説明

医療用電極の保存用具

【課題】医療用電極の保存時に、医療用電極における導電性粘着層の粘着面に含まれる水溶性成分の損失を抑え、その電気特性等の諸特性を安定して維持することが可能であるとともに、繰り返し使用による粘着力の低下の原因となる導電性粘着層の粘着面に付着した夾雑物を転写によって取り除き、粘着力を回復させることが可能な医療用電極の保存用具を提供する。
【解決手段】一以上の基体11と、基体11に配設された、導電性粘着層31の粘着面よりも高い接着力を有する疎水性接着層12とから構成し、疎水性接着層12として、導電性粘着層31の粘着面と融着することなく、また、水溶性成分を吸収することなく、その接着面上で医療用電極30を保持するとともに、導電性粘着層31の粘着面に付着した夾雑物をその接着面上に転写して取り除くことが可能なものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用電極の保存用具に関する。さらに詳しくは、医療用電極(例えば、低周波治療器電極等)の保存時に、医療用電極における導電性粘着層の粘着面に含まれる水溶性成分(電解塩、保湿剤及び可塑剤等)の損失を抑え、その電気特性等の諸特性を安定して維持することが可能であるとともに、繰り返し使用による粘着力の低下の原因となる導電性粘着層の粘着面に付着した夾雑物(例えば、脱離表皮細胞、塵埃等の異物)を転写によって取り除き、粘着力を回復させることが可能な医療用電極の保存用具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用電極(例えば、低周波治療器電極等)は繰り返して使用されるが、医療用電極を皮膚から剥がす際、表皮細胞、塵埃等が医療用電極における導電性粘着層の粘着面に付着し、粘着力が低下するという問題があった。このため、市販されている低周波治療器電極(例えば、オムロンヘルスケア社製、商品名:ロングライフパッド、松下電工社製、商品名:ロングユースパッド)は、医療用電極における導電性粘着層の粘着面を水洗後、乾燥させて再使用されていた。しかし、このように導電性粘着層の粘着面を水洗してしまうと、この粘着面に含まれる水溶性成分(電解塩、保湿剤及び可塑剤等)が流出し、水洗の度に、電気特性、柔軟性、保湿性等を劣化させてしまうという問題があった。
【0003】
また、繰り返し使用に起因して低下した導電性粘着層の粘着面の粘着力を回復させる手段として、導電性粘着層を多層に貼りあわせることによって、粘着力の低下した粘着面を有する最上層の導電性粘着層を剥離して、新たな粘着面を露出させる方法が提案されている(特許文献1、2参照)。しかしながら、これらの方法は、高価な導電性粘着剤を多層に積層する必要があるとともに、製造工程が複雑化することから、生産コストを増大させてしまうという問題があった。
【0004】
また、医療用電極の保存用具としては、基体の表面及び裏面に非接着性加工を施した保存用平板又は基体の表面及び裏面に形成された一対の凹部に医療用電極を収納して保存するプラスチック製の保存用容器しか用いられていないのが現状である。
【特許文献1】特開2001−259044号公報
【特許文献2】特開2004−107378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、医療用電極(例えば、低周波治療器電極等)の保存時に、医療用電極における導電性粘着層の粘着面に含まれる水溶性成分(電解塩、保湿剤及び可塑剤等)の損失を抑え、その電気特性等の諸特性を安定して維持することが可能であるとともに、繰り返し使用による粘着力の低下の原因となる導電性粘着層の粘着面に付着した夾雑物(例えば、脱離表皮細胞、塵埃等の異物)を転写によって取り除き、粘着力を回復させることが可能な医療用電極の保存用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下の医療用電極の保存用具が提供される。
【0007】
[1]水溶性成分を含む導電性粘着層を有する一対の医療用電極を保存するために用いられる医療用電極の保存用具であって、一以上の基体と、前記基体の表面及び/又は裏面に配設された、前記導電性粘着層の粘着面よりも高い接着力を有する疎水性接着層とを備え、前記疎水性接着層が、前記導電性粘着層の粘着面と融着することなく、また、前記水溶性成分を吸収することなく、その接着面上で前記医療用電極を保持するとともに、前記導電性粘着層の粘着面に付着した夾雑物をその接着面上に転写して取り除くことが可能な医療用電極の保存用具。
【0008】
[2]前記疎水性接着層の接着面の表面積が、前記導電性粘着層の粘着面の表面積以上で、前記基体の表面及び/又は裏面の表面積以下の大きさを有する前記[1]に記載の医療用電極の保存用具。
【0009】
[3]前記疎水性接着層に貼着される一面と、前記疎水性接着層には貼着しない処理が施されされた他面とを有する可撓性基材をさらに備え、前記疎水性接着層が前記可撓性基材の一面に貼着されて構成された貼着体の一以上が、前記基体の表面及び/又は裏面上に、最上層の前記疎水性接着層の接着面を露出した状態で、かつ、最下層の前記可撓性基材の他面と前記基体の表面及び/又は裏面との間に接着剤層又は両面テープを介在させた状態で、単層又は多層の積層体として、配設、固定された前記[1]又は[2]に記載の医療用電極の保存用具。
【0010】
[4]前記基体が、その外周部に、その表面及び/又は裏面から垂直方向に突出した縁部を有し、前記表面及び/又は裏面と前記縁部とで構成される一又は二の凹部に、前記貼着体の積層体が収納された状態で、配設、固定された前記[3]に記載の医療用電極の保存用具。
【0011】
[5]前記貼着体のそれぞれの端部に、前記積層体の上層側から前記貼着体を一枚ずつ容易に剥離することを可能とするための把持部が形成され、かつ前記基体の外周形状及び前記縁部が前記把持部の収納に対応した形状を有する前記[4]に記載の医療用電極の保存用具。
【0012】
[6]前記貼着体を構成する前記可撓性基材上の、前記把持部に対応する領域に、前記疎水性接着層が配設されていない部分又は前記疎水性接着層の接着面を非接着性部材で被覆した部分を有する前記[5]に記載の医療用電極の保存用具。
【0013】
[7]前記疎水性接着層の露出した接着面又は前記積層体の前記疎水性接着層の露出した接着面に、剥離部材が配設された前記[1]〜[6]のいずれかに記載の医療用電極の保存用具。
【0014】
[8]前記剥離部材が、剥離を容易にするための剥離用切り込みを有する前記[7]に記載の医療用電極の保存用具。
【0015】
なお、本発明によれば、上記[1]〜[8]に加えて、下記[9]〜[13]の態様の、医療用電極の保存用具であることが好ましい。
【0016】
[9]前記疎水性接着層の、ポリプロピレン板に対する剥離角度が180度で剥離速度が300mm/分の剥離試験における接着力が、50〜1000g/25mmである前記[1]〜[8]のいずれかに記載の医療用電極の保存用具。
【0017】
[10]前記疎水性接着層の、自重に対するリンゲル液の吸水率が、20質量%以下である前記[1]〜[9]のいずれかに記載の医療用電極の保存用具。
【0018】
[11]前記疎水性接着層が、天然ゴム若しくは合成ゴム系、アクリル系又はウレタン系の接着剤を含有する前記[1]〜[10]のいずれかに記載の医療用電極の保存用具。
【0019】
[12]前記基体が、プラスチック、金属、セラミックスのフィルム若しくは板状部材、又は天然紙若しくは合成紙からなる前記[1]〜[11]のいずれかに記載の医療用電極の保存用具。
【0020】
[13]前記可撓性基材が、ポリオレフィン、ポリエステル又はポリアミドのフィルムからなる前記[1]〜[12]のいずれかに記載の医療用電極の保存用具。
【発明の効果】
【0021】
本発明によって、医療用電極(例えば、低周波治療器電極等)の保存時に、医療用電極における導電性粘着層の粘着面に含まれる水溶性成分(電解塩、保湿剤及び可塑剤等)の損失を抑え、その電気特性等の諸特性を安定して維持することが可能であるとともに、繰り返し使用による粘着力の低下の原因となる導電性粘着層の粘着面に付着した夾雑物(例えば、脱離表皮細胞、塵埃等の異物)を転写によって取り除き、粘着力を回復させることが可能な医療用電極の保存用具が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0023】
図1(a)、(b)に示すように、本発明の第1の実施の形態である医療用電極の保存用具は、水溶性成分を含む導電性粘着層31(図3(b)参照)を有する一対の医療用電極30(図2、図3(b)参照)を保存するために用いられる医療用電極の保存用具10であって、一以上の基体11と、基体11の表面及び/又は裏面に配設された、導電性粘着層31の粘着面よりも高い接着力を有する疎水性接着層12とを備え、疎水性接着層12が、導電性粘着層31の粘着面と融着することなく、また、水溶性成分を吸収することなく、その接着面上で医療用電極30を保持するとともに、導電性粘着層31の粘着面に付着した夾雑物(図示せず)をその接着面上に転写して取り除くことが可能なことを特徴とするものである。この場合、1対の医療用電極30に対応して、2層の疎水性接着層12が基体11の表面及び裏面にそれぞれ配設されている。なお、図1(b)には、一の基体を備えた場合を示す。
【0024】
図3(a)、(b)に示すように、本発明の第1の実施の形態である医療用電極の保存用具10は、疎水性接着層12の接着面上で医療用電極30を保持することによって、保存することができる。その際、医療用電極30における導電性粘着層31の粘着面に付着した夾雑物をその接着面上に転写して取り除くことができる。
【0025】
図3(b)に示すように、本実施の形態の場合、疎水性接着層12の接着面の表面積は、導電性粘着層31の粘着面の表面積以上で、基体11の表面及び/又は裏面の表面積以下の大きさを有している。このように構成することによって、疎水性接着層12は、医療用電極30の保存時に、常に導電性粘着層31の粘着面の全面と接触することが可能となり(導電性粘着層31の粘着面の全面に付着した夾雑物をその接着面上に転写して取り除くことが可能となり)、本発明の効果が十全に発揮されることになる。
【0026】
また、図4(a)、(b)に示すように、単に基体11上に疎水性接着層12を配設した構成(図1(b)参照)に代えて、疎水性接着層12に貼着される一面と、疎水性接着層12には貼着しない処理(例えば、片面テープにおける背面処理については後述する)が施されされた他面とを有する可撓性基材13をさらに備え、疎水性接着層12が可撓性基材13の一面に貼着されて構成された貼着体14の一以上が、基体11(図3(b)参照)の表面及び/又は裏面上に、最上層の疎水性接着層12の接着面を露出した状態で、かつ、最下層の可撓性基材13の他面と基体11の表面及び/又は裏面との間に接着剤層(転写テープであってもよい)又は両面テープ(図示せず)を介在させた状態で、単層又は多層の積層体として、配設、固定されたものであることが好ましい。この場合、確実な固定を実現するため、最下層の可撓性基材13の他面には上述の背面処理を施さないことが好ましい。なお、両面テープとは、所定の基材の両面上に接着剤層が配設されたものを意味し、また、転写テープとは、接着剤層の両面を剥離部材で保護したものを意味する(配設、固定時には剥離部材を剥離して接着剤層の部分を用いる)。なお、上述の接着剤層又は両面テープは、基体11の表面及び/又は裏面の表面積以下、かつ、導電性粘着層31の粘着面の表面積以上の範囲となるように配設される。このように構成すると、接着力の低下した最上層の貼着体14を剥離することによって、容易に疎水性接着層12の新たな接着面を露出させることができ、保存容器として長期間の使用が可能となる。
【0027】
図5(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、本発明の第2の実施の形態である医療用電極の保存用具20は、基体21が、その外周部に、その表面及び/又は裏面から垂直方向に突出した縁部22を有し、表面及び/又は裏面と縁部22とで構成される一又は二つの凹部23に、貼着体14の積層体15(15a、15b)(図4(a)、(b)参照)が収納された状態で、配設、固定されたことを特徴とするものである。この場合、積層体15の基体11への配設、固定は、図4に示す場合と同様に、接着剤層又は両面テープ(図示せず)を介在させることによって行うことができる。なお、貼着体14の積層体15(15a、15b)を用いることなく、図1(b)に示す場合と同様に、基体21(図1(b)に示す場合は基体11)に疎水性接着層12だけを配設してもよい。なお、図5(a)、(b)、(c)においては、1対の医療用電極30(図2、図3(b)参照)に対応して、二の凹部23が構成された場合を示し、図5(c)においては、凹部23の形状を示すため、積層体15aを除去して、積層体15bだけを収納した場合を示す。このように構成することによって、疎水性接着層12の基体21への配設時及び医療用電極30の保存時の位置決めが正確かつ容易となるとともに、可搬性が向上して、取り扱い易いものとなり、本発明の効果が十全に発揮されることになる。
【0028】
本実施の形態においては、貼着体14が基体21に多層の積層体15(15(a)、15(b))として積層されて配設された場合を示すが、図5(d)に示すように、貼着体14のそれぞれの端部に、積層体15(15(a)、15(b))の上層側から貼着体14を一枚ずつ容易に剥離することを可能とするための把持部16が形成され、かつ基体21の外周部及び縁部22が把持部16の収納に対応した形状を有するとともに、貼着体14を構成する可撓性基材13(図4(a)参照)上の、把持部16に対応する領域に、疎水性接着層12(図4(a)参照)が配設されていない部分又は疎水性接着層12の接着面を非接着性部材(図示せず)で被覆した部分を有するように構成することが好ましい。このように構成することによって、貼着体14の、積層体15(15(a)、15(b))からの剥離が容易となり、使い勝手が向上する。
【0029】
また、図示はしないが、疎水性接着層12の露出した接着面又は積層体15(15(a)、15(b))の疎水性接着層12の露出した接着面には、剥離部材を配設することが好ましく、また、剥離部材は、剥離を容易にするための剥離用切り込み(所謂、キスカット)を有することが好ましい。このように構成することによって、取り扱い易いものとなるとともに、剥離部材の剥離が容易になる。
【0030】
図6(a)、(b)に示すように、本発明の第2の実施の形態である医療用電極の保存用具20は、貼着体14(図4(a)参照)の積層体15(15a、15b)の最上層の疎水性接着層12(図4(a)参照)の接着面上で医療用電極30を保持することによって、保存することができる。その際、医療用電極30における導電性粘着層31(図3参照)の粘着面に付着した夾雑物をその接着面上に転写して取り除くことができる。
【0031】
以下、本発明の医療用電極の保存用具に用いられる各構成要素及び本発明の医療用電極の保存用具の製造方法について具体的に説明する。
【0032】
本発明に用いられる基体としては、医療用電極(例えば、低周波治療器電極等)が折り曲がったり、シワにならないよう、ある程度の剛性があるものであれば特に制限はないが、例えば、プラスチック、金属、セラミックス等のフィルム若しくは板状部材、又は天然紙若しくは合成紙からなるものを挙げることができる。縁部を有するものについては、成形性の面からプラスチック成形品が好ましい。プラスチックの中でも、熱可塑性樹脂がさらに好ましく、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、デュポン社製、商品名:テフロン(登録商標))等を挙げることができる。基体の厚さは、好ましくは、0.05〜5mm、さらに好ましくは、0.1〜3mmである。
【0033】
本発明に用いられる疎水性接着層は、医療用電極における導電性粘着層の粘着面よりも高い接着力を有している。ここで、「疎水性接着層」とは、接着層が、水との親和力が弱い性質を有するものであることを意味し、さらに、医療用電極における導電性粘着層の粘着面と融着することなく、また、水溶性成分を吸収することなく、その接着面上で医療用電極を保持する性質を有するものであることをも意味する。このように、本発明に用いられる疎水性接着層は、上述の所定以上の接着力及び疎水性を有するものであることから、医療用電極における導電性粘着層の粘着面と融着することなく、また、水溶性成分を吸収することなく、その接着面上で医療用電極を保持するとともに、導電性粘着層の粘着面に付着した夾雑物をその接着面上に転写して取り除くことができる。
【0034】
上述のように、疎水性接着層は、特性として、所定の接着力及び疎水性を有するものであるが、以下にその特性の指標について説明する。
【0035】
接着力については、疎水性接着層の、ポリプロピレン板に対する剥離角度が180度で剥離速度が300mm/分の剥離試験における接着力が、50〜1000g/25mmであることが好ましく、100〜300g/25mmであることがさらに好ましい。50g/25mm未満であると、導電性粘着層の粘着面に付着した夾雑物をその接着面上に転写して十分に取り除くことができないことがある。1000g/25mmを超えると、接着力が大きすぎて、医療用電極を取り外すことが困難になることがある。この場合、医療用電極における導電性粘着層として、20〜200g/25mmの接着力を有するものを用いた場合を前提としている(以下、同様である)。このような、接着力を有する導電性粘着層としては、例えば、積水化成社製、商品名:テクノゲル導電性粘着剤を挙げることができる。
【0036】
疎水性のうちの、「導電性粘着層の粘着面と融着することがない性質」については、例えば、疎水性接着層の接着面と導電性粘着層の粘着面とを貼り合わせた後1時間経過後における疎水性接着層の、導電性粘着層の粘着面に対する剥離角度が180度で剥離速度が300mm/分の剥離試験における接着力が、500g/25mm以下であることが好ましく、300g/25mm以下であることがさらに好ましい。500g/25mmを超えると、導電性粘着層の粘着面と融着してしまうことがある。なお、上述の値は、疎水性接着層及び導電性粘着層の種類によって変動するため、各層の凝集破壊を生ぜしめることなしに剥離することができるのであれば、上述の値に限定されるものではない。
【0037】
疎水性のうちの、「水溶性成分を吸収することがない性質」については、例えば、疎水性接着層の、自重に対するリンゲル液の吸水率が、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。20質量%を超えると、水溶性成分を吸収して、導電性粘着層の電気特性等を低下させることがある。
【0038】
このような疎水性接着層としては、例えば、天然ゴム若しくは合成ゴム系、アクリル系又はウレタン系の接着剤を含有するものを挙げることができる。具体的には、米国3M社製、商品名:#1522DC及び#1521テープに用いられているアクリル系接着剤、又は米国3M社製、商品名:#9877テープに用いられている合成ゴム系接着剤等を好適例として挙げることができる。
【0039】
本発明に用いられる貼着体の積層体を基体の表面及び/又は裏面上に配設、固定するために介在させる接着剤層(転写テープ)又は両面テープとしては、積層体を確実に配設、固定することができるものであれば特に制限はなく、汎用されているものを適宜用いることができる。
【0040】
本発明に用いられる可撓性基材としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル又はポリアミドのフィルムからなるものを挙げることができる。可撓性基材の厚さは、好ましくは、0.01〜1mm、さらに好ましくは、0.03〜0.1mmである。
【0041】
本発明においては、基体の表面及び/又は裏面上に、疎水性接着層又は積層体を配設、固定するが、以下その方法について説明する。
【0042】
図1(b)に示すように、基体の表面及び/又は裏面上に、疎水性接着層だけを配設、固定する方法としては特に制限はないが、例えば、上述の接着剤(溶剤ベース、エマルジョンベース、ホットメルトベースのいずれであってもよい)を基体上に直接塗布(具体的には、ロールコート、スクリーンコート、ナイフコート等)することを挙げることができる。
【0043】
図4(b)に示すように、基体の表面及び/又は裏面上に、疎水性接着層を、貼着体の単層又は多層の積層体として配設、固定する方法としては、上述のように、上述の接着剤を可撓性部材上に塗布して貼着体を得、得られた貼着体を積層して積層体としてもよいが、より取り扱い易い方法として、貼着体として上述の接着剤を可撓性基材の片面に塗布した接着テープ(片面テープ)を用いて、これを積層して、積層体を形成し、接着剤層(転写テープであってもよい)又は両面テープを介在させて、基体に配設、固定することを挙げることができる。なお、医療用電極における導電性粘着剤は皮膚に貼付されて用いられるものであるため、疎水性接着層も安全性が確認されているもの(例えば、サージカルテープ用接着剤等)を用いることが好ましい。なお、貼着体としての片面テープの背面には疎水性接着層と貼着しない、背面処理剤を塗布することが好ましい。このような背面処理剤としては、例えば、シリコーン系、ウレタン系、フッ素系等の各種処理剤を挙げることができる。片面テープを基体の表面及び/又は裏面に多層で配設する場合は、背面処理剤を塗布することが特に好ましい。
【0044】
疎水性接着層又は積層体が、基体の表面及び裏面(両面)上に配設、固定される場合、予め、疎水性接着層の両接着面を保護するため、その両接着面に前述の剥離部材を配設しておくことが好ましい。また、剥離部材の剥離を容易にするため、剥離部剤に剥がし目の切れ込みを形成し(キスカット処理し)、又は疎水性接着層端部の接着面の一部に非接着性部材としての片面テープ若しくは剥離部材を貼り合わせたタブ部を形成することが好ましい。タブ部は疎水性接着層の接着面を阻害しない大きさ及び位置に形成することが好ましい。なお、タブ部の別の例として、片面テープの作製時に、疎水性接着層を基材にパターンコートして疎水性接着層を形成しない部分を有するものとし、疎水性接着層が形成されていない部分同士が互いに対向するように積層させて、疎水性接着層が形成されていないものとしてもよい。
【0045】
上述のようにして得られた保存用具による医療用電極の保存は、まず、疎水性接着層の接着面の剥離部材を取り除き、すでに使用済みの医療用電極(例えば、低周波治療器電極等)の導電性粘着層の粘着面を、疎水性接着層の露出した接着面に対向させた状態で貼り合わせることによって行われる。次に、医療用電極を再使用する時に、医療用電極を疎水性接着層の接着面から離脱させる(剥ぎ取る)と、導電性粘着層の粘着面に付着した夾雑物(例えば、脱離表皮細胞、塵埃等の異物)は疎水性接着層の接着面に転写され、導電性粘着層の粘着面の接着力は回復することになる。
【0046】
なお、貼着体の多層の積層体を用いる場合は、導電性粘着層の粘着面に付着した夾雑物を十分に取り除けなくなった際に、積層体の最上層の片面テープ(貼着体)を取り除き(引き剥がし)、疎水性接着層が露出した新しい片面テープを用いるようにする。積層体の積層枚数としては特に制限はないが、積層数に応じて、導電性粘着剤の繰り返し使用回数は増加することになる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
基体として、厚さが0.075mmのポリエチレンフィルムを用い、疎水性接着層としてのアクリル系接着剤を、基体の両面の、その接着面の表面積が基体の表面積より一回り小さく、後述する医療用電極における導電性粘着層の粘着面より一回り大きい範囲に、厚さが0.04mmとなるように塗布し、さらに、剥離部材として、キスカット処理を施した、厚さが0.11mmの、表面にシリコーン剥離剤を配設した剥離紙を疎水性接着層の接着面に貼り合わせることによって、保存用具を得た。なお、疎水性接着層の、ポリプロピレン板に対する剥離角度が180度で剥離速度が300mm/分の剥離試験における接着力は、700g/25mmであり、導電性粘着層の粘着面に対する剥離角度は、180度で剥離速度が300mm/分の剥離試験における接着力は、140g/25mmであり、また、自重に対するリンゲル液の吸水率は、8質量%であった。この保存用具を用いて、医療用電極として、低周波治療器電極(オムロンヘルスケア社製、商品名:ロングライフパッド)の下記の皮膚粘着力測定試験を実施して、その回復度を評価した。
【0049】
(皮膚粘着力測定試験及びその回復度の評価)
初期の粘着力を有する電極として、未使用の低周波治療器電極(この電極を電極Aとする)を用意する。次に、保存用具の両方の剥離部材を剥がし、30回繰り返し使用した低周波治療器電極(この2つの電極を電極Bとする)を疎水性接着層の接着面の一方に1つ、他方に1つ貼り付けて12時間保存した後、保存用具から離脱させ(この時の2つの電極を電極Cとする)、電極A、電極B及び電極Cの低周波治療器電極の皮膚粘着力(単位:g)を、180度剥離試験(300mm/min.の速度)によって測定する。回復度は、電極Cと電極Aとの皮膚粘着力を比較して粘着力回復の指標とする。なお、電極A及び電極Bのそれぞれの皮膚粘着力の測定結果は、2つの電極A及び2つの電極Bのそれぞれの平均値である。
【0050】
その結果、電極Aは130g、電極Bは65g、電極Cは145gであった。皮膚粘着力の測定は皮膚の状態で若干変動するが、電極Cの皮膚粘着力は電極Aの皮膚粘着力以上に上昇した。このように、電極Cの皮膚粘着力が、未使用の電極Aの皮膚粘着力(初期皮膚粘着力)以上に上昇したのは、未使用の電極Aの場合、表面保護のため導電性粘着剤上に配設された剥離部材中のシリコーン剥離剤が導電性粘着剤に転写されて、その皮膚粘着力を低下させていたが、電極Cの場合、保存用具に12時間保存してから離脱させる際に、夾雑物に加えて導電性粘着剤に転写されていたシリコーン剥離剤をも、疎水性接着層の接着面に転写させて取り除くことができたからであると考えられる。また、電極を脱離させた後の疎水性接着層の接着面の全体に、導電性粘着層に付着していた夾雑物(異物)が転写されていることが目視によって確認された。
【0051】
(実施例2)
実施例1における、剥離部材の剥離を容易にするためのキスカット処理に代えて、ポリエチレンフィルムの表面にアクリル系接着剤が塗布された接着テープ(米国3M社製、商品名:#1525LSCポリエチレン)を疎水性接着層端部の接着面に貼着して、タブ部を形成したこと以外は実施例1と同様にして、剥離をさらに容易化した保存用具を得た。
【0052】
(実施例3)
基体として、厚さが0.23mmのポリエチレンフィルムを用いるとともに、積層体として、ポリエチレンの可撓性基材の表面にアクリル系接着剤が塗布された接着テープ(米国3M社製、商品名:#1525LSCポリエチレン)を用いて構成した。すなわち、接着テープにおける剥離部材の端部をキスカット処理して、剥離部材をタブ部として残し、残余の剥離部材を剥離させて(最上層の疎水性接着層だけは剥離部材を剥離させずに)、タブ部を互いに対向させた状態とした接着テープの10層を積層させたものを用いて、積層体の最下層の接着テープの可撓性基材の背面を、転写テープ(米国3M社製、商品名:#1524)で、基体に取り付け、低周波治療器電極(オムロンヘルスケア社製、商品名:ロングライフパッド)の外形寸法よりも一回り大きい寸法となるように切断し、多層の疎水性接着層を有する積層体構造を採用することによって使い勝手の向上した保存用具を得た。その後、保存処理時間を12時間から1時間に短縮したこと以外は、実施例1と同様にして皮膚粘着力測定試験を実施して、その回復度を評価した。
【0053】
その結果、電極Aは145g、電極Bは90g、電極Cは130gであった。皮膚粘着力の測定は皮膚の状態で若干変動するが、電極Cの皮膚粘着力は、保存時間を1時間に短縮したにも拘わらず、電極Aの皮膚粘着力まで十分回復した。また、電極を脱離させた後の疎水性接着層の接着面の全体に、導電性粘着層に付着していた夾雑物(異物)が転写されていることが目視によって確認された。
【0054】
(実施例4)
基体として、厚さが2mmのABS樹脂製で外周部に表面及び裏面からそれぞれ2.5mmの高さの縁部を有する容器を、低周波治療器電極(オムロンヘルスケア社製、商品名:ロングライフパッド)の外形寸法よりも一回り大きい形状となるように射出成形によって作製したものを用いた。また、積層体として、ポリエチレンの可撓性基材の表面にアクリル系接着剤が塗布された接着テープを30枚積層したもの(米国3M社製、商品名:#5900ソールマット)を用いた。この積層体は、疎水性接着層端部の接着面の一部を未塗布部位としたタブ部を有している。このため、未塗布部位を、基体の外周部内側と同一形状、同一寸法となるように切断した。積層体(上述の米国3M社製、商品名:#5900ソールマット)の最下層には床に貼り付け固定するための両面テープが貼り合わされているため、両面テープの剥離部材を剥がして、基体の両面に貼り付けて、積層体の積層枚数が30枚と多く、使い勝手がさらに向上した保存用具を得た。その後、保存処理時間を12時間から3時間に短縮したこと以外は、実施例1と同様にして皮膚粘着力測定試験を実施して、その回復度を評価した。
【0055】
その結果、電極Aは130g、電極Bは80g、電極Cは140gであった。皮膚粘着力の測定は皮膚の状態で若干変動するが、電極Cの皮膚粘着力は、保存時間を3時間に短縮したにも拘わらず、電極Aの皮膚粘着力以上に上昇した。これは、実施例1における場合と同様の理由によるものである。また、電極を脱離させた後の疎水性接着層の接着面の全体に、導電性粘着層に付着していた夾雑物(異物)が転写されていることが目視によって確認された。
【0056】
(比較例1)
実施例4において、積層体の代わりに、ポリエステルフィルムにシリコーン剥離剤を片面に塗布した剥離部材(帝人デュポン社製、商品名:A−50ライナーフィルム)を基体に取り付けたこと以外は実施例4と同様にして皮膚粘着力測定試験を実施して、その回復度を評価した。
【0057】
その結果、電極Aは140g、電極Bは80g、電極Cは70gであった。皮膚粘着力の測定は皮膚の状態で若干変動するが、電極Cの皮膚粘着力は、電極Aの皮膚粘着力まで回復しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の医療用電極の保存用具は、繰り返し使用が可能な医療用電極(例えば、低周波治療器電極等)を必要とする各種医療分野で特に有効に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の医療用電極の保存用具の第一の実施の形態を模式的に示す説明図であり、図1(a)は全体斜視図、図1(b)は、図1(a)におけるA−A線断面図である。
【図2】医療用電極を模式的に示す斜視図である。
【図3】図1に示す医療用電極の保存用具に、図2に示す医療用電極を保存した状態を模式的に示す説明図であり、図3(a)は全体斜視図、図3(b)は、図3(a)におけるB−B線断面図である。
【図4】本発明に用いられる積層体を模式的に示す説明図であり、図4(a)は、全体斜視図、図4(b)は、図4(a)におけるC−C線断面図である。
【図5】本発明の医療用電極の保存用具の第2の実施の形態を模式的に示す説明図であり、図5(a)は全体斜視図、図5(b)は、図5(a)におけるD−D線断面図、図5(c)は、片側の積層体を除去した状態を示す斜視図、図5(d)は、積層体における貼着体の把持部を示す斜視図である。
【図6】図5に示す医療用電極の保存用具に、図2に示す医療用電極を保存した状態を模式的に示す説明図であり、図6(a)は全体斜視図、図6(b)は、図6(a)におけるE−E線断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10…医療用電極の保存用具(第1の実施の形態)、11…基体、12…疎水性接着層、13…可撓性基材、14…貼着体、15(15a、15b)…積層体、16…把持部、20…医療用電極の保存用具(第2の実施の形態)、21…基体、22…縁部、23…凹部、30…医療用電極、31…導電性粘着層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性成分を含む導電性粘着層を有する一対の医療用電極を保存するために用いられる医療用電極の保存用具であって、
一以上の基体と、前記基体の表面及び/又は裏面に配設された、前記導電性粘着層の粘着面よりも高い接着力を有する疎水性接着層とを備え、
前記疎水性接着層が、前記導電性粘着層の粘着面と融着することなく、また、前記水溶性成分を吸収することなく、その接着面上で前記医療用電極を保持するとともに、前記導電性粘着層の粘着面に付着した夾雑物をその接着面上に転写して取り除くことが可能な医療用電極の保存用具。
【請求項2】
前記疎水性接着層の接着面の表面積が、前記導電性粘着層の粘着面の表面積以上で、前記基体の表面及び/又は裏面の表面積以下の大きさを有する請求項1に記載の医療用電極の保存用具。
【請求項3】
前記疎水性接着層に貼着される一面と、前記疎水性接着層には貼着しない処理が施されされた他面とを有する可撓性基材をさらに備え、前記疎水性接着層が前記可撓性基材の一面に貼着されて構成された貼着体の一以上が、前記基体の表面及び/又は裏面上に、最上層の前記疎水性接着層の接着面を露出した状態で、かつ、最下層の前記可撓性基材の他面と前記基体の表面及び/又は裏面との間に接着剤層又は両面テープを介在させた状態で、単層又は多層の積層体として、配設、固定された請求項1又は2に記載の医療用電極の保存用具。
【請求項4】
前記基体が、その外周部に、その表面及び/又は裏面から垂直方向に突出した縁部を有し、前記表面及び/又は裏面と前記縁部とで構成される一又は二の凹部に、前記貼着体の積層体が収納された状態で、配設、固定された請求項3に記載の医療用電極の保存用具。
【請求項5】
前記貼着体のそれぞれの端部に、前記積層体の上層側から前記貼着体を一枚ずつ容易に剥離することを可能とするための把持部が形成され、かつ前記基体の外周形状及び前記縁部が前記把持部の収納に対応した形状を有する請求項4に記載の医療用電極の保存用具。
【請求項6】
前記貼着体を構成する前記可撓性基材上の、前記把持部に対応する領域に、前記疎水性接着層が配設されていない部分又は前記疎水性接着層の接着面を非接着性部材で被覆した部分を有する請求項5に記載の医療用電極の保存用具。
【請求項7】
前記疎水性接着層の露出した接着面又は前記積層体の前記疎水性接着層の露出した接着面に、剥離部材が配設された請求項1〜6のいずれかに記載の医療用電極の保存用具。
【請求項8】
前記剥離部材が、剥離を容易にするための剥離用切り込みを有する請求項7に記載の医療用電極の保存用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−95158(P2006−95158A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286391(P2004−286391)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】