を行うステップのプログラムコードと、更に前記温度センサが所定の温度以上の温度を検出した時には前記制御部により報知手段を駆動させて報知を行うステップのプログラムコードと、更に酸素発生手段の停止を行なうステップのプログラムコードからなることを特徴とする医療用酸素供給装置の駆動制御方法のプログラムコードが記憶されたコンピュータで読取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−178939(P2010−178939A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25551(P2009−25551)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【出願人】(396007694)株式会社医器研 (57)