説明

医療用電極

本発明は、人間の皮膚の信号を導出する医療用電極1であって、患者の皮膚から信号を取り出す少なくとも1つの接点2と、その接点から横方向にオフセットされ、信号を記録しあるいは処理するユニットにその信号を送出する接続手段3、3′を備え、皮膚信号を取り出す接点2は、その信号を送出する接続手段3、3′と信号伝導体5によって連結され、少なくとも相互に横方向にオフセットされ、信号を記録しあるいは処理するユニットにその信号を送出する接続手段3、3′は少なくとも1つの接点2に割り当てられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の肌からの信号を獲得する少なくとも1つの接点を備えた人間の肌からの信号を導出する医療用電極及び、該接点に対して横方向にオフセットされ、信号を信号獲得又は信号処理ユニットに伝達又はリレーする接続手段、信号の伝導体によって信号を伝達し、リレーする接続手段に接続されている肌からの信号を集める少なくとも1つの接点に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような電極は、一般的に、電気的導電性のジェルを用いて形成され、患者の肌と信号の導体との間の接点として、以前から知られている。信号を伝達し、リレーする接続手段を横方向にオフセットすることは、すなわち患者の肌の接点である、信号を伝達し、リレーする接続手段が中央に配置される電極に電極ケーブルを接続する際の圧力で該ジェルが電極の接着表面に付着するのを妨げることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、汎用的に適用可能な改良した医療用電極を作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これは、信号を信号獲得又は信号処理ユニットに伝達しあるいはリレーする少なくとも1つの接点と、少なくとも1つの追加した横方向にオフセットした接続手段とを用いる本発明によって達成される。有利な点は、信号を信号獲得又は信号処理ユニットに伝達しあるいはリレーする少なくとも2つの接続手段が異なるタイプのものであることである。
【0005】
これは、本発明に係る医療用電極を信号獲得手段又は信号処理ユニットの端子のタイプに関係なく使用することを可能とする。これは、レスキューサービス、赤十字及び病院等の異なる組織が、異なる端子を用いて異なる信号獲得あるいは処理ユニットを使用することから、とても重要である。それゆえ、これまで、それぞれ1つの信号獲得あるいは処理ユニットに適切な端子接続部とそれぞれ適合する、幾種類かの異なるタイプの医療用電極を生産することが必要とされてきた。本発明に係る信号を伝達あるいはリレーする2つの横方向にオフセットし、非類似の接続手段を有する医療用電極の適合は、この不利益を回避し、低コストで汎用的に適合可能な医療用電極を生むことになる。
【0006】
本発明の第1の実施形態では、1つの接点に割り当てられる信号を伝達しあるいはリレーする少なくとも2つの接続手段が、共通の信号伝導体によって接点と接続されている。一方で、本発明の他の実施形態では、1つの接点に割り当てられる信号を伝達しあるいはリレーする少なくとも2つの接続手段は、分離した信号伝導体によって接点に接続される。前記分離した信号伝導体は、好ましくは1つの接点で、電気的に相互接続されている。
【0007】
第1又は主要なことは、信号を伝達しあるいはリレーする横方向にオフセットした接続手段が肌からの信号を集めるためにどのように接点に接続されるかではない。本発明の基本的なことは、むしろ信号を伝達しあるいはリレーする信号の2つの横方向にオフセットした接続手段が1つの接点に割り当てられるという事実である。
【0008】
本発明の好適な実施形態では、医療用電極は、キャリア要素及びキャリア要素の外側端部をこえて突出する少なくとも1つの延出部、この延出部に配置されている信号を信号獲得又は信号処理ユニットに伝達しあるいはリレーする少なくとも1つの接続手段を備えている。言い換えると、すなわち本発明に係る医療用電極は、信号を伝達しあるいはリレーする2つの中心でない接続手段、少なくともその1つは、好ましくは、柔軟な突出片上に配置され、安定した干渉のない信号を確保する前記接続手段を有する。もし、信号が電極ケーブルを介してリレーされる場合には、本発明に係る医療用電極の構造は、この電極ケーブルの変動があっても、信号の正確な信頼性のある記録が損なわれない、ということを確保する。
【0009】
本発明の他の実施形態は、医療用電極に信号を信号獲得又は信号処理ユニットに伝達しあるいはリレーする少なくとも2つの接続手段を備えた少なくとも1つの延出部を提供する。医療用電極は、信号を信号獲得又は信号処理ユニットに伝達しあるいはリレーする接続手段をそれぞれに少なくとも1つ備えたいくつかの延出部を有することもまた可能である。つまり、医療用電極にとって、信号を信号獲得又は信号処理ユニットに伝達しあるいはリレーする接続手段をそれぞれきっちり一つ備えたいくつかの延出部を有することは特に有利であることが見いだされた。
【0010】
延出部に、信号を伝達しあるいはリレーするいくつかの非中心接続手段、又は延出部のそれぞれに1つの非中心接続手段を配置することは、信号が非中心端子を介して伝達されあるいはリレーされたとき、特に医療用電極の本体が信号を伝達しあるいはリレーする横方向にオフセットした接続手段から拘束されない状態であるとき、すなわち、すべての医療用電極の非中心端子が延出部に配置されたとき、直接の圧力が患者の身体に及ばされないことが確保される。
【0011】
本発明の他の実施形態では、肌から信号を集める接点に対して、信号を信号獲得又は信号処理ユニットに伝達しあるいはリレーする追加の接続手段が提供される。その実施形態では、信号を伝達しあるいはリレーする、好ましくは異なる接続手段の数が増加される。
【0012】
本発明の好適な実施形態では、信号を信号獲得手段又は信号処理ユニットに伝達しあるいはリレーする接続手段は、プッシュボタン、プラグ、好ましくはバナナプラグ、好ましくはワニ口クリップのようなクリップを取り付け可能な構成、及び、信号の非接触転送のための構成を含むものである。こうした適切な異なる手段を結合することによって、効果的で汎用的に適用可能な医療用電極が獲得され、また、医療用電極が適切な小ささを保持するために、非中心端子の数は、実際には2つから3つに限定されるであろう。
【0013】
本発明の好適な実施形態では、新規な医療用電極が、電気的に導電性のあるジェルを収容する開口を有する柔軟なキャリア要素と、このキャリア要素の一方側であって、好ましくは、その表面全体を覆っていて、該電極を患者の肌に取り付けるための接着層と、このキャリア要素の接着層とは反対側に、電気的伝導体のジェルを介した接点で患者の肌に接触させる、好ましくは信号伝導体層として形成された信号伝導体とを有する。好ましくはラベル状のカバー層は、信号伝導体及びキャリア要素全体に提供され、前記カバー層は、キャリア要素の外側端部をこえて突出する延出部を有し、その延出部に信号を信号獲得手段又は信号処理ユニットに伝達し、リレーする2つの非類似接続手段が配置される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のさらなる詳細及び本発明によって達成される有利な点が、図面に示された本発明に係る医療用電極の実施形態の以下の説明から明らかとなるであろう。
【0015】
図1及び図2に示されている医療用電極1は、上から下に向かって、肌適合性の接着剤で作製された接着層10、ポリマー発泡体の柔軟な絶縁キャリア要素7、金属信号伝導体5(例えば炭素伝導体)、及びラベル状のカバー層8を有する。信号伝導体5及び信号伝導体を覆うカバー層8の部分は、キャリア要素7から横方向に突出し、延出部9を形成している。
【0016】
接点2の患者の肌から集められた信号を伝達しあるいはリレーする延出部9の2つの接続手段3、3′が、接点2に対して横方向にオフセットされて提供されている。1つの接続手段3は、プッシュボタンあるいはプラグの形態を取り、他の接続手段3′は、電極ケーブル14に取着されたワニ口クリップ11を受領するように設計されている。キャリア要素7と面している延出部9の側には、少なくとも部分的にカバー12があり、信号伝導体5を干渉から保護する一方、信号伝導体5を患者の肌に接触するのを回避するするようにしている。
【0017】
患者の肌からの信号収集は、柔軟なキャリア要素7の開口に収容され、信号伝導体5と接触している電気的伝導性のジェル6を介した接点2でなされる。電気的伝導性ジェル6及び信号伝導体5の間の伝導性を改善するために、後者は、電気的伝導性のジェルに面した側の電気的伝導性ジェル6の領域に銀あるいは塩化銀のコーティングがされてもよい。
【0018】
図1及び2に示された実施形態の信号伝導体5が純金属であるとしても、信号伝導体5が、例えばカバー層8の下側にプリントされたものでもよいことは言うまでもない。他の可能性として、例えば、薄膜の一方の側が電気的に導電性があり、他の側が電気的に絶縁されている2層の膜のように信号伝導体5を作成することによって、キャリア要素7に面している側の信号伝導体5を絶縁するようにしてもよい。この場合には、延出部9は、2層の膜で形成された信号伝導体5の突出部分からまっすぐ形成されていてもよく、その場合、カバー層8はキャリア要素7の大きさ分だけ必要とされる。
【0019】
信号を伝達しあるいはリレーする2つの非類似の接続手段3,3′が電極1の非中心に配置されているので、より改善された、すなわち、より安定した心電図信号を得ることができる。信号獲得又は信号処理ユニット単体の端子に接続手段3、3′を設置するのが簡単であることだけでなく、接続手段3,3′が非中心に配置されているので、本発明に係る医療用電極1では電極ケーブル14に対しての動きの許容度が大きい。さらに、信号を伝達しあるいはリレーする2つの非中心接続手段3、3′は信号の並列導出を可能とする。
【0020】
図3aから図3dは、本発明に係る医療用電極1の他の可能な実施形態の例を示す。図3aに示された電極1は、信号を伝達しあるいはリレーするために延出部9に2つの非類似の接続手段3、3′が配置され、キャリア要素7に対して突出した延出部9を有する。
【0021】
図3b及び図3cは、矩形(図3b)及び円形(図3c)のキャリア要素7を有する電極1を示す。それぞれのキャリア要素7には、二つの延出部9、9′が配置されていて、それぞれの延出部9は、信号を伝達しあるいはリレーするためのそれぞれきっちり1つの感知要素3、3′を有している。これらの実施形態においては、1つ又は両方の延出部9、9′に信号を伝達しあるいはリレーする1つ以上の接続手段3、3′を設置することも勿論可能である。
【0022】
図3dは、V型電極1、つまり、V型電極1の腕のそれぞれの端部に設置されている信号を伝達しあるいはリレーする1つの非中心接続手段3、3′備えたV型電極1を示す。本発明のこの実施形態は、信号を伝達しあるいはリレーする1つの中心接続手段4を更に有する。
【0023】
医療用電極の図示された実施形態は、勿論限定的に解釈されるものではなく、むしろ、患者の肌から集めた信号を伝達しあるいはリレーする少なくとも2つの非中心接続手段を有する医療用電極の発明概念を具体化する多数の可能性のある方法の内の2、3の例を単に示したにすぎないものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る医療用電極の第1実施形態の概略断面図
【図2】本発明に係る医療用電極の概略分解図
【図3a】本発明に係る医療用電極の別の実施形態の図
【図3b】本発明に係る医療用電極の別の実施形態の図
【図3c】本発明に係る医療用電極の別の実施形態の図
【図3d】本発明に係る医療用電極の別の実施形態の図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の肌からの信号を感知する少なくとも1つの接点及び、該接点から横方向へオフセットされ、信号を信号獲得又は信号処理ユニットに伝達しもしくはリレーする接続手段とを有する人間の肌からの信号導出のための医療用電極において、
肌からの信号を感知する少なくとも1つの接点が信号伝導体によって信号を伝達しもしくはリレーする接続手段に接続され、
少なくとも1つの接点(2)に少なくとも1つの追加のオフセットされた接続手段(3,3′)が信号を信号獲得又は信号処理ユニットに伝達しもしくはリレーするために割当てられていることを特徴とする医療用電極。
【請求項2】
1つの接点(2)に割当てられた少なくとも2つの接続手段(3、3′)が共通の信号伝導体(5)によって接点(2)に接続されていることを特徴とする請求項1記載の医療用電極。
【請求項3】
1つの接点(2)に割当てられた少なくとも2つの接続手段(3、3′)は、分離された信号伝導体(5)、好ましくは1つの接点(2)で、電気的に相互接続されている分離された信号伝導体(5)によって1つの接点(2)に接続されていることを特徴とする請求項1記載の医療用電極。
【請求項4】
医療用電極(1)は、キャリア要素(7)、キャリア要素(7)の外側端部に突出している少なくとも1つの延出部(9)、及び、この延出部(9)に提供される信号獲得又は信号処理ユニットに信号を伝達しもしくはリレーする少なくとも1つの接続手段(3、3′)を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の医療用電極。
【請求項5】
医療用電極(1)は、信号を信号獲得手段又は信号処理ユニットに伝達しもしくはリレーする少なくとも2つの接続手段(3、3′)を備えた延出部(9)を有することを特徴とする請求項4記載の医療用電極。
【請求項6】
医療用電極(1)は、複数の延出部(9、9′)と、それぞれの延出部(9、9′)に備えられ、信号獲得又は信号処理ユニットに信号を伝達しもしくはリレーする少なくとも1つの接続手段(3、3′)とを有することを特徴とする請求項4記載の医療用電極。
【請求項7】
信号を信号獲得又は信号処理ユニットに伝達しもしくはリレーする接続手段(3,3′)がそれぞれきっちり一つ、それぞれの延出部(9、9′)に提供されていることを特徴とする請求項6記載の医療用電極。
【請求項8】
追加の接続手段(4)が信号を信号獲得又は信号処理ユニットに伝達しもしくはリレーするために提供され、前記接続手段(4)は、肌から信号を集めるための接点(2)に配置されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の医療用電極。
【請求項9】
信号を信号獲得又は信号処理ユニットに伝達しもしくはリレーする接続手段(3、3′4)が、プッシュボタン、プラグ、好ましくはバナナプラグ、信号の非接触伝達の構成、好ましくはワニ口クリップ等のクリップから選択されるものを含んでいることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の医療用電極。
【請求項10】
信号を信号獲得又は信号処理ユニットに伝達しもしくはリレーする接続手段(3,3′、4)の少なくとも2つが異なるタイプのものであることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の医療用電極。
【請求項11】
電気的伝導性ジェル(6)を収容する開口を有する柔軟な絶縁性キャリア要素(7)と、電極を患者の肌に接触させるため、好ましくはその全体の範囲に渡ってキャリア要素の一方側に提供される接着層(10)と、好ましくは、信号伝導体層として形成され、キャリア要素の接着層(10)とは反対の側に供給される信号伝導体(5)とを有し、
前記信号伝導体(5)は、好ましくはラベル状であって、信号伝導体(5)及びキャリア要素(7)上に配置されたカバー層(8)とともに、電気的伝導性のジェル(6)を介して接点(2)で、患者の肌に接触が可能であり、
前記カバー層は、キャリア要素(7)の外側端部上を突出する延出部(9)を有し、該延出部(9)には2つの非類似の接続手段(3、3′)が信号を信号獲得又は信号処理ユニットに伝達しもしくはリレーするために設置されていること特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の医療用電極。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【公表番号】特表2008−520288(P2008−520288A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541577(P2007−541577)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【国際出願番号】PCT/AT2005/000468
【国際公開番号】WO2006/053366
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(507163677)
【Fターム(参考)】